JP3010017B2 - ヒアルロン酸分解阻害剤、化粧料、食品、医薬組成物およびヒアルロン酸異常分解疾患治療剤 - Google Patents

ヒアルロン酸分解阻害剤、化粧料、食品、医薬組成物およびヒアルロン酸異常分解疾患治療剤

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JP3010017B2
JP3010017B2 JP7353920A JP35392095A JP3010017B2 JP 3010017 B2 JP3010017 B2 JP 3010017B2 JP 7353920 A JP7353920 A JP 7353920A JP 35392095 A JP35392095 A JP 35392095A JP 3010017 B2 JP3010017 B2 JP 3010017B2
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美智子 神尾
進吾 酒井
紳太郎 井上
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鐘紡株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒト結合組織に存
在する細胞に作用し、ヒアルロン酸分解を阻害するヒア
ルロン酸分解阻害剤,該ヒアルロン酸分解阻害剤を含む
化粧料、食品、医薬組成物およびヒアルロン酸異常分解
疾患治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒアルロン酸は、細胞間隙への水分の保
持、組織内にジェリー状のマトリックスを形成すること
に基づく細胞の保持、皮膚の潤滑性と柔軟性の保持、機
械的障害などの外力への抵抗、および、細菌感染の防止
など多くの機能を有している(BIO INDUSTR
Y、8巻、346頁、1991年)。また関節液中のヒ
アルロン酸は組織構造および潤滑性の保持等、重要な役
割を果たしている。
【0003】一方、歳をとるにつれて皮膚ヒアルロン酸
量は減少し、その結果小ジワやかさつきなどの皮膚の老
化をもたらし、あるいはリウマチ、変形性関節症などの
病的状態においてはヒアルロン酸が分解され低分子化す
ることにより(結合組織、25巻、243頁、1994
年)潤滑性が低下し、関節痛等を引き起こす。またヒア
ルロン酸の低分子化は歯肉炎の症状悪化にも密接に関連
すると考えられている(炎症、4巻、437頁、198
4年)。
【0004】さらに分解された低分子ヒアルロン酸は、
血管新生促進作用(Science、228巻、132
4頁、1985年)、白血球走化性促進作用(特公平6
−8323号公報)を有することから炎症促進作用をも
つと考えられる。
【0005】以上のような報告により、生体ヒアルロン
酸が低分子化(分解)された症状に対しては、ヒアルロ
ン酸を分解するヒアルロニダーゼに対する阻害剤に、薬
理効果があることが期待された。
【0006】ところで、従来よりヒアルロニダーゼ阻害
剤については、数多くの報告がなされている。例えばグ
リチルリチン(炎症、4巻、437頁、1984年)、
ベンゾチアジン−1,1−ジオキシド誘導体(特公平6
─29271号公報)、新規アニリド誘導体(特公平6
─4584号公報)、使君子抽出物(特開平5─306
215号公報)、甜茶抽出物(特開平6─19211号
公報)、マメ科植物抽出物(特開平7−10768号公
報)等である。但し、これらの阻害剤は全て、ウシ精巣
由来のヒアルロニダーゼの阻害剤である。というのも、
ヒト皮膚由来の細胞からヒアルロニダーゼが単離された
報告はいまだなく、上記の阻害剤は全てウシ精巣由来の
ヒアルロニダーゼがヒト線維芽細胞由来のヒアルロニダ
ーゼと同様の性質を持っていると仮定し、このウシ精巣
由来のヒアルロニダーゼに対する阻害剤を探索したにす
ぎないからである。
【0007】しかし近年、ヒト滑膜細胞(結合組織、2
5巻、243頁、1994年)、ヒト皮膚線維芽細胞
(B.B.A., 172 巻、70頁、1990年)はウシ精巣由来ヒア
ルロニダーゼとは明らかに異なる機構でヒアルロン酸を
分解すると報告された。
【0008】したがってヒト結合組織由来細胞に作用す
ることにより生体のヒアルロン酸分解を阻害し、しかも
安全に優れたヒアルロン酸分解阻害剤の開発が望まれて
きた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らが鋭
