JP2955458B2 - 動的システムの診断装置およびこれを用いたタイヤ空気圧診断装置、車体重量変動検出装置、内部外乱分離装置 - Google Patents

動的システムの診断装置およびこれを用いたタイヤ空気圧診断装置、車体重量変動検出装置、内部外乱分離装置

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JP2955458B2
JP2955458B2 JP5319026A JP31902693A JP2955458B2 JP 2955458 B2 JP2955458 B2 JP 2955458B2 JP 5319026 A JP5319026 A JP 5319026A JP 31902693 A JP31902693 A JP 31902693A JP 2955458 B2 JP2955458 B2 JP 2955458B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は動的システムの診断装置
およびこれを用いたタイヤ空気圧診断装置、車体重量変
動検出装置、特に故障を動的システム内で発生する外乱
として推定し、その推定外乱から動的システムの故障の
診断、タイヤ空気圧の異状検出、車体重量の変動の検出
等を行う診断装置およびこれを用いたタイヤ空気圧診断
装置、車体重量変動検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、動的システムの故障診断を行
う装置が周知である。この診断装置は、動的システムの
正常モデルから推定された動的システムの応答と、実際
にセンサ等で測定した応答との残差を用いて、故障の有
無および故障箇所を判定している。
【0003】この代表として、一般化尤度比較検定法
(A.S.Willsky & H.L.Jones ,“AGeneralized Likelih
ood Ratio Approach to Detection and Estimation ofJ
umps in Linear Systems,"IEEE Trans. AC-21,No.1)
が挙げられる。
【0004】図7には、この尤度比較検定法を具現化し
た装置が示されている。この故障診断装置20は、制御
器12からの制御入力14に基づき制御される動的シス
テム10を診断対象としている。ここにおいて、u、d
は動的システム10に入力される制御入力ベクトル、外
部外乱ベクトルである。yは動的システムの制御出力ベ
クトルである。xはセンサー等を用いて測定した動的シ
ステム10の内部状態量ベクトルである。
【0005】故障診断装置20は、正常モデル用のオブ
ザーバー22と、故障モデル用の複数のオブザーバ24
−1、24−2…と、各故障モデル用オブザーバに対応
して設けられた尤度比検定部26−1、26−2…と、
故障判定部28とを含む。
【0006】前記正常モデルオブザーバ22は、動的シ
ステム10の制御入力ベクトルuと制御出力ベクトルy
から、正常なモデルに基づいて動的システム10の状態
を推定出力する。この推定出力信号23と、実際にセン
サー等で測定した動的システム10の状態量xとの残差
25が、尤度比検定部26−1、26−2…へ入力され
る。
【0007】故障モデルオブザーバ24−1、24−2
…は、それぞれ異なる故障モデルに基づいて動的システ
ム10の状態を推定演算する。そして、これら各故障モ
デルオブザーバ24−1、24−2…の推定出力27−
1、27−2…と、実際に測定された動的システム10
の状態xとの残差29−1、29−2…が、対応する尤
度比検定部26−1、26−2…へ入力される。
【0008】各尤度比検定部26−1、26−2…は、
正常モデルオブザーバ22からの残差信号25と、故障
モデルオブザーバ24からの残差信号29とから、対応
する故障モデルと現在の動的システム10とが一致する
確率(尤度)を演算する。その演算結果は、故障判別部
28へ向け出力される。
【0009】このようにして尤度比検定部26−1、2
6−2…は、故障モデルと、現在の動的システム10と
が一致する確率の演算を、想定される故障モデル毎に行
っている。そして、故障判定部28は、入力される信号
から、尤度の最も高い故障モデルを決定し、これをもっ
て動的システム10の故障の発生および故障箇所を判定
している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記故障診断
装置20は、次のような課題がある。
【0011】まず、この従来装置は、オブザーバ22、
24が推定する状態23、27と、実際の測定値xとの
残差25、29から、故障に対応するモデルを求めてい
る。しかし、この残差は、オブザーバの設計に大きく依
存し、オブザーバの状態検出速度(故障検出速度)を早
めようとすると、残差そのものが小さくなり、故障検出
感度が低下するという問題があった。
【0012】特に、雑音の多いシステム等では、大きく
かつ急変する故障でなければ検知することができないと
いう問題があった。
【0013】また、この従来装置は、故障検出のための
尤度の計算が複雑である。しかもこの計算は、個々の故
障モデルに応じて行わなければならない。このため計算
量が膨大となり、実時間での診断に対応できないという
問題があった。
【0014】さらに、この従来装置は、診断対象となる
動的システム10の内部状態量xが一つでも測定できな
い場合、診断対象の内部故障を検出特定することができ
ないという問題があった。すなわち動的システム10の
内部状態量xは、複数の要素からなる状態量ベクトルと
して検出される。従って、この状態量ベクトルxの要素
の一つでも測定できない場合、診断対象の内部故障の検
出、特定をすることができなかった。
【0015】さらに、この従来装置は、外部から侵入す
る外部外乱dと、内部故障によって発生する内部外乱と
の分離が考慮されていない。このため、外部外乱によっ
てその測定精度が影響を受けやすいという問題があっ
た。
【0016】本発明は、このような従来の課題に鑑みな
されたものであり、その目的は、動的システムの診断箇
所を特定しながらその診断を行うことができ、特に複数
箇所の診断を各箇所に対応した多くのオブザーバを用い
ることなく、少ない計算量で精度よく行うことができる
動的システムの診断装置を提供することにある。
【0017】また、本発明の他の目的は、サスペンショ
ンと車輪で構成される動的システムにおいて、車輪のタ
イヤ空気圧の診断を簡単かつ正確に行うことができるタ
イヤ空気圧診断装置を提供することにある。
【0018】また、本願発明の他の目的は、サスペンシ
ョンと車輪で構成される動的システムの車体重量の変動
を検出する車体重量変動検出装置を提供することにあ
る。また、本発明の他の目的は、動的システムの内部外
乱を分離することができる動的システムの内部外乱分離
装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段及び作用】
(1)動的システムの診断装置に関する発明 本発明の動的システムの診断装置は、動的システムの故
障を検出する動的システムの診断装置であって、前記動
的システムの内部状態量ベクトルに基づき、動的システ
ムの外部外乱ベクトルおよび内部外乱ベクトルの和とし
ての総合的外乱ベクトルを推定する外乱推定手段と、推
定された前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量ベ
クトルとの相互相関を演算する演算手段と、前記総合的
外乱ベクトルから内部外乱に関連する成分を分離する
離手段と、分離された内部外乱に関連する成分から、前
記動的システムの対応箇所を特定しその診断を行う診断
手段と、を含み、動的システムの診断を行うことを特徴
とする。
【0020】ここにおいて、前記算手段は、前記総合
的外乱ベクトルの要素と、前記内部状態量ベクトルの外
部外乱に対し相関の無い要素との相互相関を演算し、前
分離手段は、総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱
に関連する成分を分離するように形成することができ
る。
【0021】また、前記算手段は、前記相互相関演算
として、前記総合的外乱ベクトルと、前記内部外乱ベク
トルの誤差の自乗の時間的な和が最小となるように、
前記内部状態量ベクトルを基底ベクトルとする総合的外
乱の方向ベクトルの演算を実行し、前記分離手段は、
合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する成分を
分離するよう形成されたことを特徴とする。
【0022】また、前記算手段は、推定された前記総
合的外乱ベクトルの複数の要素について、前記内部状態
量ベクトルの外部外乱に対し相関の無い要素との相互相
関を演算し、前記分離手段は、総合的外乱ベクトルの複
数の要素から内部外乱に関連する成分の各要素を分離す
るよう形成され、前記診断手段は、分離された内部外乱
に関連する成分の各要素から、前記動的システムの診断
箇所を特定し、その診断を行うよう形成されたことを特
徴とする。
【0023】また、前記診断手段は、予め内部外乱に関
連する成分の各要素に対応した故障検出用基準値が記憶
されたメモリ部と、分離された内部外乱に関連する成分
の各要素と、対応する故障検出用基準値とを比較し、前
記動的システムの故障箇所を特定する故障特定部と、を
含むよう形成することが好ましい。
【0024】また、前記診断装置は、前記動的システム
の内部状態量ベクトルの各要素の全てまたはその一部を
測定するセンサ手段を含むよう形成することが好まし
い。
【0025】また、前記外乱推定手段は、動的システム
の内部状態量ベクトルの要素の一部または全てを推定演
算するよう形成することができる。
【0026】図1には、本発明に係る動的システム診断
装置が示されている。ここにおいて、診断装置30の診
断対象となる動的システム10は、制御器12からの制
御入力14に基づき制御されている。この動的システム
10は、前記制御入力14と、外部から入力される外部
外乱15とに基づき内部状態が変化し、これにより制御
出力16が変化する。制御器12は、この制御出力16
をフィードバック信号として用い、動的システム10の
制御を行っている。
【0027】ここにおいて、動的システム10はn個の
内部状態量(すなわち、システムの次数はn)を有す
る。uは、m個の要素から成るシステム10への制御入
力ベクトル14を表す。yは、システム10から出力さ
れるp個の要素から成る制御出力ベクトル16を表して
いる。またdは、動的システム10と同じ次数であるn
個の要素を持つ外部外乱ベクトル15を表している。
【0028】また、本発明の診断装置30は、外乱推定
手段32と、相関演算手段34と、診断手段36とを含
み、動的システム10の故障を内部外乱として検出する
よう構成されている。ここで相関演算手段34は、演算
手段および分離手段として機能する。
【0029】前記外乱推定手段32は、前記動的システ
ム10の内部状態量ベクトル(動的システム10の内部
の状態量を表す各要素から構成されるベクトル)に基づ
き、動的システム10の外部外乱ベクトルdおよび内部
外乱ベクトルの和としての総合的外乱ベクトルwを推定
し、相関演算手段34へ向け出力するよう構成されてい
る。
【0030】なお、図1では、動的システム10の制御
出力ベクトルyが外乱推定手段32に入力される。そし
て、外乱推定手段32は、制御出力ベクトルyから動的
システム10の内部状態量ベクトルxを推定演算し、相
関演算手段34へ向け出力している。このような推定演
算は、制御出力ベクトルyに、内部状態量ベクトル量x
の各要素を演算できる情報が含まれている場合に行われ
る。前述した内部状態量ベクトルxの推定演算は、総合
的外乱ベクトルwの推定と同時に行われる。具体的に
は、数8で示した総合的外乱ベクトルwと状態量xとで
構成した新たな状態量を、従来の線形制御理論(例え
ば、古田、佐野著:「基礎システム理論」,コロナ社
1978,pp127−137)に基づいて演算して求
める。
【0031】また、制御出力ベクトルyに含まれる情報
量が内部状態量ベクトルを推定するのに足りない場合に
は、必要に応じ動的システム10の内部に内部状態量を
検出するセンサを設け、そのセンサ出力を外乱推定手段
32へ入力するようにすればよい。
【0032】また、動的システム10の制御出力ベクト
ルyまたは必要に応じ動的システム10内に設けられた
内部状態量センサから、全ての内部状態量ベクトルxの
情報が直接得られる場合には、内部状態量xを相関演算
手段34へ向け直接出力するよう形成すればよい。
【0033】相関演算手段34は、推定された前記総合
的外乱ベクトルwの各要素と、内部状態量ベクトルxの
要素との相互相関を演算し、前記総合的外乱ベクトルw
の各要素から内部外乱に関連する成分を分離する。分離
された内部外乱に関連する成分は、診断手段36へ向け
出力される。
【0034】診断手段36は、分離された内部外乱に関
連する成分から、前記動的システム10の診断箇所を特
定し、その状態を求めるよう形成されている。
【0035】ここにおいて、前記相関演算手段34は、
総合的外乱ベクトルwの複数の要素に対する相互相関を
演算し、総合的外乱ベクトルwの複数の要素から内部外
乱に関連する成分を分離するよう形成することが好まし
い。
【0036】このとき分離された内部外乱に関連する成
分の各要素は、動的システム10内に発生する各故障箇
所に対応するものである。このため、診断手段36は、
分離された内部外乱に関連する成分の各要素から、動的
システム10内における故障の発生およびその故障箇所
を特定することができる。
【0037】この場合には、診断手段36は、あらかじ
め内部外乱に関連する成分の各要素に対応した故障検出
用基準値が記憶されたメモリ部40と、分離された内部
外乱に関連する成分の要素と、対応する故障検出用基準
値とを比較し、前記動的システム10の故障箇所を特定
する故障特定部38と、を含むよう形成することが好ま
しい。
【0038】本発明は以上の構成からなり、次にその作
用を説明する。
【0039】まず、外乱推定手段32について説明す
る。
【0040】診断対象となる動的システム10に故障が
発生すると、診断対象の内部状態量は正常時とは異なる
応答を示す。この応答は、見方を変えれば、正常時の応
答に、その故障に対応したある種の外乱が加わったもの
であると考えることができる。この外乱は、診断対象1
0に外部から侵入したものではなく、内部で発生したも
のである。外乱推定手段32は、故障によって生じたこ
の内部外乱を、外部外乱との和としての総合的外乱wと
して推定する。
【0041】この外乱推定手段32の、外乱推定原理を
以下に説明する。
【0042】まず動的システム10は、次の状態方程式
で表現されているものと仮定する。
【0043】
【数1】 ここで、x(t)は、診断対象となる動的システム10
の内部状態量ベクトル,u(t)は制御入力ベクトル,
y(t)は制御出力ベクトル,d(t)は外部外乱ベク
トルを表す。また、行列A,B,Cは診断対象の構造に
よって決まる定数行列(診断対象を構成するシステムの
パラメータ)である。
【0044】従って、前記数1は、次式で表されること
になる。
【0045】
【数2】 故障時の診断対象10は等価的に行列A,Bの変動(パ
ラメータの変動)を用いて表現できる。すなわち、故障
に応じて、行列AはΔA(t),行列BはΔB(t)だ
け変動したとすると、故障後の診断対象、すなわち故障
後の動的システム10は、次のように書き表される。
【0046】
【数3】 ここで、前記Dw(t)は、総合的外乱ベクトルであ
り、次式で書き表される。
【0047】
【数4】 Dw(t)=△A(t)×(t)+ΔB(t)u(t)+d(t)ここで、内部外乱とは、数4に示す ΔAx+ΔBu のように、システムのパラメータ変動行列ΔA、ΔBと
システムの内部状態量ベクトルx、入出力u、yから表
すことの出来る量で、変動前のシステムにあたかも外乱
として加わったかのように表現できる量をいう。 また、
内部外乱に関連する成分とは、数4に示す内部外乱 ΔAx+ΔBu において、内部外乱を構成するパラメータ変動行列Δ
A、ΔB、あるいはこれらの行列の要素をいう。 また行
列Dは、故障によって外乱が診断対象10のどの経路に
発生するかを表すもので、外部外乱の侵入経路と想定し
た故障に対応して設定される。
【0048】なお、前記数3,数4を一般的な行列式で
書き表すと次式のようになる。
【0049】
【数5】
【0050】
【数6】 このように、故障時の診断対象の状態ベクトルの応答
は、正常時の応答{Ax(t)+Bu(t)}と、外乱
{Dw(t)}との和で表すことができる。外乱推定手
段32は、この外乱Dw(t)を推定すべく構成されて
いる。
【0051】このときの外乱の推定は次のようにして行
われる。
【0052】まず第1のステップでは、外乱w(t)を
状態に含めた診断対象10の拡張系を構成する。そのた
めにw(t)に次の仮定を設け、w(t)を診断対象の
状態として追加する。
【0053】
【数7】 これにより、w(t)を状態に含めたシステムの拡張系
は、次式で書き表される。
【0054】
【数8】 そして、第2のステップで、前記数8の状態[xTw
T]Tを、従来の線形制御理論を用いて推定演算する。
【0055】なお、前記数7の仮定は、図2に示すよ
う、本来連続的に変化する外乱100を、同図において
110で示すよう階段状に近似することを意味してい
る。この階段の幅は狭いほど近似の精度はよい。この幅
は、外乱推定手段32の外乱推定時間に対応しており、
実施する上では推定時間は外乱の変化する速さに比べて
非常に短くすることができるので、この近似は充分実用
に耐えるものである。
【0056】このように、外乱推定手段32は、拡張し
た系が可観測であれば、診断対象の状態が全て測定でき
ない場合でも、測定できない状態を推定すると同時に故
障に対応する外乱を推定することができる。
【0057】次に、相関演算手段34について説明す
る。
【0058】前述したように、外乱推定手段32が推定
した総合的外乱ベクトルw(t)は、診断対象10の故
障によって生じる内部外乱と、正常、故障にかかわら
ず、診断対象に外部から侵入して来る外部外乱dとが混
在したものになっている。
【0059】前記外部外乱dは、不規則な信号ではある
が、一定時間の平均をとるとその値が零になるという特
徴を有する。本発明では、前記外部外乱dの特徴に着目
し、推定された総合的外乱w(t)から、故障によって
生じた内部外乱に関連する成分(パラメータの変動成分
ΔA,ΔB)を分離するための演算を行う。このような
