JP2928384B2 - 歯周ポケット内の硫化物を測定する方法および装置 - Google Patents

歯周ポケット内の硫化物を測定する方法および装置

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明は、広くは歯周炎及び歯周病を発見する分野に
関し、より詳しくは、歯周炎及び歯周病の存在及び程度
を判断すべく歯周ポケット内の硫化物(スルフィド)濃
度を測定する方法及び装置に関する。
従来技術の説明 概略的にいえば、歯周炎及び歯周病とは、歯を包囲す
る歯肉(歯ぐき)領域に炎症を引き起こす病気である。
歯周炎及び歯周病は、グラム陰性嫌気性生物の作用によ
り引き起こされるものと考えられる。早期症状として、
歯を包囲する歯周縁の発赤、歯周縁の僅かな水腫又は僅
かな退縮、及び歯周縁の探針(プロービング)時の僅か
な又は遅発出血がある。放置しておくと、歯周炎及び歯
周病は、歯自体は完全に健康であっても、歯周縁の一層
のひどい退縮、連続及び/又は自然出血、及び最終的に
は、歯肉、セメント質、歯根膜及び歯槽骨を含む歯の周
囲の支持構造及び埋没構造の腐食を引き起こすであろ
う。米国では、年々、歯の疾患及び虫歯自体よりも歯周
炎及び歯周病によって、より多くの歯が失われていると
考えられている。
一般に、歯周炎及び歯周病の存在は、冒された歯の歯
周ポケット又は歯肉溝を拡大する。歯肉溝は、歯肉組織
(歯肉)と歯との間の空間すなわちポケットである。当
該分野の多くの専門家は、歯周ポケットの深さと歯周病
のひどさとの間には相関関係があると考えている。通
常、歯周ポケットの深さは、歯肉の縁すなわち頂部か
ら、上皮付着(歯肉が歯に付着する位置)まで測定され
る。これは、機構的プローブで測定される。しかしなが
ら、他の専門家はこの相関関係の信頼性を疑っている。
なぜならば、多くの患者の歯周縁はかなり深いポケット
を呈しているにも係わらず、活性歯周病がポケット内に
殆ど又は全く存在しないからである。多くの場合、過去
には歯周病が存在していたが、歯周病を引き起こす有機
体がもはやポケット内には存在しない場合もある。
治療の見地から重要なことは、歯周ポケット内に活性
歯周病が生じているか否かを知り、活性歯周病が生じて
いた場合には、その歯周病がどの程度のひどさであるか
を知ることである。従って、深い歯周ポケットでも必ず
しも活性歯周病の存在とは相関関係がないため、単に歯
周ポケットの深さを測定するだけでは、必ずしも治療の
必要性の正確な表示が得られない。明らかなことは、活
性歯周病の存在及び程度を測定する正確な手段を見い出
すことが望まれていることである。
歯周ポケット内の活性病原物質の存在は、測定可能な
濃度の硫化水素ガスをポケット内に発生させる。雑誌
「歯周病学ジャーナル(Journal of Periodontolog
y)」(1980年10月、第603〜606頁)に見られるM.C.Sol
is−Gaf−far、K.N.Rustogi及びA.Gaffarの著した論文
によれば、歯肉の健康と、歯肉溝液と、歯肉溝液からの
硫化水素の生成との間に測定可能な関係があある。ま
た、これらの著者は、観察した炎症の程度と歯肉溝液の
H2S発生可能性との間の確実な適度の相関関係を認めて
いる。歯肉溝液(gingival crevicular flu−id、GCF)
内に発生した硫化物ガス(sulfide gases)とポケット
内のGCFの容積との間により強い相関関係が見い出され
た。Solis−Gaffar等によれば、一般に、GCF10ミリリッ
トルにつき約8ナノグラムの硫化水素濃度が健康的な歯
肉であるのに対し、40以上の濃度がひどい歯周炎の特徴
である。
歯肉溝液のH2S発生可能性を測定するためにSolis−Ga
ffar等が使用した方法はクロマトグラフ法、すなわち、
消毒した濾紙ストリップを歯肉溝内に挿入してGCFを収
集する方法である。開示された分析方法は、適当なアミ
ノ酸でストリップを3日培養し、次にガスクロマトグラ
フ及び炎光光度検出装置を用いた分析を行うという複雑
なものである。実験的目的としては有効であるが、Sol
−is−Gaffar等の論文に開示された方法は、臨床環境で
