JP2959890B2 - カーボン被覆光ファイバ - Google Patents

カーボン被覆光ファイバ

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和人 平林
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  • Optical Fibers, Optical Fiber Cores, And Optical Fiber Bundles (AREA)
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光ファイバに関するもの
であり、特に、水素原子または水素基の透過阻止性及び
初期強度を向上させた長期的に信頼性の高いカーボン被
覆光ファイバに関する。
【0002】
【従来の技術】光ファイバは石英ガラスなどのガラス製
のコアとクラッドからなり、必要に応じて前記クラッド
の外側にジャケットが設けられる。かかる光ファイバを
そのまま長時間放置しておくと、大気中あるいは水分環
境に存在する水分が光ファイバ表面の微細な傷に作用し
てその傷が増長される。光ファイバの布設の際にはある
程度の応力が印加された状態になるから微細な傷、裂け
目に水分が作用し易くなり、水分が存在する雰囲気にお
いては経時的に光ファイバの強度が低下する。特に、高
温多湿等の条件の良くない環境に光ファイバが布設され
た場合には、さらに水分による作用が大きく光ファイバ
の強度低下を著しく促進させる。
【0003】また、光ファイバのコア付近に水素原子ま
たは水酸基が侵入すると、特に波長1.24μm付近に
吸収ピークが生じ光ファイバの伝送損失を増加させる。
このような特性劣化を防止するため、光ファイバの表面
に水素原子または水酸基の侵入を防止する高密度な炭素
または炭素化合物で形成されるカーボン被覆層を設けた
光ファイバが提案されている(たとえば、米国特許第4
183621号公報、ヨーロッパ特許出願公開第030
8143号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】カーボン被覆膜は一般
に非晶質であるよりもグラファイト結晶であるときの方
が、原子配列が緻密であり、水素原子または水酸基(た
とえば、水)の透過阻止性に優れている。しかしなが
ら、カーボン被覆膜中のグラファイト結晶の含有率が多
くなるにしたがって、カーボン被覆膜の伸び歪は低下す
るという問題がある。さらに、石英ガラスファイバはグ
ラファイトの含有率が高いカーボン被覆膜に比べ、伸び
易く、伸び歪も大きい。また、一般的に石英やカーボン
のようなセラミックスの破断強度は、表面のクラックの
進行に支配されることから、伸び歪の小さいカーボン被
覆膜を表面に持つカーボン被覆光ファイバは、従来の被
覆が施されていない石英ガラスのみの光ファイバに比
べ、初期強度が劣っている。一方、カーボン被覆膜にお
ける非晶質の占める割合が増すにつれて、原子配列の緻
密さの点で劣り、したがって水素原子または水酸基の透
過阻止性は劣化するが、逆に伸び歪は大きくなり、初期
強度は向上するという二律背反する問題に遭遇する。以
上の問題に鑑みて、本発明は、良好な水素または、水酸
基の透過阻止性を有し、かつより高い初期強度を合せ持
つカーボン被覆光ファイバを提供することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するた
め、本発明は、カーボン被覆膜が被覆膜の生成原料に塩
素系炭化水素などを含ませることにより、カーボン被覆
膜に塩素を分散させ、グラファイト結晶の緻密性を緩和
することによって、非晶質とグラファイト結晶を適度な
構成比で含むことが好適である。本発明においては、光
ファイバ表面近傍では初期強度を向上させる非晶質の含
有量を、またカーボン被覆膜の外表面近傍では水素また
は水酸基の侵入を防止するグラファイトの含有量をそれ
ぞれ高くするものである。すなわち、被覆膜の深さ方向
に、特に光ファイバ表面近傍により多くの塩素をドープ
する。したがって、本発明によれば、コアと、該コアの
外周に形成されたクラッドとを有する石英ファイバ表面
上にカーボン被覆膜が形成された光ファイバにおいて、
前記カーボン被覆膜の前記クラッドと接触するカーボン
被覆膜界面部分に塩素の含有量のピークが存在し、前記
カーボン被覆膜界面から前記カーボン被覆膜の外表面に
向かって塩素の含有量が極度に低下しており、前記カー
ボン被覆膜の前記クラッドと接触するカーボン被覆膜界
面部分のカーボン含有量は低く、前記カーボン被覆膜界
面から前記カーボン被覆膜の外表面に向かってカーボン
含有量が増加していることを特徴とするカーボン被覆光
ファイバが提供される。 さらに好ましくは、前記カーボ
ン被覆膜の最外表面近傍は、塩素含有量が増加し、カー
