JP2979030B2 - 高エネルギー密度ビーム照射による硬化性と成形性に優れた鋼板およびその製造方法 - Google Patents
高エネルギー密度ビーム照射による硬化性と成形性に優れた鋼板およびその製造方法Info
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ギ密度ビーム照射による硬化性とプレス成形性が要求さ
れる用途として好適な鋼板、即ち、熱間圧延鋼板、熱間
圧延鋼板の表面処理材、冷延鋼板、冷延鋼板の各種表面
処理鋼板、および、その製造方法に関するものである。
して、プレス成形素材にレーザーなどの高エネルギ密度
ビームを照射する方法については特開平1−25911
8号公報、プレス成形品に高エネルギ密度ビームを照射
する方法は特開平4−72010号公報および特開昭6
1−99629号公報がそれぞれ開示している。しか
し、これらはいずれも鋼板そのものを高強度化するより
もプレス成形に対して有利であり、全体を再加熱焼入れ
処理する方法に比べ、成形後の歪みが小さいことが特徴
である。
術は、単に既存の鋼板を用いる方法であり、適正な鋼板
との組合せによる特性向上の可能性については言及され
てはおらず、高エネルギ密度ビーム照射による硬化性お
よび成形性に優れた鋼板を提供しようとする方法は開示
されていない。
エネルギ密度ビームを照射する場合における鋼板の成分
組成および組織と、硬化性および成形性との関係を鋭意
検討した結果、上記技術の効果を最大限に活かすことの
できる、高エネルギ密度ビーム照射による硬化性と照射
後のプレス成形性に優れた鋼板およびその製造方法を発
明するに至った。
として、以下の要件で構成される。 (1)請求項1の発明は下記の成分組成(組成はwt%
である)を含有することを特徴とする高エネルギー密度
ビーム照射による硬化性と成形性に優れた鋼板である。 (a)C:0.03〜0.25%、 Si:0.6 %以下、Mn:
0.1%〜2%、 P:0.05%以下、S:0.015 %以下、
Al:0.02〜0.045 % 、N:0.005 %以下 , O:
0.003 %以下、B:0.0003〜0.0015%を含有する鋼板で
あって、(b)前記N含有量とB含有量との間に、下式
の関係がある。 N≧1.3B
はwt%である)を備えた高エネルギー密度ビーム照射
による硬化性と成形性に優れた鋼板の製造方法である。 (a)C:0.03〜0.25%、 Si:0.6 %以下、Mn:
0.1%〜2%、 P:0.05%以下、S:0.015 %以下、
Al:0.02〜0.045 % 、N:0.005 %以下 , O:
0.003 %以下、B:0.0003〜0.0015%を含有し、前記N
含有量とB含有量との間に、N≧1.3Bの関係がある成
分組成のスラブを用意し、(b)前記スラブを熱間圧延
し、得られた熱延鋼板を580 ℃以下で巻取り、(c)巻
き取った前記熱延鋼板を酸洗し、または、冷間圧延して
冷延鋼板とし、(d)前記酸洗した熱延鋼板、または、
前記冷延鋼板をAc1 〜Ac1 +100 ℃間に加熱し、焼
鈍する。
り高エネルギ密度ビーム照射による鋼板の硬化性を高め
ると同時に、成形性確保の観点から母材においてはBを
窒素により固定し、照射部およびその熱影響部のみを硬
化させることを特徴とする。一般に焼入れ−焼戻し型低
合金鋼などではBを添加し、母材の焼入れ硬化性を高め
る方法が知られている。このような場合、Bが窒素と結
合した状態では、焼入れ性は向上しないため、TiやA
lなどで窒素を固定し、A3 変態点直上に加熱してBを
フリーな状態とし、その後の冷却時においてオーステナ
イト粒界に偏析させることを重要技術としている。
して固定し、母材の極端な硬質化を抑制し、成形性を確
保するのが基本技術である。ただし、本発明における高
エネルギ密度ビーム照射部はA3 変態点よりはるかに高
温の融点前後まで加熱されるので、BNも容易に分解
し、ビーム照射部およびその熱影響部においては焼入れ
硬化が発現する。
計の異なる点で、Tiを添加せず、Al含有量の上限を
規制し、更に、B量に応じた窒素下限の規制をしたのが
本発明の骨子である。また、製造条件については、成形
性のみならず高エネルギ密度ビーム照射による硬化性を
高めることを狙いとして、熱間圧延後低温巻取りをし、
2相域焼鈍による炭化物の微細化とバンド組織を軽減す
ることを特徴とする。以下にその作用について詳細に説
明する。
性を高めるのに有効な元素であり、0.03%以上は必
要である。しかし、過剰に添加すると母材の硬質化を招
き成形性が低下するので、上限を0.25%とする。
