JP2908898B2 - 活性酸素を利用した物質の定量方法 - Google Patents
活性酸素を利用した物質の定量方法Info
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用する物質の定量方法に関し、特に生体中あるいは食品
中等に含まれるビタミンC等を活性酸素を利用した測定
方法に関する。
よって体内に取り込んで生命を維持しており、酸素は生
命活動にとって不可欠のものである。ところが、地球誕
生時には地球上には現在の数千分の1ないし1万分の1
程度の酸素が存在していたのみであり、光合成により地
球上の酸素が増加する過程で酸素による障害についての
防御機能を獲得した生物が酸素を利用する能力を獲得し
て増殖したといわれている。
酵素の働きによって生成する活性酸素が重要な役割を果
たしている。活性酸素は基質の酸化や各種の反応に利用
されているが、一方では、活性酸素は極めて高い反応性
を有しているために、生物体では活性酸素の濃度を必要
以上に高めないような機能や、生成した活性酸素を消去
する防御機能によって酸素を安全に利用している。
ル(O2 -・)をはじめとして、ヒドロキシルラジカル
(・OH)、過酸化水素(H2 O2 )、1重項酸素(1
O2 )等であるが、これらは、生体中での生化学的な反
応に利用する以外にも好中球による殺菌作用のような生
体防御機能において重要な役割を果たしている。
生成とヒポキサンチンを尿酸として代謝するメカニズム
の例を図7に示すように、ヒポキサンチンはキサンチン
オキシダーゼの作用によって、酸素と反応して活性酸素
の1種であるスーパーオキサイドラジカル(O2 -・)を
生成し、スーパーオキサイドラジカルは酸性条件下でH
+を得て過酸化水素を生成する。生成したキサンチンは
キサンチンオキシダーゼの作用によって尿酸に酸化さ
れ、この過程においても同様にスーパーオキサイドラジ
カルが生成する。
は、スーパーオキサイドラジカル(O2 -・)によって生
成した過酸化水素と次のように金属イオンが触媒となっ
て発生する。
にも、放射線、紫外線、過酸化物、金属イオン等の外的
な要因や、生体が受けるストレス、ショック、虚血等に
よっても生成し、活性酸素が過剰に生成すると生体に対
して悪影響を及ぼすことが明らかとなった。
性酸素によって細胞の機能が破壊されることによるもの
であり、また、キノン系の制がん剤ようにがん細胞の増
殖を活性酸素の作用によって抑制するものも知られてい
る。
有意の関係を有することも明らかにされ、活性酸素量の
測定によって各種の疾患の早期発見および経過の把握に
利用可能なことが報告されており、活性酸素の発生系に
存在する物質を正確に定量する方法の開発が望まれてい
る。
活性酸素の発生系に存在する物質の測定方法は、非酵素
的な自動酸化反応を利用する方法、酸素産生酵素反応を
利用する方法、活性酸素による還元反応を利用する方法
などが用いられていたが、いずれの方法も各種の試薬に
よる処理の後に、得られた呈色を比色分析法によって測
定することが行われていた。
ンチンオキシダーゼによって酸化される過程で発生する
スーパーオキサイドラジカルをNBTと反応させて得ら
れるジホルマザンを比色分析によって定量する方法が知
られている。
理的機能を有しており、その特性が各種の疾患との関係
で注目を受け、食品添加物としても食品の品質保持等の
目的で使用されているが、ビタミンCの定量は、インド
フェノールによって試料中の還元型ビタミンCを酸化し
て、酸化型ビタミンCとした後に、2,4−ジニトロフ
ェニルヒドラジンを添加し、生成したオサゾンを硫酸に
溶解して、赤色液の吸光度を測定することによって定量
している。
析方法の選択性が十分ではなく共存する酸化性の物質に
よって影響を受けて測定値が不正確なものとなったり、
あるいは比色分析を行う際には、ヘモグロビンのような
試料自身が着色しているものを含む場合は、正確な測定
が困難であり、また試料の前処理に多くの処理を行うこ
とが必要であるなどの問題があった。
パーオキサイドおよびスーパーオキサイドディスムター
ゼを電子スピン共鳴装置を使用して分析する方法につい
て提案しているが、本発明は、活性酸素が関与する系に
