JP3051261B2 - ガス検出システム - Google Patents

ガス検出システム

Info

Publication number
JP3051261B2
JP3051261B2 JP4143586A JP14358692A JP3051261B2 JP 3051261 B2 JP3051261 B2 JP 3051261B2 JP 4143586 A JP4143586 A JP 4143586A JP 14358692 A JP14358692 A JP 14358692A JP 3051261 B2 JP3051261 B2 JP 3051261B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
profile
gas
standard
standard profile
detection system
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP4143586A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH05312748A (ja
Inventor
明 塩入
隆司 山口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Figaro Engineering Inc
Original Assignee
Figaro Engineering Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Figaro Engineering Inc filed Critical Figaro Engineering Inc
Priority to JP4143586A priority Critical patent/JP3051261B2/ja
Publication of JPH05312748A publication Critical patent/JPH05312748A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3051261B2 publication Critical patent/JP3051261B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Fluid Adsorption Or Reactions (AREA)
  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Electric Means (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の利用分野】この発明はガスセンサの温度変化を
用いたガス検出システムに関し、特に温度変化に対する
ガスセンサ信号のプロファイルを標準プロファイルとし
て記憶し、測定したプロファイルと標準プロファイルと
の類似度からガスを検出するようにした、システムに関
する。
【0002】
【従来技術】金属酸化物半導体ガスセンサの温度を、例
えば50秒程度の周期でゆっくりとかつなだらかに変化
させると、ガス種毎に特徴のある温度変化のプロファイ
ルが得られることが知られている。このようにして得ら
れたセンサ信号のプロファイルに対して、各ガス毎の検
出条件を当てはめ、ガスを検出することが提案されてい
る。例えば5秒目と10秒目との間のセンサ信号が大き
く、15秒目と20秒目の間のセンサ信号が小さい場合
には、COが発生しているものとする等である。また5
秒目と10秒目との間のセンサ信号の大きさが中程度
で、15秒目と20秒目との間に大きなセンサ信号があ
る場合には、エタノールやアセトン等の有機溶剤が発生
しているものとする等である(半導体科学技術(SEMICO
NDUCTOR SCIENCE TECHNOLOGY) VOL.4, P.P.351-359,19
89)。このように各ガス毎に対する検出条件をマスクと
して定め、マスクに合致するセンサ信号のプロファイル
があれば、そのガスが発生したとするのである。このよ
うにすればガスセンサから1種類だけの信号を取り出す
場合に比べ、ガスの識別性が向上する。
【0003】これとは別に、例えば8種類のガスセンサ
を用い、8個のガスセンサ信号を組み合わせて、多数の
ガスを定性・定量することが提案されている(トランス
ヂューサー’85 (TRANSDUCERS '85) P.P.136-139,19
85)。この手法では、8個のガスセンサからの信号のプ
ロファイルをガス毎に記憶し、測定したプロファイルと
の類似度を判定して、最も近い標準プロファイルをピッ
クアップし、定性を行う。次いで測定したプロファイル
での最も大きなセンサ信号から、定量を行う。一般に最
も大きなセンサ信号は、測定対象のガスに最も高感度な
ガスセンサの信号である。
【0004】しかしながらいずれのガス検出システムに
おいても、次のような問題がある。第1に、ガスセンサ
信号のプロファイルは経時的にドリフトする可能性があ
る。例えば出荷時に想定した温度や湿度等の環境と実際
の使用環境での温度や湿度が異なれば、それによってガ
スセンサの特性はドリフトする。またガスセンサが経時
的に劣化すると、温度変化に対するガスセンサ信号のプ
ロファイルも変動する。
【0005】次の問題として混合ガスの問題がある。例
えば検出目標を、硫化水素やアンモニアを、エタノール
と区別して検出することとする。前記の従来技術では、
エタノールに対する標準プロファイルと、アンモニアや
硫化水素に対する標準プロファイルとを記憶させ、サン
プリングしたプロファイルがいずれに近いかを判定す
る。しかしながらこれでは混合ガスの識別には不十分で
ある。例えば硫化水素1ppmに対するガスセンサ信号
と、エタノール30ppmに対するガスセンサ信号とが同
程度の大きさとする。ここで硫化水素1ppmとエタノー
ル30ppmとの混合ガスが発生すると、センサ信号のプ
ロファイルは硫化水素の特徴とエタノールの特徴が混合
したものとなり、エタノールに対しても硫化水素に対し
ても、類似性の低いプロファイルが得られる。
【0006】サンプリングしたセンサ信号のプロファイ
ルを、複数の標準プロファイルと同時に比較し、複数の
標準プロファイルの重ね合わせで、サンプリングしたプ
ロファイルを説明することが考えられる。この手法で
は、標準プロファイルの重ね合わせで、混合ガスを処理
する。測定したプロファイルを最も良く説明できる標準
プロファイルの組合せで、検出結果を定める。しかしな
がらこのような類似度判定のアルゴリズムは複雑で、曖
昧さなしに短時間に解を求めることができるか否かは不
明である。
【0007】次に硫化水素1ppmとエタノール100ppm
とが、混合している状態を考える。この状態ではエタノ
ールに対する感度の方が硫化水素に対する感度よりも高
く、硫化水素に対するプロファイルはエタノールへのプ
