JP2997071B2 - 痔疾治療剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は痔疾治療剤に関する。更
に詳しくは海藻の抽出物を含んだ刺激や副作用のない安
全な治療剤に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、痔疾の治療には、局部の血行促進
剤や各種の抗菌剤を坐薬として局部に挿入することが行
なわれ、また近年では経口治療薬も開発されているが、
何れも合成医薬品であり、効果も一時的であると共に、
効果を余り高めようすれば刺激や副作用のおそれがあっ
た。

【０００３】自然界では、動物、植物、微生物が相互に
かかわり合いながら、それぞれの生活圏を形成してい
る。そのからみ合いの中から淘汰と進化がくり返され
て、それぞれの合目的な自己防御機構が形成されてきた
と考えられる。微生物相互間の拮抗作用はその１つであ
るが、海藻成分中の抗菌、抗カビ、抗ウィルス、殺虫性
もその一環と考えることができる。

【０００４】１９５０年以来、海藻についても、細菌、
カビ、ウィルスに対する抗生物質の検索が広範囲にわた
って行われた結果、かなりの海藻に抗微生物性や昆虫に
対する毒性が認められている。海藻中の抗菌性の主な成
分は脂肪酸、アクリル酸、ブロモフェノール類、タンニ
ン類、テルペン類であろうとされている。

【０００５】しかし、どの海藻中にどのような成分が多
く、それがどのうような抗菌性、抗カビ性、抗ウィルス
性、殺虫性を示すかは未だ明らかにされていない。即ち
海藻がその生存のために、抗菌性物質をある程度もって
いるであろうことは知られ、研究されてはいるが、その
実体は未だ明らかでない状態である。

【０００６】本発明者らの１部は、特開昭６３−２１５
６１０号公報において、紅藻類きりんさい属および／ま
たはいぎす属に属する海藻の熱水による抽出物を植物、
食品に添加すると抗菌性があることを見い出し、植物・
食品添加物を提供している。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、永年
にわたって食用にされ、人に対する安全性が実証されて
いる海藻の抽出物の中から、痔疾治療に有効な治療剤を
提供することである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記植物
・食品添加物である紅藻類きりんさい属および／または
いぎす属の海藻の熱水による抽出物を研究している際
に、たまたま脱肛で疼痛を感じたので、この抽出物を局
部に添着した所、疼痛が速かに解消し、痔疾が軽快する
のを経験し、本発明を完成した。

【０００９】すなわち本発明は、紅藻類とげきりんさい
（Eucheuma serra）， きりんさい（Eucheuma denticulatum）， けいぎす（Ceramium tenerrimum）， はりいぎす（Ceramium paniculatum）， はねいぎす（Ceramium japonicum）， からなる群より選んだ少なくとも１種の海藻の抽出液を
含んでなる痔疾治療剤である。

【００１０】原料海藻は採取した生のものでも差支えな
いが、運搬等の便宜のためには、又採取時期と使用時期
のずれを調整するためには、乾燥することが好ましい。
これらの海藻は、水で洗浄後、太陽光のもとで乾燥する
と色素が退色し、白くなり、無臭となる。これは本発明
で無色・無臭の添加物とするのに好ましいものである。

【００１１】通常、水１００重量部に対し、この乾燥海
藻１０〜３０重量部、好ましくは１５〜２５重量部を加
え、温度７０℃超、沸点未満の温度、好ましくは８０〜
９５℃程度に加熱して、どろどろにする。７０℃以下で
は抽出に長時間を必要とし、沸騰させると粘性がかえっ
て低下してきて好ましくない。

【００１２】この液を槇過して抽出原液を得る。この抽
出液は長時間放置すると腐敗することがあるので、サリ
チル酸、サリチル酸亜鉛、パラ安息香酸メチル等、通常
皮膚外用剤に使用される防腐剤を０．１重量％以下添加
することが好ましい。更に食酢、酢酸、くえん酸、りん
ご酸、酒石酸等の有機酸、大豆油、オリーブ油、サラダ
油等の植物油から選んだ少なくとも１種を添加すること
も好ましい。

【００１３】痔疾の局部に適用するには、前記抽出原液
を５〜２０倍に希釈した液（固形分濃度に換算して０．
５〜２．５重量％程度）にして、ガーゼ等に含ませて患
部に添付する。半日ないし１日位で疼痛が速かに消失す
るのが認められる。

【００１４】本発明で使用した海藻は永年食用とされて
来た海藻であるので、人畜無害であり、しかもその無害
性を損うような激しい化学処理を経ることなく製造し得
るので、人間の肛門部に外用して全く害がないものであ
る。

【００１５】

【作用】海藻抽出液中のどの成分が有効に作用している
のかについては、明らかでないが、未だ同定されていな
い微量成分が有効に作用しているものと推定される。

【００１６】

【実施例】以下に実施例によって、本発明を更に具体的
に説明するが本発明は、この実施例によって何等限定さ
れるものではない。

【００１７】（実施例１）脱肛による疼痛に悩む人に、
ガーゼに本発明のとげきりんさいの９０℃の熱水による
抽出液の１０倍希釈液を充分に含浸させ、これを局部に
Ｔ字帯を用いて当接させておいた所、翌日には疼痛も去
り、軽快に向った。

【００１８】（実施例２）切れ痔で困っている人に、ガ
ーゼに本発明のはりいぎすの８０℃の熱水による抽出液
の５倍希釈液を充分に含浸させ、これを局部にＴ字帯を
用いて当接しておいた所、翌日には疼痛も去り、極めて
軽快した。

【００１９】

【発明の効果】本発明の痔疾治療剤を切れ痔、いぼ痔、
痔瘻、脱肛等に悩む人の肛門部に、ガーゼ等に含浸させ
て当接させておくことによって、短時間に疼痛を取り、
痔疾を軽快に向わせることができた。合成薬品と異な
り、局部への刺激や副作用もなく、又この海藻は永年食
用に供されてきたものであるので安全性は実証されてい
る。

フロントページの続き (72)発明者 石井 和彦 栃木県安蘇郡田沼町大字山形字片峯337 番地 (72)発明者 石井 久子 栃木県安蘇郡田沼町大字山形字片峯337 番地 (72)発明者 下村 健次 三重県伊勢市船江３丁目16番32号 (56)参考文献 Ｊ．Ｐｈａｒｍ．Ｐｈａｒｍａｃｏ ｌ．，36（12），（1984），ｐ．808− 13 Ｊ．Ｐｈａｒｍ．Ｐｈａｒｍａｃｏ ｌ．，33（９），（1981），ｐ．612− ３ 「南山堂 医学大辞典」、株式会社南 山堂、1990年２月１日第17版発行、第 768頁、痔核の項 (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A61K 35/80

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 紅藻類のとげきりんさい（Ｅｕｃｈｅｕｍａ ｓｅｒｒａ）， きりんさい （Ｅｕｃｈｅｕｍａ ｄｅｎｔｉｃｕｌａｔｕｍ）， けいぎす （Ｃｅｒａｍｉｕｍ ｔｅｎｅｒｒｉｍｕｍ）， はりいぎす （Ｃｅｒａｍｉｕｍ ｐａｎｉｃｕｌａｔｕｍ）， はねいぎす （Ｃｅｒａｍｉｕｍ ｊａｐｏｎｉｃｕｍ） からなる群より選んだ少なくとも１種の海藻の抽出液を
   含んでなる痔疾治療剤。