JP3044298B2 - 紙または印刷物の断面作製法並びに断面観察法 - Google Patents
紙または印刷物の断面作製法並びに断面観察法Info
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Description
断面を作製する方法、並びに該作製した断面を観察また
は解析する方法に関するものである。さらに詳しくは紙
及び印刷物にイオンビームを照射して断面を作製し、該
作製した断面の内部構造を走査型電子顕微鏡または元素
分析装置を用いて観察または解析する方法に関する。
さ方向の分布状態、更には塗工紙の顔料やバインダーの
分布状態などは、用紙特性、例えば、強度特性、光学的
特性、表面平滑性、印刷適性などに直接影響を及ぼす重
要な因子である。一方、印刷時のインキの転移状態や浸
透状態などの紙に関する印刷適性は、これらの用紙特性
に影響される。したがって、用紙特性とインキ転移性の
関係を解析するためには、断面観察から、紙の構造を正
確に把握する必要がある。従来から紙の構造に関する情
報を求めるために用いられている主な断面作製法として
は、刃物による切断法、樹脂包埋法、凍結包埋法、凍結
割断法、イオンエッチング法等がある。
カミソリ等)で切断する方法で、簡便で切断部位を選択
でき、低倍率での観察に有効な方法であり、例えば、特
開平5−72084号公報(走査電子顕微鏡用試料作製
装置)がある。しかし、微細部分での構造破壊が著し
く、切断面の平滑性に乏しいという問題がある。
けるために一般的に用いられている方法として、前記樹
脂包埋法がある。これは試料をパラフィン、ワックス、
各種合成樹脂(エポキシ樹脂、メタクリル樹脂等)で包
埋した後、ミクロトームまたは超ミクロトームのガラス
ナイフで切断する方法である。光学顕微鏡を用いて低倍
率で用紙の紙層構造を観察する場合には、紙層の構造破
壊を起こすことなく繊維部分と空隙部分をはっきりと観
察することができる。ところが、紙層の微細な繊維、填
料、塗工剤あるいは紙層内のインキ浸透状態の解析を、
走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)を用いて高倍
率で断面観察する場合には、包埋した樹脂を除去しない
とコントラストのある良好な像が得られない。このた
め、切断により得られた切片の包埋樹脂を溶剤あるいは
アルカリ溶液等で除去した後、観察する方法が採られて
いる。しかし、包埋樹脂を除去する際に、溶剤あるいは
アルカリ溶液等によって繊維がわずかに膨潤し、紙層の
構造変化が生じてしまう場合がある。
構造変化をなくすために、包埋したままSEMで高倍率
の観察を行う方法として、前記凍結包埋法があり、例え
ば、特開平2−259447号公報(紙の薄片切断方
法)がある。これはセルロースを主成分とする凍結包埋
剤を用いて包埋し、包埋試料をスチールナイフで切断す
る方法である。包埋物質が柔らかいので、包埋したまま
で広範囲の切片を得ることが可能である。しかし、セル
ロース系包埋剤に微量の水分が含まれているために、若
干の膨潤が起こるという問題がある。
浸透状態などを解析する場合には、前記した樹脂包埋法
では用紙に転移したインキが溶け出してしまうことか
ら、樹脂包埋することができない。このため、用紙表面
に転移したインキ層を直接断面観察することはできない
という問題があった。また、印刷インキの用紙への浸透
状態を解析する場合には、紙層を数層に剥離し、各層の
インキ付着状態から紙層への浸透状態を解析するという
作業上たいへん困難な方法が用いられていた。しかもこ
の方法では、紙層を剥離する際に構造破壊が生じてしま
うことから、インキの浸透状態を紙層中の位置に正確に
置き換えることができないという問題があった。
結割断法がある。本方法はエタノールの入ったカプセル
