JP2949994B2 - 内燃機関の出力トルク測定装置 - Google Patents

内燃機関の出力トルク測定装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は内燃機関の出力トルク測
定装置に係り、特に圧力検出部で検出された燃焼圧信号
から、内燃機関の出力トルクを測定する、内燃機関の出
力トルク測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より内燃機関の筒内に圧力センサを
設け、筒内圧を電圧信号として検出し、検出された信号
に基づいて機関の出力トルクを算出する内燃機関の出力
トルク測定装置が知られている(特開昭63−6112
9号公報)。
【0003】一般に機関において、あるクランク角にお
ける瞬時トルクTは、そのクランク角における筒内圧力
Pと、筒内圧力Pの出力トルクに対する有効成分係数K
の乗算により求める事ができる。ここで、有効成分係数
Kは、クランクの腕の長さr,連接棒の長さl,クラン
ク角度θにより、 K=r(sin θ+r/2lsin 2θ) として、クランク角θに対し一義的に決まるが、筒内圧
Pは、点火時期の変動により、クランク角度に対して一
義的に決まらない。
【0004】そこで上記の従来装置では、クランク角度
検出信号に基づき、図10に示す如く、クランク角度が
BTDC160 ℃A(上死点前160 °),ATDC5℃A
(上死点後5°),ATDC20℃A,ATDC35℃
A,及びATDC50℃Aの夫々のタイミングで、その
時の燃焼圧信号をサンプリングし、積算することによ
り、図示トルクを算出する。
【0005】図10においてクランク角度がBTDC16
0 ℃Aのときの燃焼圧信号VCP0 は、燃焼圧センサの温
度変化による出力ドリフト、オフセット電圧のばらつき
等を無視するために、他のクランク角度位置での燃焼圧
信号の基準値とするものである。クランク角度がATD
C5℃A,20℃A,35℃A,50℃Aの夫々の時の
燃焼圧信号は図8にVCP1 ,VCP2 ,VCP3 ,VCP4
示され図示トルクPTRQは次式で表わされる。
【0006】PTRQ=1/2 (VCP1 −VCP0 )+2
(VCP2 −VCP0 )+3(VCP3 −V CP0 )+4(V
CP4 −VCP0
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の内燃機関の
出力トルク測定装置では、瞬時トルクの積算により、P
TRQを算出するため点火時期の変動等の影響を受けな
い出力トルク代用特性を求めることができる反面、瞬時
トルクに誤差があると、この誤差項も積算してしまう構
成であった。
【0008】燃焼圧センサのオフセット電圧がドリフト
する場合、クランク角度がBTDC160 ℃AからATD
C5℃A,20℃A,35℃A,50℃Aまで達するの
に要する時間をt1 ,t2 ,t3 ,t4 ,その時のドリ
フト電圧を夫々v(t1 ),v(t2 ),v(t3 ),
v(t4 )とすると、PTRQに内包される誤差Ptr q
は次式により表わされる。
【0009】Ptrq =1/2 v(t1 )+2v(t2 )+
3v(t3 )+4v(t4 ) 一方、燃焼圧センサのオフセット電圧のドリフトは、通
常、温度変化により、微小時間内では一般に時間経過と
共に増大し、次式の関係を有しており、積算誤差を一層
増大させている。
【0010】 v(t1 )<v(t2 )<v(t3 )<v(t4 ) このため、この装置が燃焼圧センサのオフセット電圧の
ドリフトによらず精度良く出力トルクの検出を行なうた
めには、温度変化により発生するこのドリフト成分を遮
断する必要がある。このドリフト成分は通常温度変化に
伴うため低周波であるから、一般にはハイパスフィルタ
を用いるが、このハイパスフィルタのカットオフ周波数
が高すぎると、筒内燃焼圧の変化により発生する電圧信
号を減衰させてしまい、又逆に低すぎると不要低周波成
分を遮断できない。
【0011】そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされ
たものでカットオフ周波数を適正値に選定したフィルタ
