JP3045041B2 - 加圧流動床燃焼プラント用ガスタービン及びそのタービン経年劣化検知方法 - Google Patents

加圧流動床燃焼プラント用ガスタービン及びそのタービン経年劣化検知方法

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JP3045041B2
JP3045041B2 JP7131407A JP13140795A JP3045041B2 JP 3045041 B2 JP3045041 B2 JP 3045041B2 JP 7131407 A JP7131407 A JP 7131407A JP 13140795 A JP13140795 A JP 13140795A JP 3045041 B2 JP3045041 B2 JP 3045041B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加圧流動床燃焼プラン
ト用ガスタービン及びそのタービン経年劣化検知方法に
係わり、特にダスト堆積及びエロージョンが発生した場
合にも適用できる加圧流動床燃焼プラント用ガスタービ
ン及びそのタービンの経年劣化検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のガスタービンの場合、タービンの
入口圧力及びタービンの入口温度は、高圧化,高温化し
ているため計測が困難な面があり、タービンの入口圧力
及びタービンの入口温度の計測は通常行われていなく、
タービンの入口圧力及びタービンの入口温度を計算によ
り求めて予測しているため誤差が大きい。タービン効率
の計算にはタービンの入口温度及び圧力が必要である
が、計算で予測しているため、その不正確な値からター
ビン効率を算出してタービンの経年劣化を推定するの
は、誤差が大きく正確な経年劣化が検出できにくいとい
う問題がある。
【0003】又、通常のガスタービンでは、このような
ダストの堆積及びエロージョンが少ないため、圧力比,
スラスト軸受メタル温度を計測してもそれをタービンの
経年劣化検知方法としては使用していなかった。また、
ダストの堆積及びエロージョンによるタービンノズルの
流路部スロート面積変化を具体的に算出するには、ター
ビン入口での修正流量を計算する必要があるが、このタ
ービン入口修正流量の計算に必要なタービンの入口圧力
及びタービンの入口温度は複雑な計算から間接的に得る
ため正確さに欠く難点がある。
【0004】従来のガスタービンの寿命監視システムと
しては、特開平2−294525 号公報,特開平2−157428 号
公報に記載のように、タービンの燃焼ガス温度,回転速
度,圧縮機の吐出圧力等の運転状態量より、低サイクル
疲労及びき裂発生寿命を推定するものがある。又、特開
平1−178730 号公報に記載のように、燃焼器での燃焼ガ
ス温度を推定する燃焼ガス温度推定器と、タービン翼に
燃焼ガスの浮遊物の堆積量測定器とを備え、これらの測
定値に基づいて、入口可変静翼の開度と燃料流量を制御
する制御装置が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】加圧流動床燃焼プラン
ト(以下PFBCプラントという)においては石炭を燃
焼させて発電するが、この際、石炭の燃焼に伴い石炭中
に含まれる灰分を主成分としたダストが発生する。環境
を維持するため、この飛散するダストを取り除くための
集塵装置、例えばサイクロンフィルタ,濾過式フィルタ
を火炉燃焼部の下流側に設置している。しかし、プラン
ト効率を著しく低下させることなく、完全に補足するこ
とは不可能である。従って、補足されないダストは、途
中の経路の管路及びガスタービンへ流入するが、この
際、ダストを含むガス条件での長期間にわたるガスター
ビンの運転は、ノズル部にダストの堆積を招くか、摩耗
によるエロージョンが問題となる。
【0006】ガスタービンのタービン部分にダストが堆
積することにより、タービンの流路面積が減少した場
合、この減少した少ない面積の流路をガスが通り抜けよ
うとするためタービンの入口圧力が上昇し、それに伴い
