JP3016875B2 - β‐アラニン誘導体 - Google Patents

β‐アラニン誘導体

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JP3016875B2 JP2408718A JP40871890A JP3016875B2 JP 3016875 B2 JP3016875 B2 JP 3016875B2 JP 2408718 A JP2408718 A JP 2408718A JP 40871890 A JP40871890 A JP 40871890A JP 3016875 B2 JP3016875 B2 JP 3016875B2
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藤 光 雅 皆
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】〔発明の背景〕
【産業上の利用分野】本発明は、ピペリジン基を有する
新規な構造のβ‐アラニン誘導体に関する。詳しくは、
本発明は、各種有機材料用光安定剤あるいはそれらの中
間体として有用であり、医薬、農薬等の中間体としても
使用可能である、2,2,6,6‐テトラアルキルピペ
リジン骨格を含有するβ‐アラニン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、2,2,6,6‐テトラアル
キルピペリジン骨格(いわゆるヒンダードアミン骨格)
を有する化合物は、ラジカル捕捉能に優れ、特に、樹脂
をはじめとする各種有機材料用光安定剤として用いられ
ている。このようなヒンダードアミン骨格を有する光安
定剤のうちで、特に、樹脂用の光安定剤としては、例え
ば、「高分子添加剤の最新技術」(中原豊ら著、シーエ
ムシー社、1988年)に記載があるように、下記化合
物(イ)の脂肪族ジカルボン酸ジエステル体に代表され
るような多価カルボン酸のエステル体、あるいは、化合
物(ロ)に代表されるような、より分子量の高いオリゴ
マー型の化合物をあげることができる。
【0003】
【化2】
【0004】
【化3】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これらの光安定剤の特
徴としては、化合物(イ)のタイプの光安定剤は、光安
定化効果は高いものの、樹脂よりのブリードアウトが激
しいという欠点を有している。一方、化合物(ロ)のタ
イプのものは、ブリードアウトは少ないが、化合物
(イ)に比べて光安定化の効果が劣るという欠点を有し
ている。本発明者らは、このような欠点を解決すべく検
討した結果、工業的に製造可能であり、樹脂よりのブリ
ードアウトが少なく、かつ、光安定化効果の高い、下記
一般式〔I〕に示す新規な構造のβ‐アラニン誘導体を
見出して、本発明を完成した。
【0006】〔発明の概要〕
【課題を解決するための手段】本発明によるβ‐アラニ
ン誘導体は、下記の一般式〔I〕にて示されるものであ
る。
【0007】
【化4】 〔式中、R、R、RおよびRは、それぞれ水素
原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rは水
素原子を表し、Rは−CH−Rを表す(但し、R
は、置換または非置換の、フェニル基またはシクロヘ
キシル基(但し、置換基は、炭素数1〜4のアルキル基
である)を示す)。〕
【0008】<発明の効果>本発明化合物は、その主骨
格はアンモニアのアクリル酸エステルへのマイケル型付
加反応により容易に製造することができ、しかも光安定
化能を有するヒンダードアミン骨格を分子内に多く含有
することが可能な化合物であるので、効率的に有機材料
の光による劣化を防止することができる。
【0009】本発明化合物〔I〕のRにベンジル基あ
るいはシクロヘキシルメチル基等の置換基を有する化合
物は、樹脂をはじめとする各種有機材料、特にポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィ
ンに対する相溶性に優れているためブリードアウトが少
なく、対象となる有機材料の外観等の改良効果があり、
しかも光安定化効果が高い。また、このようにRに置
換基を導入した構造の光安定化剤は、化合物(イ)およ
び化合物(ロ)をはじめとする従来の光安定化剤のほと