は実用的ではない。
他の研究者は、酢酸鉛を含浸した濾紙ストリップを、
周期的な歯周病に悩まされる疑いのある患者の歯と歯肉
との間に配置することによりH2Sの存在を検出すること
を試みている(A.A.Rizzo著「歯周学(Periodontic
s)」、5:233、1967年;及びA.Horowitz及びL.E.Fole著
「歯周学抜粋(Periodontal Abstracts)」、20:59、19
72年参照)。鉛の既知の毒性のため、この方法が好まし
くないことは明らかである。また、この方法は、歯肉溝
液中の硫化物ガス、硫化物イオン及び粒子の存在のみを
検出する方法であって、これらの濃度を検出する方法で
はない。かくして、上記方法では、歯周病の進行の量的
測定を行うことはできない。
唾液中の或る成分の存在を測定するか、電気化学プロ
ーブを用いてポケットを探針することにより歯周病の存
在を判断する他の方法が示唆されている。例えばPreti
の米国特許第4,334,540号は、口腔唾液中のピリジンの
検出方法を広く教示している。この参考文献は、唾液試
料を収集し且つ培養して、唾液からの揮発物を唾液の上
方の頭部空間から収集することを教示している。これ
も、患者が歯周病に罹っているか或いは歯周病に罹りつ
つあるのかの大まかな判断をする間接的方法である。Kr
ietemeierの米国特許第4,713,164号は、手持ち形電気化
学検出手段(この手段内には、試料ガスが吹き込まれ
る)により呼吸中の悪臭を分析する方法を開示してい
る。しかしながら、この米国特許は、歯周病の存在又は
進行を定量化することに関して、及び特定の歯の患部に
ついてのH2S測定を如何に行うかに関して何ら教示して
いない。また、G.R.Mettraux等は、雑誌「歯周学ジャー
ナル(Journal of Periodontology)」(55:516−521:1
983年)において、歯の歯周溝内の酸素濃度の測定に電
気化学センサを使用することを示唆している。Mettraux
等は、歯周ポケット内に挿入されるpO2電極を用いてい
る。これにより、歯周ポケット内の液を測定して、歯肉
下の環境が自然状態で嫌気性であるか或いは好気性であ
るかを測定する。最後に、カナダ国特許第1,279,370号
には、歯の歯肉溝内に電気化学センサを挿入して、歯肉
溝液中の酸素、アンモニア、水素、メタン、二酸化炭素
及び硫化水素からなる群から選択された少なくとも2つ
のガスの比率をポーラログラフ測定することが開示され
ている。この比率測定は、歯周病の性質及び存在又は進
行を示す既知のパラメータとの相関関係を有する。
上記いずれの従来技術も、歯肉溝液中の硫化物又は硫
化水素の濃度を直接的に測定するための有効な方法を教
示してはいない。明瞭なことは、このような濃度を直接
測定して、歯周病の存在及び程度を臨床環境において即
時に判断できる方法を見い出すことが望まれていること
である。
発明の要約 本願において説明し且つ特許請求する発明は、上記従
来技術の欠点を解消するように設計されている。最も広
い観点からすると、本発明は、歯周ポケット内のGCF中
の硫化物ガス及び硫化物イオン及び粒子を含む硫化物の
濃度を直接測定することにより、歯周ポケット内の歯周
病の存在及び程度を検出する方法及び装置である。本発
明は、第1銀作業電極及び第2銀/塩化銀基準電極を備
え、且つこれらの両電極が、これらの両電極間の電位の
強さを表すデータ読出しを発生できる電気化学的分析器
(電圧インジケータ)に電気的に接続される二電極プロ
ーブを提供することを意図している。プローブは、両電
極が歯周ポケット内の歯肉溝液と接触して両電極間に電
位を生じさせるべく、歯周ポケット内に配置される。電
位の大きさは歯肉溝液中の硫化物濃度に対応する。次
に、電気化学的分析器が、ポケット内の硫化物濃度を示
すデータ読出しを表示する。二電極プローブを歯周ポケ
ットから取り出し、データ読出しを所定の基準と比較し
て、歯周病の存在及び程度を判断する。
本発明の方法は更に、歯周ポケット内にプローブを入
れる前に二電極プローブを試験食塩水中に浸漬し且つ分
析器により発生されたデータ読出しを記録することによ