の中に紙サンプルを入れ、カプセルとともにエタノール
及び紙サンプルを液体窒素中で凍らせた後、カプセルと
ともに紙を割断して断面表面を得る方法である。本方法
で紙の断面を作製しようとすると、個々の繊維は平滑な
断面として割断されるが、紙は繊維が層状に積層されて
いるために、紙全体としては平滑な断面を得ることがで
きず、紙層構造を観察することはできないという問題が
あった。
等で断面を切り出した後、刃によって破壊された断面層
にイオンスパッタ装置でエッチングを行い、破壊された
断面層を除去してサンプルの内部構造を露出させる方法
である。本方法では、イオンスパッタ装置でアルゴンイ
オンを連続照射すると熱が発生してしまうことから、紙
の構造が変化してしまうという問題があった。この熱に
よる構造変化を防止するために、アルゴンイオンを間欠
照射して温度の上昇を抑えたり、樹脂包埋やオスミウム
染色で固定する必要があった。しかし、アルゴンイオン
を間欠照射すると、イオンエッチングに時間を要してし
まうという問題と、樹脂包埋すると、前述したように印
刷インキは溶け出してしまい、用紙への転移状態を観察
することができないという問題があった。
面作製法では、切り出し位置を指定することができない
ため、指定した位置の構造を観察及び解析するために
は、断面作製作業と観察を繰り返さなければならず、非
常に多くの時間と労力を要するという問題があった。
用紙の内部構造を観察する場合には、紙を樹脂で包埋し
た後、ミクロトームで切断する方法で紙層構造を観察及
び解析することは可能であった。ところが、光学顕微鏡
では断面のマクロ的な観察に限られ、また、切り出し位
置を指定することができないため、指定した位置の構造
を観察及び解析するためには、断面の作製作業の繰り返
しに非常に多くの労力を要していた。最近では、SEM
を用いて高倍率で断面観察する場合には、樹脂包埋した
ままでは高解像度の観察を行うことが困難なため、前述
した方法で切断した切片の包埋樹脂を溶剤あるいはアル
カリ溶液等で除去した後、観察する方法が採られてい
る。そのため、樹脂包埋を除去する際に、溶剤あるいは
アルカリ溶液等によって繊維がわずかに膨潤し、紙層の
構造変化が生じてしまうという問題があった。
浸透状態などを解析する場合には、前記した樹脂包埋法
では用紙に転移したインキが溶け出してしまうことか
ら、樹脂包埋することができない。
た集束イオンビーム〔以下、FIB(Focused Ion Bea
m)という。〕装置は、半導体や金属等の局所加工を行
うために利用されているが、本発明のように用紙の紙層
構造、用紙に添加された薬品等の厚さ方向の分布状態、
塗工紙の塗工層構造、印刷インキの用紙への転移状態な
どを解析する手段として、紙または印刷物の断面作製
に、該FIB装置を利用するという報告はまだされてい
ない。そこで本発明者は鋭意研究を重ねた結果、厚さ数
μmの局所加工を特徴とするFIB装置で、厚さ100
μm前後の紙または印刷物の断面を作製することが可能
であることを見いだし、該装置を用いて集束イオンビー
ムの加速電圧、ビーム電流及びビーム径のパラメータ
を、粗加工、仕上げ加工の2段階に設定し、照射するこ
とにより、従来技術とは比較にならない程の精度で、紙
または印刷物の断面を切り出すことを可能とし、紙層、
塗工層及び用紙に転移した印刷インキ層の構造破壊を起
こさないで、指定した位置の断面を切り出すことを目的
としており、前記従来技術で用いられた慣用的な断面作
製法に比して、格段の改善が計られた。
するために、イオン源(1)、試料の観察、切り出し位
置及び切り出し領域の設定を行うモニタ(4)、加速電
圧、ビーム電流、ビーム径の断面加工条件を設定する操
作部(5)、集束レンズ(2)、ビーム制御アパーチャ
ー(6)、偏向器(7)、対物レンズ(8)及び二次電
子検出器(9)から構成された集束イオンビーム装置を