んどのものに見られるような、Rに置換基のない構造
のものに比べて、耐加水分解性に優れる効果をも有して
いる。
【0010】
【作用】〔発明の具体的説明〕 <β‐アラニン誘導体>本発明化合物の一般式〔I〕に
おけるR、R、RおよびRは、それぞれ水素原
子および炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを任意に
選ぶことができ(2個存在するRは、同一でも異って
いてもよい)、いずれの場合も同様な光安定化効果を示
すが、製造上、水素原子あるいはメチル基が好ましく、
なかでも水素原子が特に好ましい。
【0011】Rは水素原子を表す。Rはベンジル基
ないし置換ベンジル基、あるいはシクロヘキシルメチル
基または置換シクロヘキシルメチル基のいずれかを選ぶ
ことができる。各種有機材料、特に、ポリオレフィン、
に対する相溶性および耐加水分解の効果に優れる。
【0012】本発明の一般式〔I〕で示されるβ‐アラ
ニン誘導体の代表例としては、置換基R〜Rが下表
に示すものであるものがあげられる。なお、これらの化
合物は、以下において当該番号で呼ぶものとする。−C
および−C11はそれぞれフェニル基およびシ
クロヘキシル基を、また−C−CHおよび−C
10−CHはそれぞれ対応環メチル置換体(パラ)
を、それぞれ示す。
【0013】
【表1】
【0014】<化合物の製造>本発明のβ‐アラニン誘
導体は、結合の形成および置換基の導入ないし形成に関
して合目的的な任意の方法によって製造することができ
る。適当な製造法の一つは、例えば、下記の工程からな
るものである(下式でR0 は、低級アルキル基、たとえ
ばメチル基、である)。
【0015】
【化5】
【0016】この反応によれば、まず、アンモニアの
α,β‐不飽和エステル化合物〔II〕への一段または多
段の付加反応により、エステル化合物〔III 〕を得る。
次いで、このエステル化合物〔III 〕とアルコール化合
物〔IV〕の一段または多段のエステル交換反応によっ
て、ピペリジン化合物〔I〕を得る。
【0017】アンモニアと化合物〔II〕の反応は無溶媒
で実施することも、溶媒を用いることもでき、後者の場
合は水、または反応系を均一に溶解する有機溶媒、ある
いは両者の混合溶媒を選ぶことができる。反応温度は、
反応系ないし溶媒が凝固しない限度において、−50〜
150℃の範囲の温度を選ぶことができるが、好ましい
反応温度は0〜100℃である。
【0018】化合物〔III 〕と〔IV〕の反応は、触媒と
して、リチウムアミド、ナトリウムメトキシド等の塩基
性触媒を用い、溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、トル
エン、ジオキサン等の有機溶媒を用いて行なうことがふ
つうである。反応温度は、0℃〜溶媒還流温度の範囲の
温度を選ぶことができるが、好ましい反応温度は50〜
150℃である。
【0019】<化合物の有用性>本発明による化合物
〔I〕が各種有機材料用光安定剤またはそれを製造する
ための中間体として有用であること、ならびに医薬、農
薬等の中間体としても有用であることは前記したところ
である。
【0020】
【実施例】以下の実験例は、本発明による化合物を具体
的に説明するためのものである。
【0021】実験例1(参考例) 〔トリス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−
4−イルオキシカルボニルエチル)アミン(化合物番号
1)の製造〕 ディーンスターク型冷却管を取り付けた500mlの反
応器に、トリス(メトキシカルボニルエチル)アミン
6.9g(25ミリモル)、4−ヒドロキシ−2,2,
6,6−テトラメチルピペリジン12.8g(75ミリ
モル)、リチウムアミド0.1g(4.4ミリモル)お
よびn−ヘプタン250mlを入れ、溶媒還流温度(反
応温度100℃)にて、n−ヘプタンと共沸するメタノ
ールを分離除去しながら、20時間反応させた。
【0022】反応終了後、反応液にジエチルエーテル3
00mlを加え、これを水100mlにて2回、洗浄した。
得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、瀘
過後、濃縮して、微黄色固体15.5gを得た。これを
n‐ヘキサンから再結晶して、目的物の白色固体13.