り、第1及び第2電極間の電位差を表す基線読取りを得
ることを意図している。一般に、健康なポケットは、基
線読出しと殆ど異なることがないか、或いは基線読出し
より大きくなることが全くないデータ読出しを与える。
また、試験食塩水は、より詳しくは電子的減極(electr
onic depolarization)に関連して、所定患者について
の連続的ポケット読取りの間に装置を基線の標準に戻す
ためのプローブの洗浄溶液としても機能する。
本願において特許請求する方法では、銀/塩化銀電極
の第2電極は、基準として作用し且つ溶液と平衡してい
る。純銀の第1電極は、電気化学的作用により、歯周病
の硫酸イオン特性からの硫化物コーティングで徐々に被
覆される。このプロセスは、基準電極に対する電位(こ
の電位は測定可能であり且つ歯肉溝液中の硫化物濃度の
関数である)を発生する。電気化学的半電池反応は、次
式に従って行われる。
2Ag+S⇔Ag2S+2e もちろん、基準電極上の塩化銀コーティングは、やが
て硫化物で徐々に害され、硫化銀表面を形成するため、
1つの問題が生じる。電気化学的反応が平衡状態まで進
行すると、両電極が硫化銀でコーティングされ、電位差
が全く観察されなくなるであろう。しかしながら、本発
明の発明者等は、基準電極上の塩化物コーティングを硫
化物に変換するプロセスは、平衡状態に進行するのにか
なりの時間を要するという驚くべき発見をした。平衡が
達成される前に、このプロセスは、電解液中の硫化物ガ
ス濃度の関数である電圧を発生させる。実際に、本発明
の装置は、臨床環境において非常に迅速な応答を与え、
一般的なプローブ応答は1〜2秒程度である。基準電極
の塩化銀コーティングの被害は、硫化物汚染により生じ
るであろう。しかしながら、本発明のプローブは使い捨
て装置として容易に製造でき、これによりこの問題が解
決される。
本願において説明し且つ特許請求する二電極プローブ
は、歯周ポケット内の硫化物ガスの濃度を測定すること
により、歯周ポケット内の歯周病の存在及び程度を診断
するのに適している。本発明のプローブは、患者の口腔
内で容易に取り扱い且つ操作するのに適した長さ及び直
径をもつハウジングを有する。ハウジングの第1端部に
は、歯周ポケットの探針(プロービング)に適した形状
をもつ先端部が配置されている。プローブは更に、第1
銀作業電極と、塩化銀コーティングがめっきされた第2
銀基準電極とからなる1対の電極を有している。これら
1対の電極の各々は、先端部において少なくとも一部が
露出された表面部と前記ハンドル内に配置された内部と
を備えている。第1及び第2電極は、これらを電気化学
的分析器に電気的に接続するための第1及び第2電気リ
ード線にそれぞれ接続されている。
本発明のプローブの第1実施例では、ハウジングは、
2つのボアをもつ適当長さのバイファイラポリマチュー
ブ(bifilar,polymeric,tubing)からなる。第1及び第
2の電極の各々は、バイファイラチューブのボアを貫通
する適当な長さの銀ワイヤで形成されている。各銀ワイ
ヤの一部は、プローブの先端部で露出された状態におか
れ、基準電極の露出部分には塩化物コーティングがめっ
きされている。対をなす銀ワイヤを包囲し且つ支持する
ため、バイファイラチューブの両ボア内にはエポキシ等
の埋込み材料が配置されている。プローブは更に、バイ
ファイラポリマチューブの各ボアを剛くする手段、例え
ば、銀ワイヤから電気的に絶縁されて各ボア内に配置さ
れる一定長さのタングステンワイヤを有している。
第2実施例では、本発明のプローブは、ステンレス鋼
の皮下チューブのような適当な長さの金属チューブで形
成されたハウジングを有する。第1電極はチューブの一
部にめっきされた銀層を有し、第2電極は、プローブの
先端部を形成すべくハウジングの外側に配置される塩化
物がコーティングされた銀ボールを有する。金属ハウジ
ングを閉鎖及び包囲する適当ゲージのポリマチューブを
更に有し、銀層の一部は、プローブの先端部において露
出され且つポリマチューブによって覆われていない。塩
化物がコーティングされた銀ボールには、第2リード線
を形成する銀ワイヤが取り付けられ、第1リード線は、
銀層をもつ第1電極自体で形成することもできる。この
