JP2950081B2 - 製紙機械の硬質ロール用ドクターブレード - Google Patents

製紙機械の硬質ロール用ドクターブレード

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JP2950081B2
JP2950081B2 JP3908593A JP3908593A JP2950081B2 JP 2950081 B2 JP2950081 B2 JP 2950081B2 JP 3908593 A JP3908593 A JP 3908593A JP 3908593 A JP3908593 A JP 3908593A JP 2950081 B2 JP2950081 B2 JP 2950081B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、製紙機械においてゴム
ロールと硬質ロールとによりフェルトを介して湿紙を加
圧・脱水し、入口水分濃度約80%から出口水分濃度約
60%とするいわゆるプレスパートにおける硬質ロール
に付着する紙の残滓やピッチを除去するために使用する
ドクターブレードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】製紙機械のプレスパートでは、ワイヤー
パートから連続的に供給されてくる湿紙を搾水するだけ
でなく、紙面を平滑にするといった重要な機能を担って
いる。そして、プレスパートの形式によって、ストレー
トスルー、ハーフツィンバー、ツィンバー、トライニッ
プ、トランスファーツィンバー、バイニップ、コンパク
ト等、プレス方式に色々あるが、いずれの形式のプレス
であっても硬質ロールが重要な役割を果たしている。す
なわち、プレス用の硬質ロールは、既に述べたように、
直接湿紙と接触、加圧して、湿紙からの搾水及び湿紙へ
の平滑性の付与のみならず、搾水された後の湿紙が硬質
ロールより容易に剥離する性質を要求されている。その
ため、古くは天然の花崗岩から、また、近年では大型花
崗岩の枯渇から代替品としての人造硬質ロール、例え
ば、硬質合成ゴムに雲母、長石、珪石などを配合したも
のから溶射技術を利用して作製したセラミック溶射被膜
に合成樹脂やワックスを配したもの等が使用されてい
る。これらの硬質ロールは、先に述べたように湿紙と直
接接触するために、湿紙に由来する紙の残滓(紙かす)
やピッチがその表面に付着し、抄造中の紙に極めて悪影
響を与えるために、これらを除去する目的でドクターブ
レードが適用されている。硬質ロールに使用されるドク
ターブレードは、ロールを損傷させないということで早
くから耐蝕性のステンレススチールが利用されている
が、調質して耐磨耗性を改善できるSUS420や44
0を使用することが多い。寸法的には抄紙機によって抄
造する紙幅が異なるので、ブレード長は、当該抄紙機の
有効横幅となるが、板厚は、1.0mm〜1.5mm、
板幅については、65〜85mmの範囲のものが利用さ
れている。また、硬質ロールと接触する先端部分は、紙
の残滓やピッチを削ぎ落としやすいように、一定の角度
を付するのが一般的である。しかるに、ステンレススチ
ールを調質しても硬さHv500〜550程度で、抄紙
(造)速度や押付け荷重(ブレード線圧)によっても異
なるが、連続使用において、ほぼ次のような寿命が一般
的である。
【0003】 すなわち、速度の早いほど短寿命となっているが、平均
的に見れば2週間程度でドクターブレードとしての異物
除去能力(ドクター効果)を喪失して交換を余儀なくさ
れており、経済的に見ても高価なステンレススチールを
頻繁に破棄するため、はなはだ不経済ではあるが、代替
品が無いこともあって今日に至ってもなお使用し続けら
れているのが実状である。また、抄紙機の運転速度は、
今後共に益々早くなると予想され、それに伴って、ドク
ターブレードの交換は益々頻繁に実施されることにな
る。
【0004】なお、製紙機械の抄紙機で抄造された塗工
原紙への塗工用ブレードにおいて、表面がクロム被覆さ
れたブレードを使用して好成績を挙げた事例は、当社が
特願平1−199597号として既に公開している。し
かしながら、この先願は製紙機械のプレスパートに用い
られる花崗岩よりなる硬質ロールにクロム被覆ブレード
を適用した場合の効果までは教示していない。また、製
紙機械の分野において、合成樹脂ブレードの両面にクロ
