JP3012492B2 - 乾式成形法による異方性磁石の製造方法 - Google Patents

乾式成形法による異方性磁石の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フェライト磁石あ
るいは希土類磁石等の乾式成形法による異方性磁石の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、異方性フェライト磁石には、平
均粒径0.2〜1.5μmのBaフェライト粉末もしく
はSrフェライト粉末が用いられる。製造方法として湿
式成形法と乾式成形法の二つがある。湿式成形法は、フ
ェライト粉を水等の液体を混ぜたスラリーを磁場中で成
形する。乾式成形法は、乾燥した粉を磁場中で成形す
る。
【0003】湿式成形法の場合、スラリー状の原料を型
に入れ、粒子が容易に磁化方向に並ぶように磁場をかけ
ながら成形する。原料は水等の液体を含有しているた
め、粉が動いたり回転したりしやすいので、磁化容易軸
に揃う。しかし、成形後、原料から水等を絞りださなく
てはならないので生産性が劣る。乾式成形法の場合、乾
燥した粉末状の原料を型に入れ、粉末が容易に磁化方向
に並ぶように磁場をかけながら成形する。原料は乾燥し
た粉末のため、粉末の回転や移動がスラリー程容易でな
く、摩擦抵抗が大きいため、湿式成形法と同程度に粒子
を磁化方向に揃えるのは、はなはだ困難である。しか
し、乾燥した粉を使うため、生産性が良い。
【0004】さらに、プレスする方向には磁場方向と平
行な場合と直角な場合がある。直角方向の方が平行方向
より、成形途中での配向性の崩れは少ない。しかし、直
角方向での磁場中成形において、厚さ方向に磁化容易軸
を揃える場合、長さ方向から圧縮成形することになる。
そのため厚さと長さの比(厚さ/長さ)が0.5以下の
薄くて長い磁石を製造すると、長さ方向に密度分布の不
均一さが生じ、高性能な磁石が得られにくい。
【0005】また、プレス方向が磁場方向と平行な場
合、厚さの薄い磁石を製作すると、中心部で厚く端部で
薄くなる傾向がある。そのため、表面を研磨して、必要
とする板厚にする必要があった。なお、特開平5−17
5066には圧縮成形時に磁場強度を周期的に変動させ
たり、磁極部分を振動させながら成形する方法が開示さ
れている。しかし、上記の問題点は解決されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、磁性
粉末を高配向して、湿式成形法と同レベルの高い磁気特
性を有する磁石を乾式成形法により、生産性よく低コス
トで、板厚の揃った磁石を製作することにある。
【0007】
【問題を解決するための手段】上記目的を達成するべく
研究した結果、磁石粉末の圧縮成形の初期には磁場を印
加しない方が、高性能の磁石が得られることを発見し
た。そして磁場をかける際の磁石粉末成形体の密度、磁
場の強さ、プレススピード、および成形後の密度と配向
性、焼結した磁石の磁気特性の関係を詳細に研究し、本
発明を完成したものである。
【0008】本発明の乾式成形法による異方性磁石の製
造方法は、磁石粉末を磁場中において成形し、その後焼
成して異方性磁石を製造する方法において、前記成形
は、磁場を印加することなく前記磁石粉末を加圧して理
論密度の20〜30%の密度をもつ予備成形体とした
後、磁場中で加圧して成形体とするものであることを特
徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法に使用できる磁
石粉末としてはBaフェライト磁性粉末やSrフェライ
ト磁性粉末等のフェライト磁石粉末、SmCo系磁性粉
末やNdFeB系磁石粉末等の希土類磁石粉末を使用す
ることができる。磁石粉末の粒度としては、特に制限さ
れず、従来と同じ粒度のものを使用できる。また、成形
