JP2895499B2 - 熱処理方法及びその装置 - Google Patents

熱処理方法及びその装置

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JP2895499B2 JP5457289A JP5457289A JP2895499B2 JP 2895499 B2 JP2895499 B2 JP 2895499B2 JP 5457289 A JP5457289 A JP 5457289A JP 5457289 A JP5457289 A JP 5457289A JP 2895499 B2 JP2895499 B2 JP 2895499B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,アルミニウム材,鋼材等の鋳物,鍛造品を
熱処理する方法及び装置に関する。
〔従来技術〕
アルミニウム材,鋼材の金属材料は,鋳造,鍛造など
により所望形状に加工した後,必要に応じて熱処理を行
う。即ち,これら金属材料の被処理体を,一旦所定の高
温に加熱した後冷却水中に浸漬して,その熱処理を行
う。この熱処理としては,例えば,アルミニウム材にお
いては溶体化処理が,また鋼材においては焼入れがあ
る。
しかして,この熱処理においては,被処理体の表面と
内部,上端と下端とが,成可く同じ温度を保ちながら,
つまり両者の温度差を成可く小さくした状態で,均等冷
却する必要がある。何故なら,両者間の温度差が大きい
場合には,被処理体内に熱応力,熱ひずみが生じ,残留
応力が発生するからである。
しかしながら,第22図に示すごとく,加熱した被処理
体9を冷却水中に浸漬すると,該被処理体9の表面に接
した冷却水が沸騰して気泡を発生する。そして,発生し
た気泡は上方に移動し,第23A図に示すように被処理体
9の上部は,表面に蒸気膜を形成した膜沸騰状態とな
り,気泡密度の高い膜沸騰部iによって覆われ,その外
側は更に気密密度の比較的低い領域jによって覆われ,
更にそのまわりを冷却水が囲んでいる。これに対し,被
処理体の下部は同図に示すごとく,表面から気泡発生が
起きる気泡密度の低い核沸騰部hによって覆われ,その
まわりを冷却水が囲んでいる。それ故,被処理体上部は
気泡密度が高く,冷却水の浸入が少ないため,冷却速度
が遅く,一方被処理体下部は気泡密度が低く,冷却水と
接する部分が多いため,冷却速度が速い。加えて核沸騰
部hにおいては被処理体表面の温度境界層を気泡発生に
よって破壊するため,熱伝達率が高くなり冷却速度は更
に速くなる。したがって,被処理体9の下方と上方,更
に表面と内部との間では大きな温度差が生じ,上記均等
冷却ができない。
さらに冷却が進み被処理体の温度が下がると,第23B
図に示すように核沸騰部hが被処理体上部に移動し被処
理体9の上部のみが気泡密度の低い核沸騰部hによって
覆われ熱伝達率が高くなり急冷される。これに対し,下
部は直接冷却水によって囲まれるため被処理体表面に温
度境界層が形成され,熱伝達率が下がるため徐冷され,
冷却速度に差を生じ,被処理体の均等冷却ができない。
上記に関して,被処理体9としてアルミニウム鋳物(以
下,アルミ鋳物という)を例にとり,以下に説明する。
即ち,従来,アルミ鋳物(例えば自動車のシリンダヘ
ッド)の溶体化処理は,第15図に示すごとく,一つのト
レー8内に多数の被処理体9を入れ,同時に処理を行っ
ている。このトレー8は,多量の被処理体9を同時に加
熱,冷却するため,その底面及び周囲は通気性,通水性
の良い網状となっている。
即ち,上記トレー8は,第17図及び第18図に示すごと
く,金属製であって底面に金網81を,側面にはフレーム
82を有する通水性の良い枠体である。そして,該トレー
8の金網81上に40個の被処理体9を立ててある。
アルミ鋳物の熱処理工程は,一般に第16図に示すT6処
理が行われ,第15図に示すごとく熱処理炉91内で加熱さ
れた被処理体9は炉出口の扉92が開くと,トレー8と共
に冷却水槽93の上部まで送られ,数秒で冷却水931内に
浸漬される。これにより,アルミ鋳物は水温まで冷却,
固溶化される。
この時,冷却水に最初に接する被処理体の先端(下
