JP3025488B1 - 育苗培土の製造方法および固化方法 - Google Patents

育苗培土の製造方法および固化方法

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Abstract

【要約】 【課題】 育苗培土基材または育苗培土用糊剤の種類お
よび量に応じて、良好な固化状態を有する育苗培土を簡
便にかつ安定して得ることができる育苗培土の製造方法
および固化方法を提供する。 【解決手段】 育苗培土基材と、アニオン性官能基を有
し上記育苗培土基材中の多価カチオンと反応して育苗培
土を固化させる育苗培土用糊剤とを含む育苗培土におい
て、上記育苗培土基材と育苗培土用糊剤とを、育苗培土
100g中の3価カチオン当量Y(me)およびアニオ
ン当量X(me)が、領域Aを示す関係式(I)を満た
すように混合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農園芸作物の機械
移植に好適に用いられる育苗培土の製造方法および固化
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、農園芸作業の効率化を図る目
的で、野菜、花卉、水稲等の農園芸作物の機械移植がさ
かんに行われている。一般に、機械移植は、鉢形等の形
状よりなる育苗容器(育苗ポット)中で土付苗を育苗
し、続いて、移植機により、上記育苗ポットから土付苗
を、たとえば、突き出すことによって分離した後、畝へ
植付けるという手順により行われる。
【0003】このように、機械移植は、農園芸作業の効
率化を図るために、上記土付苗、すなわち、苗と、苗を
育成するために育苗ポット中に充填され、該苗の根によ
って包みこまれた育苗培土(以下、「根鉢部分」とい
う)とが、ともに移植機により畝へ植付けられるという
作業工程を有している。上記突き出しを行う場合は、た
とえば、育苗ポットの底部に穿設された穴を貫通し得る
ように移植機に設けられた突き出し棒により、土付苗が
突き出される。
【0004】従って、上記手順による機械移植が円滑に
行われるためには、根鉢部分が弾力性を有し、これによ
り、土付苗が崩壊することなく、育苗ポットから突き出
し等され易い性質、すなわち、育苗ポットからの抜け性
が良好であることが必要である。
【0005】一方、機械移植される農園芸作物が、特に
根圏において順調に生育できるためにも、上記根鉢部分
は、適度の弾力性を有していることが必要である。
【0006】そこで従来より、育苗培土に、アクリルア
ミド/アクリル酸(塩)共重合体等の育苗培土用糊剤を
含有させ、該育苗培土を育苗培土用糊剤にて固化させる
ことにより、育苗培土の弾力性および抜け性を向上させ
る手法が用いられている。
【0007】上記育苗培土用糊剤を含有した育苗培土と
しては、たとえば、特公平3−49525号公報に、ア
クリル酸ナトリウムに由来する繰返し単位を所定の比率
で含むアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体
を含有する育苗培土が開示されている。この育苗培土で
は、アクリル酸ナトリウムの電離によって生じるナトリ
ウムイオンと、育苗培土基材としての土壌中に含まれ
る、アルミニウムイオン等の多価金属イオン(多価カチ
オン)とが置換し、育苗培土基材と育苗培土用糊剤との
間で新たなイオン結合が形成され、育苗培土基材どうし
が育苗培土用糊剤によって架橋されることにより、育苗
培土の固化反応が行われる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の
育苗培土では、育苗培土中に含まれる育苗培土用糊剤の
種類は規定されているが、育苗培土基材としての土壌の
種類については特に規定されていない。このため、同じ
種類の育苗培土用糊剤を育苗培土基材に対して同じ割合
で用いても、育苗培土基材の種類によっては、つまり、
育苗培土基材中に含まれるカチオン量によって育苗培土
の固化状態が変化してしまうという問題点がある。
【0009】すなわち、育苗培土に含まれる育苗培土用
糊剤と育苗培土基材との組み合わせによっては、該育苗
培土を用いて形成される根鉢部分が硬くなったり、土壌
の粒子どうしが密着して締まったものになり、十分な弾
力性が得られない場合が生じる。育苗培土がこのような
状態となると、土付苗の育苗ポットからの抜け性が悪化
し、機械移植時に、移植機から土付苗に対し加えられる
力、すなわち、機械抵抗が大きくなる。また、土付苗が
十分生長する前に、上記のような固化状態となると、根
鉢部分が十分な弾力性を有しなくなるため、根の十分な
生長が妨げられ、農園芸作物の生育が阻害されるという
問題点がある。
【0010】一方、別の育苗培土用糊剤と育苗培土基材
との組み合わせによっては、得られる根鉢部分が十分な
強度を有さない場合があり、このような場合には育苗ポ
ットから土付苗を突き出す際に、該土付苗の根鉢部分が
崩壊するため、移植機による機械作業を円滑に行うこと
ができない。
【0011】本発明は、上記問題点を解決するためにな
されたものであり、その目的は、育苗培土基材または育
苗培土用糊剤の種類および量に応じて、良好な固化状態
を有する育苗培土を簡便にかつ安定して得ることができ
る育苗培土の製造方法および固化方法を提供することに
ある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を解決するために鋭意検討を続けてきた。その結果、
育苗培土基材と育苗培土用糊剤とを、育苗培土100g
中の3価カチオン当量Y(me)およびアニオン当量X
(me)が一定の関係を満たすように、上記育苗培土基
材と育苗培土用糊剤とを混合することによって、上記目
的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至
った。
【0013】請求項1の育苗培土の製造方法は、上記の
