JP2897592B2 - 低重合度パラアラミドドープ、それから製造されるパラアラミド繊維およびパラアラミドパルプならびにそれらの製造方法 - Google Patents

低重合度パラアラミドドープ、それから製造されるパラアラミド繊維およびパラアラミドパルプならびにそれらの製造方法

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JP2897592B2 JP11983093A JP11983093A JP2897592B2 JP 2897592 B2 JP2897592 B2 JP 2897592B2 JP 11983093 A JP11983093 A JP 11983093A JP 11983093 A JP11983093 A JP 11983093A JP 2897592 B2 JP2897592 B2 JP 2897592B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パラアラミド繊維およ
びパラアラミドパルプならびにそれらの製造方法に関す
る。とくに低重合度パラアラミドからなるドープ、該ド
ープから製造されるパラアラミド繊維およびパラアラミ
ドパルプならびにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、パラ配向芳香族ジアミンとパラ配
向芳香族ジカルボン酸ハライドの縮重合体であるパラ配
向芳香族アミド(以下、パラアラミドと略称することが
ある)は、その高強度、高弾性率、高耐熱性等から繊維
やパルプ等の各種用途に有用であることが知られてい
る。
【0003】パラアラミドの代表的なものとして、ポリ
(パラフェニレンテレフタルアミド)(以下、PPTA
と略称することがある)がある。従来、PPTAのパル
プはつぎのようにして製造されている。すなわち、N−
メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称すること
がある)等の極性アミド系溶媒中で溶液重合して得られ
るPPTAを、再沈、中和、水洗および乾燥して一旦ポ
リマーとして単離する。ついで該ポリマーを溶媒に溶解
して乾湿式紡糸によりPPTA繊維を製造する。このと
き、PPTAは有機溶剤には溶解し難いために、濃硫酸
が紡糸ドープ用の溶媒として使用される。この場合に
は、紡糸ドープは光学的異方性を示すことが特公昭50
−8474号公報に示されている。
【0004】一方、有機溶媒からなる光学的異方性を示
すパラアラミド溶液の例は限られた範囲で報告されてい
る。すなわち、特公昭50−35941号公報には、
2,6−ジクロロ−パラフェニレン2,6−ナフタルア
ミド重合体をN,N−ジメチルアセトアミド/塩化リチ
ウムに溶解した光学的異方性を有する紡糸ドープなどで
例示されるもの、また、特公昭50−12485号公報
には、パラアラミドの代表例であるPPTAではヘキサ
メチルホスホルアミド/N−メチルピロリドン/塩化リ
チウムを溶媒として光学的異方性を有する紡糸ドープが
例示されている。前者の例は有機溶媒との親和性を有す
るモノマーを使用することを特徴にしている。後者の例
はパラアラミドの溶解性の高いヘキサメチルホスホルア
ミドを使用することを特徴にしている。長繊維としての
性能、特に強度・剛性の観点から濃硫酸を溶媒とした紡
糸ドープを使用してPPTA繊維が工業的に生産されて
いる。
【0005】また、PPTA繊維は機械的に切断された
後、水に分散されて叩解等の機械的な剪断力によりフィ
ブリル化され、ついで水濾過および乾燥の工程を経てパ
ルプが製造される。このように従来の製法では、重合、
紡糸およびパルプ化の工程が完全に分離しており、重合
系では極性アミド系溶媒、紡糸系では濃硫酸と二種類の
溶媒を使用し、かつパルプ化系では水を分散溶剤として
用いており、工業的製法としては経済的に不利益なもの
となっている。
【0006】かかる従来の製法を合理化する目的で、重
合と紡糸の工程を分離せず、液状重合体ドープから直接
的に紡糸もしくはパルプ化する製法が提案されている。
特開平2─242912号公報には、パラ配向芳香族ジ
アミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドとを等モ
ルで極性アミド系溶媒中で縮重合させ、重合が完了する
前の光学的異方性を示す重合溶液を配向流動させた状態
でゲル化させた後、ゲルを切断して水を凝固剤として機
械的剪断力を加えパルプ化する製法が提案されている。
該製法では切断したゲルを高温で保持することで、さら
に重合が進行し最終的に高分子量のパラアラミドパルプ
となる。