用いて、紙または印刷物(10)を、試料ホルダー(1
1)に取り付けて試料挿入口(3)からセットし、イオ
ン源(1)から放出されたイオン(12)を紙または印
刷物(10)の試料全体に照射して、二次電子検出器
(9)で検出された二次電子像をモニタ(4)で観察し
ながら、同時に、前記モニタ(4)上の観察画像に対し
て切り出し領域及び切り出し位置の指定をし、操作部
(5)で加速電圧、ビーム電流及びビーム径の断面加工
条件を粗加工、仕上げ加工の2段階に設定を行うことに
よって、イオン源(1)から放出されたイオン(12)
を集束レンズ(2)で絞り込み、ビーム制御アパーチャ
ー(6)でイオンビームを制御した後、偏向器(7)で
走査させ、さらに、対物レンズ(8)でイオンビームを
細く絞り込んで紙または印刷物(10)の切り出し領域
及び切り出し位置の切断には、前記粗加工による、前記
切り出し領域及び前記切り出し位置の切り出しは、ま
ず、前記イオンビームとしてガリウムイオンビームを、
加速電圧30kV以上、ビーム電流9〜15nA、ビー
ム径を300〜1000nmに設定し、集束させて照射
し、前記紙または印刷物を切り出し、さらに断面加工精
度を上げるための仕上げ加工による前記切り出し領域及
び切り出し位置の切断は、加速電圧30kV以上、ビー
ム電流1nA以下、ビーム径を70nm以下に設定し、
集束させ照射することによって、加工損傷や温度上昇を
招くことなく、紙層、塗工層及び用紙に転移した印刷イ
ンキ層の構造を変化させないで、紙または印刷物の前記
指定した切り出し位置の断面を切り出すことを特徴とす
る紙または印刷物の断面作製法である。
ビーム装置を用いて、前記紙または印刷物の断面作製法
により前記紙または印刷物の断面を作製し、前記紙また
は印刷物の断面を、走査型電子顕微鏡または元素分析装
置を用いて、前記紙または印刷物の前記切り出し位置の
断面の紙層構造及び塗工層構造を観察し、前記断面の紙
層内の微細な繊維状態、てん料及び塗工剤の分布状態を
解析することを特徴とする前記紙または印刷物の断面作
製法で得られた断面の観察法である。
ンビーム装置を用いて、前記紙または印刷物の断面作製
法により前記紙または印刷物の断面を作製し、前記紙ま
たは印刷物の断面を、走査型電子顕微鏡を用いて、前記
紙または印刷物の前記切り出し位置の断面の紙層構造、
塗工層構造または印刷インキの転移状態を観察すること
を特徴とする前記紙または印刷物の断面作製法で得られ
た断面の観察法である。
面作製法は、紙または印刷物にイオンビームを照射し、
二次電子検出器で検出された二次電子像をモニタで観察
しながら、同時に、モニタ上の観察画像に対して切り出
し領域及び切り出し位置の指定をし、操作部で加速電
圧、ビーム電流及びビーム径の断面加工条件を粗加工、
仕上げ加工の2段階に設定し、前記切り出し領域及び切
り出し位置の指定位置の切断に必要な量のイオンビーム
を照射して粗加工を行う。さらに、断面加工精度を上げ
るための仕上げ加工として、粗加工よりも細いビームを
照射することによって、走査型電子顕微鏡を用いた高倍
率でも観察できる平滑な断面が作製される。
加工では、切削や研磨などの機械加工にみられるような
せん断応力、圧縮応力および引張り応力は発生しない。
このため、硬さや脆さの異なる材料が混合されている複
合材料や空隙を持つ材料、すなわち、紙または印刷物に
ついてもシャープな断面が作製できる。従って、紙及び
塗工紙の紙層構造や塗工層構造を観察する場合には、指
定した位置の紙層及び塗工層の構造破壊を起こさずに観
察することができる。さらに、印刷によって用紙に転移
した印刷インキ層の観察を行う場合においても、指定し
た位置での用紙表面に転移したインキの転移状態を直接
断面観察することができる。
作製法は、紙層構造、塗工層構造及び用紙に転移した印
