JP3037843U - 移動体の駆動装置 - Google Patents

移動体の駆動装置

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萬盛 井出
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萬盛 井出
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Abstract

(57)【要約】 【目的】自動車や搬送車あるいは移動ロボットなどのよ
うな車輪を有する移動体における走行および方向転換時
の欠点を解消し、安全な走行と円滑な方向転換ができる
駆動装置を提供することにある。 【構成】車輪を回転制御して移動する移動体の駆動装置
を対象とし、球形の駆動球による駆動手段と、駆動球を
2方向から同時に回転駆動する為の第一回転駆動手段お
よび第二回転駆動手段とを備え、第一回転駆動手段およ
び第二回転駆動手段は、相互作用を受けず互いに独立し
て駆動球に回転伝達することを特徴とする駆動装置であ
る。さらに、前記第一回転駆動手段および第二回転駆動
手段の駆動接点が駆動球の半分の高さの位置に接するよ
う配置し、互いに90度の異なった方向から回転伝達を
行なう方法により相互作用を無くすよう構成されている
ことを特徴とする移動体の駆動装置。

Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は一般の自動車や倉庫などの狭い空間で作業する搬送車あるいは移動ロ ボットの駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体表面の移動には車輪、無限軌道、脚歩行の3つのシステムを使用するのが 一般的である。車輪を有する移動体では異なった方式の駆動および方向転換の方 式がある。図5は移動体を底から見た平面図であり、代表的な4つの方式につい て示している。
【0003】 図5(a)に示した駆動方式はディファレンシャルドライブと呼ばれているも ので、その構造は1つないしは2つのキャスター付き補助車輪WBと、共通軸に 取り付けた2つの駆動車輪Wから構成され。各駆動車輪Wは互いに独立駆動でき るようにしたものである。したがって、前進、後退およびその場で回転したり、 弧を描いて動ける。このような構造の場合、回転時に遠心力が発生したり、走行 時の直進が難しいなどの問題がある。
【0004】 図5(b)に示した駆動方式はシンクロドライブと呼ばれるもので、その構造 は三輪を使用し、全ての車輪が同時に方向転換および駆動の動作を行なうよう構 成されている。したがって、方向転換した際に進行方向は変化するが車体の方向 は変化しない。このような構造は大変複雑になる欠点がある。また、車輪速度を 監視する必要もあり安定性にも問題がある。
【0005】 図5(c)は三輪ドライブであり、2つの固定輪が駆動動力と接続され車体を 推進させ、前輪となる一つの方向転換用車輪の角度を変えることによって進行方 向を変えている。
【0006】 図5(d)はカードライブであり、一般の自動車にみられる方式である。2つ の固定輪(後輪)が駆動動力と接続され車体を推進させ、2つの前輪と車体との 角度を変えることによって方向転換させている。なお、カードライブでは前輪に 駆動動力を接続し、駆動および方向転換の2つの働きを前輪にさせているものも ある。
【0007】 三輪ドライブやカードライブでは方向転換用の車輪構造が複雑になり、故障の 原因でもある。また、方向転換に対して広い場所を必要とする欠点がある。
【0008】 従来技術では何れの方式においても取り付ける車輪の回転軸は車輪の形状にか かわらず固定している。そのため、車輪の回転は回転軸を中心に正転および逆転 以外の回転は発生しない。
【0009】
【解決しようとする課題】
回転軸が固定している車輪による移動体では方向転換に対して複雑な操作を伴 い、時間や場所が必要となる。そのため、縦列駐車や車庫入れなどに大変な労力 を使うなど、方向転換に対して広い場所と複雑な操作を伴う。これらの問題は狭 い空間で作業するロボットや搬送車などにとって不利な条件であり、作業空間の 縮小ができない。また、方向転換の際に発生する遠心力によって車体のバランス が悪くなったり、方向転換用車輪の方向操作に対する機械構造が複雑になるなど の問題を抱えている。
【0010】 本考案の目的はこのような従来技術の欠点を解消し方向転換が安全で円滑に行 える移動体の駆動装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本考案は 車輪を回転制御して移動する移動体の駆動装置を対象とするものである。
【0012】 そして球形の駆動球による駆動手段と、 前記駆動球を2方向から同時に回転駆動する為の第一回転駆動手段および第二回 転駆動手段とを備え、 前記第一回転駆動手段および第二回転駆動手段は、相互作用を受けず互いに独 立して駆動球に回転伝達することを特徴とするものである。
【0013】 さらに本考案は前記第一回転駆動手段および第二回転駆動手段の相互作用を無 くす為、駆動球表面に接する駆動ローラの位置を駆動球の高さの半分の高さにな るよう配置し、互いに90度の異なった方向から回転伝達を行なうことを特徴と するものである。
