JP3023774B2 - ステンレス鋼の脱リン精製方法 - Google Patents

ステンレス鋼の脱リン精製方法

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JP3023774B2
JP3023774B2 JP10051113A JP5111398A JP3023774B2 JP 3023774 B2 JP3023774 B2 JP 3023774B2 JP 10051113 A JP10051113 A JP 10051113A JP 5111398 A JP5111398 A JP 5111398A JP 3023774 B2 JP3023774 B2 JP 3023774B2
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crucible
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章 福澤
和之 櫻谷
敏昭 渡邉
智 岩崎
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科学技術庁金属材料技術研究所長
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  • Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)
  • Crucibles And Fluidized-Bed Furnaces (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、ステンレ
ス鋼の脱リン精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来より製鋼プロセスで実施
されている一般的な脱リン方法は、塩基性のスラグを使
用して高温での酸化精錬で除去するものである。しかし
ながら、ステンレス鋼のようにクロムを多量に含む鋼の
場合では、リンよりもクロムが選択的に酸化されてしま
うため、酸化精錬法は有効な手段とはなり得ない。たと
えリンが酸化されスラグに移行しても、次工程のクロム
の還元期に復リンしてしまうからである。このためステ
ンレス鋼溶製の際には、出発原料中にあったリンの大部
分は鋼塊中に残留するため、低リンの原料を使用する以
外にはリン濃度の低いステンレス鋼を溶製することはで
きなかった。
【0003】このような問題に対処するための試みとし
てエレクトロスラグリメルティング(ESR)法として
カルシウム−フッ化カルシウム系フラックスを使用する
方法が提案されている。しかしながら、この方法におい
ては、カルシウム−フッ化カルシウム中のカルシウム濃
度が高くなると、スラグの電気抵抗が低下するため、ス
ラグを溶融状態に保持するには大電流を必要とする。一
方、消耗電極の電気抵抗はほぼ一定のため、電極には電
流の制限がある。このためカルシウム−フッ化カルシウ
ム中のカルシウム濃度に限界を生じ、脱リンを目的とし
た場合、操業できるのはカルシウム濃度が10%以下と
制限があった。
【0004】そして結果として、ESR法での前記のカ
ルシウム−フッ化カルシウムフラックスを用いる方法に
おいては、ステンレス鋼の脱リンは、200〜300p
pmのリンを1回の処理でせいぜい30ppm程度に低
下させるのが限界であり、これ以上の脱リン精製はでき
なかった。この出願の発明は、以上のとおりの従来技術
の限界を克服し、ステンレス鋼における不純物としての
リンを高効率で除去することのできる新しい技術的手段
を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】この出願は、上記の課題
を解決するための発明として、コールドクルーシブル型
浮揚溶解装置を用いてのステンレス鋼の溶解において、
浮揚溶解したステンレス溶湯と水冷るつぼとの間に溶融
カルシウム−フッ化カルシウム系フラックスを介在させ
て、ステンレス鋼中の不純物としてのリンをこのフラッ
クス中に移行させることを特徴とするステンレス鋼の脱
リン精製方法を提供する。
【0006】以上のとおりの特徴を持つこの出願の発明
では、これまでの知見、常識からは全く考えられなかっ
たコールドクルーシブル型浮揚溶解により、従来の技術
的限界を超えて、極めて効果的に低リンのステンレス鋼
の製造を可能としている。このための手段が、前記のと