演算の代表的手法は最小自乗法である。
【0060】まず、前記数4から、次式を定義する。
【0061】
【数112】 θ=[ΔAΔB],ζ=[xここにおいて、θは、故障によって生じた内部外乱に関
連する成分を表す。また、xは、内部状態量ベクトル、
uは制御入力ベクトルを表す。さらに、ζは動的システ
ムの内部外乱の抽出における内部状態量として再定義す
る。 そして、最小自乗法の手法を用い、N個のデータか
【0062】
【数113】
【0063】を最小にする
【外59】を求める。 トルを表す。
【0064】これは、上式を
【外60】 で偏微分した式を零とおいて求められ、次式であらわさ
れる。
【0065】
【数114】 さらにこれを漸化式に直すと、
【0066】
【数115】 となり、逐次的にパラメータ変動ΔA、ΔBを推定でき
るようになる。上記数113、114を請求項3の発明
に対応させて説明する。 前記総合的外乱ベクトルと、前
記内部外乱ベクトルと前記内部状態量ベクトルとの積の
誤差の自乗の時間的な和とは、数113を指す。すなわ
ち、数113は さらに、内部状態量ベクトルを基底ベクトルとする総合
的外乱の方向ベクトルの演算の実行とは、数114を指
す。すなわち、総合的外乱の方向ベクトルとは、
【0067】上述した説明において、相互相関を表す式
は、数114の右辺にある である。この式から得られるベクトルのi番目の要素を
取りあげると、 となっており、各項が、ベクトルζの要素とx との相
互相関となっている。次に、この様な相互相関算の具
体例を、ベクトルζとの各要素との間に相関がない場合
を例にとり説明する。この場合には、総合的外乱w
(t)と、外部外乱に対し相関のない内部状態量x
(t)との相関関係を求めることで、総合的外乱w
(t)から内部外乱に関連する成分を分離することがで
きる。
【0068】例えば、外乱ベクトルw(t) の推定値のi
番目の要素を取り上げると、これは次式で表される。
【0069】
【数9】 この数9から明らかなように、推定された外乱のi番目
の要素は、診断対象10の故障を表す量Δaijと、内
部状態量ベクトルx(t)の各要素x1,x2…との線
形結合からなっている。
【0070】そこで、推定外乱のi番目の要素から、そ
の故障量を取り出すために、推定外乱のi番目の要素と
診断対象10の内部状態量との相互相関を取る。そのと
き、相互相関演算に用いられる診断対象の内部状態量
は、動的システム10の内部に設けられたセンサ等で直
接測定された値を用いてもよく、前述したように外乱推
定手段32によって推定された値を用いてもよい。
【0071】まず、前記数9に示す、推定外乱のi番目
の要素と、xのj番目の要素xjとの相互相関関数を求
める場合を考える。このとき、前記相互相関関数は次式
で定義される。
【0072】
【数10】 なお、ここでは前述したように、制御器12の働きによ
り、外部外乱ベクトルd(t)の各要素と、内部状態量
ベクトルxの各要素xjとの間に相関はないものと仮定
している。
【0073】前記相互相関関数、自己相関関数は、次式
で表される。
【0074】
【数11】 この数11における各値は、次式で表される。
【0075】
【数12】 なお、前記数9を用いた演算は、内部状態量xjがセン
サなどを用いて直接測定された場合を想定している。こ
れに対し、xjが直接測定されない場合には、外乱推定
手段32からの推定値を用いて相互相関関数を次式に基
づき求めればよい。
【0076】
【数13】
【0077】
【数14】 外乱推定手段32は、故障や外部外乱の有無にかかわら
ず、診断対象の内部状態量xjを誤差なく推定すること
ができるので、前記数13、数14のような相関をとっ
ても、内部状態を直接測定した場合とほとんど変わらな
い結果を得ることができる。
【0078】次に、診断手段36について説明する。
【0079】診断手段36は、相関演算手段34により
演算される内部外乱に関連する成分である相関関数Ci
jにより、故障の発生の検出およびその故障個所の特定
を行う。すなわち、相関Cijを状態の自己相関vxj
で割って正規化することによりパラメータ変動、すなわ
ち内部外乱に関連する成分Δajiを検出することがで
きる。整理すると、
【0080】
【数116】 となる。上式は平均値を零とすれば、数114において
ベクトルζの各要素間に相関がないと仮定した場合と等
しい。
【0081】例えば、診断対象となる動的システム10
の構成要素に、構成要素Iと構成要素IIとがあり、構成
要素Iを表現するパラメータが前記状態方程式の数1で
表現された動的システムのA行列の1行1列目にあり、
構成要素IIを表現するパラメータがA行列の1行1列目
および1行2列目にあると仮定する。このとき、相関関
数C12、すなわちΔa12が値を持てば、ただちに構成要
素IIの故障であると判断する。また、C12に値がなく、
C11、すなわちΔa11が値を持てば、構成要素Iの故障
であると判定する。
【0082】このようにして、本発明によれば、動的シ
ステム10を構成する各構成要素に発生する故障を確実
に検出すると共に、その故障個所を正確に特定すること
ができる。以上の説明を、請求項1に係る発明の構成と
対比する。 請求項1における、「推定された前記総合的
外乱ベクトルと、前記内部状態ベクトルとの相互相関を
演算し」とは、例えば数13を指す。すなわち、数13
では、ベクトルの要素毎の演算が記されており、推定さ
れた前記総合的外乱ベクト また、「内部外乱ベクトルに関連する成分を分離する」
とは、例えば数116の演算を指しており、同演算によ
って、内部外乱ベクトルに関連する成分Δaijを推定
している。 なお、分離するとは、例えば数9に示されて
いる総合的外乱ベクトルから、数116に示す演算によ
って、内部外乱ベクトルに関連する成分Δaijを取り
出すことを意味している。
【0083】ちなみに、故障に対応する量を、オブザー
バによって推定された状態と直接測定した状態との残差
から求める従来技術は、この残差が故障と簡潔な関係に
はない(前記数9のような簡潔な関係にはない)ので、
相関演算のような簡単な計算によって故障を特定するこ
とは出来ない。
【0084】なお、本発明は、外乱推定手段32の設計
に応じて、以下のような態様を取り得る。
【0085】第1の態様は、診断対象10の全ての内部
状態量x(t)がセンサ等を用いて測定でき、外乱推定
手段32は総合的外乱ベクトルw(t)のみを推定する
ように形成された場合である。この場合は、外乱推定手
段32は、その次数が外乱の次数だけで済むため、構成
が最も簡単で、故障検出精度も最も高いという利点があ
る。
【0086】第2の態様は、診断対象10の内部状態量
x(t)の一部が測定できない場合または、測定しなく
ても外乱推定手段によって推定できる場合である。これ
らの場合には、外乱推定手段32は、総合的外乱ベクト
ルw(t)と、測定できないまたは測定しない内部状態
量ベクトルの要素とを推定演算するよう形成される。
【0087】この場合には、診断対象10の内部状態量
の一部を測定する必要がないので、センサの削減が可能
となる。外乱推定手段32は、総合的外乱ベクトルと共
に測定できない内部状態量をも推定するので、この推定
値を相関演算を用いることによって、全ての内部状態を
測定した場合とほぼ等しく故障を測定することができ
る。
【0088】第3の態様は、診断対象10の内部状態量
ベクトルの一部が測定できないとき、外乱推定手段32
総合互的外乱ベクトルw(t)と、測定できない内部
状態量含めた全ての内部状態量を推定演算するよう形
成した場合である。
【0089】この場合も、第2の態様と同様に、センサ
の削減が可能となると共に、全ての内部状態量を測定し
た場合とほぼ等しく故障を特定することができる。
【0090】また、外乱推定手段32の設計が、第2の
対応より若干簡単になるという利点もある。
【0091】以下に、前記第1〜第3の態様を採る場合
の演算を詳細に説明する。まず、第1の態様でのべたよ
うに、診断対象10の全ての内部状態量が測定される場
合である。
【0092】この場合に、前記数9の総合的外乱ベクト
ルの平均をとると、この演算式は次式で表わされる。
【0093】
【数52】 従って、診断対象の状態量を全て測定できるとき、推定
された総合的外乱ベクトルと外部外乱ベクトルとの相関
のない内部状態量ベクトルxjとの相互相関関数を求め
ると、その値は次式で示すようになる。
【0094】
【数53】 ここで、診断対象の内部状態量の間に相関がないという
仮定から、前記数53の各項は次式で表わされる。
【0095】
【数54】 また、診断対象のjと外部外乱との間にも相関がない
と仮定しているので、次式で示す関係が成立する。
【0096】
【数55】 この結果、前記相関関数の値は、最終的に次式で表わさ
れることになる。
【0097】
【数56】
【0098】
【数57】 また、前記第2の態様,第3の態様のように、外乱推定
手段32からの推定値を用いて相互相関を演算する場合
には、その演算式は次式で表わされる。
【0099】
【数58】 ここにおいて、診断対象の内部状態量の間に相関がない
と仮定しているため、前記数58の各項は次式で表わさ
れることになる。
【0100】
【数59】 したがって、前記相互相関の値は、次式で表わされるこ
とになる。
【0101】
【数60】
【0102】
【数61】 このようにして求めた相関関数を用いることによって
も、同様にして故障の発生およびその故障箇所の特定を
行うことができる。
【0103】(発明の効果)以上説明したように、本発
明によれば、故障検出手段として、故障によって生じる
外乱を診断対象の1つの状態として推定する外乱推定手
段を用いているため、従来技術に見られる故障検出速度
と故障検出感度のトレードオフが存在せず、従来技術に
比べて故障検出速度,故障検出感度が格段に向上するこ
とになる。
【0104】また、推定された外乱と故障箇所との関係
が、簡単な数式によって表現できるので、診断対象の内
部状態量との相関を求めるという簡単な演算によって、
容易に外部からの外乱と故障によって発生した内部外乱
とを分離し、故障箇所の特定を行うことができる。
【0105】このとき、相関演算に用いられる内部状態
量としては、単にセンサによって直接測定されたものだ
けでなく、必要に応じ外乱推定手段が外乱と同時に推定
した内部状態量を用いることができ、これによって、診
断対象の全ての内部状態量が測定されていなくても、詳
細な故障検出が可能となる。
【0106】このように、本発明によれば、従来技術に
あるような故障に応じた多くのオブザーバを用いる必要
がなく、また必要に応じ診断対象の全ての状態を測定し
なくても、診断対象の故障箇所を感度よく特定すること
ができる。
【0107】さらに、故障の特定に用いた演算結果は、
診断対象の故障規模に対応しているため、故障後のパラ
メータの同定や、制御系再設計のための情報としても用
いることができる。
【0108】(2)タイヤ空気圧診断装置に関する発明 [発明の説明]次に、前述した動的システムの診断装置
の原理を用いて構成された、本発明のタイヤ空気圧診断
装置(請求項5)について詳細に説明する。
【0109】(構成および作用)本発明は、サスペンシ
ョンと車輪から構成される動的システムのタイヤ空気圧
の状態を診断するタイヤ空気圧診断装置において、前記
動的システムの内部状態量ベクトルに基づき、動的シス
テム内でタイヤの空気圧の変動により発生する内部外乱
ベクトルと、路面から動的システムに入力される外部外
乱ベクトルと、の和としての総合的外乱ベクトルを推定
する外乱推定手段と、推定された前記総合的外乱と、前
記内部状態量ベクトルとの相互相関を演算する演算手段
と、前記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連
する成分を分離する分離段と、分離された内部外乱に関
連する成分から、前記動的システムのタイヤ空気圧の状
態を求める診断手段と、を含むことを特徴とする。
【0110】ここにおいて、前記算手段は、前記総合
的外乱ベクトルの要素と、前記内部状態量ベクトルの外
部外乱に対し相関の無い要素との相互相関を演算し、前
分離手段は、総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱
に関連する成分を分離するよう形成できる。
【0111】また、前記算手段は、前記相互相関演算
として、前記総合的外乱ベクトルと、前記内部外乱ベク
トルの誤差の自乗の時間的な和が最小となるように、
前記内部状態量ベクトルを基底ベクトルとする総合的外
乱の方向ベクトルの演算を実行し、前記分離手段は、
合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する成分を
分離するように形成できる。
【0112】また、算手段は、推定された前記総合外
乱ベクトルの複数の要素について、前記内部状態量ベク
トルの外部外乱に対し相関の無い要素との相互相関を演
算し、前記分離手段は、総合的外乱ベクトルの複数の要
素から内部外乱に関連する成分の各要素を分離し、前記
診断手段は、分離された内部外乱に関連する成分の各要
素から、前記動的システムの診断箇所を特定し、その診
断を行うよう形成できる。
【0113】本発明のタイヤ空気圧診断装置を、前述し
た図1の動的システム診断装置に基づいてより詳細に説
明する。
【0114】本発明において診断対象となる動的システ
ム10は、サスペンションと車輪からなるシステムであ
る。タイヤの空気圧などが変動すると、同システムの各
状態量は、正常時とは異なった応答を示すことになる。
この応答は見方を変えれば、正常時の応答に空気圧など
の変動に対応した内部外乱が加わったものであると考え
ることができる。そこでこの外乱、すなわち総合的外乱
ベクトルを外乱推定手段32を用いて推定すれば、タイ
ヤの空気圧の変動を検知することができる。
【0115】今、サスペンションと車輪からなる動的シ
ステム10が、次の状態方程式で表現されているものと
する。
【0116】
【数20】 ここにおいて、xはシステム10の内部状態量ベクトル
である。uは制御入力であり、サスペンションはアクテ
ィブサスペンションであるであるときの操作量に対応す
る。また、yはシステム10のセンサなどから直接検出
出力される制御出力ベクトル(内部状態量ベクトルの一
)である。dは路面から受ける路面外乱(外部外乱)
を表す。また、行列A,B,Cは、システム10の物理
パラメータによって定まる定数行列である。
【0117】以下、動的システム10を構成するサスペ
ンションが、アクティブサスペンションのようにシステ
ム10に入力uが存在する場合と、従来のサスペンショ
ンのように、システム10に入力uが存在しない場合と
に分けて本発明の説明を行う。 システム入力が存在する場合 この場合には、タイヤの空気圧等の変動は、システム1
0の物理パラメータの変動に置き換えられる。この変動
は、行列Aの変動を用いて表現できる。すなわち、空気
圧などの変動によって、行列AはΔAだけ変動したとす
ると、変動後のシステムは次のように書き表される。
【0118】
【数21】 ここにおいて、前記Dwは次式で表される。
【0119】
【数22】 この数22から、タイヤの空気圧の変動によって、ΔA
xという新たな外乱が生じることが判る。また、前記D
は、1と0の要素で構成される行列であり、路面外乱の
侵入経路と、システム10のパラメータの変動によって
生じる外乱の発生源とに応じて設定するものである。
【0120】このように、変動時の状態ベクトルの応答
は、正常時の応答と外乱Dw(t)との和で表すことが
できる。外乱推定手段32は、この外乱wを推定すべく
構成することになる。
【0121】外乱推定手段32は、次の二つのステップ
に分けて構成される。
【0122】第1のステップでは、外乱w(t)を状態
に含めたシステムの拡張系を構成する。そのために、w
(t)に次の仮定を設け、w(t)を診断対象10の状
態として追加する。
【0123】
【数23】 これにより、外乱wを状態に含めたシステム10の拡張
系は、次式で表されることになる。
【0124】
【数24】
【0125】
【数25】 そして、第2ステップにおいて、前記数24の状態[x
TwT]Tを推定する推定手段32を、従来の線形制御
理論を用いて構成する。このようにして設計された推定
手段32によって、外乱wを推定する。
【0126】また、前記式23の仮定は、連続的に変化
する外乱w(t)を、図2に示すよう階段状に近似する
ことを意味していることは既に説明した。
【0127】このようにして構成された外乱推定手段3
2は、システム10の内部状態量ベクトルxが全て測定
できない場合でも、測定できない状態を推定すると同時
に、空気圧等の変動に対応する外乱を推定することがで
きる。
【0128】前記数22からも判るように、推定手段3
2が推定する外乱は、路面から受けとる外部外乱dと、
タイヤの空気圧などの変動によってシステム10の内部
で生じる内部外乱ベクトルΔAxとの和となっている。
数22はベクトルとして表現されているが、例えばこの
ベクトルの第1要素を取り上げると、これは次式で表さ
れる。
【0129】
【数26】 以下、前記数26に基づいて、具体的な説明を行う。
【0130】前記数26において、Δa11がタイヤの
空気圧の変動による要素であり、その他の要素はタイヤ
の空気圧以外の変動によって生じるものと仮定する。こ
の場合、タイヤの空気圧の変動によって発生する内部外
乱は、内部状態量x1に依存していることが判る。すな
わち、この場合、タイヤの空気圧の変動によってシステ
ム10に影響を及ぼす状態量はx1である。
【0131】そこで、推定手段32が推定した外乱[D
w]1から、路面外乱なとの外部外乱d1を除去し、タ
イヤの空気圧変動による内部外乱に関連する成分のみを
検出するために、推定した総合的外乱ベクトルの第1要
[Dw]1と内部状態量x1との相互相関を演算す
る。この演算は相関演算手段34にて行われる。このと
き演算される相互相関をC([Dw]1,x1)と置く
と、これは結果的に次式に示す値を持つ。
【0132】
【数27】 ここにおいて、路面外乱なとの外部外乱及び空気圧以外
の変動による他の内部外乱の項は、内部状態量x1と相
関が無いことは前述した。従って、前記数27の相関演
算をすることにより、総合的外乱[Dw] からタイヤ
の空気圧変動に対応した内部外乱のみを抽出することが
できる。
【0133】このようにして計算された相関関数は、推
定外乱wに含まれるいろいろな周波数成分の中から、タ
イヤのバネ定数の変動によってのみ生じる内部外乱の周
波数成分に相当する値を持っている。従ってこの相関関
数の計算値から、バネ定数の変動量が検出できる。