ロファイルの中に埋没し、硫化水素への特徴は一部しか
残らなくなる。このような場合に単純な類似度判定を行
うと、硫化水素とエタノールとの混合ガスを単なるエタ
ノールと認識する可能性が高い。
【0008】
【発明の課題】この発明の課題は、 (1) ユーザーでの学習により、標準プロファイルの追
加を可能にし、(2) 検出アルゴリズムを用いるガスセ
ンサの種類や濃度等と独立させ、汎用性の高い、ガス検
出システムを提供することにある。
【0009】
【発明の構成】この発明のガス検出システムは、温度変
化に伴うガスセンサ信号の特徴から、ガスを検出するよ
うにしたガス検出システムにおいて、温度変化に対する
ガスセンサ信号のプロファイルを現すデータを、サンプ
リングし、記憶するための手段と、温度変化に対するガ
スセンサ信号のプロファイルを標準プロファイルとし
て、複数の雰囲気での標準プロファイルをそれに対する
検出結果と共に記憶するための手段と、サンプリングし
たプロファイルと標準プロファイルとの、類似度を求め
るための手段と、類似度の高い標準プロファイルに対す
る検出結果を基に、検出結果を定めるための手段と、サ
ンプリングしたプロファイルに、使用者の入力した検出
結果に関する情報を付加して、標準プロファイルとして
追加するための手段と、を設けたことを特徴とする。
【0010】
【発明の作用】温度変化に対するガスセンサ信号のプロ
ファイルは、経時的にドリフトする可能性が有り、その
安定性は未知の問題である。しかしながらユーザーに標
準プロファイルの追加を認め、ユーザー側でシステムに
学習させれば、プロファイルの経時変動の影響を除くこ
とができる。またユーザー側での学習を認めれば、検出
頻度が高い領域に対して多数の学習データを発生させる
ことになり、実際に検出が必要な領域に対して特に検出
精度を高めることになる。
【0011】好ましくは妨害ガスと検出対象ガスとの混
合ガスに対して標準プロファイルを用意する。すると、
妨害ガスと検出対象ガスの共存時の検出精度が向上す
る。これに対して、検出対象ガスと妨害ガスとに対する
標準プロファイルの重ね合わせで、共存ガスに対するプ
ロファイルを説明することも可能であるが、もっともら
しい重ね合わせのパターンが何組も発生し得ることか
ら、ガス検出に曖昧さが伴う。
【0012】さらにこの発明での動作アルゴリズムに
は、汎用性がある。ガスセンサの種類や、温度変化の
幅,上限温度と下限温度,温度変化速度は、検出対象ガ
スに密接に関係する。またユーザーとのインターフェー
スやセンサ信号のプロファイルの取り込み等の入出力
も、検出対象ガスや用途に依存する。しかしながらプロ
ファイルをサンプリングして、類似度を判定し、学習に
よって標準プロファイルを変更することは、ガスの種類
や用途とは独立している。従ってセンサの種類やその駆
動条件,入出力関係を除けば、この発明のガス検出シス
テムは用途や検出対象ガスから独立している。このため
1つのシステムを開発すれば、多種多様な用途に対応で
きる。
【0013】この発明では、温度変化に対するガスセン
サ信号のパターンをプロファイルとして記憶する。好ま
しくはプロファイルを規格化し、例えばセンサ信号の最
大値を1として規格化する。あるいはセンサ信号の和が
1となるように規格化する。規格化を行うのは、センサ
信号の大きさによって類似度の認識が影響を受けるのを
防止するためである。例えば100ppmのエタノールに
対するセンサ信号のプロファイルと、300ppmのエタ
ノールに対するセンサ信号のプロファイルはほぼ相似
で、大きさが異なる。ここで規格化せずに類似度を判定
すると、300ppmのエタノールに対するプロファイル
は濃度100ppmのプロファイルとは大きく異なり、と
もにエタノールに対するプロファイルであることを認識
できなくなる。センサ信号の大きさの影響を避けるため
に規格化を行い、センサ信号の大きさの絶対値とは無関
係にプロファイルの類似性を検出する。プロファイルの
規格化に伴い、好ましくはセンサ信号の絶対的大きさを
示す情報を標準プロファイルにタグとして記憶させる。
例えばプロファイルでのセンサ信号の最大値を1と規格
化する場合、センサ信号の最大値を記憶する。あるいは
プロファイルの特定の温度でのセンサ信号の大きさを、
センサ信号の大きさの標準値として記憶させても良い。
【0014】この発明では好ましくは、標準プロファイ
ルの他に、ガスの種類や濃度、測定時の絶対湿度、標準
プロファイルの測定日、標準プロファイルの優先度を示
すファクター、標準プロファイルの参照回数を示す値を
記憶させる。これらの情報を一括してタグ情報と呼ぶ。
タグ情報の内でガスの種類や濃度は、ガス種の同定と濃
度の判定に用いる。標準プロファイルの参照頻度や測定
日は、標準プロファイルの重要性の評価に用いる。例え
ば参照頻度の小さい標準プロファイルは、ガス検出シス
テムにおいて重要ではなく、標準プロファイルを入れ替
える際に削除する候補者となる。同様に古い標準プロフ
ァイルほど信頼性が小さく、プロファイルを入れ替える
際の参考となる。
【0015】タグ情報の内、優先度因子は類似度の判定
結果を修正するために用いられる。例えば優先度の高い
ガスに対しては、類似度の判定結果を修正してより類似
度を高く扱い、優先度の小さなガスに対しては、類似度
の判定結果を修正して類似度をより小さく扱う。これは
プロファイルを位相空間として考えた際に、曖昧なプロ
ファイルを優先度の高い標準プロファイルに引き込むこ
とである。例えば硫化水素とエタノールとを識別する場
合に、硫化水素に対して高い優先度を与えれば、硫化水
素かエタノールかが疑わしいプロファイルに対して、硫
化水素側にシフトさせた検出結果が得られる。この結果
硫化水素を見逃す確率が減少し、エタノールを見逃す確
率が増大する。そしてもし硫化水素の検出がシステムの
目的であり、硫化水素の発生を見逃すよりも硫化水素の
発生を確実に検出することが重要な場合、硫化水素側の
優先度を高くすれば良い。
【0016】タグ情報での優先度は別の用い方ができ
る。プロファイル中の全てのデータが同じ重要性を持つ
のではなく、例えばエタノールの検出であれば、エタノ
ールに固有なピークの部分が特に重要である。そこでプ
ロファイル中の各信号に重みを与えて、特徴的なピーク
等に高い優先度を与え、類似度判定に用いる。これによ
って例えばエタノールへの標準プロファイルであれば、
エタノールに固有の信号に高い優先度を与えた処理がで
きる。このような処理は、各温度でのセンサ信号をその
まま記憶させたプロファイルに限らず、例えば標準プロ
ファイルをフーリエ変換したデータ相互の比較で、類似
度判定を行う場合にも同様である。例えばエタノールに
関する標準プロファイルの場合、エタノールに固有なフ
ーリエ変換成分に高い優先度を与えて、フーリエ変換相
互の類似度を求めれば良い。
【0017】ガスセンサの特性は、湿度、特に絶対湿度
により変化し、温度変化に対するプロファイルにも湿度
