JP3053632B2 - 車両の差動制限装置 - Google Patents

車両の差動制限装置

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JP3053632B2
JP3053632B2 JP2031195A JP3119590A JP3053632B2 JP 3053632 B2 JP3053632 B2 JP 3053632B2 JP 2031195 A JP2031195 A JP 2031195A JP 3119590 A JP3119590 A JP 3119590A JP 3053632 B2 JP3053632 B2 JP 3053632B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は車両の差動制限装置に関するものである。
[従来の技術] エンジン、トランスミッション等で構成されるパワー
トレインの出力トルクを、前輪と後輪とに伝達し、4輪
で車両を駆動するようにした4輪駆動車は従来より知ら
れているが、このような4輪駆動車において、前輪と後
輪とを力学的に直結させると、車両旋回時にタイトコー
ナブレーキ現象が生じるなどといった問題があるので、
通常パワートレインと前・後輪との間に、前輪と後輪の
差動を可能にするセンタディファレンシャル装置(以
下、これをセンタデフという)が設けられる。
ところが、このようなセンタデフが設けられた4輪駆
動車において、前輪または後輪がスリップしたときに
は、パワートレインの出力トルクの大部分がスリップし
た方の車輪に配分されるので、車両の駆動力が実質的に
失われるといった問題がある。
そこで、前・後輪間の回転数差を検出し、この回転数
差が大きいときには、車輪がスリップ状態にあると判断
して、前輪側と後輪側とをギヤ等を介して機械的に連結
させ、センタデフの差動機能を停止させるようにした差
動制限装置が提案されている。しかし、この従来の差動
制限装置では、前輪と後輪とを自由に差動させるか、あ
るいは完全に直結させるかのいずれか1つした選択でき
ないので、スリップの程度に応じて差動制限量を調節す
るなどといった、車両の走行状態に応じた適切な差動制
限量制御を行なうことができない。
これを改善すべく、前輪側車軸と後輪側車軸との間、
あるいはセンタデフの入力軸といずれか一方の車輪側の
車軸の間に、クラッチ接続度に応じて前輪と後輪との間
の力学的な連結度を変えられるようになった油圧クラッ
チを設けるとともに、油圧クラッチのクラッチ接続度を
制御することによって前・後輪間の差動制限量を制御す
る差動制限量制御手段を設けた差動制限装置が提案され
ている。
ところで、このような差動制限装置にフェイルが発生
すると、油圧クラッチが常時半クラッチ状態となる場合
があり、このような場合にはクラッチ板が摩耗して油圧
クラッチの耐久性が低下するといった問題がある。そこ
で、油圧クラッチが継続して半クラッチ状態となったと
きには、摩擦熱により油圧クラッチ内の油温が上昇する
ことに着目し、油圧クラッチに対して油温センサを設
け、油温センサによって検出される油温が異常に高いと
きには、差動制限装置がフェイルしたものと判定し、差
動制限量制御を停止するようにした差動制限装置が提案
されている(例えば、特開昭63−31826号公報参照)。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、油圧クラッチ内の油温によってフェイ
ルを検出するようにした上記従来の差動制限装置では、
フェイルが発生してから油温が上昇するまでに、かなり
の時間遅れがあるので、フェイルの検出が遅れるといっ
た問題がある。
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであ
って、センタデフに対して、クラッチ手段を備えた差動
制限装置が設けられた4輪駆動車において、差動制限装
置のフェイルを早期に検出することができ、クラッチ手
段の耐久性を高めることができる車両の差動制限装置を
提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 上記の目的を達するため、請求項1の発明は、(a)
一方の車輪と他方の車輪とを差動させるディファレンシ
ャル装置と、(b)ディファレンシャル装置の差動機能
を制限するクラッチ手段と、(c)クラッチ手段のクラ
ッチ接続度を制御することによって差動制限量制御を行
なう差動制限量制御手段とが設けられた車両の差動制限
装置において、(d)一方の車輪の回転数と他方の車輪
の回転数との間の回転数差を検出する回転数差検出手段
と、(e)差動制限を行なわせる制御信号が差動制限量
制御手段から出力された後、実際に差動制限動作が実行
されるべき時間の経過後に、実際の上記回転数差と所定
の基準回転数差とを比較する比較手段と、(f)該比較
手段により実際の上記回転数差が、上記基準回転数差よ
り大きいと判定されたときには、該差動制限装置をフェ
イル(故障)と判定するフェイル検出手段と、(g)該
フェイル検出手段によってフェイルが検出されたときに
は、クラッチ手段を、完全な接続状態と完全な切断状態
のいずれか一方に強制的に作動させる強制作動手段とを
備えたことを特徴とする車両の差動制限装置を提供す
る。
また、請求項2の発明は、上記車両の差動制限装置に
おいて、クラッチ手段のクラッチ板のフェーシング材
が、摩擦力の小さい内側フェーシング材と、該内側フェ
ーシング材を被覆する摩擦力の大きい外側フェーシング
材とで形成されていることを特徴とする車両の差動制限
装置を提供する。
[発明の作用・効果] 一般に、制御システムにおいて、制御信号に対応する
制御量が得られないときには、システムがフェイルして
いることになるが、請求項1の発明によれば、差動制限
を行なわせる制御信号が差動制限量制御手段から出力さ
れた後、実際に差動制限動作が実行されるべき時間(許
容時間、例えば1.5秒)の経過後において、両車両間の
回転数差が基準回転数差より大きいときには、差動制限
装置がフェイル(故障)しているものと判定されるよう
になっている。したがって、差動制限装置のフェイルを
ほとんど時間遅れなく検出することができる。
そして、フェイルが検出されたときには、油圧クラッ
チを完全に接続させるか、あるいは完全に切断させるよ
うにしているので、半クラッチ状態が長時間にわたって
継続されるのが防止され、クラッチ板の摩耗が防止され
る。このため、油圧クラッチの耐久性を高めることがで
きる。
請求項2の発明によれば、まずもって、請求項1の発
明と同様の効果が得られる。
そして、摩擦力の大きい外側フェーシング材の内部に
摩擦力の小さい内側フェーシング材を備えているので、
何らかの原因によって、外側フェーシング材が摩耗した
ときには、油圧クラッチが摩擦力の小さい内側フェーシ
ング材を介して接続されることになる。このため、差動
制限量制御手段の制御信号に対する実際の差動制限量が
小さくなり、予め設定された許容時間内に、目標とする
差動制限量が得られなくなり、フェイルが検出される。
したがって、とくにクラッチ板の摩耗によるフェイルを
有効に検出することがてきる。ここにおいて、内側フェ
ーシング材は摩擦力が小さいだけで油圧クラッチを接続
させることはできるので、外側フェーシング材の摩耗が
検出されたときでも、油圧クラッチの機能は実質的に損
なわれない。つまり、油圧クラッチの機能を保持しつ
つ、外側フェーシング材の摩耗を検出することができ
る。なお、従来の1層式のフェーシング材の場合には、
フェーシング材の摩耗が検出されたときには、すでにフ
ェーシング材が欠落しており、クラッチを接続すること
ができなくなるので、正常な差動制限量制御を行なうこ
とができない。
[実施例] 以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
第1図に示すように、4輪駆動自動車WDは、実質的に
エンジン1と自動変速機2とで構成されるパワートレイ
ンPの出力トルクを、出力軸3に取り付けられたドライ
ブギヤ4と、該ドライブギヤ4と噛み合うドリブンギヤ
5とを介して、センタデフ6に伝達し、このセンタデフ
6に入力されたトルクが、前輪側プロペラシャフト7と