ム被覆を施した例が実開平2−53998号に開示され
ている。この実開平2−53998号では、ブレードの
本体が合成樹脂で形成されているために、いかにクロム
めっき被覆されていたとしても、硬質ロール用ドクター
ブレードとして利用する場合の耐久性(寿命)は、クロ
ム被覆とブレード本体の複合効果で決定され、金属とク
ロムめっき被覆の組み合わせによる効果を示唆するもの
ではない。また、合成樹脂とクロムのような金属との接
着強度(密着性)は、樹脂により多少の差異があるにし
ても、金属と金属の組み合わせが示すような密着性が得
られるものではない。まして、実開平2−53998号
のブレードのように、硬質ロールに対して或る程度の荷
重が先端部に掛かる構造のものでは密着性に信頼性が得
られず、剥離を呈することになる。さらに、プラスティ
ックは熱伝導性が悪く、放熱性が期待できないために使
用中に生ずる摩擦熱が蓄積し、クロムめっきした効果を
発揮できないと同時に、本質的に熱膨張係数が10倍以
上異なる組み合わせであるから、先に述べた密着性の問
題と相俟ってより剥離を促進する。ちなみに一般的に汎
用されている合成樹脂・ABS樹脂と金属めっきとの密
着性は、最良の条件で5kg/mm2 までである。これ
に対して、金属と金属の密着性は、本質的にその金属の
有する剪断破壊強度となる。この場合、剪断破壊強度
は、組み合わせた金属のうち、弱い金属のそれとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、製紙機械の
プレスパートにおけるプレス用の硬質ロールに使用され
ている高価なステンレススチール製のドクターブレード
の難点である短寿命を飛躍的に改善し、その結果、ドク
ターブレードの購入費を著しく低減し、その交換の手間
を著しく省ける新規なクロム被覆ドクターブレードを提
供しようとするものである。
【0006】抄紙機のプレスパートに配置されているプ
レスは、抄造される紙種や抄造速度によって変化する
が、代表的なプレス型式の1つであるトライニッププレ
スでの硬質ロールの配置を図2に示す。図2において
は、3本の硬質ロール1a,1b,1cが取り付けら
れ、それぞれ有害な紙かすやピッチを除去するためにド
クターブレード3が当てられるような構造になってい
る。また、プレスの機構を部分拡大したものが図1であ
り、ブレードホルダー4に装着されたドクターブレード
3は、ドクターブレードの刃先方向に向かって矢印Rで
示す方向に回転する硬質ロール1の表面を左右に摺動し
ながら一定線圧で擦っている。一方、ワイヤーパートよ
り供給される湿紙2は、プレスの入口側でフェルト5に
抱かれ、硬質ロール1とゴム被覆ロールあるいはウレタ
ン被覆ロール6の組み合わせからなるプレスで搾水され
るが、湿紙2は硬質ロール1と直接接触しているため
に、当然のこととして紙かす、ピッチ等で汚染されるの
で、ドクターブレード3がそれらを連続的に除去してい
るのである。
【0007】プレスパートに使用されている硬質ロール
は、花崗岩(御影石)、長石、珪石、その他、セラミッ
ク等の比較的硬度の高い材料で構成されていて、例え
ば、天然花崗岩からなる通称グラニットロールの硬さ
は、ビッカース硬度換算で400〜700の範囲にあ
り、硬度の高い部分と比較的低い部分が共存している状
態である。また、人造石のロール(人造硬質ロール)の
1つとしての例えばストナイトロール(米国ストウ・ウ
ッドワード社の商品名)の硬さは、ビッカース硬度30
0程度であるが、花崗岩等の微破砕片を混入されている
ために、部分的にはグラニットに近い硬さを示す部分が
無数に点在する複合材料である。したがって、これらの
ロールの表面を損傷することなく、異物除去性(ドクタ
ー効果)があって、適度な押し付け圧に耐え得る靱性や
バネ性を有し、尚且つ磨減し難い(長寿命)材料を発見
でき、また、それを安価に提供できれば、従来からの問
題点を一挙に解決できる。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく合成樹脂(プラスティック)及びその繊
維強化樹脂、金属材料、金属材料に当該金属とは異なっ
た金属やセラミックス等を被覆したものなどの磨耗特性
とドクター効果を実地に比較検討することから試験を開
始した。
【0009】まず、ブレード性を選別するために、実際
に直径が360mmで有効面長が500mm長さの花崗
岩製の硬質ロールと、この花崗岩製のロールと全く同一