【0007】特公平3─29883号公報には、芳香族
ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドとを等モル
で、無機塩を溶解した極性アミド系溶媒中で縮重合さ
せ、重合が完了する前の光学的異方性を示す重合溶液を
紡糸ドープとして第3級アミンを含む凝固液中に紡糸し
て繊維を製造する方法が提案されている。該公報には該
繊維からパルプを製造することも記載されている。その
方法によれば凝固液に含まれる第3級アミンの作用で紡
糸後にさらに重合が進行し、最終的には高重合度のアラ
ミド繊維又はパルプとなる。
【0008】その他、特公昭57─10885号公報、
特公昭61─42004号公報、特開昭62─4571
6号公報および特公昭62─162013号公報にも前
述の公報に記載の方法と基本的に類似の製法が提案され
ている。すなわち、縮重合が完了する前の光学的異方性
を有する重合液から紡糸または凝固液を加えて、高剪断
力を加えることにより、それぞれ繊維またはパルプを製
造するという方法である。いずれの場合も芳香族ジアミ
ンと芳香族ジカルボン酸ハライドは等モルで縮重合さ
れ、紡糸もしくはパルプ化と同時もしくはその直後にさ
らに重合を進行させて、最終的に高分子量のアラミド繊
維又はパルプが製造される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
の製法より格段に工程数を少なくするために、パラアラ
ミド重合液そのものを光学的異方性を有するパラアラミ
ドの紡糸ドープ(以下、本発明においてパラアラミドド
ープと称することがある)とすることである。これを達
成することにより、工業的に優位にアラミド繊維を製造
することができる。また該アラミド繊維からパラアラミ
ドパルプを経済的に有利な方法で製造することができ
る。
【0010】前述の特許公報では、濃硫酸を使用する場
合には繊維もしくはパルプを製造するまでの工程が著し
く繁雑であり、設備の材質も濃硫酸による腐蝕を回避す
るため高価なものとなる。また、PPTAからなる光学
異方性を有する溶液として唯一報告されているヘキサメ
チルホスホルアミド/N−メチルピロリドン/塩化リチ
ウムの溶媒系では、ヘキサメチルホスホルアミドが発ガ
ン性を有することから工業的には実施できない。
【0011】また、前述の特許公報に記載されている方
法によれば、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ハラ
イドとを等モルで縮重合させて、重合が完了する直前の
光学的異方性を示す重合液ドープから繊維またはパルプ
の形状にしているが、この場合の重合液ドープは本質的
に重合の進行途中の中間体であり、したがって容易に高
分子量化して重合液ドープ全体がゲル化する不安定な状
態にあるので、均一な品質の製品が得られにくいこと、
また安定した操業も難しいことにより、工業的な製法と
しては必ずしも成功したものとなっていないのが現状で
ある。本発明は、これらの点を改良して均一な品質の製
品を安定的に、かつ工業的に有利な簡素化された工程で
製造する方法を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は以下に記す発明
からなる。1.アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を2〜
10重量%溶解した極性アミド系溶媒中で、パラ配向芳
香族ジアミン1.00モルに対してパラ配向芳香族ジカ
ルボン酸ハライド0.94〜0.99モルを添加して、
温度−20〜50℃で重合して形成される、パラアラミ
ド濃度が4〜10重量%である光学的異方性を有する低
重合度パラアラミドドープ。 2.パラ配向芳香族ジアミン1.00モルに対してパラ
配向芳香族ジカルボン酸ハライド0.95〜0.98モ
ルを添加する項1記載の低重合度パラアラミドドープ。 3.極性アミド系溶媒がN,N’−ジメチルホルムアミ
ド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2
−ピロリドンおよびテトラメチル尿素からなる群から選
ばれるものである請求項1又は2記載の低重合度アラミ
ドドープ。 4.項1〜3記載の低重合度アラミドドープを紡糸する
パラアラミド繊維の製造方法。 5.項4記載のパラアラミド繊維を切断して短繊維と
し、該短繊維を高剪断力で機械的にフィブリル化した後
乾燥するパラアラミドパルプの製造方法。
【0013】以下、本発明について詳しく説明する。本
発明においてパラアラミドとは、パラ配向芳香族ジアミ
ンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドの縮重合によ
り得られるものであり、アミド結合が芳香族環のパラ位
またはそれに準じた配向位(例えば、4,4’−ビフェ
ニレン、1,5−ナフタレン、2,6−ナフタレン等の
ような反対方向に同軸または平行に延びる配向位)で結
合される繰り返し単位から実質的になるもので、例え
ば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ
(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ
(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン
酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレ
ンジカルボン酸アミド)等ポリパラ配向型またはパラ配
向型に近い構造を有するアラミドが具体的に例示され
る。なかでもポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)
が代表的である。
【0014】本発明において低重合度パラアラミドと
は、固有粘度(本発明において固有粘度とは、後に定義
するものをいう)で表して、1.0〜2.5dl/g、
好ましくは1.5〜2.2dl/gの値を示すパラアラ
ミドを言う。固有粘度が1.0dl/g未満ではパラア
ラミド繊維としての十分な機械的強度が得られず、結果
的にそれから得られるパラアラミドパルプの機械的強度
も低下する。固有粘度が2.5dl/gを越えるとパラ
アラミドの単位重量当たりの分子鎖末端の官能基数が少
なくなり、パルプとして使用されるときのマトリックス
樹脂との接着性が不十分となることが示唆され、また重
合液が光学的異方性を示す安定な液状重合体ドープとな
らず、ゲルが生成し紡糸が困難となる。
【0015】本発明の低重合度パラアラミドドープは、
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を2〜1
0重量%溶解した極性アミド系溶媒中で、パラアラミド
濃度が4〜10重量%になるように、パラ配向芳香族ジ
アミン1.00モルに対してパラ配向芳香族ジカルボン
酸ハライドを0.94〜0.99モル、好ましくは0.
95〜0.98モル添加して、温度−20〜50℃で重
合して製造される。
【0016】本発明に用いられるパラ配向芳香族ジアミ
ンを例示すると、パラフェニレンジアミン、4,4’−
ジアミノビフェニル、2−メチル−パラフェニレンジア
ミン、2−クロロ−パラフェニレンジアミン、2,6−
ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミンおよ
び4,4’−ジアミノベンズアニリド等を挙げることが
できる。
【0017】本発明に用いられるパラ配向芳香族ジカル
ボン酸ハライドを例示すると、テレフタロイルクロリ
ド、4,4’−ベンゾイルクロリド、2−クロロテレフ
タロイルクロリド、2,5−ジクロロテレフタロイルク
ロリド、2−メチルテレフタロイルクロリド、2,6−
ナフタレンジカルボン酸クロリドおよび1,5−ナフタ
レンジカルボン酸クロリド等を挙げることができる。
【0018】本発明においては、パラ配向芳香族ジアミ
ン1.00モルに対して、パラ配向芳香族ジカルボン酸
ハライドを0.94〜0.99モル、好ましくは0.9
5〜0.98モル用いる。この条件において目的とする
低重合度パラアラミドドープ並びにパラアラミド繊維お
よびパルプを得ることができる。また、生成するパラア
ラミドの重合度(固有粘度で表す)は重合系内の水分の
影響を受けるので、水分はできるだけ少なくすることが
好ましい。液状重合体ドープ中のパラアラミド濃度は4
〜10重量%、好ましくは5〜9重量%に制御される。
パラアラミド濃度が4重量%未満であると、重合液は光
学的に等方性の液体となり、該重合液から得られる繊維
は剛性、強度が低く、また該繊維からは十分なフィブリ
ルを有するパルプが得られにくい。また、10重量%を
超えると、重合液中で重合物が析出し安定なパラアラミ
ドドープとならないので好ましくない。
【0019】本発明において用いられるアルカリ金属ま
たはアルカリ土類金属の塩化物を例示すると、塩化リチ
ウム、塩化カルシウムを挙げることができる。これら塩
化物の重合系への添加量は縮重合で生成するアミド基
1.0モル当たり0.5〜2.5モルの範囲が好まし
く、0.5〜1.5モルの範囲がより好ましく0.7〜
1.3モルの範囲がさらに好ましい。0.5モル未満で
は生成するパラアラミドの溶解性が不十分となり、2.