後輪側プロペラシャフト8とに分配して出力されるよう
になっている。なお、センタデフ6は、詳しくは図示し
ていないが、ドリブンギヤ5と連結される入力ギヤを、
前輪側プロペラシャフト7と連結される第1出力ギヤ
と、後輪側プロペラシャフト8と連結される第2出力ギ
ヤとを備え、両出力ギヤを差動可能に係合させつつ、入
力ギヤに入力されたトルクを両出力ギヤに分配するよう
になった、普通のディファレンシャル装置である。
そして、前輪側プロペラシャフト7のトルクはフロン
トデフ11に入力され、この後、左側フロントアクスルシ
ャフト12を介して左前輪13に伝達されるとともに、右側
フロントアクスルシャフト14を介して右前輪15に伝達さ
れるようになっている。なお、フロントデフ11は、左前
輪13と右前輪15とを差動可能に連結させるための普通の
ディファレンシャル装置である。一方、後輪側プロペラ
シャフト8のトルクはリヤデフ17に入力され、この後、
左側リヤアクスルシャフト18を介して左後輪19に伝達さ
れるとともに、右側リヤアクスルシャフト21を介して右
後輪22に伝達されるようになっている。なお、リヤデフ
17は、左後輪19と右後輪22とを差動可能に連結させるた
めの普通のディファレンシャル装置である。
ところで、センタデフ6によって前輪側と後輪側とを
自由に差動させると、前輪13,15あるいは後輪19,22がス
リップしたような場合、センタデフ6に入力されるトル
クの大部分がスリップした方の車輪に伝達され、スリッ
プしていない方の車輪にはトルクが伝達されなくなり、
自動車WDの駆動力が実質的に失われることになる。これ
を防止するために、自動車WDの各種走行条件に応じてセ
ンタデフ6の差動機能を制限する湿式クラッチCが設け
られている。なお、湿式クラッチCほ本願請求項1に記
載されたクラッチ手段に相当する。この湿式クラッチC
は実質的に、前輪側プロペラシャフト7に固定された円
筒形のシリンダ部材24と、該シリンダ部材24の内周面に
取り付けられた複数の薄いリング状のドーナツプレート
25と、シリンダ24内において後輪側プロペラシャフト8
の外周部に固定された複数の薄いディスク状のディスク
プレート26とで構成されている。ここにおいて、各ドー
ナツプレート25と各ディスクプレート26とは、シリンダ
24内に形成された空間部27内において、両プロペラシャ
フト7,8の軸線方向に交互に配置されている。また、空
間部27内にはオイルが充填され、この空間部27内の油圧
は、トルクスプリットコントローラC1からの信号に従っ
て、油圧制御弁28によって制御されるようになってい
る。ここにおいて、空間部27内の油圧が高いときほど、
各ドーナツプレート25と各ディスクプレート26とが強く
摩擦係合し、前輪側プロペラシャフト7と後輪側プロペ
ラシャフト8の差動を制限するようになっている。
第2図〜第4図に示すように、湿式クラッチCのディ
スクプレート26は実質的に、後輪側プロペラシャフト8
に固定される軸部51と、軸部51の外周部にスプライン嵌
合するリング形のベースプレート52と、ベースプレート
52の前後方向(第2図、第4図では左右方向)の両端面
に取り付けられる比較的摩擦力が小さいペーパ製内側フ
ェーシング材53と、内側フェーシング材53を被覆する比
較的摩擦力が大きいカーボン製外側フェーシング材54と
で構成されている。なお、外側フェーシング材54の表面
には、オイルの流動を促進するために、多数のオイル溝
55が設けられている。
このように、ディスクプレート26のフェーシング材
が、摩擦力の大きい外側フェーシング材54と摩擦力の小
さい内側フェーシング材53の2層で形成されているの
で、何らかの原因によって、外側フェーシング材54が摩
耗したときには、ドーナツプレート25(第1図参照)と
ディスクプレート26とが摩擦力の小さい内側フェーシン
グ材53を介して接続されることになる。このため、同一
油圧に対して湿式クラッチC(第1図参照)の接続度が
若干小さくなり、トルクスプリットコントローラC1(第
1図参照)の制御信号に対する差動制限量が小さくなる
ので、後で説明するフェイル検出ルーチン(第7図参
照)でフェイルが検出され、外側フェーシング材54の摩
耗が検出されるようになっている。ここにおいて、内側
フェーシング材53は摩擦力が小さいだけでドーナツプレ
ート25(第1図参照)とディスクプレート26とを摩擦係
合させることはできるので、外側フェーシング材54の摩
耗によるフェイルが検出されたときでも、湿式クラッチ
C(第1図参照)の機能は実質的に保持される。
再び、第1図に示すように、トルクスプリットコント
ローラC1は、マイクロコンピュータで構成されるデジタ
ル式のコントローラであって、吸気通路31に介設された
スロットル弁32に対して設けられたスロットルセンサ
(図示せず)によって検出されるスロットル開度TVθ、
吸気通路31に設けられたブーストセンサ33によって検出
されるブーストB(吸気負圧)、左側フロントアクスル
シャフト12に対して設けられた第1回転数センサ35によ
って検出される左前輪回転数ωFL、右側フロントアクス
ルシャフト14に対して設けられた第2回転数センサ36に
よって検出される右前輪回転数ωFR、左側リヤアクスル
シャフト18に対して設けられた第3回転数センサ37によ
って検出される左後輪回転数ωRL、右側リヤアクスルシ
ャフト21に対して設けられた第4回転数センサ38によっ
て検出される右後輪回転数ωRR、パワープラントPの出
力軸3に対して設けられたトルクセンサ41によって検出
される軸トルクT、傾斜角センサ42によって検出される
路面の傾斜角γ、加速度センサ43によって検出される自
動車WDの前後加速度gx、操舵角センサ44によって検出さ
れる操舵角θ、アクセルペダル45に対して設けられたア
クセルセンサ46によって検出されるアクセル踏み込み量
α、アクセルペダル45に対して設けられたキックダウン
スイッチ47によって検出されるキックダウンスイッチ信
号KDSW、ブレーキペダル48に対して設けられたブレーキ
センサ49によって検出されるブレーキ踏み込み量Br、ア
ンチロック・ブレーキ・システム(ABS)を制御するた
めのABSコントローラC2から印加されるABS作動信号AB
S、自動変速機2を制御するための自動変速機コントロ
ーラC3から印加されるギヤ位置信号GPOS等を入力情報と
して、後で説明するような制御方法で、自動車WDの各種
走行条件に応じて、油圧制御弁28を介して空間部27内の
油圧を制御することによって、前輪側プロペラシャフト
7と後輪側プロペラシャフト8の差動制限量を制御し
(差動制限量制御)、自動車WDの走行安定性、燃費性能
等を高めるようになっている。
以下、第5図〜第11図に示すフローチャートに従っ
て、トルクスプリットコントローラC1による、差動制限
量制御の制御方法を説明する。
<1>メインルーチン 以下、第5図に示すフローチャートに従って、差動制
限量制御のメインルーチンを説明する。
ステップ#1では、次の各データが入力される。
左前輪回転数 :ωFL 右前輪回転数 :ωFR 左後輪回転数 :ωRL 右後輪回転数 :ωRR 路面の傾斜角 :γ 車体の前後加速度 :gx 操舵角 :θ アクセル踏み込み量 :α ブースト :B スロットル開度 :TVθ 出力軸の軸トルク :T キックダウンスイッチ信号:KDSW ギヤ位置信号 :GPOS ブレーキ踏み込み量 :Br ABS作動信号 :ABS そして、上記入力データを、時間に関して微分するこ
とにより、次の各データが演算される。
左前輪回転加速度 :FL 右前輪回転加速度 :FR 左後輪回転加速度 :RL 右後輪回転加速度 :RR アクセル踏み込み速度 : ステップ#2では、次の式1により定義される、前・
後輪間の回転数差Δωが演算される。
Δω=(ωFR+ωFL)−(ωRR+ωRL) ……式1 ステップ#3では、異常タイヤフラグF10が1(異常
タイヤ状態)であるか否かが比較される。この異常タイ
ヤフラグF10は、初期値が0に設定され、後で説明する
ように、ステップ#6に対応する異常タイヤ検出ルーチ
ン(第6図参照)で、異常タイヤ状態が検出されたとき
には1がたてられる一方、ステップ#14に対応する異常
タイヤ復帰判定ルーチン(第11図参照)で、異常タイヤ