の影響が現れる。そこで湿度によるプロファイルの変化
の影響を除くため、好ましくは各標準プロファイルに対
して測定時の湿度をタグ情報として記憶させる。特に検
出対象ガスに対して、好ましくは湿度の異なる条件での
標準プロファイルを用意する。このようにして湿度の影
響による、プロファイルの変化の影響を補正する。
【0018】標準プロファイルと比較すれば、ガス種の
識別ができる。次に定量が必要な場合、例えばガス種毎
にガス濃度とセンサ信号の大きさ(例えば規格化に用い
た、センサ信号のプロファイルでの最大値)との換算テ
ーブルを用意する。そしてこの換算テーブルを参照し、
ガス濃度を決定する。しかしながらプロファイルの形自
体が、ガス濃度によって変化する場合がある。例えば一
酸化炭素の場合、ガス濃度によってプロファイルが変化
する。そこで標準プロファイルを少なくとも検出対象ガ
スに対して複数枚(好ましくは3枚以上)用意し、標準
プロファイルを用いて直接ガス種とガス濃度とを決定す
ることが好ましい。
【0019】
【発明の効果】この発明では、 (1) ユーザーでの学習により、標準プロファイルを追
加でき、(2) 検出アルゴリズムが、用いるガスセンサ
の種類や濃度等と独立し、汎用性の高い、ガス検出シス
テムが得られる。
【0020】
【実施例】図1〜図8により、実施例のガス検出システ
ムを説明する。図1において、2は金属酸化物半導体を
用いたガスセンサで、4はそのヒータ、6はガス検出用
の金属酸化物半導体である。ガスセンサ2に好ましいも
のは熱時定数の短い小さなセンサで、好ましくは熱時定
数が1秒以下で、例えば温度変化の周期を1秒とし、3
周期温度変化させて、後半の2周期の信号を平均化して
温度変化に対するプロファイルを測定するものとする。
TGS109やTGS813等のガスセンサ(TGS1
09やTGS813は出願人のガスセンサの商品名)で
は熱時定数は数十秒で、温度変化を行う間にガス濃度が
変化し、プロファイルが乱れる可能性がある。金属酸化
物半導体ガスセンサ2に替えて、例えばプロトン導電体
や、ジルコニア等の固体電解質ガスセンサを用いても良
い。また接触酸化触媒による可燃性ガスの燃焼熱を検出
するようにした、接触燃焼式ガスセンサを用いることも
できる。ガスセンサ2は、ヒータ4によりその温度を変
化させることができるものであれば良い。RLは負荷抵
抗、T1はヒータ4の制御用のスイッチングトランジス
タ、8は電池電源である。電池8の出力をVDDとする。
【0021】10はマイクロコンピュータで、12はそ
のADコンバータ、14はヒータ4の制御回路、16は
標準プロファイルのメモリで、例えば10〜15枚程度
の標準プロファイルを記憶する。18は測定したプロフ
ァイルを記憶するためのメモリである。20は、ADコ
ンバータ12の出力から、センサ信号のプロファイルを
得るための、プロファイル解析手段である。22は、メ
モリ18に記憶した測定プロファイルと、メモリ16に
記憶した標準プロファイルとを比較し、類似度を判定す
るための類似度判定手段である。24は第1の入出力イ
ンターフェースで、例えば液晶ディスプレイ26を駆動
して、測定したガス種とその濃度とを表示する。28は
学習信号の入力用の入出力インターフェースで、タッチ
パネル30やキーボード、あるいはタッチボード等か
ら、ユーザーの学習を行う旨の入力を受け付け、ガス濃
度とガスの種類等のタグ情報の入力を受け付ける。
【0022】32はスイッチで、マイクロコンピュータ
10を通常モードとスタンバイモードとの間で使い分け
るために用いる。即ちスイッチ32をセットすると、マ
イクロコンピュータ10はスタンバイモードに置かれ、
データ保持以外の動作が打ち切られる。これに伴ってガ
スセンサ2のヒータ4をオフさせ、消費電力を節減す
る。スタンバイモードでのマイクロコンピュータ10の
消費電力は、メモリ16にデータを記憶させるための電
力であり、例えば1mW以下となる。そしてこの状態で
はガスセンサ2を駆動しないので、システム全体の消費
電力も1mW以下となる。そこで測定を行わない際には
ガス検出システムをスタンバイモードに置き、電池電源
8の寿命を増加させると共に、メモリ16に記憶させた
標準プロファイルが失われるのを防止する。
【0023】図1の実施例では、例えば4ビット・1チ
ップのマイクロコンピュータ10を前提に説明したが、
例えばフロッピーディスクドライブ付きのパーソナルコ
ンピュータや、フラッシュメモリ,ICカード等の補助
記憶を用いても良い。これらの補助記憶を用いれば、標
準プロファイルの記憶枚数に対する制限が緩和され、多
数の標準プロファイルを記憶させ、ガスの検出精度を向
上させることができる。
【0024】図1の実施例では、1個のガスセンサ2を
用いて温度変化させたが、例えばガスセンサ2の種類を
変えて、例えば5個等の複数個のガスセンサ2を用いて
も良い。この場合5個のガスセンサ2から5種の温度変
化のプロファイルを得て、検出の信頼性を向上させる。
この場合には、多数のガスセンサを1枚の基板上に集積
化して用いるのが、好ましい。
【0025】図2に、ガスセンサ2の温度変化のパター
ンを示す。ガスセンサ2の温度変化のプロファイルは、
方形波等の単純なパターンでも良いが、好ましくはサイ
ン波、ランプ波、鋸波等の、ガスセンサ温度を滑らかに
連続的に変化させるパターンを選ぶ。方形波でガスセン
サ2を加熱すると、ヒータ4の消費電力の立ち上がりに
伴い、ガスセンサ2の温度が急激に増加し、センサ温度
の増加に対するプロファイルが圧縮される。これに対し
てセンサ温度の冷却時の熱時定数は一般に長く、センサ
温度はゆっくりと変化する。このため方形波を加えて
も、冷却時のプロファイルはあまり圧縮されない。そこ
で実施例では図2の破線のように、鋸波状の消費電力を
ヒータ4に加える。このためにヒータ制御回路14で
は、スイッチングトランジスタT1にオンパルスを入力
し、オンパルスのデューティ比を図2の鋸波に一致させ
るように変化させて、ヒータ4に加える消費電力を図2
の鋸波のように変化させる。
【0026】図2の実線は温度変化に対するセンサ信号
のプロファイルの例を示し、ここでは金属酸化物半導体
6の電気伝導度σSを縦軸に示した。ガスセンサ2の温
度を連続的に、かつ滑らかにゆっくりと変化させる場
合、ガス毎に特徴的なプロファイルが得られることは公
知である。特に温度変化の速度は、検出目標ガスに固有
なピークが、妨害ガスのピーク中に埋没しないように選
ぶ。温度変化速度を小さくすると、ピーク間の分離度が
改善される。
【0027】標準データに対するプロファイルは、例え
ば図3のように規格化してメモリ16に記憶させる。図
3の場合、センサ信号の最大値、即ち左から2番目のセ
ンサ信号が1となるように規格化を行う。これに伴って
センサ信号の大きさの絶対値を示すため、左から2番目
のセンサ信号の大きさを振幅としてタグ情報に記憶させ
る。標準プロファイルの右側に、プロファイルに対する
