JP2895457B2 - 欠損部を有する歯槽骨の再生による植設体の固定のための要素及び植設体保持装置 - Google Patents

欠損部を有する歯槽骨の再生による植設体の固定のための要素及び植設体保持装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、欠損部を有する
歯槽骨に人工歯根又はその他の植設体を固定するための
技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】人工歯根つまりインプラントを実施する
には、患者の歯槽骨の状態が良く、また全身的な健康状
態も良いことが求められる。これに対して、健康状態に
問題はないが、歯槽骨の状態が悪く、インプラントの植
立が困難であるか或いは不可能な症例もしばしば存在す
る。インプラントの植立が困難な症例とは、目的とする
箇所の歯槽骨が失なわれてインプラントを外科的に植立
しても義歯は使用に耐えないと考えられる状態にあるも
のを指す。歯槽骨の失なわれた範囲が大きければ、イン
プラントの植立は、そのままでは不可能である。
【0003】このような症例の場合、GBR法(Gui
ded Bone Regeneration)を適用
することができ、同法は症例に応じて1回法(simu
ltaneous approach)と2回法(st
aged approach)が選択できる。1回法の
場合は初期固定が得られなければならないから、比較的
小さな症例に限られるが、2回法はより大きな症例に耐
える。しかし手術回数が増え、治療期間も長期化し、
ペースメイキング(space makingはより
難しくなり、確実性を上げるために自家骨を採取して使
用するなど、侵襲の多い手術が必要となる。
【0004】理想的な位置にインプラントを植立するた
めには、理想的な骨形態のコントロールが必要である、
とは近年言われていることである。しかしながら、現状
は前記のとおりであり、これから判断する限り理想的な
インプラントを実施することは従来の術式では困難が予
想される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この発明は前記の事情
に着目してなされたものであり、その課題は前記のイン
プラント即ち人工歯根又はその他の植設体を歯槽骨の目
的位置に的確に固定できるようにすることである。
【0006】またこの発明は患者に与える負担が少なく
て済む術式の実現を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決し、目的
を達成するため、本発明は、歯槽骨の欠損部における
生予定部の外形に適合した形状に剛体性の材料によって
形成され、かつ所定位置に固定すべき植設体を保持して
欠損部付近の歯槽骨にねじ止めなどの固着法によって取
り付けられる枠材と、枠材で囲まれた歯槽骨欠損部に充
するための骨再生材と、充填された骨再生材と枠材を
覆うことで骨細胞を他の細胞から隔離するための膜材と
を含むことを特徴とする欠損部を有する歯槽骨の再生に
よる植設体の固定のための要素を構成として具備したも
のである。
【0008】この固定要素は、歯槽骨の再生形状のとお
りに整形可能な帯状材よりなる枠材に複数の孔を開口
し、それらを利用して植設体の保持及び枠材自体の歯槽
骨への取り付けを行なう植設体保持装置を構成すること
できる
【0009】
【発明の実施の形態】この発明は、既に一部触れたよう
に、欠損部を有する歯槽骨に人工歯根又はその他の植設
体を固定するにあたり、歯槽骨の欠損部が再生する過程
で、再生骨に植設体が組み込まれて一体化することを特
徴とする。
【0010】この発明を適用する場合、次のA〜Fの過
程を踏むことが望ましい。 A.歯槽骨の欠損部を覆っている歯肉を切開して欠損部
及びその周辺部を露出させ、 B.歯槽骨の欠損部の皮質骨に創傷による出血を促し、 C.再生予定部の外形に適合した形状に剛体性の材料に
よって形成され、かつ所定位置に固定すべき植設体を保
持させた枠材を欠損部付近の歯槽骨にねじ止めなどの固
着法によって取り付け、 D.枠材で囲まれた歯槽骨欠損部に骨再生材を充填し、 E.充填された骨再生材と枠材を膜材によって覆うこと
で骨細胞を他の細胞から隔離するとともに、切開されか
つ必要な加工が施された歯肉を縫合し、 F.骨再生の時間を経たのち植設体を再生骨に残存せし
める。
【0011】過程Aは、歯肉11によって覆われている
歯槽骨10に対する施術を可能にするために、歯肉を切
開して欠損部12及びその周辺部を露出させる段階であ
り、それが一つの目的である。図1、図2参照。しか
し、この過程では単なる切開ではなく、事後に術野全体
を覆う縫合が可能なように歯肉にメスMを入れることが
必要である。
【0012】過程Bは、皮質骨に創傷13を作り出血を
促して骨再生の切っ掛けを与える手段である。図3参
照。