5モルを越えると重合液の粘度が高くなり紡糸性が低下
するので好ましくない。アルカリ金属又はアルカリ土類
金属の塩化物の濃度は2〜10重量%である。この濃度
が2重量%未満であると、重縮合で生成するパラアラミ
ドの溶解性が不十分となり、また、10重量%を超える
と、該塩化物の極性アミド系溶媒への溶解が困難となる
ので好ましくない。
【0020】本発明で使用される極性アミド系溶媒を具
体的に例示すると、N,N’−ジメチルホルムアミド、
N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピ
ロリドン(NMP)およびテトラメチル尿素等を挙げる
ことができる。
【0021】本発明において、パラアラミドの重合温度
は−20〜50℃、好ましくは−10〜30℃、より好
ましくは0〜25℃である。この温度範囲をはずれると
重合系からパラアラミドが析出して紡糸ドープとして不
適当となる。すなわち、この温度範囲内では重合液は液
晶状態を保持しており、光学的異方性を示し、それから
紡糸により製造される繊維は十分な結晶化度と結晶配向
度を有することができる。また、低温では重合速度が遅
くなるので重合に時間を要し、工業的に不利益となる。
【0022】本発明の重合液を紡糸ドープとして紡糸す
るときの紡糸延伸倍率は紡糸の方式によっても最適の範
囲が異なりとくに限定されない。具体的には、湿式紡糸
系では0.5〜2程度であり、乾湿式紡糸系、例えば、
いわゆるエアギャップ方式を採用する場合は2〜8程度
である。
【0023】本発明においてパルプは従来方法を適用し
て製造することができる。具体的には、紡糸により得ら
れたパラアラミド繊維は、延伸、切断または剪断により
短繊維化される。ついでフィブリル化させるには、粉
砕、すりつぶし、衝撃あるいは叩解のような機械的剪断
力を加えることが必要であるが、短繊維化と同時にこれ
らの操作を実施することもできる。フィブリル化のため
には紙製造において使用されている各種のビーター、ホ
ーランダーおよびリファイナー等が好適に使用される。
好ましいパルプの製造方法は、本発明の低重合度パラア
ラミドドープを紡糸して得られるパラアラミド繊維を湿
潤状態で切断して短繊維とし、該短繊維を高剪断力で機
械的にフィブリル化した後、乾燥してパルプを得る方法
である。また、別の方法として、乾燥後にフィブリル化
する方法を用いることもできる。
【0024】本発明のパラアラミドパルプは、パラアラ
ミドパルプ紙、自動車用等のブレーキを含む摩擦材およ
び各種ガスケットの原料等に有用である。
【0025】
【発明の効果】本発明の低重合度パラアラミドドープ
は、低温で安定な液晶を示す。また、本発明の低重合度
パラアラミドドープは、従来の濃硫酸を溶媒とするドー
プに比較して、製造工程が簡素化できる点、また、濃硫
酸による設備腐蝕の問題がない点で工業的に有利に製造
することができる。また、本発明の方法によれば、重合
液から直接的に紡糸ができ、また湿潤系の状態でパルプ
化できるので、従来のパラアラミドパルプの製造方法に
比べて製造工程が著しく簡略化できる。本発明の低重合
度パラアラミドドープから製造されたパラアラミド繊維
は、パラアラミドパルプ用の原料として充分な性能を有
している。具体的には、本発明のパラアラミドパルプか
ら裂断長の強いパラアラミドパルプ紙を製造することが
できる。また、自動車用等のブレーキを含む摩擦材の原
料として用いたとき、フィラーの保持性が良好である。
【0026】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。実施例および比較例における試験・評価方法または
判定基準はつぎに示すとおりである。 (1)固有粘度 本発明において固有粘度とは、つぎの測定方法によるも
のと定義する。96〜98%硫酸100mlにパラアラ
ミド重合体0.5gを溶解した溶液および96〜98%
硫酸について、それぞれ毛細管粘度計により30℃にて
流動時間を測定し、求められた流動時間の比から次式に
より固有粘度を求めた。 固有粘度=ln(T/T0 )/C〔単位:dl/g〕 ここで、TおよびT0 はそれぞれパラアラミド硫酸溶液
および硫酸の流動時間であり、Cはパラアラミド硫酸溶
液中のパラアラミド濃度(g/dl)を示す。 (2)比表面積 マイクロメリティクス社製フローソープII2300型
を用いて、BET比表面積法により窒素の吸着量から、
パラアラミドパルプの比表面積(m2 /g)を求めた。 (3)単繊維の引張り強度 JIS R7601に準拠して測定した。
【0027】(4)光学的異方性(液晶状態)の評価 重合終了後の溶液について、蛍光顕微鏡によりパラアラ
ミドのポリマーが析出しているかどうかを検査した。ポ
リマーの析出が認められず、かつ重合容器内において攪
拌時は白濁し、攪拌停止時には透明感を示す重合液は液
晶状態を示しており、光学的異方性を有していると判断
した。 (5)重合ドープの粘度測定 重合終了後の溶液(重合ドープ)について、レオメトリ
ックス社製のRDS−IIを使用し、温度−5℃で動的