端)の冷却は非常に速い。そして,前記第22図に示すご
とく被処理体9の水没方向には沸騰現象により鋳物表面
に多量の蒸気泡71が発生し,被処理体9内部にはこの気
泡が原因となって大きな温度差が生ずる。
次に,第19A図〜第19C図は被処理体9に熱電対を取つ
け,A,B,Cの位置(第19A図)で温度変化を測定した例で
ある。第19A図は気泡発生の様子を示した図で,水没方
向と反対の上方に向かうほど,気泡の領域が広くなる。
そのため、長手方向A,B,C各点の温度曲線は第19B図に示
すように,最初に冷却水に対するA点が最も早く冷却さ
れ,続いて上方のB,C点が冷却され,A,B,C点間に大きな
温度差が生ずる。
一方,中央断面のB,D,E点では,ほぼ同時刻に冷却水
に接するため3点の温度差は小さい。
一般に,物体内に最大温度差ΔTが生じると物体内に
は σ=±(0.3〜1.2)・E・β・ΔT で表される熱応力σが生じる。なお,上記Eはヤング
率,βは線膨張係数である。
上記第19A図の場合の冷却方法では,長手方向のA,B,C
間に最大ΔTが生じる(第19B図)ことから,ΔTを小
さく抑える冷却方法が要求される。なお,中央断面B,D,
E間の温度差は小さく,熱応力差も小さい(第19C図)。
次に、第20A図〜第20C図はトレー8内にアルミ鋳物の
被処理体9を横に置いた例である。この場合は,ほぼ同
時に冷却されるため,長手方向の温度差(第2B図)は小
さい。しかし,断面B,D,Eにおいては,下方Bは速く冷
却され,上方は気泡によって表面熱伝達率が低下するた
め冷却は遅くなり,断面間の温度差が大きい(第20C
図)。
なお,第20B図,第20C図中の破線は,冷却調整剤を使
用したものであり,冷却速度は気泡の多少にかかわらず
非常に遅い。
次に,第21図は熱処理過程中に組織的変態を伴わない
場合の残留応力の発生について説明したものである。被
処理体は直径100mmで850℃より水焼入れしている。同図
は被処理体の外表部と中心部の冷却温度,熱応力,残留
応力を示している。被処理体の外表部と中心部とに温度
差が生じると,第19A図で示した冷却法では長手方向に
温度差ができ,それがために残留応力を生じ,被処理体
に応力割れを発生する原因ともなり,冷却方法の改善が
要求される。
また,上記第21図で温度差が最大になる時期Wの状態
まで,引っ張り,圧縮応力が増加する。Wを通過後は温
度差が減少することによって,両部の応力は減少する。
Wまでの時間では,外表部はその温度での引っ張り応力
を受け,塑性変形を行う。図中のaは弾性変形を示し,
b,cは実際の応力を示す。Wを通過後は温度差が減少す
るにつれ,応力分布はUで逆転し,最終状態として,外
表部は圧縮,中心部は引っ張りの残留応力になる。この
残留応力が材料の降伏応力を越えると応力集中による亀
裂・割れの原因となる。従って,残留応力の大きさを支
配するものはWにおける温度差であり,材料の強度であ
る。
前記シリンダヘッドのごとき長いものの熱処理におい
ては,従来は多量の被処理体を同時に熱処理できるため
に,前記第18図,第19A図のごとく,被処理体を立て置
きとしているが,長手方向の温度差が大きく,熱応力,
熱ひずみがみられ,残留応力が発生する。また,第20A
図に示す横置きでは,冷却時の内部温度はかなり均一化
され,残留応力も小さいが,一度に多量の熱処理ができ
ないこと,また被処理体を置く位置によって温度差を生
じ,均等冷却ができないことにより,実用的な熱処理方
法ではない。
こうした対策の例として,前記第20B図,第20C図に点
線で示したごとく冷却水に冷却調整剤などを混入し,全
体の冷却を遅くして内部温度差を小さくする方法も用い
られている。しかし,冷却水中の冷却調整剤の濃度管理
を必要とする。また,冷却調整剤がワーク面に不均一に
付着することがあるため,内部温度差を低減できないこ
とがあると共に次工程に移る前に冷却調整剤の水洗工程
が必要となる。
また,シリンダヘッドのようなアルミ鋳物は過酷な耐
久試験においても,熱応力に起因する亀裂の発生を生じ
ないような熱処理が要求される。特に溶体化処理時の残
留応力は焼入れ工程における内部温度差が非常に大きい
ことに起因している。
〔解決しようとする課題〕