タグ情報を示した。タグ情報は、メモリ16でプロファ
イルと特に連続した番地に記憶させる必要は無い。タグ
情報にはガスに関する2つの種類の情報、例えばここで
はガス種の硫化水素と、その濃度の例えばここでは1pp
mを記憶させる。ガスセンサ2の温度プロファイルは、
周囲の湿度、特に絶対湿度の影響を受ける。そこでここ
では、低湿,中湿,高湿の3段階にわたって湿度を記憶
させる。ここでは中程度の湿度で測定したので、中湿で
あることをタグ情報に記録する。
【0028】タグ情報のPは優先度因子である。優先度
因子Pの第1の役割は、センサ信号のプロファイルに対
する位相空間を歪ませ、重要なガスに対しては類似度を
見かけ上高めて、そのガスを見逃す確率を減少させるこ
とである。また優先度因子Pは、標準プロファイルの入
れ替えにも用いられる。即ち優先度因子Pの低い標準プ
ロファイルほど入れ替えの候補者となる確率を高くし、
優先度因子Pの高い標準プロファイルほど削除されずに
長くメモリ16に留まる確率が増すようにする。タグ情
報に示したNは、その標準プロファイルへの参照回数を
示す変数である。例えば実施例では、1回の検出毎に最
も類似度の高い2枚の標準プロファイルを利用する。そ
こでこれらの2枚の標準プロファイルが参照されたと
し、Nをそれぞれ1ずつ加算する。標準プロファイルの
中には、学習させたのみで実際には1度も参照されない
プロファイルも加えられているであろう。またある標準
プロファイルは繰り返し頻繁に参照されるであろう。標
準プロファイルの数が無条件に増加することを認める
と、1チップマイクロコンピュータや、小規模なメモリ
を接続したマイクロコンピュータの場合、メモリ16が
オーバーフローする。そこで参照頻度の低い標準プロフ
ァイルほど重要性が低いものと見なし、標準プロファイ
ルを入れ替える際の削除の候補者とする。
【0029】タグ情報の最後のTは、その標準プロファ
イルの入力日である。入力日が古いほど標準プロファイ
ルの信頼性が低く、入力日が新しいほど信頼性が高いと
考えられる。これも標準プロファイルの削除で、削除の
候補者を探すために用いることができる。
【0030】図3では、プロファイル中での最大のセン
サ信号を1として規格化した。しかしプロファイルでの
センサ信号の和が1となるように、規格化しても良い。
これらの規格化はセンサ信号の大きさに無関係なプロフ
ァイルを取り出すことであり、センサ信号の大きさが変
動してもプロファイル相互の類似性が失われないように
するためのものである。
【0031】これ以外に、例えばバックグラウンドガス
(清浄空気等)のプロファイルを基に、規格化しても良
い。この場合例えば、清浄空気中で最大のセンサ信号が
得られる点を考え、その点でのセンサ信号を1として規
格化する。そして各ガスのプロファイルに対し、清浄空
気でのプロファイル中の最大のセンサ信号との比を標準
プロファイルに用いる。あるいはまた各ガスに対する標
準プロファイルの各点を、清浄空気中に対する標準プロ
ファイルの各点との比で規格化する。例えばガス中の標
準プロファイルを(A1〜AN)、清浄空気中での標準プ
ロファイルを(B1〜BN)とすると、(A1/B1,A2
/B2,A3/B3,〜,AN/BN)を、規格化済みの標
準プロファイルとする。このような標準プロファイル
は、清浄空気中のプロファイルを基に規格化するので、
清浄空気からの僅かなプロファイルの変化を検出する場
合に優れている。しかしながらガス中での標準プロファ
イルの大きさは、規格化されないことになる。このため
ガス濃度が変化してプロファイルが相似変形すると、類
似度の判定が困難になる。
【0032】ここでは図2、図3のようなセンサ信号の
プロファイルを用いたが、例えばセンサ信号のプロファ
イルをフーリエ変換して用いても良い。フーリエ変換し
たプロファイルは図2や図3のセンサ信号のプロファイ
ルと等価であり、図2や図3のプロファイルをフーリエ
変換すればフーリエ変換のプロファイルが得られ、これ
を逆フーリエ変換すれば図2や図3のプロファイルに戻
すことができる。
【0033】図4に、メモリ16での標準プロファイル
の配置の例を示す。1枚の標準プロファイルの規模は、
ガスセンサ信号を8ビットでAD変換し、8点に対して
プロファイルを記憶させると、1個の標準プロファイル
に対して8バイトのメモリが必要となる。またタグ情報
に、例えば4バイトの情報を割り当てる。すると1枚の
標準プロファイルに、例えば12バイトのメモリが必要
となる。
【0034】図4に示すように、標準プロファイルは例
えば最大で15枚記憶できるようにする。このうち10
枚は、出荷時までに学習させて記憶させる。残る5枚は
ユーザーでの学習領域である。出荷時までに入力した標
準プロファイルと、ユーザーが学習させた標準プロファ
イルとを区別し、例えば図4の場合、学習による標準プ
ロファイルはカード11〜15の5枚に制限し、出荷時
の標準プロファイルの削除を禁止しても良い。しかしな
がら実施例では、出荷時までに記憶させた標準プロファ
イルでも、その後のガスセンサ2の経時的変化により信
頼性を失う点を考慮し、15枚の標準プロファイルをす
べて同等に扱い、出荷前に記憶させた標準プロファイル
でも削除し得るようにした。この結果、15枚の標準プ
ロファイルの記憶に必要なメモリの規模は、15×12
の例えば180バイトとなる。これは、4ビット・1チ
ップマイクロコンピュータの上位機種で実現できるメモ
リ容量である。
【0035】標準プロファイルの内容は、例えば硫化水
素を検出対象ガスとする場合、中程度の湿度に対し硫化
水素の濃度を0.3ppmから3ppmに変化させた3枚(カ
ード1〜カード3)と、1ppmの硫化水素に対し絶対湿
度を湿潤状態(カード4)と乾燥状態(カード4)とに
変化させた2枚、清浄空気(バックグラウンドガス)に
対する標準プロファイルを記憶させたカード6の6枚を
割り当てる。これ以外に妨害ガスとしてのエタノールや
アンモニアに、ガード8,9の2枚を割り当てる。さら
にエタノールと硫化水素の混合ガスに対してカード7
を、アンモニアと硫化水素の混合ガスに対してカード1
0を割り当てる。メモリ16の規模が許す場合、標準プ
ロファイルの枚数をさらに増加させることが好ましい。
【0036】図4に、優先度因子Pの例を示した。ここ
では硫化水素中のプロファイルに対して最も高い優先度
因子例えば1.5を割り当て、清浄空気に対しては1.0
の優先度を割り当て、硫化水素を含む混合ガスに対して
は優先度1.2を割り当てた。妨害ガスのエタノールや
アンモニアに対しては、最も低い優先度0.8を割り当
てた。この結果、類似度判定において硫化水素を含む標
準プロファイルとの類似度を増加させ、硫化水素を見逃
さない側に類似度の判定をシフトさせるようにした。
【0037】図5に実施例の動作アルゴリズムを示す。
ヒータ制御回路14は、実効電力が図2の破線になるよ
うにデューティ比を変えて、スイッチングトランジスタ
T1にオンパルスを送る。これによって金属酸化物半導