に使用する型、プレス装置、磁場印加装置等、従来の乾
式成形法で使用されていたものをそのまま使用できる。
また、磁石粉末の成形体の焼結は、従来と同じ方法で焼
結することができる。
【0010】本発明の製造方法は、成形の初期に、すな
わち、理論密度の20〜30%の密度をもつまでは磁場
を印加しないことにある。そして理論密度の20〜30
%を越えた時点で磁場を印加し、成形体を構成する磁石
粉末を磁場により磁場方向に配向させつつ加圧し、成形
体とするものである。印加する磁場の大きさは15kO
e以上とするのが望ましい。これは、磁石粉末が磁化容
易軸に配向しやすいためである。得られる成形体は、理
論密度の50〜60%の密度をもつものとするのがよ
い。50%未満であると、焼結しても密度が上がりにく
い。また、60%を越えると、成形体の配向性がみだれ
焼結しても高特性の磁石が得られにくい。
【0011】なお、磁石粉末としてフェライト磁石粉末
を使用した場合、理論密度の20〜30%は、1.0〜
1.5g/cm3 程度となり、理論密度の50〜60%
は、2.6〜3.0g/cm3 となる。また、磁石粉末
の成形は型内で成形し、磁場印加中での圧縮成形の歪速
度は、0.5〜5.0/秒であるのが好ましい。圧縮成
形の歪速度を圧縮成形速度に換算すると、成形体の圧縮
方向厚さが1mmの場合0.5〜5.0/秒となること
を意味する。
【0012】なお、本発明では磁場を印加しない初期の
圧縮成形と、磁場を印加させて成形する圧縮成形の条件
を明確にするため、初期の圧縮成形で得られたものを予
備成形体、磁場を作用させて得られた成形体を成形体と
して説明した。実際上では初期の成形条件が定まれば、
予備成形体を型より取り出すことなく、初期の成形終了
後、所定の磁場を印加し連続的に圧縮成形を進め、一気
に成形体を得ることができる。なお、当然に、必要に応
じて初期の成形後、予備成形体を取り出し、異なる型に
移して磁場を印加して圧縮成形し、成形体を得てもよ
い。
【0013】
【作用】磁場中で磁石粉末を圧縮成形すると磁性粉の密
度は、中心部ほど高くなる。この状態でプレスすると、
成形体の密度は、中心部ほど程高くなり、これを焼結す
ると、中心部ほど厚さが大きくなり太鼓形状となる。本
発明の方法では、圧縮成形の初期には磁場を印加しな
い。このため予備成形体の密度がその中央部と周縁部と
では異なることが少なく、均質な密度の予備成形体とな
る。この状態で予備成形体に磁場を印加する。この予備
成形体ではその密度が理論密度の20〜30%と比較的
低いため、予備成形体を構成する各磁石粉末はそれぞれ
容易に回転でき、各磁石粉末は磁場方向に容易に配向で
きる。しかし、各磁石粉末が移動する程の自由度はな
い。このため予備成形体の中央部に磁石粉末が寄り集ま
り、各部分の密度が不均一となる恐れはない。
【0014】この状態で磁場を印加しつつさらに加圧
し、最終的に成形体とする。磁場を印加して加圧するた
め、磁石粉末はその配向が規制されつつ加圧される。こ
のため各磁石粉末の配向が維持され高い配向性をもつ成
形体が得られる。この状態で型から出され、各磁石粉末
はその高配向を保った状態で焼結され一体化される。こ
のため各部分の密度が均質なかつ高配向の磁石が得られ
る。また、成形体そのものが密度が均一であるため、焼
結により変形することがない。すなわち、厚さの均一な
焼結体が得られる。このため、本発明の製造方法で得ら
れる磁石は、研磨して厚さを均一にすることなく部品に
組み付けできる。たとえば、リニアモータ用の矩形磁石
として、製造したままで組み付けができる。
【0015】
【実施例】以下、実施例を示し、本発明をさらに詳細に
説明する。 実施例1 本発明の第1実施例は、乾燥した平均粒径1.3μmの
Srフェライト磁性粉(9.0%SrO、88.0%F
2 3 、0.9%Al2 3 、0.5%CaO、0.