課題を解決するために、育苗培土基材と、アニオン性官
能基を有し、上記育苗培土基材中の多価カチオンと反応
して育苗培土を固化させる育苗培土用糊剤とを含む育苗
培土の製造方法であって、上記育苗培土基材と育苗培土
用糊剤とを、育苗培土100g中の3価カチオン当量Y
(me)およびアニオン当量X(me)が、
【0014】
【数3】
【0015】の関係を満たすように混合することを特徴
としている。
【0016】請求項2の育苗培土の製造方法は、上記の
課題を解決するために、育苗培土基材と、アニオン性官
能基を有し上記育苗培土基材中の多価カチオンと反応し
て育苗培土を固化させる育苗培土用糊剤とを含む育苗培
土の製造方法であって、 上記育苗培土基材中の3価カチ
オンの量を測定し、該3価カチオンの量に応じて、育苗
培土100g中の3価カチオン当量Y(me)およびア
ニオン当量X(me)が、
【数4】 の関係を満たすように混合することを特徴としている。
請求項3の育苗培土の製造方法は、上記の課題を解決す
るために、請求項1または2記載の育苗培土の製造方法
において、上記育苗培土用糊剤が、アクリル系重合体で
あることを特徴としている。
【0017】請求項4の育苗培土の固化方法は、上記の
課題を解決するために、請求項1〜3の何れか1項に記
載の育苗培土の製造方法により得られた育苗培土を固化
することを特徴としている。
【0018】上記の方法によれば、上記YおよびXが、
上記関係式(I)を満たすように混合することで、育苗
培土中の2価カチオン等の存在によって影響を受けるこ
となく3価カチオンの量およびアニオン量のみを指標と
した簡便な手順により、育苗培土基材または育苗培土用
糊剤の種類および量に応じて、良好な固化状態を有する
育苗培土を安定して得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の内容について、以下に詳
細に説明する。本発明の育苗培土の製造方法は、育苗培
土基材と、アニオン性官能基(酸性官能基)を有し上記
育苗培土基材中の多価カチオンと反応して育苗培土を固
化させる育苗培土用糊剤とを含む育苗培土の製造方法で
あって、上記育苗培土基材と育苗培土用糊剤とを、育苗
培土100g中の3価カチオン当量Y(単位:mili
equivalent,以下「me」という)およびア
ニオン当量X(me)が、上記関係式(I)を満たすよ
うに混合する方法である。
【0020】上記3価カチオンとしては、アルミニウム
イオン、鉄イオン、ホウ素イオン、チタンイオン、セリ
ウムイオン等が挙げられる。
【0021】本発明にかかる育苗培土基材としての土壌
の種類は、特に限定されないが、造粒培土、バーミキュ
ライト、パーライト、ゼオライト等の鉱物資材;ピート
モス、ヤシガラピートモス、バカス、バーク等の植物系
繊維資材;および上記例示の資材の混合品;等が挙げら
れる。
【0022】本発明にかかる育苗培土用糊剤は、アニオ
ン性を有する基(酸性官能基)を分子内に有する重合体
であれば特に限定されず、 上記関係を満たす範囲内で自
由に選択することができるが、たとえば、カルボキシル
基およびその塩ならびにスルホン酸基およびその塩等の
酸性官能基を有する単量体成分を重合してなる重合体が
挙げられる。
【0023】カルボキシル基もしくはその塩を有する単
量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン
酸、イタコン酸、フマル酸およびそのモノエステル、マ
レイン酸およびそのモノエステル、シトラコン酸および
そのモノエステル、メサコン酸およびそのモノエステル
等の1または2以上のカルボキシル基を含む単量体;上
記例示の単量体のアルカリ金属塩、上記例示の単量体の
アルカリ土類金属塩等の水溶性の塩;等が挙げられる。
これら単量体は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二
種類以上を混合して用いてもよい。
【0024】また、スルホン酸基もしくはその塩を有す
る単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホ
ン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−ア
クリロイルアミノ−2−メチルスルホン酸、3−アクリ
ロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキ
シ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−アクリル
アミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アクリル
アミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等の1また
は2以上のスルホン酸基を含む単量体;上記例示の単量
体のアルカリ金属塩、上記例示の単量体のアルカリ土類
金属塩等の水溶性の塩;等が挙げられる。これら単量体
は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混
合して用いてもよい。
【0025】上記各単量体において、上記水溶性の塩と
しては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグ
ネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等が挙げられ
る。
【0026】さらに上記単量体成分は、上記カルボキシ
ル基およびその塩ならびにスルホン酸基およびその塩の
いずれか一つの官能基を有する単量体と共重合可能な不
飽和単量体を含んでいてもよい。
【0027】上記不飽和単量体としては、アクリルアミ
ド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエ
ーテル、アリルアルキルエーテル、アクリル酸エステ
ル、メタクリル酸エステル、アルケン類、マレイン酸ジ
エステル、フマル酸ジエステル、スチレン、スチレン誘
導体、シクロヘキセン、ビニルハライド、飽和カルボン
酸ビニルエステル、飽和カルボン酸アリルエステル;等
が挙げられる。これら単量体は、一種類のみを用いても
よいし、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】また、本発明にかかる育苗培土用糊剤とし
て用いられる上記重合体としては、反応性を有する官能
基を側鎖に有する重合体において、該側鎖に、エステル
化、エーテル化、アセタール化等の反応により、カルボ
キシル基を導入した重合体、たとえば、シュウ酸エステ
ル化ポリビニルアルコール、グリコール酸エーテル化ポ
リビニルアルコール、グリオキザル酸アセタール化ポリ
ビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;およ
び、上記例示のポリビニルアルコールの塩;等であって
もよい。
【0029】さらに、上記重合体としては、カルボキシ
メチルセルロースまたはその塩であってもよく、これら
の化合物に由来する繰返し単位が側鎖に導入された重合
体であってもよい。
【0030】また、上記重合体としては、さらに、天然
高分子であるペクチン酸またはその塩、アルギン酸また
はその塩であってもよく、これらの化合物に由来する繰
返し単位を含む重合体であってもよい。
【0031】これら重合体は、一種類のみを用いてもよ
く、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
【0032】上記例示の重合体のなかでも、上記カルボ
キシル基もしくはその塩を有する単量体からなる単一重
合体;上記スルホン酸基もしくはその塩を有する単量体
からなる単一重合体;上記カルボキシル基もしくはその
塩を有する単量体と上記スルホン酸基もしくはその塩を
有する単量体との2元または多元共重合体;上記例示の
単量体の少なくともいずれか一つと、これら単量体と共
重合可能な不飽和単量体との2元または多元共重合体;
のいずれか一種、または二種以上の上記重合体の混合物
が好ましい。
【0033】また、上記例示の重合体のなかでも、アク
リル系重合体、すなわち、アクリル酸、メタクリル酸お
よびこれらの誘導体、たとえば、アクリルアミド、アク
リロニトリルを含む単量体成分からなる二元、または多
元重合体が特に好ましく、アクリルアミドおよびアクリ
ル酸ナトリウムを含む単量体成分からなる、2元または
多元アクリル系重合体が最も好ましい。
【0034】本発明における育苗培土用糊剤としての重
合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、200
万〜3,000万の範囲内であることが好ましい。重量
平均分子量が、3,000万を超えると、上記重合体が
水等に対して溶解し難くなるので好ましくない。
【0035】尚、上記重合体は、従来より一般に用いら
れている重合方法を用いて、上述した単量体を、必要に
応じて、アニオン度が所定の範囲内となるように重合さ
せることにより、製造することができる。
【0036】本発明にかかる育苗培土の製造方法では、
上述したように、育苗培土用糊剤としての上記重合体固
有のアニオン度に関わりなく、上記アニオン当量Xと、
上記3価カチオン当量Yとが上記関係式(I)を満たす
ようにアニオン量および3価カチオンの量を決定すれ
ば、常に一定以上の固化状態を安定して得られることか
ら、アニオン度の範囲は特に限定されず、用いる育苗培
土基材の種類および量、ならびに混合する育苗培土用糊
剤の量に応じて適宜決定される。
【0037】また、本発明にかかる育苗培土の製造方法
では、必要に応じて、上記育苗培土用糊剤以外の重合
体、その他添加剤等が育苗培土用糊剤の効果を阻害しな
い範囲内で含まれていてもよい。
【0038】育苗培土用糊剤を育苗培土基材としての土
壌に混合する方法としては、たとえば、コンクリートミ
キサーやリボンミキサー等の混合装置を用いて上記育苗
培土用糊剤と土壌とを、均一に混合する方法が挙げられ
る。
【0039】また、育苗培土用糊剤と土壌とを一括混合
する上記方法の他、予め、高濃度の育苗培土用糊剤を含
むマスターバッチ土壌を調製し、次いでこれと土壌とを
混合して所定濃度とする方法を用いてもよい。
【0040】育苗培土用糊剤の、育苗培土中における混
合割合は、3価カチオンの量と上記関係式を満たす所定
範囲内のアニオン量が育苗培土中に提供できるように、
育苗培土基材および育苗培土用糊剤の種類に応じて適宜
設定することができる。
【0041】本発明の育苗培土の製造方法により製造さ
れた育苗培土は、野菜、花卉、苗木、稲等の農園芸作物
に対し使用することができる。また、タマネギ、ネギ等
の比較的根の少ない野菜の土付苗においても、弾力性お
よび抜け性を有する根鉢部分を安定して形成することが
できる。
【0042】本発明の育苗培土の固化方法においては、
育苗培土中の3価カチオンの量と、育苗培土用糊剤が提
供するアニオン量とが、上記関係を満たすように、該ア
ニオン量を提供する上記育苗培土用糊剤と、該育苗培土
基材とを混合して得られた育苗培土に、たとえば、農園
芸作物の播種前後において、必要に応じて、所定量の潅
水を行うことにより固化させることができる。また、上
記潅水を行わない場合であっても、育苗培土中に含まれ
る水分によって、固化反応を進行させることもできる。
【0043】本願発明者らは、上述のように、育苗培土
基材および育苗培土用糊剤の種類と量との組み合わせに
よって、育苗培土の固化状態が変化することを見出し、
上記育苗培土基材中の3価カチオンの量と育苗培土用糊
剤中のアニオン量とが育苗培土の固化状態に関して、上
記関係式(I)に示される一定の関係を有することを明
らかにした。以下において、本発明の育苗培土の製造方