おける反応物質を高い選択性をもって測定する方法を提
供するものである。
与する系における物質を、スピントラップ剤によって活
性ラジカルとして捕捉し、電子スピン共鳴装置(ES
R)または電子常磁性共鳴装置(EPR)を使用してス
ピンアダクトとして測定するものであるが、とくに試料
が純物質ではなく生体試料のように各種の成分を含んで
いる場合であっても測定対象物の作用を抑制する選択性
の大きな物質を使用して、抑制する物質の添加の前後の
スピンアダクトの測定値から測定対象物の量を正確に把
握する方法である。
測定を例として説明すると、ビタミンCは図1に示すよ
うに、活性酸素と反応すると、アスコルビン酸ラジカル
を生じ、最終的にはジケト−L−グロン酸とL−スレオ
ニン酸になる。
したヒドロキシルラジカルの存在する活性酸素の発生系
にビタミンCを含む試料を加えると、ヒドロキシルラジ
カルの量は、添加した試料中に含まれるビタミンCの量
に応じて減少するので、ビタミンCを含む試料の添加の
前後におけるヒドロキシルラジカルの量をスピントラッ
プ剤によって捕捉したスピンアダクトとして定量するこ
とが可能となる。
いは生成した反応性のきわめて大きなヒドロキシルラジ
カルと反応する各種の酵素等の物質が存在している可能
性のある試料を測定する場合には、ヒドロキシルラジカ
ルによるスピンアダクトの測定値の減少値を直ちにビタ
ミンCの量として同定することはできないが、ビタミン
Cの機能のみを抑制するビタミンC酸化酵素を加えるこ
とにより、ビタミンCによって減少したヒドロキシルラ
ジカルの量を正確に知ることが可能であることを見いだ
した。
の成分を含んでいる場合には、ビタミンC以外にも活性
酸素の生成を抑制する物質あるいは活性酸素を消去する
物質が存在していることが考えられるが、ビタミンCの
作用のみを阻害することができる選択性が高い物質を添
加した場合の測定値との比較によって、ビタミンCによ
って減少した活性酸素の量を正確に知ることが可能とな
る。
明すると、活性酸素としてヒドロキシルラジカルを利用
する場合には、過酸化水素と金属イオンとの反応を利用
したフェントン反応などで発生させることができるが、
金属イオンとしては硫酸第1鉄を等濃度のキレート化剤
であるDETAPAC(diethylene−tri
amine−pentaacetic−acid)に配
位したものなどを使用して、ヒドロキシルラジカルの定
量的な発生をコントロールすることが好ましい。
ジカル(・OH)は寿命が短く、また試料中に存在する
各種の物質と容易に反応するので、このままでは正確な
ラジカルの量を電子スピン共鳴装置によって測定するこ
とが困難であるので、スピントラップ剤を添加して安定
なスピンアダクトを得ている。
−dimethyl−1−pyrroline−1−o
xide)、PBN(α−phenyl−N−t−bu
thylnitrone)等を使用することができる。
図2には、これらによるスピンアダクトの発生の化学反
応式を示すが、活性酸素と安定なラジカルを生成するも
のであれば任意のスピントラップ剤が使用可能である。
L(2,2,6,6−tetramethyl−4−h
ydroxyl−piperidine−1−oxy
l)のような安定なラジカルを標準物質として測定す
る。
水素の濃度を変化させた場合のスピンアダクトの量を測
定して、過酸化水素に関する検量線を作成し、つづいて
濃度の判明した過酸化水素中へ添加するビタミンCの濃
度を変化させて、ビタミンCの添加によるスピンアダク
トの測定値の減少量から描いた検量線に基づいて測定す
べき試料中のビタミンCの量を測定する。
あるいは食品などのように測定に影響を与える可能性を
有する物質を含む場合には、試料にビタミンC酸化酵素
などのようにビタミンCがヒドロキシルラジカルを消去
する機能を阻害する物質を加えたものと加えないものと
から得られる測定値を比較することにより、ビタミンC
によって減少したスピンアダクトの量を正確に知ること
ができ、これから試料中のビタミンCを定量することが
可能となる。
に限らず、基質から発生した活性酸素の消去物質と、該
消去物質の作用を阻害する物質の測定に使用することが
できる。
るものであれば、酸素、過酸化水素等の過酸化物、t−