体6の温度は滑らかにかつ連続的に変化する。そしてセ
ンサ信号をADコンバータ12でAD変換し、温度変化
に対するセンサ信号のプロファイルを入力する。
【0038】入力されたプロファイルをプロファイル解
析手段20で規格化し、メモリ18に一時的に記憶させ
る。規格化は例えば、得られたプロファイル中の最大の
信号が得られる点を1とし、その点の信号で他の点の信
号を割り算して規格化する。また割り算に用いた信号は
タグ情報に記憶させる。
【0039】類似度判定手段22では、メモリ16に記
憶させた多数の標準プロファイルと、メモリ18に記憶
させたプロファイルとの類似度を判定し、例えば最も近
い2枚の標準プロファイルを取り出す。プロファイルの
類似度判定には、例えば周知の最小2乗法を用いる。そ
して最小2乗法誤差が最小となる標準プロファイルが最
も類似度の高いプロファイルとし、最小2乗法誤差に従
って類似度を定める。ここではプロファイルの全体を用
いて類似度を判定したが、プロファイルの一部のみを用
いても良い。このような場合、ガス毎のプロファイルの
特徴が生じる部分に着目し、その部分だけについて最小
2乗法等により類似度を判定する。
【0040】センサ特性の変化によりプロファイルが左
右にシフトする、即ちセンサの温度特性がシフトするこ
とに備え、相関関数を用いて類似度を判定しても良い。
例えば測定したプロファイルをF(T),標準プロファ
イルをG(T)とする(Tは温度)。変数hを導入し、
F(T)とG(T+h)との最小2乗法誤差等をhを変
えながら演算し、誤差が最小となるhを求める。この誤
差にhの関数であるX(h)を加えたものを、類似度判
定での誤差とする。これはセンサ特性のドリフトにより
プロファイルが温度h分だけ左右にシフトした際への処
置であり、求めた誤差にX(h)を加えるのは温度h分
だけ標準プロファイルをシフトさせて類似度判定したこ
とに対するファクタである。
【0041】類似度判定における、優先度因子Pを図6
に示す。図6はプロファイルに対する位相空間を現し、
例えば10点でのプロファイルを求めるものとすると、
位相空間は10次元の空間となる。図の丸印の3点が最
小2乗法判定で類似性の高い3つの標準プロファイルと
する。また中央の+マークの点が、測定したプロファイ
ルとする。D1,D2,D3を最小2乗法で求めた誤差と
し、P1,P2,P3を各標準プロファイルの優先度とす
る。
【0042】優先度による補正を行わない図の実線の場
合、測定したプロファイルは優先度がP2,P3の標準プ
ロファイルのほぼ中央にある。しかしここで優先度の順
序をP1>P2>P3とすると、最小2乗法誤差を優先度
で割ることにより位相空間が歪み、測定したプロファイ
ルは図の破線の位置へシフトする。この結果測定したプ
ロファイルは、優先度がP1とP2の標準プロファイルの
中間に現れる。
【0043】この処理は次のような意味を持つ。例えば
標準プロファイル(優先度P1)が硫化水素に対するプ
ロファイルで、標準プロファイル(優先度P2)が硫化
水素とエタノールの混合ガスへのプロファイルで、標準
プロファイル(優先度P3)がエタノールへのプロファ
イルとする。図6の実線での生の測定データは、測定し
たガスがエタノールを主とし硫化水素が一部混合したガ
スであることを示唆している。しかしこれを優先度因子
Pで図の破線のようにシフトさせ、硫化水素を主としエ
タノールを一部含む混合ガスとして検出する。これは2
種類のガスが混合すると、プロファイルの特徴が崩れ、
ガス種の識別が困難になることを考慮したものである。
そしてこのような信頼性の低い検出に対しては、検出目
標のガスを見逃すよりも、たとえ誤報であるとしても見
逃さない方向に、検出結果をシフトさせる。
【0044】図5に戻り、実施例の動作を説明する。類
似度判定手段22で例えば最小2乗法により、2枚の最
も近い標準プロファイルを求め、それを基にガスの種類
と濃度とを決定する。ガス種の同定とガス濃度の決定機
構を図7に示す。例えば図7に示すように、最も近い標
準プロファイルがカード1の硫化水素1ppmで、その優
先度Pが1.5、最小2乗法誤差が0.1とする。2番目
に近い標準プロファイルがカード2の硫化水素3ppm
で、優先度Pが1.8、最小2乗法誤差が0.2とする。
実際には同種のガスに対しては濃度によらず優先度を一
定とすることが好ましいが、ここでは優先度Pの役割を
説明するため、硫化水素1ppmと3ppmとで優先度Pを変
化させた。硫化水素1ppmと3ppmとが最も近い標準プロ
ファイルであることから、検出したガスを硫化水素とす
る。最も近い2枚の標準プロファイルが、硫化水素単独
と硫化水素とエタノールとの混合ガスであれば、検出対
象ガスは硫化水素を主としエタノールを一部含むガスと
なる。
【0045】ガス濃度は、2枚の標準プロファイルのタ
グに記載したガス濃度を、最小2乗法誤差で内分あるい
は外分することで定める。図6で優先度Pにより位相空
間を歪ませたのと同様に、最小2乗法誤差と優先度Pと
の比で内分する。内分の条件は例えば、(D1/P1)/
(D1/P1+D2/P2)とする。このようにして、例え
ば1ppmと3ppmとの間の硫化水素に対し、最小2乗法誤
差Dと優先度Pとを組み合わせて、硫化水素1.75ppm
とする。仮に硫化水素とエタノールとの混合ガスの場
合、標準プロファイルに記載された硫化水素濃度とエタ
ノール濃度とに対して同様の内分を行い、エタノールと
硫化水素の各々の濃度を決定する。
【0046】ここでは無条件に2枚の標準プロファイル
を参照した。しかしながら参照する標準プロファイルの
枚数を、例えば3枚としても良い。次に各標準プロファ
イルに対して最小半径を定め、位相空間内で標準プロフ
ァイルから最小半径内の測定プロファイルに対しては、
無条件に標準プロファイルと同一のプロファイルと見な
しても良い。これはセンサ信号のプロファイルのランダ
ム変動の幅を最小半径とし、この半径内に入る測定プロ
ファイルに対しては標準プロファイルとの差を単なるノ
イズと見なし、測定プロファイルを標準プロファイルと
一致させるのである。
【0047】図7では、ガス濃度を2枚の標準プロファ
イルを参照して決定した。しかしながらガス濃度を、別
のアルゴリズムで決定することが可能である。まず図
5,図7と同様にして、ガスの種類を決定する。そして
そのガスに対して最も特徴的なセンサ信号の大きさを、
測定したプロファイルから取り出す。この大きさは通常
は、プロファイルでのセンサ信号の最大値となる。ガス
毎に、センサ信号の最大値とガス濃度との換算テーブル
を用意する。換算テーブルの分解能の不足は、図7と同
様に内分等により補う。そしてガスの種類を決定する
と、この換算テーブルを参照してガス濃度を定める。
【0048】ガスの種類と濃度とが定まると、入出力2
4を介して、液晶ディスプレイ26に測定結果を表示す
る。ユーザーがこの結果に満足した場合、あるいはユー
ザーがこの結果が誤りであることを知っている場合、例
