JP3001193B2 - Ｌｆ電極の水冷方法及びそれに用いる冷却水受け装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明はＬＦ電極の水冷方
法及びそれに用いる冷却水受け装置に関し、特にカーボ
ン電極の消耗を軽減できるとともに水蒸気爆発の危険性
を解消できるようにした方法及び装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】最近、品質及び生産性の観点から、特殊
鋼の分野だけでなく、普通鋼の一部の分野においても炉
外精錬法が採用される傾向にある。例えば、鉄屑等を電
気炉で溶解して取鍋で受け、取鍋をＬＦまで搬送してＬ
Ｆで所望組成の鋼に精錬する方法が知られている。

【０００３】通常、この種のＬＦでは電極クランプで支
持した複数本（多くは３本）のカーボン電極を炉蓋に差
し込む一方、床面にレールを敷設し、取鍋を電極下方ま
で走行させ、該炉蓋を昇降機構で下降させて取鍋に被せ
るとともに電極を取鍋内に差し込み、通電にて精錬を行
うようにした構造が採用されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、かかるＬＦで
は電極にカーボン電極が使用され、これが精錬操業中に
１６００℃以上の高温となって電極消耗が激しく、電極
コストが非常に高くなるという問題があった。

【０００５】他方、ＬＦを用いた操業では精錬後、次の
受鋼鍋が電極下方に搬入されてくるまでの間に待ち時間
がある。そこで、この待ち時間を利用し、カーボン電極
を水冷して電極消耗を軽減する方法が提案される。しか
し、電極水冷後の冷却水が滴下し又は飛散して床面に落
ちていた場合、操業中に高温の溶鋼が飛散して床面の水
と接触し、水蒸気爆発の危険性が懸念され、安全操業の
観点からは電極の水冷は採用し難い。

【０００６】本発明は、かかる問題点に鑑み、電極消耗
を軽減するとともに、懸念される水蒸気爆発を確実に防
止して安全操業を確保できるようにしたＬＦ電極の水冷
方法を提供することを課題とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】そこで、本発明に係るＬ
Ｆ電極の水冷方法は、ＬＦにおける精錬操業の間の待ち
時間に、炉蓋に差し込まれた複数本のカーボン電極を水
冷するにあたり、精錬の終了した取鍋がカーボン電極下
方位置から搬出された後、冷却水受け部材を上記カーボ
ン電極下方に位置させ、上記カーボン電極上方部位に冷
却水をスプレー吹き付けして冷却水を電極表面に沿って
馴染ませて上記カーボン電極を冷却し、滴下飛散する冷
却水を上記冷却水受け部材で受けてＬＦ操業系外に排水
し、次の取鍋の搬入前に冷却水の吹き付けを停止し、上
記冷却水受け部材を上記カーボン電極下方位置から退避
させるようにしたことを特徴とする。

【０００８】本発明の特徴の１つは冷却水受け部材をカ
ーボン電極下方位置と退避位置との間で移動させ、カー
ボン電極から滴下飛散する冷却水を受けて排水するよう
にした点にある。これにより、冷却水が床面に落ちてい
ることは確実になくなり、水蒸気爆発の危険性を確実に
解消できる。また、カーボン電極を冷却水のスプレー吹
き付けにて水冷しているので、電極消耗を大幅に軽減で
き、大幅な低コスト化を達成できることとなる。

【０００９】カーボン電極の冷却温度は６００℃〜６５
０℃の温度範囲が適切である。６００℃以下にまで冷却
すると、次の精錬操業の開始時にカーボン電極が破損し
て飛散するおそれがあるからである。

【００１０】冷却水受け部材はカーボン電極下方位置と
退避位置との間でスライド進退させるようにしてもよ
く、又旋回させるようにしてもよい。但し、旋回させる
場合にはＬＦと干渉するおそれがあるのが、進退させる
のがよい。

【００１１】この冷却水受け部材は複数の各カーボン電
極に対応して設けてもよいが、移動機構が複雑になるお
それがある。そこで、複数本のカーボン電極から滴下飛
散する冷却水を受けるのに十分な面積を有する冷却水受
け部材を用いるのがよい。