粘度の周波数分散を測定した。粘度の測定値としては便
宜的に剪断速度100ラジアン/秒の動的粘度で比較し
た。
【0028】(6)パルプとしての評価 2種類の用途における主要な性能を評価した。パラアラ
ミドパルプからなる紙としての性能はJIS P811
3に準拠して裂断長を測定した。また、自動車用ブレー
キを含む摩擦材の原料としては、JIS P8207に
準拠してパルプのふるい分け試験方法によりフィラーの
保持性を評価した。摩擦材の原料としてのパラアラミド
パルプは、無機フィラー、無機短繊維およびフェノール
樹脂からなる配合物と混合される。この混合物はパラア
ラミドパルプがなければ粉状態の配合物の集合体なの
で、後の工程での取り扱いが困難となる。パラアラミド
パルプの共存により粉状配合物は形態が保持されて、摩
擦材製造工程での操作が容易となる。このようなパラア
ラミドパルプの重要な性能を評価するのにJIS P8
207でフィラーの保持性が有効な指標となる。
【0029】実施例1〜5 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕攪
拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する5
00mlのセパラブルフラスコを使用してパラ(フェニ
レンテレフタルアミド)の重合を行った。フラスコを十
分乾燥してからNMPを300gと表1に示す量の乾燥
した塩化カルシウムを添加し、内温85℃で完全に溶解
した。つぎに表1に示す量のパラフェニレンジアミン
(以下PPDと略称することがある)を加えて溶解し、
内温が−6℃になるまで冷却した後、内温を5℃以下に
保ちながら、表1に示す量のテレフタロイルクロリド
(以下TPCと略称することがある)を徐々に加えた。
TPCの添加終了後、温度−6〜0℃にて2時間熟成し
て安定な重合液(本発明の低重合度パラアラミドドー
プ)を得た。実験結果も表1に記した。
【0030】比較例1、2 表1に示す組成で重合した以外は実施例1〜5と同様に
してポリ(パラフェニレンテレフタルアミドを得た。比
較例2では重合液がスラッジ状になった。比較例1のポ
リ(パラフェニレンテレフタルアミド)は固有粘度が低
すぎてそれから得られる繊維の機械的強度が低いことが
示唆された。
【0031】
【表1】
【0032】実施例6 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕攪
拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する5
00mlのセパラブルフラスコを使用してパラ(フェニ
レンテレフタルアミド)の重合を行った。フラスコを十
分乾燥してからNMPを300gと表2に示す量の乾燥
した塩化カルシウムを添加し、内温85℃で完全に溶解
した。つぎに表1に示す量のPPDを加えて溶解し、内
温が−6℃になるまで冷却した後、内温を5℃以下に保
ちながら、表2に示す量のTPCを徐々に加えた。TP
Cの添加終了後、温度−6〜0℃にて2時間熟成して安
定な重合液(本発明の低重合度パラアラミドドープ)を
得た。実験結果も表2に記した。
【0033】実施例7〜19、比較例3〜5 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕重
合時の原料の仕込み量を変化させた以外は実施例6と同
様にして、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の
重合を行い、本発明の低重合度パラアラミドドープを得
た。実験結果を表2に記した。
【0034】実施例11により、重合完了後のドープが
光学的等方性を示す領域で、重合体濃度が約4重量%で
液晶状態が出現しはじめることが分かった。この領域で
は重合体濃度の増加に伴い重合体ドープの粘度が増加し
た。比較例5から、重合体濃度が10重量%を超える
と、重合体の析出が始まることが分かった。一方、実施
例6、9、および12に示すように、液晶領域では重合
体濃度の増加に伴い重合体ドープの粘度は減少した。ま
た、重合体の固有粘度が2.5を越えると、比較例4で
示されるように重合体ドープはゴム状となり紡糸ドープ
としては不適切なものであった。
【0035】
【表2】
【0036】実施例20 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕撹
拌翼、温度計、窒素流入管及び粉体添加口を有する5l
のセパラブルフラスコを使用してポリ(パラフェニレン
テレフタルアミド)の重合を行った。フラスコを十分に
乾燥してからNMPを3kgと塩化カルシウムを19
7.0g(1.775モル)添加し、内温85℃で完全
に溶解した。つぎにPPDを97.33g(0.900
モル)加えて溶解し、内温が−5℃になるまで冷却した
後、内温を5℃以下に保ちながらTPC176.55g
(0.870モル)を徐々に加えた。TPCの添加終了
後、温度−6〜0℃にて2時間熟成して安定な重合液
(低重合度パラアラミドドープ)を得た。重合液の一部