度上昇に寄与する元素であるが、多量の添加は顕著な成
形性の劣化を招くので、上限は0.6%とする。
化性を高めるのに有効な元素であり、0.1%以上は必
要である。しかし、多量の添加は母材の硬質化を招き成
形性が低下するので、上限を2%とする。
いわりに強度上昇に寄与する元素であるが、多量の添加
は偏析による脆化を招くので、上限は0.05%とす
る。
低下させるので少ない方が望ましく、その上限を0.0
15%とする。
加しなければならない。しかし、過剰の添加は酸化物の
増加による成形性の低下を招くと同時に、窒化物を形成
し、間接的にBをフリーな状態とするため、母材の成形
性の低下を引き起こすので、上限を0.045%とす
る。
の低下を招くので、上限を0.005%とする。しかし
ながら、少なすぎるとBをBNとして固定できず、母材
の硬質化すなわち成形性の低下を招き、かつ照射ビーム
による硬化を発生させるため、Bに対し1.3倍以上の
添加が必須である。
めるはたらきがあり、0.0003%以上の添加が必要
である。ただし、過剰添加は硬化に対する効果が飽和す
るだけでなく、母材の硬質化を招き成形性の低下を引き
起こすので、上限を0.0015%およびN/1.3の
いずれか低い方とする。
高エネルギ密度ビーム照射部およびその熱影響部ではフ
ェライトの核発生サイトとして作用し、焼入れ性の低下
を引き起こす。したがって、その含有量は低いほどよ
く、上限を0.0030%とする。
ば、本発明鋼の本質を変更しない限り他の成分元素を含
有しても構わない。以上の成分制御により、高エネルギ
密度ビーム照射による硬化性と成形性の確保は可能であ
るが、さらに以下に示す製造条件の適正化により、さら
に両特性の向上が可能となる。
し、続いて580℃以下で熱延鋼板を巻取り、セメンタ
イトを均一微細に分布させる。580℃を超えるような
巻取り温度ではセメンタイトが粗大化してしまうので上
限を580℃とする。この鋼板は熱延鋼板、酸洗した熱
延鋼板の酸洗又はショット仕上鋼板、熱延鋼板を脱スケ
ールした後各種表面処理鋼板の原板としてこのまま適用
できる。
圧延後、Ac1 〜Ac1 +100℃に加熱し、焼鈍する
ことにより、バンド組織が軽減されるようになる。Ac
1 未満では、再結晶は起こるものの変態しないために、
バンド組織が残存することになる。一方、Ac1 +10
0℃を超えると変態粒成長と炭化物の粗大化が顕著とな
るので、焼鈍の加熱温度範囲はAc1 〜Ac1 +100
℃とする。
の軽減により延性が向上し、成形性が改善される。ま
た、高エネルギ密度ビーム照射による硬化性について
も、このような組織制御により最高硬さそのものの変化
はないものの、硬化部の幅が拡がることにより全体とし
ての強度上昇率は高くなる。この鋼板は熱延、酸洗、焼
鈍後の溶融亜鉛めっきを含む各種表面処理鋼板に適用で
き、また、冷延鋼板、冷延鋼板の各種表面処理鋼板にも
適用できる。
炉または電気炉で溶製後、鋳造し、熱間圧延あるいは酸
洗後冷間圧延により所望の板厚の鋼板にされる。とくに
限定する必要はないが、加熱温度を1150℃以上、仕
上温度をAr3 点以上として熱間圧延を行い、さらに冷
間圧延する場合は、50%以上の圧下率を確保すること
で、本発明の効果は最大限に発揮される。なお、粗圧延
を行わない場合でも本発明の効果は全く損なわれない。
焼鈍ラインあるいは連続焼鈍を備えた連続溶融亜鉛めっ
きラインのいずれによってもかまわない。また、連続溶
融亜鉛めっきの場合、合金化めっき処理してもよい。ま
た、焼鈍後調質圧延を経て、電気めっき、有機複合皮膜
あるいは化成処理などの表面処理を単独あるいは複合し
て施した場合にも、本発明の効果は損なわない。
は、レーザービーム、電子ビームあるいはプラズマアー
クなどを指すが、とくにレーザービームによる照射で
は、出力:2〜5kw、溶接速度:1〜15m/mi
n、焦点位置:−2〜+2mm、シールドガス流量:1
0〜30l/minの条件が代表的条件として挙げられ
る。なお、照射により照射部が溶融・再凝固する場合
に、本発明の効果が最大限に発揮されるが、Ac3 点+
200℃以上の加熱ならば必ずしも溶融することを必須
の条件としない。また、ビーム照射は線状あるいは点
状、格子状など、とくにそのパターンについての制約は
ない。
の通りである。まず、本発明鋼と比較鋼の成分組成およ
びレーザー照射硬化性、成形性は、それぞれ表1に示す
とおりである。表1の各鋼は溶製後鋳造し、加熱温度1
220℃、仕上温度870℃の条件で熱間圧延を施し、
560℃で巻取り、2.8mm厚の鋼板とした後、酸洗