ブチルヒドロペルオキシド(t−BuOOH)等の有機
過酸化物等を使用することができる。
(アスコルビン酸)とビタミンCの作用を不活化するビ
タミンC酸化酵素、ニコチンアミドアデニンヌクレオチ
ドリン酸等をあげることができ、測定に使用する試料は
比色分析等で必要な各種の前処理をする必要がなく、着
色している試料や浮遊物あるいは懸濁状態の試料であっ
ても問題なく測定することが可能である。
生する活性酸素の発生系に活性酸素の消去物質を添加し
て、残存する活性酸素をスピントラップ剤によって捕捉
して生成したスピンアダクトの量を電子スピン共鳴装置
によって測定するとともに、該消去物質の機能を阻害す
る物質を添加して同様に存在する活性酸素をスピントラ
ップ剤によって捕捉したスピンアダクトの量を電子スピ
ン共鳴装置によって測定することにより活性酸素の消去
物質あるいは活性酸素の消去物質の機能を阻害する物質
を定量することが可能である。
本発明を説明する。
剤であるDETAPAC(diethylene−tr
iamine−pentaacetic−acid)に
配位させて得られたFe−DETAPACキレートと1
mMの過酸化水素を反応(フェントン反応)させ、生じ
るヒドロキシルラジカル(OH・)を60mMに調整し
たDMPOからなるスピントラップ剤によってスピンア
ダクトを電子スピン共鳴装置によって測定した。
置(JESRE1X)を用い、磁場:3370±50
G、磁場変調:100KHz、0.8G、マイクロ波出
力:8mW、増幅率:100ないし500、応答時間:
0.1秒、掃引時間:2分の条件で測定した。
PACキレート溶液の75μlに50μlの水を混合し
て、この溶液に60mMのDMPO、1mMの過酸化水
素を75μlを加え、10秒間撹拌した後に、水溶液用
のセルに移し過酸化水素添加40秒後に測定を開始し、
2分間で測定した。
した場合のヒドロキシルラジカルのESRスペクトルを
示す。
tetramethyl−4−hydroxyl−pi
peridine−1−oxyl)によって得られるE
SRスペクトルとの比較定量法によってスピンアダクト
の量を求めた。
度を変化させて得られたスピンアダクトの量を過酸化水
素濃度を横軸に相対信号強度を縦軸として示すが、過酸
化水素濃度と相対信号強度が比例関係にあることがわか
る。
去剤であるメタノール、ジメチルスルフォオキサイドの
添加によって消失することから、DMPOでヒドロキシ
ルラジカルが測定されることが確かめられた。
溶液の75μlにビタミンCを2.8μMないし100
μMの50μlを加えて、この溶液に60mMのDMP
Oを加え、1mMの過酸化水素水の75μlを加え、ビ
タミンCを添加しない場合と同様にしてESRでヒドロ
キシルラジカルの量を測定したところ、スピントラップ
剤としてDMPOを使用して、ビタミンCの濃度を測定
したスペクトルを図5に示す。
もなってスピンアダクトの量が減少することが確認でき
た。ビタミンCを添加しない場合のスペクトルの信号強
度I0とビタミンCを添加した場合の信号強度Iから、
相対信号強度(I0/I−1)を求め、相対信号強度を
縦軸に、横軸にはビタミンCの濃度をとってプロットし
たところ両者の関係を示す図6が得られた。
ンCの量と相対信号強度の間からは、0.999231
の相対係数が得られ、本発明の方法によって活性酸素の
発生系のビタミンCの濃度が測定可能である。
料は生体物質や食品を被検液とする場合が多く、このよ
うな被検液中にはヒドロキシルラジカルの消去能を有す
る多くの物質が存在している可能性があるので、ヒドロ
キシルラジカルから生成したスピンアダクトのESRス
ペクトルの信号強度の低下がビタミンCによって消去さ
れたことによるものか、あるいは過酸化水素から発生す
るヒドロキシルラジカルの量が減少したり、ビタミンC
以外のものによってヒドロキシルラジカルが消費された
ものであるのか否かを確認したければ、ビタミンCの量
を正確に定量することはできない。
ンCの機能を阻害する物質を加えて、ビタミンCの機能
の消去の前後における測定値から被検液中のビタミンC
の濃度を測定することを見いだした。
は、ビタミンC酸化酵素等を加えれば良い。
して発生する活性酸素の発生系にビタミンCのような活