圧縮機の圧力比も上昇する。圧縮機の圧力比が高くなり
過ぎると、サージングと呼ばれる低周波数の強い非定常
空力現象が発生し、圧縮機の翼のみならずガスタービン
全体の破損につながる恐れがある。また、圧力比の上昇
及びタービン段の反動度の低下が、ガスタービンのロー
タを圧縮機側に押すスラスト力の増加をもたらし、さら
に流路面積の減少に伴うタービン段の反動度の低下がタ
ービン側に押すスラスト力を弱めるため、ガスタービン
のロータの軸方向スラスト力は全体として圧縮機側に強
く働くことになる。従って、圧縮機側のスラスト軸受の
面圧が高くなるため、強度上の問題があり、強度上の許
容値を満足する範囲に抑えるよう運転中に監視する必要
がある。
【0007】逆に、ガスタービンのタービン部分にダス
トが衝突してエロージョンが発生することによりタービ
ンの流路面積が拡大した場合、タービン入口圧力の低下
に伴い圧縮機の圧力比も低下する。圧縮機の圧力比が低
くなり過ぎると、ガスタービンの停止時のように最も圧
力比が低くなる場合に、圧縮機の後段側でチョークフラ
ッタを引き起こし、翼を破損させる恐れがある。また、
圧力比の低下及びタービン段の反動度の増加が、ガスタ
ービンのロータを圧縮機側に押すスラスト力の減少をも
たらし、さらに流路面積の増加に伴うタービン段の反動
度の増加がタービン側に押すガスタービンロータの軸方
向スラスト力を強めるため、ガスタービンロータの軸方
向スラスト力は全体としてタービン側に強く働くことに
なる。従って、タービン側のスラスト軸受の面圧が高く
なるため、強度上の問題があり、強度上の許容値を満足
する範囲に抑えるよう運転中に監視する必要がある。
【0008】上記従来の技術である特開平2−294525号
公報,特開平2−157428号公報に記載のものは、低サイ
クル疲労及びき裂発生寿命を推定するものであって、ダ
ストの堆積及びエロージョンによる摩耗については、配
慮されていないものであった。又、特開平1−178730 号
公報に記載の制御装置は、タービン翼に燃焼ガスの浮遊
物の堆積量測定器を備えているものではあるが、この堆
積量測定器は、タービン操作運転時間とタービン効率と
の関係に基づき推定しているものであって、実際の運転
に用いるには不正確な点を有し、エロージョンによる摩
耗については、配慮されていないものであった。
【0009】本発明の目的は、PFBCプラント用ガス
タービンのタービンノズル部におけるダストの堆積及び
エロージョンによる摩耗を運転中に監視して、ガスター
ビン本体を安全に連続運転する加圧流動床燃焼プラント
用ガスタービン及びそのタービン経年劣化検知方法を提
供することにある。
【0010】又、本発明の他の目的は、ダストの堆積及
びエロージョンが発生してもPFBCプラント用ガスタービ
ンを停止させて点検することなく、安全運転ができる加
圧流動床燃焼プラント用ガスタービン及びそのタービン
経年劣化検知方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明のタービン経年劣化検知方法は、加圧流動床
燃焼ボイラの圧力容器に燃焼用空気を送風する少なくと
も一台の圧縮機と、圧力容器内の加圧流動床燃焼ボイラ
本体よりの燃焼ガスを膨張することにより動力回収する
少なくとも一台のガスエキスパンダタービンを備えたタ
ービン経年劣化検知方法において、前記圧縮機の入口圧
力,出口圧力を検出し、この入口圧力,出口圧力から前
記圧縮機の運転圧力比を算出し、該運転圧力比と、計画
運転圧力比及び予め設定された圧力比運転制限とを比較
し、圧縮機側スラスト軸受メタル温度を検出し、該検出
されたスラスト軸受メタル温度と予め設定された制限温
度とを比較して判定し、前記タービンのダスト堆積を検
知することを特徴とするものである。
【0012】又、本発明のタービン経年劣化検知方法
は、前記圧縮機の入口圧力,出口圧力を検出し、この入
口圧力,出口圧力から前記圧縮機の運転圧力比を算出
し、該運転圧力比と、計画運転圧力比及び予め設定され
た圧力比運転制限とを比較し、圧縮機側スラスト軸受メ
タル温度を検出し、該検出されたスラスト軸受メタル温
度と予め設定された制限温度とを比較して判定し、前記