実施例は、安価な材料から比較的容易に製造でき、従っ
て、使い捨て物品として提供することもできる。一人の
患者の全ての歯の患部から読み取った後、新しいプロー
ブが次の患者に適当な方法で配置される。
図面の簡単な説明 以下の詳細な説明は、以下の図面を参照することによ
り最も良く理解されるであろう。
第1図は、本発明の二電極プローブの一実施例を示す
断面図である。
第2図は、本発明のプローブの他の実施例を示す斜視
図である。
第3図は、第2図のプローブの先端部を示す詳細図で
ある。
第4図は、第3図の先端部を90゜回転した図面であ
る。
好ましい実施例の詳細な説明 以下に述べる詳細な説明の全体に亘って、多くの図面
に示した本発明の同一構成エレメントについては同一の
参照番号を使用する。
図面、特に第1図には、歯周ポケット内の歯周病の存
在及び程度の検出に適した二電極歯周プローブ10が示さ
れている。プローブ10は、ステンレス鋼製の皮下チュー
ブの形態をなすハウジング12を有し、ハウジング12の一
端には先端部14が形成されている。先端部14内には、第
1銀電極16と、塩化銀コーティングがめっきされた第2
基準銀電極18とからなる1対の電極が配置されており、
各電極16、18は、先端部14内に少なくとも一部が露出さ
れる表面部と、ハウジング12の内部に配置される内部と
を備えている。
第1図に示す実施例では、第1銀電極16が、ステンレ
ス鋼ハウジング12上に銀めっきされた領域により形成さ
れている。基準電極18は銀のボールで形成されており、
ボールには塩化物(クロリド)のコーティングがなされ
ている。第1及び第2電極16、18は、それぞれ、第1及
び第2電気リード線22、20に電気的に接続されている。
第1電気リード線22は、ハウジング12上にめっきされた
銀領域の部分により形成されている。第2電気リード線
20は、第2電極18に接続された純銀ワイヤの形態をなし
ており、銀ワイヤはハウジング12の長手方向に延び、ハ
ウジング12の後部から外に出ている。
プローブ10は、本発明の実施にとって必ずしも必要で
はないけれども、プローブ10の作業エレメントを支持し
且つ電気的に絶縁する機能をもつ別の構造物を有してい
る。この目的のため、第2ステンレス鋼チューブ24が、
ハウジング12の一部を包囲している。ハウジング12を包
囲する適当なボアをもつポリイミドチューブ28が、第1
銀電極16を形成すべくプローブの先端部14において露出
した、銀めっきされた部分を残してハウジング12の周囲
に配置されている。同様に、適当なボアをもつポリイミ
ドチューブ30が、ステンレス鋼チューブ24を包囲してい
る。また、第2リード線20もポリイミドチューブ25によ
り包囲されており、ハウジング12の先端部14はポリイミ
ドチューブスペーサ26で終端している。ハウジング12の
後部近くには、プローブ10を一層掴み易くするためのニ
ードルハブ32が設けられている。種々の金属とポリイミ
ドエレメントとの間の結合部は、エポキシシール剤34に
より適当にシールされ、これにより、プローブ10は、第
1及び第2電極14、16及び第1及び第2リード線22、20
を除き、そのあらゆる部分が電気的に絶縁されている。
プローブ10は、ハウジング12の後部を慣用的な同軸コネ
クタに差し込むことによって、電気化学的分析器(図示
せず)に電気的に接続される。
第2図には、本発明のプローブの別の実施例100が示
されている。プローブ100は、患者の口内で容易に取扱
い且つ操作できるように適当に構成されたハウジング10
5を有する。プローブ100は更に先端部110を有し、先端
部110は第3図及び第4図により詳細に示されている。
先端部110は、2つのボアをもつ適当な長さのバイファ
イラポリイミドチューブ112で形成されており、チュー
ブ112はこれを貫通して延びた2つのボア114を有する。
ボア114は、0.010インチ(約0.25mm)の適当な長さに形
成された第1及び第2電極116、118が配置されている。
先端部110は更に、ハイファイラチューブ112の端部を閉
塞するエポキシシーラント120を有する。第4図(第4
