JP2988896B2 - 旋回助勢装置並びにこれを備えた滑走型又は水中翼型高速艇 - Google Patents

旋回助勢装置並びにこれを備えた滑走型又は水中翼型高速艇

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JP2988896B2
JP2988896B2 JP9298209A JP29820997A JP2988896B2 JP 2988896 B2 JP2988896 B2 JP 2988896B2 JP 9298209 A JP9298209 A JP 9298209A JP 29820997 A JP29820997 A JP 29820997A JP 2988896 B2 JP2988896 B2 JP 2988896B2
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敬次 下山
哲朗 池渕
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願に係る発明は、旋回
時に自動的に重心位置を旋回中心方向に移動することで
旋回中心方向へのバンクをつけ、旋回(バンクターン)
を容易にする機構に係る旋回助勢装置並びに該装置を有
する滑走型若しくは水中翼型の高速艇に関する。
【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】これまで
の滑走型等の高速艇では、操縦者が意識的に身体を旋回
中心方向に移動又は傾けることにより重心移動を行って
旋回(バンクターン)を行っていた。これは、初心者あ
るいは身体的なハンディキャップを有する操縦者にとっ
てはある種の困難さを伴うことがあり、これがためにス
ムーズなバンクターンを行えるようになるまでにはかな
りの時間と習熟を要し、上記の操縦者にとっては、快適
性に欠けることがあった。
【0003】従来より、初心者でも船体のヒールを容易
にコントロールできるようにした装置については数多く
提案されている(例えば特開平5−58384号、特開
平5−69884号公報等)が、ヒールコントロールを
目的とするのではなく、本願の如く、高速艇旋回時に積
極的、かつ自動的にバンクを生じさせて(つまり、旋回
の内側にヒールを発生させて)艇の旋回を助勢して、こ
れを容易にするような装置については提案されていな
い。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、この出願発明は、操縦者が操縦ハンドルを旋回し
たい方向に切ることにより、これに連動して自動的に旋
回中心方向に固体バラストが移動し、これによる重心移
動に伴う旋回中心方向へのバンクが自動的に発生して、
スムースなバンクターンを可能としたものである。
【0005】
【発明の実施の形態】この出願発明に係る旋回助勢装置
は、固定バラストを左右舷方向に移動可能に船体上に設
けると共に、該固定バラストを左右舷方向に移動させる
ための固定バラスト移動手段を設け、この固定バラスト
移動手段を艇の操縦ハンドルの左右切り換えに連動して
動作するようにした旋回助勢装置であって、左右舷方向
にガイド部材を延設し、このガイド部材に沿って左右舷
方向に移動可能に移動枠を設け、この移動枠に保持軸を
支承すると共に、該保持軸に固定バラストを回転自在に
保持させ、該移動枠に固定バラスト移動手段を連結した
ものである。また、左右舷方向にガイド部材を延設し、
このガイド部材に保持軸を支承すると共に、該保持軸を
該ガイド部材に沿って左右舷方向に移動可能にし、該保
持軸に回転自在に固定バラストを保持させると共に、該
保持軸に固定バラスト移動手段を接続したものである。
【0006】これにより、重心移動に伴う旋回中心方向
へのバンクが自動的に発生して、スムースなバンクター
ンを可能とするものである。また、滑走型高速艇につい
ては、船速とトリム角との間には密接な関係があり、適
切なトリム角を保持することにより最大船速を得ること
が可能である。バラスト重量を増加させることによりト
リム角を増大させることができるため、適切なバラスト
重量を選択することにより、船速上昇を得ることができ
る。また、固定バラストが迅速円滑に左右舷方向に移動
でき、所望のバンク角が確実に得られる。
【0007】また、固定バラストを重量の異なる数種類