ボン含有量が低下している。
【0006】
【作用】光ファイバ表面(クラッド表面)近傍により多
くの塩素をドープしたカーボン被覆膜は、光ファイバ表
(クラッド表面)と接するカーボン被覆層が光ファイ
バ(たとえば、石英ガラス)の表面のヤング率とほぼ同
程度の非晶質であり、したがって両層の間に生じる破断
歪の差が大幅に緩和され、初期強度を有する被覆として
機能する。一方、カーボン被覆表面は緻密なカーボン原
子配列を有するグラファイト結晶であるため、水素また
は水酸基の透過阻止も向上し、光ファイバの伝送損失の
増加を防止する。
【0007】
【実施例】本発明のカーボン被覆光ファイバの1実施例
について、添付図面を参照して述べる。図1に、単一モ
ード型カーボン被覆光ファイバの断面を示す。中心部に
直径10μmの石英ファイバのコア1aおよび外径12
5μmのクラッド1bからなる裸の光ファイバ1があ
り、この裸の光ファイバ1の外表面に厚さ102 〜10
3 Å程度のカーボン被覆膜2が形成され、さらにその外
表面に必要に応じて樹脂被覆3が形成される。
【0008】以上の構造を有するカーボン被覆光ファイ
バを形成させる製造装置の概略構成を図2に示す。カー
ボン被覆膜の成膜法として、CVD法の一部である熱分
解方法を用いた。図2において、光ファイバ母材(プリ
フォーム)4は線引炉5内に導入され、軟化温度まで加
熱後、プリフォーム4下端に張力をかけ裸の光ファイバ
を線引し、該裸の光ファイバ6Aの外径を外径測定器7
にて所定の外径に制御する。
【0009】裸の光ファイバ6Aは、反応管加熱炉10
に導入され、加熱したCVD反応管8を通過し、カーボ
ン被覆膜2が形成される。CVD反応管8内には、炭化
水素系原料ガス、たとえば、アセチレン(C2 2 )と
不活性ガス、たとえば、ヘリウム(He)、アルゴン
(Ar)、窒素(N2 )などを混合させた原料ガスが、
マスフローコントローラー9で質量制御されて供給され
る。また、グラファイト結晶と非晶質カーボンの割合を
調整する塩化化合物ガス、たとえば、トリクロロエチレ
ン(C2 HCl3 )、四塩化炭素(CCl4 )、塩素
(Cl2 )などとキャリアガスを混合させた塩素系添加
剤が、マスフローコントローラー13で質量制御されて
バブラー14でバブリングされて供給される。この原料
ガスは、反応管加熱炉10の熱と裸の光ファイバ6A自
体の熱により熱分解され、グラファイト結晶と非晶質カ
ーボンの適度の割合のカーボン被覆膜が、裸の光ファイ
バ6Aの外表面に形成される。カーボン被覆膜の厚さ
は、この実施例では、50Å〜100Åである。このカ
ーボン被覆光ファイバ6は、樹脂被覆用のダイス11に
より樹脂被覆が施され巻取機により巻き取られる。
【0010】表1に、上記の方法で塩素系添加剤の四塩
化炭素の添加量とカーボン被覆膜合成温度とを変化さ
せ、実施例1,2および比較例1のカーボン被覆光ファ
イバを作成し、長尺引張強度,動疲労試験,水素試験と
SIMS(2次イオン質量分析)による結果を評価した
結果およびカーボン被覆光ファイバの製造条件を示し
た。
【表1】 実施例1,2は、塩素系添加物として高濃度の四塩化炭
素を用い、カーボン被覆膜合成温度を比較的低温の80
0〜900°Cとして合成した。また、比較例1は低濃
度の四塩化炭素を用い、カーボン被覆膜合成温度を比較
的高温の1000〜1100°Cとして合成した。
【0011】図3は比較例1、および、図4は実施例
1,2のカーボン被覆光ファイバにおけるカーボン被覆
をSIMS(2次イオン質量分析)法で分析した結果
チャートを示した。すなわち、図3は比較例1の結果
を示すグラフであり、図4は実施例1,2の結果を示す
グラフである。なお、SIMSは、カーボン被覆表面側
からスパークさせ飛び出してくるイオンを分析する方法
である。したがって、時間0secの位置はカーボン被
覆表面であり、時間2000secの位置はファイバ側
である。さらに、図3および図4の内容について説明を
加えると、塩素イオンの検出ピーク極大値B点が炭素
(C)イオン検出ピークと珪素(Si)イオン検出ピー
クの交点A(すなわち、光ファイバのクラッドとカーボ
ン被覆膜との接面)より右側にあるということは、光フ
ァイバ内に塩素イオンが存在することを意味し、一方左
側にあるということはカーボン被覆膜中に塩素が存在す
ることを意味する。また、珪素イオン検出ピークの極小
点Eから炭素イオン検出ピークと珪素イオン検出ピーク
の交点Aまでの間がいわゆる界面付近に相当する。した
がって、最適なカーボン被覆膜は界面付近に塩素イオン
の検出ピーク値を示す、B点が存在している。つまり、
塩素が界面付近に多いほどカーボン被覆膜は非晶質化
し、特に非晶質化が最も進んでいる膜が光ファイバ表面
に接している方がカーボン被覆光ファイバの初期強度は
高くなる。
【0012】比較例1は、図3に示すように、塩素(C