本発明は,上記従来の問題点に鑑み,熱処理時におい
て被処理体の内部温度の均一化を図り,残留応力の低減
ができる熱処理方法及びその装置を提供しようとするも
のである。
〔課題の解決手段〕
本発明は,加熱された被処理体をトレーと共に冷却水
中に浸漬して,該被処理体を熱処理する方法において, 浸漬時を含む冷却初期に気泡密度の高い気泡群により
上記被処理体のほぼ全体の表面を覆い,被処理体全体の
冷却速度を緩和し,その後は冷却速度を増大させながら
熱処理を行うことを特徴とする熱処理方法にある。
本発明において注目すべきことは,加熱された被処理
体をトレーと共に冷却水中に浸漬して熱処理するに当
り,浸漬時を含む冷却初期に気泡密度の高い気泡群によ
り冷却水中の被処理体のほぼ全体の表面を覆い,被処理
体全体の冷却速度を緩和し,その後は冷却速度を増大さ
せながら熱処理することである。
かかる,気泡を供給する手段としては,上記のごとく
被処理体と共に冷却水中に入れたトレーの表面から,冷
却水の沸騰による気泡を供給すること,或いは冷却水槽
中の冷却水中に外部より空気等のガスを供給することが
ある。しかして,上記トレー自体の表面から気泡を発生
させる手段としては,後述する熱処理装置がある。
また,上記熱処理方法を実施するための装置として
は,冷却水槽と,該冷却水槽の冷却水中に加熱した被処
理体を運び入れるトレーとよりなる熱処理装置におい
て, 上記トレーは少なくともその底部に,冷却水中に浸漬
したときに気泡を発生し,浸漬時を含む冷却初期に気泡
密度の高い気泡群により上記被処理体のほぼ全体の表面
を覆う冷却緩和体を有することを特徴とする熱処理装置
がある。
本装置において,冷却緩和体は被処理体と共に加熱さ
れた状態で冷却水中に浸漬したとき,該冷却緩和体の表
面に接した冷却水の沸騰により気泡を発生するものであ
る。該冷却緩和体としては,金属体がある。そして,該
冷却緩和体は,上記気泡を長い間発生させておくために
は,できるだけ熱容量が大きいものが良い。また,冷却
緩和体は少なくともトレーの底部に設ける。これは,ト
レー内に入れた被処理体に,下方より気泡を送るためで
ある。また,冷却緩和体はトレーの底自体に形成するこ
と(第1〜第3実施例),或いはトレーの網状底の上に
別途設けること(第4,第5実施例)もできる。また,底
部と共にトレーの側面に設けることもできる。
しかして,上記冷却緩和体は,熱処理時に冷却水がト
レー内に入り易いようにするため,ハニカム状など,水
が良く流通し易い状態に配設することもできる。
〔作用〕
本発明方法においては,加熱された被処理体を冷却水
中に入れて熱処理する際に,該被処理体の表面を覆う気
泡を移動させる。そのため,浸漬時を含む冷却初期に,
気泡密度の高い気泡群により,熱処理体はその表面全体
がほぼ均一に気泡によって包まれると共に気泡の移動に
伴い周囲の冷却水を被処理体表面に均一に接触させつ
つ,被処理体への接する冷却水量が適切に保たれなが
ら,冷却されることになる。それ故,被処理体は,その
全体が気泡を介して適度に冷却水と接することとなり,
全体が均一にしかも適度の速度で冷却され,被処理体の
内部の温度差が小さくなる。更に,本方法において被処
理体の表面を覆う気泡の密度を適切にすることによっ
て,気泡の間から浸入する冷却水の量が調整され,冷却
速度を最適化することができる。
また,前記装置によれば,トレー底面に冷却緩和体を
設けてあるので,被処理体を入れたトレーを冷却水に浸
漬すると,直ちに上記冷却緩和体の表面に接触した冷却
水が沸騰し,その蒸気泡が浸漬時を含む冷却初期に気泡
密度の高い気泡群となって,被処理体の表面を包む。
それ故,第24A図に示すように,被処理体9が気泡密
度の高い膜沸騰部iによって覆われその外側は更に気泡
密度の比較的低い領域jによって覆われ,そのまわりを
冷却水が囲んでいる。膜沸騰部iは気泡の密度が高く,
冷却水の浸入が少ないため冷却速度が緩やかであり,被
処理体の全体が均一に徐々に冷却される。更に冷却が進
み,被処理体の温度が下がると,第24b図に示すように
被処理体9は気泡密度の低い核沸騰部hによって覆わ
れ,そのまわりを気泡密度の比較的低い領域jを冷却水