刷インキの転移状態の解析に対して有効に作用する。
機械抄き紙、塗工紙、不織布等を含むことは言うまでも
ない。
が、本発明はこの実施例によってなんら限定されるもの
ではない。また、本実施例においてはイオン源としてガ
リウムを用いているが、これに限定されることなく、一
般的に半導体微細加工用として利用されているイオン源
を使用しても何等差し支えない。
束イオンビーム装置の外観図(a)であり、該装置内部
の模式図(b)である。図1において、(1)は液体ガ
リウムイオン源、(2)は集束レンズ部、(3)は試料
挿入口、(4)は操作条件を設定するモニタおよび試料
を観察するモニタ、(5)は断面加工条件を設定する操
作部である。前記装置を用いて、紙または印刷物(1
0)を、試料ホルダー(11)に取り付けて試料挿入口
(3)からセットし、イオン源(1)から放出されたイ
オン(12)を紙または印刷物(10)の試料全体に照
射して、二次電子検出器(9)で検出された二次電子像
をモニタ(4)で観察しながら、同時に、前記モニタ
(4)上の観察画像に対して切り出し領域及び切り出し
位置を指定し、操作部(5)で加速電圧、ビーム電流及
びビーム径の設定を行うことにより、イオン源(1)か
ら放出されたイオン(12)を集束レンズ(2)で絞り
込み、ビーム制限アパーチャー(6)で制限した後、偏
向器(7)で走査させ、さらに、対物レンズ(8)でイ
オンビームを細く絞り込んで紙または印刷物(10)の
指定位置に照射した。
を前記モニタ(4)で観察した二次電子像写真である。
図2において、(A)は印刷物、(13)は前記印刷物
の用紙断面部分、(14)は前記印刷物の用紙表面部
分、(15)は前記印刷物の用紙表面に印刷されたイン
キ転移部分である。前記印刷物(A)に対して、断面と
して切り出したい位置を前記モニタ(4)で観察しなが
ら、同時に、前記モニタ(4)上の観察画像に対して切
り出しライン(x)及び切り出しエリア(y)を指定
し、操作部(5)で加速電圧30kV以上、ビーム電流
10nA程度及びビーム径300nm程度に設定して、
ガリウムイオンビームを集束し、走査させながら照射し
て粗加工を行った。次に、加工精度を増すために、加速
電圧30kV以上、ビーム電流0.3nA以下及びビー
ム径30nm以下に設定して、ガリウムイオンビームを
さらに集束させて照射し、仕上げ加工を行った。
切り出した後の状態を前記モニタ(4)で観察した二次
電子像写真である。図3から明かなように、前記図2で
指定した切り出しライン(x)の印刷物断面を位置精度
よく切り出すことができた。従来の断面作製法では、切
り出す時に位置を指定することができないため、目的と
する位置を探し出すためには、切断しては観察する作業
を繰り返さなければならず、多くの時間と労力を要して
いたが、FIBでは断面を作製したい位置を指定できる
ことから、これらの作業時間及び労力を大幅に減少させ
ることが可能となった。また、FIBの加工厚さは、半
導体や金属加工の分野では数ミクロンであると言われて
きたが、加工条件を前述したような条件に設定すること
により、厚さ100μm程度の紙でも断面加工できるこ
とが確認できた。
例1と同様の条件でガリウムイオンビームを集束させて
断面を作製した後、FIB装置から用紙を取り出し、該
用紙断面をSEMにより観察を行った電子顕微鏡写真で
ある。図4において、(16)は紙層中の繊維部分、
(17)は紙層中の空隙部分である。用紙断面口は平滑
な断面を切り出すことができており、繊維断面部分(1
5)はつぶれておらず、しかも紙層中の繊維部分(1
6)と空隙部分(17)の界面を正確に観察することが
可能であった。FIBによる断面加工では、刃物による
切断法で切断した時のような構造破壊や、アルゴンイオ
ンを連続照射した場合のような温度上昇による構造変化
は生じなかった。これはイオンと原子間衝突を基本作用