法および固化方法において、育苗培土基材中の3価カチ
オンの量と育苗培土用糊剤が提供するアニオン量との関
係について、育苗培土用糊剤である重合体として、アク
リルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体を用いた場
合を例として、育苗培土の固化状態に関する上記の関係
についてさらに詳しく説明する。
【0044】本願発明者らは、まず、固化させる対象基
材として海砂を用い、該海砂100gに対して、以下の
表1に示すアニオン度を有するアクリルアミド/アクリ
ル酸ナトリウム共重合体を、本発明にかかる育苗培土用
糊剤として各々0.8重量%添加して、リボンミキサー
で3分間混合し、該混合物に上記海砂に対し20重量%
の量の水を加えた後、さらに5分間混合したものを試験
用育苗培土とした。
【0045】上記試験用育苗培土をタマネギ用育苗トレ
ー(みのる産業(株)製、448ポット/枚)に、湿状
態で4.8g/ポットとなるように充填した。次に、上
記試験用育苗培土100gが最終的に、以下の表1に示
す各アルミニウムイオン当量となるようにアルミニウム
イオンを含有する各濃度の水溶液を、各1ml/ポット
潅注した。各ポットを30℃で24時間養生した後、5
0℃で試験用育苗培土が完全に乾燥するまで乾燥した。
【0046】尚、表1において、アルミニウムイオン当
量1(me)は、前述したようにアルミニウムイオン9
mgに相当する。
【0047】上記乾燥後の試験用育苗培土を、ポット底
部まで水が浸透するまで潅水し、湿状態とした後ポット
から抜き取り、1メートルの高さから自然落下させ、崩
壊の有無を目視により観察することにより、固化状態を
確認した。
【0048】上記手順により、各100個の試験用育苗
培土について試験を行い、該育苗培土の崩壊の有無を観
察し、崩壊の無かった試験用育苗培土の個数を調べた結
果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】上記表1において、試験用育苗培土の崩壊
が無かった割合が90%以上であった場合の試験用育苗
培土において、育苗培土用糊剤として使用したアクリル
アミド/アクリル酸ナトリウム共重合体の各アニオン度
についてのアルミニウムイオン当量の上限値および下限
値を以下に示す表2にまとめた。たとえば、上記表1に
おいて、アニオン度5モル%の場合、上記割合が90%
以上となるアルミニウムイオン当量の上限値は10m
e、下限値は0.8meである。
【0051】
【表2】
【0052】上記表2にまとめた各アニオン度における
アルミニウムイオン当量の上限値について、今度は、上
記アニオン度から換算して求めた試験用育苗培土100
g当たりのアニオン当量X(me)を横軸にとり、上記
アルミニウムイオン当量から換算して求めた試験用育苗
培土100g当たりのアルミニウムイオン当量Y(m
e)を縦軸にとってプロットした。同様に下限値につい
てもプロットを行い、それぞれ上限値どうし、下限値ど
うしで各プロットを結び、各々の曲線をY=0へ外挿し
た。上記のようにして得られたアルミニウムイオン当量
の上限値の曲線と下限値の曲線とを図1に示す。
【0053】図1において、上限値どうしを結んだ曲線
の計算式は、
【0054】
【数5】
【0055】として表現することができる。また、下限
値どうしを結んだ曲線の計算式は、
【0056】
【数6】
【0057】として表現することができる。
【0058】また、図1において、網かけ部分で表され
る領域Aは、上記上限値および下限値の間の範囲を示
し、この範囲内にある(X,Y)の組み合わせ、すなわ
ち、試験用育苗培土100g当たりのアニオン当量X
(me)と試験用育苗培土100g当たりのアルミニウ
ムイオン当量Y(me)との組み合わせは、上記したよ
うに、全て試験用育苗培土の崩壊が無かった割合が90
%以上となる、つまり、該試験用育苗培土の良好な固化
状態が安定して得られる領域と看做すことができる。
【0059】上記網かけ部分Aで表される領域は、上記
2曲線の計算式より、関係式(I)により表現すること
ができる。以上に明示されたように、育苗培土基材中の
3価カチオンの量と育苗培土用糊剤中のアニオン量との
関係式(I)は、他の種類の育苗培土基材および育苗培
土用糊剤についても、得られる育苗培土の固化状態との
関連において同様に成り立つ。
【0060】次に、本発明の特徴点をさらに明らかにす
るため、本発明にかかる製造方法および固化方法におけ
る育苗培土基材と育苗培土用糊剤との混合の形態、上記
関係式(I)を用いるに当たっての3価カチオン当量お
よびアニオン当量の算出方法等につき、以下に詳しく説
明する。
【0061】育苗培土基材と育苗培土用糊剤とを上記の
関係を満たすように混合するためには、具体的には、た
とえば、(1)上記育苗培土基材中の3価カチオンの量
を測定し、該3価カチオンの量に応じて育苗培土100
g中の3価カチオン当量Y(me)およびアニオン当量
X(me)が上記の関係を満たすように、混合する育苗
培土用糊剤を選択する方法;(2)上記育苗培土基材中
の3価カチオンの量を測定し、該3価カチオンの量に応
じて育苗培土100g中の3価カチオン当量Y(me)
およびアニオン当量X(me)が上記の関係を満たすよ
うに、上記育苗培土用糊剤の使用量を設定する方法;
(3)上記育苗培土用糊剤中のアニオン量に基づいて、
育苗培土100g中の3価カチオン当量Y(me)およ
びアニオン当量X(me)が上記の関係を満たすように
使用する育苗培土基材を選択する方法;(4)上記育苗
培土用糊剤中のアニオン量に基づいて、育苗培土100
g中の3価カチオン当量Y(me)およびアニオン当量
X(me)が上記の関係を満たすように、上記育苗培土
基材中の3価カチオンの量を調整する方法;等が挙げら
れる。
【0062】上記(1)〜(4)の方法において3価カ
チオンを測定する場合には、たとえば、育苗培土基材と
しての土壌を一定量採取し、育苗培土基材一定量当たり