回路を設ける事により、算出される出力トルクの測定精
度を向上させた、内燃機関の出力トルク測定装置を提供
することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、図1に示す如く内燃機関の筒内信号を電気
信号に変換する圧力検出手段1と、前記圧力検出手段1
の出力電気信号の不要低周波成分を遮断する、フィルタ
回路2と、前記フィルタ回路2の出力電気信号を基に、
前記内燃機関の出力トルクを算出する演算手段3とから
成り、前記フィルタ回路の低周波成分遮断用カットオフ
周波数fC を 0.12×f0 ≧fC ≧(1/(2πe))・ΔV/ΔT (f0 :内燃機関の出力トルク測定を行なう最低機関回
転数における筒内爆発周波数 e:演算手段3の信号検出精度 ΔV:使用温度領域中の異なる温度tA ,tB における
不要成分遮断回路2入力部の電位差 ΔT:圧力検出手段1がtA からtB に達する最短時
間) に設定した構成である。
【0013】
【作用】前記圧力検出手段1で検出される燃焼圧信号
は、機関の爆発工程と同期しており、筒内爆発と同じ周
波数信号を最も強く発生している。
【0014】このため、前記カットオフ周波数fC の上
限条件は、この周波数の信号を減衰させない事が要求さ
れ、筒内爆発周波数F0 に対して、およそ0.12×F0
Cであれば演算手段3における算出結果に影響がない
事が実験的に求められた。
【0015】又前記f0 は、内燃機関の出力トルク測定
を行なう最低機関回転数における筒内爆発周波数である
から、 0.12×f0 ≧fC を満たす前記カットオフ周波数fC であれば全ての回転
域において要求を満たす事ができる。
【0016】前記圧力検出手段1のオフセット電圧は、
一般に温度に対してほぼ比例関係にあるため、使用温度
領域における異なる温度tA ,tB における前記フィル
タ回路2入力部の電位差を前記ΔVとし、前記圧力検出
部1がtA からtB に達する最短時間を前記ΔTとする
と、ΔV/ΔTで使用温度領域におけるオフセット電圧
の最大変化率が求まる。
【0017】前記カットオフ周波数fC の下限条件は前
記圧力検出手段1の出力が、ΔV/ΔTで表わされる最
大変化率を示した場合に前記フィルタ回路2の出力段に
生じる変動が前記演算手段3の信号検出精度e以下とな
る条件であるから、 fC ≧(1/(2πe))(ΔV/ΔT) の条件を満たす場合、オフセット電圧のドリフト電圧は
無視できる。
【0018】
【実施例】図2は本発明装置の一実施例の回路構成図を
示す。図中4は半導体式圧力センサで、圧力検出手段1
に相当する。半導体式圧力センサ4は、シリコンダイア
フラム上にブリッジ構造に形成されたピエゾ抵抗4a,
4b,4c,4dよりなりピエゾ抵抗4a,4cの接続
部は駆動電源ライン8に結線され、ピエゾ抵抗4b,4
dの接続部は、グランドライン9に結線されている。
【0019】又、ピエゾ抵抗4a,4bの接続部とピエ
ゾ抵抗4c,4dの接続部は、増幅回路5の各入力端子
に結線されている。ここで増幅回路5はDCアンプを用
いると、図3に示す如く半導体式圧力センサ4から出力
されるオフセット電圧が大きく、その変動を補正しきれ
ないため、ACアンプを用い、図4に示す如く動作点を
設定してオフセット電圧をある程度無視できる構成とし
ている。
【0020】増幅回路5の出力端子は、キャパシタ6a
に結線され、キャパシタ6aの他端は、抵抗6bと結線
されると共に信号ライン10に結線され、前記演算手段
3に相当する演算部7に入力される。又抵抗6bの他端
はグランドライン9と結線されており、キャパシタ6a
と共に前記フィルタ回路2に相当するハイパスフィルタ
6を構成している。
【0021】外部から半導体式圧力センサ4に圧力が加
わると、シリコンダイアフラムが変形し、ピエゾ抵抗4
a,4b,4c,4dの抵抗値が変化する。これらのピ
エゾ抵抗はピエゾ抵抗4a,4cの接続部と、ピエゾ抵
抗4b,4dの接続部に定電圧が加えられているため、
抵抗値変化により、ピエゾ抵抗4a,4bの接続部と、
ピエゾ抵抗4c,4dの接続部に電位差が生じ、増幅回
路5の入力端子間に電位差が生じる。
【0022】増幅回路5の入力端子間には、半導体式圧