【００１２】また、上述の水冷方法に使用する冷却水受
け装置自体も新規かつ斬新である。。そこで、本発明に
よれば、ＬＦの複数本のカーボン電極を水冷する際に滴
下飛散する冷却水を受けてＬＦ操業系外に排水する冷却
水受け装置であって、ＬＦ側方からカーボン電極下方位
置に向け、かつ搬入搬出される取鍋及び操業中のＬＦと
干渉しない位置まで延びるガイド部材と、該ガイド部材
にスライド自在に支持された移動台車と、該移動台車を
スライド進退させる駆動機構と、上記移動台車の先端に
設けられ、複数本のカーボン電極から滴下飛散する冷却
水を受けるのに十分な面積を有し、上記移動台車の前進
時に上記カーボン電極下方位置に位置し、上記移動台車
の後退時に搬入搬出される取鍋及び操業中のＬＦと干渉
しない位置に位置する冷却水受け部材と、該冷却水受け
部材の底部に接続されてＬＦ操業系外に延びる排水路を
備えたことを特徴とするＬＦ電極の水冷に用いる冷却水
受け装置を提供することができる。

【００１３】ガイド部材はガイドレールを用いることが
できるが、他の部材、例えば筒状部材を用いるようにし
てもよい。移動台車はどのような構造でもよいが、少な
くともガイド部材にスライド自在に支持されていること
が必要である。

【００１４】冷却水受け部材はどのような形状でもよい
が、冷却水を排水する関係上、下窄まり状となすのがよ
い。また、カーボン電極には精錬中のノロ等が付着して
おり、水冷時にノロや電極の破片が落下して排水路を詰
まらせるおそれがある。そこで、冷却水受け部材の高さ
方向の中間にシート状のフィルターを設けてノロや電極
の破片を取り除くのがよい。

【００１５】また、排水路は蛇腹式又はスライド式に伸
縮する構造としてもよいが、ガイド部材に沿って延びか
つ上面が開放された排水溝と、後端部が排水溝内にスラ
イド自在に差し込まれかつ先端が冷却水受け部材の底部
に接続された排水管とから構成することもできる。

【００１６】

【作用及び発明の効果】本発明によれば、精錬操業の間
の待ち時間を利用してカーボン電極に冷却水をスプレー
吹き付けして水冷するようにしたので、電極消耗を軽減
して大幅な低コスト化を達成できる。

【００１７】また、冷却水受け部材をカーボン電極下方
位置と退避位置との間で移動させ、カーボン電極から滴
下飛散する冷却水を受けて系外に排水するようにしたの
で、ＬＦ近傍の床面に冷却水が落ちていることがなく、
精錬操業中の水蒸気爆発の危険性を確実に解消でき、操
業の安全性を保証できる。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示す具体例
に基づいて詳細に説明する。図１ないし図７は本発明に
係るＬＦ電極の水冷方法の好ましい実施形態を示す。図
において、床面Ｆ上には複数の支柱１０・・・が立設さ
れ、そのうちの適当な支柱１０には炉蓋１１が昇降自在
に支持されるとともに、炉蓋１１を昇降させる昇降装置
（図示せず）が設けられている。

【００１９】また、炉蓋１１の側方には作業台１２が設
置され、該作業台１２上には副資材投入装置（図示せ
ず）が配置され、又床面Ｆ上にはレール１６、１６が炉
蓋１１下方と外方、例えば電気炉との間に延びて敷設さ
れ、該レール１６、１６によって取鍋１３の走行が案内
されるようになっている。

【００２０】さらに、炉蓋１１の上方には電極クランプ
１４が設けられて３本のカーボン電極１５・・・がクラ
ンプされ、該カーボン電極１５・・・は炉蓋１１に差し
込まれている。３本の各カーボン電極１５・・・の電極
クランプ１４近傍には環状パイプ７０が外装され、該環
状パイプ７０には複数のノズル７１・・・が適当な間隔
をあけて取付けられる一方、環状パイプ７０には冷却水
供給パイプ７２が接続され、冷却水がカーボン電極１５
に向けてスプレー状に噴射されて電極外周面全面に沿っ
て馴染んで水冷するようになっている。