の3価カチオン量を以下に述べるような3価カチオンの
定量法を用いて定量し、これを育苗培100g当たり
の3価カチオン当量に換算する方法が挙げられる。ま
た、上記(4)において、育苗培土基材中の3価カチオ
ンの量を調整する方法としては、たとえば、必要に応じ
た量の3価カチオンを提供できる金属塩水溶液等の処理
液を育苗培土基材に添加する等が挙げられる。
【0063】本発明によれば、育苗培土基材中の3価カ
チオンの量と、育苗培土用糊剤中のアニオン量とが、上
記の関係を満たすことで得られる育苗培土は、良好な固
化状態を常に安定して形成することができる。この場
合、育苗培土中に、たとえばナトリウムイオン等の1価
カチオンやカルシウムイオン等の2価カチオンが別に存
在している場合であっても、これらのカチオンの存在
が、上記3価カチオンの量および育苗培土用糊剤が提供
するアニオン量ならびに育苗培土の固化状態の3者間の
対応関係には何ら影響しない。従って、本発明の育苗培
土の製造方法を用いれば、上記3価カチオンの量および
アニオン量のみを指標として、選択すべき育苗培土基材
または育苗培土用糊剤の種類および混合量が決定できる
ので、簡便に上記目的を達成することができる。
【0064】ここで、上記3価カチオン当量Yおよびア
ニオン当量Xにおいて用いられる当量とは、化学当量に
等しいミリグラム数のイオンの量すなわち、ミリグラム
当量(me)をさす。たとえば、3価カチオンであるア
ルミニウムイオン当量の場合、1meとは、アルミニウ
ムイオンとして9mgに相当する値である。すなわち、
上記3価カチオンの場合、アルミニウムイオンは、アル
ミニウムの原子量が約27、アルミニウムイオンの価数
が3価であり、化学当量とは、酸素の7.999g(酸
素原子の1/2モル)と化合する元素の質量をWgとす
るときのWをいうことから、上記原子量を上記価数で除
した値から換算して、アルミニウムイオン9gが1グラ
ム当量とみなすことができ、同様にアルミニウムイオン
9mgを1ミリグラム当量とみなすことができる。
【0065】また、アニオン当量とは、酸として作用す
る1当量の水素を含む酸性官能基の量を表すものであ
り、育苗培土用糊剤のアニオン度と、該育苗培土用糊剤
の量との積で表される。
【0066】具体的には、育苗培土用糊剤として、アニ
オン度が20モル%のアクリルアミド/アクリル酸ナト
リウム共重合体を例にとって、説明すると、以下のよう
になる。すなわち、上記アクリルアミド/アクリル酸ナ
トリウム共重合体のアクリルアミド部分の分子量が71
であり、アクリル酸ナトリウム部分の分子量が94であ
ることから、上記育苗培土用糊剤のアニオン当量1(m
e)は、 アニオン当量1(me)=(71×0.8+94×0.2)÷0.2÷1000 =0.378 となり、この場合のアニオン当量1(me)は、上記育
苗培土用糊剤0.378gに相当することとなる。
【0067】たとえば、育苗培土100g当たり、上記
アニオン度の育苗培土用糊剤0.8gを混合した場合、
該育苗培土100gに含まれるアニオン当量は、 0.8÷0.378=2.116(me) となる。同様に、上記育苗培土用糊剤1.6gを育苗培
土100g当たりに混合した場合、該育苗培土100g
に含まれるアニオン当量は、 1.6÷0.378=4.233(me) となる。
【0068】さらに、アニオン度が16モル%のアクリ
ルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体を例にとって
同様の計算を行うと、 アニオン当量1(me) =(71×0.84+94×0.16)÷0.16÷1000 =0.467 となり、この場合のアニオン当量1(me)は、上記育
苗培土用糊剤0.467gに相当することとなる。
【0069】たとえば、100g当たり、上記アニオン
度の育苗培土用糊剤0.8gを混合した場合、該育苗培
土100gに含まれるアニオン当量は、 0.8÷0.467=1.713(me) となる。
【0070】以上の説明から明らかなように、育苗培土
中のアニオン当量は、混合する育苗培土用糊剤のアニオ
ン度(モル%)と該育苗培土用糊剤を混合する量との2
つの要因により決定づけられる。
【0071】本発明にかかる育苗培土基材中の3価カチ
オンの量の測定は、たとえばアルミニウムイオンの場
合、以下に述べるアルミニウムイオン定量法(「土壌養
分分析法」第7版,養賢堂)を用いて行うことができ
る。
【0072】<アルミニウムイオン定量法> (1)試験液の調製 育苗培土基材を完全に乾燥した状態である乾燥土壌とし
て1.00gに相当する量を100ml共栓つき遠沈管
に入れ、これにpH4,1N酢酸ナトリウム水溶液40
mlをピペットで添加した。上記遠沈管を密栓後ただち
に振とう機にかけ、振とう温度30℃において3時間振
とう機で振とうした。振とう後、2500rpmで5分
間遠心分離し、上澄液を採取し試験液とした。上澄液
は、必要に応じて乾燥定量濾紙により濾過した。定量の
精度の高さを確保するために、該上澄液は、育苗培土基
材が火山灰土壌である場合には、10ml、その他の土
壌である場合には、30ml程度採取した。採取した上
澄液(試験液)を保存する場合は、三角フラスコ等に密
栓して保存した。
【0073】尚、上記1N酢酸ナトリウム水溶液は、特
級水酸化ナトリウム飽和水溶液を脱塩水で希釈し、正確
に2N水酸化ナトリウムとした後、これを定容フラスコ
により500ml量り採り、1リットル容ビーカーに採
取した。上記定容フラスコに残存する水酸化ナトリウム
水溶液は、少量の脱炭酸した脱塩水で洗浄し、全て上記
ビーカーへ移した。該ビーカーに特級酢酸を徐々に撹拌
しつつ加え、ガラス電極でpH4.00に調整したの
ち、これを定容フラスコにより1リットルとした。
【0074】(2)アルミノン比色法 アルミニウムイオンは、以下に述べるアルミノン比色法
を用いて定量した。
【0075】アルミノン緩衝液:4N特級アンモニア水
