JP2962644B2 - 薄鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents

薄鋳片の連続鋳造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は薄鋳片の連続鋳造方法に
関し、特に鋳型内にて発生する溶鋼吐出流の反転流の発
生を抑止して、凝固シェルの均一化をはかり鋳片表面割
れを防止する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より薄鋳片の連続鋳造方法は省エネ
ルギーおよび省コストの面から注目され、開発が活発に
進められ実機化の検討もなされている。これは薄鋳片が
従来の熱間圧延の簡省略を可能として、連続鋳造工程が
圧延工程と直結され、これまでにない最も理想的な薄鋼
板製造プロセスが実現されることになるためである。通
常、この薄鋳片の連続鋳造方法においては、溶鋼を製鋼
炉より取鍋に収容して連続鋳造機まで搬送し、中間容器
であるタンディッシュに一時貯留して、ここから連続鋳
造鋳型に注湯される。この鋳型への注湯ノズルとして従
来より浸漬型ノズルが使用されている。この浸漬型ノズ
ルの外観形状は、円筒形または矩形であるが、薄鋳片の
場合には偏平鋳型であるため矩形ノズル(フラットノズ
ル)が一般的である。
【0003】この浸漬型ノズルにおいては、鋳造中に一
定の吐出流速を維持して鋳型に溶鋼を供給することが重
要であり、このためノズルの形状の開発が活発に行われ
てきた。しかし、最近の鋳造速度の高速化のニーズとと
もに、凝固シェルの安定化のため吐出流によるシェルア
タックに注目した技術開発も必要になって来ている。た
とえば、この分野の公知技術として特開平1−2939
42号公報に、フラットノズルの配置によって幅中央部
の溶鋼供給を改善する方法の開示がある。これは鋳片の
二重肌を防止するものであって、吐出流による反転流を
制御して鋳片縦割れを改善するものではない。
【0004】通常の浸漬型ノズルから供給される溶鋼
は、鋳型内で吐出流となり鋳型壁面との空間において反
転流を形成する。この反転流によって速い溶鋼主流が曲
げられて凝固シェルをアタックしていき、そこでのシェ
ルの成長が阻害され不均一が助長されることになる。最
近、これが原因となって鋳片での縦割れが発生すること
が知見され、この解明が進められるにつれて、鋳片での
縦割れ改善にはこの反転流の制御が大きく影響すること
が分かってきた。また、製品での高品質化の要求と相ま
って鋳片品質の向上、特に縦割れの対策が望まれてい
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は上記従来
の問題を解決することを目的として、薄鋳片の連続鋳造
方法における矩形ノズルの吐出流による反転流の発生機
構を解明して、シェルへのアタックを生ずることなく均
一な吐出流を維持する注湯方法を検討した。すなわち、
通常の注湯においては鋳型壁面とノズルとの間隙空間に
溶鋼の渦流を生ずることにより、これが溶鋼吐出流と逆
方向ベクトルを有する反転流となる。一度これが発生す
ると、下向きの吐出流が反転流のモーメントによって、
常に曲げられ鋳型壁面のシェルに衝突して、その結果シ
ェルの成長の不均一を生じ、これが鋳片の縦割れの原因
となる。
【0006】本発明はこの反転流の位置を制御して、さ
らにそれを出来るだけ小さくして、かつそのモーメント
を最小とすることによって、下向きの速度の速い主流の
吐出流への影響を無くすことを達成しシェルの均一化を
はかり、鋳片の縦割れを防止を可能とする薄鋳片の連続
鋳造方法を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するものであって、その要旨とするところは、(1)鋳
型壁面との間で空間を形成して浸漬するフラットノズル
によって溶鋼を注湯する薄鋳片の連続鋳造方法におい
て、フラットノズルのメニスカスからの浸漬深さを、鋳
型幅、ノズル幅およびノズル位置の幾何学的条件等との
関係に基づいて決定することによって、溶鋼吐出流がフ
ラットノズルと鋳型間空間に発生する反転流のモーメン
トを最小となすことを特徴とする薄鋳片の連続鋳造方法
であり、
【0008】(2)前記幾何学的条件との関係が、浸漬
深さL≧〔(ノズル〜鋳型短片間距離A)+110〕×
0.45(mm)を満足する(1)記載の薄鋳片の連続
鋳造方法であり、 (3)前記浸漬深さが、浸漬深さL≦(10/k)1/n
V(mm)、ここでkは凝固係数、Vは鋳造速度、nは
定数、なる関係を満足する(1)または(2)記載の薄
鋳片の連続鋳造方法であり、 (4)前記矩形ノズルが、ストレート型または曲率を有