【００２１】他方、作業台１２の中段には冷却水受け装
置２０が設置されている。この冷却水受け装置２０にお
いて、作業台１２の中段にはＨ型鋼からなる一対のガイ
ドレール（ガイド部材）２１、２１が電極下方位置に向
かう方向に延びかつ作業台１２から突出しないように取
付けられる一方、移動台車２４には車輪２３・・・が前
後に適当な間隔をあけて支持され、該車輪２３・・・は
該ガイドレール２１、２１にスライド自在に支持されて
いる。

【００２２】この移動台車２２はほぼ閉断面状をなし、
その先端には冷却水受け部材２４が取付けられており、
移動台車２２がガイドレール２１、２１の先端まで移動
した時に冷却水受け部材２４が電極下方位置に位置し、
移動台車２２がガイドレール２１、２１の後端まで戻っ
た時に搬入搬出される取鍋１３、炉蓋１１や電極１５と
干渉しない位置に来るようになっている。

【００２３】また、作業台１２の中段下方には移動台車
２２をスライドさせる駆動機構３０が設けられている。
この駆動機構３０において、移動台車２２の下面にはラ
ックギア３１が長手方向に延びて取付けられ、該ラック
ギア３１にはピニオンギア３３２が噛合され、該ピニオ
ンギア３２には駆動力伝達ギア３３が同軸に取付けら
れ、該駆動力伝達ギア３３はチェーン３４によって駆動
モータ３５の回転軸のギア３５に連結されている。ま
た、ピニオンギア３２には支持ローラ３７が同軸に取付
けられて移動台車２２の下面を支持するようになってい
る。

【００２４】他方、冷却水受け部材２４は３本のカーボ
ン電極１５・・・から滴下飛散するのに十分な面積の平
面四角形状でかつ下窄まり状をなし、その中段にはシー
ト状のフィルタ５０が設けられて水冷中にカーボン電極
１５・・・から落下する落下物を除去するようになって
いる。

【００２５】また、冷却水受け部材２４の底部には排水
路４０が接続され、該排水路４０の他端は系外の水処理
溝まで延設されている。この排水路４０は排水管４１と
上面の開放された排水溝４２とから主として構成され、
排水溝４２はガイドレール２１の側方にてガイドレール
２１に沿って延び、終端側で排水管（図示せず）によっ
て水処理溝に接続されている。

【００２６】他方、排水管４１は移動台車２２の上方に
取付けられ、先端側は冷却水受け部材２４の外部に接続
され、後端は下方に折曲げられて排水溝４２内にスライ
ド可能に差し込まれている。

【００２７】例えば、電気炉で屑鉄等が溶解され、取鍋
１３で受鋼されると、取鍋１３はレールに沿って炉蓋１
１下方に搬入される。取鍋１３が所定の位置で停止する
と、炉蓋１１が下降されて取鍋１３に被せられ、カーボ
ン電極１５・・・に通電されるとともに、副資材が投入
されて精錬が行われる。精錬が終了すると、カーボン電
極１５・・・への通電が停止され、炉蓋１１が上昇さ
れ、取鍋１３が搬出されて次の取鍋１３の搬入を待機す
る。この待ち時間は概ね１０〜１２分である。

【００２８】そこで、精錬終了後の取鍋１３が搬出され
ると、駆動機構３０が移動台車２２を前方にスライドさ
せ、冷却水受け部材２４が電極下方位置に位置される
と、環状パイプ７０に冷却水が供給されてノズル７１・
・・から冷却水がスプレー状に噴射され、冷却水はカー
ボン電極１５・・・の外表面に沿って馴染み、カーボン
電極１５・・・はほぼ１６００℃の高温から６００〜６
５０℃の温度まで冷却される。

【００２９】カーボン電極１５・・・から滴下飛散する
冷却水は下方の冷却水受け部材２４で確実に受けられ、
排水路４０を経て水処理溝に排水される。

【００３０】所定の時間が経過すると、冷却水の供給を
停止するとともに、駆動機構３０によって移動台車２２
を取鍋１３等と干渉しない位置まで後退させた後、次の
取鍋１３が搬入され、精錬操業が開始される。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に係る水冷方法が適用されるＬＦ施設
を示す概略構成図である。