【0134】前記数27に示す相互相関関数は、バネ定
数の変動を表す項Δa11と、次式で表す状態量の自己相
関関数との積で表現できる。ここにおいて、診断手段3
6は、例えば前記相互相関関数を状態量の自己相関関数
で割ることによって、バネ定数の変動量Δa11を定量的
に検出することができる。
【0135】
【数28】 そして、診断手段36は、得られたバネ定数の変動量Δ
a11が、異常と判断すべきタイヤ空気圧に対応するバネ
定数の変動量に達したとき、空気圧が異常と判定を下
す。 システム10に入力が存在しない場合 次に、サスペンションがアクティブサスペンションでは
なく、従来のサスペンションのようにシステム10に入
力が存在しない場合について説明する。
【0136】この場合、サスペンションと車輪からなる
動的システム10は、次の状態方程式で表現される。
【0137】
【数29】 ここにおいて、xはシステム10の状態量ベクトルであ
り、yはシステムのセンサなどから直接測定される出力
ベクトルであり、dは路面から受ける路面外乱を表す。
また、行列A,B,Cはシステム10の物理パラメータ
によって決まる定数行列である。アクティブサスペンシ
ョンと異なる点は、数20に見られるシステム10への
入力uが存在しないことである。
【0138】そして、空気圧などの変動によって、行列
AがΔAだけ変動したとすると、変動後のシステムは次
式で表される。
【0139】
【数30】 ここにおいて、前記Dwは次式で表される。
【0140】
【数31】 前記数30、31から、外乱wを含めたシステム10の
拡張系は次式で表されることになる。
【0141】
【数32】
【0142】
【数33】 そして、外乱オブザーバ32の構成を含めた以後の構成
及び作用は、入力uを除けば、前記アクティブサスペン
ションと全く同様である。
【0143】このように、従来のサスペンションの用に
システム10に入力が存在しない場合でも、タイヤの空
気圧異常を検出することができる。
【0144】従来技術との比較 従来より、タイヤの空気圧の異常検出手段としては、大
きく分けて次の二つのものがあった。
【0145】第一の手段は、タイヤ(回転)側に、圧力
センサと、その圧力センサからの信号を車体側に送信す
るワイヤレス型信号伝達装置とを装着し、車体側で受信
した信号により、タイヤの空気圧の異常を判断するもの
である。
【0146】しかし、この従来技術では、圧力センサを
タイヤに埋め込むための特別な加工が必要であり、また
センサ取付部からの空気漏れ等の対策も必要であった。
さらに、回転するタイヤに装着される圧力センサ、信号
伝達装置は、振動、衝撃、遠心力、温度変化、冷水、雪
などを直接受ける苛酷な環境下にさらされるため、長時
間に渡って高い信頼性を維持することが困難であった。
【0147】また、第二の手段は、センサをタイヤに直
接装着せずに、タイヤの空気圧異常を検出するものであ
る。
【0148】このようなものとしては、四輪の車軸と地
面との距離を測定して、距離の短い部分のタイヤの空気
圧を異常と判断する方法や、四輪の回転数を検出して回
転速度の速いタイヤの空気圧を異常と見なす方法や、車
軸の上下の加速度信号を用いてタイヤの空気圧異常を検
出する方法などが知られている。
【0149】例えば、特開昭63−22707号にかか
る提案では、タイヤの空気圧が変化すると、車体が受け
る加速度周波数(加速度スペクトラム)にも変化が生じ
るという現象を利用して、空気圧の異常を検出してい
る。
【0150】図17には、この従来装置のブロック図が
示されている。この従来装置では、加速度変換器1によ
り、検出対象となる車両の車輪の上下動の加速度を検出
し、この検出加速度を増幅器2を介して各フィルタ3
a、3b向け出力している。各フィルタ3a、3bは、
通過周波数帯域がそれぞれ異なる帯域フィルタとして形
成され、レベル変換器4a、4bは各フィルタ3a、3
bの各出力信号実効値を直流電圧レベルV1、V2の信
号に変換して、割り算器5へ向け出力する。割り算器5
は、入力された電圧V1、V2を割り算し、その値V=
V2/V1を比較器6へ向け出力している。
【0151】ここにおいて、前記加速度変換器1から得
られる車輪の上下加速度レベルは、ある周波数帯域に応
じて大きな値を持ち、その周波数帯域は、走行道路状態
や走行速度に余り関係なく、タイヤの空気圧によって変
動し、特に空気圧が低くなると低周波側にシフトする。
【0152】そこで、前記フィルタ3aは、空気圧正常
時の周波数帯域の信号のみを通過するよう形成され、フ
ィルタ3bは、異常と判定すべき空気圧の周波数帯域の
信号のみを通過させるよう形成されている。これによ
り、タイヤ空気圧が正常な時は、フィルタ3aの出力の
実効値に対応する電圧V1は大きく、フィルタ3bの実
効値に対応する電圧V2の値は小さい。従って、割り算
器5で得られる出力Vは小さな値をとる。
【0153】一方、空気圧が低下し、加速度レベルの周
波数帯域がフィルタ3bで設定した周波数帯域に近付く
と、V2の値は小さくなり、電圧V1の値は大きくな
る。従って、割り算器5で得られる出力Vは大きな値と
なる。
【0154】そこで、割り算器5から出力される電圧V
を、設定器7で設定された基準値と比較し、Vが基準値
より大きい場合に比較器6から信号を出力し、警報器8
を動作させる。
【0155】このように、この従来技術では、一つの車
輪からの信号だけで空気圧の判定を行うことができると
いう利点はあるものの、空気圧の変動が少ない場合は、
加速度レベルの周波数帯域が正常値からほとんど変化せ
ず、空気圧の検出精度が低いという問題があった。
【0156】図18は、タイヤの空気圧が正常であると
きにおける、車輪の上下加速度のスペクトラムを示した
ものであり、加速度レベルが最大となる矢印Aの領域の
周波数は10ヘルツ付近である。
【0157】一方、図19は、空気圧が減少し、タイヤ
のバネ定数が20%減少した場合の車輪の上下加速度ス
ペクトラムを示しており、加速度レベルが最大となる周
波数は矢印Bで示す10ヘルツ付近となる。
【0158】これら図18,19から明らかなように、
空気圧の変動が小さな場合には、加速度レベルの周波数
帯域がほとんど移動しないので、これを検出することは
不可能であり、空気圧に大きな変動が生ずるまでこの異
常を検知できないという問題があった。
【0159】これに対し、本発明のタイヤ空気圧診断装
置では、従来技術のように、タイヤ側に直接圧力センサ
及び信号伝達装置を装着する必要がなく、これら圧力セ
ンサ及び信号伝達装置の信頼性、耐久性などの問題もな
い。
【0160】これに加えて、本発明では、空気圧検出手
段として、空気圧の変動によって生ずる外乱を診断対象
の一つの状態として推定する外乱推定手段32を用い、
しかも推定された外乱と空気圧との関係が、簡単な数式
によって表現できる。したがって、診断対象の状態との
相関をとるという簡単な演算によって、容易に空気圧の
値を検出し、その異常判別を行うことができる。
【0161】特に、本発明では、加速度変換器を用いる
従来技術に比べ、空気圧の変動が少ない場合でも、その
値を確実に検出することができる。
【0162】(発明の効果)以上説明したように、本発
明によれば、空気圧検出手段として、空気圧の変動によ
って生じる外乱を診断対象の一つの状態として推定する
外乱推定手段を用い、しかも推定された外乱と空気圧と
の関係を簡単な相関演算によって求める構成とすること
により、タイヤの空気圧の変動を簡単な構成でかつ精度
よく求めることができるタイヤの空気圧診断装置を得る
ことができるという効果がある。
【0163】また、本発明の装置を、アクティブサスペ
ンションに装着されたタイヤに対する空気圧診断用に適
用する場合は、サスペンションの制御に使用されている
センサ、例えば加速度検出器などをそのまま用い、タイ
ヤの空気圧診断を行うことができるため、空気圧異常検
出のために新たな加速度センサを設ける必要が無いとい
う効果もある。
【0164】また、アクティブではない従来のサスペン
ションに装着されるタイヤの診断を行う場合には、サス
ペンションのバネ上、バネ下部の上下加速度を検出する
加速度センサを設けるだけで、タイヤの空気圧を診断す
ることができる。
【0165】これに加えて本発明によれば、異常と判断
すべきタイヤの空気圧変動量の基準値を設け、これと外
乱推定手段によって得られた変動量の比較から、タイヤ
の空気圧の異常判定を行うこともできる。
【0166】さらに、前記診断手段が、前記内部状態量
ベクトルの外部外乱に対し相関のない要素の自己相関を
演算する自己相関演算部を含み、前記相互相関値と自己
相関値とに基づきタイヤの空気圧の状態を診断するよう
形成すれば、タイヤの空気圧の変動がバネ定数の変動量
としてそのまま精度よく検出できるので、空気圧の異常
を常に運転者に表示する空気圧モニタとしても利用する
ことができ、さらにこの情報をアクティブサスペンショ
ンの制御則に利用したり、減衰器定数を変化させること
のできるサスペンションに利用すれば、空気圧の変動に
対応した適切な乗り心地を実現することもできる。
【0167】(3)車体重量変動検出装置に関する発明 次に、前述した動的システムの診断装置の原理を用いて
構成された、本発明にかかる車体重量変動検出装置(請
求項11)について説明する。
【0168】本発明は、サスペンションと車輪から構成
される動的システムの車体重量の変動を診断する車体重
量変動検出装置において、前記動的システムの内部状態
量ベクトルに基づき、動的システム内で車体重量の変動
により発生する内部外乱ベクトルと、路面から動的シス
テムに入力される外部外乱ベクトルとの和としての総合
的外乱ベクトルを推定する外乱推定手段と、推定された
前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量ベクトルと
の相互相関を演算する演算手段と、前記総合的外乱ベク
トルから内部外乱に関連する成分を分離する分離手段
と、分離された内部外乱に関連する成分から、前記動的
システムの車体重量の変動を検出する検出手段と、を含
むことを特徴とする。
【0169】ここにおいて、前記算手段は、前記総合
的外乱ベクトルの要素と、前記内部状態量ベクトルの外
部外乱に対し相関の無い要素との相互相関を演算し、前
分離手段は、総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱
に関連する成分を分離するよう形成できる。
【0170】また、前記算手段は、前記相互相関演算
として、前記総合的外乱ベクトルと、前記内部外乱ベク
トルの誤差の自乗の時間的な和が最小となるように、
前記内部状態量ベクトルを基底ベクトルとする総合的外
乱の方向ベクトルの演算を実行し、前記分離手段は、
合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する成分を
分離するよう形成できる。
【0171】このようにして、実施例の装置は、前述し
た動的システム診断装置の手法を用い、動的システムの
車体重量の変動を診断することができる。
【0172】 (4)動的システムの診断装置に関する他の発明 次に、内部状態量と外部外乱との間に相関がある場合に
効果的な、動的システムの診断装置の発明(請求項9)
を説明する。
【0173】本発明は、動的システムの故障を検出する
動的システムの診断装置であって、前記動的システムの
内部状態量ベクトルに基づき、動的システムの外部外乱
ベクトルおよび内部外乱ベクトルの和としての総合的外
乱ベクトルを推定する外乱推定手段と、所定基準状態に
おける内部状態量ベクトルと、外部外乱ベクトルとの相
関を補正値として記憶する補正値記憶手段と、推定され
た前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量ベクトル
との相互相関を演算する相関演算手段と、前記内部状態
量ベクトルと前記補正値とに基づき、前記相関演算手段
の演算する相互相関を補正することによって、前記総合
的外乱ベクトルから外部外乱の影響を受けることなく内
部外乱に関連する成分を分離する相関補償手段と、分離
された内部外乱に関連する成分から、前記動的システム
の対応箇所を特定しその診断を行う診断手段と、を含
み、動的システムの診断を行うことを特徴とする。
【0174】ここにおいて、前記相関補償手段は、前記
内部状態量ベクトルと前記補正値とに基づき、前記相関
演算手段の演算する相互相関を補正することによって、
前記総合的外乱ベクトルの要素から外部外乱の影響を受
けることなく内部外乱に関連する成分を分離するよう形
成できる。
【0175】ここにおいて、前記基準状態としては、動
的システムが所定の条件の下で正常に動作している場合
を想定すればよい。例えば、後述するようにタイヤ空気
圧を診断する場合には、正常時においてタイヤの空気圧
がある値を持つ状態を基準状態とすればよい。
【0176】以上の構成とすることにより、相関演算手
段が、総合的外乱ベクトルの要素と、内部状態ベクトル
の要素との相互相関を演算すると、相関補正手段が、あ
らかじめ補正記憶手段に設定されている補正値を読出
し、前記相互相関を補正することによって、外乱に影響
されることなく、前記総合的外乱ベクトルの要素から内
部外乱に関連する成分を分離することができる。
【0177】このようにして、外部外乱に影響されるこ
となく、動的システムの診断を正確に行うことができ
る。
【0178】また、このような手法を用い、動的システ
ムのタイヤ空気圧の診断や、車体重量変動の検出を行う
ことができる。
【0179】また、本件出願にかかる他の発明(請求項
10)は、サスペンションと車輪から構成される動的シ
ステムのタイヤ空気圧の状態を診断するタイヤ空気圧診
断装置において、前記動的システムの内部状態量ベクト
ルに基づき、動的システム内でタイヤの空気圧の変動に
より発生する内部外乱ベクトルと、路面から動的システ
ムに入力される外部外乱ベクトルとの和としての総合的
外乱ベクトルを推定する外乱推定手段と、所定基準状態
における内部状態量ベクトルと、外部外乱ベクトルとの
相関を補正値として記憶する補正値記憶手段と、推定さ
れた前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量ベクト
ルとの相互相関を演算する相関演算手段と、前記内部状
態量ベクトルと前記補正値とに基づき、前記相関演算手
段の演算する相互相関を補正することによって、前記総
合的外乱ベクトルから外部外乱の影響を受けることなく
内部外乱に関連する成分を分離する相関補償手段と、分
離された内部外乱に関連する成分から、前記動的システ
ムのタイヤ空気圧の状態を求める診断手段と、を含むこ
とを特徴とする。
【0180】以上の構成とすることにより、外部外乱に
影響されることなく、動的システムのタイヤ空気圧の状
態を診断することができる。
【0181】また、本件出願にかかる他の発明(請求項
13)は、サスペンションと車輪から構成される動的シ
ステムの車体重量の変動を診断する車体重量変動検出装
置において、前記動的システムの内部状態量ベクトルに
基づき、動的システム内で車体重量の変動により発生す
る内部外乱ベクトルと、路面から動的システムに入力さ
れる外部外乱ベクトルとの和としての総合的外乱ベクト
ルを推定する外乱推定手段と、所定基準状態における内
部状態量ベクトルと、外部外乱ベクトルとの相関を補正
値として記憶する補正値記憶手段と、推定された前記総
合的外乱ベクトルと、前記内部状態量ベクトルとの相互
相関を演算する相関演算手段と、前記内部状態量ベクト
ルと前記補正値とに基づき、前記相関演算部の演算する
相互相関を補正することによって、前記総合的外乱ベク
トルから外部外乱の影響を受けることなく内部外乱に関
連する成分を分離する相関補償手段と、分離された内部
外乱に関連する成分から、前記動的システムの車体重量
の変動を検出する検出手段と、を含むことを特徴とす
る。
【0182】ここにおいて、前記基準状態としては、車
重がある一定値をもつ場合を想定すればよい。
【0183】以上の構成とすることにより、外部外乱に
影響されることなく、車体重量の変動を検出することが
できる。 (5)動的システムの内部外乱分離装置に関する発明本発明は、動的システムの内部外乱を分離する装置であ
って、 前記動的システムの内部状態量ベクトルに基づ
き、動的システムの外部外乱ベクトルおよび内部外乱ベ
クトルの和としての総合的外乱ベクトルを推定する外乱
定手段と、 推定された前記総合的外乱ベクトルと、前
記内部状態量ベクトルとの相互相関を演算する演算手段
と、 前記総合的外乱ベクトルから内部外乱に関連する成
分を分離する分離手段と、 を含むこと特徴とする。 ここ
において、前記演算手段は、 前記総合的外乱ベクトルの
要素と、前記内部状態量ベクトルの外部外乱に対し相関
の無い要素との相互相関を演算し、 前記分離手段は、
記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する成
分を分離するように形成しても良い。 また、前記演算手
段は、 前記相互相関演算として、前記総合的外乱ベクト
ルと、前記内部外乱ベクトルとの誤差の自乗の時間的な
和が最小となるように、前記内部状態量ベクトルを基底
ベクトルとする総合的外乱の方向ベクトルの演算を実行
し、 前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素か
ら内部外乱に関連する成分を分離するように形成しても
良い。 また、前記演算手段は、 推定された前記総合的外
乱ベクトルの複数の要素について、前記内部状態量ベク
トルの外部外乱に対し相関の無い要素との相互相関を演
算し、 前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの複数
の要素から内部外乱に関連する成分の各要素を分離する
ように形成しても良い。 また、本発明は、動的動的シス
テムの内部外乱を分離する装置であって、 前記動的動的
システムの内部外乱分離装置の内部状態量ベクトルに基
づき、動的動的システムの内部外乱分離装置の外部外乱
ベクトルおよび内部外乱ベクトルの和としての総合的外
乱ベクトルを推定する外乱推定手段と、 所定基準状態に
おける内部状態量ベクトルと、外部外乱ベクトルとの相
関を補正値として記憶する補正値記憶手段と、 推定され
た前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量ベクトル
との相互相関を演算する相関演算手段と、 前記内部状態
量ベクトルと前記補正値とに基づき、前記相関演算手段
の演算する相互相関を補正することによって、前記総合
的外乱ベクトルから外部外乱の影響を受けることなく内
