JP3018933B2 - 雰囲気熱処理炉 - Google Patents

雰囲気熱処理炉

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JP3018933B2
JP3018933B2 JP6338383A JP33838394A JP3018933B2 JP 3018933 B2 JP3018933 B2 JP 3018933B2 JP 6338383 A JP6338383 A JP 6338383A JP 33838394 A JP33838394 A JP 33838394A JP 3018933 B2 JP3018933 B2 JP 3018933B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加熱された鋼板を珪素
のハロゲン化合物またはシラン系化合物を含む雰囲気ガ
スと接触させることで鋼板表面にSiを析出または濃化
させる処理を行う雰囲気熱処理炉の炉壁構造に関する。
【従来の技術】従来、低珪素鋼板を珪素のハロゲン化合
物またはシラン系化合物を含む雰囲気中で熱処理するこ
とにより鋼板表面にSiを析出または濃化させ、しかる
後鋼板表面のSiを板厚方向に拡散させることで高珪素
鋼板を連続的に製造する方法が、例えば特公平5−49
744号、特公平5−49745号等により提案されて
いる。
【0002】このような高珪素鋼板の製造法に使用され
る珪素のハロゲン化合物やシラン系化合物は有毒性ある
いは爆発性を有する等、いずれも危険性の高い物質であ
る。特に珪素のハロゲン化合物は非常に活性であり、低
温でもほとんどの金属と反応する。また、シラン系化合
物も活性であり、大気と触れるとすぐに着火−爆発を起
こす危険性を有している。したがって、このような物質
を含む雰囲気ガスを使用する雰囲気熱処理炉では、炉外
に雰囲気ガスを漏洩させないことが絶対不可欠の条件で
あり、機密性の高い炉構造とする必要がある。
【0003】また、珪素のハロゲン化合物やシラン系化
合物を扱う雰囲気熱処理炉では、次のような問題があ
る。まず、ハロゲン化合物として四塩化珪素(SiCl
4)を使用する雰囲気熱処理炉では、下記の反応により
鋼板表面にSiが浸透する。 5Fe+SiCl4→Fe3Si+2FeCl2
【0004】この場合、炉内に供給された四塩化珪素は
その全てが直ちに鋼板と反応する訳ではなく、未反応の
四塩化珪素が常に炉内に滞留した状態にある。一方、雰
囲気熱処理炉の炉内温度は1000℃以上となるため、
炉壁には断熱性に優れた気孔率の高い耐火物を用いる必
要がある。しかし、このような気孔率の高い耐火物を使
用した場合、雰囲気中に滞留した四塩化珪素が炉壁耐火
物内部に浸透し、これが鉄皮内面に達して鉄皮を侵食
し、遂には鉄皮に孔を開け炉の機密性を損ねるという問
題がある。また、上記反応の副生成物である塩化鉄(F
eCl2)は沸点が1023℃、融点が約670℃の物
質であるため、これが炉壁耐火物の内部に浸透すると1
023℃以下の炉壁の領域に液相または固相の状態で残
留してしまう。この塩化鉄は潮解性が非常に高く、この
ため点検・整備等のために炉を開放した際に炉壁内部に
残留した塩化鉄が大気中の水分を吸収し、炉の再立ち上
げに炉内露点を短時間で所要レベルまで低下させること
を著しく困難にする。
【0005】また、ハロゲン化合物としてSiCl2
Si2Cl6を用いる場合、下記の反応により鋼板表面に
Siが浸透するが、これらの場合でも上記と同じような
問題を生じる。 4Fe+SiCl2→Fe3Si+FeCl2 9Fe+Si2Cl6→2Fe3Si+3FeCl2 また、これらのハロゲン化合物は四塩化珪素よりも活性
であり、鉄皮の侵食はより著しい。また、シラン系化合
物としてSiH4を使用する場合、下記のような高温熱
分解反応により鋼板面にSiが析出する。 SiH4→Si+2H2 この場合、反応ガスであるモノシラン、副生成物である
2はともに非常に着火性の高い物質であり、このため
炉全体の機密性を高め、炉外へのガスの漏洩を防止する
必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように珪素のハロ