状態の解消が検出されたときにはリセットされるように
なっている。
ステップ#3での比較の結果、F10=1であれば(YE
S)、前回までに異常タイヤ状態が検出されているの
で、ステップ#14にスキップして、異常タイヤ復帰判定
ルーチン(第11図参照)が実行され、異常タイヤ状態が
解消されたか否かが判定される。この後、ステップ#10
で、差動制限量目標値Tagetに相当する制御量を出力し
て、ステップ#1に復帰する。
一方、ステップ#3での比較の結果、F10≠1すなわ
ちF10=0であれば(NO)、前回までに異常タイヤ状態
が検出されていないか、あるいはかつて異常タイヤ状態
が検出されたことがあってもその異常タイヤ状態がすで
に解消されているので、次のステップ#4が実行され
る。
ステップ#4では、フェイルフラグFFailが1(フェ
イル中)であるか否かが比較される。このフェイルフラ
グFFailは、初期値が0に設定され、後で説明するよう
に、ステップ#7に対応するフェイル検出ルーチン(第
7図参照)で差動制限装置のフェイルが検出されたとき
には1がたてられるようになっている。
ステップ#4での比較結果、FFail=1であれば(YE
S)、差動制限装置にフェイルが発生しており、正常な
差動制限量制御を行うことは不可能なので、ステップ#
12にスキップして、差動制限量目標値Tagetに0をセッ
トする。すなわち、前輪13,15と後輪19,22とを自由に差
動できるようにして、少なくとも異常な差動制限量制御
が行なわれるのを防止するようにしている。この後、ス
テップ#10でTaget=0に相当する制御量を出力し、ス
テップ#1に復帰する。
一方、ステップ#4での比較の結果、FFail≠1すな
わちFFail=0であれば(NO)、差動制限装置にフェイ
ルが発生していないので、次のステップ#5が実行され
る。
ステップ#5では、ブレーキ踏み込み量BrがON状態
(遊び以上に踏み込まれた状態)であるか否かが比較さ
れる。
ステップ#5での比較の結果、Br≠ONであれば(N
O)、ブレーキの制動力が自動車WDに実質的に作用して
いないので、ステップ#6〜ステップ#8の通常走行時
制御用の各ルーチンが実行される。
ステップ#6では、後で説明する異常タイヤ検出ルー
チン(第6図参照)が実行され、いずれかのタイヤに異
常があるか否か、すなわち異常タイヤ状態の有無が判定
される。
ステップ#7では、後で説明するフェイル検出ルーチ
ン(第7図参照)が実行され、差動制限装置にフェイル
が発生しているか否かが判定される。
ステップ#8では、後で説明する通常走行時制御ルー
チン(第8図(a)〜第8図(c)参照)が実行され、
通常走行時(ブレーキの制動力が実質的に作用していな
い走行状態)において、Δω>0すなわち前輪回転数が
後輪回転数より高い場合に用いられる前輪高回転側ゲイ
ンKFと、Δω<0すなわち後輪回転数が前輪回転数より
高い場合に用いられる後輪高回転側ゲインKRとが算出さ
れる。
ステップ#9では、後で説明する差動制限量目標値決
定ルーチン(第9図参照)が実行され、ゲインKF,KR
基づいて差動制限量目標値Tagetが決定される。
ステップ#10では、ステップ#9で決定された差動制
限量目標値Tagetに相当する制御量が油圧制御弁28に出
力され、湿式クラッチCにかけられる油圧を制御して
う、前輪13,15と後輪19,22の差動制限量が制御される。
この後、ステップ#1に復帰して、差動制限量制御が続
行される。
一方、ステップ#5での比較の結果、Br=ONであれば
(YES)、ブレーキによる制動力が実質的に自動車WDに
作用しているので、ステップ#11〜ステップ#13の制動
時制御用の各ルーチンが実行される。
ステップ#11では、ABSコントローラC2から印加され
るABS作動信号ABSがONであるか否かが比較される。な
お、ABSコントローラC2は、低μ路走行時等においてブ
レーキを踏み込んだ場合に、制動力を自動的に最大値に
調節するための普通のアンチロック・ブレーキ・システ
ム(ABS)を制御するためのコントローラである。
ステップ#11での比較の結果、ABS=ONであれば(YE
S)、アンチロック・ブレーキ・システムが作動してい
る。このとき、前・後輪間の差動を制限すると、アンチ
ロック・ブレーキ・システムが正常に作動しないので、
ステップ#12で差動制限量目標値Tagetに0がセットさ
れ、前・後輪間の差動制限が停止される。この後、ステ
ップ#10で、上記差動制限量目標値Tagetに相当する制
御量が出力された後、ステップ#1に復帰する。
一方、ステップ#11での比較の結果、ABS≠ONであれ
ば(NO)、アンチロック・ブレーキ・システムが作動し
ていないので、ステップ#13の通常制動時制御ルーチン
(第10図参照)が実行され、通常制動時用のゲインKF,K
Rが算出される。この後、ステップ#9,ステップ#10が
実行され、ステップ#1に復帰するが、この制御内容は
通常走行時の場合の制御と同様である。
<2>異常タイヤ検出ルーチン 以下、第6図に示すフローチャートに従って、メイン
ルーチンのステップ#6(第5図参照)に対応する、異
常タイヤ検出ルーチンを説明する。この異常タイヤ検出
ルーチンは、基本的には、後で説明するような4つの車
輪の回転数のばらつき度が一定値以上(1.025以上)と
なっている時間の積算値が所定値(0.5秒)を超えたと
きには、いずれかのタイヤが正常に回転しておらず、し
たがって異常タイヤ状態であると判定されるようになっ
ている。
ステップP1では、操舵角θがニュートラル状態
(N)、すなわち実質的に直進走行状態にあるか否かが
比較される。
ステップP1での比較の結果、θ≠Nであれば(NO)、
自動車WDは旋回走行状態にあり、必然的に前・後輪間の
回転数差あるいは左右の車輪間の回転数差が生じるの
で、4つの車輪の回転数にはもともとばらつきがあり、
上記のようなばらつきの有無に基づく異常タイヤ状態判
定方法は適用することができない。このため、旋回走行
中はステップP2〜ステップP9をスキップして、メインル
ーチンに復帰し、ステップ#7(第5図参照)が実行さ
れるようになっている。
一方、ステップP1での比較の結果、θ=Nであれば
(YES)、自動車WDは実質的に直進走行状態にあるの
で、ステップP2以下で異常タイヤ状態の有無が判定され
る。
ステップP2では、次の式2で定義される、4つの車輪
の回転数の第1ばらつき度が1.025以上であるか否かが
比較される。
(ωFL+ωRR)/(ωFR+ωRL) ……式(2) ステップP2での比較の結果、第1ばらつき度が1.025
未満であれば(NO)、さらにステップP3で、次の式3で
定義される第2ばらつき度が1.025以上であるか否かが
比較される。
(ωFR+ωRL)/(ωFL+ωRR) ……式(3) ステップP3での比較の結果、第2ばらつき度が1.025
未満であれば、4つの車輪の回転数のばらつき度が比較
的小さく、どのタイヤも正常に回転しているものと考え
られるので、異常タイヤ状態が発生していないものと判
定され、メインルーチンに復帰してステップ#7(第5
図参照)が実行される。
ステップP2での比較の結果、第1ばらつき度が1.025
以上であるか(YES)、またはステップP3での比較の結
果、第2ばらつき度が1.025以上であれば(YES)、この
ようなばらつき度が大きい状態の継続時間(以下、これ
をばらつき継続時間という)の積算値が所定値(0.5
秒)を超えたか否かを判定するために、ステップP4〜ス
テップP7が実行される。
ステップP4では、タイマフラグFTIMTが1であるか否
かが比較される。タイマフラグFTIMTは、初期値が0に
設定され、ばらつき継続時間の積算のカウントが開始さ
れたときには1がたてられ、この後異常タイヤ状態であ
ると判定され、さらに異常タイヤ復帰判定ルーチン(第
11図参照)で、異常タイヤ状態が解消されたと判定され
たときにはリセットされるようになっている。
ステップP4での比較の結果、FTIMT≠1であれば(N
O)、今回からばらつき継続時間の積算のカウントが開
始されることになるので、ステップP6でタイマフラグF
TIMTに1がたてられる。
一方、ステップP4での比較の結果、FTIMT=1であれ
ば(YES)、前回までにばらつき継続時間の積算のカウ