意研究を行った結果、ウシ精巣由来ヒアルロニダーゼの
阻害剤ではヒト組織中のヒアルロン酸分解を効果的に阻
害することが困難であること、及びクリタケ抽出物にヒ
ト結合組織由来細胞のヒアルロン酸分解阻害活性がある
ことを見いだし、本発明を完成したものであって、その
目的とするところは、ヒト結合組織由来の細胞に直接作
用しヒアルロン酸分解を阻害するヒアルロン酸分解阻害
剤、ヒアルロン酸量低下による小ジワやかさつきなどの
皮膚老化を防止する化粧料、老化による人体のヒアルロ
ン酸量の低下を防ぐ食品、およびヒアルロン酸分解が異
常に亢進した症状、特に歯肉炎、リウマチおよび変形性
関節症などに対するヒアルロン酸異常分解疾患治療剤等
の医薬組成物を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述の目的は、クリタケ
抽出物を有効成分とすることを特徴とするヒアルロン酸
分解阻害剤、該ヒアルロン酸分解阻害剤を含有すること
を特徴とする化粧品、食品、ヒアルロン酸分解異常分解
疾患治療剤等の医薬組成物によって達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について詳説
する。本発明に用いられるクリタケ抽出物としては、モ
エギタケ科、クリタケ属に属するクリタケの抽出物、も
しくはその乾燥エキス末が挙げられ、キノコ子実体等か
ら以下の通りに抽出することが出来る。
【0012】抽出溶剤としては、例えば水、メタノー
ル、エタノール等のアルコール類、またはアセトンなど
のケトン類よりなる群から選ばれる単独溶剤または2種
類以上の溶剤の任意の混合溶剤のいずれでも良い。これ
らの溶剤のうち、抽出物が最終的に化粧品及び食品に配
合されることを考慮すると、安全性の点で水、エタノー
ルまたはこれらの混合溶剤を用いるのが特に好ましい。
【0013】抽出の際のクリタケと溶剤との比率は、特
に限定されるものではないが、クリタケ1に対して溶剤
2〜1000重量倍が好ましく、抽出操作、効率の点で
は5〜100重量倍が特に好ましい。
【0014】抽出温度は室温−常圧下での溶剤の沸点の
範囲とするのが便利であり、抽出時間は抽出温度等によ
って異なるが、2時間〜2週間の範囲とするのが好まし
い。
【0015】この様にして得られたクリタケ抽出物は、
抽出物そのままの物や抽出物から溶剤を除去した乾燥物
など、いかなる状態のもので有っても良いが、保存性や
取扱の容易さから乾燥物の状態にするのが好ましい。
【0016】本発明で用いられるクリタケの乾燥エキス
末を製造する方法としては、前記抽出物を通常の乾燥手
段、例えば減圧乾燥、噴霧乾燥あるいは凍結乾燥等によ
り乾燥エキス末として得る方法等が挙げられる。なお、
乾燥エキス末に調製した場合は、水または水を含むエタ
ノールで溶解して用いるか、あるいは後で述べる化粧品
賦形剤または補助剤、食品原料、医薬品担体中で可溶化
して用いるのが好ましい。
【0017】本発明のヒアルロン酸分解阻害剤は、優れ
た生体ヒアルロン酸分解阻害効果を有し、かつ安全性が
高いことから、化粧料、食品、医薬組成物等の各種組成
物に配合する他、培養細胞系に添加する研究・試験用試
薬として用いることができる。
【0018】クリタケ抽出物の化粧品、食品又は医薬組
成物の配合量としては、適用対象物により異なり一概に
は規定できないが、組成物の総量を基準として、クリタ
ケ抽出物の乾燥重量として0.0001〜0.5%(W
/W)となるように配合するのが好ましく、さらに好ま
しくは0.001〜0.1%(W/W)である。
【0019】また、培養細胞に添加して高分子ヒアルロ
ン酸を産生させる時は、培養液中に、クリタケ抽出物の
乾燥重量として0.0001〜0.5%(W/V)とな
るように添加するのが好ましく、更に好ましくは0.0
01〜0.1%(W/V)である。
【0020】本発明の化粧料の形態としては、液剤、固
形剤あるいは半固形剤のいずれでもよく、具体的な組成
物の例としては、ゲル、クリーム、スプレー剤、貼付
剤、ローション、パック類、乳液、パウダー、シャンプ
ー、リンスおよび入浴剤等の剤形が挙げられる。
【0021】かかる剤形の調製は常法によって行われ、
また、本発明のヒアルロン酸分解阻害剤に使用される賦
形剤または補助剤としては、通常、化粧料等に使用され
るものを剤形に応じて適宜選択すれば良く、特に限定さ
れるものではないが、例えば、ワセリン、スクワラン等
の炭化水素、ステアリルアルコール等の高級アルコー