部外乱に関連する成分を分離する相関補償手段と、 を含
むことを特徴とする。
【0184】
【実施例】
(第1実施例)次に、本発明(請求項1)を自動車のア
クティブサスペンション制御系の故障検出に適用した実
施例を、第1実施例として説明する。
【0185】図3には、本実施例の診断対象となる動的
システム10の具体例が示されている。実施例の動的シ
ステム10は、自動車の単輪サスペンションの振動モデ
ルを現している。同図において、ホイール41は、パラ
メータm1で表されるバネ下質量部と、バネ定数k1で
表されるホイール(タイヤ)のバネ部で表現される。ま
た、42は、バネ上定数m2を持つ車体部を表し、46
はバネ定数k2を持つガスバネを表し、48は減衰器定
数Dmを有する減衰器を表し、56は変数x0で表され
る路面変位を表す。また、52は、変数x1で表される
バネ下変位、50は変数x2で表されるバネ上範囲、5
4は変数yで表される相対変位(x1−x2)、44は
サスペンションを制御する制御器から出力される操作量
uから制御に必要なアクティブ制御力fを発生する制御
力発生器を表す。
【0186】同図より、数式1の状態方程式は、以下の
ように表される。
【0187】
【数15】 ここにおいて、Tは制御力発生器44の応答時間、すな
わち操作量uとアクティブ制御力fとの間の時間的遅れ
を表している。
【0188】a,bは次式で表される。
【0189】a=k1/m1+k2/m1+k2/m2 b=1/m1+1/m2 本実施例では、路面変位56が外部からの外乱x0とな
る。
【0190】本実施例では、故障として、故障タイヤの
空気圧の異常、ガスバネ46の圧力異常及び減衰器48
の故障を想定する。そしてこれらの故障をそれぞれパラ
メータk1,k2,Dmの変動として扱う。そして上記
振動モデル10に基づいて外乱オブザーバ32を構成す
る。
【0191】すなわち、前記数15において、パラメー
タk1,k2,Dmは、右辺の第2要素及び第4要素に
ある。従って、想定した故障によって発生する内部外乱
の侵入経路も、この2ヵ所に設定する。設定は、前記数
3で表される行列Dに基づいて行われる。この場合は、
次式のように設定すればよい。
【0192】
【数16】 このDを用いて、前記数8に示す拡張系を作成し、図4
の外乱オブザーバ32を構成する。
【0193】本実施例では、外乱オブザーバ32が以下
の3つの態様に分けて構成される。
【0194】第1の態様は、サスペンションモデル10
におけるバネ上変位x2,バネ上速度,相対変位y,相
対速度及びアクティブ制御力fが全て測定できる場合で
ある。このような場合に用いられる外乱オブザーバ32
は、内部状態量の推定を行う必要はない。なお、前記バ
ネ上速度,相対速度は次式で表される。
【0195】
【数17】 第2の態様は、バネ上変位x2,相対変位yのみが測定
でき、外乱オブザーバ32は、その他の測定されない内
部状態量(ここではバネ上速度,相対速度)を推定する
場合である。
【0196】第3の態様は、バネ上変位x2,相対変位
yのみが測定でき、外乱オブザーバ32は、これらを含
めた内部状態量の全てを推定する場合である。
【0197】以下、前記各態様について用いられる外乱
オブザーバ32と、これを用いて構成される診断装置3
0を詳細に説明する。
【0198】第1の態様 図4には、前記第1の態様として用いられる診断装置3
0のブロック図が示されている。同図において、10は
図3に示す動的システム(単輪サスペンション)を表
し、12は前記サスペンションを制御している制御器を
表し、14はサスペンションを制御するために制御器1
2から出力された操作量を表し、16は図示しないセン
サを用いて測定されたサスペンションの全ての内部状態
量を表している。ここでは、内部状態量の全てがセンサ
を用いて測定されるため、外乱オブザーバ32は後述す
る第2の態様、第3の態様のように、内部状態量の一部
またはその全てを推定する必要は無い。
【0199】実施例の外乱オブザーバ32は、診断対象
10内におけるタイヤの空気圧の異常、ガスバネの圧力
異常及び減衰器の故障を、診断対象となる動的システム
10の内部外乱として捉らえる。そして、制御器12の
操作量14と、測定されたサスペンション10の全ての
状態量16とから、動的システム10の外部外乱ベクト
ル及び内部外乱ベクトルの和としての総合的外乱ベクト
ルwを推定演算し、相関演算部34へ向け出力する。
【0200】相関演算部34は、外乱オブザーバ32が
推定演算した総合的外乱ベクトルの推定値と、動的シス
テム10の内部状態量であるバネ上変位,相対変位及び
相対速度との相互相関を演算する。このとき、前記バネ
上変位,相対変位及び相対速度等の内部状態量は、外部
外乱に対し相関のない要素である。このため、これら内
部状態量と前記総合的外乱ベクトルの推定値との相互相
関を演算することにより、外部外乱として侵入する路面
変位の影響を除外し故障によって発生する内部外乱に関
連する成分を分離し、その演算結果を診断部36へ向
け、出力することができる。
【0201】診断部36は、このようにして相互相関演
算部34から入力される演算結果に基づき、動的システ
ム10内における故障の発生を検出すると共に、前記相
関演算部34によって演算された内部外乱の発生箇所に
基づき、サスペンションの具体的な故障箇所を特定する
よう形成されている。
【0202】実施例の故障診断装置30は以上の構成か
らなり、次にその作用を説明する。
【0203】図3に示す振動モデル10内において、想
定された故障が発生した場合を想定する。この場合、外
乱オブザーバ32は、サスペンション10への制御入力
fと、診断対象の状態とから、故障に応じて先に設定し
た総合的外乱ベクトルの第2および第4要素w2、w4
を推定する。このとき、これら外乱の推定遅れが無視で
きるほど小さいと仮定すると、これらの推定値は次式で
表される。
【0204】
【数18】 ここにおいて、Δk1はタイヤの空気圧異常によって生
じたパラメータ変動、Δk2はガスバネの圧力異状によ
って生じたパラメータ変動、ΔDmは減衰器の故障によ
って生じたパラメータ変動を表している。
【0205】推定された総合的外乱は、前述したパラメ
ータ変動分とサスペンションの状態変数(相対変位y、
その相対速度及びバネ上変位x2)の積和からなる分
と、外部外乱として加わっている路面変位x0との和と
なっている。
【0206】そこで、相互相関部34及び診断部36
は、推定された総合的外乱から,外部外乱と内部外乱と
の分離及び故障の判定を次のようにして行う。
【0207】まず、w2の推定値と、測定値yの相関関
数C21、w4の推定値と測定値yの相関関数C41、w4
の推定値と測定値(相対速度)との相関関数C42を演算
する。w2の推定値には、路面変位が外部外乱として含
まれているが、測定値yとの相関を取ることによって、
yと相関のない路面変位の影響は除去され、故障分のみ
が、例えば相関関数C21の値として抽出されることにな
る。
【0208】次に、これら相関関数の値から故障箇所を
特定する。例えば、相関関数C41には、ガスバネの変動
分しか表れない。このため、この値に異常があればただ
ちにガスバネの故障と特定できる。
【0209】同様に、相関関数C42に異常があれば減衰
器の故障であると判定される。
【0210】残るタイヤの空気圧異常は、相関関数C21
によって判定される。C21は、ガスバネの故障もしくは
タイヤ空気圧異常によって値を持つことになるが、前記
C41による判定により、ガスバネの故障が検出されるの
で、ガスバネに故障が無くC21の値に異常があれば、タ
イヤの空気威圧異常と判定できる。なお、ガスバネとタ
イヤの空気圧異常が同時に発生すれば両者の区別はでき
ないが、この様なことは実際にはまれにしか起こり得な
いので問題は無い。
【0211】このように、本実施例では総合的外乱の推
定値と、故障箇所との関係が簡単な数式によって表現で
き、診断対象の状態との相関を求めるという簡単な演算
によって、容易に外部からの外乱と故障によって発生す
る内部外乱とを分離し、故障箇所の特定を行うことがで
きる。
【0212】第2の態様 図5には、前述した第2の態様に応じて構成された外乱
オブザーバ32と、これを用いて構成された診断装置3
0のブロック図が示されている。なお、図4に示す実施
例と対応する場合には同一符号を付し、その説明は省略
する。
【0213】本実施例では、サスペンションの振動モデ
ルを構成する動的システム10からは、その内部状態量
としてバネ上変位x2、相対変位yのみが検出され、他
の内部状態量、例えば相対速度が直接測定されない場合
を表している。
【0214】この様な場合、外乱オブザーバ32は、操
作量14と測定値16とから、その総合的外乱ベクトル
と共にサスペンション10の内部状態量のうち測定され
なかった状態であるバネ上速度,相対速度及びアクティ
ブ制御力を推定演算し、相関演算部36へ向け出力す
る。
【0215】このオブザーバは以下のように設計され
る。
【0216】まず、数8と数15,数16に基づいて拡
張系を作成する。
【0217】
【数62】 次に、数62において、測定できる状態量y,x2とで
きない状態量とを分ける。
【0218】
【数63】 簡単のために、数63を次式のようにおく。
【0219】
【数64】 そして、総合的外乱を含んだ測定できない状態量xb
を、次式に基づいて推定する。
【0220】
【数65】 ここで、数64と数65より、真値xb とその推定値の
誤差が次式のように書ける。
【0221】
【数66】 したがって、数66の(A22−GA12)のすべてのベク
トルの固有値が、全て負となるように、実数行列Gを決
めれば、数66で表される誤差は時間とともに零に収束
する。すなわち、推定値が真値に収束することになる。
【0222】前記数65を図示すると、図20のように
なる。同図に示すように、制御入力uと、測定できる状
態量xa =[y x2]Tとにより、測定できない状態
量xb を推定することができる。
【0223】このように、実施例の外乱オブザーバ65
は、サスペンションへの制御入力と、サスペンションの
測定内部状態量x2,yとに基づき、総合的外乱wと、
測定されない内部状態量、例えば相対速度とを推定する
最小次元オブザーバとして構成される。このように外乱
オブザーバ32を構成しても、推定された総合的外乱は
前記数18で表されるので、前述した第1の態様の場合
と同様に相関演算部34が相関演算を行うことにより、
診断部36は故障の発生及び故障の箇所を特定すること
ができる。
【0224】すなわち、相関演算に必要な相対速度の推
定値は次式で表される。
【0225】
【数19】 従って、相対速度を前記推定値に置き換えて、前記第1
の態様と同様な相関演算を実施すればよい。
【0226】外乱オブザーバ32は、故障が発生しても
内部状態量をほとんど誤差無く推定するので、前述した
ように推定値を用い相関演算を行っても、前記第1の態
様とほぼ同様に相関関数を得ることができる。相関関数
が得られた以後は、前記第1の態様と同様に故障を特定
できるので、ここではその説明は省略する。
【0227】このように、本実施例において、相関関数
に用いる状態量は、単にセンサ等によって直接測定され
たものだけではなく、外乱オブザーバ32が総合的外乱
と同時に推定した内部状態量をも用いることができる。
従って、診断対象10の内部状態量全てが、直接測定さ
れなくても、詳細な故障検出が可能となる。
【0228】第3の態様 図6には、前述した第3の態様に応じて用いられる外乱
オブザーバ32と、これを用いて構成された診断装置3
0のブロック図が示されている。
【0229】本実施例と、前記第2の態様の実施例との
相違は、外乱オブザーバ32を完全次元オブザーバとし
て構成したことにある。
【0230】すなわち、実施例の外乱オブザーバ32
は、サスペンション10の制御入力fと診断対象10に
おいて直接測定された内部状態量x2,yとにより、総
合的外乱と診断対象10の内部状態量の全てを推定する
よう構成されている。
【0231】このオブザーバは、数8と、数15,数1
6より、次式に基づいて設計される。
【0232】
【数67】 このときも、数66と同様な推定値と、真値との誤差に
関する微分方程式を作り、この方程式のすべてのベクト
ルの固有値が、すべて負となるように実数行列Gを決め
る。固有値の絶対値は大きいほど良いが、−300〜−
700rad/s程度に設定するのが望ましい。
【0233】このようにして、制御入力uと、推定値
y,x2より次式で示す推定値を求めることができる。
【0234】
【数68】 推定された総合的外乱は、前記数18で表されるので、
前記第1の態様と同様に相関演算を行う。相関演算に
は、相対変位、相対速度の推定値を用い、相関関数が得
られた後は、前記第1の態様と同様に故障箇所を特定す
る。
【0235】このように、本実施例では簡単な演算によ
り、故障箇所の特定ができる。これに加えて、実施例に
て用いられる外乱オブザーバ32は完全次元オブザーバ
として構成されているので、前記第2の態様で用いられ
た最小次元オブザーバよりも構成手順が簡単であるとい
う利点がある。
【0236】(第2〜第6実施例)次に、本発明(請求
項5)にかかる実施例を第2〜第6実施例として説明す
る。ここでは、本発明を、アクティブサスペンションと
車輪からなる動的システムに適用した場合を第2、第3
実施例として、従来から用いられているバネ及び減衰器
からなるサスペンションと車輪とからなる動的システム
に適用した場合を第4〜第6実施例として詳細に説明す
る。
【0237】アクティブサスペンションを含む動的シス
テムに適用する場合(第2,第3実施例) (第2実施例)図8には、本実施例の診断対象となる動
的システム10の具体例が示されている。なお、図3に
示す動的システムと対応する部材には同一符号を付し、
その説明は省略する。
【0238】本実施例の動的システム10は、アクティ
ブサスペンションと車輪からなるシステムである。この
動的システム10において、車輪41はパラメータm1
で表されるバネ下質量部と、バネ定数k1で表されるタ
イヤのバネ部で表現される。また、42はバネ上質量m
2を持つ車体部を表し、46はバネ定数k2を持つガス
バネを表し、56は変数x0で表される路面変位を表
し、52は変数x1で表されるバネ下変位を表し、50
は変数x2で表されるバネ上変位を表し、54は変数y
で表される相体変位(x1−x2)を表している。さら
に、44は、サスペンションを制御する制御器12から
出力される操作量uから、制御に必要なアクティブ制御
力fを発生する制御力発生器である。
【0239】通常このようなアクティブサスペンション
システムでは、サスペンションのアクティブ制御に必要
なものとして圧力センサ60aが設けられている。この
圧力センサ60aは、アクティブ制御力fを測定できる
よう制御力発生器16に設置されている。さらに、タイ
ヤの空気圧異常検出のために加速度センサ60b,60
cが設けられており、これら各加速度センサ60b,6
0cは、それぞれバネ上部及びバネ下部に、上下振動の
加速度を検出できるよう設置されている。
【0240】このような動的システム10において、前
述した数24で示す状態方程式は、具体的には次式で表
されることになる。
【0241】
【数34】 図9には、本実施例のシステムのブロック図が示されて
いる。ここにおいて診断対象となるサスペンションシス
テム10は、制御器12から出力される操作量uを入力
し、数34に含まれるベクトル
【0242】
【外1】 を内部状態量とするよう構成されたシステムであること
は前述した。
【0243】前記内部状態量ベクトルxに含まれる各要
素のうち、バネ上加速度は、図8に示される加速度セン
サ60bから直接検出され、バネ上速度はバネ上加速度
を積分することによって求められる。相対加速度は、加
速度センサ60bにより検出されるバネ下加速度と、バ
ネ上加速度との差から求められる。相対速度は、相対加
速度を積分することによって求められる。この様な演算
を行う各演算部は、実施例のサスペンションシステム1
0内に常に組み込まれているものとする。従って、サス
ペンションシステム10の出力は、前記数34に含まれ
る内部状態量ベクトル
【0244】
【外2】 となる。
【0245】本実施例の制御器12は、このようにして
出力される内部状態量ベクトルxを入力とし、アクティ
ブサスペンションシステム10の入力信号となる操作量
uを演算出力している。
【0246】また、前記アクティブサスペンションシス
テム10を診断対象とする実施例の診断装置30は、外
乱オブザーバ32と、相関演算部34と、診断部36と
を含む。
【0247】前記外乱オブザーバ32は、制御器12の
出力uと、アクティブサスペンションシステム10の出
力xとを入力信号とし、タイヤのバネ定数k1の変動
を、サスペンションシステム10内で発生する内部外乱
として推定演算するよう形成されている。
【0248】状態量検出部60は、アクティブサスペン
ションシステム10の出力xから、タイヤの空気圧の変
動によってシステム10に影響を及ぼす状態量(この場
合は、相対速度)を抽出する。
【0249】前記相関演算部34は、相互相関演算部7
0と、正規化部72と、自己相関演算部74とを含む。
【0250】そして、相互相関演算部70は、外乱オブ
ザーバ32が推定した総合的外乱と相対速度との相互相
関を演算出力する。
【0251】また、前記自己相関演算部74は、前記相
対速度の自己相関関数を演算する。
【0252】そして、正規化部72は、相互相関演算部
70が演算した相互相関関数を、前記自己相関演算部7
4が演算した自己相関関数で割って正規化し、タイヤの
バネ定数の変動量のみを抽出出力し、これを診断部36
へ向け出力する。
【0253】診断部36は、基準値が記憶されたメモリ
76と、異常判定部78とを含む。そして、前記正規化
部72で求められたタイヤのバネ定数の変動量と、メモ
リ76に記憶された異常と判定すべき空気圧に対応する
バネ定数の変動量の基準値とを比較し、タイヤの空気圧
の異常を判定出力するよう形成されている。
【0254】本第2実施例は以上の構成からなり、次に
その作用を説明する。
【0255】図8に示されるアクティブサスペンション
と車輪とからなるシステム10において、タイヤの空気
圧が変動し、タイヤのバネ定数が変動すると、同システ
ム10の各状態量xは、空気圧正常時とは異なった応答
を示すことになる。この応答は、正常時の応答に、空気
圧の変動に対応した内部外乱が加わったものと見なすこ
とができる。
【0256】この外乱オブザーバ32は、サスペンショ
ンシステム10の出力信号xと、サスペンションシステ
ム10に加える操作量uとを入力とし、前記内部外乱