をサンプリングして水で再沈してポリマーとして取り出
し、得られたポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)
の固有粘度を測定したところ、1.52dl/gであっ
た。
【0037】実施例21〜24 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の紡糸〕実
施例16、18、19および20で製造したドープを、
NMPを20wt%含む水溶液を凝固液として、定速ポ
ンプに連結した注射器型の簡易紡糸装置を用いて紡糸テ
ストを行った。紡糸ノズルは、その穴はコーン型の形状
で先端は円柱状であり、円柱状の穴部分のL/Dが1で
あり、穴径0.07mm、穴数100のものを使用し
た。紡糸時の延伸倍率は表3に示すとおりである。紡糸
後、水洗して乾燥した単繊維のデニール数と引張り強度
を測定して表3に示した。ちなみに、硫酸を溶媒とした
紡糸ドープからエアギャップ紡糸により製造された市販
のパラアラミド繊維と比較すると、繊維での引張強度は
約1/5〜1/2程度であった。しかし、高強度ナイロ
ン繊維等の一般の高強度繊維と比較するとほぼ同等の水
準であった。
【0038】
【表3】
【0039】実施例25 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプの製
造〕実施例21で製造したポリ(パラフェニレンテレフ
タルアミド)の湿潤糸を約30mmの長さに切断し、熊
谷理機工業(株)製のPF1ミルでパルプ化した。得ら
れたポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の湿潤パ
ルプを乾燥してその比表面積を測定したところ約2m2
/gであった。
【0040】参考例1 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)紙の製造と
評価〕実施例25で得られたパルプを湿潤状態のまま
で、熊谷理機工業(株)製の標準角型シートマシンを用
いて抄紙した後、乾燥してパラアラミドパルプ製の紙を
得た。このパラアラミドパルプ紙は厚みが100μm
で、その裂断長は0.11kmであった。乾燥前後の重
量測定から、湿潤状態のパルプの固形分(パラアラミ
ド)は約20重量%であった。比較用として、従来の市
販のパラアラミドパルプから同一の抄紙機を用いて抄紙
して得たパラアラミドパルプ紙は、裂断長が0.08k
mであり、本参考例のパラアラミド紙の紙力は遜色がな
かった。
【0041】参考例2 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプのブ
レーキ用途の評価〕実施例21および実施例25と同様
な方法でポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パル
プを製造した。得られたパルプは乾燥後の比表面積が3
2 /gであった。つぎに乾燥した該パルプを使用し
て、自動車のブレーキ製造用の原料としての性能を評価
した。ブレーキ用組成物の配合組成はつぎのとおりであ
った。 パラアラミドパルプ:2.16重量部、ロックウール:
24.84重量部、硫酸バリウム:35.1重量部、カ
オリン:27.1重量部 粉状フェノール樹脂:10.8重量部 これらの成分は乾式で混合した。つぎに、得られた混合
物のフィラー保持率をJIS P8207に準拠して評
価したところ、本参考例でのパラアラミドパルプでは6
2%、従来のパラアラミドパルプでは48%であった。
フィラー保持率は高い方が摩擦材製造工程での取り扱い
性が優れると言われており、本参考例のパラアラミドパ
ルプが高性能であることが示唆された。
【0042】実施例26 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕攪
拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する5
00mlのセパラブルフラスコを使用してポリ(パラフ
ェニレンテレフタルアミド)の重合を行った。フラスコ
を十分乾燥してから、200℃で2時間乾燥した塩化カ
ルシウムを25.63g、ついで、NMPを390g添
加して85℃に昇温した。塩化カルシウムが完全に溶解
してから室温まで放冷して、PPDを12.65g
(0.117モル)添加して完全に溶解させた。この溶
液をさらに約2〜3℃の氷水で冷却し、内温が5℃にな
ったところでTPCの全添加量22.74g(0.11
2モル)の約1/3を徐々に添加した。重合熱で内温は
8℃まで上昇したが、10分後には再度3℃まで下がっ
た。この時点でさらにTPCの全添加量の約1/3を徐
々に添加したところ内温は10℃まで上昇したが、10
分後には再度5℃まで下がった。内温が5℃になったと
き、残りのTPCを徐々に添加した。この時点では重合
液は増粘しており、急激な重合は起こらず内温はほぼ5
℃で一定であった。TPCが完全に溶解してから5℃で