ントが開始されているので、ステップP5で、ばらつき継
続時間カウンタTIMTが0.5秒に相当するカウント数を超
えたか否かが比較される。
ステップP5での比較の結果、ばらつき継続時間カウン
タTIMTが0.5秒に相当するカウント数以下であれば(N
O)、ステップP7でばらつき継続時間カウンタTIMTが1
だけインクリメントされ、カウントが続行される。
一方、ステップP5での比較の結果、ばらつき継続時間
カウンタTIMTが0.5秒に相当するカウント数を超えてい
れば(YES)、異常タイヤ状態が発生しているものと判
定され、ステップP8で異常タイヤフラグF10に1がたて
られ、続いてステップP9で差動制限量目標値Tagetに0
がセットされ、この後メインルーチンに復帰してステッ
プ#10(第5図参照)が実行される。
前記したとおり、自動車WDが異常タイヤ状態にあると
きに、正常時と同様の差動制限量制御を行うと、常に前
・後輪間の回転数差Δωが生じるので、湿式クラッチC
が常時半接続状態なり、その耐久性が低下する。しかし
ながら、このように異常タイヤ状態が検出されたときに
は、差動制限量目標値Tagetを強制的に0にして、前・
後輪間の差動制限を停止させるようにしているので、湿
式クラッチCの耐久性の低下を有効に防止することがで
きる。
<3>フェイル検出ルーチン 以下、第7図に示すフローチャートに従って、メイン
ルーチンのステップ#7(第5図参照)に対応する、フ
ェイル検出ルーチンを説明する。このフェイル検出ルー
チンは、基本的には、差動制限量目標値Tagetが所定値
(A)以上となり、したがって比較的強く差動制限を行
なったのにもかかわらず、一定時間経過後(1.5秒後)
に、前・後輪間の回転数差Δωが減少しないときには、
差動制限装置がフェイルしたものと判定されるようにな
っている。なお、前記したとおり、湿式クラッチCのデ
ィスクプレート26のフェーシング材を、外側フェーシン
グ材54と内側フェーシング材53の2層で形成しているの
で、湿式クラッチCの機能を保持しつつ、外側フェーシ
ング材54の摩耗を検出することができるようになってい
る。
ステップQ1では、時間管理フラグFFSが1であるか否
かが比較される。時間管理フラグFFSは、初期値が0に
設定され、差動制限量目標値Tagetが所定値A以上とな
ったときに1がたてられ、この後差動制限装置がフェイ
ルしていないことが検出されかつ差動制限量目標値Tage
tがAより小さい値に復帰したときにリセットされるよ
うになっている。
ステップQ1での比較の結果、FFS≠1すなわちFFS=0
であれば(NO)、差動制限装置がフェイルしていないこ
とが最後に検出されてから前回に至るまでに、差動制限
量目標値Tagetが所定値A以上となっていない。そこ
で、ステップQ2で、今回の差動制限量目標値TagetがA
以上となっているか否かが比較される。
ステップQ2での比較の結果、Taget<Aであれば(N
O)、差動制限量目標値Tagetが比較的小さく、フェイル
の有無の判定を行なうことができる程度に達していない
ので、ステップQ3〜ステップQ5をスキップし、メインル
ーチンに復帰してステップ#8(第5図参照)が実行さ
れる。
一方、ステップQ2での比較の結果、Taget≧Aであれ
ば(YES)、フェイルの有無の判定が開始され、ステッ
プQ3で時間管理フラグFFSに1がたてられる。
続いて、ステップQ4で、今回の回転数差Δωが基準回
転数差ΔωFailとして記憶される。
次に、ステップQ5で時間管理タイマTIMFが1だけイン
クリメントされる。この時間管理タイマTIMFは、時間管
理フラグFFSに1がたてられてからの経過時間、すなわ
ちフェイルの有無の判定動作が開始されてからの経過時
間をカウントするタイマであり、1.5秒でタイムアップ
するようになっている。この後、さらに時間管理カウン
タTIMFのカウントが続行される。
ところで、ステップQ1での比較の結果、FFS=1であ
れば(YES)、すでにフェイルの有無の判定が開始され
ているので、ステップQ6で、時間管理タイマTIMFが1.5
秒に対応するカウント数を超えたか否か、すなわち時間
管理タイマTIMFがタイムアップしたか否かが比較され
る。
ステップQ6での比較の結果、TIMFが1.5秒に相当する
カウント数以下であれば(NO)、またタイムアップして
いないので、ステップQ5でTIMFが1だけインクリメント
され、時間管理タイマTIMFのカウントが続行される。
一方、ステップQ6での比較の結果、TIMFが1.5秒に相
当するカウント数を超えていれば(YES)、TIMFがすで
にタイムアップしているので、ステップQ7で基準回転数
差ΔωFailが今回の回転数差Δωより大きいか否か、す
なわち1.5秒間に回転数差Δωが減少したか否かが比較
される。
ステップQ7での比較の結果、ΔωFail≦Δωであれば
(NO)、差動制限装置がフェイルしているものと判定さ
れる。すなわち、差動制限量目標値Tagetが比較的大き
い値(A以上)に設定されているのにもかかわらず、1.
5秒経過後に回転数差Δωが減少していないので、差動
を制限すべき出力信号に対応する差動制限が行なわれて
いないことになるからである。この場合、ステップQ8で
差動制限量目標値Tagetに0がセットされ、続いてステ
ップQ9で、フェイルフラグFFailに1(フェイル)がた
てられ、この後メインルーチンに復帰してステップ#10
が実行される。
このように、差動制限装置がフェイルしているときに
は、差動制限量目標値Tagetを0にして強制的に前輪13,
15と後輪19,22とを自由に差動させるようにしているの
で、フェイル時に不適正な差動制限量制御が行なわれる
のが防止され、差動制限装置の信頼性の向上を図ること
ができる。
ステップQ7での比較の結果、ΔωFail>Δωであれば
(YES)、差動制限量目標値Tagetの上昇に対応して回転
数差Δωが減少しているので、差動制限装置は正常であ
り、フェイルが発生していないものと判定される。
この場合、ステップQ10で差動制限量目標値TagetがA
より小さいか否かが比較される。この比較の結果、Tage
t<Aであれば(YES)、ステップQ11で時間管理フラグF
FSがリセットされ、続いてステップQ12で時間管理タイ
マTIMFがリセットされた後、メインルーチンに復帰し
て、ステップ#8(第5図参照)が実行される。
一方、ステップQ10での比較の結果、Taget≧Aであれ
ば(NO)、ステップQ11〜ステップQ12をスキップして、
メインルーチンに復帰して、ステップ#8(第5図参
照)が実行される。すなわち、Taget≧Aである場合
に、時間管理フラグFFSと時間管理タイマTIMFとを、夫
々リセットすると、今回で差動制限装置が正常であると
判定されたのにもかかわらず、次回からまた時間管理タ
イマTIMFがカウントを開始するので、無駄な制御動作が
行なわれることになるからである。
<4>通常走行時制御ルーチン 以下、第8図(a),(b),(c)に示すフローチ
ャートに従って、メインルーチンのステップ#8(第5
図参照)に対応する、通常走行時制御ルーチンを説明す
る。この通常走行時制御ルーチンは、基本的には、後で
説明するような各種走行条件に対応する各種補正項が演
算され、これらの各補正項に基づいて、次の式4と式5
とによって、夫々通常走行時における前輪高回転側ゲイ
ンKFと後輪高回転側ゲインKRとが演算されるようになっ
ている。
KF=Kf1×C2×Kv×KSTR×Kμ ……式4 KR=Kr1×C2×Kv×KSTR×Kμ×KSTRR ……式5 ただし、 Kf1 ……前輪高回転側重量補正項 Kr1 ……後輪高回転側重量補正項 C2 ……トルク補正項 Kv ……速度補正項 KSTR ……操舵角補正項 KSTRR……後輪高回転側操舵角速度補正項 Kμ ……路面抵抗補正項 本実施例では、第12図に示すように、基本的には、差
動制限量目標値Tagetを前輪回転数と後輪回転数の差Δ
ωの関数としてあらわし、前輪回転数ωの方が後輪回
転数ωより高い前輪高回転領域(Δω>0)と、後輪
回転数ωの方が前輪回転数ωより高い後輪高回転領
域(Δω<0)とに対して、個別的に差動制限量目標値
Tagetを設定するようにしている。
そして、前輪高回転領域(Δω>0)において、回転