8gを得た(収率84.7%)。
【0023】物性値は、次の通りである。 (1)融点 74.0℃ (2) 1H−NMR(CDCl) δ〔ppm 〕 (図1参照) 0.89(bs,3H)、1.10−1.30(m,6
H)、1.16(s,18H)、1.24(s,18
H)、1.92(dd,6H)、2.44(t,6
H)、2.79(t,6H)、5.12−5.25
(m,3H) (3)13C−NMR(CDCl) δ〔ppm 〕 (図2参照) 28.9、32.9、34.8、43.9、49.0、
51.4、68.7、171.9 (4)IR(KBr) 波数〔cm-1〕 (図3参照) 2960、2860、1730、1460、1380、
1320、1240、1170、1130、1030 (5)マススペクトル m/e(相対強度) (図4参照) 650(14,M+ )、512(33)、438(2
3)、140(98)、124(100)、98(2
0)
【0024】
【0025】
【0026】実験例2 〔トリス(3‐ベンジル‐2,2,6,6‐テトラメチ
ルピペリジン‐4‐イルオキシカルボニルエチル)アミ
ン(化合物番号2)の製造〕 実験例1(参考例)において、4‐ヒドロキシ‐2,
2,6,6‐テトラメチルピペリジンの代わりに、3‐
ベンジル‐4‐ヒドロキシ‐2,2,6,6‐テトラメ
チルピペリジン18.6g(75ミリモル)を用いて、
実験例1と同様の操作にて黄色粘稠液体23.0gを得
た。これをシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル
‐クロロホルム混合溶媒)にて精製して、目的物の無色
透明粘稠液体19.0gを得た(収率82.6%)。
【0027】物性値は、次の通りである。 (1) 1H−NMR(CDCl) δ〔ppm 〕 0.80−1.58(bm,42H)、1.58−2.
08(m,6H)、2.40−3.15(m,18
H)、4.98(bs,3H)、6.98−7.43
(m,15H) (2)13C−NMR(CDCl) δ〔ppm 〕 27.0、30.7、32.6、33.1、34.3、
40.4、48.8、49.0、49.6、52.8、
70.1、125.9、128.3、128.5、12
8.8、128.9、140.7、171、4 (3)IR(KBr) 波数〔cm-1〕 3020、2954、1731、1494、1455、
1379、1362、1267、1176,1036、
977、913、732、701
【0028】実施例3 〔トリス(3‐シクロヘキシルメチル‐2,2,6,6
‐テトラメチルピペリジン‐4‐イルオキシカルボニル
エチル)アミン(化合物番号3)の製造〕 実施例1(参考例)において、4‐ヒドロキシ‐2,
2,6,6‐テトラメチルピペリジンの代わりに、3‐
シクロヘキシルメチル‐4‐ヒドロキシ‐2,2,6,
6‐テトラメチルピペリジン19.0g(75ミリモ
ル)を用いて、実験例1と同様の操作にて黄色粘稠液体
22.5gを得た。これをシリカゲルクロマトグラフィ
ー(酢酸エチル‐ヘキサン混合溶媒)にて精製して、目
的物の無色透明粘稠液体18.0gを得た(収率76.