【0014】
【考案の実施の形態】
以下に本校案の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は実施の形態に 係る移動体の斜視図、図2はその具体的な機構を示す断面図、図3はその底から みた平面図。図4は本考案の駆動原理を説明する駆動動力の伝達系統を示す斜視 図。図5は従来技術における車輪を有する移動体の車体底からみた平面図にして 駆動方式の説明に用いる。
【0015】 図1に示す斜視図を用いて本考案の機構を説明すると次のようである。 駆動球(1)は市販の大型ボールキャスターを用いている。大型ボールキャス ターはベアリング構造になっていて駆動球(1)が自在に回転できるよう構成さ れている。駆動球(1)を伴う大型ボールキャスターは車体上部(3)に固定さ れ、駆動球(1)は車体下部3の中心に開けた穴から突き出て走行面に接してい る。車体上部(3)と車体下部(2)は固定用ボルト(6)で固定されている。
【0016】 また、第一回転駆動手段は第一回転駆動動力MXとその回転軸に取り付けた第 一回転駆動ローラRXで構成され、第二回転駆動手段は第二回転駆動動力MYとそ の回転軸に取り付けた第二回転駆動ローラRYとで構成されていて、2つの駆動 ローラ(RX、RY)は駆動球に接している。
【0017】 さらに、車体の安定性確保の為に小型のボールキャスターを補助車輪(5)と して4ヶ所に取り付けてある。
【0018】 第2図に示す断面図を用いて各部固定の様子を説明すると次のようである。 駆動球(1)を伴う大型ボールキャスターは2本の固定用ボルト(7)によって 頑強に車体上部(3)に取り付ける。また、車体上部(3)と車体下部(2)は 4本の固定用ボルト(6)によって頑強に固定する。固定用ボルト(6)によっ て車体上部(3)と車体下部(2)の間隔が調整できる為、車体下部(2)の中 心に設けた穴から駆動球(1)の一部が突き出るよう固定用ボルト(6)のナッ ト位置を調整する。
【0019】 車体下部(2)に取り付ける第一回転駆動動力MXと第二回転駆動動力MYは互 いに直角になるよう配置し、各々の回転駆動モータ(MX、MY)の軸に取り付け た第一回転駆動ローラRXと第二回転駆動ローラRYが駆動球(1)の半分の高さ にて接するように各々のモータの高さおよび固定用ボルト(6)の取り付けを調 整する。 補助車輪(5)が車体下部(2)より底方向に突き出す長さは駆動球(1)が 車体下部(2)より突き出す長さより短くなるよう調整した。 車体下部(2)に接続する固定用ボルト(6)の頭部は車体下部(2)に掘っ た溝に埋まるよう固定し、走行時の支障にならない。
【0020】 第3図は車体底方向から見た平面図にして、車体下部(2)の構造を示す。車 体下部(2)には駆動球(1)および補助車輪(5)に対応する穴が開いていて 、車体底から見えるのは中心にある駆動球(1)と4つの補助車輪(5)である 。補助車輪(5)は車体の安定性を保つ為のものであり3つ以上必要になる。本 考案では4つの補助輪5を用いて安定性を向上させている。
【0021】 以上のような機構によって第一回転駆動動力MXの回転は第一回転駆動ローラ RXを伝わり駆動球(1)に伝達される。また第二回転駆動動力MYの回転も第二 回転駆動ローラRYを伝わって駆動球(1)に伝達され、駆動球(1)が車体下 部(2)の底から突き出て走行面に接する為、車体は推力を得て走行できる。
【0022】 第4図は駆動動力の伝達系統を示す斜視図であり、これを用いて前記2つの回 転駆動手段が駆動球(1)に対して独立に作用する仕組みを説明する。 第4図では駆動球(1)の中心をOとして互いに直角な関係にあるX軸、Y軸 、Z軸による三次元空間のY軸に平衡に第一回転駆動動力MXを、X軸に平衡に 第二回転駆動動力MYを置き、第一回転駆動ローラRXはX軸上に、第二回転駆動 ローラRYはY軸上に配置されている。
【0023】 この様な配置において、第一回転駆動動力MXの回転方向は右回転(時計回転 方向)で、第一回転駆動ローラRXを伝わって駆動球(1)に伝達され、駆動球 (1)はY軸を回転軸とした回転TXになる。また、第二回転駆動動力MYの回転 方向は左回転(反時計回転方向)で、第二回転駆動ローラRYを伝わって駆動球 (1)に伝達され、駆動球(1)はX軸を回転軸とした回転TYになる。
【0024】 第一回転駆動動力MXによる回転力はY軸を回転軸とする回転として駆動球( 1)に伝達される。Y軸上にある第二回転駆動ローラRYは駆動球(1)に接し ているが、回転軸上の接点として接している為、Y軸を回転軸とする回転力を低 下させる要因にはならない。また、第二回転駆動動力MYによる回転力はX軸を 回転軸とする回転として駆動球(1)に伝達される為、第一回転駆動ローラRX によって回転力の低下を引き起こすことはない。したがって、本考案の動力伝達 機構では第一回転駆動動力MXの回転力と第二回転駆動動力MYの回転力は相互作 用を受けず駆動球(1)に対して独立に伝達される。