ゲン化合物やシラン系化合物を扱う雰囲気熱処理炉で
は、炉構造に高度な気密性が要求され、また、炉壁耐火
物中への反応ガスや反応副生成ガスの浸透を極力防止す
る必要があるが、従来、このような観点から工業炉とし
ての炉構造が提案された例はほとんどない。
【0007】炉の機密性を確保するという観点から炉構
造を考えた場合、例えばマッフル型の炉構造を採用する
ことが考えられる。一般に、マッフル型の炉では炉内壁
に円筒形の耐熱合金が使用され、炉内雰囲気の機密性が
図られている。しかし、この炉構造は耐熱性の面で使用
温度に限界があるとともに、製造できる炉の大きさにも
限界があり、加えて耐熱合金が腐食するために珪素のハ
ロゲン化合物を含む雰囲気には適用できないという問題
がある。このような炉壁の腐食という問題に対しては、
炉壁の材料として円筒形セラミックスを使用することも
考えられるが、現状の技術では大径・長尺のセラミック
スを製造することは困難である。したがって、いずれに
しても現状の技術ではマッフル型の炉構造で珪素のハロ
ゲン化合物等を含む雰囲気用の大型の連続処理炉を構成
することは難しい。
【0008】そこで本発明の目的は、珪素のハロゲン化
合物やシラン系化合物を扱う雰囲気熱処理炉において、
セラミックスのような特殊な材料を用いることなく、高
い気密性が得られ、しかも、反応ガスや反応副生成ガス
が炉壁に浸透することを効果的に防止することができる
炉壁構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るための本発明は、加熱された鋼帯を珪素のハロゲン化
合物またはシラン系化合物を含む雰囲気ガスと接触させ
ることで鋼板表面にSiを析出または濃化させる処理を
行う雰囲気熱処理炉において、炉壁を炉内側から、気孔
率20%以下の耐火材料で構成される最内層部、気孔率
90%以上の耐火材料で構成される外層部および最外層
部たる鉄皮を有する多層構造とするとともに、前記鉄皮
の複数箇所に、保護ガスを鉄皮内側に供給し炉壁耐火材
料を通じて炉内空間に向けて送気するための保護ガス送
気部を設けたことを特徴とする雰囲気熱処理炉である。
【0010】
【作用】本発明において、気孔率20%以下の耐火材料
で構成される炉壁の最内層部は、炉壁内部への反応ガス
および反応副生成ガスの浸透を抑制し、また、気孔率9
0%以上の耐火材料で構成される外層部は炉壁の断熱性
を確保する。さらに、保護ガス送気部から鉄皮の内側に
保護ガスを供給し、炉壁耐火材料内部の圧力を炉内空間
部の圧力よりも高く保つことにより、反応ガスおよび反
応副生成ガスの炉壁内部への浸透が抑制されるととも
に、炉の機密性も高められる。
【0011】以下、本発明の詳細とその限定理由を説明
する。図1は本発明の雰囲気熱処理炉の断面構造の一例
を示すもので、1は炉壁であり、この炉壁1は炉内側か
ら順に、気孔率20%以下の耐火材料で構成される最内
層部2、気孔率90%以上の耐火材料で構成される外層
部3および鉄皮4から構成されている。また、鉄皮4の
複数箇所には保護ガス送気部5(送気ポート)が設けら
れ、ガス供給管6を通じて各保護ガス送気部5に保護ガ
スを供給できるようにしてある。
【0012】一般的に耐火材料は気孔率が高いほど断熱
性が優れており、気孔率が低いと緻密になるために熱伝
導率が大きくなり断熱性は劣る。一方、ガスの浸透を抑
制するという観点からは、気孔率が低い緻密な耐火材料
ほどガスの浸透を抑制することができる。本発明が対象
としている雰囲気熱処理炉の炉内圧力は、通常20〜3
0mmAq程度の範囲で管理されている。そこで、この
ような炉内圧力を前提とし、炉壁最内層部を構成すべき
耐火材料について、反応ガスおよび反応副生成ガスの浸
透を抑制することができる条件を検討するため、以下の
試験を行った。
【0013】耐火材料のガス浸透度を評価するために、
図2に示す圧損試験装置で耐火材料の気孔率とガス浸透
時の圧力損失との関係を調べた。図2において、9はガ
ス通路を有する装置本体、10はガス流量計、11,1
2は圧力計、13は装置本体1のガス通路の中間に取り
付けられた試料(耐火材料)である。この試験では、1
0mm、25mm、50mmの各厚さにおいて気孔率が