と、外部外乱(路面変位などのシステムの外部から侵入
する外部外乱)とを含む総合的外乱を推定演算して出力
する。
【0257】したがって、タイヤの空気圧が正常で、そ
の時のタイヤのバネ定数がk1であるとすると、前記外
乱オブザーバ32からは、次式で表される外部外乱が演
算出力される。
【0258】
【数35】 このように推定演算出力される外部外乱は、路面外乱の
微分値に対応しており、システム10の状態とは全く相
関のないランダムな外乱となっている。
【0259】このような状態において、タイヤの空気圧
が変動し、そのバネ定数がΔk1だけ変動して(k1+
Δk1)になった場合を想定すると、外乱オブザーバ3
2は、次式で表される総合的外乱を出力することにな
る。
【0260】
【数36】 したがって、外乱オブザーバ32が推定演算した総合的
外乱の推定値から、路面外乱等の外部外乱を除去し、タ
イヤの空気圧変動による内部外乱のみを検出することが
必要となる。このために、相関演算部70は、推定した
総合的外乱と、外部外乱に対し相関のない内部状態量の
要素との相互相関を演算する。前記数36には、該当す
る状態量として相対速度とバネ上速度とが含まれるが、
本実施例では、サスペンションシステム10から得られ
た相対速度との相関を演算する。この相関関数を
【0261】
【外3】 とすると、これは次式のように演算される。
【0262】
【数37】 このような相互相関を演算することにより、タイヤ空気
圧変動量Δkの抽出と、路面外乱の項の分離とを行うこ
とができる。すなわち、出力される推定された総合的外
乱、相対速度を、N点続けてサンプリングし、次式で示
す平均値を求める。
【0263】
【数38】 そして、これらの平均値を用いて前記数37の相関演算
を行う。このようにして相関関数
【0264】
【外4】 を求めると、バネ上速度の項及び路面変位速度が消え、
この値は、次式に示すようになる。
【0265】
【数39】 このようにして計算された相関関数は、タイヤのバネ定
数の変動を表す項(Δk1/m1)と、相関演算に用い
たサスペンションの相対速度の自己相関関数(数40で
示す)との積で表現できる。従って、得られた相関関数
を、状態量(相対速度)の自己相関関数で割れば、バネ
定数の変動量を定量的に検出できる。
【0266】
【数40】 すなわち、前記した数式39から判るように、総合的推
定外乱の様々な周波数成分の中から、前述した相関関数
【0267】
【外5】 は、タイヤのバネ定数の変動によってのみ生じる内部外
乱の周波数成分に相当する値を持っている。したがっ
て、この相関関数
【0268】
【外6】 から、バネ定数の変動量を検出することができる。
【0269】前述した相対速度の自己相関関数は、自己
相関演算部74により演算され、正規化部72に入力さ
れるようになっている。そして、正規化部72は、相互
相関演算部70から出力される相関関数
【0270】
【外7】 を、自己相関演算部74から出力される自己相関関数
【0271】
【外8】 で割ることにより、次式で示すようタイヤのバネ定数の
変動量を検出出力している。
【0272】
【数41】 ここにおいて、パラメータm1は、タイヤの質量であり
既に知られた値であるため、正規化部72の出力Jか
ら、バネ定数の変動量Δk1を正確に知ることができ
る。
【0273】そして、異常判定部78は、このようにし
て得られたバネ定数の変動量Δk1と、異常と判断すべ
き変動量基準値とを比較し、空気圧の異常を判定してい
る。
【0274】図11には、このようにして行われるタイ
ヤ空気圧の異常検出アルゴリズムのフローチャートが示
されている。
【0275】本実施例では、フロー100に沿って、外
乱の推定及びデータのサンプリングを5ms毎に、N=4
00回繰り返して行う。
【0276】次に、フロー110に沿って、前回の40
0回のサンプリング(過去2秒間のサンプリングとす
る)によって得られたデータを用い、相互相関及び自己
相関の演算を行い、数41で示される正規化された値J
を求め、タイヤの空気圧の正常、異常判別を行ってい
る。
【0277】なお、本実施例では、外乱オブザーバ32
として、応答性が5msのものを用いているため、動的
システム10の総合的外乱Wの微分値がほぼ0となる関
係が成立する。
【0278】図12には、図11に示す異常検出アルゴ
リズムに従って、タイヤのバネ定数を推定した値と、実
際に測定されたバネ定数の値との相関関係が示されてい
る。
【0279】このとき測定実験は、次のような方法によ
って実行した。
【0280】まず、空気圧が正常であるときのバネ定数
k1に対し、変動量Δk1/k1を設定し、その設定値
となるように予め空気圧を減少させておく。
【0281】次に車を走らせ、推定開始後2秒経過した
後のバネ定数変動量の推定値を記録する。その後の推定
値は、その時点の推定値と同一となる。
【0282】次に、Δk1/k1の設定値を、0.1刻
みに変化させ、実験を繰り返す。このようにして得られ
たデータが、図12に示すようなものとなる。この実験
結果から、本実施例の診断装置35を用いることによ
り、±3%以内の高い精度でバネ定数の変動量を推定可
能であることが理解される。
【0283】なお、本実施例では、相互相関演算に相対
速度を用いたが、バネ上速度を用いて相関演算を行って
もよい。この場合、前記相互相関演算部70は、推定さ
れた総合的外乱とバネ上速度の相互相関を次式に基づき
演算し、自己相関演算部74は、バネ上速度の自己相関
【0284】
【外9】 を演算し、正規化部72は、前記相互相関を自己相関で
割ることにより、同様にタイヤの空気圧の異常を検出す
るように構成される。
【0285】
【数42】 このように本第2実施例によれば、従来技術にあるよう
に、直接タイヤに圧力センサ及び無線装置等を装着する
必要がないので、これらに関する信頼性、耐久性等の問
題が生じることはない。
【0286】また、本第2実施例を実施するのに必要な
センサも、アクティブサスペンションの制御に従来から
使われているセンサ60a,60b,60cをそのまま
流用でき、空気圧異常検出のために新たなセンサを設け
る必要が無い。
【0287】なお、本第2実施例は、異常と判断すべき
タイヤの空気圧変動量基準値を設定しておき、外乱オブ
ザーバ12によって得られた変動量と、前記基準値とを
比較し、タイヤの空気圧異常の判定を行っていた。本発
明の装置は、これに限らず、各種の用途に用いることが
できる。例えば、、タイヤのバネ定数の変動量がそのま
ま精度よく検出できるので、検出された空気圧の状態を
常に運転者に標示する空気圧モニタとしても利用するこ
とができる。さらに、検出された空気圧の情報を、アク
ティブサスペンションの制御則に利用すれば、空気圧の
変動に対応した適切な乗り心地を実現することが出来
る。さらに減衰器定数を変化することが出切るサスペン
ションの制御に、この空気圧の情報を利用すれば、空気
圧の変動に適切に対応し、より快適な乗り心地を実現す
ることもできる。
【0288】また、前記第2実施例では、サスペンショ
ンと車輪からなるシステム10を、前述した数34に示
す状態方程式でモデル化し、サスペンションのバネ上、
バネ下部の加速度のみがセンサで測定できるものとし、
他の状態量はこれらの信号の積分によって求めている。
しかし、サスペンションの状態を測定するセンサが、加
速度センサではなく、別のセンサであっても、そのセン
サが測定する状態量に対応させてモデルを変更すれば、
同様な方法でタイヤの空気圧異常を判定することができ
る。
【0289】例えば、センサによって測定できる状態量
が、加速度信号ではなく、バネ上変位x2及び相対変位
yであるとき、前記数式34に対応するモデルは次式の
ように設定される。
【0290】
【数43】 この数43において、サスペンションの状態
【0291】
【外10】 の中で、バネ上速度及び相対速度は、それぞれバネ上変
位x2及び相対変位yの差分から求めるものとする。
【0292】(第3実施例)図10にはこの様なサスペ
ンションモデル10を診断対象とした時の診断装置30
の実施例が、第3実施例として示されている。
【0293】タイヤの空気圧が変動し、タイヤのバネ定
数が変動すると、外乱オブザーバ32は、次式で表現さ
れる総合的外乱を推定演算するよう構成されている。
【0294】
【数44】 したがって、推定された総合的外乱と変位yの相互相関
を、相対変位の自己相関で割り算することにより、前記
実施例と同様に、タイヤの空気圧異常の判定を行うこと
ができる。このとき、推定外乱とバネ上変位x2との相
互相関をバネ上変位x2の自己相関関数で割っても、同
様にタイヤの空気圧異常の判定を行うことができる。
【0295】このように、本願第2実施例及び第3実施
例では、推定された総合的外乱との相互相関演算に用い
る状態量は、空気圧の変動によってシステムに影響を及
ぼす状態量を用いればよい。
【0296】アクティブではない従来型サスペンション
に適用する場合(第4〜第6実施例) 図13には、アクティブではない従来型のサスペンショ
ンと、車輪とを含むサスペンションシステム10が示さ
れている。このサスペンションシステム10において、
車輪41は、パラメータm1で表されるバネ下質量部
と、バネ定数k1で表されるタイヤのバネ部で表現され
る。また、42はバネ上質量m2を持つ車体部を表し、
46はバネ定数k2を持つバネを表し、48は減衰器定
数Dmを有する減衰器を表し、56は変数x0で表す路
面変位を表し、52は変数x1で表されるバネ下変位を
表し、50は変数x2で表されるバネ上変位を表し、5
4は変数yで表される相対変位(x1−x2)を表す。
なお、この動的システム10においても、前記実施例と
同様、バネ上部及びバネ下部に、車輪の上下振動を検出
する加速度センサ60b、加速度センサ60cが設けら
れている。
【0297】このようなサスペンションシステム10
を、状態方程式で表現すると、次式のように表される。
【0298】
【数45】 (第4実施例)図14には、前述した図13に示すサス
ペンションシステム10を診断対象とした実施例が、第
4実施例として示されている。
【0299】なお、現状のサスペンションシステム10
では、路面の状況や運転者の判断に応じてサスペンショ
ンの減衰力を変化させるものも実現されているが、これ
は、減衰器定数Dmが変化するものと仮定することによ
ってモデル化できる。このとき、図13に示されたDm
は、変化するDmの代表値を示すものとする。
【0300】前述した数45に含まれる状態量xの各要
素は、前記実施例と同様、サスペンションシステム10
内に設けられた演算部によって演算出力される。すなわ
ち、バネ上加速度は、センサ62bの出力から直接出力
し、バネ上速度は、バネ上加速度の値を積分することに
より求める。相対加速度は、バネ下加速度とバネ上加速
度の差から求め、相対速度は、相対加速度等を積分する
ことにより求める。従って、サスペンションシステム1
0の出力は、前述した数45の内部状態量ベクトルxと
なる。
【0301】このように構成されたサスペンションシス
テム10を診断対象とする本実施例の診断装置30を、
以下に詳細に説明する。
【0302】タイヤの空気圧が正常で、このときのタイ
ヤのバネ定数がk1であるとき、外乱オブザーバ32は
次式で表わされる総合的外乱を推定演算する。
【0303】
【数46】 ここにおいて、サスペンションの減衰定数Dm は変化す
るものと仮定し、その代表値からの変化量をΔDm で表
現している。
【0304】そして、タイヤの空気圧が変動し、そのバ
ネ定数がΔk1だけ変動して(k1+Δk1)になる
と、外乱オブザーバ32は、次式で表わす信号を出力す
ることになる。
【0305】
【数47】 このように、外乱オブザーバ32が推定した総合的外乱
には、減衰器定数が変動したことによって生ずる外乱
と、タイヤ空気圧の変動によって生じた内部外乱と、路
面から受ける外部外乱とが含まれていることがわかる。
【0306】そこで、相互相関演算部70は、タイヤの
空気圧変動によって生じた内部外乱が含まれる推定され
た総合的外乱の第2要素と、相対速度との相互相関を演
算する。また、自己相関演算部74は、前記実施例と同
様な手法により、相対速度の自己相関を演算出力する。
【0307】そして、正規化部72は、相互相関演算部
70の出力を、自己相関演算部74の出力で割り算し、
バネ定数の変動量を検出し、異常判定部78へ向け出力
する。
【0308】したがって、異常判定部78は、このよう
にして入力されるバネ定数の変動量を、所定の基準値と
比較し、空気圧の異常判定を行う。
【0309】以上説明したように、本実施例では、アク
ティブでない従来型のサスペンションに装着された車輪
においても、サスペンションのバネ上,バネ下部の上下
加速度を検出する加速度センサ60b,60cを設ける
だけで、タイヤの空気圧の異常を検出することができ
る。
【0310】なお、本第4実施例では、サスペンション
と車輪からなるシステム10を、前述した数43で示し
た状態方程式でモデル化し、サスペンションのバネ上,
バネ下下部の加速度のみが、センサで測定できるものと
して、他の状態量をこれらの信号の積分によって求めて
いる。しかし、これに限らず、サスペンション状態を測
定するセンサが加速度センサでなく、別のセンサであっ
ても、そのセンサが測定する状態量に対応させてモデル
を変更すれば、同様な手法でタイヤの空気圧異常を判定
することができる。
【0311】(第5実施例)本発明の第5実施例は、セ
ンサによって測定できる状態量は、加速度信号ではな
く、バネ上変位x2および相対変位yであることを特徴
とする。本第5実施例において、数43に対応するモデ
ルは、次式で表わされることになる。
【0312】
【数48】 同式において、サスペンションの状態xの中で、バネ上
速度および相対速度は、それぞれバネ上変位x2 および
相対変位yの差分から求めるものとする。
【0313】図15には、このようなサスペンションシ
ステム10を診断対象とする第5実施例の装置が示され
ている。
【0314】タイヤの空気圧が変動し、タイヤのバネ定
数が変動すると、外乱オブザーバ32は次式で表現され
る総合的外乱を推定演算する。
【0315】
【数49】 そして、相関演算部70,自己相関演算部74を用い、
推定された総合的外乱の第2要素および相対変位yの相
互相関の演算と、相対変位yの自己相関の演算とを行
い、このようにして求めた相互相関の値と自己相関の値
を正規化部72で割り算することにより、前実施例と同
様にタイヤの空気圧異常を判定することができる。この
とき、推定された総合的外乱の第2要素とバネ上変位x
2との相互相関関数を、バネ上変位の自己相関関数で割
っても同様にタイヤの空気圧の異常判定を行うことがで
きる。
【0316】なお、本第5実施例では相互相関の演算に
よって、推定された総合的外乱の第2要素に含まれる外
【0317】
【外11】 (減衰比定数が変化したことによって生ずる内部外乱で
ある)を外部外乱と同様に除去しているが、本発明で
は、推定された総合的外乱の第2要素からこの内部外乱
の項を予め消去してから相関演算を行うこともできる。
【0318】(第6実施例)図16には、この手法を組
み入れた本発明の第6実施例の診断装置のブロック図が
示されている。同図において、減衰定数補償部80は、
外乱オブザーバ32からの推定された総合的外乱を用い
て以下の計算を行う。
【0319】
【数50】 この式は、数47より、
【0320】
【数51】 となるから、減衰器定数の変動による項が消去されたこ
とがわかる。そして、w12と、相対速度あるいはバネ上
速度との相互相関を演算することにより、同様に空気圧
の異常を検出することができる。
【0321】なお、図15に示す第5実施例において
も、減衰器定数補償部80を同様に設けることにより、
相互相関演算の前に減衰器定数の変動による外乱が予め
消去されることになる。従って、減衰器定数の変動が極
めて大きいサスペンションに、本発明を適用する場合に
おいて、その空気圧異常検出精度が向上するという利点
がある。
【0322】(第7実施例)なお、前記第1実施例で
は、動的システム10の内部状態量は外部外乱に対し相
関がないと仮定していたが、動的システムの構造や制御
器の制御則によっては、内部状態量と外部外乱の間に相
関がある場合もある。
【0323】この場合の実施例を第7実施例として、第
1実施例の第1〜第3態様に対応させて説明する。な
お、前記第1実施例に対応する部材には、同一符号を付
し、その説明は省略する。
【0324】第1の態様 本実施例の第1の態様は、診断対象10のすべての内部
状態量x(t)がセンサ等を用いて測定でき、外乱推定
手段32は総合的外乱ベクトルw(t)のみを推定する
ように形成された場合である。
【0325】診断装置30のブロック図は図21の様に
構成される。
【0326】実施例の診断装置30は、相関補償部35
と、補正値メモリ37とを含むよう構成されている。
【0327】すなわち、相関演算部34は、前記内部状
態量と総合的外乱ベクトルの推定値との相互相関を演算
するが、前記内部状態量と外部外乱として侵入する路面
外乱との間に若干の相関がある場合には、このままでは
外部外乱として侵入する路面外乱の影響を効果的に除去
することはできない。
【0328】そこで、相関補償部35において、相関演
算結果と内部状態量、およびあらかじめ補正値メモリ3
7に設定しておいた補正値とによって、相関演算結果を
補正し、路面外乱の影響を除外する。
【0329】診断部36では、補正された相関演算結果
を補正し、故障の発生を検出すると共に、具体的な故障
箇所を特定することができる。
【0330】以下に相関補償部35の構成、作用につい
て説明する。
【0331】数18より、総合的外乱の中で外部外乱で
ある路面外乱x0 が含まれるのは総合的外乱の第2要素
であるから、該第2の要素の推定値と測定値yの相関関
数C21について補正を行う。
【0332】まず、メモリ37にあらかじめ設定する補
正値は次のようにして求める。
【0333】動的システムが基準状態(例えば故障がな
い状態)で動作している状態で、外乱オブザーバ32に
よって外乱を推定する。この推定値は、数18におい
て、
【0334】
【数69】 としたものに等しい。すなわち、
【0335】
【数70】 となる。
【0336】したがって、このw2 の推定値と測定値y
との相関は、路面外乱x0 と測定値yとの相関と等価な
ものとする。すなわち、次式のように書くことが出来
る。
【0337】
【数71】 そこで、基準状態の下で、この相関演算を行い、この値
を測定値yの自己相関C(y,y)で割って正規化した
値を補正値hとしてメモリ37に記憶しておく。この補
正値は、次式のように求められる。
【0338】
