JP3026388B2 - 時効硬化型熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

時効硬化型熱延鋼板の製造方法

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JP3026388B2 JP4109346A JP10934692A JP3026388B2 JP 3026388 B2 JP3026388 B2 JP 3026388B2 JP 4109346 A JP4109346 A JP 4109346A JP 10934692 A JP10934692 A JP 10934692A JP 3026388 B2 JP3026388 B2 JP 3026388B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強度が低く伸びが大き
く成形性に優れ、熱処理によって大幅な強度上昇が可能
な時効硬化型熱延鋼板の製造方法に関し、自動車のビー
ム類、ホィール、その他主要構造部材に適用できる。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年、
自動車の燃費向上のために高強度鋼板に対する要求が高
まっている。しかし、鋼板の強度が高くなると加工性が
低下するため、高強度鋼板の使用に際しては、加工性の
確保が問題となる。
【0003】このような要求を満たすものとして、Cu
を添加した時効硬化型高強度熱延鋼板が実用化されてい
る。これは、1%程度のCuを添加し、熱延板の状態で
はCuを固溶状態としておいて低強度で加工性の良い状
態としたものであり、加工後の熱処理によって時効硬化
させ、使用時には強度を確保する。このCu添加鋼にお
いては、時効硬化によって約20kgf/mm2程度の強度上
昇が得られ、時効後の強度としては80kgf/mm2程度の
ものが使われている。これに対して、更に強度アップの
要求に対応する場合、熱間脆性のために添加量が制限さ
れるため、Cu添加鋼においては約20kgf/mm2を大幅
に上回る強度アップは望めない。
【0004】一方、CuとNi、Alを複合添加すること
によって大幅な時効硬化が望めることは既に知られてお
り、CuとNi、Alの添加量と強度の関係についても調
べられている(例えば、「Iron and Steel」1972
年10月、p.502−514)。しかしながら、このよ
うな検討は主に強度を追求することを主目的としている
ために、時効前の加工性については殆ど検討されていな
い。熱延鋼板の場合には熱延板での加工性を確保するこ
とが必須であり、特にハイテンにおいては伸び特性が重
要である。この点、従来報告されている複合添加材は、
炭素量が多く、マトリックスがフェライト・パーライト
若しくはベイナイト、マルテンサイト組織であり、時効
前の加工性は良好ではなかった。
【0004】本発明は、上記従来技術の欠点を解消し
て、熱延板での強度が50kgf/mm2以下と低いと同時に
伸びが30%以上と大きく、なおかつ、時効によって2
5kgf/mm2以上の大幅な強度増加が得られる時効硬化型
熱延鋼板を製造する方法を提供することを目的とするも
のである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、かゝる目的
を達成するために極低炭素鋼に着目し、極低炭素鋼にC
u、Ni、Alの添加を行ったところ、極低炭素化とCu、
Ni、Al複合添加の組合わせ技術だけでは本発明の目的
は達成できないことがわかった。
【0006】そこで、更に鋭意検討を進めた結果、C、
Ni等の添加量と熱間圧延後の冷却条件及び巻取条件を
制御することによって、熱延板の組織を軟質なポリゴナ
ルフェライト単相として良好な加工性(低強度、高伸び)
を確保できることを見い出し、ここに本発明をなすに至
ったのである。
【0007】すなわち、本発明は、C:0.006%以
下、Si:0.75%以下、Mn:1%以下、P:0.1%以
下、S:0.02%以下、Al:0.5〜1.5%、Ni:2〜
4%、Cu:0.5〜2%を含有し、残部がFe及び不可避
的不純物からなる鋼を、熱間圧延後、圧延仕上げ温度か
ら600℃までを50℃/s以下の速度で冷却し、45
0℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする時効硬化型
熱間圧延鋼板の製造方法を要旨とするものである。
【0008】以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0009】
【作用】まず、本発明における極低炭素鋼の化学成分の
限定理由について説明する。
【0010】C:Cはパーライトの析出量を定め、なお
かつ過冷組織の出来易さに影響を与えるため、できる限
り少ないことが望ましい。特にNi添加鋼においてはマ
ッシブ組織とならないようにする必要があり、そのため