えばユーザーがシステムを較正したい場合、ユーザーは
タッチパネル30から学習を行う旨を入力する。液晶デ
ィスプレイ26に示した検出結果が正しい場合、検出結
果を追加しようとする標準プロファイルのタグ情報に用
いる。液晶ディスプレイ26に表示した検出結果をユー
ザーが正しくないと考える場合、ユーザーはタッチパネ
ル30からガスの種類,濃度,湿度の高中低を入力す
る。この学習信号は入出力インターフェース28を通じ
てシステムに入力され、メモリ18に蓄えられたプロフ
ァイルにタグ情報として追加され、標準プロファイルと
してメモリ16に記憶される。
【0049】小規模なシステムでは、学習を重ねるとメ
モリ16の容量が不足する。例えば図4のシステムで
は、学習用の空き領域は5枚しかなかった。そこで不要
となった標準プロファイルを選び出し、削除する手続き
が必要となる。この手続きを図8に示す。
【0050】標準プロファイルの削除では、まずタグ情
報に関して最も近いプロファイルを探す。例えば追加し
ようとする標準プロファイルが硫化水素で1.5ppmとす
る。すると図4の場合、これに最も近い標準プロファイ
ルは硫化水素1ppmである。次に追加しようとする標準
プロファイルと、波形に関して最も類似度の高い既存の
標準プロファイルを探す。この検出では優先度Pを逆に
用い、優先度Pが高いほど類似度が低く現れるようにす
る。即ち図6の場合、最小2乗法誤差をD、優先度をP
とするとD/Pにより類似度判定誤差を求めた。しかし
図8の場合には、この逆にD×Pで類似度判定誤差を求
める。これは重要な検出対象に対しては、より多くの標
準プロファイルが残るようにするためである。最後に標
準プロファイルのタグ情報をチェックし、参照回数が最
も少ない標準プロファイルを選び出す。このようにして
例えば3枚の削除すべき候補者が得られる。この中から
どのプロファイルを削除するかの条件は、例えばマップ
等に定めておく。例えば3つの因子に重みをマップで定
めておき、3つの因子に重みを乗じたものの和が最大の
標準ファイルを削除する。これはシステムに重要なプロ
ファイルほど、生き残る確率を高くすることである。そ
して1枚の標準プロファイルを削除すると、それと入れ
替えに新たな標準プロファイルを追加する。追加した標
準プロファイルは多くの場合、タグ情報あるいはプロフ
ァイルの波形が、削除した標準プロファイルと類似する
であろう。そこでタグ情報での参照頻度の初期値に、削
除したプロファイルの参照頻度を受け継がせる。これは
追加直後の標準プロファイルは参照頻度が低く、参照頻
度の初期値を1とすると、次の入れ替えで削除される確
率が高いためである。
【0051】実施例の動作を説明する。ガスセンサ2の
温度を滑らかにかつ連続的に変化させ、例えば10点程
度に対するセンサ信号のプロファイルを得る。ノイズを
除くため、好ましくはセンサ温度を2〜3周期繰り返し
変化させ、プロファイルを平均化して処理する。測定し
たプロファイルをメモリ16に記憶させた標準プロファ
イルと比較し、最小2乗法誤差が最小となる2枚の標準
プロファイルを選び出す。ここで優先度Pを用い、ガス
の見逃しと誤報との確率を修正し、より重要なガスに対
しては見逃し確率を低下させる。これはプロファイルに
対する位相空間を歪ませる手続きである。類似度が最も
高い2枚の標準プロファイルが得られると、これらのデ
ータを内分あるいは外分し、ガス種とガス濃度とを決定
する。
【0052】ガスセンサの特性は経時的にドリフトする
可能性がある。これを補うために学習を行う。ユーザー
は測定したプロファイルに対して、ガス種とガス濃度と
を指定できる。そしてこのデータをタグ情報として、測
定したプロファイルを標準プロファイルに追加する。こ
のため使用頻度の最も少ない標準プロファイル、また追
加しようとする標準プロファイルと位相空間上での距離
が小さい標準プロファイル、あるいは追加しようとする
標準プロファイルとタグ情報が類似するプロファイルか
ら削除の候補者を定め、不要となった標準プロファイル
を削除する。
【0053】ガスセンサの特性は周囲の湿度、特に絶対
湿度により変化する。そこで絶対湿度の影響を小さくす
るため、少なくとも検出対象のガスに対する標準プロフ
ァイルには絶対湿度を変えて複数のプロファイルを用意
し、絶対湿度の変動による検出誤差を小さくする。
【0054】センサ信号のプロファイルは、2種類のガ
スが混合すると、元の各々のガスのプロファイルとは異
なったものとなる。この問題を処理するため、検出対象
ガスと妨害ガスとの混合ガスに対するプロファイルを、
標準プロファイルとして記憶させる。
【0055】
【実施例2】図9,図10に、ファジー制御の概念を取
り入れたガス検出システムを示す。例えば検出の目的
が、魚の鮮度の判定にあるとする。ユーザーはスーパー
マーケットの店員、あるいは魚屋の従業員か主人を想定
し、店員の少なくとも一人は嗅覚で魚の鮮度を判定し得
るものとする。アンモニアやメチルアミン、アニリン等
のガス濃度が、魚の腐敗の進行とともに増加することが
知られている。そこでガスセンサ2はアンモニアやアミ
ン,アニリン等のセンサとする。この場合の妨害ガス
は、エタノールやアセトン、アルデヒド等である。
【0056】スーパーマーケットの店員や魚屋の主人に
とって、アンモニアやアミンの濃度自体は意味が無い。
またこれらのユーザーは、アンモニア濃度やアミン濃度
を判定して、学習信号をシステムに入力する能力がな
い。これらのユーザーにとって重要なのは魚の鮮度であ
り、魚の鮮度を見分けシステムに学習させる能力を備え
ている。そこで標準プロファイルのタグ情報はガスの種
類と濃度ではなく、単純に魚の鮮度とする。例えば鮮度
高,鮮度低,腐敗の3ランクの鮮度を、タグ情報とす
る。なおタグ情報の他の部分(信号の大きさや優先度因
子、使用頻度、測定日等)は、図3と同様とする。検出
のアルゴリズムは、最初の実施例の場合と同様とする。
【0057】実施例1との相違点は、ファジーな処理を
行ったので、例えば同じ新鮮というランクであっても、
プロファイルには種々雑多なものが含まれ得ることであ
る。例えば清浄空気中で新鮮という場合のセンサ信号の
プロファイルと、アンモニアやアミン類はないがエタノ
ールが存在するとのプロファイルは、ファジー信号とし
ては共に新鮮というデータを示している。そこで類似度
の判定では、測定したプロファイルに最も近い、例えば
3個あるいは4個の標準プロファイルを求める。これら
のプロファイルがいずれも新鮮という共通したタグ情報
を示していれば、これを出力する。最も近い標準プロフ
ァイルの中で、例えば新鮮というものと鮮度低下という
ものが共存していれば、新鮮を示す標準プロファイルの
数と鮮度低下の標準プロファイルの数に応じて、メンバ
ーシップ関数を参照し、出力を定める。メンバーシップ
関数は、例えば多数決論理で、曖昧度に応じて、答えを
定めるようにする。
【0058】このように実施例は、ファジー制御に対し