が囲み,冷却速度は徐々に速くなり,被処理体の全体が
均一に徐々に速く冷却される。
上記のごとく冷却初期において被処理体全体の冷却速
度を緩和し,その後は徐々に冷却速度を増大すると共
に,冷却の全工程を通じて冷却速度を適切にできるた
め,被処理体の内部の温度差が小さくなる。
〔効果〕
したがって,上記方法によれば,気泡の移動によって
周囲の冷却水を被処理表面に均一に接触させ,熱処理時
において被処理体の内部温度の均一化を図ることができ
る。そのため,残留応力を発生させることなく,更に気
泡によって被処理体へ接する冷却水量が適切に保たれ,
冷却速度が最適化されるため,目的とする熱処理を効果
的に達成することができる。また,従来のごとく,冷却
調整剤を用いないので,その濃度管理,熱処理後におけ
る被処理体の水洗の必要がなく,また冷却水の排水処理
の問題も生じない。
また,前記装置によれば、上記方法と同様の効果を得
ることができると共に,トレー底面の冷却緩和体が熱処
理開始と同時に気泡を発生するので,気泡供給に格別の
装置を必要としない。
〔実施例〕
第1実施例 本発明の実施にかかる熱処理方法及び装置につき,第
1図〜第3図及び第4A図〜第4C図を用いて説明する。
即ち,本例においては,第1図に示すトレー1を用い
て熱処理を行う。該トレー1は,底面に冷却緩和体11を
有し,側面は棚12により囲んだ,枠体である。また,該
トレー1内は,被処理体9をそれぞれ1個づつ配置する
ため,前記従来の第17図,第18図と同様に,金網13によ
り区切られている。
しかして,上記冷却緩和体11は,第2図はその縦断面
を,第3図はその横断面を示すごとく,ハニカム状を呈
し,本体111と空間部112とを有する。そして,該本体は
鋼材で作製されており,本体111の厚みは約20mm,幅は約
60mmで,空間部112は一辺が40mmの四角形である。
次に,上記トレー1を用いて熱処理を行うに当たって
は,第1図に示すごとく,該トレー1内の冷却緩和体11
上に,被処理体9を多数(例えば40本)立て置きし,前
記第15図に示したごとく,熱処理炉91内に入れる。そし
て,高温に所定時間加熱し,その後トレー1と共に被処
理体9を冷却水中に浸漬する。
この浸漬により,第4A図に示すごとく,前記冷却緩和
体11の表面に接触した水が,加熱された冷却緩和体によ
り沸騰し,蒸気泡72が発生する。そして,該気泡72は被
処理体9を覆いながら上昇する。また,被処理体9自体
からも,従来と同様に気泡71が発生する。
それ故,被処理体9は,上記の上方に移動する気泡7
1,72によって覆われた状態で,冷却水中で冷却される。
そのため,被処理体9は内部の温度差が小さい状態で徐
々に冷却される。
第4A図〜第4C図は上記冷却状態を示すものである。こ
の図は,前記従来技術で説明(第19A図〜第19C図)した
と同様に,第4A図における被処理体9の長手方向のA,B,
Cの各点,中央断面方向のB,D,Eの各点の温度変化を測定
したものである。
長手方向の温度変化を示す第4B図と前記第19B図,ま
た中央断面方向の第4C図と前記第19C図とをそれぞれ比
較すると,本例による場合(第4B図,第4C図)は,測定
点間の温度差が非常に少ないことが分る。このことは,
特に長手方向のA,B,Cに関して顕著である。また、本例
による場合は,前記従来法(第19B図,第19C図)に比し
て冷却速度が緩いことが分る。なお,上記第4A図〜第4C
図は、前記第19A図〜第19C図の場合と同じく被処理体と
して,アルミ鋳物製のシリンダヘッドを用いたものであ
る。また,その熱処理は溶体化処理であり,熱処理炉内
では約500℃に加熱される。
上記のごとく本例によれば,被処理体9の内部の温度
差を少なくして熱処理を行うことができる。それ故,被
処理体としてのシリンダヘッドの内部に残留応力を発生
させることなく,効果的に熱処理を行うことができる。
また,本例では,冷却緩和体11を,空間部を有するハ
ニカム状態(第3図)としたので,該空間部を通じて,
トレー内に冷却水が入り易く,通水性が良い。
第2実施例 本例は,第5図,第6図に示すごとく,第1実施例の
トレー1において,その側面にも冷却緩和体15を設けた
ものである。