図は、第3図の先端部を90゜回転したものである)に最
も明瞭に示すように、エポキシ120の一部が除去され、
電極118の露出面112が取り出される。銀ワイヤの第2電
極118の露出部分122には塩化物がめっきされた層が設け
られている。かくして、第1銀電極116はプローブ100の
作業電極として機能し、第2電極118は銀/銀−塩化物
基準電極として機能する。
第4図に最も明瞭に示されるように、(第2図に破線
で示す)銀ワイヤの第1及び第2電極116、118がハウジ
ング105の全長に亘って延びており且つ慣用的な電気コ
ネクタ130に電気的に接続されている。次に、プローブ1
00は、第2図に概略的に示す慣用的な電気化学的分析器
84に電気的に接続される。
プローブ100の先端部110は更に、バイファイラチュー
ブ112の両ボア114内に配置された埋込み材料124を有す
る。埋込み材料124は、電極116、118を支持し且つプロ
ーブ100の先端部110を剛くして先端部が歯周ポケット
(図示せず)内に一層容易に挿入されるようにする機能
を有する。先端部110には、更に、例えばバイファイラ
チューブ112の外部又は各ボア114内に配置される一定長
さのタングステンワイヤのような、先端部110を更に剛
くする機能をもつ他の構造(図示せず)を設けることが
できる。
以上、本発明のプローブの2つの実施例を詳細に説明
した。しかしながら、歯周プローブの設計に係る当業者
ならば、本発明の教示を受けて、本願の請求の範囲に記
載された本発明の概念を具現する広範囲のプローブを設
計できるであろう。例えば、図面に示した円筒状の形状
の代わりに、プローブを平らにして流線型の外観をもた
せることもできる。
本発明のプローブの使用方法を以下に説明する。プロ
ーブは、プローブの第1及び第2リード線に取り付けら
れるミニ同軸状コネクタケーブル等の標準形コネクタを
用いて、例えばELECTRO−Chem Analyzer(Model 1300,S
eries No.900426−31)等の標準形電気化学的分析器に
電気的に接続される。分析器のモードスイッチが基準位
置に設定され、セレクタコントロールがミリボルト位置
(他の殆どの制御装置を作動させない位置)に設定され
る。アクチベータ(賦活装置)の電源スイッチが入れら
れ、且つプローブの先端部が0.5モルNaCl消毒溶液(食
塩水)中に入れられる。次に、基線読取りが行われ、こ
の基線読取りは、プローブの第1電極と第2電極との間
の電位差、すなわち食塩水中での銀対銀/塩化銀の電位
差を反映し、通常、30〜100mV(+)間で変化する。
これで、患者の歯周ポケット内にプローブを挿入でき
る基準が整ったことになる。プローブを挿入すると、歯
肉溝内の歯肉溝液と接触するようになる。液中の電極は
第1電極と第2電極との間に電位差を発生させ、この電
位差の大きさは液中の硫化物ガスの濃度に相当する。一
般に、臨床的に観察される病変ポケットすなわち炎症ポ
ケットは、電気化学的分析器に500〜700mV(+)の範囲
の読みを生じさせ、より一般的にはこの範囲の高い方の
読みを生じさせる。160〜200mVの弱い応答は、慣用的手
段では診断不可能な潜在的(非顕性)病変活動を示すも
のである。このレベル以下の読取りはボーダラインであ
り、ボーダライン近くの読取り(150mV)は歯周病が存
在しないことを示す。
本発明の方法を用いれば、特定患者の口腔内の全ての
歯周ポケットが連続的且つ容易に測定される。連続的な
各ポケット測定の後、プローブ先端部が殺菌食塩水中に
浸漬され、必要ならば分析器の読取りが300mV(+)に
低下するまで撹拌する。必要ならば、プローブ先端部を
短絡するか、約10〜15mVの負の電圧を印加することによ
り、プローブ先端部を電子的に減極する。重要なこと
は、連続測定の間に、プローブが300mV(+)以下に
「緩和(relax)」するまで、プローブを消毒液中に入
れておくことである。さもないと、次のポケットからの
電位差の読取りが、歯肉溝液中の硫化物の存在により実
際に引き起こされたものであるか、或いは前のポケット
からの読取りのアーチファクト(人工産物)に過ぎない
ものかを判断できないであろう。電子的減極は、50mVの
範囲への「瞬間的緩和」を交互にもたらす。
このようにして、特定患者についての連続測定が行わ
れる。特定患者についての測定が完了したならば、プロ
ーブが硫化物の存在に対して正しく応答したことを試験
することが強く望まれる。この目的のため、先ず、プロ
ーブを0.5モル食塩水中に再び浸漬し、電位差が閾値(2
00〜300mV(+)の範囲)以下に緩和するまで減極す
る。次に、プローブを、10-3モル硫化物基準溶液中に瞬
間的に浸漬する。読取りは直ちに600mV(+)以上に上
昇し、かくして、プローブが依然として硫化物に対して
敏感であることを示す。プローブは硫化物基準溶液から
直ちに取り出し且つ再び食塩水中に入れて減極すべきで
ある。
この試験で600mV(+)以上の応答を示さない場合
は、第2電極の塩化銀表面が、探針(プロービング)中
の硫化銀への転化のため、又は血液又はポケットのタン
パク質によりプローブ表面が害される可能性のため、汚
染されていることがある。そのような場合には、新しい
プローブを用いて患者のポケットを再測定する必要があ
る。
プローブを一人の患者に使用した後は、プローブを、
廃棄するか、新たな患者に使用すべく消毒するか、或い
はリコンディショニングすることができる。消毒は、エ
チレンオキシド法等の多くの方法で行うことができる。
エチレンオキシド法では、プローブは、先ず、紙及びプ
ラスチックポケット内にシールされ、ワイヤバスケット
内に入れられ、次に気密チャンバ内に入れられる。エチ
レンオキシドのシールされたカートリッジがチャンバ内
に装填され、且つプローブが、85゜F(約29℃)で4時
間又は145゜F(約63℃)で1時間、ガスに曝される。こ
の露出の後、エチレンオキシドガスがルーフに向かって
発散され、チャンバが開かれる。内容物(contens)は
ガス抜きのため別の気密チャンバに移送され、物品(it
ems)は145゜F(約63℃)で8時間空気洗浄される。
より慣用的な第2の消毒法では、プローブは、約220
゜F(約104℃)に維持された消毒チャンバ内で、20分
間、85%エタノール及び少量のホルムアルデヒドの雰囲
気に露出される。上記いずれの消毒方法も、本発明のプ
ローブの性能を実質的に損なうことがないことが判明し
ている。
試験後、プローブが満足できる性能を示さない場合に
は、プローブをリコンディショニングする必要がある。
本発明の方法によれば、プローブ先端部は、先ず蒸留水
中で水洗され且つソフトティッシュで入念に拭われ乾燥
される。活性銀電極部は、金属銀表面が輝くまで、1/4
インチ(約6.4mm)幅の4ミクロンの金属組織ペーパス
トリップで静かに研摩する。次に、研摩された先端部を
湿ったテイッシュで拭い、研摩により生じた埃を除去す
る。次に、プローブは蒸留水で水洗され且つDC電源に取
り付けられた同軸コネクタに接続される。同軸コネクタ
の中心ワイヤは電源の正(+)のターミナルに取り付け
られ、負(−)のターミナルは、塩化カリウム溶液又は
塩化ナトリウム溶液中に浸漬された銀又はプラチナの対
向電極に取り付けられる。電源の電圧は、1.5〜1.6Vに
調節される。
次に、プローブは、1モルの塩化カリウム溶液中に浸
漬され且つ約2分間電気分解される。次に、プローブを
取り出し、蒸留水で水洗する。塩化銀表面は空気乾燥す
るのが好ましい。検査時には、第2電極の新しく陽極酸
化された塩化物表面は、通常、赤褐色に見え、輝いては
見えない。逆に、活性電極の銀表面は輝いた外観を維持
している。次に、リコンディショニングされたプローブ
が前述のようにして消毒される。
例 7人の患者(これらの患者は、全部で56か所の歯の患
部を有する)について本発明のプローブの臨床試験を行
った。使用したプローブは管状設計のもの(第1図に示
したものと同様のもの)と、二ワイヤ設計のもの(第2
図〜第4図に示したものと同様のもの)との2形式であ
る。各試験を行う前に、全てのプローブを消毒した。各
患者について、歯周病の存在及び程度を、歯肉縁の検査
及び機械的探針等の慣用的な方法で評価し、歯周ポケッ
トの深さを判断した。各場合において、各患者について
連続ポケット読取りを行い、連続読取りの間にプローブ
を1カップの消毒食塩水中に浸漬し、読取ったデータを
基線レベルに戻した。各試験の後、この試験に使用した
プローブを、上記のようにして基準硫化物溶液中で試験
した。
第1番目の患者は中年男性であり、前の試験では幾つ
かの病変ポケットと非病変ポケットの両方を保有してい
た。この試験には管状プローブを使用した。全ての病変
ポケットは、プローブの第2番目すなわち2回の挿入内
で550〜600mVの探針応答(probed responses)を与え
た。全ての非病変ポケットは、200〜300mVの基線レベル
での読取りを与えた。
第2番目の患者の試験には、二ワイヤプローブを使用
した。この場合も、既に、患者が病変ポケットと非病変
ポケットの両方を保有するものと判断されている。1カ
ップルのポケット探針の後、基線レベルへの回復が遅い
点を除き、このプローブも管状プローブと同様な挙動を
示した。電位は、500〜600mVのポケット読取りから300m
V以下の基線読取りまで、非常に迅速には低下しなかっ
た。このプローブの満足できない応答は、電極の露出表
面領域が管状プローブの露出表面領域よりも小さいこ
と、及び電極表面がタンパク質及び血液(これらは緩慢
な応答を引き起こす)で被覆されること等の事実による
ものである。このプローブの応答性が緩慢なため、この
患者の試験は新しいプローブを用いて完了した。電子減
極技術のより最近の開発は、第2プローブの必要性をな
くした。
連続ポケット探針間の基線読取りへの遅い復帰の問題
を解消するため、より強い0.5モル食塩水を連続探針間
の水洗工程に準備し、基線読取りへの復帰を容易にし
た。この食塩水は第3番目の患者にも使用した。この場
合も、探針から得た結果と、ポケットの歯周病の有無の
独立した評価との相関関係は非常に強い。第3番目の患
者では、ポケットが多数の歯周病を有しておらず、プロ
ーブ応答も劇的ではない。このことは、本発明の二電極
プローブが、種々のレベルの歯周病の量的評価を行い得
る能力を有することを意味している。最初の3人の患者
では、いかなる場合も、プローブの緩和時間(relaxati
on time)の遅延が20〜30秒を超えることはなく、この
時間は少数の場合に遭遇したに過ぎない。その場合で
も、電子的減極は、50〜100mV基線のほぼ瞬間的(1〜
2秒)な回復を可能にする。
第4番目の患者は歯周病の治療を受けていた。従っ
て、この患者は幾つかのポケット(これらのポケットの
或るものは非常に深い)を有するけれども、これらのポ
ケットはかなり健康的である。重要なことは、本発明の
装置が、300mVの基線レベルを大幅に上回る応答を全く
与えないことである。この結果は、歯科医が別々に客観
的に評価した歯周病活性がないこととの強い相関関係を
有している。この場合には、二ワイヤプローブを使用し
た。
第5番目の患者は、抗生物質治療を受けている若い女
性である。ポケット探針応答は最小で、殆ど又は全く歯
周病を示さかなった。これは、独立した客観的な歯科的
評価との相関関係を有する。この患者に使用したプロー
ブは第2番目の患者に使用したプローブと同じであり、
220゜F(104℃)で80%エタノール及びホルムアルデヒ
ド中で消毒された。
第6番目の患者の場合は、最初の二ワイヤ形プローブ
は全く作動しなかった。このプローブは、開始時に食塩
水中で本質的にゼロ応答を示し、患者のセッション後の
確認試験では硫化物溶液に対して全く応答しなかった。
断線が疑わしかったけれども、確認はしなかった。いず
れにせよ、全ての探針前の開始時において故障は明白で
あった。別の二ワイヤプローブを使用し、プローブは作
動したけれども、患者が「張りのある(tight)」健康
な歯肉を有するので、応答は基線から僅かに異なるに過
ぎなかった。
第7番目の患者は、前の独立した評価では重大である
と思われなかった中程度の歯周病をもつ中年男性であっ
た。プローブの読取りは、約500±20mVに達したが、ひ
どい歯周病の最大600〜700mV特性よりも幾分低かった。
これらの患者について行った試験は、本発明の二電極
プローブは、これを本発明の方法に従って使用したとき
には、広範囲の患者の歯周病及び歯低炎の存在及び程度