【数72】 この補正値hは、路面外乱の大きさによらずほぼ一定の
値をもつのである。他の動作状態における路面外乱x0
と測定値yとの相関は、補正値hにそのときの測定値y
の自己相関を掛けることによって求めることができる。
すなわち、故障時のw2 の推定値と測定値yとの相関C
21は、次式のように近似できる。
【0339】
【数73】 したがって、故障診断時において、相関補償部35で
は、測定値yの自己相関C(y,y)を計算する。そし
て、この値C(y,y)と、あらかじめメモリ37に記
憶してある補正値hとを用い、相関演算部34の出力C
21を次式のように補正し、この結果を改めてC21として
診断部36に出力する。
【0340】
【数74】 補正された相関C21は、次式のように表せる。
【0341】
【数75】 診断部36では、前記第1実施例と同様にして、補正さ
れた相関演算結果に基づき、故障の発生を検出すると共
に、具体的な故障箇所を特定する。例えば、
【0342】
【外55】 とyの相関C41にはガスバネの変動分しか現れないの
で、この値に異常があれば直ちにガスバネの故障と特定
できる。同様に、
【0343】
【外56】 と測定値
【0344】
【外57】 の相関関係C42に異常があれば減衰器の故障であると判
定される。残るタイヤの空気圧異常は、相関関数C21に
よって判定される。C21はガスバネの故障もしくはタイ
ヤの空気圧異常によって値をもつことになるが、上記C
41による判定によりガスバネの故障は検出されるので、
そこでガスバネに故障はなく、C21の値に異常があれ
ば、タイヤの異常と判定する。
【0345】このように、本実施例では、動的システム
10の内部状態量が外部外乱に対し相関がある場合で
も、容易に外部からの外乱と故障によって生ずる内部外
乱とを分離し、故障箇所の特定を行うことができる。
【0346】また、本実施例では、補正値hは路面外乱
によらずほぼ一定の値の場合を示した。本発明は、これ
に限らず、補正値hが路面外乱x0 によって変わる場合
は、測定値yと路面外乱x0 との相関演算を行い、この
演算結果を補正値hとしてメモリ37に記憶しておき、
相関補償部35において測定値yに対応する補正値hに
よって補正することもできる。
【0347】第2の態様 本第7実施例の第2の態様は、診断対象10の内部状態
量x(t)の一部が測定できない場合または、測定しな
くても外乱推定手段32によって推定できる場合であ
る。これらの場合には、外乱推定手段32は、総合的外
乱ベクトルw(t)と、測定できないまたは測定しない
内部状態量とを推定するよう形成される。
【0348】このときの診断装置のブロック図を図22
に示す。同図における相関補償部35及び補正値メモリ
37は、図21に示す実施例のものと同様な構成、作用で
あるので、ここではその説明を省略する。
【0349】第3の態様 本第7実施例の第3の態様は、診断対象10の内部状態
量x(t)の一部が測定できない時、外乱推定手段32
が、総合的外乱ベクトルw(t)と、測定できない内部
状態量を含めたすべての内部状態量x(t)とを推定演
算するよう形成した場合である。
【0350】このときの診断装置のブロック図を図23
に示す。同図における相関補償部35および補正値メモ
リ37は、図21に示す実施例のものと同様な構成、作
用をもつので説明は省略する。
【0351】(第8〜第12実施例)なお、前記第2〜
第6実施例では、路面外乱と内部状態量の間に相関がな
いものと仮定して故障診断装置30を構成したが、サス
ペンション10の構成や制御器12の制御アルゴリズム
によっては、前記路面外乱と前記内部状態量との間に相
関がある場合も生ずる。このような場合における空気圧
診断装置を第8〜第12実施例として説明する。
【0352】(第8実施例)まず、図9で示された第2
実施例において、路面外乱とサスペンション10の内部
状態量との間に相関がある場合の実施例を、第8実施例
として説明する。
【0353】図24は、本実施例のブロック図を表して
いる。
【0354】同図において、相互相関演算部70は、前
記内部状態量であるサスペンションの相対速度と外乱オ
ブザーバ32が推定した総合的外部外乱の推定値との相
互相関を演算する。このとき、両者の間に相関がある場
合は、外部外乱として侵入する路面外乱の影響を除去す
ることはできない。
【0355】そこで、相関補償部35において、相関演
算結果と内部状態量およびあらかじめメモリ37に設定
しておいた補正値によって、相関演算結果を補正し、路
面外乱の影響を除外する。
【0356】診断部36では、図9で示された実施例と
同様な作用により、補正された相関演算結果に基づき、
タイヤ空気圧の異常を検出する。
【0357】以下に、相関補償部35の作用を述べる。
【0358】タイヤの空気圧が変動し、タイヤのバネ定
数が変動すると、外乱オブザーバ32は数36で表され
る外乱を推定することはすべに述べた。そして、前記実
施例と同様に相関演算部70において、外乱の測定値と
相対速度との相互相関を演算し、その結果を正規化部7
2において相対速度の自己相関関数で割ると、正規化部
72の出力は次に示すようになる。
【0359】
【数76】 ここに、
【0360】
【外58】 は次式に示すものである。
【0361】
【数77】 ただし、
【0362】
【数78】 である。
【0363】このように、路面外乱と相対速度に相関が
あると、数76の右辺第2項が相関演算結果に影響を及
ぼすことになる。
【0364】一方、空気圧が正常な状態の下では、正規
化部72の出力Jは、数76において
【0365】
【数79】 としたものと等しくなる。この値は次のように表すこと
ができる。
【0366】
【数80】 そこで、この出力結果Jをk1/m1で割った値
【0367】
【数81】 を補正値hとしてあらかじめメモリ37に記憶してお
く。
【0368】この補正値hは、路面外乱の大きさによら
ずほぼ一定の値をもつ。したがって、あらかじめ空気圧
が正常であるときに、サスペンション10の適当な動作
状態の下で正規化部72の出力Jと数81に基づいた演
算結果とを対応づけてメモリに記憶し、補正値として用
いればよい。
【0369】数76と数81より、正規化部72の出力
は、
【0370】
【数82】 で表せるので、バネ定数の変動量は、
【0371】
【数83】 で求めることができる。
【0372】そこで、相関補償部35では、正規化部7
2より出力されたJを用いて補正値hを読出し、この補
正値hを用い、数83の演算式に従って演算を行い、こ
の演算結果を改めてJとして診断部36に出力する。
【0373】そして、診断部36において図9の実施例
と同様な作用により、空気圧の異常を判定する。
【0374】このように、本実施例では、サスペンショ
ンの内部状態量が路面外乱に対し相関がある場合でも、
容易に外部からの外乱と空気圧の異常によって生ずる内
部外乱とを分離し、空気圧の異常を判定することができ
る。
【0375】図29には、このようにして行われるタイ
ヤ空気圧の異常検出アルゴリズムのフローチャートが示
されている。フロー120に沿って、相互相関および自
己相関の演算を行い、数76で示される正規化された値
Jおよび補正値hを用いて数83の演算を行い、その演
算値を改めてJとして用い、タイヤの空気圧の正常、異
常判別を行っている。
【0376】図30(a)は、故意にサスペンションの
相対速度と路面外乱との間に相関が生じるように制御器
を調整し、空気圧が2.0Kg/cm2 である状態(基
準状態の一例)の下で車を走らせ、数81の演算を行っ
た結果の時間的変動が示されている。図30(b)は、
図30(a)の測定時より粗い路面で車を走らせ、同様
な演算を行った結果が示されている。これらの結果か
ら、数81の演算結果は、時間的な変化も少なく、路面
の状態が変化してもほとんど変わらないことがわかる。
したがって、この値の代表値を補正値hとして利用でき
ることが理解される。
【0377】図31(a)は、このようにサスペンショ
ンの相対速度と路面外乱との間に相関がある状態の下
で、図11に示す異常検出アルゴリズムに従って、タイ
ヤのバネ定数を推定した値と、実際に測定されたバネ定
数との値の相関関係が示されている。同図から、相対速
度と路面外乱との間に相関がある場合は、バネ定数の変
動量は精度良く推定されないことがわかる。
【0378】図31(b)は、図29に示す異常検出ア
ルゴリズムに従って、タイヤのバネ定数を推定した値
と、実際に測定されたバネ定数との値の相関関係が示さ
れている。このアルゴリズムでは、補正値として、図3
0(a)で示された値の平均値を用いている。同図よ
り、数83に従って補正演算を行うことにより、高い精
度でバネ定数の変動量が推定可能であることが理解され
る。
【0379】(第9実施例)つぎに、図10で示された
第3実施例において、路面外乱とサスペンション10の
相対変位との間に相関がある場合の実施例を第9実施例
として説明する。
【0380】図25は、本実施例のブロック図を表して
いる。相関補償部35において、相関演算結果と相対変
位及びあらかじめメモリ37に設定しておいた補正値h
によって、相関演算結果を補正し、路面外乱の影響を除
外することができる。この場合、補正値hとしては、空
気圧が正常であるときの正規化部72の出力に基づいて
計算された値を用いる。
【0381】(第10実施例)つぎに、図14で示され
た第4実施例において、路面外乱とサスペンション10
の相対速度との間に相関がある場合の実施例を第10実
施例として説明する。
【0382】図26は、本実施例のブロック図を表して
いる。同図において、相関演算部70は、サスペンショ
ンの相対速度と外乱オブザーバ32が推定した総合的外
乱の第2の要素の推定値との相互相関を演算する。
【0383】相関補償部90において、相関演算結果と
相対速度、及びあらかじめメモリ37に設定しておいた
補正値hによって、相関演算結果を補正し、路面外乱の
影響を除外する。
【0384】診断部36では、図9で示された実施例と
同様な作用により、補正された相関演算結果に基づき、
空気圧の異常を検出する。なお、補正値hとしては、空
気圧が正常であるときの正規化部72の出力に基づいて
計算された値を用いる。
【0385】(第11実施例)つぎに、図15で示され
た第5実施例において、路面外乱とサスペンション10
の相対変位との間に相関がある場合の実施例を第11実
施例として説明する。
【0386】図27は、本実施例のブロック図を表して
いる。同図において、相関演算部70は、サスペンショ
ンの相対変位と外乱オブザーバ32が推定した総合的外
部外乱w2 の推定値との相互相関を演算する。
【0387】相関補償部90は、相関演算結果と相対変
位、及びあらかじめメモリ37に設定しておいた補正値
hによって、相関演算結果を補正し、路面外乱の影響を
除外する。
【0388】診断部36では、図9で示された実施例と
同様な作用により、補正された相関演算結果に基づき、
空気圧の異常を検出する。なお、補正値hには、空気圧
が正常であるときの正規化部72の出力に基づいて計算
された値を用いる。
【0389】(第12実施例)つぎに、図16で示され
た第6実施例において、路面外乱とサスペンション10
の相対速度との間に相関がある場合の実施例を第12実
施例として説明する。
【0390】図28は、本実施例のブロック図を表して
いる。同図において、相関演算部70は、サスペンショ
ンの相対速度と減衰器定数補償部80の出力であるw12
との相互相関を演算する。
【0391】相関補償部35は、相関演算結果と相対速
度、及びあらかじめメモリ37に設定しておいた補正値
hによって、相関演算結果を補正し、路面外乱の影響を
除外する。
【0392】診断部36では、図9で示された実施例と
同様な作用により、補正された相関演算結果に基づき、
空気圧の異常を検出する。なお、補正値hとして、空気
圧が正常であるときの正規化部72の出力に基づいて計
算された値を用いる。
【0393】このように、本発明では、サスペンション
の内部状態量が外部外乱に対し相関がある場合でも、容
易に路面外乱と空気圧異常によって生ずる内部外乱とを
分離し、タイヤ空気圧の異常を検出することができる。
【0394】(第13実施例)次に、本発明の動的シス
テムの診断装置の原理を用い、車体重量の変動を検出す
る車体重量検出装置の実施例を詳細に説明する。なお、
前記実施例と対応する部材には、同一符号を付してその
説明は省略する。
【0395】本実施例をアクティブサスペンションに適
用した場合と、従来のパッシブなサスペンションに適用
した場合について説明する。 アクティブサスペンションに適用した場合 本実施例の診断対象となるサスペンションシステムを図
32に示す。同図は、図3に示された診断対象と同じで
あるため、対応する部材には同一番号を付し、その説明
は省略する。なお、この動的システム10では、第2実
施例、第3実施例と同様、ばね上部およびばね下部に、
車輪の上下振動を検出する加速度センサ60b、加速度
センサ60cが、また、サスペンションのアクティブ制
御のために圧力センサ60aが設けられているものとす
る。このようなサスペンションシステム10を、状態方
程式で表すと次式のようになる。
【0396】
【数84】 ここに、a=k1/m1+k2/m1+k2/m2,b
=1/m1+1/m2,Tは操作量uとアクティブ制御
力f間の遅れ時間を意味している。
【0397】図32において、ばね上質量m2が車体重
量を表している。そこで、本実施例では、車体重量の変
動をパラメータm2の変動で表し、同時に、タイヤ40
の空気圧異常、ガスバネ46の異常および減衰器48の
異常を想定し、それぞれ、パラメータk1,k2および
Dmの変動として扱う。
【0398】図33には、本実施例のシステムのブロッ
ク図が示されている。診断対象となるサスペンションシ
ステム10は、制御器12から出力される操作量uを入
力とし、数84に含まれるベクトル
【0399】
【外12】 を内部状態量とするよう構成されたシステムである。
【0400】前記内部状態量ベクトルのxに含まれる各
要素のうち、ばね上加速度は図32に示される加速度セ
ンサ60bから直接検出され、ばね上速度はばね上加速
度を積分することによって求められる。相対加速度は加
速度センサ60cにより検出されるばね下加速度とばね
上加速度の差から求められる。相対速度は、相対加速度
を積分することによって求められる。このような演算を
行う各演算部は、実施例のサスペンションシステム10
内に常に組み込まれているものとする。したがって、サ
スペンション10の出力は、前記数84に含まれる内部
状態量ベクトル
【0401】
【外13】 となる。
【0402】本実施例の制御器12は、このようにして
出力される内部状態量ベクトルxを入力とし、アクティ
ブサスペンションシステム10の入力となる操作量uを
演算出力している。
【0403】また、前記アクティブサスペンションシス
テム10を診断対象とする実施例の診断装置30は、外
乱オブザーバ32と、相関演算部34と、変動量検出部
90とを含む。
【0404】前記外乱オブザーバ32は、制御器12の
出力uとアクティブササスペンションシステム10の出
力xとを入力とし、上記で想定したパラメータの変動を
アクティブサスペンションシステム10内で発生する内
部外乱として推定するよう形成されている。
【0405】状態量検出部60は、アクティブサスペン
ションシステム10の出力xから車体重量m2の変動に
よってシステム10に影響を及ぼす状態量(この場合は
f−u)を抽出する。状態量として(f−u)を選ぶ理
由は後述の作用で述べる。
【0406】前記相関演算部34は、相互相関演算部7
0と、正規化部72と、自己相関演算部74とを含む。
【0407】そして、相互相関演算部70は、外乱オブ
ザーバ32が推定した総合的外乱と、(f−u)との相
互相関を演算し出力する。
【0408】また、前記自己相互相関演算部74は、前
記状態量(f−u)の自己相関関数を演算する。
【0409】そして、正規化部72は、相互相関演算部
70が演算した相互相関関数を、前記自己相関演算部7
4が演算した自己相関関数で割って正規化し、変動量検
出部90において車体重量の変動を検出する。
【0410】本実施例は以上の構成からなり、つぎにそ
の作用を説明する。
【0411】想定したパラメータ変動を以下のように定
義する。
【0412】
【数85】 上記のようなパラメータ変動が発生すると、変動によっ
て変化したシステム10の応答は、正常な応答にパラメ
ータ変動に対応した内部外乱が加わったものとみなすこ
とができる。
【0413】外乱オブザーバ32は、サスペンションシ
ステム10の出力信号xと入力信号uを入力とし、前記
内部外乱と外部外乱とを含む総合的外乱ベクトルwを推
定演算して出力する。そのときの総合的外乱の推定値は
【0414】
【数86】 となる。
【0415】上式において、車体重量m2 の変動だけで
表される項は外乱要素
【0416】
【外14】 の第3項のΔa25f,第4項のΔb2uおよび
【0417】
【外15】 の第4項のΔa45f,第5項のΔb4uである。上式で
示された総合的外乱から車体重量m2の変動を抽出する
には、外部外乱である路面外乱
【0418】
【外16】 の存在しない外乱要素
【0419】
【外17】 を用いることが望ましい。
【0420】上式
【0421】
【外18】 は次式のように書き直せる。
【0422】
【数87】 上式から車体重量m2の変動を表す量Δa25を抽出す
る。そこで、相関演算部70では推定した総合的外乱
【0423】
【外19】 と(f−u)との相互相関を演算する。この相関関係を
【0424】
【数88】 とすると、これは次式のように演算される。
【0425】
【数89】 このような相互相関を演算することにより、Δa25の項
と他の項が分離され、車体重量m2の変動のみが抽出さ
れることになる。すなわち、出力される総合的外乱の推
定値
【0426】
【外20】 を求めるとともに、(f−u)をN点続けてサンプリン
グして次式で示す平均値を求める。
【0427】
【数90】 そして、これらの平均値を用いて前記数89の相関演算
を行う。この相関関数を行うと、Δa25の項以外の項が
消え、その値は次式に示すようになる。
【0428】
【数91】 このようにして計算された相関関数は、車体重量m2の
変動を表す項と、相関演算に用いたサスペンションの状
態量(f−u)の自己相関関数との積で表現できる。し
たがって、得られた相関関数を、状態量(f−u)の自
己相関関数で割れば、車体重量m2 の変動を定量的に検
出できる。
【0429】この状態量(f−u)の自己相関関数は、
自己相関演算部74により演算され、正規化部72に入