に、C量は0.006%以下とする必要がある。
【0011】Si:Siは脱酸剤として必要な元素である
が、多量に添加すると素材の硬度を高くし、加工性の低
下を招き、また酸洗性を劣化させるので、Si量は0.7
5%を上限値とする。
【0012】Mn:MnはSの固定に必要な元素である。
しかし、Mnを1%より多く添加すると素材の焼入性を
向上させ、素材の軟質化を妨げる。したがって、Mn量
は1%を上限値とする。
【0013】P:Pは粒界脆化を起こす元素であるの
で、0.1%を上限とする。
【0014】S:SはMnSとなって介在物密度を増加
させ加工性を損なう。したがって、材料の加工性を確保
するために、上限を0.02%とする。
【0015】Al、Ni、Cu:Al、Ni、Cuは本発明の
本質に係わる元素であり、複合硬化を起こさせ、なおか
つ素材の加工性を確保するために、以下のとおり添加量
を規制するものである。
【0016】Alは硬化に必須の元素であり、そのため
には0.5%以上の添加が必要である。しかし、1.5%
より多く添加すると介在物密度が増加して加工性を損な
い、また鋳造時のノズル閉塞を起こすために生産性が悪
化し、コスト増となるので、Al量は0.5〜1.5%の
範囲とする。
【0017】Niも、また硬化に必須の元素であり、そ
のためには2%以上の添加が必要である。しかし、4%
より多く添加すると素材の焼入性が向上し、素材の加工
性が劣化してしまうので、Ni量は2〜4%の範囲とす
る。
【0018】Cuはそれ自体硬化能を有するが、この効
果以上に複合硬化に寄与し、硬化時間の短縮に効果があ
る。そのためには0.5%以上の添加が必要であるが、
2%より多量に添加しても効果が変わらないだけでな
く、かえって熱間脆性を生じて熱延スラブに割れを生じ
る。そこで、複合効果を十分に発揮し、熱間脆性を起こ
さない範囲として、Cu量は0.5〜2%の範囲とする。
【0019】なお、不純物元素は通常の含有量範囲であ
れば特に問題はない。
【0020】次に、本発明における製造条件の限定の理
由について述べる。
【0021】上記化学成分を有する極低炭素鋼は常法に
より溶製、鋳造し、熱間圧延を行うが、熱間圧延条件は
以下のように規制する必要がある。なお、熱間圧延仕上
げ温度は920℃以上として、オーステナイト域で圧延
を終了するのが好ましい。
【0022】この材料は、炭化物や窒化物が少ないので
フェライト粒が粗大となり易く、また徐冷すると粗大析
出物が旧オーステナイト粒界に析出するために圧延方向
に延びた伸長粒になり易い。したがって、ポリゴナルフ
ェライトとするために圧延温度から急冷する必要があ
る。すなわち、圧延温度から600℃までを5℃/s以
上の速度で冷却すると結晶粒の粗大化が防止できる。一
方、あまり急冷すると過冷されて転移密度の高い組織と
なってしまい、目的とする加工性が得られない。過冷組
織を防ぐためには冷却速度、炭素量、Ni量のバランス
を制御する必要があり、上記の組成範囲(C:0.006
%以下、Ni:2〜4%)では圧延温度から600℃まで
を50℃/s以下の冷却速度で冷却することが好まし
い。
【0023】また、巻取温度は析出を起こさない温度と
する必要があるが、上記組成範囲の場合には、450℃
以下で巻取ることによって析出を防ぐことができる。
【0024】なお、本発明では圧延温度から600℃ま
での冷却速度の下限を規定していない。これは巻取温度
を450℃以下と限定しているために、5℃/s以下の
冷却速度とすることは非現実的であり、特に限定する必
要がないからである。
【0025】かくして、本発明によれば、強度が低く伸
びが大きく、時効によって大幅な強度上昇が可能な熱延
鋼板が容易に製造できる。
【0026】次に本発明の実施例を示す。
【0027】
【実施例1】C:0.002%、Si:0.06%以下、M
n:0.88%、P:0.006%、S:0.005%、Cu:
1.0%、Al:1.0%、Ni:1〜6%を含有し、残部が
Fe及び不純物からなる組成の鋼を仕上げ温度950℃
で熱間圧延し、600℃までを30℃/sで冷却し、3
00℃で巻取処理(1時間保持後室温まで炉冷)を施し
た。この材料から引張試験片を採取し、圧延方向に引張
試験を行った。また、この材料を550℃で3時間時効
後空冷した試料でも同様に引張試験を行った。これらの
結果を図1に示す。同図は横軸にNi量を、縦軸に引張
特性を示した。
【0028】図1から明らかなように、時効前の強度
(TS)はNiが4%まで50kgf/mm2以下であるが、そ
れ以上のNi量では急激に強度が上昇している。また、
伸びをみても、4%Niまでは良好な値を示している
が、それ以上では大幅に劣化している。また、時効によ
る強度上昇量は、Niが2%以上で大きな値を示してい
るが、それ以下では従来のCu添加鋼並みの強度上昇し
かみられない。したがって、Ni量は2〜4%の範囲と
することが必要であることがわかる。
【0029】また、製造条件の影響を明らかにするため