力センサ4のオフセット電圧のドリフトによる低周波ノ
イズも入力され、これらが重畳されたまま増幅される。
ハイパスフィルタ6はこの低周波ノイズを遮断し、燃焼
圧信号だけを演算部7に出力している。
【0023】本実施例では半導体式圧力センサ4と増幅
回路5と、ハイパスフィルタ6が一体となった燃焼圧セ
ンサ11を使用している。図5は、燃焼圧センサ11の
一実施例の構成断面図を示す。
【0024】燃焼圧センサ11は、同図に示すように、
ハウジング12の細径部周囲に設けられたネジ部12a
で、圧力検出面13が筒内に位置する様に機関本体と螺
着される。圧力検出面13は、圧力伝達部材14,15
を介して半導体式圧力センサ4に圧接され、筒内燃焼圧
が効率よく半導体式圧力センサ4に伝達される。
【0025】半導体式圧力センサ4はハウジング12内
部で、リード線16を介し、増幅回路5とハイパスフィ
ルタ6を同一の基板上に構成する増幅フィルタ基板17
と結線され、増幅フィルタ基板17は出力端子18にお
いて、外部出力端子19と接合されており、この端子か
ら、ワイヤーケーブル等により、演算部7に結線され
る。
【0026】この燃焼圧センサ11は、圧力の伝達効率
を確保するため、半導体式圧力センサ4を、圧力伝達部
材14,15及び圧力検出面13との圧接力で保持して
いるため、これらの部材の熱膨張又は熱収縮により、そ
の保持力が変化し、これによりオフセット電圧のシフト
が生じる。
【0027】本実施例に係る回路構成において、キャパ
シタ6aの静電容量をC,抵抗6bの抵抗値をRとし
て、ある温度tA とtB における増幅回路5の出力電位
差がΔV,半導体式圧力センサ4の温度がtA からtB
に変化する最短時間がΔTであるとすると、キャパシタ
6aに流れ込む電流iは、 i=C・ΔV/ΔT となり、ハイパスフィルタ6の出力VOUT には、 VOUT =R・C・ΔV/ΔT の電圧が生じる。
【0028】R・Cの値はこの電圧が演算部7の検出精
度Eより小さくなるため VOUT =R・C・ΔV/ΔT≦E の条件に拘束されており、ハイパスフィルタ6のカット
オフ周波数fC の条件は、 fC ≧1/(2π・R・C)=(1/(2πE))・Δ
V/ΔT の如く表わされる。
【0029】本実施例に係る装置では、E=0.01〔V〕
であり、又、tA =−30℃,tB=120 ℃の時、ΔV
=1.2 〔V〕,ΔT=100 〔sec 〕であるため、カット
オフ周波数fC の下限条件は、 fC ≧0.20〔Hz〕 により定められる。
【0030】図4は4サイクル式内燃機関における機関
回転数800 〔rpm 〕における筒内燃焼圧スペクトルを示
しており、筒内爆発周波数F0 ((800 /60)/2=6.67
〔Hz〕)でピークを有している。図5は同機関におけ
る機関回転数4000〔rpm 〕における燃焼圧スペクトルを
示し、上記800 〔rpm 〕の場合と同様に筒内爆発周波数
(33.3〔Hz〕)でピークを有し、これより高い領域に
だけ広がる振動スペクトルを有している。
【0031】図示の如く、筒内燃焼圧は、常に機関の筒
内爆発周波数F0 より高い周波数の信号を発生するた
め、機関の出力トルクの測定を行う最低機関回転数にお
ける燃焼圧信号を減衰させる事なく通過させるカットオ
フ周波数fC を用いる事により、全ての回転域において
有効な動作を得る事ができる。
【0032】図8は、本実施例に係る装置において、機
関回転数800 〔rpm 〕とし、カットオフ周波数fC を変
化させ、前記算出方法によりPTRQを計算した結果を
示している。同図に示す如く、カットオフ周波数が0.83
〔Hz〕を超えるとPTRQは減衰を示す事から本実施
例におけるカットオフ周波数は、0.83〔Hz〕以下が望
ましい。
【0033】この時、ハイパスフィルタ6の筒内爆発周
波数F0 に対するゲインλは、カットオフ周波数fC
対して、 λ=√(1+(fC /F0 2 )×100 =99.2〔%〕 となり、筒内爆発周波数F0 に対し、ハイパスフィルタ
6のゲインλを、 λ≧99.2〔%〕 に設定する事が、要求を満たす条件となる。
【0034】これより、カットオフ周波数fC の上限条
件は、 0.124437×F0 ≧fC の如く表わされ、トルク測定を行なう最低機関回転数に