【図２】 本発明に係るＬＦ電極の水冷に用いる冷却水
受け装置を示す概略平面構成図である。

【図３】 上記冷却水受け装置を示す概略側面構成図で
ある。

【図４】 上記冷却水受け装置を示す正面構成図であ
る。

【図５】 上記冷却水受け装置におけるガイドレール、
移動台車及び駆動機構を示す構成図である。

【図６】 カーボン電極と冷却水受け部材との関係を示
す図である。

【図７】 カーボン電極に対する冷却水の供給を示す斜
視図である。

【符号の説明】

１１ 炉蓋 １５ カーボン電極 ２０ 冷却水受け装置 ２１ ガイドレール（ガイド部材） ２２ 移動台車 ２４ 冷却水受け部材 ３０ 駆動機構 ４０ 排水路 ４１ 排水管 ４２ 排水溝 ５０ フィルター ７０ 環状パイプ ７１ ノズル

Claims (7)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ＬＦにおける精錬操業の間の待ち時間
   に、炉蓋に差し込まれた複数本のカーボン電極を水冷す
   るにあたり、 精錬の終了した取鍋がカーボン電極下方位置から搬出さ
   れた後、冷却水受け部材を上記カーボン電極下方に位置
   させ、 上記カーボン電極上方部位に冷却水をスプレー吹き付け
   して冷却水を電極表面に沿って馴染ませて上記カーボン
   電極を冷却し、滴下飛散する冷却水を上記冷却水受け部
   材で受けてＬＦ操業系外に排水し、 次の取鍋の搬入前に冷却水の吹き付けを停止し、上記冷
   却水受け部材を上記カーボン電極下方位置から退避させ
   るようにしたことを特徴とするＬＦ電極の水冷方法。
2. 【請求項２】 上記冷却水受け部材を上記カーボン電極
   下方位置と退避位置との間でスライド進退又は旋回させ
   るようにした請求項１記載のＬＦ電極の水冷方法。
3. 【請求項３】 上記複数本のカーボン電極から滴下飛散
   する冷却水を受けるのに十分な面積を有する冷却水受け
   部材を用いるようにした請求項１記載のＬＦ電極の水冷
   方法。
4. 【請求項４】 上記カーボン電極を６００℃〜６５０℃
   の温度範囲まで冷却するようにした請求項１記載のＬＦ
   電極の水冷方法。
5. 【請求項５】 ＬＦの複数本のカーボン電極を水冷する
   際に滴下飛散する冷却水を受けてＬＦ操業系外に排水す
   る冷却水受け装置であって、 ＬＦ側方からカーボン電極下方位置に向けかつ搬入搬出
   される取鍋及び操業中のＬＦと干渉しない位置まで延び
   るガイド部材と、 該ガイド部材にスライド自在に支持された移動台車と、 該移動台車をスライド進退させる駆動機構と、 上記移動台車の先端に設けられ、複数本のカーボン電極
   から滴下飛散する冷却水を受けるのに十分な面積を有
   し、上記移動台車の前進時に上記カーボン電極下方位置
   に位置され、上記移動台車の後退時に搬入搬出される取
   鍋及び操業中のＬＦと干渉しない位置に位置される冷却
   水受け部材と、 該冷却水受け部材の底部に接続されてＬＦ操業系外に延
   びる排水路を備えたことを特徴とするＬＦ電極の水冷に
   用いる冷却水受け装置。
6. 【請求項６】 上記排水路が、上記ガイド部材に沿って
   延びかつ上面が開放された排水溝と、後端部が上記排水
   溝内にスライド自在に差し込まれかつ先端が冷却水受け
   部材の底部に接続された排水管とから構成されている請
   求項５記載のＬＦ電極の水冷に用いる冷却水受け装置。
7. 【請求項７】 上記冷却水受け部材が下窄まり状をな
   し、高さ方向の中間にシート状のフィルターが設けられ
   ている請求項５記載のＬＦ電極の水冷に用いる冷却水受
   け装置。