タービンのエロージョンを検知することを特徴とするも
のである。
【0013】又、前記ガスタービンのロータのスラスト
軸受メタル温度を検出し、該検出したスラスト軸受メタ
ル温度と予め設定された温度値とを比較して判定し、前
記タービンのダスト堆積もしくはエロージョンを検知す
ることを特徴とするものである。
【0014】又、前記タービンの入口圧力とタービンの
入口温度を計測し、該計測値に基づいてタービンの入口
修正流量を計算し、該タービンの入口修正流量の計算値
と設計値と比較して前記タービンのダスト堆積もしくは
エロージョンを検知することを特徴とするものである。
【0015】
【0016】又、上記目的を達成するため、本発明の加
圧流動床燃焼プラント用ガスタービンは、加圧流動床燃
焼ボイラの圧力容器に燃焼用空気を送風する少なくとも
一台の圧縮機と、圧力容器内の加圧流動床燃焼ボイラ本
体よりの燃焼ガスを膨張することにより動力回収する少
なくとも一台のガスエキスパンダタービンを備えた加工
流動床燃焼プラント用ガスタービンにおいて、前記圧縮
機の圧力比を検出する手段と、前記圧縮機の圧力調整ガ
ス放風弁を備え、前記圧縮機の圧力比を検出する手段に
より検出された圧力比が予め設定された圧力比より高く
なったと判断された場合は、前記圧縮機の圧力調整ガス
放風弁を制御して圧縮機の吐出空気を放風することを特
徴とするものである。
【0017】又、前記ガスタービンのロータのスラスト
軸受メタル温度を検出手段と、前記圧縮機の圧力調整ガ
ス放風弁を備え、前記スラスト軸受メタル温度を検出手
段により検出された温度が予め設定された温度値より高
くなったと判断された場合は、前記圧縮機の圧力調整ガ
ス放風弁を制御して圧縮機の吐出空気を放風することを
特徴とするものである。
【0018】又、前記圧縮機の圧力比を検出する手段
と、前記ガスタービンのロータのスラスト軸受メタル温
度を検出手段と、前記圧縮機の圧力調整ガス放風弁を備
え、前記圧縮機の圧力比を検出する手段により検出され
た圧力比が予め設定された圧力比より高くなったと判断
されたか前記スラスト軸受メタル温度を検出手段により
検出された温度が予め設定された温度値より高くなった
と判断された場合は、前記圧縮機の圧力調整ガス放風弁
を制御して圧縮機の吐出空気を放風することを特徴とす
るものである。
【0019】
【作用】上記のように構成しているので、次のような作
用がある。
【0020】タービンノズルのスロート面積変化とター
ビン効率の変化には後述するような関係があり、ダスト
堆積,エロージョンのどちらの場合でもタービン効率は
低下する。又、ダスト堆積とエロージョンが同時に発生
して、タービンノズルのスロート面積に大きな変化がな
い場合でもタービン性能の経年劣化を正確に検知できる
ので、PFBCプラント用ガスタービンのタービン部ダ
スト堆積もしくはエロージョンによる翼の摩耗をガスタ
ービンを停止して点検することなく、連続運転中に検知
することが可能となる。
【0021】又、サージラインは、圧縮機の運転パラメ
ータである回転数,入口案内翼の開度,入口の空気温度
及び、圧力比によって機器に応じて一義的に表すことが
できる。ここで、運転計画圧力比は、安全性を見込んで
予めサージングに対し充分な裕度を確保して決定されて
いるが、ダストが堆積することによって、この圧力比
は、回転数によって一義的に決まる圧縮機の特性曲線上
を変化し、計画運転圧力比から外れてサージ圧力比に向
かって近づくように移動してしまうため、実際に運転し
ている圧力比でのサージ圧力比に対する裕度を減少させ
てしまう。しかし、計画運転圧力比より高く、サージ圧
力比との間に圧力比πkを設定しており、πkより高い
と判定された場合には、圧力調整ガス放風弁を制御して
圧縮機の吐出空気を放風するので、ガスタービンを停止
して点検することなく、連続運転中に検知することが可
能となる。
【0022】又、強い面圧を受ける側のスラスト軸受メ
タル温度T6の上昇を監視項目として利用しているの
で、スラスト軸受メタル温度の制限値はスラスト面圧の
制限値から決定されており、制限値を超えたと判定され