250mlおよび4N特級酢酸250mlを正確に調製
し、これらを1リットル容ビーカー中で混合して500
mlのpH7,2N酢酸アンモニウムとした。これに3
7%特級塩酸を50ml加えて混合した。この溶液に
0.5%アルミノン水溶液100mlを加えて混合し
た。さらに、2%特級アラビアゴム水溶液100mlを
これに添加し、定容フラスコで脱塩水を添加して1リッ
トルとした後、冷暗所に保存した。尚、上記アルミノン
は、イーストマン(Eastman Organic Chemicals )社製
を用いることが最も好ましいが、国産品を使用する場合
は、小宗化学製または和光純薬製を用いることが好まし
い。また、特級アラビアゴムは、最初、少量の脱塩水で
溶かし、その後さらに脱塩水を加えて調製した。また、
特級アラビアゴムの水に不溶な部分については、遠心分
離により除去した。
【0076】塩酸ヒドロキシルアミン溶液:1N特級塩
酸100mlに5.0gの塩酸ヒドロキシルアミンを溶
かした。尚、塩酸ヒドロキシルアミン溶液は、各実験時
ごとに新たに調製した。
【0077】アルミニウム標準液:100.0mg〜2
00.0mgの金属アルミニウム(純度99.0%以
上)を正確に秤量し、特級濃塩酸で溶解させた。溶解
は、砂浴上で弱加温して行い、完全に溶解させた後、定
容フラスコで1リットルとし、アルミニウム標準液を得
た。該アルミニウム標準液は、使用時に適宜希釈して用
いた。
【0078】上記(1)で調製した試験液の一定量を5
0ml容ビーカーに採取した。採取量は、火山灰土壌の
場合は、0.2ml〜1ml、鉱質土壌の場合は、2m
l〜5mlを目安とした。但し、上記アルミノン緩衝液
に使用したアルミノンが国産品である場合は、採取量は
上記の1/2量とした。尚、この時点で、上記試験液が
腐植により着色していれば、過酸化水素水5mlを加え
て湯せん上で時計皿をかぶせて該着色を分解した。時計
皿を取り蒸発乾固した後、特級濃塩酸1ml加えて残さ
を溶解させ、澄明な液を得た。但し、採取量が1ml以
下の火山灰土壌の場合は、上記操作は行わなかった。
【0079】次に、鉄を還元するため、4mlの塩酸ヒ
ドロキシルアミン液をこれに添加し、さらに脱塩水を加
えて液量を25mlとした。次に、上記アルミノン緩衝
液10mlをホールピペットを用いて添加した後、ガラ
ス電極pHメーターにより、2N塩酸、2Nアンモニア
水を用いてpH3.5に正確に調整した。
【0080】次に、砂浴上に上記ビーカーを置き、時計
皿をかぶせ、静かに5分間沸騰させた。この場合、激し
く沸騰させないようにした。砂浴からビーカーをおろ
し、流水中で冷却させた後、定容フラスコで50mlに
希釈したものを被試験液とし、これを2時間放置後、5
30mμで比色した。発色液を添加し発色後は、2時間
〜24時間以内に比色を行った。検量線は、アルミニウ
ム標準液を希釈し、50ml中0〜100μgのアルミ
ニウムを与える濃度内で数点について上記被試験液と同
様に調製し、上記と同様の操作で比色して作成した。上
記検量線作成に当たっては、発色後の液濃度が上記被試
験液を同程度の範囲内となるように、pH4、1N酢酸
ナトリウム液を最初に添加しておいた。但し、上記腐植
による着色を分解するために、過酸化水素水を加えた場
合は、上記酢酸ナトリウムの添加は行わなかった。ま
た、比色時の標準として水は用いず、アルミニウムを添
加しない発色液を比色時の標準として使用した。検量線
は測定ごとに新たに調製した。
【0081】(3)以上の操作は、特に以下の点に注意
して行った。定量の精度を確保するためには、発色液の
pHと発色後比色するまでの時間を一定にする。また、
発色液のpHを正確にpH3.5にすることが必要であ
ることに加え、上記沸騰時における激しい沸騰を避け、
上記pHが変化しないよう留意する。これは、pH3.
5付近が最もpHによる発色量の変動が少ない領域であ
るためである。特に比色時の標準として使用するアルミ
ニウムを含まない発色液において、上記変動が大きいた
め注意する。
【0082】また、上記アルミノン比色法は、マンガ
ン、コバルト、ニッケル、亜鉛、カルシウム、マグネシ
ウム、すずによっていずれもほとんど妨害されることが
ない。但し、3価鉄は本比色法に対し正の誤差を与える
が、塩酸ヒドロキシルアミンを添加して還元した状態で
は誤差を与えない。また、クロムはやはり正の誤差を与
える(アルミニウムとほぼ同量存在する条件で+10%
程度)を与えるが、これが土壌中に大量に存在すること
はなく、無視してさしつかえない。
【0083】本発明においてアニオン当量とは、上述の
ように、本発明にかかる育苗培土用糊剤が有するアニオ
ン度と該育苗培土用糊剤が上記育苗培土に対し混合され
る場合の混合量との積で表される数量値をいう。
【0084】ここで、アニオン度とは、育苗培土用糊剤
としての重合体中における、アニオン性を有する基、す
なわち、酸性官能基の量を示す値であり、上記重合体の
原料として用いられる各単量体の全量を100モル%と
したときに、上記官能基が含まれる単量体の量(単位:
モル%)に、該単量体に含まれる酸性官能基の個数を乗
じた値(単位:モル%)の総数である。
【0085】上記アニオン度について、本発明にかかる
育苗培土用糊剤としての重合体として、たとえば、次の
A、B、Cの3つの単量体からなる重合体を例に挙げ
て、以下に説明する。
【0086】A:アクリルアミド等の、アニオン性を有
しない単量体、つまり、官能基として、カルボキシル基
もしくはその塩、または、スルホン酸基もしくはその塩
等の酸性官能基のいずれをも有しない単量体 B:カルボキシル基もしくはその塩を1つ含む単量体 C:スルホン酸基もしくはその塩を1つ含む単量体 上記A、B、Cの3種の単量体を各々、aモル%、bモ
ル%、cモル%、a+b+c=100モル%の割合で重
合してなる重合体の場合、アニオン度は、b+cモル%
となる。
【0087】また、上記Bの代わりに、 D:カルボキシル基もしくはその塩を2つ含む単量体 を含む、A、D、Cの3種の単量体を各々、aモル%、