に、上記成分組成でNiを3%とした材料を用いて、熱
延仕上げ温度から600℃までの冷却条件を5〜200
℃/sに変化させて影響を調べた。その結果は図2に示
すように、時効前の加工性の指標である伸びを確保する
ためには50℃/s以下の冷却速度とすることが必要で
あることがわかる。
【0030】次に巻取温度の影響を調べるために、上記
組成でNiを3%とした材料を用い、巻取処理温度を3
00〜700℃に変化させてその影響を調べた。その結
果を図3に示す。同図からわかるように、時効前に強度
が低く伸びの大きな状態を得るためには、巻取温度は4
50℃以下とする必要があることがわかる。
【0031】
【実施例2】C:0.0021%、Si:0.06%、Mn:
0.85%、P:0.006%、S:0.0049%、Cu:
0.99%、Al:0.024〜1.52%、Ni:3.0%、
残部がFe及び不純物からなる組成の鋼を仕上げ温度9
50℃で熱間圧延し、600℃までを30℃/sで冷却
し、300℃で巻取処理(1時間保持後室温まで炉冷)を
施した。この材料から引張試験片を採取し、圧延方向に
引張試験を行った。また、この材料を550℃で3時間
時効後空冷した試料でも同様に引張試験を行った。これ
らの結果を図4に示する。同図は横軸にAl量を、縦軸
に引張特性を示した。図4から明らかなように、時効前
の強度はAl量に依存しないが、時効後の強度は明らか
に依存しており、大幅な強度上昇を得るには0.5%以
上のAlが必要であることがわかる。
【0032】
【実施例3】C:0.002%、Si:0.06%、Mn:0.
85%、P:0.005%、S:0.0051%、Cu:0.
1〜2.0%、Al:1.0%、Ni:3.0%、残部がFe及
び不純物からなる組成の鋼を仕上げ温度950℃で熱間
圧延し、600℃までを30℃/sで冷却し、300℃
で巻取処理(1時間保持後室温まで炉冷)を施した。この
材料から引張試験片を採取し、圧延方向に引張試験を行
った。また、この材料を550℃で3時間時効後空冷し
た試料でも同様に引張試験を行った。これらの結果を図
5に示す。同図は横軸にCu量を、縦軸に引張特性を示
した。図5から明らかなように、時効前の強度はCu量
に依存しないが、時効後の強度は明らかに依存してお
り、大幅な強度上昇を得るには0.5%以上のCuが必要
であることがわかる。
【0033】
【実施例4】
【表1】 に示す化学成分を有する鋼を溶製し、鋳造して得られた
鋼塊について仕上げ温度950℃で熱間圧延を行い、6
00までを30℃/sで冷却し、300℃で巻取処理
(1時間保持後室温まで炉冷)を施した。この材料から引
張試験片を採取し、圧延方向に引張試験を行った。同表
中に熱延板の引張特性を示すように、本発明例はいずれ
も強度が低く伸びが大きい。一方、比較例No.3は炭素
量が多いために強度が高くなり伸びが低下してしまって
いる。また、比較例No.4はMnが多いために同様に強
度が高くなり伸びが低下している。
【0034】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
強度が低く伸びが大きいので成形性に優れ、かつ熱処理
によって大幅に硬化する高張力鋼板が容易に得られるの
で、特に自動車のビーム類、ホィール、その他主要構造
部材に使用した場合、車体重量の大幅な軽減に寄与し、
その産業上の意義、利益は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱延板の強度、伸び及び時効後強度とNi量と
の関係を示す図である。
【図2】熱延板の強度、伸び及び時効後強度と熱延後の
冷却速度との関係を示す図である。
【図3】熱延板の強度、伸び及び時効後強度と巻取温度
との関係を示す図である。
【図4】熱延板の強度、伸び及び時効後強度とAl量と
の関係を示す図である。
【図5】熱延板の強度、伸び及び時効後強度とCu量と
の関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/02 C22C 38/00 - 38/58 JICSTファイル(JOIS)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で(以下、同じ)、C:0.006%
    以下、Si:0.75%以下、Mn:1%以下、P:0.1%
    以下、S:0.02%以下、Al:0.5〜1.5%、Ni:2
    〜4%、Cu:0.5〜2%を含有し、残部がFe及び不可
    避的不純物からなる鋼を、熱間圧延後、圧延仕上げ温度
    から600℃までを50℃/s以下の速度で冷却し、4
    50℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする時効硬化
    型熱間圧延鋼板の製造方法。
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