ても容易に適応できる。その場合に必要なことは、標準
プロファイルのタグ情報をガス種とその濃度から、ユー
ザーにとって必要な検出結果そのものに変更することで
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例のガス検出システムのブロック図
【図2】 実施例のガス検出システムでの、ヒータ電
力の変化プロファイルと、温度変化に伴うガスセンサ信
号のプロファイルを示す特性図
【図3】 実施例のガス検出システムでの、標準カー
ドに記憶したガスセンサ信号のプロファイルとタグ情報
とを示す図
【図4】 実施例のガス検出システムでの、検出目標
ガスと妨害ガス、共存ガスに対する、標準カードの配置
を示す図
【図5】 実施例のガス検出システムの、動作アルゴ
リズムを示すフローチャート
【図6】 実施例のガス検出システムでの、ガスセン
サ信号のプロファイルに対する位相空間と、優先度因子
Pを用いた優先的検出目標への引き込みを示す特性図
【図7】 実施例のガス検出システムでの、類似度の
高い2枚の標準カードからの、ガス濃度の決定メカニズ
ムを示す図
【図8】 実施例のガス検出システムの、学習による
標準カードの追加と不要なカードの削除を示すフローチ
ャート
【図9】 実施例のガス検出システムでの、標準カー
ドに記憶したガスセンサ信号のプロファイルと、ファジ
ーなタグ情報とを示す図
【図10】 ファジーなタグ情報を用いた実施例のガス
検出システムでの、ガスセンサ信号のプロファイルに対
する位相空間と、ガス種の判定メカニズムを示す特性図
【符号の説明】
2 ガスセンサ 4 ヒータ 6 金属酸化物半導体 RL 負荷抵抗 T1 スイッチングトランジスタ 8 電池電源 10 マイクロコンピュータ 12 ADコンバータ 14 ヒータ制御回路 16 標準プロファイルのメモリ 18 測定プロファイルのメモリ 20 プロファイル解析手段 22 類似度判定手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−198446(JP,A) 特開 昭58−189547(JP,A) 特開 平3−163343(JP,A) 特開 平1−311261(JP,A) 特開 昭59−153159(JP,A) 特開 平2−22550(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/04 G01N 27/12

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 温度変化に伴うガスセンサ信号の特徴か
    ら、ガスを検出するようにしたガス検出システムにおい
    て、 温度変化に対するガスセンサ信号のプロファイルを現す
    データを、サンプリングし、記憶するための手段と、 温度変化に対するガスセンサ信号のプロファイルを標準
    プロファイルとして、複数の雰囲気での標準プロファイ
    ルをそれに対する検出結果に関する情報と共に記憶する
    ための手段と、 サンプリングしたプロファイルと標準プロファイルと
    の、類似度を求めるための手段と、 類似度の高い標準プロファイルに対する検出結果に関す
    る情報を基に、検出結果を定めるための手段と、 サンプリングしたプロファイルに、使用者の入力した検
    出結果に関する情報を付加して、標準プロファイルとし
    て追加するための手段と、 を設けたことを特徴とするガス検出システム。
  2. 【請求項2】 前記標準プロファイルが、検出対象ガ
    ス,妨害ガス,検出対象ガスと妨害ガスの混合ガス,バ
    ックグラウンドガスの少なくとも4種のガスに対するプ
    ロファイルであることを特徴とする、請求項1に記載の
    ガス検出システム。
  3. 【請求項3】 標準プロファイルを記憶するための手段
    に空きが無い際に、記憶済みの標準プロファイルの少な
    くとも1つを削除するための手段を設けたことを特徴と
    する、請求項1に記載のガス検出システム。
  4. 【請求項4】 標準プロファイルの記憶手段では、検出
    結果に関する情報以外に、各標準プロファイルの使用頻
    度を記憶するようにし、 標準プロファイルの削除手段では、各標準プロファイル
    の使用頻度と、追加しようとする標準プロファイルとの
    検出結果に関する情報の類似度、追加しようとする標準
    プロファイルとのプロファイルの類似度、の3種の情報
    の内の少なくとも1つの情報を用いて、削除する標準プ
    ロファイルを定めるようにしたことを特徴とする、請求
    項2に記載のガス検出システム。
  5. 【請求項5】 標準プロファイルを規格化することを特
    徴とする、請求項1に記載のガス検出システム。
  6. 【請求項6】 規格化は、標準プロファイル中の最大の
    信号を1として行うことを特徴とする、請求項5に記載
    のガス検出システム。
  7. 【請求項7】 標準プロファイルを、検出対象ガスに対
    し、その濃度を異ならせて、複数記憶させることを特徴
    とする、請求項1に記載のガス検出システム。
  8. 【請求項8】 標準プロファイルを記憶するための手段
    には、検出結果に関する情報の他に、優先度に関する情
    報を記憶させ、 類似度の判定では、優先度により類似度を修正するよう
    にしたことを特徴とする、請求項1に記載のガス検出シ
    ステム。
  9. 【請求項9】 標準プロファイルを記憶するための手段
    には、検出結果に関する情報として、ガス種とガス濃度
    とを記憶させるようにしたことを特徴とする、請求項1
    に記載のガス検出システム。
  10. 【請求項10】 標準プロファイルを記憶するための手
    段には、検出結果に関する情報として、ファジーなデー
    タを記憶させるようにしたことを特徴とする、請求項1
    に記載のガス検出システム。
  11. 【請求項11】 標準プロファイルを記憶するための手
    段には、少なくとも検出対象ガスに対して、絶対湿度の
    異なる複数の標準プロファイルを記憶させるようにした
    ことを特徴とする、請求項1に記載のガス検出システ
    ム。
  12. 【請求項12】 標準プロファイルを記憶するための手
    段では、標準プロファイルに対し、プロファイル中の位
    置により異なる重み因子を持たせることを特徴とする、
    請求項1に記載のガス検出システム。