性酸素を消去する物質を加えて、残存する活性酸素をス
ピントラップ剤によって捕捉してスピンアダクトの量を
電子スピン共鳴装置によって測定するとともに、ビタミ
ンCの機能を阻害するビタミンC酸化酵素を加えて同様
に測定し、両者の測定値の差から活性酸素を消去する物
質の量あるいはビタミンC酸化酵素のような活性酸素の
消去物質を阻害する物質を、活性酸素と反応する各種の
物質を含む被検液から選択的に定量することができ、し
かも被検液には各種の前処理などを行うことなく、着色
している試料、浮遊物あるいは懸濁状態の試料であって
も問題なく測定することが可能である。
生じるスピンアダクトを示す化学反応式示す。
ルラジカルのESRスペクトルを示す。
ダクトの量を過酸化水素濃度を横軸に相対信号強度を縦
軸として示す。
ビタミンCの濃度を測定したスペクトルを示す。
信号強度を縦軸とった濃度と相対強度の関係を示しす。
Claims (2)
- 【請求項1】 酸素または過酸化物を基質として発生す
る活性酸素の発生系に、発生した活性酸素の消去物質を
含む試料を添加して残存する活性酸素をスピントラップ
剤によって捕捉して生成したスピンアダクトの量を電子
スピン共鳴装置によって測定するとともに、活性酸素を
消去する該物質の機能を阻害する物質を試料に添加した
後に残存する活性酸素をスピントラップ剤によって捕捉
して生成したスピンアダクトの量を電子スピン共鳴装置
によって測定し、両者の測定値の差から活性酸素の消去
物質または、該消去物質の機能を阻害する物質を定量す
ることを特徴とする活性酸素を利用した物質の定量方
法。 - 【請求項2】活性酸素の発生系が過酸化水素と金属イオ
ンによるヒドロキシラジカルの発生系であり、活性酸素
の消去物質がビタミンC、ビタミンCの機能を阻害する
物質がビタミンC酸化酵素であることを特徴とする請求
項1に記載の活性酸素発生系に作用する物質の定量方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9084291A JP2908898B2 (ja) | 1991-04-22 | 1991-04-22 | 活性酸素を利用した物質の定量方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9084291A JP2908898B2 (ja) | 1991-04-22 | 1991-04-22 | 活性酸素を利用した物質の定量方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH04320696A JPH04320696A (ja) | 1992-11-11 |
JP2908898B2 true JP2908898B2 (ja) | 1999-06-21 |
Family
ID=14009839
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP9084291A Expired - Fee Related JP2908898B2 (ja) | 1991-04-22 | 1991-04-22 | 活性酸素を利用した物質の定量方法 |
Country Status (1)
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---|---|
JP (1) | JP2908898B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4647742B2 (ja) * | 2000-03-13 | 2011-03-09 | 三菱化学メディエンス株式会社 | アスコルビン酸の分析方法及び分析用試薬 |
JP5703283B2 (ja) | 2012-12-28 | 2015-04-15 | 株式会社東芝 | Ohラジカル測定装置及び液体処理装置 |
-
1991
- 1991-04-22 JP JP9084291A patent/JP2908898B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
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