のバラストパーツを組み合わせて構成し、これを取り替
え可能にするとよい。これによりバラストパーツを組み
合わせることにより、操縦者の技量、好みにあったバラ
スト重量を得ることができる。
【0008】更にまた、固定バラストを船体上を転動可
能な円形ローラ形状にすると、固定バラストの移動が円
滑迅速になり、応答性がよくなる。
【0009】また、上記固定バラスト移動手段を、操縦
ハンドルの切り換えに連動して前後方向に移動する左右
舷対称に設けられたプッシュロッドと、各プッシュロッ
ドの後端部に一端が接続され、他端が転向シーブと案内
シーブを経由して固定バラスト保持手段に連結されたワ
イヤとから構成すればよい。
【0010】この場合、案内シーブを引張りばねを介し
て船体に取り付けてワイヤにテンションを付与するよう
にすると、操縦ハンドルの操作に対する応答性がよくな
る。
【0011】上記のような旋回助勢装置を滑走型又は水
中翼型高速艇に配備すれば、艇の旋回を容易にするのに
特に有効である。
【0012】
【実施例】以下、この出願発明の実施例を図面を参照し
ながら説明する。
【0013】図1は、この出願発明の適用例である小型
の滑走型高速艇の甲板上平面図である。図2は、その船
尾から前方を見た正面図、図3は、固定バラストの往復
移動機構(以下、固定バラスト移動手段という)のみを
取り出して示した拡大斜視図である。例示の滑走型高速
艇は、船尾噴出口9a(図2)から水ジェットを噴射し
て推進力を得て高速航行できる形式のウオータジェット
推進艇である。
【0014】これらの図に示すように、船首部1に操縦
ハンドル2が設けられ、その操縦軸3の下端に平板状の
揺動アーム4が設けられている。揺動アーム4の両端に
両舷対称的にプッシュロッド5の一端が接続され船側6
に沿って船尾7の方向に延びている。各プッシュロッド
5は、止め金具8により船体9に固定されたパイプケー
シング10の中を挿通しており、従ってプッシュロッド
5が軸方向に移動(前後往復動)するときにはパイプケ
ーシング10がそのガイドの役割を果たしている。各プ
ッシュロッド5の他端にはワイヤ11の一端が連結され
ている。この左右舷のワイヤ11は、対称的に船体9に
固定された転向シーブ12を介して90度近く方向転換
して船体中心方向に向かい途中で互いに交叉した後、船
尾7近くに設けた案内シーブ13に巻回し、その他端が
固定バラスト14を備えた矩形状の移動枠15に接続さ
れている。以上が固定バラスト移動手段Sの構成例であ
るが、これと同機能の範囲で構成を変更するのは差し支
えない。
【0015】固定バラスト保持手段の構成要素となる移
動枠15はガイド部材16によって左右舷方向に移動可
能になっている。なお、案内シーブ13は、図3に示す
ように引張りばね13aを介して船体に取着するのが好
ましい。そうすれば、ワイヤ11に適当なテンションが
付与されて操縦ハンドル2の操作に速やかに応答できる
ようになる。
【0016】図4は固定バラストのガイド機構の拡大要
部図である。 船尾甲板7a上に断面逆L形の一対のガ
イド部材16がその短辺を向かい合わせて前後に一定間
隔をおいて平行に立設され、両方とも左右舷方向に延び
ている。固定バラスト14は、甲板上を円滑に転動可能
に円形ローラに形成されており、その中心に保持軸18
が遊挿されている。従って、このローラ型固定バラスト
14は保持軸18に回転自在に保持されている。この保
持軸18の両端は、矩形状に形成された移動枠15に支
承(着脱可能に軸支)するのがよい。そうすれば、後述
する如く、保持軸18を移動枠15から取り外したあ
と、固定バラスト14を保持軸18から分離することが
でき、固定バラスト14を適当な重量のものに変更する
ことが可能となる。移動枠15は一対のガイド部材16
に入れ子の形に設けられ、ガイド部材16に沿ってこれ
に案内されながら左右舷方向に移動可能になっている。
ガイド部材16を逆L形に立設したのは艇の動揺により
移動枠15がガイド部材16から上方に外れないように
するためである。
【0017】上記移動枠15の両端には上述の案内シー
ブ12を経由してきたワイヤ11の終端が係着されてい
る。従って、移動枠15が左右どちらかに引っ張られる
と固定バラスト14が保持軸18の回りに回転しながら
甲板上を転動して移動するようになっている。固定バラ
スト14がローラ型であれば移動が円滑になるので、そ