数差Δωが前輪高回転側切片Δω max以下となる領域で
は、Tagetを0に設定して前輪高回転側不感帯を設けて
いる。そして、ΔωがΔω maxより大きい領域では、Ta
getをΔωの増加に対して所定のゲインKFで直線的に増
加させるようにしている。ただし、Tagetが上限値Tmax
を超えないようにしている。ここにおいて、TagetがTma
xに達したときには、前・後輪間の差動が完全に停止さ
れリジッドに連結される。なお、Δω>Δω maxとなる
領域において、Δωに対するTagetの特性は、本実施例
のような1次関数(直線的関係)に限られるものではな
く、曲線的な特性にしてもよい。
一方、後輪高回転領域において回転数差Δωが後輪高
回転側切片Δω min以上となる領域では、Tagetを0に
設定して後輪高回転側不感帯を設けている。そして、Δ
ωがΔω minより小さい領域では、TagetをΔωの増加
に対して所定のゲインKRで直線的に減少させるようにし
ている。また、Tagetは上限値Tmaxを超えないようにし
ている。なおこの場合も、Δω<Δω minとなる領域に
おいて、Δωに対するTagetの特性は、1次関数(直線
的関係)に限られるものではなく、曲線的な特性にして
もよい。
そして、後で説明するように両ゲインKF,KRと両切片
Δω max,Δω minとを、自動車WDの各種走行条件に応
じて変化させ、差動制限量目標値Tagetの回転数差Δω
に対する特性を、走行状態に適するように変えるように
している。したがって、自動車WDの走行安定性、信頼
性、燃費性能等の向上が図られる。
ステップR1〜ステップR4では、前輪高回転側重量補正
項Kf1と、後輪高回転側重量補正項Kr1とが演算される。
ステップR1では、自動車WDの前後方向の加速度gxに対
する前輪高回転側加速補正値Kgfと、後輪高回転側加速
補正値Kgrとが演算される。ここにおいて、KgfとKgrの
加速度gxに対する特性は、夫々第13図と第14図とに示す
とおりである。すなわち、加速時においては、加速度gx
が大きいときほど、前輪側荷重配分が減少して前輪13,1
5がスリップしやすくなるので、加速度gxの増加に伴っ
てKgfが大きくなるような特性とする一方、後輪側荷重
配分が増加して後輪19,22がスリップしにくくなってい
るので、加速度gxの増加に伴ってKgrが小さくなるよう
な特性としている。また、減速時においては、減速度−
gxが大きいときほど、前輪側荷重配分が増加して前輪1
3,15がスリップしにくくなっているので、減速度−gxの
増加に伴ってKgfが小さくなるような特性とする一方、
後輪側荷重配分が減少して後輪19,22がスリップしやす
くなっているので、減速度−gxの増加に伴ってKgrが大
きくなるような特性としている。なお、第13図と第14図
とにおいては、水平静止時における自動車WDの前輪荷重
と後輪荷重とを考慮して特性が設定されているのはもち
ろんである。
ステップR2では、路面の傾斜γ(すなわち車体の傾
斜)に対する前輪高回転側傾斜補正値Kγfと、後輪高
回転側傾斜補正値Kγrとが演算される。ここにおい
て、KγfとKγrの傾斜γに対する特性は、夫々第15
図と第16図とに示すとおりである。すなわち、登坂時に
おいては、登坂傾斜γが大きいときほど、前輪側荷重配
分が減少して前輪13,15がスリップしやすくなっている
ので、登坂傾斜γの増加に伴ってKγfが大きくなるよ
うな特性とする一方、後輪側荷重配分が増加して後輪1
9,22がスリップしにくくなっているので、登坂傾斜γの
増加に伴ってKγrが小さくなるような特性としてい
る。また、降坂時においては、降坂傾斜−γが大きいと
いほど、前輪側荷重配分が増加して前輪13,15がスリッ
プしにくくなるので、降坂傾斜−γの増加に伴ってKγ
fが小さくなるような特性とする一方、後輪側荷重配分
が減少して後輪19,22がスリップしやすくなっているの
で、降坂傾斜−γの増加に伴ってKγrが大きくなるよ
うな特性としている。
ステップR3では、KgfとKγfのうち大きい方が、前
輪高回転側重量補正項Kf1として採用され、続いてステ
ップR4では、KgrとKγrのうち大きい方が、後輪高回
転側重量補正項Kr1として採用される。なお、KgfとKγ
fとからKf1を算出する方法、あるいはKgrとKγrとか
らKr1を算出する方法は、上記の方法に限られるもので
はなく、例えば夫々、両者の積あるいは両者の平均値を
用いるようにしてもよい。
ステップR5〜ステップR9またはステップR11〜ステッ
プR15では、トルク補正項C2が算出される。
ステップR5では、エンジン負荷補正値Cαが演算され
る。ここにおいて、エンジン負荷補正値Cαのエンジン
負荷に対する特性は、第17図に示すとおりである。すな
わち、エンジン負荷が高いときには、車輪の駆動力が大
きくなりスリップが起こりやすくなるので、エンジン負
荷が高いときほど、エンジン負荷補正値Cαが大きく設
定して、ゲインKF,KRを大きくするようにしている。な
お、ここでは、アクセル踏み込み量αでエンジン負荷を
あらわすようにしているが、アクセル踏み込み量αのか
わりに、スロットル開度TVθ、軸トルクT、またはブー
ストBを用いてもよい。
ステップR6では、エンジン負荷変化率補正値Cが演
算される。ここにおいて、エンジン負荷変化率補正値C
のエンジン負荷変化率に対する特性は、第18図に示す
とおりである。すなわち、エンジン負荷変化率が大きい
ときには、この後間もなくエンジン負荷が高くなると予
想されるので、上記変化率が大きいときには、エンジン
負荷変化率補正値Cを大きく設定して、ゲインKF,KR
を大きくし、エンジン高出力時のスリップも前もって防
止するようにしている。
ステップR7では、CαとCのうち大きい方が負荷補
正値C1として記憶される。なお、CαとCとからC1
算出する方法は上記の方法に限られるものではなく、例
えば両者の積あるいは両者の平均値を用いるようにして
もよい。
ステップR8では、ギヤ位置補正値CGが演算される。こ
こにおいて、ギヤ位置補正値CGの変速機2のギヤ位置GP
OSに対する特性は、第19図に示すとおりである。すなわ
ち、自動変速機2のトルク比が大きいときにはスリップ
が起こりやすくなるので、トルク比が大きいときほどCG
が大きくなるようにしている。
ステップR9では、次の式6によるトルク補正項C2が演
算される。
C2=C1×CG ……式6 ところで、ステップR11〜ステップR13のように、キッ
クダウン時には、シフトダウンが行なわれ、パワープラ
ントPの出力トルクが大きくなり、スリップしやすくな
るので、トルク補正項C2を1より大きい適当な値に設定
するようにしてもよい。この場合、ステップR11でキッ
クダウンスイッチ信号KDSWがONであるか否かが比較さ
れ、この比較の結果、KDSW=ONであれば(YES)、ステ
ップR13でC2に1より大きい所定値Bがセットされ、一
方KDSW≠ONであれば(NO)、ステップR12でC2に1がセ
ットされる。
また、ステップR14〜ステップR15のように、前輪加速
または後輪加速度が、所定値を超える場合に
は、スリップが起こりやすくなるので、トルク補正項C2
を1より大きい適当な値に設定するようにしてもよい。
この場合、ステップR14で車輪加速度補正値Kが演算
され、ステップR15でトルク補正項C2に車輪加速度補正
値Kがセットされる。車輪加速度補正値Kの車輪加
速度F,に対する特性は、第20図に示すとおりであ
る。
なお、ここでは、キックダウンスイッチ信号KDSWによ
るトルク補正と、車輪加速度F,によるトルク補正
とは、ステップR5〜ステップR9のトルク補正に対して、
択一的に選択できるようにしているが、これらのトルク
補正を直列的に実行するようにしてもよい。この場合に
は、3種のトルク補正により演算されたトルク補正項C2
の最大値をトルク補正項C2としたり、あるいは各トルク
補正項C2を掛け合わせてトルク補正項C2とすればよい。
ステップR10では、速度補正項Kvが演算される。ここ
において、車速Vは、4つの各車輪の回転数が最小の車
輪の回転数min{ωFLFRRLRR}に基づいて算出
される。
そして、速度補正項Kvの車速Vに対する特性は、直進
走行安定性を重視する場合には、第21図中の曲線G1のよ