た場合には、圧力調整ガス放風弁7を制御して圧縮機の
吐出空気を放風するので、ガスタービンを停止して点検
することなく、連続運転中に検知することが可能とな
る。
【0023】又、ダスト堆積量の許容範囲を決定する上
で、圧縮機の圧力比の制限値で決定する場合と、スラス
ト面圧の制限値で決定する場合とは強度設計上一致しな
いが、圧縮機の圧力比とスラスト軸受メタル温度を常時
監視しておき、予め設定された制限値をどちらかが超え
た段階で圧力調整放風弁を制御して圧縮機の吐出空気を
排気ダクトに放風するようになっているので、ガスター
ビンを停止して点検することなく、連続運転中に検知す
ることが可能となる。
【0024】ここで、圧縮機の吐出空気の放風はタービ
ン入口に流入するガス量を減少させることによるタービ
ン入口圧力の低下と上記配管類の圧損の減少により、結
果として圧縮機吐出圧力、つまり圧力比及びスラスト軸
受メタル温度を低下させる。又、タービンの入口修正流
量を設計値と比較することでノズルのスロート面積変化
量を計算でき、タービンノズルのダスト堆積状況もしく
はエロージョンによるノズルの摩耗状況を知ることが可
能となる。
【0025】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1から図12に
より説明する。図1は、本発明の一実施例であるタービ
ン経年劣化検知方法を組込んだPFBC発電プラントの
構成図、図2は、ダスト堆積およびエロージョンによる
スロート面積比とタービン効率の関係を示す図、図3
は、タービンノズルのダスト堆積状況を示す縦断面図、
図4は、ダスト堆積時の動翼の速度三角形を示す図、図
5は、エロージョン前のタービンノズルの摩耗状態を示
す図、図6は、エロージョン後のタービンノズルの摩耗
状態を示す図、図7は、エロージョン前後の動翼の速度
三角形を示す図、図8は、時間とスロート面積変化の関
係を示す図、図9は、ダストの堆積およびエロージョン
によるスロート面積比と圧力比の変化を示す図、図10
は、スロート面積比と反動速度の変化を示す図、図11
は、スロート面積比とスラスト面圧の関係を示す図、図
12は、エロージョン時の圧縮機の特性を示す図であ
る。図1に示すように、PFBCプラント用ガスタービ
ンは、主として圧縮機1,タービン2,ガスタービン用
モータ発電機3,起動用モータ4,インレットダクト
5,圧縮機インレットガイドベーン8,圧縮機抽気弁
6,圧力調整ガス放風弁7、と各種計測機器および変換
機器より構成されている。PFBCプラントでは、圧縮
機1により加圧された空気は、PFBCボイラの圧力容
器内の流動床燃焼炉で石炭と燃焼反応し、生成した高温
高圧の燃焼ガスをタービン2に導き、タービン2を駆動
して動力を発生させる。この動力により圧縮機1を駆動
させるとともに、ガスタービン用モータ発電機3を駆動
して電力を発生させる。タービン2を経た燃焼ガスは、
排熱回収装置(図示せず)において熱交換されて排熱を
回収された後、大気に放出される。
【0026】本実施例のタービンの経年劣化の監視で
は、次の項目を計測している。すなわち、圧縮機1の入
口における全圧PT1,静圧PS1,温度TS1と、圧
縮機1の出口における全圧PT3と、タービン2の入口
における温度TT4,全圧PT4と、タービン2の出口に
おける排ガス温度TT5,圧力PT5と、圧縮機1側の
スラスト軸受9のメタル温度T6と、タービン2側のス
ラスト軸受10のメタル温度T7である。また、圧縮機
1の吸込流量G1は、圧縮機1の入口全圧PT1,静圧
PS1,温度TS1の計測値から計算により求めること
ができ、圧縮機1の抽気流量G2,圧縮機1の出口の放
風空気流量G3は、オリフィス等の流量計を用いた計測
値から求めることができる。
【0027】まず、第1の例について説明する。図1に
示すガスタービンを運用してタービンノズル部にダクト
堆積もしくはエロージョンが発生した場合、タービンノ
ズルのスロート面積変化とタービン効率の変化の関係は
図2に示すように、ダスト堆積、エロージョンのどちら
の場合でもタービン効率は低下する。ここで、スロート
面積とは隣接するタービンノズル流路内の最小面積で定