おける筒内爆発周波数をf0 とすると、上記条件は近似
的に、 0.12×f0 ≧fC の如く表わされる。
【0035】本実施例においては、機関回転数800 〔rp
m 〕以上の領域でトルク測定を行うためカットオフ周波
数fC の上限条件は、 0.80〔Hz〕≧fC により定められる。
【0036】本実施例に係る装置では、カットオフ周波
数fC は、 0.12×f0 ≧fC ≧(1/(2π・E))・ΔV/ΔT
より、 0.80〔Hz〕≧fC ≧0.20〔Hz〕 に設定されているため、燃焼圧センサ11の温度変化に
よるオフセット電圧のドリフトによる影響を受けず、且
つ、機関回転数800 〔rpm 〕以上の領域において、燃焼
圧信号が減衰される事なく検出できるため、演算部7に
おいて、精度良くPTRQを算出する事が可能となる。
【0037】又、オフセット電圧のドリフトを無視でき
る事から、温度変化に対し測定精度が安定であり特に、
車載用内燃機関等、環境温度が激しく変化し、その環境
全域に渡り高度な測定精度を必要とする場合には、著し
い効果を有している。 尚、本実施例において増幅回路
5は、その高周波特性が悪いと出力に位相遅れを生じる
ため、ある程度高速性を要求される。図9は増幅回路5
をローパスフィルタとして考えた場合のカットオフ周波
数と、出力の位相遅れの関係を示している。図6,図7
に示す燃焼圧スペクトルから燃焼圧測定に有効な周波数
領域は、1〔kHz〕程度以下であると考えられるが、
本実施例に係る装置では、演算速度との兼ね合いからカ
ットオフ周波数を10kHzとして、出力位相遅れを1
6μsecに抑えている。
【0038】
【発明の効果】上述の如く、本発明によれば、内燃機関
の温度変化等に影響されず、安定して高精度な電気信号
を演算手段に出力できるため、内燃機関の出力トルクを
精度よく測定する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の原理構成図である。
【図2】本発明装置の一実施例の回路構成図である。
【図3】半導体式圧力センサの出力特性を表わす図であ
る。
【図4】ACアンプの動作点を示す図である。
【図5】本発明装置に使用する燃焼圧センサの一実施例
の構成断面図である。
【図6】機関回転数800 rpm における内燃機関の筒内燃
焼圧スペクトルである。
【図7】機関回転数4000rpm における内燃機関の筒内燃
焼圧スペクトルである。
【図8】本発明装置の一実施例のハイパスフィルタのカ
ットオフ周波数と、PTRQ計算値との関係を表わすグ
ラフである。
【図9】本発明装置の一実施例のローパスフィルタのカ
ットオフ周波数と、出力位相遅れ時間との関係を表わす
グラフである。
【図10】出力トルクの算出に用いる、クランク角度と
瞬時トルクの関係を表わす図である。
【符号の説明】
1 圧力検出手段 2 フィルタ回路 3 演算手段 4 半導体式圧力センサ 5 増幅回路 6 ハイパスフィルタ 7 演算部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01L 5/00 G01M 15/00 F02P 5/15

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関の筒内圧力を電気信号に変換す
    る圧力検出手段と、 前記圧力検出手段の出力電気信号の不要低周波成分を遮
    断するフィルタ回路と、 前記フィルタ回路の出力電気信号を基に、前記内燃機関
    の出力トルクを算出する演算手段とから成り、 前記フィルタ回路の低周波成分遮断用カットオフ周波数
    C を、 0.12×f0 ≧fC ≧(1/(2πe))・(ΔV/Δ
    T) (f0 :内燃機関の出力トルク測定を行なう最低機関回
    転数における筒内爆発周波数 e:演算手段の振動検出精度 ΔV:使用温度領域中の異なる温度tA ,tB における
    不要成分遮断回路入力部の電位差 ΔT:圧力検出手段がtA からtB に達する最短時間) に設定したことを特徴とする内燃機関の出力トルク測定
    装置。
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