うに設定され、燃費性能を重視する場合には、第21図中
の曲線G2のように設定される。
ステップR16〜ステップR39では、操舵角補正項K
STRと、後輪高回転側操舵角速度補正項KSTRRとが演算さ
れる。これらのステップでは、基本的には、低速時にお
いては、操舵角θが大きくなることが多いので、前輪と
後輪の回転数差を吸収するために、前輪高回転側である
か後輪高回転側であるかを問わず、操舵角θが大きいと
きほどゲインを小さくするようにしている。一方、高速
時においては、操舵角θがそれほど大きくなることはな
いので、基本的には操舵角補正項KSTRは1とし、後輪高
回転側のみ、操舵角θの時間に対する変化率すなわち操
舵角速度が大きいときほどゲインを大きくして、スリ
ップを抑制するようにしている。
ステップR16では、車速Vが20km/h以下であるか否か
が比較される。
ステップR16での比較の結果、V≦20km/hであれば(Y
ES)、ステップR17〜ステップR18の低速時用のゲイン補
正が実行される。
まず、ステップR17で操舵角補正項KSTRが演算され
る。ここにおいて、操舵角補正項KSTRの操舵角θに対す
る特性は、第22図に示すとおりである。すなわち、操舵
角θが大きいときほど、後輪旋回半径が前輪旋回半径よ
り小さくなるので、前・後輪間の差動を可能にしてタイ
トコーナブレーキ現象を防止するために、ゲインKF,KR
を小さくする。
続いて、ステップR18で後輪高回転側操舵角速度補正
項KSTRRに1がセットされる。すなわち、低速時には、
前輪高回転であるか後輪高回転側であるかを問わず、操
舵角θが大きいときほどゲインKF,KRを小さくすればよ
いので、後輪高回転側のみに対してとくにゲインを補正
する必要がないからである。
一方、ステップR16での比較の結果、V>20km/hであ
れば(NO)、ステップR19〜ステップR39で、高速時用の
ゲイン補正が実行される。
ステップR19では、操舵角θがニュートラル(N)で
あるか否かが比較される。
ステップR19での比較の結果、θ≠Nであれば、自動
車WDが旋回中であるので、ステップR20〜ステップR34で
操舵角θおよび操舵角速度によるゲイン補正が行なわ
れる。
ステップR20では、操舵角速度フラグFθが1である
か否かが比較される。この操舵角速度フラグは、初期
値が0に設定され、自動車WDが旋回を開始したときには
後で説明するステップR25で1がたてられ、旋回を終了
したときにはステップR36でリセットされようになって
いる。
ステップR20での比較の結果、Fθ≠1すなわちFθ
=0であれば、直進走行状態から今回初めて旋回が開始
されたことになるので、ステップR21〜ステップR25で、
旋回開始時から定常旋回状態に達するまでの旋回過渡時
における、操舵角速度絶対値||の最大値||maxが
演算される。すなわち、後で説明するように、後輪高回
転側操舵角速度補正項KSTRRは、定常旋回状態に達した
後、所定の増加率で段階的に増加させるようにしている
が、この上限値が||maxによって決定されることにな
っているからである。
まず、ステップR21で操舵角速度の絶対値||が
0より大きいか否かが比較される。この比較の結果、|
|>0であれば(YES)、自動車WDが過渡旋回時にあ
るのて、ステップR22で今回の||が前回までの最大
値||maxと比較され、今回の||が前回までの|
|maxより大きければ(YES)、ステップR23で今回の|
|があらたに||maxとなる。
続いて、ステップR24でKSTRRが0にセットされる。す
なわち、過渡旋回時において、後輪19,22が前輪13,15よ
り高回転である場合には、旋回半径の差に対応させるた
めに、後輪回転数を早急に減少させなければならないの
で、ゲインを0にして前・後輪を自由に差動させるよう
にしている。
なお、自動車WDが定常旋回状態に達したときには、|
|=0となるので、ステップR21からステップR25にス
キップして操舵角速度フラグFθに1がたてられる。
ステップR20での比較の結果、Fθ=1であれば(YE
S)、自動車WD定常旋回状態に達したので、ステップR27
〜ステップR34で、後輪高回転側操舵角速度補正項KSTRR
の演算が行なわれる。
ステップR27では、セットタイムフラグFSTが0である
か否かが比較される。このセットタイムフラグFSTは、K
STRRの時間に対する立ち上がり特性(時間に対するゲイ
ン)がすでに決定されたか否かを判定するためのフラグ
であり、初期値が0に設定され、ステップR28〜ステッ
プR29で、KSTRRの立ち上がり特性と上限値K とが決定
されたときには、ステップR30で1がたてられるように
なっている。
ステップR27での比較の結果、FST=0であれば(YE
S)、ステップR28でKSTRRのセットタイムSTが決定され
る。このセットタイムSTの操舵角絶対値|θ|に対する
特性は、第23図のとおりである。
次に、ステップR29でKSTRRの上限値K が演算され
る。K の||maxに対する特性は、第24図のとおりで
ある。
ステップR30では、セットタイムSTと上限値K とが
決定されたので、セットタイムフラグFSTに1がたてら
れる。
ステップR31では、このステップを1回実行する毎に
立ち上がり特性補正値KSTに1/STが積算される。つま
り、KSTは時間の経過とともに直線的に増加してゆくこ
とになる。
ステップR32では、KSTが1以上であるか否かが比較さ
れ、KST≧1であれば(YES)、KSTに1がセットされ
る。つまり、KSTは1を上限値として直線的に増加して
ゆくことになる。ステップR34では、次の式7によりK
STRRが演算され、この後ステップR26が実行される。
KSTRR=K ×KST ……式7 例えば、第25図に示すように、時刻t0で旋回を開始
し、時刻t1で定常旋回状態になり、時刻t2で直進状態に
戻り始め、時刻t3で直進状態に戻るような旋回が行なわ
れた場合、操舵角速度の時間に対する特性は、第26図
のようになる。そして、このような旋回に対してステッ
プR27〜ステップR34によるゲイン補正が行なわれると、
第27図に示すように、後輪高回転側ゲインKRの時間に対
する特性は、||maxが大きいときには折れ線G3のよう
になり、||maxが小さいときには折れ線G4のようにな
る。
ところで、ステップR19での比較の結果、θ=Nであ
れば(YES)、自動車WDは直進走行中であり、操舵角θ
に関するゲイン補正を行なう必要がないので、ステップ
R35で||maxがリセットされ、ステップR36でFθがリ
セットされ、ステップR37でFSTがリセットされ、ステッ
プR38でKSTがリセットされ、ステップR39でKSTRRがリセ
ットされる。この後ステップR26が実行される。
ステップR41〜ステップR49では、路面抵抗補正項Kμ
の演算が行なわれる。第29図に示すように、一般に路面
抵抗μは車輪のスリップ率によって変化するが、あるス
リップ率のところで最大μ maxなる。そして、この路面
抵抗μ maxは、車体加速度gの最大値gmaxと比例関係に
あるので、ここでは基本的には、低速・高負荷時におい
て、最大加速度gmaxを演算し、このgmaxに基づいて路面
抵抗補正項Kμの演算を行なうようにしている。
ステップR41〜ステップR42では、夫々、車速Vが10km
/h以下であるか否かと、アクセル踏み込み量αが50%よ
り大きいか否かとが比較される。
ステップR41〜ステップR42での比較の結果、V≦10km
/hであり、かつα>50%であれば、自動車WDが低速・高
負荷状態にあるので、ステップR43〜ステップR47で、最
大加速度gmaxが演算される。
ステップR43では、路面抵抗フラグFμが1であるか
否かが比較される。この路面抵抗フラグFμは、初期値
が0に設定され、最大加速度gmaxの演算が開始されたと
きには1がたてられ、gmaxの演算が終了したときにはリ
セットされるようになっている。
ステップR43での比較の結果、Fμ≠1すなわちFμ
=0であれば(NO)、今回からgmaxの演算が開始された
ことになるので、ステップR46でgmaxに初期値0.1がセッ
トされるとともに、ステップR47で路面抵抗フラグFμ
に1がたてられる。
一方、ステップR43での比較の結果、Fμ=1であれ