力されることになっている。そして、正規化部72は、
相互相関演算部70から出力される相関関数を自己相関
演算部74から出力される自己相関関数で割ることによ
り次式で示すよう、車体重量m2の変動を検出出力して
いる。
【0430】
【数92】 ここにおいて、パラメータm2およびTは既知である。
したがって、変動量検出部90は、正規化部72の出力
Jを用い次式に示す演算を行い、車体重量m2の変動量
Δm2を正確に求めることができる。
【0431】
【数93】 なお、本実施例では、相関演算に用いた状態量を(f−
u)に選んだが、これをfに選んでもよい。そのとき相
互相関演算部70は、総合的外乱の第1要素の推定値と
状態fとの相関を演算し、次式で示す値を出力する。
【0432】
【数94】 ここで、状態fは操作量uが時間Tだけ遅れたものであ
るから、操作量uと状態fの相関C(u,f)は零とは
ならないこともある。そこで、車体重量m2の変動を求
めるためには、まず状態fの自己相関演算と同時に、操
作量uと状態fとの相互相関C(u,f)を求める。次
に、この値と、状態fの自己相関関数C(f,f)との
差C(f,f)−C(u,f)を求める。そして、正規
化部72において、相互相関演算部70の出力を、求め
た差の値で割ることにより、車体重量m2の変動を検出
できる。その時の正規化部72の出力Jは次式のように
なる。
【0433】
【数95】 また、同様な方法により、相互相関演算部70において
外乱
【0434】
【外21】 の推定値と相対速度
【0435】
【外22】 との相関関数
【0436】
【外23】 を求め、自己相関演算部74において相対速度
【0437】
【外24】 の自己相関関数
【0438】
【外25】 を求め、正規化部72において、相関関数
【0439】
【外26】 を相対速度
【0440】
【外27】 の自己相関関数
【0441】
【外28】 で割ると、正規化部72の出力Jとして、ガスバネ定数
k2の変動と車体重量m2 の変動で表される量
【0442】
【数96】 が求められる。ところが、車体重量m2の変動量Δm2
は、上記実施例で示された方法により求められるので、
このΔm2を用いることにより、ガスバネ定数k2の変
動量Δk2も求めることができる。
【0443】さらに、相互相関演算部70において外乱
【0444】
【外29】 の推定値と相対加速度
【0445】
【外30】 との相関関数
【0446】
【外31】 を求め、自己相関演算部74において相対加速度
【0447】
【外32】 の自己相関関数
【0448】
【外33】 を求め、正規化部72において、相関関数
【0449】
【外34】 を相対加速度
【0450】
【外35】 の自己相関関数
【0451】
【外36】 で割ると、正規化部72の出力Jとして、減衰器定数D
mの変動と車体重量m2の変動で表される量
【0452】
【数97】 が求められ、上記実施例で求めた車体重量m2の変動量
Δm2を用いることにより、減衰器定数Dmの変動量Δ
Dmが求められる。
【0453】同様に、相互相関演算部70において総合
的外乱の推定値
【0454】
【外37】 と相対速度
【0455】
【外38】 との相関関数
【0456】
【外39】 を求め、自己相関演算部74において相対加速度
【0457】
【外40】 の自己相関関数
【0458】
【外41】 を求め、正規化部72において、相関関数
【0459】
【外42】 を相対速度
【0460】
【外43】 の自己相関関数
【0461】
【外44】 で割ると、タイヤばね定数k1の変動量Δk1と、正規
化部72の出力Jとして、ガスバネ定数k2の変動量Δ
k2と車体重量m2の変動量Δk2で表される量
【0462】
【数98】 が求められ、上記の手法により既に、ガスバネ定数k2
の変動量Δk2および車体重量m2の変動量Δm2は求
められているので、タイヤばね定数k1の変動量Δk1
も知ることができる。
【0463】このように、本実施例によれば、車体重量
m2の変動量が容易に検出でき、求められた値を用いて
他のパラメータ変動量も順次求めることができる。
【0464】そして、このようにして求められた車体重
量の変動量および種々のパラメータの変動量をアクティ
ブサスペンションの制御則に利用することにより、これ
らの変動に応じた最適な乗り心地を達成することができ
る。
【0465】図33のブロック図に基づいて行ったシミ
ュレーション結果を図36に示す。このシミュレーショ
ンでは、外乱推定およびデータのサンプルを5ms毎に行
い、相互相関及び自己相互相関を過去2秒間に得られた
情報を用いて行っている。同図では、車体重量は基準と
なる重量に対して0%から40%まで変化させ、そのと
きの車体重量変動量の推定値からその変動率を算出して
いる。この結果より、車体重量の変動率が±10%以内
の精度で推定されていることがわかる。
【0466】パッシブサスペンションに適用した場合 本実施例の診断対象となるサスペンションシステムは、
図13に示されたタイヤ空気圧診断装置における診断対
象と同じであるため、その説明は省略する。このサスペ
ンションシステム10の状態方程式は、数45のように
なることはすでに述べた。
【0467】図13において、ばね上質量m2が車体重
量を表している。そこで、本実施例では、車体重量の変
動をパラメータm2の変動で表し、同時に、タイヤ40
の空気圧異常、ガスバネ46の異常および減衰器48の
異常を想定し、それぞれ、パラメータk1,k2および
Dmの変動として扱う。
【0468】図34には、本実施例のシステムのブロッ
ク図が示されている。また、診断対象となるサスペンシ
ョンシステム10の出力は、数45の内部状態ベクトル
xであることも既に述べた。
【0469】また、前記サスペンションシステム10を
診断対象とする実施例の診断装置30は、外乱オブザー
バ32と、相関演算部34と、状態量検出部60と、変
動量検出部90とを含む。
【0470】前記外乱オブザーバ32は、パッシブサス
ペンションシステム10の出力xとを入力とし、上記で
想定したパラメータの変動をパッシブサスペンションシ
ステム10内で発生する内部外乱として推定するよう形
成されている。
【0471】状態量検出部60は、パッシブサスペンシ
ョンシステム10の出力xから車体重量m2の変動によ
ってシステム10に影響を及ぼす状態量(この場合は相
対速度及び相対加速度)を抽出する。
【0472】前記相対演算部34は、相互相関演算部7
0と、正規化部72と、自己相関演算部74とを含む。
【0473】そして、相互相関演算部70は、外乱オブ
ザーバ32が推定した総合的外乱と相対速度および相対
加速度との相互相関を演算し出力する。
【0474】また、前記自己相互相関演算部74は、前
記相対速度および相対加速度それぞれの自己相関関数を
演算する。
【0475】そして、正規化部72は、相互相関演算部
70が演算した相互相関関数を、前記自己相関演算部7
4が演算した自己相関関数で割って正規化し、変動量検
出部90において車体重量の変動を検出する。
【0476】本実施例は以上の構成からなり、つぎにそ
の作用を説明する。
【0477】想定したパラメータ変動を以下のように定
義する。
【0478】
【数99】 上記のようなパラメータ変動が発生すると、変動によっ
て変化したサスペンションシステム10の応答は、正常
な応答にパラメータ変動に対応した内部外乱が加わった
ものとみなすことができる。
【0479】外乱オブザーバ32は、サスペンションシ
ステム10の出力信号xと入力信号uを入力とし、前記
内部外乱とを含む総合的外乱ベクトルwを推定演算して
出力する。そのときの推定された総合的外乱は
【0480】
【数100】 となる。
【0481】上式において、車体重量m2の変動だけで
表される項は存在しないので、いくつかの変動項を用い
て車体重量m2の変動を検出する。
【0482】まず、相互相関演算部70において推定さ
れた総合的外乱の第1要素および第2要素
【0483】
【外45】
【0484】
【外46】 と相対速度および相対加速度との相互相関を演算する。
【0485】ここにおいて、
【0486】
【外47】 と相対速度との相互相関関数を
【0487】
【外48】 とし、
【0488】
【外49】 と相対加速度との相互相関関数を
【0489】
【外50】 とし、
【0490】
【外51】 と相対速度との相互相関関数を
【0491】
【外52】 とし、
【0492】
【外53】 と相対加速度との相互相関関数を
【0493】
【外54】 とすると、これらの値は次式のようになる。
【0494】
【数101】
【0495】
【数102】 このような相互相関を演算することにより、推定された
総合的外乱の各変動項が他の項と分離される。
【0496】そして、このようにして計算された相関関
数を、相対速度および相対加速度の自己相関関数で割れ
ば、前記変動項が抽出できる。正規化部72は、相互相
関演算部70から出力される相関関数を自己相関演算部
74から出力される自己相関関数で割ることにより次式
で示すような4つの値を出力する。
【0497】
【数103】 このようにして求められた値Jij(但し、i,j=1,
2)から、変動量検出部9は、車体重量の変動を検出す
る。いま想定したパラメータ変動はΔm2,Δk1,Δ
k2,ΔDmの4種類であり、正規化部72の出力もJ
11,J12,J21,J22の4つであるから、連立方程式な
どの手法を用いて前記変動量を検出することができる。
【0498】例えば、J12にJ22を加えると、
【0499】
【数104】 となる。ここでm1,Dmは既知であるから、上式より
減衰器定数の変動量ΔDmが求められる。
【0500】そして、このようにして求められたΔDm
とJ12により車体重量の変動量Δm2が求められる。
【0501】さらに、このようにして求められたΔm2
とJ11より、ガスバネ定数の変動量Δk2が求められ、
ここまででΔm2とΔk2が求められたので、これらの
値とJ21よりタイヤバネ定数の変動量Δk1が求められ
る。
【0502】このように本実施例では、正規化部72の
出力によって直接車体重量の変動量が検出できない場合
でも、正規化部72の出力を複数用いることによって重
体重量の変動量を検出することができ、さらにその他の
パラメータ変動量も同様に検出することができる。
【0503】なお、本実施例でパッシブサスペンション
に適用した例は同様にアクティブサスペンションにも適
用できる。
【0504】また、本実施例では、路面外乱と内部状態
量の間に相関がないものと仮定して診断装置30を構成
したが、サスペンション10の構成や制御器12の制御
アルゴリズムによっては、前記路面外乱と前記内部状態
量との間に相関がある場合も生ずる。このような場合に
おける車体重量変動検出装置を次の実施例として説明す
る。
【0505】(第14実施例)図35には、路面外乱と
サスペンション10の内部状態量との間に相関がある場
合の実施例が示されている。
【0506】同図において、相関演算部70は、前記内
部状態量であるサスペンションの相対速度および相対加
速度と外乱オブザーバ32が推定した総合的外乱の推定
値との相互相関を演算するが、両者の間に相関がある場
合は、外部外乱として侵入する路面外乱の影響を除去す
ることはできない。
【0507】そこで、相関補償部35において、相関演
算結果と内部状態量およびあらかじめメモリ37に設定
しておいた補正値hによって、相関演算結果を補正し、
路面外乱の影響を除外する。
【0508】変動量検出部90では、図34で示された
実施例と同様な作用により、補正された相関演算結果に
基づき、車体重量の変動量を検出する。
【0509】以下に、相関補償部35の作用を述べる。
【0510】まず、前記実施例と同様に、想定したパラ
メータ変動を以下のように定義する。
【0511】
【数105】 上記のような変動が生じると、外乱オブザーバ32は数
100で表される外乱を推定することはすべに述べた。
そして、前記実施例と同様に、相関演算部70は、総合
的外乱の推定値と相対速度との相関を演算し、その結果
を正規化部72において相対速度の自己相関関数で割る
と、正規化部72の出力は次に示すようになる。
【0512】
【数106】 このように、路面外乱と相対速度および相対加速度に相
関があると、数106のJ21の右辺第2項およびJ22の
右辺第3項が相関演算結果に影響を及ぼすことになる。
【0513】一方、パラメータ変動が生じない正常な状
態の下では、正規化部72の出力は、数106において
【0514】
【数107】 としたものと等しくなる。この値は次のように表すこと
ができる。
【0515】
【数108】 そこで、この出力結果のなかでJ21およびJ22をk1/
m1で割った値
【0516】
【数109】 を補正値hとしてあらかじめメモリ37に記録してお
く。
【0517】すなわち、この補正値h1およびh2は、
路面外乱の大きさによらずほぼ一定の値をもつのであ
る。従って、あらかじめパラメータ値が正常であるとき
に、サスペンション10の適当な動作状態の下で正規化
部72の出力のJ21およびJ22と数109に基づいた演
算結果とをメモリ37に記録し、補正値として用いれば
よい。
【0518】相関補償部35では、この補正値を用いて
以下の補正を行う。
【0519】
【数110】 その結果、相関補償部35では以下の値を出力する。
【0520】
【数111】 そこで、変動量検出部90において、上式に基づき、車
体重量の変動量を検出する。すなわち、数111では求
める変数は、Δk1,Δk2,Δm2,ΔDmの4つあ
り、数111には4つの方程式があるから連立方程式の
解法などを用いて、車体重量の変動量Δm2を含めたパ
ラメータ変動量Δk1,Δk2,Δm2,ΔDmを求め
ることができる。
【0521】本実施例では、補正値hを記録する際の実
験時における車体重量を車体重量の基準状態とした。
【0522】本実施例による車体重量の実際の変動と、
推定値との相関を図36に示す。本実施例によれば、車
体重量の変動を精度よく推定することができる。
【0523】(第15実施例)次に、請求項3に対応す
る実施例を説明する。
【0524】以上の実施例では、動的システムの状態間
に相関がないとして、総合的外乱からシステムの故障を
診断したが、システムによっては状態間に相関がある場
合もある。この場合は、相関演算部34に示されるよ
う、総合的外乱と状態との相関を、状態の自己相関で正
規化する方法では診断に誤差が生ずることがある。
【0525】このような場合には、最小自乗法のような
手法を用いることで、状態間の相関を補償する。図37
はそのブロック図を示している。同図において、タイヤ
の空気圧等の変動は、システム10の物理パラメータの
変動に置き換えられ、この変動は、外乱オブザーバ32
によって内部外乱として推定され、結局、外乱オブザー
バは、外部外乱dと内部外乱ΔAxとの和で表される総
合的外乱ベクトルを推定することは既に述べた。そのと
きの総合的外乱ベクトルの第一要素を取り上げると数2
6のように書ける。
【0526】数26において、Δa11はタイヤの空気圧
の変動による要素であり、その他の要素はタイヤの空気
圧以外の変動によって生じるものと仮定する。いまここ
で、例えば状態x1とx2に相関があるとする。この場
合、Δa11を検出するために、[Dw]1とx1との相
関C([Dw]1,x1)をとると、
【0527】
【数117】 となる。ここで、上式を状態x1の自己相関C(x1,
x1)で割ると、次式のようになるが、前述のように状
態x1とx2に相関があるため上式右辺第2項は零とは
ならない。
【0528】
【数118】 また、この場合は、あらかじめ状態x1とx2の相関C
(x1,x2)を求めておいてもΔa12がわからないの
で補償することはできない。すなわち、Δa12が零でな
い限り、Δa11を正確に求めることはできないことにな
る。
【0529】そこで、数26を次式のように書き替え、
【0530】
【数119】 次式で示す自乗誤差指標を最小にするようなΔaを求め
ることを考える。
【0531】
【数120】 これは、上式をΔaで偏微分して零とおいて求められ
る。
【0532】
【数121】 この方法では、システムの変動はΔa11だけでなく、そ
の他の変動も含めて変動ベクトルΔaとして同時に求め
られるという特徴がある。
【0533】なお、前記数119,120,121は、
前述した数112,113,114に対応する。
【0534】さらに、この手法では状態間の相関も自動
的に打ち消されるという利点がある。例えば、
【0535】
【数122】 であるとき、数121の右辺の各項は、次のように表さ
れる。
【0536】
【数123】 そこで、数121の右辺を計算すると、
【0537】
【数124】 となって、状態間の相関C(x1,x2)を含む項が打
ち消され、システムの変動Δa11,Δa12が同時に求め
られるのである。
【0538】このような作用により、最小自乗法演算部
134では数121の右辺に基づいて、システムの変動
を推定し、診断部に出力している。
【0539】また、数121では逆行列を演算しなけれ
ばならないが、行列の次数が高いときは逆行列の演算に
は多くのメモリと演算時間を要する。しかし、これは以
下に示す漸化式を用いることにより回避できる。すなわ
ち、
【0540】
【数125】 とおくことにより、数121は次式のように書き替えら
れる。この数121は、前述した数115式に対応す
る。
【0541】
【数126】 上式の方法では、漸化式の初期値を
【0542】
【数127】 とおいて、N=0から計算を始めればよい。この方法で
は行列の逆行列を計算する必要がないため、行列の次数
が高い場合には、数121をそのまま計算する方法と比
べてメモリ、演算時間を低減することができる。
【0543】さらに、誤差指標の数120の代わりに
【0544】
【数128】 を用いると、以下の漸化式が得られる。
【0545】
【数129】 ここに、λは忘却係数と呼ばれている。この方法は、古
いデータにより小さな重みをかけてシステムの変動を求
めようとするものであり、数126と比べて集束が早
く、システムの変動が時間的によく変化する場合に有効
である。
【0546】以下に図3に示した動的システムに適用し
た実施例を説明する。図38は、本実施例を示すブロッ
ク図である。本実施例では第1実施例と同じく、故障と
してタイヤ空気圧の異常、ガスバネ46の圧力異常、お
よび減衰器48の故障を想定する。そのとき、動的シス
テムの状態方程式は数15で表され、故障時に外乱オブ
ザーバ32が推定する総合的外乱は数18で示されるこ
とは既に述べた。
【0547】そこで、最小自乗法演算部134におい
て、
【0548】
【数130】 とおき、
【0549】