ル、ミリスチン酸イソプロピルなどの高級脂肪酸低級ア
ルキルエステル、ラノリン酸等の動物性油脂、グリセリ
ン、プロピレングリコール等の多価アルコール、グリセ
リン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリエチレング
リコール、ポリエチレンアルキルエーテルリン酸等の界
面活性剤、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息
香酸ブチル等の防腐剤、蝋、樹脂、各種香料、各種色
素、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸等の各
種無機塩や各種酸、水、およびエタノール等が挙げら
る。
【0022】本発明の化粧料は、皮膚のヒアルロン酸の
分解を阻害できるので、肌荒れや小ジワ,かさつきを防
止する効果が期待できる。
【0023】本発明の食品の形態としては、液剤、固形
剤、半固形剤等いずれであっても良く、具体的な組成物
としては、例えば飴類、チョコレート、チュウインガ
ム、牛乳、ヨーグルト、乳清飲料、乳酸菌飲料、ジュー
ス、炭酸飲料、アイスクリーム、プディング、ゼリー、
水ようかん等が挙げられる。
【0024】これらの組成物を製造するのに使用される
賦形剤または補助剤は、通常同目的に使用されるものか
ら剤形に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるも
のではないが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マル
トース、ソルビトール、マンニトール、ステビオサイ
ド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、
酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン
酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリ
ウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン
脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ポリグリ
セリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビ
タン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エス
テル、アラビアガム、カゼイン、ゼラチン、ペクチン寒
天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カ
ルシウム、アミノ酸類、およびカルシウム塩類等が挙げ
られる。
【0025】更に、通常食品に用いられる甘味料、着色
料、香料、保存料等を適宜使用することも出来るし、ク
ロルヘキシジン等の殺菌剤、ミノサイクリンやアンピシ
リン等の抗生物質を配合し、改善効果を高めることもで
きる。
【0026】ヒアルロン酸は、皮膚組織や関節組織に限
らず、骨,大動脈,心臓弁膜,脳,腱に存在しているた
め、本発明のように食品の形態で、日常的に摂取するこ
とにより、体内のヒアルロン酸量の低下を防ぐことが望
ましい。また、本発明の食品は、一般的な食用茸から抽
出した成分を用いているため、安全性が保証されている
という利点も有している。
【0027】本発明の医薬品の形態としては錠剤、顆粒
剤、粉剤、シロップ剤等の経口剤、外用剤等の非経口剤
が挙げられる。
【0028】前記ヒアルロン酸分解阻害剤を用いて製剤
化するにあたって、調製に用いることのできる医薬品担
体としては特に限定されるものではなく、通常、同目的
に使用されるものから適宜選択すればよい。例として
は、澱粉、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチル
セルロース、コーンスターチ、無機塩等の固形担体;蒸
留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール等のア
ルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコ
ール等の液体担体;各種の動植物油、白色ワセリン、パ
ラフィン、ロウ等の油性担体等が挙げられる。
【0029】本発明において医薬組成物とは、後述する