れだけ操縦ハンドルの操作に即座に連動しやすくなる。
【0018】通常、固定バラスト14の重量を調整する
ためバラストパーツがいくつか用意されている。固定バ
ラスト14の重量を変えたい時には、保持軸18を移動
枠15から取り外した後、他の固定バラストを保持軸1
8に遊嵌して追加したり、保持軸18から固定バラスト
14を外し、他の異なった重量の固定バラストに交換す
るとよい。これによって、固定バラストの重量を調整し
て最適なバラスト重量に設定することができる。
【0019】図5は固定バラストのガイド機構の変化例
である。中間に下記保持軸18Aが遊挿できるだけの隙
間17aをもって上下平行に一対のガイド部材17が、
甲板上一定間隔をおいて左右舷方向に延設してある。保
持軸18Aの両端部が上記隙間17aを遊挿してその端
部が座金19、ナット20でガイド部材17に係止して
ある。従って、保持軸18Aは、ガイド部材17に支承
されて左右舷方向に移動可能である。保持軸18Aの中
間に円形のスペーサ21が遊嵌され、このスペーサ21
に上述の案内シーブ13を経由してきたワイヤ11の終
端が係着されている。そして、スペーサ21の両側に円
形ローラ状の固定バラスト14Aが回転可能に保持軸1
8Aに設けられている。従って、保持軸18Aが左右ど
ちらかに引っ張られると固定バラスト14Aが保持軸1
8Aの回りに回転しながら甲板上を転動して移動するよ
うになっている。なお、上述したと同様に固定バラスト
14Aの数を増減することができ、バラスト重量が調整
可能である。
【0020】ここで、上記固定バラストの移動によりど
の程度の傾斜モーメントが発生し、船体が何度傾斜する
かについて試算してみる。艇の長さL=2.8 m 、艇の幅
B=1.0 m、艇の重量W=450 kg、艇の重心からメタセ
ンターまでの距離GM=0.312m、固定バラストの重量w
=10 kg、固定バラストの移動量l=0.15 mとすると、
傾斜角θは、θ=wl/W・GM=0.61 deg.となる。
即ち、バラスト10kgを15cm移動すれば0.6°の
傾斜が発生することになり、この量は旋回時に有効なバ
ンク角を発生させるに十分である。
【0021】次に、図3により本願の旋回助勢装置の動
作について簡単に説明する。例えば、操縦者が艇を右旋
回しようとして操縦ハンドル2を右に切ると、揺動アー
ム4が時計方向に揺動する。すると、左のプッシュロッ
ド5はパイプケーシング10に案内されながら前方向に
移動しワイヤは引っ張られる。同時に、右のプッシュロ
ッド5はパイプケーシング10に案内されながら後方に
移動させられる。これにより、固定バラスト15を有す
る移動枠15は右舷方向に引っ張られ、固定バラスト1
4は甲板上を転動しながら右舷側に移動する。これによ
って、艇の重心が右に移動するため艇が右舷側に傾斜し
てバンクを生じ艇は円滑に右に旋回する。
【0022】このように、操縦者がハンドルを旋回した
い方向に切ることにより自動的に旋回中心方向に固体バ
ラストが移動し、これによる重心移動に伴う旋回中心方
向へのバンクが自動的に発生して、スムースなバンクタ
ーンが可能となる。
【0023】
【発明の効果】 この出願発明に係る旋回助勢装置に
よれば、重心移動に伴う旋回中心方向へのバンクが自動
的に発生して、スムースなバンクターンを可能となり、
初心者や身体的なハンディキャップを有する操縦者もス
ムースなバンクターンを容易に楽しむことができる。本
願では操縦ハンドルの操作に連動して固定バラスト移動
手段により固定バラストが同時的に移動するから、応答
性がよく、操作感覚にも合致するから艇の操船性がよ
い。
【0024】また、滑走型高速艇については、船速とト
リム角との間には密接な関係があり、適切なトリム角を
保持することにより最大船速を得ることが可能である。
バラスト重量を増加させることによりトリム角を増大さ
せることができるため、適切なバラスト重量を選択する
ことにより、船速上昇を得ることができる。
【0025】 この場合、左右舷方向にガイド手段を
設けて、固定バラストが迅速確実に左右舷方向に移動で
きるようにすれば、所望のバンク角が確実に得られる。
【0026】また、固定バラストを、重量の異なる数種
類のバラストパーツを組み合わせて構成し、これを取り
替え可能にするとよい。これによりバラストパーツを組