l)イオン検出ピーク(B点)が炭素(C)イオンと珪
素(Si)イオンの検出量が等しくなる位置(光ファイ
バとカーボン被覆膜の界面付近、すなわちA点)よりも
珪素イオン検出量の多い側(ファイバ側)に存在してい
る。一方、実施例1,2は、図4に示すように、塩素イ
オン検出ピーク値(B点)が炭素イオンと珪素イオンの
検出量が等しくなる位置(A点)よりもカーボン被覆膜
側に存在する。また、実施例1に比べ実施例2の方が炭
素イオンに対する塩素イオンの相対検出ピークの高さが
より大きくなっていた(図示せず)。
【0013】初期強度を測定した結果を表1に示した。
実施例1および実施例2の初期強度はそれぞれ5.8k
gf,6.2kgfであり従来の塩素を包含しないカー
ボン被覆石英系光ファイバと同等の初期強度が得られ
た。一方、比較例1は5.3kgfであり従来の石英系
光ファイバに比べやや強度が劣っていた。
【0014】さらに、実施例1.2および比較例1につ
いて動疲労試験および水素試験をおなった結果を表1に
示す。実施例1および2は疲労特性および水素透過阻止
性は、いずれも良好な値を示した。
【0015】以上述べたように、本発明においては、カ
ーボン被覆膜形成において、光ファイバ表面との界面付
近により多くの塩素をドープすることにより、従来の石
英系ファイアと同等の初期強度を有し、かつ、良好な水
素透過阻止性および疲労特性をあわせ持つカーボン被覆
光ファイバが得られる。
【0016】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明において
は、カーボン被覆光ファイバのカーボン被覆膜形成にお
いて、光ファイバ表面との界面付近により多くの塩素を
ドープすることにより、従来の石英系ファイバと同等の
初期強度を有し、かつ、良好な水素透過阻止性および疲
労特性をあわせ持つカーボン被覆光ファイバが製造され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施例のカーボン被覆光ファイ
バの構造を示す断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例のカーボン被覆光ファイ
バを製造する熱CVD法を用いた装置の概略構成図であ
る。
【図3】図3は比較例1のカーボン被覆光ファイバのカ
ーボン被覆膜の構造を示すSIMS(2次イオン質量分
析)結果を示すチャートである。
【図4】図4は本発明の実施例のカーボン被覆光ファイ
バのカーボン被覆膜の構造を示すSIMS結果を示す
ャートである。
【符号の説明】
1・・・・石英ファイバ部, 1a・・・コア 1b・・・クラッド 2・・・・カーボン被覆膜, 3・・・・樹脂被覆, 4・・・・光ファイバ母材(プリフォーム) 5・・・・線引炉, 6・・・・カーボン被覆光ファイバ, 7・・・・外形測定器, 8・・・・CDV反応管, 9・・・・マスフローコントローラー, 10・・・・反応管加熱炉, 11・・・・被覆ダイス, 12・・・・巻取機, 13・・・・マスフローコントローラー, 14・・・・バブラー。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−289450(JP,A) 特開 平3−153549(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G02B 6/44

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コアと、該コアの外周に形成されたクラッ
    ドとを有する石英ファイバ表面上にカーボン被覆膜が形
    成された光ファイバにおいて、 前記カーボン被覆膜の前記クラッドと接触するカーボン
    被覆膜界面部分に塩素の含有量のピークが存在し、前記
    カーボン被覆膜界面から前記カーボン被覆膜の外表面に
    向かって塩素の含有量が極度に低下しており、 前記カーボン被覆膜の前記クラッドと接触するカーボン
    被覆膜界面部分のカーボン含有量は低く、前記カーボン
    被覆膜界面から前記カーボン被覆膜の外表面に向かって
    カーボン含有量が増加している ことを特徴とするカーボ
    ン被覆光ファイバ。
  2. 【請求項2】前記カーボン被覆膜の最外表面近傍は、塩
    素含有量が増加し、カーボン含有量が低下している、請
    求項1記載のカーボン被覆光ファイバ。
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JPH08239247A (ja) * 1995-03-03 1996-09-17 Sumitomo Electric Ind Ltd 光ファイバ及びその製造方法
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