ような疾患の症状を取り去るいわゆる治療剤の他、その
症状を軽減する改善剤,その他症状が現れるのを予防す
る防止剤をも含むものである。
【0030】本発明の医薬組成物が治療する症状として
は、例えばヒアルロン酸が異常に分解している疾患を言
う。
【0031】ヒアルロン酸が異常に分解されている疾患
とは、具体的にはヒアルロン酸の分解が患部で異常亢進
しているリウマチ、変形性関節症、乾癬性関節症、痛
風、多発性関節炎、外傷性関節炎などの関節症、肝炎、
歯肉炎、および悪性腫瘍、また血清中でヒアルロン酸量
が増大していることから患部でヒアルロン酸の分解が異
常に亢進していると考えられる肝硬変、移植拒否、乾せ
んおよび強皮症、また疾患によって臓器が硬化する肝硬
変、動脈硬化等の線維症、さらにはヒアルロン酸分解の
結果として患部で水分保持能力が低下している乾皮症、
乾燥肌、あれ肌、その他腎炎、ケロイド、過修復、敗血
症等の疾患を言う。本発明のヒアルロン酸分解疾患治療
剤をこれらの疾患に用いる場合は、症状の改善剤もしく
は治療剤として、ヒアルロン酸の分解が異常に亢進して
いる症状者に適用することができる。
【0032】このヒアルロン酸が異常に分解されている
疾患のなかでも、特に患者の血清中においてヒスタミン
量が増大している疾患に、より効果的であり、具体的に
は、リウマチ、変形性関節症および歯肉炎等が挙げられ
る。
【0033】今回、ヒスタミンが血管内皮細胞や平滑筋
細胞に作用するだけでなく結合組織に存在する線維芽細
胞や滑膜細胞にも作用し、その細胞間マトリクスの成分
であるヒアルロン酸を分解する作用があることが明らか
となり、これをクリタケ抽出物が抑制することが本発明
によって明らかとなった。
【0034】従って、本発明のヒアルロン酸分解疾患治
療剤によってアレルギー性疾患はもとより、結合組織や
関節においてヒアルロン酸の異常分解が伴う疾患に対す
る治療も十分期待できる。
【0035】本発明のヒアルロン酸分解疾患治療剤の投
与方法としては、錠剤、カプセル剤等による経口投与ま
たは注射等の非経口投与が可能である。
【0036】特に関節症の改善または治療の為に用いる
場合は、関節に直接注入する注射剤や注入剤による非経
口投与が、一層治療効果が期待でき好ましい。
【0037】また、関節症等の治療に用いる場合は、高
分子のヒアルロン酸,例えば市販のヒアルロン酸製剤
(アルツ,科研製薬など)などと、予め混合するかまた
は投与時に別個同時に注入するなどして、同時に用いる
のが効果的であり、特に、高分子のヒアルロン酸ととも
に、関節に直接注入投与することによって、一層の治療
効果が期待される。
【0038】本発明のヒアルロン酸分解疾患治療剤の1
日当たりの投与量としては、通常経口投与では、クリタ
ケ抽出物の乾燥重量として100μg〜25gが好まし
く、特に好ましくは0.1g〜5gである。非経口投与
では、1mg〜10gが好ましい。
【0039】
【実施例】以下に本発明のヒアルロン酸分解阻害剤の製
造法、ヒアルロン酸分解阻害活性試験、さらに化粧料、
食品および医薬組成物の製造に関する実施例を挙げ本発
明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に
限定されるものではない。
【0040】尚、実施例に先立って、各種の評価方法を
記載する。
【0041】(ヒアルロン酸分解阻害活性試験) (1)MEM培地の調製法 Minimum Essential Medium
(大日本製薬製、10−101) 10.6gにそれぞれ
終濃度として1%(V/V)Non Essentia
l Amino Acid(大日本製薬製、16−81
0) 、1mMピルビン酸ナトリウム(大日本製薬製、1
6−820)、1.2%(W/V)炭酸水素ナトリウ
ム、蒸留水を加えて1lとした後、炭酸ガスを吹き込ん
でpHを約7にした(以下MEM培地と略記する)。
【0042】(2)ウシ胎仔血清(FBS) FBS(Irvine Scientific製) を用
いた。
【0043】(3)細胞添加用高分子 3H−ヒアルロン
酸の調製方法 正常ヒト線維芽細胞株〔デトロイト551株(ATCC
CCL 110)〕の細胞数を10%(V/V)のF
BSを含むMEM培地にて2×105 個/mlに調整
し、225cm2 のフラスコに50ml播種した。3日
間培養(コンフルエント状態)後、ヒアルロン酸の前駆
体である 3H−グルコサミン(American Ra
diolabeled Chemicals Inc.