としているため、前述したように、切削や研磨などの機
械加工にみられるようなせん断応力、圧縮応力及び引張
り応力は発生しない。また、照射されたイオンは試料内
で試料原子を弾き飛ばしながらエネルギーを失うため、
試料原子の損傷深さは、イオンの進入深さから推定し
て、約10nmであると考えられている。さらに、集束
イオンビーム照射時の試料温度は40゜C未満であった
ことから、紙やコーティングバインダーのように熱に弱
い材料でも、断面の加工損傷はほとんどないと考えられ
る。このようなFIBの利点から、空隙を持つ紙などの
材料でも、紙層の構造破壊を起こさずにシャープな断面
を作製できた。
の一つである刃物による切断法で切断した断面で、用紙
(B)を薄いフィルムの間に挟み込み、紙層の構造破壊
をできる限り小さくするように鋭利な刃で切り出した
後、該用紙断面をSEMにより観察を行った電子顕微鏡
写真である。図5において、(18)は紙層中の繊維部
分、(19)は紙層中の空隙部分である。紙層中の繊維
断面部分(18)は切り出した鋭利な刃によって断面表
面がつぶされており、鋭利な刃で切り出した方向(矢印
方向)に繊維が押し流されている様子が観察された。こ
のため、紙層中の繊維部分(18)と空隙部分(19)
の界面を正確に観察することができなかった。
紙(C)を、実施例1と同様の条件でガリウムイオンビ
ームを集束させて断面を作製した後、FIB装置からダ
ブル塗工紙を取り出し、該ダブル塗工紙断面をSEMに
より観察を行った電子顕微鏡写真である。図6(a)に
おいて、(20)はダブル塗工紙の基材である繊維、
(21)は紙層中の空隙部分、(22)は内添したてん
料、(23)はダブル塗工紙のトップ塗工層、(24)
はダブル塗工紙のアンダー塗工層である。作製したダブ
ル塗工紙(C)の断面は、紙層では繊維(20)内のル
ーメンの形状及び内添したてん料(22)の分布状態、
並びに繊維部分(20)と空隙部分(21)の界面を正
確に観察することができ、塗工層ではトップ塗工層(2
3)とアンダー塗工層(24)の2層に塗工されている
様子がはっきり観察できた。ダブル塗工紙(C)を構成
している材料は、繊維(20)、てん料(22)、種類
の異なる塗工顔料(23、24)など、成分の異なる材
料であるため、その材料の硬さや脆さは異なっているは
ずであるが、FIBによる断面の作製には問題なく、一
様な断面を得ることができた。
(C)の塗工層部分を拡大したダブル塗工層断面の電子
顕微鏡写真である。図6(b)において、(23)はダ
ブル塗工紙のトップ塗工層、(24)はダブル塗工紙の
アンダー塗工層である。ダブル塗工層の顔料粒子形状か
ら、トップ塗工層(23)とアンダー塗工層(24)で
は異なる顔料が使われていることがわかる。また、前記
SEMで検出した二次電子データを、元素分析結果と対
照させることによって、アンダー塗工層(24)には安
価な重質炭酸カルシウムを塗工し、トップ塗工層(2
3)には粒子形状の異なる炭酸カルシウムとカオリンを
分散よく塗工していることを解析できた。また、塗工層
のバインダーをオスミウム等でラベル化し、オスミウム
等を元素分析装置で面分析することによって、バインダ
ーの分布状態を観察することが可能である。このような
解析及び分析を通して、この方法はバインダーマイグレ
ーション(バインダー成分の移行状態)等の研究にも応
用でき、さらには、塗工条件を変えることで、塗工プロ
セスの違いによる塗工品質への影響を明らかにするため
の手法としても活用できる。
の一つである刃物による切断法で切断した断面で、ダブ
ル塗工紙(C)を薄いフィルムの間に挟み込み、紙層の
構造破壊をできる限り小さくするように、鋭利な刃で切
り出したダブル塗工紙断面をSEMにより観察を行った
電子顕微鏡写真である。図7において、(25)はダブ