の両方を診断できることを明らかにする。健康なポケッ
ト及び病変ポケットの両方をもつ患者に対しては、本発
明のプローブは選択的診断を行うことができた。重要な
ことは、活性歯周病が存在しない深いポケットを有する
患者では、プローブは活性歯周病が存在しないことを正
しく示したことである。中程度の病変ポケットのみを有
するこれらの患者は、プローブの読取りに中程度の応答
を与えた。最後に、健康な歯肉をもち且つポケットをも
たない患者に対しては、本発明のプローブは健康状態を
示した。これらの試験は、本発明のプローブが、歯周病
の存否及び程度の正確な量的及び質的評価ができること
を実証している。更に、本発明のプローブは、臨床的環
境において迅速且つ容易に使用できることを実証した。
また、本発明のプローブは、プロトタイプであって、工
学的に完全なものではないプローブをこれらの試験に使
用したことを考慮すれば、非常に信頼性が高いものであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 シャヴィヴ ローイ イスラエル 17940 アッパー ナザリ ス アディ ディーエヌ ピーオーボッ クス 144 ハウス 206 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61C 19/04

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】歯周ポケット内の歯肉溝液中の硫化物濃度
    を測定することにより、歯肉溝液を含んだ歯周ポケット
    の病変部活性の存在及び程度を調べるのに適したプロー
    ブであって、 患者の口腔内で容易に取り扱い及び操作するのに適した
    長さ及び直径をもつハウジングと、 歯周ポケットを探針するのに適した形状をもつ先端部と
    を有し、該先端部が前記ハウジングの第1端部に配置さ
    れており、 第1銀電極と、塩化銀コーティングがめっきされた第2
    基準銀電極とを備えた1対の電極を有し、該1対の電極
    の各々が、前記先端部において少なくとも一部が露出し
    た表面部を備えたおり、 前記第1及び第2電極にそれぞれ接続する第1及び第2
    電気リード線を更に有し、 前記先端部が歯肉溝液を含んだ歯周ポケット内に配置さ
    れると、歯肉溝液が前記電極の露出した表面部を架橋し
    て、歯肉溝液の硫化物濃度の関数として前記電極間に電
    位差が発生することを特徴とするプローブ。
  2. 【請求項2】前記ハウジングが、長手方向に延びる2つ
    のボアを備えた第1のポリマーチューブを有し、 前記第1及び第2電極の各々が、前記第1のポリマーチ
    ューブのボアを通って延びる適当な長さの銀ワイヤで形
    成されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載
    のプローブ。
  3. 【請求項3】前記対をなす銀ワイヤを包囲し且つ支持す
    べく、前記第1のポリマーチューブの両ボア内に配置さ
    れる埋込み材料を更に有することを特徴とする請求の範
    囲第2項に記載のプローブ。
  4. 【請求項4】前記第1のポリマーチューブの各ボアを剛
    くする手段を更に有することを特徴とする請求の範囲第
    2項に記載のプローブ。
  5. 【請求項5】前記ハウジングが適当な長さの金属チュー
    ブを更に有し、また、 前記第1電極が前記ハウジングの一部にめっきされた銀
    層を有し、また、 前記第2電極は、前記ハウジングの外側に配置される塩
    化物がコーティングされた銀本体を有することを特徴と
    する請求の範囲第1項に記載のプローブ。
  6. 【請求項6】前記金属チューブを包囲する第2のポリマ
    ーチューブを更に有し、また、 前記銀層の一部が、前記プローブの先端部において露出
    され且つ前記第2のポリマーチューブによって覆われな
    いことを特徴とする請求の範囲第5項に記載のプロー
    ブ。
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