【数131】 あるいはそれに対応した漸化式を用いることによって、
次式で表す変動分
【0550】
【数132】 を求めることができる。さらに新たに
【0551】
【数133】 とおき、
【0552】
【数134】 あるいは、それに対応した漸化式を用いることによっ
て、次式で表す変動分
【0553】
【数135】 を求めることができる。
【0554】これらのΔaにより、Δk1,Δk2,Δ
Dmを求めることができる。
【0555】なお、本実施例ではuが零でない場合のア
クティブサスペンションを例にとり説明したが、本発明
をu=0のパッシブサスペンションにも適用できること
はいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる動的システムの診断装置の一例
を示すブロック図である。
【図2】第1実施例に用いられる外乱の近似法を示す曲
線図である。
【図3】第1実施例の診断対象となる自動車のサスペン
ションシステムの概略説明図である。
【図4】図3に示すサスペンションモデルを診断対象と
する第1実施例における第1態様の診断装置を示すブロ
ック図である。
【図5】第1実施例における第2態様の診断装置を示す
ブロック図である。
【図6】第1実施例における第3態様の診断装置を示す
ブロック図である。
【図7】従来の診断装置の説明図である。
【図8】アクティブサスペンションと車輪とを含む動的
システムの概略説明図である。
【図9】図8に示す動的システムを診断対象とする本発
明の第2実施例の診断装置のブロック図である。
【図10】図9に示す診断装置の変形例である本発明の
第3実施例のブロック図である。
【図11】図9に示す診断装置の動作を示すフローチャ
ート図である。
【図12】図9に示す診断装置を用いて推定したバネ定
数の変動量と実際に測定したバネ定数との相関を示す実
測データ図である。
【図13】従来のサスペンションと、車輪とを含む動的
システムの概略説明図である。
【図14】図13に示す動的システムを診断対象とする
本発明の第4実施例の診断装置のブロック図である。
【図15】図14に示す診断装置の変形例である本発明
の第5実施例のブロック図である。
【図16】図14に示す診断装置の変形例である本発明
の第6実施例のブロック図である。
【図17】従来のタイヤ空気圧診断装置のブロック図で
ある。
【図18】図17に示す従来装置を用いて測定した正常
時のデータ測定図である。
【図19】図17に示す従来装置を用いて測定した異常
時のデータ測定図である。
【図20】本実施例の最小次元オブザーバのブロック図
である。
【図21】本発明の第7実施例のブロック図である。
【図22】前記第7実施例の変形例のブロック図であ
る。
【図23】前記第7実施例の他の変形例のブロック図で
ある。
【図24】本発明の第8実施例のブロック図である。
【図25】本発明の第9実施例のブロック図である。
【図26】本発明の第10実施例のブロック図である。
【図27】前記第11実施例のブロック図である。
【図28】前記第12実施例のブロック図である。
【図29】第8実施例の装置の動作を示すフローチャー
ト図である。
【図30】一定の条件の下で車両を走行させた際に得ら
れる補正値の時間的変動の説明図である。
【図31】タイヤのばね定数の推定値と、実際に測定さ
れたばね定数との相関関係の説明図である。
【図32】第13実施例の診断対象となる自動車のサス
ペンションシステムの概略説明図である。
【図33】第13実施例のブロック図である。
【図34】第13実施例の変形例のブロック図である。
【図35】第14実施例のブロック図である。
【図36】図33に示す装置を用いて行った実験結果の
説明図である。
【図37】第15実施例のブロック図である。
【図38】第15実施例の具体例のブロック図である。
【符号の説明】
10 動的システム 30 診断装置 32 外乱オブザーバ 34 相関演算部 36 診断部 38 故障特定部 70 相互相関演算部 72 正規化部 74 自己相関演算部 76 メモリ 78 異常判定部 80 減衰器定数補償部 u 制御入力ベクトル d 外部外乱ベクトル y 制御出力ベクトル x 状態量ベクトル
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−12278(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01M 19/00 B60C 23/00 G01M 17/00 - 17/10 G05B 23/00

Claims (19)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動的システムの故障を検出する動的シス
    テムの診断装置であって、 前記動的システムの内部状態量ベクトルに基づき、動的
    システムの外部外乱ベクトルおよび内部外乱ベクトルの
    和としての総合的外乱ベクトルを推定する外乱推定手段
    と、 推定された前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量
    ベクトルとの相互相関を演算する演算手段と、 前記総合的外乱ベクトルから内部外乱に関連する成分を
    分離する分離手段と、分離された内部外乱に関連する成
    分から、前記動的システムの対応箇所を特定しその診断
    を行う診断手段と、 を含み、動的システムの診断を行うことを特徴とする動
    的システムの診断装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、 前記演算手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素と、前記内部状態量ベク
    トルの外部外乱に対し相関の無い要素との相互相関を演
    算し、前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する
    成分を分離することを持徴とする動的システムの診断装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項1において、 前記演算手段は、 前記相互相関演算として、前記総合的外乱ベクトルと前
    記内部外乱ベクトルの誤差の自乗の時間的な和が最小
    となるように、前記内部状態量ベクトルを基底ベクトル
    とする総合的外乱の方向ベクトルの演算を実行し、前記分離手段は 、 前記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する
    成分を分離することを特徴とする動的システムの診断装
    置。
  4. 【請求項4】 請求項1、2のいずれかにおいて、 前記演算手段は、 推定された前記総合的外乱ベクトルの複数の要素につい
    て、前記内部状態量ベクトルの外部外乱に対し相関の無
    い要素との相互相関を演算し、前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの複数の要素から内部外乱に関
    連する成分の各要素を分離し、 前記診断手段は、 分離された内部外乱に関連する成分の各要素から、前記
    動的システムの診断箇所を特定し、その診断を行うよう
    形成されたことを特徴とする動的システムの診断装置。
  5. 【請求項5】 サスペンションと車輪から構成される動
    的システムのタイヤ空気圧の状態を診断するタイヤ空気
    圧診断装置において、 前記動的システムの内部状態量ベクトルに基づき、動的
    システム内でタイヤの空気圧の変動により発生する内部
    外乱ベクトルと、路面から動的システムに入力される外
    部外乱ベクトルと、の和としての総合的外乱ベクトルを
    推定する外乱推定手段と、 推定された前記総合的外乱と、前記内部状態量ベクトル
    との相互相関を演算する演算手段と、 前記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する
    成分を分離する分離段と、 分離された内部外乱に関連する成分から、前記動的シス
    テムのタイヤ空気圧の状態を求める診断手段と、 を含むことを特徴とするタイヤ空気圧診断装置。
  6. 【請求項6】 請求項5において、 前記演算手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素と、前記内部状態量ベク
    トルの外部外乱に対し相関の無い要素との相互相関を演
    算し、前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する
    成分を分離することを特徴とするタイヤ空気圧診断装
    置。
  7. 【請求項7】 請求項5において、 前記演算手段は、 前記相互相関演算として、前記総合的外乱ベクトルと、
    前記内部外乱ベクトルの誤差の自乗の時間的な和が最
    小となるように、前記内部状態量ベクトルを基底ベクト
    ルとする総合的外乱の方向ベクトルの演算を実行し、前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する
    成分を分離することを特徴とするタイヤ空気圧診断装
    置。
  8. 【請求項8】 請求項5〜7のいずれかにおいて、 前記診断手段は、 前記内部状態量ベクトルの外部外乱に対し相関のない要
    素の自己相関を演算する自己相関演算部を含み、前記相
    互相関値と自己相関値とに基づきタイヤの空気圧の状態
    を診断することを特徴とするタイヤ空気圧診断装置。
  9. 【請求項9】 動的システムの故障を検出する動的シス
    テムの診断装置であって、 前記動的システムの内部状態量ベクトルに基づき、動的
    システムの外部外乱ベクトルおよび内部外乱ベクトルの
    和としての総合的外乱ベクトルを推定する外乱推定手段
    と、 所定基準状態における内部状態量ベクトルと、外部外乱
    ベクトルとの相関を補正値として記憶する補正値記憶手
    段と、 推定された前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量
    ベクトルとの相互相関を演算する相関演算手段と、 前記内部状態量ベクトルと前記補正値とに基づき、前記
    相関演算手段の演算する相互相関を補正することによっ
    て、前記総合的外乱ベクトルから外部外乱の影響を受け
    ることなく内部外乱に関連する成分を分離する相関補償
    手段と、 分離された内部外乱に関連する成分から、前記動的シス
    テムの対応箇所を特定しその診断を行う診断手段と、 を含み、動的システムの診断を行うことを特徴とする動
    的システムの診断装置。
  10. 【請求項10】 サスペンションと車輪から構成される
    動的システムのタイヤ空気圧の状態を診断するタイヤ空
    気圧診断装置において、 前記動的システムの内部状態量ベクトルに基づき、動的
    システム内でタイヤの空気圧の変動により発生する内部
    外乱ベクトルと、路面から動的システムに入力される外
    部外乱ベクトルとの和としての総合的外乱ベクトルを推
    定する外乱推定手段と、 所定基準状態における内部状態量ベクトルと、外部外乱
    ベクトルとの相関を補正値として記憶する補正値記憶手
    段と、 推定された前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量
    ベクトルとの相互相関を演算する相関演算手段と、 前記内部状態量ベクトルと前記補正値とに基づき、前記
    相関演算手段の演算する相互相関を補正することによっ
    て、前記総合的外乱ベクトルから外部外乱の影響を受け
    ることなく内部外乱に関連する成分を分離する相関補償
    手段と、 分離された内部外乱に関連する成分から、前記動的シス
    テムのタイヤ空気圧の状態を求める診断手段と、 を含むことを特徴とするタイヤ空気圧診断装置。
  11. 【請求項11】 サスペンションと車輪から構成される
    動的システムの車体重量の変動を診断する車体重量変動
    検出装置において、 前記動的システムの内部状態量ベクトルに基づき、動的
    システム内で車体重量の変動により発生する内部外乱ベ
    クトルと、路面から動的システムに入力される外部外乱
    ベクトルとの和としての総合的外乱ベクトルを推定する
    外乱推定手段と、 推定された前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量
    ベクトルとの相互相関を演算する演算手段と、 前記総合的外乱ベクトルから内部外乱に関連する成分を
    分離する分離手段と、分離された内部外乱に関連する成
    分から、前記動的システムの車体重量の変動を検出する
    検出手段と、 を含むことを特徴とする車体重量変動検出装置。
  12. 【請求項12】 請求項11において、 前記演算手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素と、前記内部状態量ベク
    トルの外部外乱に対し相関の無い要素との相互相関を演
    算し、前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する
    成分を分離することを特徴とする車体重量変動検出装
    置。
  13. 【請求項13】 サスペンションと車輪から構成される
    動的システムの車体重量の変動を診断する車体重量変動
    検出装置において、 前記動的システムの内部状態量ベクトルに基づき、動的
    システム内で車体重量の変動により発生する内部外乱ベ
    クトルと、路面から動的システムに入力される外部外乱
    ベクトルとの和としての総合的外乱ベクトルを推定する
    外乱推定手段と、 所定基準状態における内部状態量ベクトルと、外部外乱
    ベクトルとの相関を補正値として記憶する補正値記憶手
    段と、 推定された前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量
    ベクトルとの相互相関を演算する相関演算手段と、 前記内部状態量ベクトルと前記補正値とに基づき、前記
    相関演算部の演算する相互相関を補正することによっ
    て、前記総合的外乱ベクトルから外部外乱の影響を受け
    ることなく内部外乱に関連する成分を分離する相関補償
    手段と、 分離された内部外乱に関連する成分から、前記動的シス
    テムの車体重量の変動を検出する検出手段と、 を含むことを特徴とする車体重量変動検出装置。
  14. 【請求項14】 請求項11において、 前記演算手段は、 前記相互相関演算として、前記総合的外乱ベクトルと、
    前記内部外乱ベクトルの誤差の自乗の時間的な和が最
    少となるように、前記内部状態量ベクトルを基底ベクト
    ルとする総合的外乱の方向ベクトルの演算を実行し、前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する
    成分を分離することを特徴とする車体重量変動検出装
    置。
  15. 【請求項15】 動的システムの内部外乱を分離する装
    置であって、 前記動的システムの内部状態量ベクトルに基づき、動的
    システムの外部外乱ベクトルおよび内部外乱ベクトルの
    和としての総合的外乱ベクトルを推定する外乱推定手段
    と、 推定された前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量
    ベクトルとの相互相関を演算する演算手段と、 前記総合的外乱ベクトルから内部外乱に関連する成分を
    分離する分離手段と、 を含むこと特徴とする動的システ
    ムの内部外乱分離装置。
  16. 【請求項16】 請求項15において、 前記演算手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素と、前記内部状態量ベク
    トルの外部外乱に対し相関の無い要素との相互相関を演
    算し、 前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する
    成分を分離することを特徴とする動的システムの内部外
    乱分離装置。
  17. 【請求項17】 請求項15において、 前記演算手段は、 前記相互相関演算として、前記総合的外乱ベクトルと、
    前記内部外乱ベクトルとの誤差の自乗の時間的な和が最
    小となるように、前記内部状態量ベクトルを基底ベクト
    ルとする総合的外乱の方向ベクトルの演算を実行し、 前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの要素から内部外乱に関連する
    成分を分離することを特徴とする動的システムの内部外
    乱分離装置。
  18. 【請求項18】 請求項15〜17のいずれかにおい
    て、 前記演算手段は、 推定された前記総合的外乱ベクトルの複数の要素につい
    て、前記内部状態量ベクトルの外部外乱に対し相関の無
    い要素との相互相関を演算し、 前記分離手段は、 前記総合的外乱ベクトルの複数の要素から内部外乱に関
    連する成分の各要素を分離することを特徴とする動的シ
    ステムの内部外乱分離装置。
  19. 【請求項19】 動的動的システムの内部外乱を分離す
    る装置であって、 前記動的動的システムの内部外乱分離装置の内部状態量
    ベクトルに基づき、動的動的システムの内部外乱分離装
    置の外部外乱ベクトルおよび内部外乱ベクトルの和とし
    ての総合的外乱ベクトルを推定する外乱推定手段と、 所定基準状態における内部状態量ベクトルと、外部外乱
    ベクトルとの相関を補正値として記憶する補正値記憶手
    段と、 推定された前記総合的外乱ベクトルと、前記内部状態量
    ベクトルとの相互相関を演算する相関演算手段と、 前記内部状態量ベクトルと前記補正値とに基づき、前記
    相関演算手段の演算する相互相関を補正することによっ
    て、前記総合的外乱ベクトルから外部外乱の影響を受け
    ることなく内部外乱に関連する成分を分離する相関補償
    手段と、 を含むことを特徴とする動的システムの内部外乱分離装
    置。
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