ル塗工紙の基材である繊維、(26)は紙層中の空隙部
分、(27)はダブル塗工紙の塗工層である。切断した
ダブル塗工紙(C)の断面は、鋭利な刃によって断面の
表面がつぶされており、紙層では繊維内のルーメンの形
状及び内添したてん料の分布状態、並びに繊維部分(2
5)と空隙部分(26)の界面を正確に観察することが
できなかった。また、塗工層でも顔料の形状や分布状態
を観察することができなかった。
(D)を実施例1と同様の条件でガリウムイオンビーム
を集束させて断面を作製した後、FIB装置からグラビ
ア印刷物を取り出し、該断面をSEMにより観察を行っ
たグラビア印刷物のインキ転移層断面を拡大した電子顕
微鏡写真である。図8において、(28)はグラビア印
刷物(D)の用紙表面に印刷されたインキ転移部分、
(29)はグラビア印刷用紙の塗工層、(30)はグラ
ビア印刷用紙の基材となる繊維である。前述したよう
に、印刷インキの転移状態を観察するために樹脂包埋す
ると、インキが溶け出し、インキ転移状態を観察するこ
とはできなかったが、本発明の紙または印刷物の断面作
製法ではインキを溶かさずに、用紙表面に転移したイン
キ層を直接断面観察することが初めて可能になった。ま
た、本発明による断面作製法では、インキ転移層ととも
に基材である印刷用紙も切断できることから、紙層構造
とインキ転移層を同時に観察できるため、インキ転移に
及ぼす紙層構造の影響を解析するためには、きわめて有
効な方法であることが確認できた。
製法では、前記実施例で使用しているイオンビームの照
射条件を、ガリウムイオンビームを加速電圧30kV以
上、ビーム電流15nA程度で、ビーム径を1000n
m程度に集束させて粗加工を行い、さらに仕上げ加工と
して加速電圧30kV以上、ビーム電流1nA以下で、
ビーム径を70nm以下に集束させて照射することによ
り、断面を作製することができる。
mの局所加工に利用されていたFIB装置で、厚さ10
0μm前後の紙または印刷物の断面を切り出すことが可
能であることを見いだし、該装置を用いて集束イオンビ
ームの加速電圧、ビーム電流及びビーム径のパラメータ
を、粗加工、仕上げ加工の2段階に設定し、照射するこ
とにより、従来技術とは比較にならない程の精度で、紙
または印刷物の断面を作製することが可能となり、従来
の断面作製法では断面作製位置を指定できないために繰
り返し行われていた断面作製作業や、観察に要していた
時間及び労力を大幅に減少させることが可能となった。
また、硬さや脆さの異なる材料が混合されている複合材
料や空隙を持つ材料、すなわち、紙または印刷物に、粗
加工と仕上げ加工時の加速電圧、ビーム電流及びビーム
径を特定の値に設定し、紙または印刷物の断面作製に必
要な量の集束イオンビームを照射することによって、加
工損傷(構造破壊)や温度上昇を招くことなく、シャー
プな断面を作製することが可能であることから、従来の
断面作製法で生じていた構造破壊や構造変化を起こさず
に断面を作製することが可能になった。さらに、断面作
製時の構造破壊を防止するために行われていた樹脂包埋
処理を必要としないので、これまで観察できなかった印
刷インキの用紙表面に転移したインキ層を直接断面観察
することが初めて可能になった。また、インキ転移層と
ともに基材である印刷用紙も切断できることから、紙層
構造とインキ転移層を同時に観察できるため、インキ転
移に及ぼす紙層構造の影響を解析するためにきわめて有
効な方法である。このように本発明の紙の断面作製法
は、紙の構造解析を行う際の従来のガラスナイフやスチ
ールナイフ方式に替わる断面を作製する方法として特に
有効である。
(b)は該装置内部の模式図である。
ある(×200倍)。
刷物の二次電子像写真である(×200倍)。
子顕微鏡写真である(×800倍)。
面の電子顕微鏡写真である(×300倍)。