み合わせることにより、操縦者の技量、好みにあったバ
ラスト重量を得ることができる。
【0027】更にまた、固定バラストを船体上を転動可
能な円形ローラ形状にすると、固定バラストの移動が円
滑迅速になり、応答性がよくなる。
【0028】 本願の旋回助勢装置を滑走型又は水中
翼型高速艇に配備すれば、艇の旋回の容易化にとって特
に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願発明の適用例である滑走型高速艇の甲
板上平面図である。
【図2】同滑走型高速艇を船尾から前方を見たときの正
面図である。
【図3】固定バラストの往復移動機構のみを取り出して
示した拡大斜視図である。
【図4】固定バラストのガイド機構の拡大要部図であ
る。
【図5】固定バラストのガイド機構の変化例である。
【符号の説明】
2…操縦ハンドル 4…揺動アーム 5…プッシュロッド 9…船体 10…パイプケーシング 11…ワイヤ 12…転向シーブ 13…案内シーブ 13a…引張りばね 14、14A…固定バラスト S…固定バラスト移動手段 15…移動枠 16,17…ガイド部材 18、18A…保持軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−38493(JP,A) 実開 昭60−45299(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B63H 25/52 B63B 35/73 B63B 39/00 - 39/14

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固定バラストを左右舷方向に移動可能に
    船体上に設けると共に、該固定バラストを左右舷方向に
    移動させるための固定バラスト移動手段を設け、この固
    定バラスト移動手段を艇の操縦ハンドルの左右切り換え
    に連動して動作するようにした旋回助勢装置であって、 左右舷方向にガイド部材を延設し、このガイド部材に沿
    って左右舷方向に移動可能に移動枠を設け、この移動枠
    に保持軸を支承すると共に、該保持軸に固定バラストを
    回転自在に保持させ、該移動枠に固定バラスト移動手段
    を連結したことを特徴とする 旋回助勢装置。
  2. 【請求項2】 固定バラストを左右舷方向に移動可能に
    船体上に設けると共に、該固定バラストを左右舷方向に
    移動させるための固定バラスト移動手段を設け、この固
    定バラスト移動手段を艇の操縦ハンドルの左右切り換え
    に連動して動作するようにした旋回助勢装置であって、 左右舷方向にガイド部材を延設し、このガイド部材に保
    持軸を支承すると共に、該保持軸を該ガイド部材に沿っ
    て左右舷方向に移動可能にし、該保持軸に回転自在に固
    定バラストを保持させると共に、該保持軸に固定バラス
    ト移動手段を接続したことを特徴とする 旋回助勢装置。
  3. 【請求項3】 固定バラストを重量の異なる数種類のバ
    ラストパーツを組み合わせて構成し、これを取り替え可
    能にしたことを特徴とする請求項1又は2項に記載の旋
    回助勢装置。
  4. 【請求項4】 固定バラストを船体上を転動可能な円形
    ローラ形状にしたことを特徴とする請求項1〜3いずれ
    か1項に記載の旋回助勢装置。
  5. 【請求項5】 固定バラスト移動手段を、操縦ハンドル
    の切り換えに連動して前後方向に移動する左右舷対称に
    設けられたプッシュロッドと、各プッシュロッドの後端
    部に一端が接続され、他端が転向シーブと案内シーブを
    経由して固定バラスト保持手段に連結されたワイヤとか
    ら構成したことを特徴とする請求項1又は2項に記載の
    旋回助勢装置。
  6. 【請求項6】 案内シーブを引張りばねを介して船体に
    取り付けてワイヤにテンションを付与したことを特徴と
    する請求項5記載の旋回助勢装置。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6いずれか1項に記載の旋回
    助勢装置を備えた滑走型又は水中翼型高速艇。
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