異なる耐火材料の圧力損失を測定し、図3の試験結果を
得た。
【0014】図3によれば耐火材料の厚みが大きいほど
ガス透過時の圧力損失は大きいが、本発明のように多層
構造の炉壁では炉壁全体の厚さを考慮して、最内層部の
耐火材料の厚みをある程度抑える必要があり、したがっ
て、最内層部に適用すべき耐火材料としては、薄い状態
で高い圧力損失が得られるものが好ましい。そこで、厚
さ10mmの耐火材料の結果に基づき気孔率と圧力損失
との関係を評価し、気孔率が20%以下であれば100
mmAq以上の圧力損失が得られ、先に述べた通常の炉
内圧力:20〜30mmAqにおいてガス浸透を十分に
抑制できることが判った。このため本発明では炉壁の最
内層部2を気孔率20%以下の耐火材料で構成すること
とした。
【0015】また、この最内層部2の厚さは10〜20
0mmの範囲とすることが好ましい。最内層部2の厚さ
が10mm未満では十分な圧力損失が得られず、反応ガ
ス等の炉壁内部への浸透を効果的に抑制することができ
ない。一方、気孔率が20%以下で厚さが200mmを
超えるような耐火物を焼成することは難しく、したがっ
て、200mm程度が耐火物の厚さの実質的な上限とな
る。この最内層部2を構成する耐火材料としては、例え
ば、アルミナシリカ系プレキャスティングブロック、窒
化珪素系のプレート、カーボンプレート等を使用でき
る。
【0016】次に、最内層部2の外側に設けられる外層
部3は、炉壁の断熱性を確保するため気孔率90%以上
の耐火材料から構成される。本発明では、多層構造の炉
壁全体の断熱性を主としてこの外層部3の耐火材により
確保するものであるため、特に断熱性に優れた材料を用
いる必要があり、このため気孔率90%以上の耐火材料
が用いられる。この外層部2を構成する耐火材料として
は、例えば、極細の繊維状物質からなるファイバー系耐
火材料等を用いることができる。
【0017】さらに、本発明の炉構造では、前記保護ガ
ス送気部5から鉄皮4の内側に保護ガスを供給し、この
保護ガスを外層部3および最内層部2を構成する耐火材
料の気孔部を通じて炉内室間部に送気することで、炉壁
耐火材料内部の圧力を炉内空間部の圧力よりも高く保つ
ことにより、炉内空間部の反応ガスや反応副生成ガスが
炉壁内部に浸透することが防止される。またこれによ
り、炉全体に高度の機密性が付与されることになる。保
護ガス送気部5に供給される保護ガスとしては、炉内雰
囲気ガスの種類に応じて適宜選択されるが、一般には無
酸化性ガスである不活性ガスまたはN2若しくはこれら
の混合ガスである。また、保護ガスの供給量は炉の容量
等によっても異なるが、耐火物内部を炉内圧よりも高い
圧力に保持できるような供給量とすることが好ましい。
【0018】前記保護ガス送気部5は鉄皮4に対して適
当な間隔若しくは密度で設けることができ、例えば平均
1〜10m2につき1個程度の密度で設けることができ
る。なお、保護ガス送気部5への保護ガスの供給は炉の
運転時は常時行うことが好ましいが、場合によっては保
護ガスの供給を間欠的に行うようにしてもよい。また、
本発明の炉壁構造では、最内層部2および外層3自体
を、材質或いは気孔率が異なる2層以上の耐火材でそれ
ぞれ構成することができ、また、最内層部2と外層部3
の間、さらには外層部3と鉄皮4との間に、適当な気孔
率を有する別の耐火材層を設けることを妨げない。
【0019】保護ガス送気部5から鉄皮4の内側に保護
ガスを送気するには、単純に鉄皮4に送気孔を開け、こ
れにガス供給管6を接続するだけでもよいが、外層部3
が気孔率の高い耐火材料で構成されていることを考慮し
て、図4に示すように送気孔7の鉄皮内側の前面に邪魔
板8を設けることもできる。このような邪魔板8を設け
ることにより、保護ガスの流れを一旦鉄皮4の内面に沿
わせるようにしてから炉壁内部を炉内空間方向に流すこ
とができるため、保護ガスを炉壁全体で均一に流すこと
ができる利点がある。
【0020】また、少ない数の保護ガス送気部5で保護
ガスを炉壁全体に均一に送気するようにするため、図5
に示すような炉壁構造とすることもできる。この構造
は、鉄皮を外側鉄皮4aと内側鉄皮4bとからなる2重
構造とし、内側鉄皮4bには適当なピッチで送気孔7b