JP4143586A 1992-05-07 1992-05-07 ガス検出システム Expired - Fee Related JP3051261B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4143586A JP3051261B2 (ja) 1992-05-07 1992-05-07 ガス検出システム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4143586A JP3051261B2 (ja) 1992-05-07 1992-05-07 ガス検出システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH05312748A JPH05312748A (ja) 1993-11-22
JP3051261B2 true JP3051261B2 (ja) 2000-06-12

Family

ID=15342184

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4143586A Expired - Fee Related JP3051261B2 (ja) 1992-05-07 1992-05-07 ガス検出システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3051261B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4592195B2 (ja) * 2001-02-15 2010-12-01 フィガロ技研株式会社 ガス検出方法及びその装置
JP4704591B2 (ja) * 2001-03-30 2011-06-15 東京瓦斯株式会社 火災検知装置
JP4013705B2 (ja) * 2002-09-02 2007-11-28 株式会社島津製作所 におい測定装置
JP5517963B2 (ja) * 2011-02-10 2014-06-11 富士電機株式会社 ガス検知装置
AT513674B1 (de) * 2012-11-28 2014-08-15 Fronius Int Gmbh Verfahren und Vorrichtung zum Überwachen des Schutzgases bei einem Schweißprozess
US10697912B2 (en) * 2017-07-21 2020-06-30 Riken Keiki Co., Ltd. Gas detection method and gas detector
JP6465190B2 (ja) * 2017-10-31 2019-02-06 株式会社島津製作所 質量分析方法及び質量分析装置
JP7371906B2 (ja) * 2019-12-20 2023-10-31 東海電子株式会社 ガス分析システムおよびプログラム
JP6901038B1 (ja) * 2020-05-29 2021-07-14 I−Pex株式会社 匂い検出装置、匂い検出方法及びプログラム
KR102259171B1 (ko) * 2020-12-15 2021-06-02 (주)센코 전기화학식 가스 센서

Also Published As

Publication number Publication date
JPH05312748A (ja) 1993-11-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3051261B2 (ja) ガス検出システム
Stetter et al. Detection of hazardous gases and vapors: pattern recognition analysis of data from an electrochemical sensor array
Lachapelle A proposed relevance scoring system for positive allergic patch test reactions: practical implications and limitations
US6055849A (en) Gas detector and its adjusting method
CN107765960B (zh) 一种信息提示方法、装置及存储介质
ATE156614T1 (de) Verfahren und vorrichtung zum bestimmen, registrieren und fallweisen auswerten von betriebs- und/oder fahrdaten eines fahrzeuges
US20050047633A1 (en) Method for comparison of a test fingerprint, which is in the form of an image strip sequence, with a stored reference fingerprint, and a suitable apparatus for carrying out the method
WO2017038889A1 (ja) ガス分析システム、及び、ガス分析方法
Ionescu et al. Dealing with humidity in the qualitative analysis of CO and NO2 using a WO3 sensor and dynamic signal processing
US7680607B1 (en) System and method for gas recognition by analysis of bispectrum functions
JP3174188B2 (ja) ガス識別装置
JP4000498B2 (ja) ガス検出方法
JP2867474B2 (ja) ガス検出方法
JP4592195B2 (ja) ガス検出方法及びその装置
JP2791476B2 (ja) ガス検出装置
CN112580741A (zh) 一种基于多传感器快速学习的气体种类识别方法及系统
Gottlob et al. Directed forgetting in the list method affects recognition memory for source
JP3174186B2 (ja) ガス識別装置
JPH07501145A (ja) ガス混合物中の少量の一酸化炭素および窒素酸化物を測定する方法
JPH11142313A (ja) 物質濃度の定量化方法、物質濃度検出装置および記録媒体
JPH06242038A (ja) ガス識別装置
US5206598A (en) Isothermal capacitance transient spectroscopy method and apparatus
US11879943B1 (en) Method and apparatus for predicting failure of a component
JPH07225777A (ja) 点検周期の決定方法及び装置
JPH1019597A (ja) 波形記録計の波形判定方法

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees