JP2942081B2 - 3次元物体造形装置 - Google Patents

3次元物体造形装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、3次元物体を造形す
る装置に関し、特に、少量の液剤を固化させつつ物体を
造形する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】少量の液剤を固化させつつ物体を造形す
る装置としては、特開平4−59231号公報に記載さ
れたものが知られている。この装置では、紫外線硬化型
樹脂をスポット的に供給し、その供給位置に紫外線レー
ザを照射して樹脂を硬化させることによって物体を造形
する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
装置では、硬化した樹脂の上にスポット的に次の樹脂を
供給して硬化しても、吐出時間がかかるために硬化した
樹脂のラジカル重合が弱くなる。すなわち、樹脂同士の
接着力が弱く、製作された物体が壊れやすいという問題
があった。
【0004】この発明は、従来技術における上述の課題
を解決するためになされたものであり、少量の液剤を固
化させることにより、破壊しにくい物体を製作すること
のできる装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
め、この発明の第1の装置は、(A)造形中の物体を載
置するためのテーブルと、(B)前記テーブルの上部
に、前記物体を形成するための光硬化型接着剤を所定量
ずつ吐出する接着剤吐出手段と、(C)前記吐出された
接着剤に所定の光を照射することによって硬化させる光
照射手段と、(D)前記物体の形状に応じて前記テーブ
ルと前記接着剤吐出手段とを3次元方向に相対的に移動
させる駆動手段と、(E)凝固後においても所定の溶媒
によって溶解可能な凝固可能剤を前記テーブルの上部に
吐出するとともに、該凝固可能剤を凝固することによっ
て、硬化した光硬化型接着剤を支持するための支持部を
形成する凝固可能剤吐出手段と、を備える。なお、ここ
で「光」とは、可視光のみでなく紫外線などの非可視光
も含んでいる。
【0006】また、この発明の第2の装置は、(A)造
形中の物体を載置するためのテーブルと、(B)前記テ
ーブルの上部に、前記物体の型となる光硬化型接着剤を
所定量ずつ吐出する接着剤吐出手段と、(C)前記吐出
された接着剤に所定の光を照射することによって硬化さ
せる光照射手段と、(D)前記物体の型の形状に応じて
前記テーブルと前記接着剤吐出手段とを3次元方向に相
対的に移動させる駆動手段と、(E)硬化した光硬化型
接着剤により形成された型内に前記物体を形成するため
の樹脂を充填する樹脂充填手段と、(F)凝固後におい
ても所定の溶媒によって溶解可能な凝固可能剤を前記テ
ーブルの上部に吐出するとともに、該凝固可能剤を凝固
することによって、硬化した光硬化型接着剤を支持する
ための支持部を形成する凝固可能剤吐出手段と、を備え
る。
【0007】
【0008】
【作用】第1の装置では、接着剤吐出手段が光硬化型接
着剤を所定量ずつ吐出し、光照射手段がこれを硬化させ
ていくので、光硬化型接着剤が互いに接着しつつ物体が
されていく。この際、駆動手段が物体の形状に応じてテ
ーブルと接着剤吐出手段とを相対的に移動させるので、
所望の形状の3次元物体が形成される。また、支持部の
上に光硬化型接着剤の物体または型の一部を形成してお
き、これを、テーブル上に形成した物体の部分と接合す
るように光硬化型接着剤を硬化させていくことによっ
て、複雑な3次元形状の物体を製作することができる。
【0009】第2の装置では、光硬化型接着剤で型を形
成し、樹脂充填手段によってその型内に樹脂を充填する
ので、所望の形状および材料の3次元物体を形成でき
る。また、支持部の上に光硬化型接着剤の物体または型
の一部を形成しておき、これを、テーブル上に形成した
型の部分と接合するように光硬化型接着剤を硬化させて
いくことによって、複雑な3次元形状の型を製作するこ
とができる。
【0010】
【0011】
【実施例】図1は、この発明の一実施例としの3次元物
体造形システム100を示す概念図である。この3次元
物体造形システム100は、グラフィックワークステー
ション200と造形装置300とで構成されている。
【0012】グラフィックワークステーション200
は、3次元物体の形状を表わすデータに基づいて、3次
元物体の断面形状を表わす断面ベクトルデータを作成
し、作成した断面データを3次元物体造形システム10
0に供給する。なお、CADデータから物体の断面形状
を表わすデータを作成する方法は、CAD(コンピュー
タ援用設計)の分野において周知であり、例えば、イス
ラエル、サイテックス社(Scitex Corp.)から市販され
ているQuantum1システムのプロット機能により実現され
ている。物体の断面形状を表わすデータを作成する方法
や装置については前述の特開昭63−72526号公報
および特開平2−78531号公報に記載されているの
で、ここではその詳細は省略する。
【0013】造形装置300は、次のようなサブシステ
ムによって構成されている。 (A)テーブル部10:造形中の物体を載置するための
テーブル12と、テーブル12を垂直方向に移動させる
モータ14とを有している。テーブル部10は、さら
に、テーブル12の垂直方向の絶対位置を検出するため
の図示しない位置検出装置を備えている。モータ14
は、物体を所定の高さだけ造形する度に、造形した高さ
分だけテーブル12を下方に降下させる。
【0014】(B)ヘッド部20:フォーカシングユニ
ット22と、第1〜第3の液体用ノズル24〜26と、
気体用ノズル28と、これらが固定された基台29とで
構成されている。
【0015】(C)水平駆動機構30:造形装置300
の両側面にそれぞれ複数本立設された支持柱32と、支
持柱30上に固定されたX方向に伸びる水平レール34
と、水平レール34上に移動可能に係合された移動ビー
ム36とを有している。移動ビーム36には、ヘッド部
20の基台29がY方向に移動可能に係合されている。
移動ビーム36と基台29は、図示しないモータによっ
て駆動されてそれぞれX方向とY方向とに移動し、ヘッ
ド部20を所望の位置に移動させる。なお、ヘッド部2
0をXY方向に移動させる代わりに、テーブル12をX
−Yテーブルとしてもよい。
【0016】(D)接着剤供給部40:光硬化型接着剤
を貯蔵するタンク42と、光硬化型接着剤を第1のノズ
ル24に供給するポンプ44とで構成されている。光硬
化型接着剤としては、例えば、東亜合成化学工業製の可
視光硬化型接着剤「アロンタイトVLシリーズ」(商品
名)を使用することができる。この光硬化型接着剤は可
視光線を数十秒照射することにより硬化する。紫外線で
硬化するタイプの光硬化型接着剤としては、ソニーケミ
カル株式会社製の「UV1003」や「UV1006」
(いずれも商品名)を使用することができる。
【0017】ポンプ44は、粘性の高い液体を微量ずつ
吐出することができるポンプであり、例えば、日本計器
製作所と住友軽金属工業が実用化した超精密ポンプを使
用することができる。この超精密ポンプは、3元系超磁
わい材料を駆動源としたポンプを使用することができ
る。この超精密ポンプを使用すれば、1分間に1万分の
1ccから10ccの流量で、吐出圧がゼロから4気圧
までの範囲で、連続吐出、瞬間飛滴および間歇飛滴を行
なうことができる。
【0018】(E)溶融プラスチック供給部50:溶剤
中に溶融したプラスチックを貯蔵するタンク52と、溶
融プラスチックを第2の液体用ノズル25に供給するポ
ンプ54とで構成されている。プラスチック材料として
は、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ABS
樹脂などのエンジニアリングプラスチックを利用するこ
とが可能である。
【0019】(F)サポート用凝固剤供給部60:液状
のサポート用凝固剤を貯蔵するタンク62と、サポート
用凝固剤を第3のノズル26に供給するポンプ64とで
構成されている。サポート用凝固剤は、光硬化型接着剤
で製作される物体の外部を支持するサポート部を造形す
るために使用される凝固可能剤である。サポート用凝固
剤としては、凝固も所定の溶媒に溶解可能なものが好ま
しい。この実施例では、水溶性のポリエチレングリコー
ルを用いており、ポリエチレングリコールを溶融状態に
保つためにタンク62の周囲にヒータ66を設けてい
る。
【0020】(G)冷風供給部70:テーブル10上に
滴下されたポリエチレングリコールを冷却して固化させ
るために、約−60℃の冷風を気体用ノズル28に供給
する装置である。冷風供給部70としては、例えばIN
工業製の「パルスクーラント」(商品名)を使用するこ
とができる。
【0021】(G)光源80:光硬化型接着剤を硬化さ
せるための光を発生する光源である。紫外線硬化型接着
剤を使用する場合には、いわゆる石英製低圧水銀ラン
プ、重水素ランプ、殺菌ランプ、光重合用ランプ、ブラ
ックライトランプなどの種々の紫外線発生用光源を使用
することができる。これらの光源は紫外線レーザよりも
安価であり、また、光硬化型接着剤を硬化させるための
所望の波長範囲の光を発生する光源を選択できる。さら
に、大容量の光源を用いてこれを光ファイバ82および
フォーカシングユニット22で集光することによって、
短時間で硬化させるために十分な光量を容易に得られる
という利点がある。なお、前述の可視光硬化型接着剤は
可視光線を数十秒照射することに硬化するので、光源8
0として青色蛍光ランプやメタルハライドランプなどを
使用することができる。なお、これらの光源は、レーザ
に比べてより大きなエネルギを与えることができるの
で、より短時間で光硬化型接着剤を完全硬化させること
ができるという利点もある。
【0022】(H)制御部90:グラフィックワークス
テーション200から供給された3次元物体の断面ベク
トルデータに従ってヘッド部20の位置を調整するとと
もに、造形装置300内の他の各部の制御を行なう。な
お、断面ベクトルデータは、造形される3次元物体の所
定の高さ位置毎に生成される。
【0023】図2は、3次元造形システム100によっ
て3次元物体を製作する手順を示す工程断面図である。
図2(A)の工程では、サポート用凝固剤供給部60が
テーブル12の上にポリエチレングリコールを吐出し、
冷風供給部70がこれを冷却することによってサポート
部110が形成される。図3に示すように、サポート部
110は造形する物体120(破線で示す)の周囲に散
点状に形成される。ただし、物体120の周囲を取り囲
むように円環状に形成しても良い。
【0024】図2(B)の工程では、接着剤供給部40
がテーブル12上に光硬化型接着剤を間歇的に吐出して
物体120を所定の高さ分だけ形成する。この高さは、
図2(A)の工程で形成されたサポート部110の高さ
と等しい。光硬化型接着剤が滴下される位置にはフォー
カシングユニット22によって硬化用の光が照射されて
おり、光硬化型接着剤は滴下されると直ちにその位置で
硬化する。接着剤を確実に硬化させるために、硬化用の
光の光点径を滴下される接着剤の径よりも大きな値に設
定する。なお、フォーカシングユニット22を使用せず
に、硬化用の光をテーブル12の全面に照射するように
してもよい。
【0025】光硬化型接着剤を滴下する際には、グラフ
ィックワークステーション200から与えられるベクト
ルデータに従って制御部90が水平駆動機構30を制御
し、物体の断面形状に応じてヘッド部20を移動させ
る。図4は、ヘッド部20の液体用ノズル24の動きを
模式的に示す図である。図4(A)ないし(C)に矢印
で示すように、内側から外側に向かって旋回しながら面
積を拡大していく。
【0026】従来使用されていた光硬化型樹脂は、既に
硬化しているものに未硬化のものを塗布して硬化させて
も両者がうまく接着せず、剥離しやすいので、光硬化型
樹脂では強固な物体を形成することができない。一方、
光硬化型接着剤は、既に硬化している光硬化型接着剤に
未硬化のものを塗布して硬化させると、両者が強固に接
着されるという特性を有している。従って、上述のよう
に、光硬化型接着剤を間歇的に滴下しつつ硬化させると
互いに接着された強固な物体120を形成することがで
きる。
【0027】図2(C)の工程では再びサポート部11
0を所定の高さだけ追加形成し、図2(D)の工程では
物体120を所定の高さだけ追加形成する。図2(E)
は、図2(C)および(D)の工程を複数回繰り返した
後の状態を示しており、内部に空間のある球殻状の物体
120が形成されている。
【0028】図2(F)の工程では、球殻状の物体12
0が所定の高さだけ追加形成されるとともに、サポート
部110の上にも物体の周辺部になる部分120aが形
成される。図2(F)には、物体の最終的な形状が破線
で示されている。製作すべき物体120が、このように
頂点120bからテーブル12表面に向かって途中まで
下降する形状を有する場合には、下降する部分の下端に
サポート部120を予め形成しておく必要がある。な
お、頂点から両側に下降する形状を有さない場合(例え
ば図2(E)や(F)の球殻状の物体120が最終的な
形状である場合)には、サポート部120を形成する必
要がない場合がある。
【0029】図2(G)および(H)の工程では、さら
に、物体の中央部120と周辺部120aが所定の高さ
だけそれぞれ追加形成される。この結果、図2(H)に
示すように、中央部120と周辺部120aが互いに接
合して一体化した物体121が形成される。
【0030】図2(H)の物体121が最終的に形成し
たい物体である場合には、サポート部110を水洗して
溶解する。さらに、物体121を加熱炉で加熱処理する
ことによってその強度を増大させるようにしてもよい。
【0031】このように、上記実施例では光硬化型接着
剤を少量ずつ吐出して硬化させながら3次元物体を造形
するので、強固な物体を形成することができる。
【0032】一方、図2(H)の物体121をプラスチ
ック物体の型として用いることもできる。物体121を
型として用いる場合には、図2(I)に示すように、溶
融プラスチック供給部50によって物体121の内部に
溶融プラスチック130を充填する。そして、この溶融
プラスチックを加熱・乾燥させることによってプラスチ
ック成形物130を形成する。この加熱・乾燥は、加熱
炉で行なっても良く、乾燥空気を吹き付けることによっ
て行なっても良い。充填するプラスチックの材質は任意
に選択することができるので、所望の材質のプラスチッ
クで3次元物体を製作することが可能である。なお、硬
化させた光硬化型接着剤が不要の場合には、加熱によっ
て除去することができる。
【0033】なお、この発明は上記実施例に限られるも
のではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の
態様において実施することが可能である。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の第1の装
置によれば、少量の光硬化型接着剤を硬化させていくこ
とにより、破壊しにくい物体を製作することができると
いう効果がある。また、凝固可能剤吐出手段を用いるこ
とによって、複雑な3次元形状の物体を製作することが
できるという効果がある。
【0035】また、第2の装置によれば、光硬化型接着
剤を硬化させて型を作成し、この型内に樹脂を充填する
ことによって、所望の材質の物体を製作するできるとい
う効果がある。また、凝固可能剤吐出手段を用いること
によって、複雑な3次元形状の型を製作することができ
るという効果がある。
【0036】
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例としの3次元物体造形シス
テムを示す概念図。
【図2】3次元物体を製作する手順を示す工程断面図。
【図3】サポート部の配置例を示す斜視図。
【図4】光硬化型接着剤の塗布方法を示す説明図。
【符号の説明】
10…テーブル部 12…テーブル 14…モータ 20…ヘッド部 22…フォーカシングユニット 24〜26…液体用ノズル 28…気体用ノズル 29…基台 30…水平駆動機構 32…支持柱 34…水平レール 36…移動ビーム 40…接着剤供給部 42…タンク 44…ポンプ 50…溶融プラスチック供給部 52…タンク 54…ポンプ 60…サポート用凝固剤供給部 62…タンク 64…ポンプ 66…ヒータ 70…冷風供給部 80…光源 82…光ファイバ 90…制御部 110…サポート部 120…物体の中央部 120a…物体の周辺部 120b…物体の頂点 121…最終的な物体 130…プラスチック 200…グラフィックワークステーション 300…造形装置

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 3次元物体を造形する装置であって、 (A)造形中の物体を載置するためのテーブルと、 (B)前記テーブルの上部に、前記物体を形成するため
    の光硬化型接着剤を所定量ずつ吐出する接着剤吐出手段
    と、 (C)前記吐出された接着剤に所定の光を照射すること
    によって硬化させる光照射手段と、 (D)前記物体の形状に応じて前記テーブルと前記接着
    剤吐出手段とを3次元方向に相対的に移動させる駆動手
    段と、(E)凝固後においても所定の溶媒によって溶解可能な
    凝固可能剤を前記テーブルの上部に吐出するとともに、
    該凝固可能剤を凝固することによって、硬化した光硬化
    型接着剤を支持するための支持部を形成する凝固可能剤
    吐出手段と、 を備えることを特徴とする3次元物体造形装置。
  2. 【請求項2】 3次元物体を造形する装置であって、 (A)造形中の物体を載置するためのテーブルと、 (B)前記テーブルの上部に、前記物体の型となる光硬
    化型接着剤を所定量ずつ吐出する接着剤吐出手段と、 (C)前記吐出された接着剤に所定の光を照射すること
    によって硬化させる光照射手段と、 (D)前記物体の型の形状に応じて前記テーブルと前記
    接着剤吐出手段とを3次元方向に相対的に移動させる駆
    動手段と、 (E)硬化した光硬化型接着剤により形成された型内に
    前記物体を形成するための樹脂を充填する樹脂充填手段
    と、(F)凝固後においても所定の溶媒によって溶解可能な
    凝固可能剤を前記テーブルの上部に吐出するとともに、
    該凝固可能剤を凝固することによって、硬化した光硬化
    型接着剤を支持するための支持部を形成する凝固可能剤
    吐出手段と、 を備えることを特徴とする3次元物体造形装置。
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