義される。これは、タービンノズルのスロート面積変化
に伴い反動度に変化が生じ、タービン動翼の入口におけ
る速度三角形が設計点からずれるためである。又、ター
ビン流路内にダストが存在することによって翼面上の圧
力分布が平坦化し、流路壁の粗さも増大するため翼の形
状損失が増加等によりタービン効率が低下するためであ
る。
【0028】このように、ダスト堆積とエロージョンが
同時に発生し、この両者が相殺してノズルのスロート面
積が大きく変化しなかった場合は、圧力比及びスラスト
力のアンバランスは大きく変化しないため、圧力比とス
ラスト軸受メタル温度だけからはタービン経年劣化を正
確に検知出来ないが、本実施例では、ダスト堆積とエロ
ージョンのどちらが発生しても低下するタービン効率の
特性を利用しているため、ダスト堆積とエロージョンが
同時に発生して、タービンノズルのスロート面積に大き
な変化がない場合でもタービン性能の経年劣化を正確に
検知出来る。
【0029】このタービン効率の計算は数(1)で定義
される。
【0030】
【数1】
【0031】数(1)において、排ガス温度TT5及び排
ガス圧力PT5は、通常ガスタービンでは常時計測され
ているものであり、本実施例ではタービンの入口温度T
T4及びタービ一ンの入口圧力PT4を直接計測するこ
とにより、タービン効率を正確に算出することが可能で
ある。
【0032】次に第2の例について説明する。図1に示
すガスタービンを運用してタービンノズル部にダストが
堆積した状態を示す図3,図4から分かるように、ダス
トは2次流れの発生するタービン流路内の翼根元部分及
び先端部分に堆積しやすい。このようなことが生じた場
合、翼長を小さくして流路のスロート面積を小さめに設
計したタービンノズルを使用しているのとほぼ同じ状況
となり、この場合は図8,図9に示すように、ダスト堆
積に伴い圧縮機の圧力比が上昇する。
【0033】横軸の圧縮機流量に対し、縦軸に圧力比特
性をとって示した圧縮機マップの例を示す図12から分
かるように、サージラインは、圧縮機の運転パラメータ
である回転数,入口案内翼の開度,入口の空気温度及
び、圧力比によって機器に応じて一義的に表すことがで
きる。ここで、運転計画圧力比とは、実際に機器を運転
するよう計画した圧力比のことであり、安全性を見込ん
で予めサージングに対し充分な裕度を確保して決定され
ている。ダストが堆積することによって、この圧力比
は、回転数によって一義的に決まる圧縮機の特性曲線上
を変化し、計画運転圧力比πopから外れてサージ圧力
比πsに向かって近づくように移動してしまうため、実
際に運転している圧力比でのサージ圧力比に対する裕度
を減少させてしまう。このため、計画運転圧力比πop
とより高く、サージ圧力比πsとの間の圧力比に、警報
発生を発生するための圧力比πkを設定しており、πo
p>πkとなった判定された場合には、圧力調整ガス放
風弁7を制御して圧縮機の吐出空気を放風する。
【0034】一方、タービン部分のダスト堆積は、図1
0,図11に示すように、反動度の低下をもたらし、ガ
スタービンロータのスラスト力を圧縮機側に強く働かせ
ることになる。圧縮機側のスラスト面圧を直接計測して
その信号を制御に使用するのは困難であるため、本実施
例では、強い面圧を受ける側のスラスト軸受メタル温度
T6の上昇を監視項目として利用している。スラスト軸
受メタル温度の制限値Tkはスラスト面圧の制限値から
決定されており、T6>Tkと判定された場合には、圧
力調整ガス放風弁7を制御して圧縮機の吐出空気を放風
する。
【0035】ダスト堆積量の許容範囲を決定する上で、
圧縮機の圧力比の制限値で決定する場合と、スラスト面
圧の制限値で決定する場合とは強度設計上一致しない。
又、どちらが先に制限値を超えるかは、大気温度及びI
GV開度等の圧縮機の運用条件の影響を受けることがあ
り、どちらかに設定することは安定運用において問題を
生じる。そこで、連続運転中の圧縮機とスラスト軸受の
安定運用を保証するため、圧縮機の圧力比とスラスト軸
受メタル温度を常時監視しておき、予め設定された制限
値をどちらかが超えた段階で圧力調整ガス放風弁7を制