寸法の人造硬質ロール(西武ポリマー化成製のミラクル
ロック)を用意し、当ロールに当てるための各種の材料
からなるブレードを製作して、これらを実際に摺動させ
て、それぞれの硬質ロールへの損傷程度、ドクター性、
ブレードの磨耗重量あるいは磨耗体積による耐磨耗性等
を調査した。当初はロール表面の損傷を考慮し、紙基材
強化フェノール樹脂、布基材強化フェノール樹脂、ガラ
ス繊維基材強化エポキシ樹脂、ガラス基材強化フッ素樹
脂(テフロン)、超高分子量ポリエチレンなどプラステ
ィック材料をベースとしたブレードを試みたが、いずれ
もそれぞれの硬質ロールに対して擦り傷も付かない代わ
りにブレードの磨耗損傷が大きく、且つブレード自体の
磨耗粉そのものの塞き止め除去効果、つまりドクター効
果すら示さないことが分かり、有機材料(プラスティッ
ク)をベースとしたものは当硬質ロールのドクターブレ
ード材料として、適切ではないと判断された。その理由
は、入口水分濃度約80%の湿紙を最終的に約20%除
去して、約60%程度の湿紙とするために硬質ロールで
もって搾水しているので、常時適度に水潤滑されて冷却
されている筈ではあるが、分速500m以上に及ぶ高い
周速度で回転し、且つ一定の押付け圧でもって常時加圧
されているブレード先端への摩擦熱の影響が無視できな
い程度に大きく、耐熱的に限界のある有機材料(プラス
ティック)をベースとしたものでは、使用に耐え得ない
ことにある。
【0010】以上のような背景のもとに、ドクターブレ
ード材を耐熱性が高く、耐磨耗性に優れると考えられる
無機質材料、つまり金属及び金属の酸化物、窒化物、炭
化物、ホウ化物に求めることとし、検討を重ねた結果、
ブレードとしてのバネ性や靱性を持たせるには、従来通
りのバネ性や靱性を持った材料、すなわちJIS−G−
4401に示される炭素工具鋼やバネ性を有するベリリ
ウム銅材やリン青銅材それに現用のブレード材であるS
US440やSUS420材等をバックアップに使用
し、その表面に選択した材料を表面被覆するのが最も合
理的であることが分かった。なお、リン青銅やベリリウ
ム銅等は、SUS440や420、あるいは、炭素工具
鋼、すなわちSK−4,5と比べると、材料としての耐
力が小さく、近年の製紙機械の大型化によってクラウン
量を大きくする必要のある硬質ロールには、ブレードを
ロールに沿わせるために高い線圧を必要とするので、耐
力の小さなリン青銅やベリリウム銅の場合には、小耐力
を補うために板厚を厚くする必要があり、その分だけブ
レードとしての異物除去機能を消失するだけでなく、ま
た、経済的観点からも好ましいものではない。
【0011】したがって、上記無機材質を被覆するため
のバックアップ材(ベース材料)としては、実質的に炭
素工具鋼やSUS420、SUS440等に限定される
ことになるが、炭素工具鋼は絶えず高湿度ないし注水雰
囲気の環境下で使用するには、発錆した赤錆が硬質ロー
ル上に落下し、それを汚染する問題があって、そのため
の防錆処置が必要となるため煩雑で、経済的にも高価な
ものとなるので、結果的にはSUS420、440の利
用が好ましい。
【0012】無機質材料を被覆する方法として、プラズ
マ溶射、ガス溶射等の溶射技術、電気めっき、無電解め
っき等のめっき技術が利用できるので、まず、溶射技術
を利用してニッケル・クロム系合金、トリバロイと称す
るクロム・ニッケル・モリブデン・コバルト等の合金、
炭化物としてタングステンカーバイトとニッケルやコバ
ルトとの複合材料、クロムカーバイトとニッケル・クロ
ム合金の複合材料、酸化物としてアルミナ、アルミナと
チタニアの混合材料、酸化クロム、ジルコニア・イット
リア、ジルコニア・マグネシア、チタニア等を試みた
が、溶射によって形成した合金被膜は、硬さがバックア
ップ材料のSUS420、440とさほど違わないビッ
カース500〜650程度で寿命延長効果は認められな
い。酸化物の場合は、硬さがビッカース700〜900
と硬いものの、これらを被覆したブレードを加圧して行
くと、花崗岩製の硬質ロールと成分的に近似しているせ
いか凝着しやすく、ロール表面を損傷してしまい、ま
た、人造硬質ロールでは、凝着現象は見られないもの
の、ロール表面の損傷が大きく使用に耐え得ないことが
分かった。炭化物と金属との複合材料の場合にも、金属
の酸化物を溶射加工したほどではないものの、同じくロ
ール表面への損傷が大きく使用に適さない。そして、め
っき技術では、ニッケル・鉄合金、ニッケル・コバルト
合金、ニッケル・リン合金、ニッケル・ホウ素合金、ク
ロム等を試みたが、クロムを除いて、いずれの硬質ロー
ルにも損傷は与えない代わりに寿命延長効果は示さない
ことが分かった。また、めっき金属被膜をマトリックス
とし、アルミナ、シリコンカーバイト、シリカ、チタニ
ア、クロムカーバイト、酸化クロム等の微粉末を分散共
析させた粒子分散めっき被膜も耐久性が得られないか、
あるいは硬質ロールへの損傷が大きく、使用に適さない
こと等が判明した。したがって、めっきによるクロム被
覆のみが天然の花崗岩製硬質ロールや人造硬質ロールに
対して寿命延長効果と同時にビッカース硬度850〜1
200と極めて高硬度であるにも拘わらず、ロール表面
に何らの損傷も与えないことを見いだした。クロム被覆
したSUS材の硬質ロールに対する効果を実験結果をも
とにさらに詳細に説明する。
【0013】クロム被覆ブレードの耐久性 先端角度45度、板厚1.2mm、板幅75mm、長さ
100mmのSUS420、440製のテストブレード
を準備し、それぞれ2種類のSUS素材に対してクロム
被覆を図8(a)のように表裏両面に施し、その被覆範
囲は先端より20mm迄とした。被覆厚みは、比較用と
しての未被覆のものも含め、10,20,30,50,
80μmの6種類とした。硬質ロールとしては、先に述
べた直径360mm、有効面長500mmの天然花崗岩
製のロールとそれに人造硬質ロールとして、ミラクルロ
ック(西武ポリマー化成製人造硬質ロール)を相手材と
して、連続4時間、連続摺動摩擦させ、ドクター効果、
耐久性(磨耗量)、ロールの表面損傷程度等を調査し
た。また、硬質ロールに押し当てるブレード線圧は、一
般的に90〜270g/cmの範囲が利用されているが
過酷な試験条件とするために、300及び350g/c
mの2種類の線圧を採用した。結果を表1に示す。同表
には、ドクター効果やロールに与える損傷を記載してい
ないが、当試験のように比較的短時間の試験では、ドク
ター性に変化は認められない。また、ロールへの損傷も
発生していない。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】また、表1の結果に辿り着く迄に、実際よ
りもより過酷な条件となるように、完全に水分の無いド
ライの状態で比較磨耗試験を実施したところ、表2のよ
うな試験結果も現れ、結局のところSUS440にしろ
420にしろ、クロム被覆すると、乾燥状態での磨耗量
は、クロム被覆しないSUS440やSUS420の方
が良いという現象が出ている。表2の試験の最中には、
クロムを被覆したSUSブレードは、盛んにロールとの
接触面から火花を発生していたが、SUSのみのブレー
ドでは、これが見られない。詰まるところ、クロムと花
崗岩、クロムと人造硬質ロールの組み合わせは、摩擦係
数が大きいがための磨耗による発熱が大きく、クロムめ
っきそのものの軟化温度である400℃を越える温度が
クロムに付与されるために磨耗が著しくなったと考えら
れる。実際の抄紙機(製紙機械)のプレスパートでは、
当試験のように完全な乾燥状態になる筈も無いと考えら
れたために、意図的に少量の水を滴下しながら同様な試
験を実施した結果が、表1の結果である。この場合、花
崗岩製硬質ロールは、比較的多孔質で親水性のあること
がクロム被覆ブレードに有効に作用し、クロムの冷却と
摩擦係数の低減に大いに役立っていると考えられる。こ
のことは、人造硬質ロールの場合にも言えることで、人
造硬質ロールのそもそもの起源が、有限の算出量しか望
めない高価な天然の花崗岩に代わり得るものとして研究
された結果として出来たもので、当然、表面性状は極め
て花崗岩に近いものとなっている。したがって、当発明
の硬質ロール用のドクターブレードは、湿度が比較的高
く、且つ親水性の表面を持った硬質ロール表面において
のみ有効に作用し得ることを発見したことによって成立
しているといって良い。さらに、硬質ロールに対して硬
いクロムを押し当てても傷等が付き難いのは、やはり上
述のことに関連がある。
【0017】以上のごとく、従来、使用されているブレ
ード材そのものをそのままバックアップとして利用し、
その表面にクロムを被覆すると、従来品の2倍以上にも
寿命(耐久性)延長効果がある。クロムを被覆するため
に使用するめっき液は、サージェント浴、フッ化浴、ケ
イフッ化浴等従来から使用されている既存のものをその
まま利用できるので、何ら特別な装置や薬液等を必要と
せず、この点からも極めて安価にクロムを被覆できる。
クロムを被覆する範囲は、硬質ロールと接触する先端部
分を起点に、表裏を問わず50mm迄の範囲、より好ま
しくは、20mm迄でよい。すなわち、硬質ロールに使
用されるドクターブレードは比較的線圧が高く、加圧力
の一端をブレード材自体のバネ性に依存しているため、
磨耗によりブレード長が極端に短くなると、不都合をき
たすためである。また、クロム被覆厚みは、5μm以上
で500μm迄、好ましくは、10〜100μmであ
る。被覆厚みが薄いと、表1の結果からも明らかなよう
に、期待される効果が得られない。また、30μmを越
えると、その効果がほぼ一定に達してしまうと同時に不
経済でもある。条件を選んでクロム被覆すると、平滑な
被膜とすることができるので、被覆後に研磨するなど特
別な後加工も不要である。
【0018】図8は、本発明のクロム被覆ブレードの被
覆形態を例示したものである。このように、本発明で
は、ブレードの硬質ロールとの接触部先端より表裏とも
にクロム被覆が施されており、この構造がブレードの寿
命延長に寄与している。つまり、使用により、或る程度
磨耗した状態を想定すると、図7に示すように、硬く変
形し難いクロムがブレード両面の7a,7bに存在する
がために、ドクター効果が何時までも持続するのであっ
て、仮に7bの部分が無いと矢印の部分が急速に磨耗変
形し、ドクター効果が低下する。これを補うために、今
度は、ブレードの硬質ロールへの押し付け圧力を増加す
るようになるので、その影響は7aの部分に及び短寿命
となることは避け難い。そこで、ドクター効果を長期に
わたって持続させるために、ブレード3の表裏両面にク
ロム被覆7a,7bを施している。
【0019】また、ドクターブレードに被覆するクロム
厚は、当該ブレードの全長にわたって多数点測定した時
の厚みの精度が標準偏差値で表した場合に、10μm以
下望ましくは6μm以下になるように精度対策を施して
いる。その理由は、第1に、ドクターブレードが、ドク
ター効果(異物除去能力)を示すためには、ドクターブ
レードを押し当てている硬質ロールの表面に完全に適合
(添う)しなければならないといった制約がある。この
ためには、理想的には、目的厚みに対して偏差値が小さ
い方が望ましい。特に、クロムのように硬く磨減し難い
ものにあっては、相手材となる硬質ロール表面に馴染み
難いために、精度対策をおろそかにすると、ドクター効
果を示すのに長時間掛かり過ぎてドクターブレードとし
て意味をなさなくなる。第2に、局部的に上述した偏差
値以上の箇所があると、ドクター効果以外に高価な硬質
ロール表面を局部磨耗させる弊害だけでなく、ひいて
は、この「傷」の部分に紙残滓が堆積するようになるた
めに、抄造紙に悪影響を及ぼすようになる。これは、硬
質ロールの機能が湿紙の搾水と搾水された紙の表面に平
滑性を与える重要な機能を担っているがためである。
【0020】
【作用】図3は、従来の未使用SUS440ブレードを
硬質ロールに押し当てた状態を示している。また、図4
は、交換の近い従来ブレードの磨耗状態を示している。
図中、矢印Pはブレード3に荷重の加わる方向、矢印R
は硬質ロール1の回転方向を示している。ほぼ正常に機
能しているブレードの交換前の磨耗状態は、先端から2
〜3mm程度磨減しているのが一般的で、交換理由はド
クター効果の喪失が最も多い。つまり、硬質ロール表面
に付着する紙残滓、ピッチを除去しているうちにブレー
ドのロールとの接触面が不均一磨耗するためにドクター
効果を喪失してしまうことによる。近年、資源の再利用
のため古紙の混合率が増加し、ピッチと一括表現される
異物の付着量が増し、一層ブレードの交換頻度が早まる
傾向にある。図5は、未使用の本発明のブレードを硬質
ロールに押し当てた状態を示している。また、図6は、
交換の近い本発明のブレードの磨耗状態を示している。
運転に伴って磨減して行くのは従来のブレードと変わる
ところがないが、潤滑性に富み、耐磨耗性のあるクロム
で被覆されているために、その速度は極めて緩慢であ
り、また、高硬度であるため、ブレード先端が塑性変形
し難いこともあって、ドクター効果が長時間にわたって
持続するので、クロム被覆厚みを適正に選定すると、従
来品の3倍以上の長寿命を示す。
【0021】
【実施例】運転速度960m/分、面長4120mmの
花崗岩製の硬質ロールに対して、板幅75mm、長さ4
120mm、板厚1.2mm、刃先角度60度のSUS
440製のドクターブレードの先端から20mmの範囲
に、図8(c)の状態にクロムを40μm被覆し、線圧
235g/cmで適用した。その結果、従来品は、平均
的に約8日間で交換していたものが、本発明のブレード
では、31日間使用できた。
【0022】運転速度960m/分、面長4120mm
の人造硬質ロール(ミラクルロック)に対して、板幅7
5mm、長さ4120mm、板厚1.2mm、刃先角度
60度のSUS420製ブレードの先端から20mmの
範囲に、同じく図8(a)の状態にクロムを40μm被
覆した。線圧235g/cmで使用したところ、39日
間の使用に耐えた。従来品の平均寿命は、約12日間で
ある。
【0023】
【発明の効果】以上詳述したように、従来からのSUS
420、440製ドクターブレードの先端部分の表裏両
面に、精度良くクロムを被覆すると、長時間の使用に耐
えるブレードを安価に提供できるだけでなく、耐磨耗性
がクロムで保持されるため、ドクターブレード材を価格
の高いSUS440から経済的なSUS420に転換で
きる。また、近年の古紙利用率の増大によるピッチトラ
ブルの増加や、製紙機械の大型化、長大化、高速度化と
相俟って、プレスパートの硬質ロールの長大化、高重量
化によってロールクラウン量が増加し、これに適用され
るドクターブレードの押し付け圧力が増加して、ドクタ
ーブレードの消耗量が激増する傾向にあることから見
て、本発明のクロム被覆ブレードによる長寿命化は極め
て有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブレードの使用状態を示す説明図であ
る。
【図2】本発明のブレードの使用箇所を示す説明図であ
る。
【図3】従来の未使用ブレードの適用状態を示す説明図
である。
【図4】従来の交換前ブレードの適用状態を示す説明図
である。
【図5】本発明の未使用ブレードの適用状態を示す説明
図である。
【図6】本発明の交換前ブレードの適用状態を示す説明
図である。
【図7】本発明の交換前ブレードの磨減状態を示す説明
図である。
【図8】本発明のブレードのクロム被覆形態を示す断面
図である。
【符号の説明】
1 硬質ロール 2 湿紙 3 ドクターブレード
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高岸 久和 大阪府大阪市西淀川区姫島5丁目12番20 号 ノムラテクノリサーチ株式会社内 (72)発明者 池田 篤美 大阪府大阪市西淀川区姫島5丁目12番20 号 ノムラテクノリサーチ株式会社内 (56)参考文献 実開 昭61−82997(JP,U) 実開 平3−2000(JP,U) 実開 平1−173199(JP,U) 実公 昭49−8946(JP,Y1) 特表 昭62−503085(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D21G 3/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 天然の花崗岩よりなり、表面が水分を
    含んだ状態で使用される製紙機械用の硬質ロールに適用
    されるドクターブレードであって、耐蝕性のステンレス
    鋼よりなるブレード本体における硬質ロールとの接触部
    先端から表裏ともに少なくとも0.5mm〜50mmの
    範囲がクロム被覆されており、前記クロム被覆の厚みが
    5μm以上500μm以下であり、且つブレードの全長
    にわたってクロム被覆の厚みの精度が標準偏差値で10
    μm以下であることを特徴とする製紙機械の硬質ロール
    用ドクターブレード。
  2. 【請求項2】 前記硬質ロールの材質が、天然の花崗
    岩に代えて、人工的に造られたセラミック、又はセラミ
    ックの微粉末と合成樹脂もしくは合成ゴムを組み合わせ
    た複合材料、又は花崗岩のような天然石材の微粉末と合
    成樹脂もしくは合成ゴムとを組み合わせた複合材料であ
    ることを特徴とする請求項1記載の製紙機械の硬質ロー
    ル用ドクターブレード。
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