dモル%、cモル%、a+d+c=100モル%の割合
で重合してなる重合体の場合、そのアニオン度はd×2
+cモル%となる。
【0088】従って、上記の定義によれば、たとえば、
本発明にかかる上記の重合体が、カルボキシル基を2つ
含むイタコン酸の単一重合体であるポリイタコン酸であ
る場合には、アニオン度は100モル%×2=200モ
ル%となる。
【0089】次に、上記アニオン度の具体的な測定方法
について説明する。一般的に、アニオン度は、ポリビニ
ルアルコール硫酸カリウム(ポリビニルスルホン酸カリ
ウム、PVSK)を用いた以下に示す滴定法または、I
R(Infrared absorption spe
ctroscopy、赤外線吸収スペクトル)による分
析等で測定することができる。
【0090】<アニオン度の滴定法> (1)200ml容コニカルビーカーに、イオン交換水
90mlをとり、N/10水酸化ナトリウム水溶液で、
pH10.0〜10.2に調整する。
【0091】(2)(1)をスターラーで撹拌しなが
ら、正確に計量したN/200メチルグリコールキトサ
ン溶液5mlを(1)に対し加え、1分間以上撹拌す
る。
【0092】(3)アニオン度を測定したい試料の50
0ppm水溶液10mlを、(2)に対し、滴下量の正
確性が維持できる程度に低速で滴下し、滴下後さらに、
5分間以上撹拌してから、トルイジンブルー指示薬を2
〜3滴加える。
【0093】(4)(3)をN/400ポリビニルスル
ホン酸カリウム(N/400PVSK)で滴定する。滴
定速度は、2ml/分とし、検水、すなわち、被滴定液
が青色から赤紫色に変色して、該変色した状態が10秒
以上持続する時点を終点とする。
【0094】(5)上記試料の代わりに、イオン交換水
を用いた対照試験(1)〜(4)を行う。
【0095】(6)次式により、アニオン度を算出す
る。
【0096】
【数7】
【0097】尚、上記測定方法は、たとえばアクリルア
ミド/アクリル酸ナトリウム共重合体等の2元重合体等
の他、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム/AMP
S共重合体等の、多元重合体のアニオン度の測定にも適
用できる。
【0098】以上述べたように、育苗培土基材中の3価
カチオンの量と育苗培土用糊剤が提供するアニオン量と
得られる育苗培土の固化状態との関係を上記関係式
(I)により表現し、この関係式を満たすような育苗培
土基材および育苗培土用糊剤の種類と量とを選択するこ
とにより、育苗培土が1メートル高さからの自然落下に
おいて崩壊しない割合が90%以上という高い割合で、
機械移植等に耐え得る育苗培土を得ることができる。
【0099】
【実施例】以下に述べる実施例および比較例において、
本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これら
により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例
および比較例で用いた育苗培土基材におけるアルミニウ
ムイオン量は、上記アルミニウムイオン定量法により定
量した。
【0100】〔実施例1〕乾燥土壌100g当たり15
0mgのアルミニウムイオンを含む土壌を、本発明にか
かる育苗培土基材として用意した。該土壌にアニオン度
が12モル%のアクリルアミド/アクリル酸ナトリウム
共重合体を本発明にかかる育苗培土用糊剤として、1重
量%添加した後、コンクリートミキサーで3分間混合し
た。ここで、上記土壌が含む3価カチオンの量と育苗培
土用糊剤が提供するアニオン量との組み合わせは、これ
らを育苗培土100g中における3価カチオン当量とア
ニオン当量とに置き換えた場合、上記関係式(I)を満
たしている。この土壌に対し20重量%の量の水を添加
し、さらに5分間混合したものを、消石灰でpH6.5
に調整し育苗培土とした。
【0101】次に、上記育苗培土をタマネギ用育苗トレ
ー(みのる産業(株)製、448ポット/枚)に充填
し、鎮圧ローラーで鎮圧した後、タマネギ種子(品種:
スーパー北もみじ)を448粒播種(1粒/ポット)
し、軽く覆土した後、ハウス内で育苗した。
【0102】タマネギ生育苗が3〜4葉期まで生育した
時点で潅水を停止し、育苗ポット内の育苗培土が完全に
乾燥するまで放置した。上記育苗培土が完全に乾燥した
ことを目視により確認した後、育苗ポット底部まで水が
浸透するまで潅水、適度に湿った状態とした。
【0103】この状態で上記タマネギ用育苗トレーから
ランダムに100ポットの育苗ポットを抜き取り、この
抜き取った100ポットの育苗ポットについて、突き出
し時の育苗培土の崩壊の有無の確認を行い、該土付苗の
根鉢部分の固化状態を評価した。また、同様に100ポ
ットの育苗ポットをランダムに抜き取り、この抜き取っ
た100ポットの育苗ポットについて、タマネギ生育苗
(土付苗)を1メートルの高さから自然落下させて育苗
培土の崩壊状態を目視により観察し、該土付苗の根鉢部
分の固化状態を評価した。
【0104】上記固化状態を説明する指標の一つとして
用いた突き出し時の育苗培土の崩壊の有無は、以下の方
法により確認できる。図2に示すように、育苗ポット1
の底部に穿設された穴2を貫通し得るように、移植機に
設けられた突き出し棒3により、矢印4にて示す突き出
し方向(育苗ポット1の底部から土付苗を押し上げる方
向)に土付苗5を突き出した後、土付苗5の根鉢部分に
おける、育苗培土の崩壊の有無を、目視により観察す
る。
【0105】上記突き出し時の育苗培土の崩壊が無い土
付苗5は、根鉢部分の強度が高く、良好な固化状態を有
している。結果を表3に示す。
【0106】〔比較例1〕乾燥土壌100g当たり5m
gのアルミニウムイオンを含む土壌を、比較用の育苗培
土基材として用意した他は、実施例1と同様の操作を行
って、比較用の育苗培土を得た。該育苗培土について、