御して圧縮機の吐出空気を排気ダクトに放風するように
なっている。
【0036】ここで、圧縮機の吐出圧力は、タービンの
初段ノズルのスロート面積により決まるタービンの入口
圧力PT4と、圧縮機1からボイラ圧力容器に流入する
空気の配管圧損,流動床燃焼炉内の圧損,流動床燃焼炉
からタービン2までの燃焼ガスの配管圧損の合計より決
まるため、圧縮機の吐出空気の放風はタービン入口に流
入するガス量を減少させることによるタービン入口圧力
の低下と上記配管類の圧損の減少により、結果として圧
縮機吐出圧力PT3つまり圧力比(PT3/PT1)及
びスラスト軸受メタル温度T6を低下させる効果を持
つ。このとき圧力比とスラスト軸受メタル温度T6の両
者を少なくとも計画線(K)以下に低下するまでガス放
風弁7を開き運転する。
【0037】図1に示すガスタービンを運用してタービ
ンノズル部がエロージョンにより摩耗した状況を図5か
ら図7に示す。ダスト粒子は流径が大きくなるにつれ
て、その慣性力に従い主流空気の流線から外れて翼の腹
側に衝突しやすくなる。また、エロージョン量は流速に
大きく依存するため、流れが加速される翼腹側の後縁付
近で最も顕著であり、これはスロート面積を大きめに設
計したタービンノズルを使用しているのとはほぼ同じ状
況となる。この場合、図8,図9に示すように、エロー
ジョンに伴い圧縮機圧力比が低下する。計画運用圧力比
は、圧縮機後段側のチョークラインに対し、充分高いの
で定格運用に限れば問題ないが、ガスタービンの通常の
停止時及び緊急停止時、PFBCボイラ起動時等のよう
にタービン入口温度が極端に低くなる場合には、圧力比
がチョークライン近傍まで下がり、チョーキングフラッ
タによる圧縮機翼の振動の可能性がある。また、図12
に示すように、反動度が増加してガスタービンロータの
スラスト力はタービン側に強く働くため、強い面圧を受
ける側のスラスト軸受メタル温度T7が上昇する。そこ
で、圧縮機圧力比とスラスト軸受メタル温度を常時監視
して、予め設定された制限値をどちらかが超えた段階で
ガスタービンを安全に停止する。
【0038】ダストの堆積及びエロージョンによるター
ビンノズルの流路部スロート面積変化を具体的に算出す
るには、タービン入口での修正流量を計算する必要があ
る。タービン入口修正流量の計算式を数(2)から数
(4)に示す。
【0039】
【数2】
【0040】ここで、Gはタービン入口修正流量、G4
はタービン入口流量、Areaはタービン初段ノズルスロー
ト面積である。従って、数(3)に示すような設計条件
との比較により、
【0041】
【数3】
【0042】ノズルのスロート面積変化量が計算され
る。ここで、Gaはタービン入口修正流量設計値、Area
a はタービン初段ノズルスロート面積設計値である。
【0043】タービンの入口修正流量は大気温度により
設計値も異なるが、これを予め関数化しておくことによ
り上記の比較演算を行う。計算に必要なタービンの入口
圧力PT4及びタービンの入口温度TT4は正確さを期
して直接計測し、タービンの入口量流G4は数(4)に
より得られる。
【0044】
【数4】 G4=G1−(G2+G3+G5) …(4) ここで、G1は圧縮機吸い込み流量、G2は圧縮機抽気
流量、G3は圧縮機吐出空気放風量、G5はタービン冷
却流量である。
【0045】圧縮機吸い込み流量G1は、圧縮機の入口
で全圧PT1及び静圧PS1,温度TS1を測定するこ
とにより算出し、圧縮機の抽気流量G2,圧縮機の吐出
空気放風量G3はオリフィス流量計により測定し、ター
ビン冷却流量G5は設計段階で決定される。以上のよう
にタービンの入口修正流量を設計値と比較することでノ
ズルのスロート面積変化量を計算でき、タービンノズル
のダスト堆積状況もしくはエロージョンによるノズルの
摩耗状況を知ることが可能となる。
【0046】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、P
FBCプラントガスタービンの経年的なダスト堆積もし
くはエロージョンによる翼の摩耗がもたらすガスタービ
ン本体側への悪影響を連続運転中に検知し、信頼性の高