製)を培養系に添加し(10μCi/ml )さらに3日間培養
した。培養後、培養液から 3H−ラベルされたヒアルロ
ン酸をUnderhillらの方法(J.Cell B
iology,82,475(1979))によって精
製し、さらにゲルろ過カラムにより分子量100万以上
の高分子 3H−ヒアルロン酸(比放射活性,0.1μCi/μg
)を調製した。これを細胞培養系への添加用高分子 3
H−ヒアルロン酸とした。
【0044】(4)高分子 3H−ヒアルロン酸の添加培
養 正常ヒト線維芽細胞株〔デトロイト551株(ATCC
CCL 110)〕の細胞数を10%(V/V)のF
BSを含むMEM培地にて1.5x105 個/mlに調
整し、12穴プレート(ファルコン製)に0.8mlず
つ播種し、95%(V/V)空気−5%(V/V)炭酸
ガスの雰囲気下37℃で3日間静置培養した。次に、M
EM培地のみに培地交換し1日間培養した後、高分子 3
H−ヒアルロン酸を含む(14000DPM/ml)M
EM培地に培地交換し、さらに3日間培養を行った。な
3H−ヒアルロン酸添加時、クリタケ抽出物を添加し
た。
【0045】(5)細胞による高分子 3H−ヒアルロン
酸の分解評価 培養終了後、培養液を回収し100℃で5分間加熱処理
を行った。次に加熱処理培地1mlをセファロースCL
−2Bカラム(内径1cm,長さ60cm)により以下
の条件でゲルろ過した。 流速:0.6ml/min 分画:4ml/Fraction 分画総数:25 分子量10万以下のヒアルロン酸が溶出するフラクショ
ン10〜25の26本を集め、[3H]放射活性を測定し
低分子化したヒアルロン酸の量を求めた。さらに、ヒア
ルロン酸分解量および分解阻害率は以下の数1,数2に
よって求めた。
【0046】
【数1】ヒアルロン酸分解量=B/A×100
【0047】A=無添加時のヒアルロン酸分解量 B=クリタケ抽出物添加時のヒアルロン酸分解量
【0048】
【数2】ヒアルロン酸分解阻害率(%)=(1−B/
A)×100
【0049】A=無添加時のヒアルロン酸分解量 B=クリタケ抽出物添加時のヒアルロン酸分解量
【0050】実施例1 クリタケ(乾燥品)10gを300mlの85容量%の
エタノール中で室温にて1週間振盪し、上澄み液をろ過
後凍結乾燥し、クリタケ抽出物(乾燥物)を得た。
【0051】試験例1(皮膚線維芽細胞のヒアルロン酸
分解の阻害) 実施例1で得たクリタケ抽出物について、上記の方法で
ヒアルロン酸分解抑制活性について測定した。実施例1
に示したクリタケ抽出物(乾燥物)を最終濃度0.00
60%(W/V)及び0.06%(W/V)になるよう
に、高分子 3H−ヒアルロン酸を含む(10μg/m
l)MEM培地に添加した。またクリタケ抽出物の代わ
りに精製水(比較例1)を、更に従来知られているウシ
精巣由来ヒアルロニダーゼの阻害剤であるグリチルリチ
ン(炎症、4巻、No4、437(1984))を最終
濃度200μM(比較例2)になるように添加し、対照
とした。
【0052】前述した(5)の方法により 3H−ヒアル
ロン酸の分解を調べ、ヒアルロン酸分解量及びヒアルロ
ン酸分解阻害率を前記数1,数2より算出した。結果を
表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】この結果からクリタケ抽出物(実施例1)
によって、ヒアルロン酸分解量は著しく減少し、ヒアル
ロン酸の分解阻害活性が認められた。一方、対照として
の精製水(比較例1)、またはウシ精巣由来ヒアルロニ
ダーゼの阻害剤であるグリチルリチン(比較例2)にお
いては、ヒトの細胞培養系である本評価系において全く
効果が認められなかった。
【0055】試験例2(リウマチ患者由来滑膜細胞のヒ
アルロン酸分解の阻害) 前述した(5)の方法において正常ヒト線維芽細胞株の