【0025】 また、第一回転駆動動力MXの回転力が駆動球(1)上の回転力TXとして伝達 され、第二回転駆動動力MYの回転力が駆動球(1)上の回転力TYとして伝達さ れると、駆動球(1)は回転力TXと回転力TYをベクトル合成した回転力Tを得 る為、駆動球(1)は合成ベクトルの方向に回転する。
【0026】 例えば、第一回転駆動動力MXの回転方向が右回転(時計方向)の場合、駆動 球(1)の回転はY軸を回転軸とした回転TXになる。また、第二回転駆動動力 MYの回転方向が左回転(反時計方向)の場合、駆動球(1)はX軸を回転軸と した回転TYになる。したがって、駆動球(1)は回転力Tを得、車体はX軸に 対して45度の方向に進行する。
【0027】 第一回転駆動動力MXと第二回転駆動動力MYの回転数を同じにして右回転、左 回転、停止の3状態制御を行なうと車体の移動方向はその組合せによって8方向 の移動方向が得られる。また、2つの回転駆動動力(MX、MY)の回転数を細か く調整する事によって更に細かく移動方向の調整が可能である。
【0028】
【実施例】
以上の実施形態の具体的部品例を以下に示す。なお、以下の部品例は本考案の 一実施例にすぎず、本考案の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0029】 駆動球(1)はベスト株式会社製の大型面付ボールキャスタで直径32mmで ある。補助車輪(5)もベスト株式会社製の小型面付ボールキャスタで直径10 mmである。 駆動モータMXおよびMYはマクソン株式会社製の9V仕様の直流モータを使用し 、形名はRE013ー032−06EAA102Aである。第一回転駆動ローラ RXおよび第二回転駆動ローラRYに使用したゴムローラは田宮模型株式会社製の 直径5mmのゴムチューブである。また、車体下部(2)および車体上部(3) には厚さ3mmのアクリル板を使用し、固定用のボルト(6、7)は直径5mm のISOネジを使用した。
【0030】
【考案の効果】
固定した回転軸を持つ車輪と比較して、方向転換に対する無駄な動作や時間が 無くなり、車体と同じ幅の移動空間があれば移動および方向転換が可能である。
【0031】 本考案の駆動装置によると第一回転駆動手段による駆動球の回転軸と第二回転 駆動手段による駆動球の回転軸は互いに直角であり、一方の回転軸上に他方の駆 動接点(駆動ローラ)を配置している為、第一回転駆動手段および第二回転駆動 手段による回転力は相互作用を受けず互いに独立して駆動球に作用できる。その ため2方向からの回転力をそれぞれ独立に調整する事によって移動体の移動方向 を変更できる。
【0032】 本考案の駆動装置による移動は前進後退はもとより360度方向全てに対して 車体方向は変更せずに移動方向を変更できるため、方向転換の際に遠心力の発生 が無く、安全に方向転換が行えた。
【0033】 このようなことから、走行時に高い安定性を有し、作業空間を縮小できる移動 体の駆動装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本校案の車体機構を説明する為の斜視図。
【図2】本考案の車体組立を説明する為の断面図。
【図3】本考案の車体底から見た平面図。
【図4】本考案の駆動原理を説明する為の駆動動力の伝
達系統を示す斜視図。
【図5】従来技術における車輪を有する移動体の車体底
からみた平面図。
【符号の説明】
1 駆動球(大型ボールキャスター) 2 車体下部 3 車体上部 4 駆動モータ取り付け金具 5 ボールキャスター構造の補助車輪 6 車体上部と下部を接続固定するボルト 7 駆動部の接続固定用ボルト MX 第一回転駆動動力 MY 第二回転駆動動力 RX 第一回転駆動ローラ RY 第二回転駆動ローラ TX 駆動球(1)が第一回転駆動動力MXから受けた回
転力 TY 駆動球(1)が第二回転駆動動力MYから受けた回
転力 T TXとTYを合成した回転力。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年10月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正内容】

Claims (2)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車輪を用いた移動体の駆動装置におい
    て、球形の駆動球による駆動手段と、前記駆動球を2方
    向から同時に回転駆動する為の第一回転駆動手段および
    第二回転駆動手段とを備え、 前記第一回転駆動手段および第二回転駆動手段は相互作
    用を受けず、互いに独立して駆動球に回転伝達すること
    を特徴とした移動体の駆動装置。
  2. 【請求項2】 「請求項1」記載の第一回転駆動手段お
    よび第二回転駆動手段の相互作用を無くす為、駆動球表
    面に接する駆動ローラの位置を駆動球の高さの半分の高
    さになるよう配置し、互いに90度の異なった方向から
    回転伝達を行なうことを特徴とする移動体の駆動装置。
JP1996008957U 1996-08-19 1996-08-19 移動体の駆動装置 Expired - Lifetime JP3037843U (ja)

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