【0013】過程Cはスペースメイキングのための段階
であり、再生予定部の外形に適合した形状を有する枠材
21を欠損部付近の歯槽骨10に取り付ける。その枠材
21は、欠損部に再生する骨の外形を与える、と同時に
再生骨に組み込むべき植設体20を目的位置に配置する
ために保持しておく。
【0014】枠材21には骨再生の期間中、生体に埋設
して悪影響を生じない材料を用いる。この枠材21は骨
再生後、除去を必要とする非吸収性の材料であっても良
いし、除去を必要としない吸収性の材料であっても良
い。非吸収性材料としては例えばチタン、吸収性材料と
しては例えばポリ乳酸樹脂、セルロース、コラーゲン等
である。
【0015】植設体20は人口歯根(インプラント)で
あることが大部分と予想される。しかしながら、本発明
に係る植設体の固定方法はいわゆるインプラントのため
の手段にとどまらず、例えば歯牙再植などにも適用可能
である。発明を人口歯根の固定限定していないのは上
記のことが可能であるからである。
【0016】過程Dは、枠材21で囲まれた歯槽骨欠損
部に骨再生材22を充填する段階である。骨再生材とし
ては、例えば血餅、コラーゲン、腸骨から採取した海綿
骨が代表的なものである。
【0017】過程Eは、スペースメイキングのために、
充填された骨再生材22を賦形のための枠材21ととも
に膜材23によって覆う段階である。骨再生材22は膜
材23によって歯肉細胞等の他の細胞から完全に隔離さ
れる。このように理想的なスペースメイキングがなされ
るように、創傷を歯肉11の縫合によって完全に閉鎖す
る。14は縫合糸を示す。この閉鎖は完全に行なわれる
ことが必要であり、そのために過程Aにおいて適切な縫
合のためのフラップ等が得られるようにメスMを入れて
おく必要が生じる。
【0018】過程Fは、以上の過程A〜Eが終了してか
ら、通常数箇月の時間を経た段階である。枠材、膜材に
吸収性材料を用いたときは、この段階で行なう作業はX
線影像等の手段により骨が再生されていることの確認、
及び植設体がインプラントである場合にはそのインプラ
ントへの義歯の装着である。枠材、膜材に非吸収性の材
料を用いたときは、歯肉を再度切開し枠材及び膜材(い
ずれか一方のみの場合もある。)を除去する。植設体が
インプラントの場合、同時にそれに義歯を装着できる
が、歯肉を縫合しておくことはいうまでもない。
【0019】次に本発明に係る植設体の固定に直接使用
する植設体保持装置について説明する。この保持装置の
主体は枠材21である。それが非吸収性、又は吸収性材
料によって構成できることは既に説明した。そこで本装
置について図7を参照して説明すると、枠材21には帯
状の長手方向に数箇所の孔25が開口される。孔25に
は、植設体20(図7の例はインプラント)を止める手
段26としてのねじ、及び枠材21を歯槽骨10へ取り
付ける手段27としてのセルフタッピングねじを通す。
なお枠材形状は、直線状に限られず、例えばY字状等任
意の形状にすることができる。
【0020】インプラントや枠材を止める手段26、2
7であるねじは、止着後枠体21上へ突き出る量が少な
ければ少ないほど良い。そこで例えば孔25の縁を座ぐ
り加工しておき、ねじ頭が沈頭状になるようにすると良
い。図7に示した枠材21が再生形状15のとおりに成
形されたものであるとすると、その枠材21は歯槽骨1
0にマーク24で示した箇所にねじ止めにより取り付け
られ、骨再生材充填後に枠材21の外側から膜材23で
覆い、同膜材23はピン28によって皮質骨に止め、或
いは骨膜下に挟みこませることによって骨表面に固定す
る。
【0021】上記した本発明に係る保持装置は非吸収性
材料によって各構成部材ができていることを想定してい
る。しかしながら、吸収性材料によって枠材21〜ピン
28までの全構成部材を作ることも当然可能であり、従
って図7に示す装置は非吸収性、吸収性のどちらの材料
によって製造しても良い。なお、部材を止める手段2
6、27、28にはねじ類、ピン類のほか例示の挟持、
或いは縫着、接着等の手段も含まれる。
【0022】以下実施例を説明する。
【0023】 [実施例] 最初の切開は隣在歯の口蓋側接線上に近遠心的に加え
た。両隣在歯欠損側歯肉溝内に切開を加え、頬側は歯間
乳頭を含む乳頭の延長上に切開を加え、MG−Junc
tionを越えて、より術野遠方へ切開し、トラペゾイ
ダルフラップ(台形弁)を作製した。図1、図2。口蓋
側は歯冠側移動口蓋弁(Coronally Posi
tioned Palatal Sliding Fl
ap)を用いた(符号16で示す。)。
【0024】ダミーインプラント(IMZ Hex シ
リンダー)を6穴のチタン製枠材の頬側より4穴目にI
MZ Hex シリンダーのヒーリングキャップで固定
し、プライヤーにて理想的な骨形態が付与でき、かつや
や骨をはさみこむ形態に曲げて成形した。皮質骨をラウ
ンドバーにて穿孔し、出血を促した。インプラント(I