ル塗工紙断面の電子顕微鏡写真であり(×800倍)、
(b)は該ダブル塗工紙断面の塗工層部を拡大した電子
顕微鏡写真である(×3000倍)。
塗工紙断面の電子顕微鏡写真である(×700倍)。
物断面の電子顕微鏡写真である(×5000倍)。
移部分 29 グラビア印刷用紙の塗工層 30 グラビア印刷用紙の基材となる繊維 A 樹脂包埋等の前処理をしていない印刷物 B 樹脂包埋処理を施さない用紙 C 樹脂包埋処理を施さないダブル塗工紙 D 樹脂包埋処理を施さないグラビア印刷物 x 切り出しライン y 切り出しエリア
Claims (3)
- 【請求項1】 イオンビーム照射手段と、画像検出手段
と、断面加工条件設定手段と、観察手段とを有し、局所
加工を行うための集束イオンビーム装置を用いて、紙ま
たは印刷物に、前記集束イオンビーム装置のイオンビー
ム照射手段より、イオンビームを照射し、照射すること
により前記画像検出手段で検出された二次電子像を、前
記観察手段により観察しながら、前記紙または印刷物の
切り出し領域及び切り出し位置を指定し、次に、前記断
面加工条件設定手段により集束イオンビームの加速電
圧、ビーム電流、ビーム径の断面加工条件を粗加工、仕
上げ加工の2段階に設定して、前記紙または印刷物の前
記粗加工による、前記切り出し領域及び前記切り出し位
置の切り出しは、まず、前記イオンビームとしてガリウ
ムイオンビームを、加速電圧30kV以上、ビーム電流
9〜15nA、ビーム径を300〜1000nmに設定
し、集束させて照射し、前記紙または印刷物を切り出
し、さらに断面加工精度を上げるための仕上げ加工によ
る前記切り出し領域及び前記切り出し位置の切断は、加
速電圧30kV以上、ビーム電流1nA以下、ビーム径
を70nm以下に設定し、集束させ照射することによっ
て、加工損傷や温度上昇を招くことなく、紙層、塗工層
及び用紙に転移した印刷インキ層の構造を変化させない
で、紙または印刷物の前記指定した切り出し位置の断面
を切り出すことを特徴とする紙または印刷物の断面作製
法。 - 【請求項2】 前記紙または印刷物を、集束イオンビー
ム装置を用いて、前記紙または印刷物の断面作製法によ
り前記紙または印刷物の断面を作製し、前記紙または印
刷物の断面を、走査型電子顕微鏡または元素分析装置を
用いて、前記紙または印刷物の前記切り出し位置の断面
の紙層構造及び塗工層構造を観察し、前記断面の紙層内
の微細な繊維状態、てん料及び塗工剤の分布状態を解析
することを特徴とする請求項1記載の紙または印刷物の
断面作製法で得られた断面の観察法。 - 【請求項3】 前記紙または印刷物を、集束イオンビー
ム装置を用いて、前記紙または印刷物の断面作製法によ
り前記紙または印刷物の断面を作製し、前記紙または印
刷物の断面を、走査型電子顕微鏡を用いて、前記紙また
は印刷物の前記切り出し位置の断面の紙層構造、塗工層
構造または印刷インキの転移状態を観察することを特徴
とする請求項1記載の紙または印刷物の断面作製法で得
られた断面の観察法。
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JP9276605A JP3044298B2 (ja) | 1997-09-25 | 1997-09-25 | 紙または印刷物の断面作製法並びに断面観察法 |
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-
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- 1997-09-25 JP JP9276605A patent/JP3044298B2/ja not_active Expired - Fee Related
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