2時間熟成した。熟成後の重合液(重合体ドープ)は光
学異方性を示し、いわゆるリオトロピック溶液であっ
た。以上の方法で合成して得られたポリ(パラフェニレ
ンテレフタルアミド)の固有粘度は1.54dl/gで
あった。
【0043】実施例27 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕実
施例26と同様に塩化カルシウムを25.68gとPP
Dを12.65gとをNMP390gに溶解した。この
溶液を内温5℃まで冷却したところで、TPCを全添加
量22.84g(0.113モル)の約1/3より少量
だけ多目に添加したところ、内温は22℃まで上昇し
た。内温が5℃まで下がった15分後に残りのTPCを
3回に分けて徐々に添加し、内温が8〜11℃になるよ
うに調整して熟成した。熟成後の重合液(低重合度パラ
アラミドドープ)は光学異方性を示した。一部をサンプ
リングして水で再沈してポリマーとして取り出し、得ら
れたポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の固有粘
度は2.00dl/gであった。
【0044】実施例28 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕実
施例26と同様に塩化カルシウムを25.68gとPP
Dを12.65gとをNMP390gに溶解した。この
溶液を内温14℃まで冷却したところで、TPCを全添
加量22.62g(0.1114モル)の約1/10添
加したところ、内温は17℃まで上昇した。内温が14
℃まで下がった約5分後にさらに全添加量の約1/10
を添加した。この操作を全部で5回繰り返し、TPCの
全添加量の約半分を添加した。この間、内温は最高19
℃まで上昇した。つぎに、TPCの残量を3等分して前
述の操作を繰り返した。この間、内温は最高16℃まで
上昇した。最後のTPCを添加して約2分後に重合液は
光学等方性液から液晶へと相転移した。その後、内温1
6℃で1時間熟成して実施例27と同様にポリマーを取
り出した。得られたポリ(パラフェニレンテレフタルア
ミド)の固有粘度は1.45dl/gであった。
【0045】実施例29 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕重
合温度を平均温度16℃から20℃に上げた以外は実施
例28と同様にして重合した。得られたポリ(パラフェ
ニレンテレフタルアミド)の固有粘度は1.45dl/
gであった。この重合ではTPC仕込み時の内温は18
℃で、熟成温度は20℃であった。なお、内温は最高で
24℃まで上昇した以外は18℃から21℃の範囲に入
っていた。この場合にもTPC最終添加後約2分間で液
晶に相転移した。
【0046】実施例30 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕重
合温度を平均温度16℃から40℃に上げた以外は実施
例28と同様にして重合した。この重合ではTPC仕込
み時の内温は38℃で、熟成温度は40℃であった。内
温は38℃から44℃の範囲だった。本実施例ではTP
C最終添加後約1分間で液晶に相転移した。
【0047】比較例6 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕実
施例26と同様に塩化カルシウムを24.34gとPP
Dを16.87g(0.1560モル)とをNMP39
0gに溶解した。この溶液を内温28℃まで冷却したと
ころで、TPCを全添加量30.17g(0.1486
モル)の約1/9添加したところ、内温は34℃まで上
昇した。内温が28℃まで下がった約20分後にさらに
全添加量の約1/9を添加した。この操作を全部で9回
繰り返し、TPCを添加した。この間、内温は最高36
℃まで上昇した。最後のTPCを添加して約1分後に重
合液は光学等方性液から液晶へと相転移した。しかし、
その後次第に重合液は濁っていった。30℃で1時間熟
成した後に、重合液の一部を取り出して蛍光顕微鏡で観
察したところ、ポリマーの析出が認められた。実施例2
9と30および本比較例から、重合組成によってポリマ
ーが析出する温度が異なることが示唆された。
【0048】実施例31 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕攪
拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する5
lのセパラブルフラスコを使用してパラ(フェニレンテ
レフタルアミド)の重合を行った。実施例26に準拠し
た方法で、塩化カルシウムを265.98gとPPDを
126.52g(1.170モル)とをNMP4000
gに完全に溶解させた。この溶液を内温が4℃になるま
で冷却し、TPC229.50g(1.130モル)を
8分割して約15分おきに添加した。その間、内温は4
〜8℃の間に維持し、最終的に6℃で1時間熟成した。
得られた重合液(重合体ドープ)は光学的異方性を示し