を設けるとともに、外側鉄皮4aには例えば各壁面につ
き1ヶ所づつ保護ガス送気部5(7aは送気孔)を設
け、この保護ガス送気部5から内側鉄皮4bと外側鉄皮
4aとの隙間に保護ガスを供給するようにしたものであ
る。このような炉壁構造によれば、少ない数の保護ガス
送気部5で炉壁に対して均一に保護ガスを送気でき、し
かも、内側および外側の鉄皮4a,4b間に供給された
保護ガスにより炉外壁面温度を下げる効果が得られる。
【0021】
【実施例】図6に示す連続浸珪処理ラインの浸珪処理炉
において図1に示す炉壁構造を採用し、最内層部2を高
温焼成して得られた気孔率16.1%、厚さ50mmの
アルミナ−シリカ系のプレキャスティング・ブロックで
構成するとともに、外層部3を厚さ300mmの高断熱
性のセラミックファイバーで構成し、さらに、鉄皮4の
複数箇所に保護ガス送気部5(設置密度:平均3m2
つき1箇所)を設け、この保護ガス送気部5からN2
鉄皮内側に供給できるようにした。このような炉壁構造
の浸珪処理炉を有する連続浸珪処理ラインにおいて、定
常操業時には保護ガス送気部5から200Nm3/h
(総供給量)のN2を供給して高珪素鋼板の製造を約1
年間行ったが、鉄皮内面の腐食はなく、また、炉内ガス
の漏洩も全く発生しなかった。
【0022】
【発明の効果】以上述べた本発明によれば、珪素のハロ
ゲン化合物やシラン系化合物を扱う雰囲気熱処理炉にお
いて、セラミックスのような特殊な材料を用いることな
く高度な機密性を確保することができ、しかも、反応ガ
スや反応副生成ガスが炉壁に浸透することも効果的に防
止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の雰囲気熱処理炉の一例を示す縦断面図
【図2】耐火物の圧力損失測定に用いた装置を示す説明
【図3】耐火物の気孔率と圧力損失との関係を示すグラ
【図4】炉壁構造の一実施例を示す断面図
【図5】炉壁構造の他の実施例を示す斜視断面図
【図6】実施例において使用された連続浸珪処理ライン
を示す説明図
【符号の説明】
1…炉壁、2…最内層部、3…外層部、4…鉄皮、5…
保護ガス送気部、6…ガス供給管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山路 常弘 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 拝司 裕久 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 笠井 勝司 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 実開 平4−100600(JP,U) 特公 平6−63022(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 1/74 C21D 9/52 101 C23C 10/08 F27B 9/00 - 9/40 F27D 1/00 F27D 7/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加熱された鋼帯を珪素のハロゲン化合物
    またはシラン系化合物を含む雰囲気ガスと接触させるこ
    とで鋼板表面にSiを析出または濃化させる処理を行う
    雰囲気熱処理炉において、炉壁を炉内側から、気孔率2
    0%以下の耐火材料で構成される最内層部、気孔率90
    %以上の耐火材料で構成される外層部および最外層部た
    る鉄皮を有する多層構造とするとともに、前記鉄皮の複
    数箇所に、保護ガスを鉄皮内側に供給し炉壁耐火材料を
    通じて炉内空間に向けて送気するための保護ガス送気部
    を設けたことを特徴とする雰囲気熱処理炉。
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JP2014181882A (ja) * 2013-03-21 2014-09-29 Ngk Insulators Ltd 熱処理装置
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