6%)。
【0029】物性値は、次の通りである。 (1) 1H−NMR(CDCl) δ〔ppm 〕 0.75−1.00(bm,9H)、1.00−1.3
9(m,48H)、1.39−1.78(bm,30
H)、2.53(t,6H)、2.81(t,6H)、
5.25−5.33(m,3H) (2)マススペクトル(FD法) m/e 938(M+
【0030】
【0031】
【0032】実験例4 〔光安定化効果の評価〕 135℃テトラリン中で測定した極限粘度が1.9で、
アイソタクチックなものが98%のポリプロピレン粉末
100重量部に、実験例1〜3にて製造した化合物を各
々0.2重量部、テトラキス〔3‐(3,5‐ジ‐t‐
ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ
メチル〕メタンを0.1重量部配合して、ミキサーで十
分混合した後、シリンダー温度260℃、20mm径押出
機によって溶融混練して造粒した。得られたペレットを
230℃で、厚さ0.5mmのシートに圧縮成型して試験
片を作成した。上記試験片の配合組成のうち、実験例1
〜3にて製造した化合物の代わりに、ビス(2,2,
6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)セバケート
[三共(株)製 商品名「サノールLS770」]また
はトリス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−
4−イルオキシカルボニルエチル)アミンを各々0.2
重量部用いた以外は、上記試験片と同様の方法にてシー
トにして、比較用の試験片とした。これらの試験片をア
トラス社製65/XW−WR型キセノンウエザオメータ
ーを用い、ブラックパネル温度80℃で光照射し、各々
の試験片が劣化する迄の時間を比較した。得られた結果
は、下表に示す通りであった。
【0033】
【表2】
【0034】〔耐候性の評価〕 135℃テトラリン中で測定した極限粘度が1.9で、
アイソタクチックなものが98%のポリプロピレン粉末
100重量部に、実験例1〜3にて製造した化合物を各
々0.2重量部、テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−
ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ
メチル〕メタンを0.1重量部、ステアリン酸カルシウ
ムを0.05重量部配合して、ミキサーで十分混合した
後、シリンダー温度260度、20mm径押出機によって
溶融混練して造粒した。得られたペレットを230℃
で、厚さ0.5mmのシートに圧縮成型して試験片を作成
した。上記試験片の配合組成のうち、実験例2〜3にて
製造した化合物の代わりに、ビス(2,2,6,6−テ
トラメチル−4−ピペリジル)セバケート〔三共(株)
製 商品名「サノールLS770」〕〔化合物(イ)〕
を0.2重量部用いた以外は、上記試験片と同様の方法
にてシートにして、比較用の試験片とした。これらの試
験片をアトラス社製65/XW−WR型キセノンウエザ
オメーターを用い、ブラックパネル温度80℃で光照射
し、各々の試験片が劣化する迄の時間を比較した。 得られた結果は、下表に示す通りであった。添加化合物 劣化時間(h) 化合物(イ) 620 化合物番号1 640 化合物番号2 940 化合物番号3 900 〔耐加水分解性の評価〕 化合物1、2および3の、各々0.5gを、1,4‐ジ
オキサン90mlおよび水10mlの混合溶媒に溶解し、こ
の溶液をサンプリングして液体クロマトグラフィーによ
って分析した。次に、各溶液に水酸化ナトリウム0.2
gを添加し、室温にて攪拌し、1時間後、3時間後、6
時間後の溶液をサンプリングして液体クロマトグラフィ
ーによって分析したところ、各化合物の残存率は次の通
りであった。 0h 1h 3h 6h 化合物1 100 68 39 21 化合物2 100 94 87 82 化合物3 100 97 93 89 (単位:%)
【発明の効果】本発明による新規化合物が有機化合物に
対する光安定化能を有し、しかも製造が容易であること
は、前記したところである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例1にて製造したトリス(2,2,6,6
−テトラメチルピペリジン−4−イルオキシカルボニル
エチル)アミンのH−NMRスペクトルである。
【図2】同化合物の13C−NMRスペクトル(プロト
ンデカップリング法)である。
【図3】同化合物のIR吸収スペクトルである。
【図4】同化合物のマススペクトルである。
【図5】実験例2にて製造したトリス(1,2,2,
6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イルオキシカル
ボニルエチル)アミンのH−NMRスペクトルであ
る。
【図6】同化合物の13C−NMRスペクトルである。
【図7】同化合物のIR吸収スペクトルである。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−66953(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 211/46 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の一般式〔I〕で示される、β‐アラ
    ニン誘導体。 【化1】 〔式中、R、R、RおよびRは、それぞれ水素
    原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rは水
    素原子を表し、Rは−CH−Rを表す(但し、R
    は、置換または非置換の、フェニル基またはシクロヘ
    キシル基(但し、置換基は、炭素数1〜4のアルキル基
    である)を示す)。〕
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