おりの、コールドクルーシブル型浮揚溶解と、カルシウ
ム−フッ化カルシウムスラグによる脱リン精製である。
【0007】カルシウム−フッ化カルシウムをフラック
スとして用いるESR法によるステンレス鋼の脱リン方
法では、200〜300ppmのリンを1回の処理で3
0ppm程度に低下させるのが限界であったのに対し、
この発明の方法によれば、1回の処理で10ppm以下
の極低リンステンレス鋼が得られる。従来のステンレス
鋼のESR法による還元脱リン方法に対し、コールドク
レーシブル型浮揚溶解装置を用いるこの発明の方法によ
れば、フラックス中のカルシウム濃度を高めた操業がで
きるため、極低リンのステンレス鋼を製造できる。
【0008】リンの低減化により耐食性は著しく向上す
ることが知られており、この発明によってステンレス鋼
製品の長寿命化が顕著に図られる。また、高価な低リン
の原料を使用しなくとも極低リンステンレス鋼が製造で
きる点でも極めて経済的である。このような顕著な作用
効果は、従来技術による知見からは全く予期できないこ
とであった。それと言うのも、従来のコールドクルーシ
ブル型浮揚溶解装置を用いた溶解法では、水冷鋼るつぼ
からの汚染がないことから、溶解原料の純度を落とすこ
となく溶解でき、また、均一な成分の材料が得られると
言った特徴があるものの、精錬作用を持たないため、溶
解原料以上の純度の材料を創製することはできなかった
からである。
【0009】まして、フラックスの介在によるステンレ
ス鋼の脱リンが、この溶解法では考えられなかったから
である。このことは、コールドクルーシブル型浮揚溶解
という特有な手段と、カルシウム−フッ化カルシウムフ
ラックスという手段との採用が全く考慮されなかったこ
とにも見てとれる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この出願の発明の方法につ
いての実施の形態を説明する。添付した図面の図1は、
この出願の発明の方法を模式的に示したものである。こ
の図1に例示したように、スリット(3)で分割されて
いる複数の金属セグメント(2)で構成される上面が開
放し、かつ下面が閉塞している、水冷機構(8)を有す
る水冷金属るつぼ(1)と、高周波電源(10)より高
周波電流が流れる誘導コイル(7)により浮揚溶解装置
は構成される。
【0011】るつぼ(1)には、円柱状のものや、板
状、粒状等の形状の溶解材が投入される。この溶解材
は、ステンレス鋼である。また、粒状や粉状のフラック
ス(6)が投入される。このフラックス(6)は、カル
シウム−フッ化カルシウムである。コイル(7)に高周
波電流を流すと、溶解材には渦電流が流れ温度が上昇す
る。溶解材の温度の上昇に伴い、溶解材からの伝熱によ
りフラックス(6)自体の温度も上昇し、フラックス
(6)の融点以上温度になると流動し、溶融フラックス
(5)となる。一方、溶解材は水冷るつぼ(1)からの
浮揚力により、るつぼ(1)と非接触の状態で浮揚溶融
金属(4)となる。溶融フラックス(5)になってもう
ず電流がほとんど流れないため、溶融フラックス(5)
には浮揚力が働かず、浮揚溶融金属(4)と水冷るつぼ
(1)の間に図1に示すような形状で存在する。このた
め溶融フラックス(5)は水冷るつぼ(1)と接触し、
るつぼ(1)からの抜熱により、るつぼ(1)との接触
部に極薄い固化膜を形成する。これが保護膜となって水
冷るつぼ(1)の溶融フラックス(5)による浸食は起
こらない。
【0012】また、浮揚溶融金属(4)は電源の変動等
により揺れる場合があり、るつぼ壁に接触する可能性が
あるが、溶融フラックス(5)の存在でるつぼ(1)に
接触することがなく、安定した浮揚溶解が達成される
浮揚溶融金属(4)は高周波誘導により非常に強く攪拌
されている。また溶融フラックス(5)溶湯の攪拌に
伴って強く攪拌されている。このため、溶融金属(4)
と溶融フラックス(5)界面近傍での不純物元素の濃度
の低下は、溶融金属(4)側でも、溶融フラックス
(5)側でも小さく、また界面の更新も活発に行われる
ため、不純物元素の溶融フラックス(5)への移行は十
分速く行われる。さらに、フラックスと溶融金属の接触
面積が大きくとれる効果も加わり、不純物元素の分離除
去効果は大きく、高純度の金属材料の製造が可能にな
る。
【0013】しかも、一般の精錬炉と異なり、耐火材料
を使用しないため耐火物とフラックスとの反応を考慮
する必要がな、フラックス中での不純物元素の活量を