MZ Hex シリンダー)をチタン製枠材に固定し、
プレート体を骨にLEIBINGER(登録商標)社製
φ2mm×4mmの固定用ネジ(セルフタッピング ス
クリュー)にて、L2は唇側は2穴目、口蓋側1穴目
に、L3は唇側は1穴目、口蓋側は2穴目に、頬舌的に
固定した。図3。
【0025】滅菌紙をメンブレンに見たてて、術野を十
分に覆うようにトリミングし、それにあわせてゴア社製
ゴアテックスメンブレンオバール9を整形した。それを
フリアテック社製フリオスピンにてまず唇側を固定し、
欠損部位をコラーゲン及び別に採取した静脈血による血
餅で満たした。口蓋側はメンブレンを骨膜下にはさみ込
むのみとした。図4。唇側のFlapは減張で切開(符
号17で示す。)、口蓋側は前記歯冠側移動口蓋弁(C
oronally Positioned Palat
al Slidig Flap)を用い、術野を完全に
覆えるような形態とした。唇側及び口蓋側のFlapを
マットレス縫合及び単純縫合にて完全に閉鎖創とした。
図5。
【0026】創傷治癒促進のために創面全体にソルコセ
リルを塗布した。3ケ月後にメンブレンを除去し、9ケ
月後にLEIBINGER社製ロープロフィールプレー
トを除去した。この時点で十分なインプラント体の固定
と唇側の歯肉形態が得られた。図6。
【0027】
【発明の効果】この発明は以上の如く構成されかつ作用
するものであり、植設体を再生を予定する空間に浮かせ
スペースメイキングを行なうことによって、再生骨へ
の組み込みによる一体化が可能になるという効果を奏す
る。従って初期固定が得られず、複数回の手術を行なわ
なければならないケースでも、一度に骨造成と3次元的
に理想的な位置への植設物の固定が実現する。故に本発
明はサイナスリフト法、GBR法、抜歯同時インプラン
ト、歯牙再植の適用等が可能である。
【図面の簡単な説明】図面は本発明に係る欠損部を有す
る歯槽骨の再生による植設体の固定のための要素に関す
るものであり、
【図1】過程Aを示す断面図、
【図2】過程Aを示す断面図、
【図3】過程B、Cを示す断面図、
【図4】過程Dを示す縦断面図、
【図5】過程Eを示す縦断面図、
【図6】過程Fを示す縦断面図、
【図7】本発明に係る植設保持装置の分解斜視図であ
る。

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 欠損部を有する歯槽骨に人工歯根又はそ
    の他の植設体を固定するのための要素であって、 歯槽骨の欠損部における再生予定部の外形に適合した形
    状に剛体性の材料によって形成され、かつ所定位置に固
    定すべき植設体を保持して欠損部付近の歯槽骨にねじ止
    めなどの固着法によって取り付けられる枠材と、 枠材で囲まれた歯槽骨欠損部に充填するための骨再生材
    と、 充填された骨再生材と枠材を覆うことで骨細胞を他の細
    胞から隔離するための膜材とを含むことを特徴とする欠
    損部を有する歯槽骨の再生による植設体の固定のための
    要素
  2. 【請求項2】 枠材及び膜材のいずれか一方又は双方が
    非吸収性の材料からな請求項第1項記載の欠損部を有
    する歯槽骨の再生による植設体の固定のための要素
  3. 【請求項3】 枠材及びその止めねじはチタンを材料と
    する請求項第1項記載の欠損部を有する歯槽骨の再生に
    よる植設体の固定のための要素
  4. 【請求項4】 膜材はゴアテックス(登録商標)から
    請求項第1項記載の欠損部を有する歯槽骨の再生によ
    る植設体の固定のための要素
  5. 【請求項5】 植設体は人工歯根である請求項第1項記
    載の欠損部を有する歯槽骨の再生による植設体の固定
    ための要素
  6. 【請求項6】 植設体は義歯である請求項第1項記載の
    欠損部を有する歯槽骨の再生による植設体の固定のため
    の要素
  7. 【請求項7】 枠材又は膜材のいずれか一方又は双方が
    吸収性の材料からなる請求項第1項記載の欠損部を有す
    る歯槽骨の再生による植設体の固定のための要素
  8. 【請求項8】 欠損部を有する歯槽骨の再生による植設
    体の固定のために使用する植設体保持装置であって、歯
    槽骨の再生形状のとおりに整形可能な帯状材よりなる枠
    材に複数の孔を開口し、それらを利用して植設体の保持
    及び枠材自体の歯槽骨への取り付けを行なうことを特徴
    とする欠損部を有する歯槽骨の再生による植設体の固定
    のために使用する植設体保持装置。
JP8337526A 1996-12-03 1996-12-03 欠損部を有する歯槽骨の再生による植設体の固定のための要素及び植設体保持装置 Expired - Lifetime JP2895457B2 (ja)

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