該冷却緩和体15は,トレー1の底面に配設した冷却緩
和体11と同様のハニカム状を呈し,本体151と空間部152
とを有する。
本例によれば,第1実施例と同様の効果が得られる
外,底面の冷却緩和体11に加えて側面の冷却緩和体15か
らも気泡を発生させるので,一層優れた熱処理を行うこ
とができる。
また,本例においては,側面の上記冷却緩和体15に代
えて,第7図に示す冷却緩和体16を用いることもでき
る。該冷却緩和体16は,本体161及び空間部162が,トレ
ー1の内側方向に向かって上昇している。それ故,該冷
却緩和体16によって発生する気泡は,傾斜した空間部16
2にガイドされて,トレー1内に向かって進む。それ
故,一層気泡による効果を得ることができる。
第3実施例 本例は,第8図に示すごとく,前記第1実施例のトレ
ー1において,冷却緩和体11の上に約3cmの空間を隔て
て,金網17を配設したものである。そして,金網17上に
被処理体9を立て置きする。
本例によれば,冷却緩和体11と被処理体9との間に空
間があるので,被処理体9の下端部分を気泡によってよ
り多く包むことができる。それ故,下端部分の急激な温
度低下を防止でき,被処理体の温度差をより少なくする
ことができる。
第4実施例 本例は,第9図及び第10図に示すごとく,トレー1と
は別個に板状の冷却緩和体21を準備し,該冷却緩和体21
をトレー1の底金網18上に載置する例である。そして,
該トレー上の冷却緩和体21上に被処理体9を載置して第
1実施例と同様に熱処理を行なう。
上記冷却緩和体21は,被処理体9の底面より若干大き
い上面を有する厚板であり,その中央に冷却水侵入用の
空間孔211を有する。この冷却緩和体21の大きさは,例
えば縦200mm,幅250mm,空間孔211の直径は15〜20mm,板厚
み20〜30mmである。また,被処理体9の底面は上記冷却
緩和体21の縦,幅の長さより若干小さく,高さ400〜500
mmである。また,冷却緩和体21と被処理体9とはほぼ等
価の熱容量を有する。
本例においては,初期冷却では冷却緩和体21と被処理
体9とにより,沸騰気泡が全面から発生し,被処理体9
が急冷されるのが緩和される。そして,更に冷却時間が
経過すると,被処理体9の表面のところどころが気泡の
核となってそこから気泡が発生する核沸騰域に到達す
る。
そのため,冷却緩和体の熱容量により冷却の初期にお
ける被処理体の下部の急激な冷却が緩和される。また,
被処理体上部と下部はほぼ同時期に気泡発生が弱まる。
そして,被処理体9は,下部と上部が共に核沸騰を起こ
し,急冷域に入り,強度が得られることとなる。
そして,その後は冷却水温度に近い対流域に入り,熱
処理が完了する。
したがって,本例のごとく,被処理体と等熱容量を持
つ冷却緩和体を被処理体の底面に置くことにより,気泡
沸騰の拡大,核沸騰の全面一様化と,対流域突入の同時
変化を得ることができる。それ故,被処理体の内部温度
の均一化を図りながら,熱処理することができる。
第5実施例 本例は,第4実施例の板状冷却緩和体に代えて第11図
〜第13図に示すごとく,容器状の冷却緩和体23を用いる
ものである。該冷却緩和体23は,トレーの底金網18上に
載置し,該冷却緩和体23内に被処理体9を載置して第1
実施例と同様に熱処理する。
上記冷却緩和体23は,底板232と側板231とからなる四
角容器状で,底面232には水浸入用の5個の空間孔233を
有する。該冷却緩和体23の大きさは,例えば縦200mm,幅
250mm,高さ60mmの内面を有し,底板及び側板は厚み10mm
である。被処理体9は第4実施例と同様である。
本例においては,第4実施例に比して,被処理体9の
下方側方に,冷却緩和体23の側板231が位置しているの
で底板232から気泡が生ずると共に,該側板231からも多
量の気泡が発生する。そのため,第4実施例に比して,
被処理体9が多くの気泡で覆われることとなる。
そのため,本例においても第4実施例と同様に被処理
体9全体がほぼ同時刻に核沸騰を起こすこととなる。
また,被処理体9の側面の気泡量が第4実施例よりも
多いので,同例に比して被処理体の均一熱処理をより効
果的に行うことができる。また,そのため,第4実施例