ば(YES)、すでにgmaxを演算中であるので、ステップR
44で今回の加速度gが前回までの最大加速度gmaxより大
きいか否かが比較され、g>gmaxであれば(YES)、ス
テップR45で今回のgがあらたにgmaxとなる。
一方、ステップR41〜ステップR42での比較の結果、V
>10km/hであるか、またはα≦50%であれば、gmaxの演
算が終了し、ステップR48で路面抵抗フラグFμがリセ
ットされる。
ステップR49では、最大加速度gmaxに基づいて路面抵
抗補正項Kμが演算される。ここにおいて、路面抵抗補
正項Kμの最大加速度gmaxに対する特性は、第28図に示
すとおりである。すなわち、最大加速度gmaxが大きいと
き、すなわち路面抵抗μが大きいときにはスリップしに
くいので、路面抵抗補正項Kμを小さくして、前・後輪
間の差動制限を減少させるようにしている。
ステップR50とステップR51とでは、夫々、前記の式4
と式5とにより前記高回転側ゲインKFと後輪高回転側ゲ
インKRとが演算される。
この後、メインルーチンに復帰して、ステップ#9
(第5図参照)が実行される。
<5>差動制御量目標値決定ルーチン 以下、第9図に示すフローチャートに従って、メイン
ルーチンのステップ#9(第5図参照)に対応する、差
動制御量目標値決定ルーチンを説明する。
ステップS1では前・後輪間の回点数差Δωが0以上で
あるか否かが比較される。この比較の結果、Δω≧0で
あれば(YES)、各車輪の回転状態は前輪高回転領域に
あるので、ステップS2〜ステップS6で、前輪高回転側特
性に従って、差動制御量目標値Tagetが演算される。
ステップS2では、Δω−Δω maxが0以下であるか否
かが比較される。この比較の結果、Δω−Δω max≦0
であれば(YES)、車輪の回転状態が前輪高回転側不感
帯にあるので、ステップS4で、差動制御量目標値Taget
に0がセットされる。
ステップS2での比較の結果、Δω−Δω max>0であ
れば(NO)、さらにステップS3で、Δω−Δω maxがTm
ax/KF以上であるか否か、すなわちTagetが上限値Tmaxに
達しているか否かが比較される。
ステップS3での比較の結果、Δω−Δω max<Tmax/K
Fであれば(NO)、次の式8により差動制御量目標値Tag
etが演算される。
Taget=KF(Δω−Δω max) ……式8 一方、ステップS3での比較の結果、Δω−Δω max≧
Tmax/KFであれば(YES)、式8で演算されるTagetが上
限値Tmax以上となるので、ステップS6で、Tagetに上限
値Tmaxがセットされる。
ところで、ステップS1での比較の結果、Δω<0であ
れば(NO)、各車輪の回転状態は後輪高回転領域にある
ので、ステップS7〜ステップS11で、後輪高回転側の特
性に従って、差動制御量目標値Tagetが演算される。
ステップS7では、Δω−Δω minが0以上であるか否
かが比較される。この比較の結果、Δω−Δω min≧0
であれば(YES)、車輪の回転状態が後輪高回転側不感
帯にあるので、ステップS9で、差動制御量目標値Taget
に0がセットされる。
ステップS7での比較の結果、Δω−Δω min<0であ
れば(NO)、さらにステップS8で、Δω−Δω minがTm
ax/KR以下であるか否か、すなちTagetが上限値Tmaxに達
しているか否かが比較される。
ステップS8での比較の結果、Δω−Δω min>Tmax/K
Rであれば(NO)、次の式9により差動制御量目標値Tag
etが演算される。
Taget=KR(−Δω+Δω min) ……式9 一方、ステップS8での比較の結果、Δω−Δω min≦
Tmax/KRであれば(YES)、式9で演算されるTagetが上
限値Tmax以上となるので、ステップS11で、Tagetに上限
値Tmaxがセットされる。
<6>通常制動時制御ルーチン 以下、第10図に示すフローチャートに従って、メイン
ルーチンのステップ#13に対応する、通常制動時制御ル
ーチンを説明する。この通常制動時制御ルーチンは、基
本的には、後で説明するような各補正項が演算され、こ
れらの各補正項に基づいて、次の式10と式11とによっ
て、夫々通常制動時における前輪高回転側ゲインKFと後
輪高回転側ゲインKRが演算されるようになっている。
KF=KBF×KBSTR ……式10 KR=KBR×KBSTR ……式11 ただし、 KBF ……前輪高回転側ブレーキ補正項 KBR ……後輪高回転側ブレーキ補正項 KBSTR……制動時操舵角補正項 ステップT1では、前輪高回転側ブレーキ補正項KBF
と、後輪高回転側ブレーキ補正項KBRとが演算される。
ここにおいて、KBFとKBRのブレーキ踏み込み量Brに対す
る特性は、夫々、第30図中の直線G5と直線G6とに示すと
おりである。すなわちブレーキ踏み込み量(ブレーキ
力)が大きいときには、ブレーキトルクを各車輪に分散
させてロックを防止するようにしている。また、ブレー
キ踏み込み量(ブレーキ力)が小さいときには、各車輪
の差動をより自由にして走行安定性を確保するようにし
ている。なお、、ブレーキ踏み込み量Brのかわりにブレ
ーキ油圧BrPを用いてもよい。
ステップT2では制動時操舵角補正項KBSTRが演算され
る。ここにおいて、KBSTRの操舵角θに対する特性は、
第31図に示すとおりである。すなわち、操舵角θが大き
いときほどKBSTRすなわちゲインを小さくして、各車輪
の差動をより自由にして、旋回制動時における走行安定
性を確保するようにしている。
ステップT3では、前記の式10と式11とにより、夫々前
輪高回転側ゲインKFと後輪高回転側ゲインKRとが演算さ
れる。
ところで、前記したとおり、ブレーキ踏み込み量Br
(ブレーキ力)が大きいときには、ロックを防止するた
めに、差動制限量を大きくする必要があり、ステップT1
〜ステップT4では、ゲインKF,KRを大きくすることによ
り、差動制限量を大きくするようにしているが、ステッ
プT5〜ステップT8のように、前輪高回転側切片Δω max
と後輪高回転側切片Δω minとを変えることにより、差
動制限量を大きくするようにしてもよい。
この場合、ステップT5では、前輪高回転側切片Δω m
axが、ブレーキ踏み込み量Brに対して、第32図に示すよ
うな特性に従って補正される。
また、ステップT6では、後輪高回転側切片Δω min
が、ブレーキ踏み込み量Brに対して、第33図に示すよう
な特性に従って補正される。
このように、Δω maxとΔω minとをブレーキ踏み込
み量Brに対して補正した場合、差動制限量目標値Taget
の回転数差Δωに対する特性は、第34図の折れ線G7,G8
のようになる。
ステップT7では、前輪高回転側切片Δω max補正後の
特性(第34図中の折れ線G7)に基づいて、実際の回転数
差Δωに対応するゲインKが前輪高回側ゲインKFとして
採用される。
ステップT8では、後輪高回転側切片Δω min補正後の
特性(第34図中の折れ線G8)に基づいて、実際の回転数
差Δωに対応するゲインKが後輪高回転側ゲインKRとし
て採用される。
なお、ここでは、ステップT1〜ステップT4のゲイン補
正ルーチンと、ステップT5〜ステップT8の切片補正ルー
チンとを択一的に実行するようにしているが、両者を直
列的に実行するようにしてもよい。
<7>異常タイヤ復帰判定ルーチン 以下、第11図に示すフローチャートに従って、メイン
ルーチンのステップ#14(第5図参照)に対応する、異
常タイヤ復帰判定ルーチンを説明する。
この異常タイヤ復帰判定ルーチンでは、基本的には、
各車輪の回転数のばらつき度が一定値未満(1.025未
満)となったときには、各タイヤが正常に回転してお
り、したがって異常タイヤ状態が正常に復帰したもと判
定されるようになっている。
ステップU1では、操舵角θがニュートラル状態
(N)、すなわち実質的に直進走行状態にあるか否かが
比較される。
ステップU1での比較の結果、θ≠Nであれば(NO)、
自動車WDは旋回走行状態にあり、各車輪の回転数にはも
ともとばらつきがあるので、異常タイヤ復帰判定を行な
うことができない。このため、旋回走行中はステップU2
〜ステップU7をスキップして、メインルーチンに復帰
し、ステップ#10(第5図参照)が実行されるようにな