実施例1と同様の手順により、タマネギ生育苗(土付
苗)の根鉢部分の固化状態を評価した。結果を表3に示
す。
【0107】
【表3】
【0108】表3の結果から明らかなように、本発明の
育苗培土の製造方法によれば、上記ランダムに抜き取っ
た育苗ポットの土付苗100個について、突き出し時の
育苗培土の崩壊が全く無く、また、上記自然落下時の育
苗培土の崩壊については、崩壊が無かった個数が98個
以上であり、比較例1に示す育苗培土と比較して、良好
な固化状態が安定して得られることがわかる。
【0109】以上のように、本発明にかかる育苗培土の
製造方法は、育苗培土基材中の3価カチオンの量と育苗
培土用糊剤が提供するアニオン量とが一定の関係式を満
たすように該育苗培土基材と該育苗培土用糊剤とを混合
することを特徴としている。また、本発明にかかる育苗
培土の固化方法は、上記一定の関係式を満たす育苗培土
基材および育苗培土用糊剤を用いて得られた育苗培土を
固化することを特徴としている。
【0110】本発明によれば、上記育苗培土の製造方
法、固化方法を用いることで、育苗培土基材または育苗
培土用糊剤の種類に応じて、良好な固化状態を有する育
苗培土を安定して得ることができる。
【0111】
【発明の効果】請求項1の育苗培土の製造方法は、以上
のように、育苗培土基材と、アニオン性官能基を有し、
上記育苗培土基材中の多価カチオンと反応して育苗培土
を固化させる育苗培土用糊剤とを含む育苗培土の製造方
法であって、上記育苗培土基材と育苗培土用糊剤とを、
育苗培土100g中の3価カチオン当量Y(me)およ
びアニオン当量X(me)が、関係式(I)を満たすよ
うに混合する方法である。
【0112】請求項2の育苗培土の製造方法は、以上の
ように、育苗培土基材と、アニオン性官能基を有し上記
育苗培土基材中の多価カチオンと反応して育苗培土を固
化させる育苗培土用糊剤とを含む育苗培土の製造方法で
あって、 上記育苗培土基材中の3価カチオンの量を測定
し、該3価カチオンの量に応じて、育苗培土100g中
の3価カチオン当量Y(me)およびアニオン当量X
(me)が、関係式(I)を満たすように混合する方法
である。 請求項3の育苗培土の製造方法は、以上のよう
に、請求項1または2記載の育苗培土の製造方法におい
て、上記育苗培土用糊剤が、アクリル系重合体である方
法である。
【0113】請求項4の育苗培土の固化方法は、以上の
ように、請求項1〜3の何れか1項に記載の育苗培土の
製造方法により得られた育苗培土を固化する方法であ
る。
【0114】上記の方法によれば、育苗培土100g中
の3価カチオン当量Y(me)および育苗培土100g
中のアニオン当量X(me)の上記関係は、育苗培土が
良好な固化状態を形成できる範囲内の3価カチオンの量
およびアニオン量の関係としてして規定されるものであ
ると共に、育苗培土中の2価カチオン等の存在によって
は影響を受けないため、上記YおよびXが、上記関係を
満たすように混合することで、3価カチオンの量および
アニオン量のみを指標とした簡便な手順により、育苗培
土基材または育苗培土用糊剤の種類および量に応じて、
良好な固化状態を有する育苗培土を安定して得ることが
できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】育苗培土基材中の3価カチオンの量としての育
苗培土100g中の3価カチオン当量と、育苗培土用糊
剤が提供するアニオン量としての育苗培土100gが含
有するアニオン当量との関係を示すグラフである。
【図2】土付苗の突き出し時における育苗培土の崩壊の
有無を確認する方法を示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 副田 康貴 愛媛県新居浜市惣開町5−1 住化農業 資材株式会社内 (72)発明者 元岡 茂治 岡山県赤磐郡山陽町下市447 みのる産 業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−88025(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01G 1/00 303 A01G 9/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】育苗培土基材と、アニオン性官能基を有し
    上記育苗培土基材中の多価カチオンと反応して育苗培土
    を固化させる育苗培土用糊剤とを含む育苗培土の製造方
    法であって、 上記育苗培土基材と育苗培土用糊剤とを、育苗培土10
    0g中の3価カチオン当量Y(me)およびアニオン当
    量X(me)が、 【数1】 の関係を満たすように混合することを特徴とする育苗培
    土の製造方法。
  2. 【請求項2】 育苗培土基材と、アニオン性官能基を有し
    上記育苗培土基材中の多価カチオンと反応して育苗培土
    を固化させる育苗培土用糊剤とを含む育苗培土の製造方
    法であって、 上記育苗培土基材中の3価カチオンの量を測定し、該3
    価カチオンの量に応じて、育苗培土100g中の3価カ
    チオン当量Y(me)およびアニオン当量X(me)
    が、 【数2】 の関係を満たすように混合することを特徴とする育苗培
    土の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記育苗培土用糊剤が、アクリル系重合体
    であることを特徴とする請求項1または2記載の育苗培
    土の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れか1項に記載の育苗培
    土の製造方法により得られた育苗培土を固化する ことを
    特徴とする育苗培土の固化方法。
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