代わりに、リウマチ患者由来ヒト関節滑膜細胞の細胞数
を、1%(V/V)のFBSを含むMEM培地で調整す
る以外は、試験例1と同様にして、添加培養した。
【0056】実施例1のクリタケ抽出物(乾燥物)を最
終濃度0.010(W/V)および0.030%(W/
V)になるように、高分子3 H−ヒアルロン酸を含む
(10μg/ml)リウマチ患者由来滑膜細胞培養系に
添加した。なお、対照としてクリタケ抽出物の代わりに
比較例1の精製水を添加した。
【0057】前述した(5)の方法により3 H−ヒアル
ロン酸の分解を調べ、ヒアルロン酸分解量及びヒアルロ
ン酸分解阻害率を前記数1,数2より算出した。結果を
表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】この結果から、クリタケ抽出物(実施例
1)は、ヒアルロン酸分解量を著しく減少させており、
ヒアルロン酸の分解阻害活性を有することが分かった。
一方、対照としての精製水(比較例1)によっては、リ
ウマチ患者由来の滑膜細胞の培養系である本評価系にお
いて、全く効果が認められなかった。
【0060】このことより実施例1のクリタケ抽出物は
ヒアルロン酸分解阻害剤として優れており、ヒアルロン
酸分解が亢進している症状の改善に有効であると考えら
れる。
【0061】さらに、クリタケ抽出物は、炎症のケミカ
ルメディエーターであるヒスタミンによるヒアルロン酸
分解促進作用を阻害する。したがってクリタケ抽出物
は、炎症時におけるヒアルロン酸分解を阻害することに
よる抗炎症効果をも有する。
【0062】以上の結果より、クリタケ抽出物は皮膚組
織のヒアルロン酸分解を阻害し、肌あれやかさつき、小
ジワを防止する化粧料、老化による人体のヒアルロン酸
量の低下を防ぐ食品、ヒアルロン酸分解が異常に亢進し
た症状、すなわちリウマチ、変形性関節症あるいは歯肉
炎の治療剤としての有効性が期待できる。
【0063】実施例2〜3(クリーム) 下記表3に示す組成でクリームを調製した。尚、表中の
値は重量%(W/W)を示す。
【0064】
【表3】
【0065】調製法: 成分(A)を80℃で均一に混
合溶解した後、それに成分(B)を混合溶解した(混合
液I)。これとは別に、成分(D)を80℃で均一に混
合溶解した後、それに成分(C)を混合溶解した(混合
液II)。つぎに、混合液Iに、徐々に混合液IIを加え
て、充分攪拌しながら30℃まで冷却し、クリームを得
た。
【0066】実施例4〜5(ローション) 下記表4に示す組成でローションを調製した。尚、表中
の値は重量%(W/W)を示す。
【0067】
【表4】
【0068】調製法: 各成分を混合溶解して、ローシ
ョンを調製した。
【0069】実施例6(入浴剤) 下記表5に示す組成で入浴剤を調製した。尚、表中の値
は重量%(W/W)を示す。
【0070】
【表5】
【0071】各成分を混合し、入浴剤を調製した。な
お、この入浴剤は使用時に約3000倍に希釈される。
【0072】実施例7(飴) 下記表6に示す組成で飴を調製した。尚、表中の値は重
量%(W/W)を示す。
【0073】
【表6】
【0074】実施例8〜9(ガム) 下記表7に示す組成でガムを調製した。尚、表中の値は
重量%(W/W)を示す。
【0075】
【表7】
【0076】実施例10〜11(アイスクリーム) 下記表8に示す組成でアイスクリームを調製した。尚、
表中の値は重量%(W/W)を示す。
【0077】
【表8】
【0078】実施例12(ジュース) 下記表9に示す組成でジュースを調製した。尚、表中の
値は重量%(W/W)を示す。
【0079】
【表9】
【0080】実施例13〜14(錠剤) 下記表10に示す組成で錠剤を調製した。尚、表中の値
は重量%(W/W)を示す。
【0081】
【表10】