と同一の効果を得ようとする場合には,冷却緩和体23を
前記冷却緩和体21よりも軽量化することができる。
第6実施例 本例は,第14図に示すごとく,装置93の下方に空気ノ
ズル75を設け,該空気ノズル75より,冷却水931中に圧
縮空気を噴出させて,気泡76を供給するものである。
トレー8は,前記第17図,第18図に示した,従来と同
様のものである。しかして,本例においては,上記圧縮
空気による気泡76を発生させた冷却水931中に,加熱さ
れた被処理体9をトレー8に入れたまま浸漬する。気泡
76は,トレー8底面の金網81を貫通して上昇し,トレー
8内の被処理体を包みながら上昇する。それ故,被処理
体は,前記のごとく,内部の温度差が少ない状態で,徐
々に冷却される。
本例によれば,気泡は外部より供給するので,必要な
時間だけ被処理体を気泡によって包み,冷却することが
できる。また,従来のごとく,冷却調整剤を用いないの
で,熱処理操作及び管理が容易である。
なお,かかる空気供給と,前記冷却緩和体とを併用し
て,熱処理することもできる。例えば,当初は空気供給
なしで冷却緩和体からの蒸気泡のみとし,該蒸気泡が少
なくなった時点で空気供給を行うなどの態様を採ること
もできる。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第4C図は第1実施例のトレーを示し,第1図は
その正面図,第2図は冷却緩和体の縦断面図,第3図は
第2図のA−A線矢視断面図,第4A図〜第4C図は熱処理
状態の概念図および冷却曲線,第5図〜第7図は第2実
施例のトレーを示し,第5図は正面図,第6図は側面用
の冷却緩和体の断面図,第7図は他の冷却緩和体の断面
図,第8図は第3実施例のトレーの正面図,第9図及び
第10図は第4実施例を示し,第9図は冷却緩和体の斜視
図,第10図は熱処理時の状態を示す側面図、第11図〜第
13図は第5実施例を示し,第11図は冷却緩和体の斜視
図,第12図は冷却緩和体の平面図,第13図は熱処理時の
状態を示す側面図,第14図は第6実施例の概念図,第15
図〜第22図は従来例を示し,第15図は熱処理装置の概念
図,第16図は熱処理パターンの説明図,第17図及び第18
図は従来のトレーの一部欠載平面図及び正面図,第19A
図〜第19C図は従来の立て置き冷却の状態図及び冷却曲
線,第20A図〜第20C図は従来の横置き冷却の状態図及び
冷却曲線,第21図は冷却時の熱応力発生を説明する図,
第22図は冷却時の状態を示す図,第23A図,第23B図は従
来法の冷却過程の模式図,第24A図,第24B図は本発明の
冷却過程の模式図である。 1,8……トレー,11,15,16,21,23……冷却緩和体,71,72,7
6……気泡,9……被処理体,
フロントページの続き (72)発明者 佐藤 理通 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−62824(JP,A) 特開 昭59−70715(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 1/00,1/18 C21D 1/44,1/63

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加熱された被処理体をトレーと共に冷却水
    中に浸漬して,該被処理体を熱処理する方法において, 浸漬時を含む冷却初期に気泡密度の高い気泡群により上
    記被処理体のほぼ全体の表面を覆い,被処理体全体の冷
    却速度を緩和し,その後は冷却速度を増大させながら熱
    処理を行うことを特徴とする熱処理方法。
  2. 【請求項2】冷却水槽と,該冷却水槽の冷却水中に加熱
    した被処理体を運び入れるトレーとよりなる熱処理装置
    において, 上記トレーは少なくともその底部に,冷却水中に浸漬し
    たときに気泡を発生し,浸漬時を含む冷却初期に気泡密
    度の高い気泡群により上記被処理体のほぼ全体の表面を
    覆う冷却緩和体を有することを特徴とする熱処理装置。
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