1%Cr2 3 、0.4%SiO2 、0.3%MnO;
体積%、以下同じ)を用いて、12mm×24mm×
4.2mmの磁石を作製したものである。用いた磁場プ
レス機は、ウイズドロアル成形方式のもので、励磁は、
ヘルムホルツコイルタイプの磁化器(外径650mm、
内径410mm)で行った。
【0016】まず、キャビティの形状が縦、横それぞれ
13.6mm×27.6mmで深さが17mmの金型を
用い、この金型のキャビティに前記磁性粉末5.6gを
供給した。パンチには硬質クロムメッキしたSKD11
製のパンチを用い、磁場を印加することなく、圧縮成形
の歪速度1/秒で種々の密度となるまで圧縮し、表1に
示す予備成形体を得た。
【0017】
【表1】
【0018】次に、得られた各予備成形体に18kOe
の磁場を印加して配向させながら再び加圧し、成形体の
密度で2.8g/cm3 となるまで加圧して成形体を成
形した。その後、得られた各成形体を大気中で800℃
/hrの加熱速度で昇温させた後1235℃で1時間焼
結した。このようにして表1に示す各磁石を製造した。
【0019】得られた各予備成形体の密度および成形さ
れた成形体の配向度、さらに、得られた各磁石の密度、
磁気特性、配向度および磁石の厚さの差を測定した。こ
れらの測定値を表1にまとめて示す。磁石の厚さの差は
磁石の中心部と周縁部の厚さの差を示す。また、成形体
の配向度と磁石の配向度は、それぞれの磁化曲線を測定
して、残留磁束密度と飽和磁化との比から求めた。飽和
磁化は20kOeでの磁化の値を用いた。
【0020】成形体の場合には、測定中に形が崩れない
ようにするため、溶かした融点45℃のパラフィンの中
に成形体を浸漬して成形体の気孔中にパラフィンを浸透
させ、冷却してパラフィンを固化し、成形体を固めたも
のを試料として用い、磁化測定に供した。これらの結果
から、予備成形体の密度が1.0〜1.5g/cm
3 (理論密度に対する割合=20〜30%)の場合に、
最も磁気特性が望ましく、かつ磁石の中心部と端の厚さ
の差も少ない結果が得られた。
【0021】予備成形体の密度が1.0g/cm3 未満
の場合には、磁場の印加により成形体の中央部に磁性粉
が集まり、板厚の差が0.2mm以上になったと考えて
いる。また、予備成形体の密度が1.66g/cm
3 (理論密度の32%)のものは、磁場の印加により配
向しない磁石粉末が多くなったために磁気特性が望まし
いものが得られなかったと予想される。よって、磁性粉
が移動せず磁化容易軸に回転する(配向する)ための予
備成形体の密度は1.0〜1.5g/cm3 であること
が明らかになった。 実施例2 乾燥した平均粒径1.3μmのSrフェライト磁性粉末
(9.3%SrO、88.0%Fe2 3 、0.3%r
Al2 3 、0.4%CaO、0.6%Cr23
0.4%SiO2 、0.3%MnO;体積%)を用いて
12mm×24mm×4.2mmの磁石を製作した。用
いた磁場プレス機は、ウイズドロアル成形方式のもの
で、励磁は、ヘルムホルツコイルタイプの磁化器(外径
650mm、内径410mm)で行った。
【0022】実施例1で使用したのと同じ金型を用い、
このキャビティに前記磁性粉末5.6gを供給し、無磁
場でパンチにより加圧して1.24g/cm3 の密度を
もつ予備成形体を成形した。その後、18kOeの磁場
を印加して配向させながら、圧縮成形の歪速度0.5、
1、2.5、5そして12.5/秒で密度2.8g/c
3 まで圧縮し成形体を形成した。これらを、大気中で
800℃/hrの加熱速度で昇温させた後、1235℃
で1時間焼結した。これにより表2に示す各磁石を製造
した。
【0023】得られた磁石の磁気特性を調べ表2に纏め
て示す。
【0024】
【表2】
【0025】表2から、磁場中での成形の際の圧縮成形
の歪速度が0.5〜5/秒で成形した場合に、最も磁気
特性が望ましいことがわかる。なお、0.5/秒よりも
圧縮成形の歪速度が遅くても、望ましい磁気特性を有す
るが、生産性の点で経済的でない。 実施例3 乾燥した平均粒径1.4μmのSrフェライト磁性粉末
(9.0%SrO、88.0%Fe2 3 、0.9%r
Al2 3 、0.5%CaO、0.1%Cr23
0.4%SiO2 、0.3%MnO;体積%)を用い
た。
【0026】12mm×24mm×4.2mmの磁石を