っている。
一方、ステップU1での比較の結果、θ=Nであれば
(YES)、自動車WDは実質的に直進走行状態にあるの
で、ステップU2以下で、異常タイヤ状態が正常に復帰し
たか否かが判定される。
ステップU2では、前記の式2で定義された第1ばらつ
き度(ωFL+ωRR)/(ωFL+ωRL)が1.025未満であ
るか否かが比較される。
ステップU2での比較の結果、第1ばらつき度が1.025
未満であれば(YES)、さらにステップU3で、前記の式
3で定義された第2ばらつき度(ωFL+ωRL)/(ωFL
+ωRR)が1.025未満であるか否かが比較される。
ステップU3での比較の結果、第2ばらつき度も1.025
未満であれば、各車輪の回転数のばらつき度が比較的小
さく、どのタイヤも正常に回転しているものと考えられ
るので、異常タイヤ状態が正常に復帰したものと判定さ
れ、ステップU4で、異常タイヤフラグF10がリセットさ
れ、ステップU5でばらつき継続時間カウンタTIMTがリセ
ットされ、ステップU6でタイマフラグFTIMTがリセット
され、この後メインルーチンに復帰してステップ#10
(第5図参照)が実行される。
一方、ステップU2での比較の結果、第1ばらつき度が
1.025以上であるか(NO)、またはステップU3での比較
の結果、第2ばらつき度が1.025以上であれば(NO)、
異常タイヤ状態が継続しているものと判定され、ステッ
プU7で差動制限量目標値Tagetに0がセットされた後、
メインルーチンに復帰してステップ#10(第5図参照)
が実行される。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明にかかる差動制限装置を備えた4輪駆
動車の動力伝達系統のシステム構成図である。 第2図は、湿式クラッチのディスクプレートの側面断面
説明図である。 第3図は、第2図に示すディスクプレートの正面説明図
である。 第4図は、第1図に示すディスクプレートの、フェーシ
ング材まわりの拡大側面断面説明図である。 第5図は、トルクスプリットコントローラによる差動制
限量制御のメインルーチンのフローチャートである。 第6図は、差動制限量制御の異常タイヤ検出ルーチンの
フローチャートである。 第7図は、差動制限量制御のフェイル検出ルーチンのフ
ローチャートである。 第8図(a),(b),(c)は、夫々、差動制限量制
御の通常走行時制御ルーチンのフローチャートである。 第9図は、差動制限量制御の差動制限量目標値決定ルー
チンのフローチャートである。 第10図は、差動制限量制御の通常制動時制御ルーチンの
フローチャートである。 第11図は、差動制限量制御の異常タイヤ復帰判定ルーチ
ンのフローチャートである。 第12図は、差動制限量目標値の、前・後輪間の回転数差
に対する特性を示す図である。 第13図は、前輪高回転側加速補正値の前後方向の加速度
に対する特性を示す図である。 第14図は、後輪高回転側加速補正値の前後方向の加速度
に対する特性を示す図である。 第15図は、前輪高回転側傾斜補正値の路面傾斜に対する
特性を示す図である。 第16図は、後輪高回転側傾斜補正値の路面傾斜に対する
特性を示す図である。 第17図は、エンジン負荷補正値のエンジン負荷に対する
特性を示す図である。 第18図は、エンジン負荷変化率補正値のエンジン負荷変
化率に対する特性を示す図である。 第19図は、ギヤ位置補正値のギヤ位置に対する特性を示
す図である。 第20図は、車輪加速度補正値の車輪加速度に対する特性
を示す図である。 第21図は、速度補正項の車速に対する特性を示す図であ
る。 第22図は、操舵角補正項の操舵角に対する特性を示す図
である。 第23図は、セットタイムの操舵角絶対値に対する特性を
示す図である。 第24図は、操舵角速度補正値の最大操舵角速度絶対値に
対する特性を示す図である。 第25図は、自動車旋回時における、操舵角の時間に対す
る特性を示す図である。 第26図は、自動車旋回時における、操舵角速度の時間に
対する特性を示す図である。 第27図は、自動車旋回時における、後輪高回転側操舵角
速度補正項の時間に対する特性を示す図である。 第28図は、路面抵抗補正項の最大加速度に対する特性を
示す図である。 第29図は、路面抵抗のスリップ率に対する特性を示す図
である。 第30図は、ブレーキ補正項のブレーキ踏み込み量(ブレ
ーキ油圧)に対する特性を示す図である。 第31図は、通常制動時における、操舵角補正項の操舵角
に対する特性を示す図である。 第32図は、前輪高回転側切片のブレーキ踏み込み量(ブ
レーキ油圧)に対する特性を示す図である。 第33図は、後輪高回転側切片のブレーキ踏み込み量(ブ
レーキ油圧)に対する特性を示す図である。 第34図は、ブレーキ踏み込み量(ブレーキ油圧)に応じ
て、前輪高回転側切片と後輪高回転側切片とを補正した
場合の、差動制限量目標値の前・後輪間回転数差に対す
る特性を示す図である。 WD……4輪駆動自動車、P……パワープラント、C……
湿式クラッチ、C1……トルクスプリットコントローラ、
C2……ABSコントローラ、C3……自動変速機コントロー
ラ、1……エンジン、2……自動変速機、6……センタ
デフ、11……フロントデフ、13……左前輪、15……右前
輪、17……リヤデフ、19……左後輪、22……右後輪、28
……油圧制御弁、33……ブーストセンサ、35〜38……第
1〜第4回転数センサ、41……トルクセンサ、42……傾
斜角センサ、43……加速度センサ、44……操舵角セン
サ、46……アクセルセンサ、47……キックダウンスイッ
チ、49……ブレーキセンサ、52……ベースプレート、53
……内側フェーシング材、54……外側フェーシング材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 憲一 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ ダ株式会社内 (72)発明者 亀田 修 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ ダ株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−154429(JP,A) 特開 平2−20445(JP,A) 特開 昭63−31826(JP,A) 実開 昭63−8428(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60K 17/00 - 17/36

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一方の車輪と他方の車輪とを差動させるデ
    ィファレンシャル装置と、ディファレンシャル装置の差
    動機能を制限するクラッチ手段と、クラッチ手段のクラ
    ッチ接続度を制御することによって差動制限量制御を行
    なう差動制限量制御手段とが設けられた車両の差動制限
    装置において、 一方の車輪の回転数と他方の車輪の回転数との間の回転
    数差を検出する回転数差検出手段と、 差動制限を行なわせる制御信号が差動制限量制御手段か
    ら出力された後、実際に差動制限動作が実行されるべき
    時間の経過後に、実際の上記回転数差と所定の基準回転
    数差とを比較する比較手段と、 該比較手段により実際の上記回転数差が、上記基準回転
    数差より大きいと判定されたときには、該差動制限装置
    をフェイルと判定するフェイル検出手段と、 該フェイル検出手段によってフェイルが検出されたとき
    には、クラッチ手段を、完全な接続状態と完全な切断状
    態のいずれか一方に強制的に作動させる強制作動手段と
    を備えたことを特徴とする車両の差動制限装置。
  2. 【請求項2】請求項1に記載された車両の差動制限装置
    において、 クラッチ手段のクラッチ板のフェーシング材が、摩擦力
    の小さい内側フェーシング材と、該内側フェーシング材
    を被覆する摩擦力の大きい外側フェーシング材とで形成
    されていることを特徴とする車両の差動制限装置。
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