によるスケール除去を行った。
関しては、冷間圧延により0.8mm厚の鋼板とした。
このような酸洗鋼板あるいは冷延鋼板に対して、鋼3,
6,8,19,29は連続焼鈍を施して冷延鋼板とし、
残りの鋼については連続溶融亜鉛めっき処理(500℃
合金化処理、目付量片側あたり60g/m2 )を施し、
伸長率1.2%の調質圧延を行った。
た。これらの鋼板について、CO2 レーザー照射を行い
供試鋼とした。硬化性は図3に示すようなJIS5号引
張試験片に引張方向と平行に中央に5mmピッチで3本
照射した前後の破断強度の変化強度上昇率(%)( ( レ
ーザー照射後の強度−レーザー照射前強度)×100/
レーザー照射前強度) により評価した。成形性は図4に
示すような最大主ひずみ方向と直角に1本のみ照射した
試験片を用い、平面ひずみ張り出し試験を行い、限界張
り出し高さ(LDHo)により評価した。
し条件は以下のとおりである。 レーザー照射条件 レーザー出力:3Kw 照射速度:3m/min 集光レンズの焦点距離:254mm 焦点位置:−0.4mm シールドガスの種類:アルゴン シールドガスの流量:20l/min
(ビード位置:φ133mm) しわ押さえ力:60tonf(一定) 潤滑:ポリエチレンフィルム+高粘度プレス油
に比べ、レーザー照射による硬化が顕著であり、強度上
昇率と平面ひずみ限界張り出し高さとのバランスも良好
である。例えば、比較鋼のなかでC量が低い鋼16、B
含有量が低いか、あるいは無添加の鋼23,25〜28
は、ともに強度上昇率が低い。また、Al量の高い鋼1
7,18、N量の低い鋼19,20、Tiが添加されて
いる鋼20,21、B添加量の高い鋼24は、それぞれ
母材が硬質化しているために強度上昇率がやや低いうえ
に、平面ひずみ張り出し成形性にも劣る。O量の高い鋼
29,30も硬化性および成形性に劣る。
4に関して、巻取り温度および焼鈍温度を変化させた場
合の、照射による強度の変化および平面ひずみ限界張り
出し高さを示す。巻取り温度あるいは焼鈍温度が適正で
ない場合は成形性が低下しており、高エネルギ密度ビー
ム照射による硬化性と成形性の両立を図るためには、成
分組成と巻取り温度および焼鈍温度の最適化が重要であ
ることがわかる。
ーム照射による硬化性と成形性にすぐれている。即ち、
高エネルギ密度ビーム照射により鋼板の強度が上昇し、
かつ、成型性も向上する。そのため、例えば自動車用の
熱間圧延鋼板、熱間圧延鋼板の表面処理材、冷延鋼板、
冷延鋼板の各種表面処理鋼板として優れた鋼板である。
また、本発明の方法は上記性能を有する鋼板を提供する
ことができる。
る強度上昇率の関係を示す図である。
係を示す図である。
す図である。
Claims (2)
- 【請求項1】 下記の成分組成(組成はwt%である)
を含有することを特徴とする高エネルギー密度ビーム照
射による硬化性と成形性に優れた鋼板。 (a)C:0.03〜0.25%、 Si:0.6 %以下、 Mn:0.1%〜2%、 P:0.05%以下、 S:0.015 %以下、 Al:0.02〜0.045 % 、 N:0.005 %以下 , O:0.003 %以下、 B:0.0003〜0.0015%を含有する鋼板であって、 (b)前記N含有量とB含有量との間に、下式の関係が
ある。 N≧1.3B - 【請求項2】 下記の工程(組成はwt%である)を備
えた高エネルギー密度ビーム照射による硬化性と成形性
に優れた鋼板の製造方法。 (a)C:0.03〜0.25%、 Si:0.6 %以下、 Mn:0.1%〜2%、 P:0.05%以下、 S:0.015 %以下、 Al:0.02〜0.045 % 、 N:0.005 %以下 , O:0.003 %以下、 B:0.0003〜0.0015%を含有し、 前記N含有量とB含有量との間に、N≧1.3Bの関係が
ある成分組成のスラブを用意し、 (b)前記スラブを熱間圧延し、得られた熱延鋼板を、
580 ℃以下で巻取り、 (c)巻き取った前記熱延鋼板を酸洗し、または、冷間
圧延して冷延鋼板とし、 (d)前記酸洗した熱延鋼板、または、前記冷延鋼板を
Ac1 〜Ac1 +100 ℃間に加熱し、焼鈍する。 【0001】
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1993
- 1993-11-08 JP JP5300785A patent/JP2979030B2/ja not_active Expired - Fee Related
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