十分に低下させる成分・組成のフラックスを使用でき、
不純物元素除去率の到達度高くなり、超高純度金属
材料の製造が可能になる。この出願の発明におけるス
テンレス鋼については、日本工業規格の申請(JIS
G0203)における「耐食性を向上させる目的で、ク
ロム(Cr)またはクロム(Cr)とニッケル(Ni)
を含有させた合金鋼で、一般的にはクロム含有量が約1
1%の鋼をいう」との定義に合致するものに限定せず、
「ステンレス鋼便覧」における、クロムを5%以上含む
耐熱鋼やニッケルベースおよびコバルトベースの高クロ
ム含有合金も含むものとして考えることができる。
【0014】このようなステンレス鋼に対し、フラック
スを構成するカルシウム−フッ化カルシウムについて
は、両者の投入時の組成比(モル比)については、Ca
/CaF2 が10〜0.1の範囲を一般的目安とし、よ
り好ましくは4〜0.1の範囲とすることができる。た
だ、フラックス中のカルシウム(Ca)濃度に制限はな
く、高カルシウム濃度とすることができる。
【0015】このモル比が10を超えるとフラックス
の融点が低くなりすぎカルシウムの蒸気圧が過度に
くなり、またモル比が0.1より小さいとフラックス
中のカルシウム量が不足し、脱リンが十分に進行しなく
なるため好ましくない。ステンレス鋼に対するこのよ
うなフラックスの使用量については、特に制限はない
が、一般的目安としては、フラックス/ステンレス鋼
(重量比)で0.2〜0.01の範囲、さらには0.1
〜0.02とするのが適当である。
【0016】以下、実施例を示す。
【0017】
【実施例】内径60mm、深さ85mmのコールドクル
ーシブルを用い、市販のステンレス鋼SUS316L
(Cr 16.4%、Ni 13.54%、Mo 2.
06%、Si 0.54%、Mn 0.64%、C
0.013%、P 0.026%)、丸棒(重量800
g)とフッ化カルシウム(重量30g)をるつぼに入れ
浮揚溶解を行った、ステンレス鋼、フッ化カルシウムが
共に溶け落ちた後、溶融ステンレス鋼の温度が1550
℃になった時点で、フラックス(カルシウム70mol
%−フッ化カルシウム30mol%)を上部からコール
ドクルースブル内に投入した。投入終了後、高周波電源
を切りコールドクルーシブル内で固化させた。この試料
を化学分析した結果、原料の市販のステンレス鋼中のリ
ン濃度(0.026%)が、図2に例示したように、フ
ラックス5g添加の場合<A>、0.009%に、フラ
ックス20g添加の場合<B>、0.0008%に低下
し、リン濃度の極めて低いステンレス鋼が得られた。
【0018】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の
発明によって、極めて低いリン濃度の高品質のステンレ
ス鋼の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コールドクルーシブル型浮揚溶解によるこの
願の発明の方法について例示した斜視断面図である。
【図2】実施例としての低リン化の効果を示した図であ
る。
【符号の説明】
1 水冷金属るつぼ(コールドクルーシブル) 2 周方向に分割された金属セグメント 3 スリット 4 浮揚溶金属 5 溶融フラックス 6 添加フラックス 7 誘導コイル 8 水冷機構 10 高周波電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−272713(JP,A) 特開 平8−200963(JP,A) 特開 平4−354835(JP,A) 特公 昭59−52926(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21C 7/064 C21C 7/00 F27B 14/06 H05B 6/32

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コールドクルーシブル型浮揚溶解装置を
    用いてのステンレス鋼の溶解において、浮揚溶解したス
    テンレス溶湯と水冷るつぼとの間に溶融カルシウム−フ
    ッ化カルシウム系フラックスを介在させて、ステンレス
    鋼中の不純物としてのリンをこのフラックス中に移行さ
    せることを特徴とするステンレス鋼の脱リン精製方法。
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