い運用を実施することができる。
【0047】又、ダスト堆積とエロージョンが発生して
も劣化を検出することができるので、停止して点検する
ことなく、安全な連続運転が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるタービン経年劣化検知
方法を組込んだPFBC発電プラントの構成図である。
【図2】ダスト堆積およびエロージョンによるスロート
面積比とタービン効率の関係を示す図である。
【図3】タービンノズルのダスト堆積状況を示す縦断面
図である。
【図4】ダスト堆積時の動翼の速度三角形を示す図であ
る。
【図5】エロージョン前のタービンノズルの摩耗状態を
示す図である。
【図6】エロージョン後のタービンノズルの摩耗状態を
示す図である。
【図7】エロージョン前後の動翼の速度三角形を示す図
である。
【図8】時間とスロート面積変化の関係を示す図であ
る。
【図9】ダストの堆積およびエロージョンによるスロー
ト面積比と圧力比の変化を示す図である。
【図10】スロート面積比と反動度の変化を示す図であ
る。
【図11】スロート面積比とスラスト面圧の関係を示す
図である。
【図12】エロージョン時及びダスト堆積時の圧縮機の
特性を示す図である。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…タービン、3…ガスタービン用モータ
発電機、4…起動用モータ、5…インレットダクト、6
…圧縮機抽気弁、7…圧力調整ガス放風弁、8…インレ
ットガイドベーン、9…圧縮機側スラスト軸受、10…
タービン側スラスト軸受、11…抽気配管オリフィス、
12…放風配管オリフィス。
フロントページの続き (72)発明者 佐藤 知 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (56)参考文献 特開 平6−193462(JP,A) 特開 昭63−131834(JP,A) 特開 昭60−216098(JP,A) 特開 昭59−226234(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02C 7/00 F02C 3/26 F02C 9/00

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加圧流動床燃焼ボイラの圧力容器に燃焼用
    空気を送風する少なくとも一台の圧縮機と、圧力容器内
    の加圧流動床燃焼ボイラ本体よりの燃焼ガスを膨張する
    ことにより動力回収する少なくとも一台のガスエキスパ
    ンダタービンを備えたタービン経年劣化検知方法におい
    て、 前記圧縮機の入口圧力,出口圧力を検出し、この入口圧
    力,出口圧力から前記圧縮機の運転圧力比を算出し、該
    運転圧力比と、計画運転圧力比及び予め設定された圧力
    比運転制限とを比較し、圧縮機側スラスト軸受メタル温
    度を検出し、該検出されたスラスト軸受メタル温度と予
    め設定された制限温度とを比較して判定し、前記タービ
    ンのダスト堆積を検知する加圧流動床燃焼プラント用ガ
    スタービンのタービン経年劣化検知方法。
  2. 【請求項2】加圧流動床燃焼ボイラの圧力容器に燃焼用
    空気を送風する少なくとも一台の圧縮機と、圧力容器内
    の加圧流動床燃焼ボイラ本体よりの燃焼ガスを膨張する
    ことにより動力回収する少なくとも一台のガスエキスパ
    ンダタービンを備えたタービン経年劣化検知方法におい
    て、 前記圧縮機の入口圧力,出口圧力を検出し、この入口圧
    力,出口圧力から前記圧縮機の運転圧力比を算出し、該
    運転圧力比と、計画運転圧力比及び予め設定された圧力
    比運転制限とを比較し、圧縮機側スラスト軸受メタル温
    度を検出し、該検出されたスラスト軸受メタル温度と予
    め設定された制限温度とを比較して判定し、前記タービ
    ンのエロージョンを検知する加圧流動床燃焼プラント用
    ガスタービンのタービン経年劣化検知方法。
  3. 【請求項3】加圧流動床燃焼ボイラの圧力容器に燃焼用