するコーナー付き下向き吐出ノズルである(1)〜
(4)の何れかの項に記載の薄鋳片の連続鋳造方法であ
る。
【0009】
【作用】本発明の作用について以下に説明する。本発明
は浸漬型ノズルから供給される溶鋼の鋳型内での吐出流
に注目して、鋳型壁面とノズルとの空間において反転流
を形成することを知見し、これをコントロールする手段
を実現したものである。この反転流はメニスカスに近く
発生するほど鋳片性状に大きく影響する。また、速い溶
鋼主流が曲げられ凝固シェルをアタックする傾向も、シ
ェルが薄い領域ほど影響が大きいことになる。この反転
流である渦の大きさや中心位置は、ノズルと鋳型短辺間
距離と密接に関係しており、この距離が大きいほど渦の
径が大きくさらに発生位置が深くなることが判明した。
本明者等はこのような直接的に反転流が原因となる鋳片
の縦割れを防止するには、ノズルの浸漬深さと鋳型壁面
との空間大きさを制御すれば達成可能であることを突き
止めた。すなわち、反転流がこの空間に入り込むことが
最大の要件であることが分かってきた。
【0010】このことは、通常の浸漬深さでは鋳型壁面
とノズルとの間隙空間に溶鋼の渦流を生ずることによ
り、これが溶鋼吐出流と逆方向ベクトルを有する反転流
となり、下向きの主流である吐出流が反転流のモーメン
トによって、曲げられ鋳型壁面のシェルに衝突する。こ
れを防止するには、ノズルと鋳型壁面間の空間の大きさ
を限定することが必須となる。本発明はこの反転流の発
生位置をコントロールして、またそれを出来るだけ小さ
くして、かつそのモーメントを最小とすることによっ
て、下向き吐出流への影響を無くすことを達成したもの
である。
【0011】図3は従来の反転流の状況を示す図であ
る。この図では反転流4が発生して吐出流の主流5を狭
めており、この反転流によって狭められた主流がシェル
をアタックすることになる。一方、本発明では、幾何学
的条件との関係が、浸漬深さL≧〔(ノズル〜鋳型短片
間距離A)+110〕x0.45(mm)を満足するよ
うに、メニスカスよりの最低浸漬深さを限定する。この
限定理由は、浸漬深さが〔(ノズル〜鋳型短片間距離
A)+110〕x0.45(mm)未満の場合は、吐出
流の主流は反転流によって狭められシェルアタックが発
生する。ここで、定数110は、湯面の乱れによって鋳
片表面に湯じわを発生することを防止するため、ノズル
の浸漬深さが常に50mm以上必要であることを意味す
る。また、本発明の要件は、注入ノズル1本の場合にそ
の効果を発揮する。図1に本発明の1本の矩形ノズルの
場合の吐出流の状況を示す。すなわち、浸漬深さL≧
〔(ノズル〜鋳型短片間距離A)+110〕x0.45
(mm)を満足する時は、反転流6が発生しても吐出流
の主流7に影響しない位置に移行しており、そのため吐
出流の主流7は渦と衝突せず逆に渦を利用し拡がった流
速分布を呈し、その結果シェルアタックは発生しなくな
る。
【0012】さらに、本発明では浸漬深さL≦(10/
k)1/n V(mm)、ここでkは凝固係数、Vは鋳造速
度、nは定数、なる関係を満足するが、これはシェル厚
みが10mm以上の深さではシェルアタックの影響はな
くなることに基づくものである。以下に本発明の実施例
の図を参照して、作用効果についてさらに詳述する。
【0013】
【実施例】本発明を実機において適用した結果を図2に
示す。図2は矩形ノズル1本を使用した場合であり、鋳
造条件は下記の通りである。 (イ)鋼種 : 中炭素鋼 ノズル幅 : 600mm 鋳片幅 :1300mm 鋳造速度 : 4〜10m/min (ロ)鋼種 : 中炭素鋼 ノズル幅 : 300mm 鋳片幅 : 600mm 鋳造速度 : 4〜10m/min
【0014】以上の条件によって、本発明の要件として
浸漬深さLおよびノズルと鋳型壁面間距離Aを以下のよ
うに設定してその効果を確認した。 (イ)浸漬深さL : 50〜300mm ノズル〜短辺鋳型間距離A : 330mm (ロ)浸漬深さL : 50〜200mm ノズル〜短辺鋳型間距離A : 180mm
【0015】以上のごとく設定して薄鋳片を連続鋳造
後、得られた鋳片(イ)幅1300mmx厚み75m
m、(ロ)幅600mmx厚み75mmについて表面縦
割れの目視検査を行い、その結果を図4および5に示
す。図4の縦軸の縦割れ発生率は、鋳片幅1300m
m、注入ノズル幅600mmの条件下での薄鋳片1m当
りに発生した縦割れの長さをトータルした長さで表示し
たものである。図4(a)の横軸は矩形ノズルの浸漬深
さLを示す。
【0016】ノズル幅600mmの1本注入の場合、浸
漬深さ200mmで表面縦割れ発生率は0.0m/mで
あるが、浸漬深さ150mmで表面縦割れ発生率は0.