た。一部をサンプリングして水で再沈してポリマーとし
て取り出し、得られたポリ(パラフェニレンテレフタル
アミド)の固有粘度を測定したところ1.77dl/g
であった。
【0049】実施例32 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の紡糸〕実
施例31にて得られた低重合度パラアラミドドープから
パラアラミド繊維を紡糸した。このとき使用した紡糸装
置の概要は以下のとおりであった。10℃に保冷した3
lのSUS製タンクをドープタンクとし、乾燥窒素で3
kg/cm2に加圧した。タンク出口はギャーポンプ
(川崎重工業(株)製、KAP−1/KA1−0.58
4)に連結し、ギャーポンプ出口からはフレキシブルチ
ューブで紡糸口金ホールダーに連結した。紡糸口金は穴
径が70μmで穴数は400とした。紡糸口金から紡糸
された繊維はサファイア製固定バーで方向を変え、ゴデ
ットロールで糸送りをして延伸倍率を調整した。ゴデッ
トロールを経た繊維は水洗して巻き取り機にかけた。紡
糸条件は吐出量78.3cc/min(紡糸口金での線
速度は50.9m/min)、ゴデットロールでの糸送
り速度48m/min、吐出圧2.7kg/cm2
で、延伸倍率は0.94であった。このようにして得ら
れた繊維は3.02dであり、引張り強度は6.2g/
dであった。
【0050】実施例33 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の重合〕実
施例31と同一の装置を使用して、固有粘度が1.91
dl/gのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)を
重合した。重合液(低重合度パラアラミドドープ)は光
学的異方性を示した。
【0051】実施例34 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の紡糸〕つ
ぎに実施例32で紡糸口金の穴径を50μm、穴数を8
00とした以外は同一の装置を使用して紡糸した。紡糸
条件は、吐出量73.0cc/min(紡糸口金での線
速度は46.5m/min)、ゴデットロールでの糸送
り速度40m/min、吐出圧3.9kg/cm2
で、延伸倍率は0.86であった。このようにして得ら
れた繊維は1.31dで、引張り強度は7.8g/dで
あった。
【0052】実施例35 〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプの製
造〕実施例32で製造した繊維をパルプ化した。該繊維
を水で膨潤したままの状態で約6mmに切断して、熊谷
理機工業(株)製大型パルプ離解機(30L)で離解
し、金網で濾過して水を分離した。このようにして得ら
れた短繊維を、熊谷理機工業(株)製KRK高濃度ディ
スクリファイナーに10回通してパルプを得た。このと
きリファイナーの間隔は1.4mmとした。得られたパ
ルプの比表面積は4m2 /gであった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 69/00 - 69/50 C08J 5/00 - 5/24 D01F 6/60 D21H 13/26

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩
    化物を2〜10重量%溶解した極性アミド系溶媒中で、
    パラ配向芳香族ジアミン1.00モルに対してパラ配向
    芳香族ジカルボン酸ハライド0.94〜0.99モルを
    添加して、温度−20〜50℃で重合して形成される、
    パラアラミド濃度が4〜10重量%である光学的異方性
    を有する低重合度パラアラミドドープ。
  2. 【請求項2】パラ配向芳香族ジアミン1.00モルに対
    してパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライド0.95〜
    0.98モルを添加する請求項1記載の低重合度パラア
    ラミドドープ。
  3. 【請求項3】極性アミド系溶媒がN,N’−ジメチルホ
    ルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メ
    チル−2−ピロリドンおよびテトラメチル尿素からなる
    群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1又
    は2記載の低重合度アラミドドープ。
  4. 【請求項4】請求項1〜3記載の低重合度アラミドドー
    プを紡糸することを特徴とするパラアラミド繊維の製造
    方法。
  5. 【請求項5】請求項4記載のパラアラミド繊維を切断し
    て短繊維とし、該短繊維を高剪断力で機械的にフィブリ
    ル化した後乾燥することを特徴とするパラアラミドパル
    プの製造方法。
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