18個の多数個取りするため、深さ17mm、縦横それ
ぞれ13.6mm、27.6mmのキャビティ18個を
有する金型を使用した。この金型の各キャビティにそれ
ぞれ5.6gの前記磁性粉末を挿入した。磁場の発生
は、外径650mm、内径410mのヘルムホルツコイ
ルを採用した。そしてウイズドロアル成形方式の磁場プ
レス機を用いた。またパンチとして硬質クロムメッキし
たSKD11のものを用いた。
【0027】成形は、磁場を印加することなく圧縮成形
の歪速度1/秒で圧粉密度が1.2g/cm3 まで成形
し、その後18kOeの磁場を印加し続いて18kOe
の磁場中で圧縮成形の歪速度1/秒で圧縮し、成形体の
密度を2.8g/cm3 とした成形体を得た。得られた
成形体を、大気中で800℃/hrの加熱速度で昇温さ
せた後、1235℃で1時間焼結し、磁石を製造した。
【0028】なお、焼結前の18個の成形体の配向度は
78〜80%であった。また、製造された磁石の磁気特
性値は、最大エネルギー積3.3〜3.5MGOe、残
留磁束密度3.7〜3.8kG、真の保磁力3.6kO
e、そして保磁力3.3〜3.4kOeを有し、いずれ
も中心部と端の厚さの差は0.1mm以下であった。
【0029】
【発明の効果】本発明の製造方法では圧縮成形により得
られる成形体の密度が均一なため、焼結温度までの加熱
や焼結後冷却を速くしても、焼結途中で割れることが少
ない。また、製造できる磁石は板厚が均一なため、後加
工特に研磨加工をすることなく部品への組み付けができ
る。さらに、本発明の製造方法では、安定した磁気特性
を有する磁石が生産性よく経済的に得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡田 正志 愛知県刈谷市一里山町金山100番地 ト ヨタ車体株式会社内 (72)発明者 黒木 博紀 愛知県刈谷市一里山町金山100番地 ト ヨタ車体株式会社内 (72)発明者 篠田 博 愛知県刈谷市一里山町金山100番地 ト ヨタ車体株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 7/02 H01F 41/02

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁石粉末を磁場中において成形し、その
    後焼成して異方性磁石を製造する方法において、 前記成形は、磁場を印加することなく前記磁石粉末を加
    圧して理論密度の20〜30%の密度をもつ予備成形体
    とした後、磁場中で加圧して成形体とするものであるこ
    とを特徴とする乾式成形法による異方性磁石の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 磁石粉末は希土類磁石粉末である請求項
    1記載の乾式成形法による異方性磁石の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記磁場中で加圧して成形体とする際の
    磁場の大きさは15kOe以上である請求項1記載の乾
    式成形法による異方性磁石の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記磁場中で加圧して得られる成形体
    は、理論密度の50〜60%の密度である請求項1記載
    の乾式成形法による異方性磁石の製造方法。
  5. 【請求項5】 磁石粉末はフェライト磁石粉末であり、
    理論密度の20〜30%の密度は1.0〜1.5g/c
    3 であり、理論密度の50〜60%の密度は2.6〜
    3.0g/cm3 である請求項4記載の乾式成形法によ
    る異方性磁石の製造方法。
  6. 【請求項6】 成形は型内で成形し、磁場印加中での圧
    縮成形の歪速度は、0.5〜5.0/秒である請求項1
    記載の乾式成形法による異方性磁石の製造方法。
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JP2019114608A (ja) * 2017-12-21 2019-07-11 Tdk株式会社 希土類磁石の製造方法
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