【0082】上記の各成分を均一に混合し、常法に従っ
て、1錠170mgとなるように打錠した。
【0083】実施例15(液剤) 下記表11に示す組成で液剤を調製した。尚、表中の値
は重量%(W/W)を示す。
【0084】
【表11】
【0085】精製水に上記の各成分を溶解し、攪拌均一
化して液剤とした。
【0086】実施例16〜17(軟膏) 下記表12に示す組成で軟膏を調製した。尚、表中の値
は重量%(W/W)を示す。
【0087】
【表12】
【0088】上記(B)の各成分を湯浴で80℃に加温
しながら混合し、これに、80℃に加温した上記(A)
の各成分の混合物中に攪拌しながら徐々に加えた。つぎ
に、ホモジナイザー(Tokusyukika Kog
you製)で2.5分間激しく攪拌(2500rpm)
して各成分を充分乳化分散させた後、攪拌しながら徐々
に冷却してクリタケ抽出物を含む軟膏を得た。
【0089】実施例18〜19(練歯磨) 下記表13に示す組成で練歯磨を調製した。尚、表中の
値は重量%(W/W)を示す。
【0090】
【表13】
【0091】常法に従い精製水、グリセリン、カラギナ
ン、サッカリン、パラオキシ安息香酸ブチル、クロルヘ
キシジンジグリコネート、香料およびアンタゴニストを
計量し、混合して粘結剤を膨潤させたのち、第二リン酸
カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウムを加え、更によく
混合し脱泡したのち、チューブに充填して練歯磨を得
た。
【0092】実施例20〜21(洗口剤) 下記表14に示す組成で洗口剤を調製した。尚、表中の
値は重量%(W/W)を示す。
【0093】
【表14】
【0094】常法に従い、洗口剤を得た。
【0095】
【発明の効果】以上の如く、本発明により、ヒト結合組
織由来の細胞に直接作用しヒアルロン酸分解を阻害する
ヒアルロン酸分解阻害剤、さらにはヒアルロン酸量低下
による小ジワやかさつきなどの皮膚老化を防止する化粧
料および老化による人体のヒアルロン酸量の低下を防ぐ
食品、並びにヒアルロン酸分解が異常に亢進した症状、
リウマチ、変形性関節症および歯肉炎などに対するヒア
ルロン酸異常分解疾患治療剤が提供できることは明らか
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61P 1/02 A61K 31/00 601B 17/00 617 25/04 626 31/04 631C 43/00 643D C12N 9/99 C12N 9/99 (72)発明者 井上 紳太郎 神奈川県小田原市寿町5丁目3番28号 鐘紡株式会社 生化学研究所内 (72)発明者 河岸 洋和 静岡県静岡市大谷836番地 静岡大学宿 舎213号 審査官 塚中 直子 (56)参考文献 特開 昭60−186260(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 35/84 A23L 1/30 A61K 7/00 A61K 7/48 C12N 9/99

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クリタケ抽出物を有効成分とすることを
    特徴とするヒアルロン酸分解阻害剤。
  2. 【請求項2】 クリタケ抽出物を含有することを特徴と
    する化粧料。
  3. 【請求項3】 クリタケ抽出物を含有することを特徴と
    するヒアルロン酸量低下防止用食品。
  4. 【請求項4】 クリタケ抽出物を含有することを特徴と
    する医薬組成物。
  5. 【請求項5】 クリタケ抽出物を含有することを特徴と
    するヒアルロン酸異常分解疾患治療剤。
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