JP2951162B2 - 自己消弧機能を有する半導体装置 - Google Patents

自己消弧機能を有する半導体装置

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JP2951162B2
JP2951162B2 JP19354393A JP19354393A JP2951162B2 JP 2951162 B2 JP2951162 B2 JP 2951162B2 JP 19354393 A JP19354393 A JP 19354393A JP 19354393 A JP19354393 A JP 19354393A JP 2951162 B2 JP2951162 B2 JP 2951162B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自己消弧機能を有する
半導体装置に係わり、特に、半導体装置のターンオフ損
失を低減させる場合、エミッタ層の厚さや低抵抗の短絡
領域の厚さ等を考慮して、点弧特性の異常を生じないよ
うにした自己消去機能を有する半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、自己消去機能を有する半導体装
置として、ゲートターンオフサイリスタ(以下、これを
GTOサイリスタという)が知られている。このGTO
サイリスタは、p型のエミッタ層、n型のベース層、p
型のベース層及びn型のエミッタ層が順に積層された4
層構造からなる半導体基体を備え、p型のエミッタ層に
はアノード電極、p型のベース層にはゲート電極、n型
のエミッタ層にはカソード電極がそれぞれ接続配置され
て1ユニット(単位)が形成され、このユニット(単
位)が複数個集合配置された構造を有している。
【0003】そして、このGTOサイリスタを製造する
場合には、まず、n型のベース層を基板とし、この基板
にそれぞれ不純物を注入拡散させることによって、一方
の表面側にp型のベース層とn型のエミッタ層を順に形
成し、他方の表面側にp型のエミッタ層を形成させて前
記半導体基体を得ているものである。そして、p型のベ
ース層を形成する際には、注入拡散させる不純物とし
て、例えば、ガリウムが用いられ、n型のエミッタ層を
形成する際には、注入拡散させる不純物として、例え
ば、リンが用いられる。また、不純物の注入拡散工程を
簡便にするために、p型のエミッタ層とp型のベース層
は、同時に行われる不純物の注入拡散によって同時に形
成される。
【0004】かかるGTOサイリスタにおいては、その
動作特性の1つにターンオフ損失がある。このターンオ
フ損失は、n型のベース層とp型のエミッタ層との接合
(以下、これをJ1接合という)部において、n型のベ
ース層内に存在する残留キャリアがGTOサイリスタの
ターンオフ時にテイル電流として掃き出されるために生
ずるもので、このターンオフ損失を低減させるために
は、p型のエミッタ層から注入されるキャリアの注入効
率を抑制し、J1接合部におけるn型のベース層内に存
在するキャリアの密度を低下させればよいことが知られ
ており、p型のエミッタ層からのキャリアのキャリアの
注入効率を抑制する手段についても、いくつかの手段が
知られている。
【0005】ここにおいて、前記注入効率を抑制する手
段の1つは、アノード電極とn型のベース層とを低抵抗
のn型の短絡領域によって部分的に短絡させるアノード
短絡法であって、この低抵抗のn型の短絡領域は、p型
のエミッタ層の一部の個所にリン等の不純物を多量に注
入拡散させ、p型のエミッタ層を低抵抗のn型の短絡領
域に替えることにより形成させるものである。なお、こ
のn型の短絡領域を形成する際に、不純物の注入拡散に
より、p型のエミッタ層とp型のベースとを同時に形成
するものであるときには、この不純物の注入拡散に先立
って、前記n型の短絡領域を形成するようにしている。
また、前記注入効率を抑制する手段の他の1つは、薄い
p型のエミッタ層を形成するものであって、この薄いp
型のエミッタ層は、低抵抗のn型の短絡領域を含んだ種
々の層を、不純物の注入拡散によって形成した後で、例
えば、ボロン等を追加注入拡散することによって形成さ
れるものである。このような形成手段を採れば、数μm
程度の厚さのp型のエミッタ層を形成することができ、
それによってp型のエミッタ層から注入されるキャリア
の注入効率が抑制される。
【0006】この他に、GTOサイリスタにおけるター
ンオフ損失を低減させる手段としては、キャリアのライ
フタイム制御を行う手段が知られており、このライフタ
イム制御を行う手段の中には、金等の重金属を拡散させ
ることによりキャリアのライフタイム制御を行うもの、
または、γ線や電子線を照射することによりキャリアの
ライフタイム制御を行うもの等があって、これらの手段
はいずれもキャリアのライフタイムを短縮させ、キャリ
アの減少を速めるようにしているものである。ところ
が、前記キャリアのライフタイム制御を行う手段は、い
ずれのものも、GTOサイリスタの内部に存在する全て
のキャリアのライフタイムを短縮してしまうものである
ため、n型のベース層とp型のベース層との接合(以
下、これをJ2接合という)部の近傍のn型のベース層
内のキャリア濃度が電流導通状態のときに減少してしま
い、J1接合部側のキャリア密度とあまり変わらない
か、またはより低くなる。このため、GTOサイリスタ
のターンオフ損失は低減するものの、同時に、ターンオ
ン電圧が著しく増大するという問題が生じる。
【0007】この問題を解決するために、GTOサイリ
スタにプロトン等の重荷電粒子の打ち込みを行い、局所
的にキャリアのライフタイム制御を行うものが、特開昭
64−9658号によって開示されている。このプロト
ン等の重荷電粒子の打ち込みによりキャリアのライフタ
イム制御を行う手段は、γ線や電子線を照射させるもの
に比べて、GTOサイリスタ内部への透過率が著しく小
さくなるため、打ち込んだプロトン等の重荷電粒子を半
導体基体の所定の深さのところで停止させることができ
る。そして、プロトン等の重荷電粒子の打ち込み領域に
おいては、ライフタイムキラーとなる発生再結合中心が
数多く形成されるため、キャリアのライフタイムを局所
的に制御することが可能になるもので、例えば、前記J
1接合部近傍のn型のベース層のキャリアのライフタイ
ムのみを選択的に短縮させれば、ターンオン電圧の増大
を招くことなく、ターンオフ損失を低減することが可能
になる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】一般に、GTOサイリ
スタにおいては、高耐圧特性を確立させるため、p型の
ベース層を形成する際に、高温度において長時間にわた
る不純物の拡散が行われる。例えば、不純物としてガリ
ウムを選択し、ガリウムの注入拡散によってp型のベー
ス層を形成する場合には、1250℃の高温度の酸素雰
囲気中で、23時間に及ぶ拡散が行われ、n型ベース層
との接合(J2接合)部の深さは、n型のエミッタ層の
表面から60μm程度に達する。また、p型のエミッタ
層とp型のベース層とを同時に不純物の拡散によって形
成する場合には、p型のエミッタ層も60μm程度の厚
さに形成される。ところで、このような酸素雰囲気中に
おける高温度の長時間に及ぶ不純物の拡散時には、GT
Oサイリスタの半導体基体内に酸素が入り込み、表面か
ら30μm程度の深さにまで達するn型の拡散酸素領域
が生成されるようになる。このとき、p型のエミッタ層
側に生成されたn型の拡散酸素領域は、拡散酸素の濃度
がp型のエミッタ層のキャリア濃度に比べて桁違いに小
さく、かつ、その存在範囲がp型のエミッタ層の内部に
限られているため、前記n型の拡散酸素領域の生成によ
る影響は殆んど現れない。
【0009】しかるに、GTOサイリスタのターンオフ
損失を減少させるため、薄いp型のエミッタ層を形成し
たときには、前述の場合と異なる状況になる。即ち、p
型のエミッタ層の厚さを数μm程度にしたときには、n
型の拡散酸素領域が薄いp型のエミッタ層を超えてn型
のベース層の内部にまで入り込み、n型のベース層内に
酸素を拡散させるようになる。このn型のベース層内に
拡散した酸素の濃度はn型のベース層の不純物濃度より
も高くなるため、n型の拡散酸素領域の影響を無視する
ことができなくなる。通常、GTOサイリスタの製造過
程においては、不純物の拡散工程を終了した後にもいく
つかの熱処理工程を経ることになるが、そのときの熱処
理温度が400℃近傍であると、GTOサイリスタの半
導体基体中に拡散した酸素が活性化してドナー化する。
その結果、前記半導体基体は単なるpnpnの4層構造
ではなく、それらの間に絶縁体層i(実際は高抵抗のn
層)を介在させたpnipnの5層構造になり、ゲート
トリガ電流が異常なGTOサイリスタ、例えば、点弧感
度の鈍いGTOサイリスタ、または、ゲートトリガ電流
を大きくしても点弧しないGTOサイリスタが得られる
ことになる。このように、薄いp型のエミッタ層を備え
たGTOサイリスタにおいては、キャリアの注入効率を
抑制してターンオフ損失を減少できる代わりに、半導体
基体の内部に形成されるn型の拡散酸素領域の影響を受
けるようになり、点弧状態が不十分なGTOサイリスタ
が得られることがあるという問題を有している。
【0010】一方、プロトン等の重荷電粒子の打ち込み
により、局所的にキャリアのライフタイム制御を行うも
のは、これまで前記重荷電粒子の打ち込みの深さや打ち
込み量については一応の考慮が払われていたが、前記重
荷電粒子を打ち込んだ後のプロファイル、特に、前記重
荷電粒子の分布領域の最深部と、p型のエミッタ層の厚
さや低抵抗のn型の短絡領域の厚さ等の関係について
は、何等の考慮が払われていなかったため、前記低抵抗
のn型の短絡領域の形成と併用する際に、必ずしも、充
分な機能を発揮させることができないという問題を有し
ている。
【0011】本発明は、前述の各問題点を除くものであ
って、その目的は、ゲートトリガ電流の異常を生じるこ
とがなく、各機能を充分に発揮させ、ターンオフ損失を
低減させるようにした自己消弧機能を有する半導体装置
を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明は、第1導電型のエミッタ層、第2導電型の
ベース層、第1導電型のベース層、第2導電型のエミッ
タ層の順に積層された4層構造を有し、前記4層構造の
両面がそれぞれ第1及び第2主表面となる半導体基体を
備え、前記半導体基体の第1主表面側は、第1導電型の
エミッタ層が互いに分離された複数の短冊形のもので構
成され、これら分離された複数の第1導電型のエミッタ
層の間に第2導電型のベース層が露出形成され、前記半
導体基体の第2主表面側は、第2導電型のエミッタ層
と、第1導電型のベース層まで達し、第1導電型のベー
ス層よりも低抵抗の第1導電型の短絡領域とが交互に露
出形成されており、第2導電型のエミッタ層の厚さは、
10μm乃至30μmの範囲内であって、第1導電型の
ベース層の形成時に生成される酸素の拡散領域の厚さの
1/3以上、かつ、酸素の拡散領域の厚さを超えない範
囲内にあり、低抵抗の短絡領域の厚さは、第2導電型の
エミッタ層の厚さよりも20μm以上厚くなるように構
成した第1の手段を備える。
【0013】また、前記目的を達成するために、本発明
は、前記第1の手段において、半導体基体の第1主表面
側から重荷電粒子の打ち込みを行い、この打ち込みによ
って形成された重荷電粒子の分布領域の最深部が、第1
導電型の短絡領域の厚さよりも浅く、かつ、第2導電型
のエミッタ層の厚さよりも深いところにあるようにした
第2の手段を備える。
【0014】
【0015】
【作用】前記第1の手段によれば、第2導電型のエミッ
タ層の厚さを10μm乃至30μmの範囲内にあるよう
に構成し、かつ、低抵抗の第1導電型の短絡領域の厚さ
を前記第2導電型のエミッタ層の厚さより少なくとも2
0μm以上厚くなるように構成している。このため、比
較的薄く形成されている第2導電型のエミッタ層からの
キャリアの注入効率が効果的に抑制されるとともに、低
抵抗の第1導電型の短絡領域の本来の機能を充分に発揮
させることができるので、自己消弧機能を有する半導体
装置のターンオフ損失を著しく低減させることが可能に
なる。
【0016】また、前記第の手段によれば、第2導電
型のエミッタ層の厚さを、第1導電型のベース層の形成
時に生成される酸素の拡散領域の厚さの1/3以上で、
かつ、その厚さを超えない範囲内にあるように構成して
いる。このため、第2導電型のベース層の形成時に半導
体基体(第1導電型のベース層)内に拡散した酸素は、
半導体基体の表面から数μmまでの範囲内において半導
体基体の不純物濃度よりも充分高い濃度になっているだ
けで、半導体基体の表面から約10μmを超える範囲に
なると、半導体基体の不純物濃度との差が小さくなり、
半導体基体内に拡散した酸素がその後の熱処理によって
半導体基体内でドナー化しても、そのドナー化した拡散
酸素の影響を受けるのは半導体基体の表面から約10μ
m以下の領域に限られるので、結果的に、前記拡散した
酸素及びドナー化した拡散酸素領域の影響を受けること
がなくなり、点弧感度が低下したり、点弧しない等のゲ
ートトリガ電流の異常を生じることなしに、自己消弧機
能を有する半導体装置のターンオフ損失を著しく低減さ
せることが可能になる。
【0017】さらに、前記第の手段によれば、重荷電
粒子の分布領域の最深部が、低抵抗の第1導電型の短絡
領域の厚さよりも浅く、かつ、第2導電型のエミッタ層
の厚さよりも深いところにあるように構成している。こ
のため、重荷電粒子の打ち込みにより形成される発生再
結合を有効に利用することができるので、点弧感度が低
下したり、点弧しない等のゲートトリガ電流の異常を生
じることなしに、自己消弧機能を有する半導体装置のタ
ーンオフ損失を著しく低減させることが可能になる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に
説明する。
【0019】図1は、本発明による自己消弧機能を有す
る半導体装置の第1の実施例の構成の一部を示す横断面
図であって、自己消弧機能を有する半導体装置としてG
TOサイリスタを構成している例を示すものである。
【0020】図1において、1はn型(第1導電型)の
ベース層、2はp型(第2導電型)のベース層、3はn
型のエミッタ層、4はp型のエミッタ層、5は低抵抗の
高濃度n型(n+型)の短絡領域、6は高濃度p型(p
+型)のゲートコンタクト領域、7は第1主表面、8は
第2主表面である。
【0021】そして、p型のエミッタ層4、n型のベー
ス層1、p型のベース層2、n型のエミッタ層3は、順
に積層された形の4層構造の半導体基体を構成してお
り、この半導体基体のn型のエミッタ層3側が第1主表
面7を形成し、p型のエミッタ層4側が第2主表面8を
形成している。第1主表面7側において、n型のエミッ
タ層3は互いに分離配置された複数の短冊型のもので構
成され、それぞれのn型のエミッタ層3の間にある露出
されたp型のベース層2の上にそれぞれp+型のゲート
コンタクト領域6が形成される。第2表面側8におい
て、p型のエミッタ層4と低抵抗のn+型の短絡領域5
とが交互に露出するように配置形成され、このn+型の
短絡領域5の非露出部はn型のベース層1内に侵入して
いる。ここにおいて、p型のエミッタ層4は、その厚み
が10μm乃至30μmの範囲内になるように選択的に
形成され、n+型の短絡領域5は、その厚みがp型のエ
ミッタ層4の厚みよりも20μm以上厚くなるように選
択的に形成される。なお、図示が省略されているが、n
型のエミッタ層3の表面にはカソード電極が、p型のエ
ミッタ層4及びn+型の短絡領域5の表面にはアノード
電極が、p+型のゲートコンタクト領域6の表面にはゲ
ート電極がそれぞれ設けられており、全体としてGTO
サイリスタが構成されている。
【0022】続く、図2(a)乃至(d)及び図3
(a)乃至(d)は、第1の実施例のGTOサイリスタ
を製造する場合の一例を示す各製造工程を示す工程説明
図である。ただし、説明の便宜上、図2及び図3には、
GTOサイリスタの1ユニット(単位)の構造だけを示
している。
【0023】図2及び図3において、図1に示された構
成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付けている。
【0024】第1の実施例のGTOサイリスタは、概
要、以下のようにして製造される。
【0025】最初の工程1においては、図2(a)に示
すように、ほぼ一定の不純物濃度を有しており、n型の
ベース層1となる高抵抗特性のシリコン基板を用意し、
このシリコン基板の第1表面7側に不純物として適量の
ガリウムを注入(デポジション)し、続いて、酸素雰囲
気内において1250℃の温度下で23時間にわたるガ
リウムの拡散を行い、シリコン基板の第1表面7側にp
型のベース層2を形成する。このとき、p型のベース層
2の厚さは約60μmである。
【0026】続く、工程2においては、図2(b)に示
すように、シリコン基板の第2表面8側に不純物として
適量のリンを選択的に複数の個所に注入(デポジショ
ン)し、このリンの注入個所にn+型の短絡領域5を形
成する。
【0027】次いで、工程3においては、図2(c)に
示すように、既に形成してあるp型のベース層2の表面
に、不純物として適量のリンを注入(デポジション)
し、n型のエミッタ層3を形成する。
【0028】次に、工程4においては、図2(d)に示
すように、前記工程3において形成したn型のエミッタ
層3を部分的にエッチング除去し、これら除去した部分
にp型のベース層2を露出させる。
【0029】続く、工程5においては、図3(a)に示
すように、前記工程4において露出したp型のベース層
2の表面に不純物として適量のリンを選択的に注入(デ
ポジション)し、このリンの注入によってp+型のゲー
トコンタクト領域6を形成する。
【0030】次いで、工程6においては、図3(b)に
示すように、酸素雰囲気内において1200℃の温度下
で約15乃至35時間にわたる第1回目の各不純物の拡
散を行い、これによってp+型のゲートコンタクト領域
6だけでなく、n型のエミッタ層3及びn+型の短絡領
域5の厚みが増大する。
【0031】続いて、工程7においては、図3(c)に
示すように、シリコン基板の第2表面8側のn+型の短
絡領域5の非配置部分に、不純物として適量のボロンを
選択的に注入(デポジション)し、このボロンの注入個
所にp型のエミッタ層4を形成する。このとき、p型の
エミッタ層4の厚さは約4μmである。
【0032】次に、工程8においては、図3(d)に示
すように、酸素雰囲気内において1200℃の温度下で
約15乃至20時間にわたる第2回目の各不純物の拡散
を行い、これによってn型のエミッタ層3、p型のエミ
ッタ層4、n+型の短絡領域5、p+型のゲートコンタ
クト領域6の厚みが増大するが、特に、p型のエミッタ
層4の厚さは約20μmに、n+型の短絡領域5の厚さ
は約45μmになる。
【0033】なお、前記工程1乃至前記工程8において
は、シリコン基板の厚さの調整や、洗浄、酸化、ホトエ
ッチング等の工程が含まれているが、説明を簡単にする
ために、これらの工程については説明を省略している。
【0034】また、前記工程1乃至工程8が終えた後
は、酸化膜等の保護膜形成工程、アルミニウム(Al)
等で形成されるカソード電極、アノード電極、ゲート電
極を、それぞれ、n型のエミッタ層3の表面、p型のエ
ミッタ層4の表面、p+型のゲートコンタクト領域6の
表面に形成する電極形成工程、ウエハからペレットを切
出すペレット切出し工程、ライフタイム制御工程、パッ
ケージング工程等を経て、GTOサイリスタの各製造工
程が完了する。
【0035】続く、図4は、第1の実施例のGTOサイ
リスタにおける第2主表面8側(アノード側)のp型の
エミッタ層4配置部分の不純物濃度を示す不純物分布特
性図である。
【0036】図4において、横軸は第2主表面8(アノ
ード面)からの深さ(μm)であり、縦軸は各不純物濃
度の大きさである。この場合、アノード面からの深さが
0乃至20μmの範囲は、p型のエミッタ層4の形成領
域であり、アノード面からの深さが20μmを超える範
囲は、n型のベース層1の形成領域である。
【0037】そして、図4の実線で示されるように、
p型のエミッタ層4の形成領域における不純物濃度は、
アノード面からの深さが0(表面)のところが最大であ
って、アノード面からの深さが深くなるに応じて減少
し、アノード面からの深さが20μmのところになる
と、ほぼ0になる。n型のベース層1の形成領域におけ
る不純物濃度は、アノード面からの深さが20μmのと
ころがほぼ0であって、アノード面からの深さが20μ
mを僅かに超えると、ある値まで急激に増大し、以下、
アノード面からの深さが深くなっても前記ある値を維持
するような分布になっている。
【0038】また、前記工程1におけるp型のベース層
2の形成時に、酸素雰囲気中において1250℃の温度
下で23時間にわたる不純物拡散処理が行われると、G
TOサイリスタの内部に酸素が拡散されることは前述の
とおりであるが、この拡散した酸素は、図4の点線で
示されるように、アノード面からの深さが0(表面)の
ところが最大であって、アノード面からの深さが深くな
るに応じて僅かづつ減少してゆき、アノード面からの深
さが30μmのところになると、ほぼ0になる。即ち、
拡散した酸素は、アノード面から約30μmのところま
で浸入するが、第1の実施例においては、p型のエミッ
タ層4の厚さが20μmになるように構成しているた
め、p型のエミッタ層4とn型のベース層1との間のJ
1接合部の近傍における拡散した酸素がドナー化したこ
とによる不純物濃度の増加をもたらすことがない。
【0039】このように、第1の実施例によれば、点弧
感度の低下や点弧失敗を起こすというようなゲートトリ
ガ電流の異常を生じることなく、ターンオフ損失を低減
させたGTOサイリスタが得られる。
【0040】続いて、図5は、第1の実施例において、
p型のエミッタ層4の厚さを10μmに構成した本発明
の第2の実施例のGTOサイリスタにおける第2主表面
8側(アノード側)のp型のエミッタ層4配置部分の不
純物濃度を示す不純物分布特性図である。
【0041】図5において、横軸は第2主表面8(アノ
ード面)からの深さ(μm)であり、縦軸は各不純物濃
度の大きさである。この第2の実施例の場合には、アノ
ード面からの深さが0乃至10μmの範囲は、p型のエ
ミッタ層4の形成領域であり、アノード面からの深さが
10μmを超える範囲は、n型のベース層1の形成領域
である。この場合、p型のエミッタ層4の厚さを、第1
の実施例の20μmよりも薄い10μmに形成するため
には、前記工程8における1200℃の高温下での第2
回目の不純物の拡散の時間を、約15乃至20時間より
も短かくなるように設定すればよい。
【0042】そして、図5の実線で示されるように、
p型のエミッタ層4の形成領域における不純物濃度は、
アノード面からの深さが0(表面)のところが最大であ
って、アノード面からの深さが深くなるに応じて急激に
減少し、アノード面からの深さが10μmのところでほ
ぼ0になる。n型のベース層1の形成領域における不純
物濃度は、アノード面からの深さが10μmのところが
ほぼ0であって、アノード面からの深さが10μmを僅
かに超えると、ある値まで急激に増大し、以下、アノー
ド面からの深さが深くなっても前記ある値を維持するよ
うな分布になっている。
【0043】また、第2の実施例においては、拡散した
酸素は、図5の実線で示されるように、アノード面か
らの深さが0(表面)のところが最大であって、アノー
ド面からの深さが深くなるに応じて次第に減少してゆ
き、アノード面からの深さが30μmのところでほぼ0
になるもので、第2の実施例においても、拡散した酸素
はアノード面から約30μmのところまで浸入するもの
である。このために、アノード面からの深さが10μm
のところにある、p型のエミッタ層4とn型のベース層
1との間のJ1接合部の近傍のn型のベース層1内にド
ナー化した拡散酸素が少々現れるようになり、このドナ
ー化した拡散酸素の分だけ不純物濃度が増大するように
なるが、前記ドナー化した拡散酸素の量はさほど大きな
ものではないので、前記ドナー化した拡散酸素の影響を
殆んど受けることがない。
【0044】このように、第2の実施例によれば、ゲー
トトリガ電流が設計値に対してやや大きめになることは
あるものの、点弧感度の低下や点弧失敗を起こすという
ようなゲートトリガ電流の異常を生じることなく、第1
の実施例の場合と同様、ターンオフ損失を低減したGT
Oサイリスタが得られる。
【0045】次に、図6は、第1の実施例において、前
記工程8における1200℃の高温度での第2回目の不
純物の拡散を省略し、p型のエミッタ層4の厚さが約4
μmになるように構成したGTOサイリスタの第1の参
考例(不適切例)を示すもので、(a)はそのGTOサ
イリスタの一部の構成を示す横断面図、(b)はそのG
TOサイリスタにおける第2主表面8側(アノード側)
のp型のエミッタ層4配置部分の不純物濃度を示す不純
物分布特性図である。
【0046】図6において、9はドナー化した拡散酸素
を含むn型の層であり、その他、図1に示された構成要
素と同じ構成要素には同じ符号を付けている。
【0047】そして、この第1の参考例においては、G
TOサイリスタの第2主表面8側に、厚さ4μmのp型
のエミッタ層4とそれよりも厚いn+型の短絡領域5と
が設けられ、さらに、n+型の短絡領域5の最深部より
深い、n型のベース層1の内部にまでドナー化した拡散
酸素を含むn型の層9が形成される。
【0048】この第1の参考例のGTOサイリスタによ
れば、p型のエミッタ層4の厚さが約4μmというよう
に薄すぎているため、図6(b)に示すように、J1接
合部の近傍のn型のベース層1内にドナー化した拡散酸
素が多く発生し、そのドナー化した拡散酸素の量はn型
のベース層1内の不純物濃度に比べて無視できないもの
になる。このような状態のときには、図6(a)に示す
ように、ドナー化した拡散酸素によるn層21がp型の
エミッタ層4(及びn+型の短絡領域5)とn型のベー
ス層1の間に形成され、実質的にpnipnからなる5
層構造になる。
【0049】このため、第1の参考例のGTOサイリス
タは、ゲートトリガ電流が極めて大きくなるばかりか、
点弧感度が著しく低下するようになり、さらに、点弧失
敗を生じるようになる。
【0050】ここで、図7は、GTOサイリスタにおけ
るp型のエミッタ層4の厚さとゲートトリガ電流及びタ
ーンオフ損失との相関関係の1つの実例を示した特性図
である。
【0051】図7において、横軸はp型のエミッタ層4
の厚さ(μm)であり、縦軸はゲートトリガ電流及びタ
ーンオフ損失の各量を示すものである。なお、ゲートト
リガ電流は、各p型のエミッタ層4の厚さに対する設計
値を1としており、ターンオフ損失は、オン電圧が同一
になるように構成したものを対象にしている。
【0052】図7に示される特性図によれば、ゲートト
リガ電流については、p型のエミッタ層4の厚さが30
μm以上になると、p型のベース層2の形成時に拡散し
た酸素の拡散深さが約30μmであるため、前記拡散し
た酸素の影響を受けることがなくなり、設計値に一致す
るようになっている。次いで、p型のエミッタ層4の厚
さを30μmより薄くしてゆくと、最初の間は前述の場
合と同様に前記拡散した酸素の影響を受けないので、ゲ
ートトリガ電流はその設計値に一致しているが、前記層
4の厚さが約20μm以下になってくると、前記拡散し
た酸素の影響を次第に受けるようになり、ゲートトリガ
電流は順次その設計値よりも大きくなってゆく。そし
て、p型のエミッタその4の厚さが約10μm以下にま
で薄くなると、前記拡散した酸素の影響をまともに受
け、ゲートトリガ電流はその設計値よりも極端に増大す
るようになる。
【0053】一方、ターンオフ損失については、p型の
エミッタ層4の厚さが薄いときには、p型のエミッタ層
4からのキャリアの注入効率が抑制されるため、比較的
小さな値に維持されているが、p型のエミッタ層4の厚
さが厚くなると、その厚さの増大にしたがって前記キャ
リアの注入効率の抑制の効力が次第に弱くなるので、タ
ーンオフ損失は順次増大し、ある点から比較的大きく増
大するようになる。そして、前記ターンオフ損失の増大
の勾配が大きくなる分岐点は、p型のエミッタ層4の厚
さが約30μmの近傍である。
【0054】以上総合すると、ゲートトリガ電流につい
ては、その好ましい範囲はp型のエミッタ層4の厚さが
約10μm以上であり、また、ターンオフ損失について
は、その好ましい範囲はp型のエミッタ層4の厚さが約
30μm以下であって、ゲートトリガ電流とターンオフ
損失の双方にとって好ましい範囲は、p型のエミッタ層
4の厚さが10μm乃至30μmの範囲内であり、その
ため、本発明においては、p型のエミッタ層4の厚さを
10μm乃至30μmの範囲内にあるように選択構成し
ているものである。
【0055】また、本発明において、p型のエミッタ層
4の厚さを前記10μm乃至30μmの範囲内になるよ
うに選んだ理由は、前記理由の他に、次のような理由に
もよる。
【0056】後に述べるように、n+型の短絡領域5を
形成する場合には、その厚さをp型のエミッタ層4の厚
さよりも少なくとも20μm以上とすることが好まし
い。そこで、p型のエミッタ層4の厚さを30μm以上
のものにしようとすれば、n+型の短絡領域5の厚さを
50μm以上にしなければならないが、このように厚い
n+型の短絡領域5を形成しようとすると、通常の製造
工程では形成することができず、特殊な工程を用いねば
ならない。このため、n+型の短絡領域5の厚さを50
μm以上にしたGTOサイリスタを製造したとしても、
製造コストが上昇するようになるので、n+型の短絡領
域5の厚さを50μm以上にすることは現実的でなく、
p型のエミッタ層4の厚さは10μm乃至30μmの範
囲内に留めることが望ましい。
【0057】ところで、p型のエミッタ層4の厚さ10
μmは、p型のベース層2の形成時に生成される酸素の
拡散領域の厚さのほぼ1/3に対応し、p型のエミッタ
層4の厚さ30μmは、前記酸素の拡散領域の厚さにほ
ぼ対応しているもので、もし、前記第1の実施例で用い
ている熱処理条件と異なる熱処理条件を用いてGTOサ
イリスタを製造するような場合には、p型のエミッタ層
4の厚さを10μm乃至30μmの範囲内に選択する旨
の規定を行う代わりに、p型のエミッタ層4の厚さを、
p型のベース層2の形成時に生成される酸素の拡散領域
の厚さの略1/3以上で、前記酸素の拡散領域の厚さを
超えない範囲内にする旨の規定を行ってもよい。
【0058】続いて、図8は、p型のエミッタ層4の厚
さを10μmに構成した本発明によるGTOサイリスタ
の第3の実施例を示すもので、(a)はその一部の横断
面図、(b)は第2主表面8側(アノード側)の発生再
結合を含んだ不純物濃度を示す不純物分布特性図であっ
て、横軸は第2主表面8(アノード面)からの深さ(μ
m)であり、縦軸は各不純物濃度及び発生再結合の大き
さである。なお、図8(b)においては、説明を簡単化
するために拡散した酸素についての図示を省略してい
る。
【0059】図8において、10はドナー化したプロト
ンの存在領域(低抵抗領域)であり、その他、図1に示
された構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付けてい
る。
【0060】そして、図8(b)に示すように、この第
3の実施例は、アノード面からの深さが0μm(表面)
乃至10μmの範囲は、p型のエミッタ層4の形成領域
であり、アノード面からの深さが10μmを超える範囲
は、n型のベース層1の形成領域である。この場合も、
p型のエミッタ層4の厚さを10μmに形成するため、
前記工程8における1200℃の高温下での第2回目の
不純物の拡散の時間を、約15乃至20時間よりも短か
くなるように設定したものである。
【0061】第3の実施例に係わるGTOサイリスタに
よれば、図8(b)の実線で示されるように、p型の
エミッタ層4の形成領域における不純物濃度は、アノー
ド面からの深さが0μm(表面)のところが最大であっ
て、アノード面からの深さが深くなるに応じて急激に減
少し、アノード面からの深さが10μmのところでほぼ
0になる。また、図8(b)の実線で示されるよう
に、n型のベース層1の形成領域における不純物濃度
は、アノード面からの深さが10μmのところがほぼ0
であって、アノード面からの深さが10μmを僅かに超
えると、ある値まで急激に増大し、以下、アノード面か
らの深さが深くなっても前記ある値を維持するような分
布になっている。一方、図8(b)の点線に示される
ように、n+型の短絡領域5における不純物濃度は、ア
ノード面からの深さが0μm(表面)のところが最大で
あって、アノード面からの深さが深くなるに応じて次第
に減少し、アノード面からの深さが45μmのところで
ほぼ0になっている。
【0062】この場合、プロトンの打ち込みにより生成
された発生再結合は、図8(b)の実線に示されるよ
うに、アノード面からの深さが0μm(表面)のところ
が比較的少なく、アノード面からの深さが深くなるに応
じて次第に増大してゆき、アノード面からの深さが25
μmのところで最大(発生再結合中心)になり、アノー
ド面からの深さが25μmを超えるに応じて急激に減少
し、アノード面からの深さが40μmのところでほぼ0
になるものである。なお、図8(b)の特性を得るた
め、第3の実施例においては、プロトンの打ち込み量を
1×1012/cm2 とし、かつ、プロトンの打ち込み後
に温度350℃で3時間の加熱処理を行って、プロトン
の打ち込みの深さの中心(発生再結合中心)が25μm
になるようにしたものである。
【0063】このように、第3の実施例によるGTOサ
イリスタは、プロトンの打ち込みの深さの中心(発生再
結合中心)が前記J1接合部よりも15μmも深いn型
のベース層1の内部にあり、図8(b)に示されるよう
に、前記J1接合部の近傍及びその前後、即ち、アノー
ド面からの深さが0μm(表面)乃至約20μmの範囲
内における発生再結合密度の増分は極めて少なく、略一
定の発生再結合密度になっている。そして、発生再結合
密度がほぼ一定な領域においては、拡散した酸素のドナ
ー化が生じないので、第3の実施例によるGTOサイリ
スタは、アノード面からの深さが0μm乃至約20μm
の範囲内にドナー化した拡散酸素が生じることがなく、
そのためにゲートトリガ電流の異常も生じなかった。
【0064】また、第3の実施例によるGTOサイリス
タは、n+型の短絡領域5の厚さが45μmであり、そ
の最深部が前記J1接合部よりも35μm程度深くなっ
ているため、プロトン打ち込みで生じた発生再結合中心
は完全にn+型の短絡領域5の厚さの範囲内に留まって
いる。そして、プロトンの打ち込みで得られた発生再結
合中心は、図8(a)に示すように、その後の熱処理に
よりドナー化して低抵抗領域10になり、このドナー化
した低抵抗領域10は、分離配置されている各n+型の
短絡領域5間を低抵抗で結ぶように働くので、n+型の
短絡領域5の本来の機能が増大されるようになる。この
ため、第3の実施例によるGTOサイリスタは、ゲート
トリガ電流が若干大きくなることがあるとしても、ター
ンオフ損失はプロトンの打ち込みを行わないものに比べ
て、著しく低減させることができる。
【0065】次いで、図9は、第1の実施例において、
前記工程6における1200℃の高温度での第1回目の
不純物の拡散を省略し、p型のエミッタ層4の厚さが約
10μmであり、n+型の短絡領域5の厚さが約20μ
mになるように構成したGTOサイリスタの第2の参考
例(不適切例)を示すもので、(a)はそのGTOサイ
リスタの一部の構成を示す横断面図、(b)はそのGT
Oサイリスタにおける第2主表面8側(アノード側)の
不純物濃度を示す不純物分布特性図である。
【0066】図9において、図8(a)に示された構成
要素と同じ構成要素には同じ符号を付けている。
【0067】そして、図9(b)に示すように、この第
2の参考例は、アノード面からの深さが0μm(表面)
乃至10μmの範囲は、p型のエミッタ層4の形成領域
であり、アノード面からの深さが10μmを超える範囲
は、n型のベース層1の形成領域である。
【0068】この第2の参考例に係わるGTOサイリス
タによれば、図9(b)の実線で示されるように、p
型のエミッタ層4の形成領域における不純物濃度は、ア
ノード面からの深さが0μm(表面)のところが最大で
あって、アノード面からの深さが深くなるに応じて急激
に減少し、アノード面からの深さが10μmのところで
ほぼ0になる。また、図9(b)の実線で示されるよ
うに、n型のベース層1の形成領域における不純物濃度
は、アノード面からの深さが10μmのところがほぼ0
であって、アノード面からの深さが10μmを僅かに超
えると、ある値まで急激に増大し、以下、アノード面か
らの深さが深くなっても前記ある値を維持するような分
布になっている。さらに、図9(b)の点線で示され
るように、n+型の短絡領域5における不純物濃度は、
アノード面からの深さが0μm(表面)のところが最大
であって、アノード面からの深さが深くなるに応じて次
第に減少し、アノード面からの深さが約20μmのとこ
ろでほぼ0になっている。このとき、第2の参考例に対
し、第3の実施例で行ったと同様の条件でプロトンの打
ち込みを行ったところ、図9(b)の実線に示される
ように、プロトン打ち込みで生じた発生再結合中心はア
ノード面からの深さが約25μmのところになり、その
発生再結合中心はn+型の短絡領域5の厚さの範囲を超
えるようになった。
【0069】この第2の参考例のGTOサイリスタは、
p型のエミッタ層4の厚さが最低許容範囲の10μmを
満たしているものの、n+型の短絡領域5の厚さがp型
のエミッタ層4の厚さよりも20μmという規定を満た
していないので、図9(a)に示されるように、プロト
ン打ち込み後の熱処理によりドナー化した低抵抗領域1
0は、n+型の短絡領域5よりも深い部分に存在するよ
うになる。このため、ドナー化した低抵抗領域10は、
分離配置されている各n+型の短絡領域5間を低抵抗で
結ぶ働きをなさず、n+型の短絡領域5の本来の機能を
増大させることがない。なお、第2の参考例のGTOサ
イリスタは、ゲートトリガ電流の増加をもたらすことは
ないが、ターンオフ損失を第3の実施例ほど顕著に低減
させることはできず、前記GTOサイリスタは、参考例
に留まるものである。
【0070】続く、図10は、p型のエミッタ層4の厚
さが約10μmであり、n+型の短絡領域5の厚さが約
20μmになるように構成し、かつ、プロトン打ち込み
のエネルギを第2の参考例のものよりも小さくしたGT
Oサイリスタの第3の参考例(不適切例)を示すもの
で、(a)はそのGTOサイリスタの一部の構成を示す
横断面図、(b)はそのGTOサイリスタにおける第2
主表面8側(アノード側)の不純物濃度を示す不純物分
布特性図である。
【0071】図10において、図9(a)に示された構
成要素と同じ構成要素には同じ符号を付けている。
【0072】そして、この第3の参考例は、第2の参考
例のものに比べて、プロトン打ち込みのエネルギを小さ
くし、発生再結合中心(打ち込みの深さの中心)をアノ
ード面からの深さが約12μmになるようにして、発生
再結合中心がn+型の短絡領域5の厚さよりも浅い位置
にあるようにしている。この場合、第3の参考例は、第
3の実施例と同様に、発生再結合中心がn+型の短絡領
域5の厚さよりも浅い位置に存在するものであるが、p
型のエミッタ層4の厚さが10μmであるため、J1接
合部の近傍まで発生再結合中心が存在している。そのた
めに、第3の参考例によるGTOサイリスタは、プロト
ン打ち込み後の熱処理により、図10(a)に示される
ように、J1接合部の近傍まで拡散した酸素のドナー化
が生じ、第1の参考例のものと同様に、ゲートトリガ電
流が異常に増加したり、点弧感度が低下したり、場合に
よっては全く点弧しない場合もあったりするようなゲー
トトリガ電流の異常が見られた。さらに、第3の参考例
によるGTOサイリスタは、プロトン打ち込みによる局
所的なライフタイム制御を施さず、γ線もしくは電子線
照射によるライフタイム制御を施した既知のものに比べ
て、ターンオフ損失はさほど低減せず、このGTOサイ
リスタも、参考例に留まるものである。
【0073】ここにおいて、図11は、GTOサイリス
タのターンオン電圧とターンオフ損失との関係を示す特
性図である。
【0074】図11において、横軸はターンオン電圧、
縦軸はターンオフ損失をそれぞれ表し、プロトン打ち込
みの深さ及びn+型の短絡領域5の厚さをそれぞれパラ
メータとしたもので、曲線はプロトン打ち込みによる
局所的なライフタイム制御を施さず、γ線もしくは電子
線照射によるライフタイム制御を施した既知のGTOサ
イリスタのもの、曲線は第3の参考例によるGTOサ
イリスタのもの、曲線は第2の参考例によるGTOサ
イリスタのもの、曲線は第3の実施例によるGTOサ
イリスタのものである。
【0075】図11によれば、曲線に示されるよう
に、発生再結合中心がJ1接合部よりも深い位置であっ
て、n+型の短絡領域5の厚さよりも浅い位置にある第
3の実施例のGTOサイリスタにおけるターンオフ損失
は、曲線に示されるように、プロトン打ち込みによる
ライフタイム制御を行わず、γ線もしくは電子線照射に
よるライフタイム制御を行っている既知のGTOサイリ
スタの呈するターンオフ損失に比べて、著しい低減効果
が得られることが判る。これに対して、曲線に示され
るように、発生再結合中心の位置がn+型の短絡領域5
の厚さよりも深い位置にある第2の参考例のGTOサイ
リスタ、あるいは、曲線に示されるように、発生再結
合中心の位置がn+型の短絡領域5の厚さよりも浅い位
置にあるものの、J1接合部と発生再結合中心が充分離
間していない第3の参考例のGTOサイリスタは、曲線
に示される既知のGTOサイリスタに比べれば、ター
ンオフ損失の低減効果はあるものの、曲線に示される
第3の実施例のGTOサイリスタに比べると、ターンオ
フ損失の低減効果は小さくなっている。
【0076】以上の結果によれば、プロトン等の重荷電
粒子打ち込みによる局部的なライフタイム制御を施す場
合は、発生再結合中心がJ1接合部よりもかなり深い位
置にあり、しかも、n+型の短絡領域5の厚さよりも浅
い位置にあれば、ゲートトリガ電流の異常を生じること
なく、ターンオフ損失を著しく低減させることが可能な
GTOサイリスタが得られることが判る。そして、前記
GTOサイリスタを得るためには、n+型の短絡領域5
の厚さが少なくともp型のエミッタ層の厚さよりも20
μm以上厚いことが必要である。
【0077】これまでの説明においては、p型のエミッ
タ層4とn+型の短絡領域5の各厚さが予め正確に判っ
ており、かつ、プロトン打ち込み深さにおいてばらつき
がないことを前提にしたものである。ところで、実際に
GTOサイリスタを製造する場合、p型のエミッタ層4
とn+型の短絡領域5の各厚さについては、プロセス設
計段階においてJ1接合部とn+型の短絡領域5の厚さ
の最小差を設定すれば足りる。しかるに、プロトン打ち
込み深さについては、その打ち込みのエネルギ及び基板
表面の電極層の厚みのばらつき等によって、設計値に対
してほぼ±5μmの打ち込みの深さにばらつきが生じる
が、この±5μmの打ち込みの深さのバラツキを考慮し
ても、プロトン打ち込み深さの設計値をp型のエミッタ
層4の厚さよりも少なくとも20μm以上深くすればよ
い。
【0078】なお、前記各実施例及び前記各参考例にお
いては、n+型の短絡領域5をn型のエミッタ層4より
も先に沈積(デポジション)するものとして説明した
が、この順序は逆であってもよく、あるいは同時であっ
てもよい。
【0079】また、前記各実施例は、自己消弧機能を有
する半導体装置としてGTOサイリスタを例に挙げて説
明したが、本発明は、前記自己消弧機能を有する半導体
装置がGTOサイリスタに限られるものではなく、他の
類似の自己消弧機能を有する半導体装置にも同様に適用
できることは勿論である。
【0080】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、第
2導電型(p型)のエミッタ層4の厚さを10μm乃至
30μmの範囲内にあるように構成し、かつ、低抵抗の
第1導電型(n型)の短絡領域5の厚さを第2導電型の
エミッタ層4の厚さより少なくとも20μm以上厚くな
るように構成しているので、比較的薄く形成される第2
導電型のエミッタ層4からのキャリアの注入効率が効果
的に抑制されるとともに、低抵抗の第1導電型の短絡領
域5の本来の機能を充分に発揮させることができ、自己
消弧機能を有する半導体装置のターンオフ損失を著しく
低減させることが可能になるという効果がある。また、
本発明によれば、第2導電型のエミッタ層の厚さを、第
1導電型のベース層の形成時に生成される酸素の拡散領
域の厚さの1/3以上で、かつ、その厚さを超えない範
囲内にあるように構成しているので、第2導電型のベー
ス層の形成時に半導体基体(第1導電型のベース層)内
に拡散した酸素は、半導体基体の表面から数μmまでの
範囲内において半導体基体の不純物濃度よりも充分高い
濃度になっているだけで、半導体基体の表面から約10
μmを超える範囲になると、半導体基体の不純物濃度と
の差が小さくなり、半導体基体内に拡散した酸素がその
後の熱処理によって半導体基体内でドナー化しても、そ
のドナー化した拡散酸素の影響を受けるのは半導体基体
の表面から約10μm以下の領域に限られるようにな
り、その結果、前記拡散した酸素及びドナー化した拡散
酸素領域の影響を受けることがなくなり、点弧感度が低
下したり、点弧しない等のゲートトリガ電流の異常を生
じることなしに、自己消弧機能を有する半導体装置のタ
ーンオフ損失を著しく低減させることが可能になるとい
う効果がある。
【0081】また、本発明によれば、重荷電粒子(プロ
トン)の分布領域が、低抵抗の第1導電型の短絡領域5
の厚さよりも浅い位置で、かつ、第2導電型のエミッタ
層4の厚さよりも深い位置にあるように構成されている
ので、重荷電粒子の打ち込みにより形成される発生再結
合を有効に利用することができ、点弧感度が低下した
り、点弧しない等のゲートトリガ電流の異常を生じさせ
ることなく、自己消弧機能を有する半導体装置のターン
オフ損失を著しく低減させることが可能になるという効
果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による自己消弧機能を有する半導体装置
(GTOサイリスタ)の第1の実施例の構成の一部を示
す横断面図である。
【図2】図1に示されたGTOサイリスタを製造する場
合の一例を示す各製造工程の中の前半の工程を示す工程
説明図である。
【図3】図1に示されたGTOサイリスタを製造する場
合の一例を示す各製造工程の中の後半の工程を示す工程
説明図である。
【図4】図1に示されたGTOサイリスタにおける第2
主表面側のp型のエミッタ層配置部分の不純物濃度を示
す不純物分布特性図である。
【図5】本発明によるGTOサイリスタの第2の実施例
における第2主表面側のp型のエミッタ層配置部分の不
純物濃度を示す不純物分布特性図である。
【図6】p型のエミッタ層の厚さが約4μmになるよう
に構成したGTOサイリスタの第1の参考例を示す構成
図及び特性図である。
【図7】GTOサイリスタにおけるp型のエミッタ層の
厚さとゲートトリガ電流及びターンオフ損失との相関関
係の1つの実例を示す特性図である。
【図8】p型のエミッタ層4の厚さが10μmになるよ
うに構成した本発明によるGTOサイリスタの第3の実
施例を示す構成図及び特性図である。
【図9】p型のエミッタ層4の厚さが10μmで、n+
型の短絡領域5の厚さが20μmになるように構成した
GTOサイリスタの第2の参考例を示す構成図及び特性
図である。
【図10】図9に示された第2の参考例において、プロ
トン打ち込みのエネルギを小さくしたGTOサイリスタ
の第3の参考例を示す構成図及び特性図である。
【図11】GTOサイリスタのターンオン電圧とターン
オフ損失との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 n型(第1導電型)のベース層 2 p型(第2導電型)のベース層 3 n型のエミッタ層 4 p型のエミッタ層 5 低抵抗の高濃度n型(n+型)の短絡領域 6 高濃度p型(p+型)のゲートコンタクト領域 7 第1主表面 8 第2主表面 9 ドナー化した拡散酸素を含むn型の層 10 ドナー化したプロトンの存在領域(低抵抗領域)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1導電型のエミッタ層、第2導電型の
    ベース層、第1導電型のベース層、第2導電型のエミッ
    タ層の順に積層された4層構造を有し、前記4層構造の
    両面がそれぞれ第1及び第2主表面となる半導体基体を
    備え、前記半導体基体の第1主表面側は、第1導電型の
    エミッタ層が互いに分離された複数の短冊形のもので構
    成され、これら分離された複数の第1導電型のエミッタ
    層の間に第2導電型のベース層が露出形成され、前記半
    導体基体の第2主表面側は、第2導電型のエミッタ層
    と、第1導電型のベース層まで達し、第1導電型のベー
    ス層よりも低抵抗の第1導電型の短絡領域とが交互に露
    出形成されており、前記第2導電型のエミッタ層の厚さ
    は、10μm乃至30μmの範囲内であって、第1導電
    型のベース層の形成時に生成される酸素の拡散領域の厚
    さの1/3以上、かつ、前記酸素の拡散領域の厚さを超
    えない範囲内にあり、前記低抵抗の短絡領域の厚さは、
    前記第2導電型のエミッタ層の厚さよりも20μm以上
    厚くなるように構成したことを特徴とする自己消去機能
    を有する半導体装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の自己消去機能を有する半
    導体装置において、半導体基体の第1主表面側から重荷
    電粒子の打ち込みを行い、この打ち込みによって形成さ
    れた重荷電粒子の分布領域の最深部が、第1導電型の短
    絡領域の厚さよりも浅く、かつ、第2導電型のエミッタ
    層の厚さよりも深いところにあることを特徴とする自己
    消去機能を有する半導体装置。
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