    空気を送風する少なくとも一台の圧縮機と、圧力容器内
    の加圧流動床燃焼ボイラ本体よりの燃焼ガスを膨張する
    ことにより動力回収する少なくとも一台のガスエキスパ
    ンダタービンを備えたタービン経年劣化検知方法におい
    て、前記ガスタービンのロータのスラスト軸受メタル温
    度を検出し、該検出したスラスト軸受メタル温度と予め
    設定された温度値とを比較して判定し、前記タービンの
    ダスト堆積もしくはエロージョンを検知することを特徴
    とする加圧流動床燃焼プラント用ガスタービンのタービ
    ン経年劣化検知方法。
  4. 【請求項4】加圧流動床燃焼ボイラの圧力容器に燃焼用
    空気を送風する少なくとも一台の圧縮機と、圧力容器内
    の加圧流動床燃焼ボイラ本体よりの燃焼ガスを膨張する
    ことにより動力回収する少なくとも一台のガスエキスパ
    ンダタービンを備えたタービン経年劣化検知方法におい
    て、前記タービンの入口圧力とタービンの入口温度を計
    測し、該計測値に基づいてタービンの入口修正流量を計
    算し、該タービンの入口修正流量の計算値と設計値と比
    較して前記タービンのダスト堆積もしくはエロージョン
    を検知することを特徴とする加圧流動床燃焼プラント用
    ガスタービンのタービン経年劣化検知方法。
  5. 【請求項5】加圧流動床燃焼ボイラの圧力容器に燃焼用
    空気を送風する少なくとも一台の圧縮機と、圧力容器内
    の加圧流動床燃焼ボイラ本体よりの燃焼ガスを膨張する
    ことにより動力回収する少なくとも一台のガスエキスパ
    ンダタービンを備えた加工流動床燃焼プラント用ガスタ
    ービンにおいて、前記圧縮機の圧力比を検出する手段
    と、前記圧縮機の圧力調整ガス放風弁を備え、前記圧縮
    機の圧力比を検出する手段により検出された圧力比が予
    め設定された圧力比より高くなったと判断された場合
    は、前記圧縮機の圧力調整ガス放風弁を制御して圧縮機
    の吐出空気を放風することを特徴とする加工流動床燃焼
    プラント用ガスタービン。
  6. 【請求項6】加圧流動床燃焼ボイラの圧力容器に燃焼用
    空気を送風する少なくとも一台の圧縮機と、圧力容器内
    の加圧流動床燃焼ボイラ本体よりの燃焼ガスを膨張する
    ことにより動力回収する少なくとも一台のガスエキスパ
    ンダタービンを備えた加圧流動床燃焼プラント用ガスタ
    ービンにおいて、前記ガスタービンのロータのスラスト
    軸受メタル温度を検出手段と、前記圧縮機の圧力調整ガ
    ス放風弁を備え、前記スラスト軸受メタル温度を検出手
    段により検出された温度が予め設定された温度値より高
    くなったと判断された場合は、前記圧縮機の圧力調整ガ
    ス放風弁を制御して圧縮機の吐出空気を放風することを
    特徴とする加圧流動床燃焼プラント用ガスタービン。
  7. 【請求項7】加圧流動床燃焼ボイラの圧力容器に燃焼用
    空気を送風する少なくとも一台の圧縮機と、圧力容器内
    の加圧流動床燃焼ボイラ本体よりの燃焼ガスを膨張する
    ことにより動力回収する少なくとも一台のガスエキスパ
    ンダタービンを備えた加圧流動床燃焼プラント用ガスタ
    ービンにおいて、前記圧縮機の圧力比を検出する手段
    と、前記ガスタービンのロータのスラスト軸受メタル温
    度を検出手段と、前記圧縮機の圧力調整ガス放風弁を備
    え、前記圧縮機の圧力比を検出する手段により検出され
    た圧力比が予め設定された圧力比より高くなったと判断
    されたか前記スラスト軸受メタル温度を検出手段により
    検出された温度が予め設定された温度値より高くなった
    と判断された場合は、前記圧縮機の圧力調整ガス放風弁
    を制御して圧縮機の吐出空気を放風することを特徴とす
    る加圧流動床燃焼プラント用ガスタービン。
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