005〜0.015m/mになり、さらに、浸漬深さが
浅くなるとともに表面縦割れ発生率は増加の傾向を示し
ている。本発明の条件である浸漬深さL≧〔(ノズル〜
鋳型短片間距離A)+110〕×0.45(mm)から
すると、本実施例の場合では、浸漬深さL≧200mm
となり、また本発明の条件である浸漬深さL≦(10/
k)1/n V(mm)、(k:凝固係数=25、n:定数
=0.5)からすると、本実施例の場合では浸漬深さL
≦640mm(V=4m/minの場合)となり、本発
明の本実施例において、本発明の範囲で良好な結果を示
すことがわかる。
【0017】さらに、図4(b)には図4(a)の横軸
は浸漬深さLを本発明の要件に合わせて〔(ノズル〜鋳
型短片間距離A)+110〕で割った値で表示したもの
である。この図から〔(ノズル〜鋳型短片間距離A)+
110〕が0.45以上において薄鋳片の表面縦割れ発
生率は0.0m/mとなる。図5の縦割れ発生率は、ノ
ズル幅300mm、鋳片幅600mmの条件下での結果
を示す。図5(a)は、前述の(イ)の場合と同様に浸
漬深さを深くするほど縦割れ発生率が減少し、また浸漬
深さ100mmにて縦割れ発生率が0.0m/mとなる
ことを示す。さらに図5(b)は、前述の(イ)の場合
と同様に縦割れ発生率を、浸漬深さLを〔(ノズル〜鋳
型短片間距離A)+110〕で割った値で整理した結果
であり、(イ)の場合と同様に〔(ノズル〜鋳型短片間
距離A)+110〕が0.45以上において縦割れ発生
率は0.0m/mとなることを示す。すなわち、本実施
例(イ)、(ロ)の結果において、本発明の条件範囲の
場合に良好な鋳片が得られることがわかる。
【0018】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によって鋳
型内での吐出流による反転流が抑制され、またはその発
生位置を抑制することが可能となり、凝固シェルの均一
成長を改善して、従来、薄鋳片に発生していた表面縦割
れを防止する薄鋳片の連続鋳造方法を実現することを可
能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鋳型内での吐出流と反転流の状況
を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る矩形ノズルの浸漬深さL
およびノズル〜短辺鋳型壁間距離Aを示す図である。
【図3】従来の鋳型内での吐出流と反転流の状況を示す
図である。
【図4】本発明の実施例に係る、(a)浸漬深さLと縦
割れ発生率との関係を示す図、(b)浸漬深さL/
〔(ノズル〜鋳型短片間距離A)+110〕と縦割れ発
生率との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施例に係る、(a)浸漬深さLと縦
割れ発生率との関係を示す図、(b)浸漬深さL/
〔(ノズル〜鋳型短片間距離A)+110〕と縦割れ発
生率との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…鋳型短辺 2…メニスカス 3…矩形ノズル 4…反転流 5…吐出流の主流 6…制御された反転流 7…制御された吐出流の主流
フロントページの続き (72)発明者 金井 則之 大分県大分市大字西ノ洲1番地 新日本 製鐵株式会社 大分製鐵所内 (72)発明者 石川 厚史 大分県大分市大字西ノ洲1番地 新日本 製鐵株式会社 大分製鐵所内 (72)発明者 梶谷 敏之 大分県大分市大字西ノ洲1番地 新日本 製鐵株式会社 大分製鐵所内 (56)参考文献 特開 昭63−238957(JP,A) 特開 平1−293942(JP,A) 特開 平6−63707(JP,A) 特開 平7−100596(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22D 11/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳型壁面との間で空間を形成して浸漬す
    るフラットノズルによって溶鋼を注湯する薄鋳片の連続
    鋳造方法において、該フラットノズルのメニスカスから
    の浸漬深さを、鋳型幅、ノズル幅およびノズル位置の幾
    何学的条件等との関係に基づいて決定することによっ
    て、溶鋼吐出流が該フラットノズルと鋳型間空間に発生
    する反転流のモーメントを最小となすことを特徴とする
    薄鋳片の連続鋳造方法。
  2. 【請求項2】 前記幾何学的条件との関係が、浸漬深さ
    L≧〔(ノズル〜鋳型短片間距離A)+110〕x0.
    45(mm)を満足する請求項1記載の薄鋳片の連続鋳
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記浸漬深さが、浸漬深さL≦(10/
    k)1/n V(mm)、ここでkは凝固係数、Vは鋳造速
    度、nは定数、なる関係を満足することを特徴とする請
    求項1または2記載の薄鋳片の連続鋳造方法。
  4. 【請求項4】 前記矩形ノズルが、ストレート型または
    曲率を有するコーナー付き下向き吐出ノズルであること
    を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の薄鋳片の連
    続鋳造方法。
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