JP2892624B2 - グリコサミノグリカンの抽出方法とそれによる皮膚の角質層の改善剤 - Google Patents

グリコサミノグリカンの抽出方法とそれによる皮膚の角質層の改善剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は廃棄貝殻に含まれる
有機成分としてのグリコサミノグリカンを抽出して、皮
膚の角質層の改善に有効利用するための抽出法と改善剤
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近時全国各地の沿岸域でカキとかホタテ
ガイ,アコヤガイ(真珠貝)等が膨大に養殖されている
が、食用の肉部を除いた後の貝殻は一部の利用を除いて
大部分が廃棄されている。一部の利用とは、例えばアコ
ヤガイについては貝殻を細片にして農業の地質改良材に
使用されており、ホタテガイについては道路の舗装用の
骨材として使用されているが、有効利用としては不十分
である。
【0003】他方で、貝殻の脱灰によるコンキオリンズ
(蛋白質)の製造が実施されているが、廃棄貝殻に含ま
れる有機成分で皮膚病に有効なグリコサミノグリカンの
抽出法は開発されていないのが実状である。
【0004】貝殻からコンキオリンズを製造するには、
脱灰後3M酢酸に浸漬して炭酸カルシウムを除去し、脱
塩水の添加とpH8,50℃,6日間保温によってプロ
テアーゼによる蛋白を分解した後、100℃10分間の
加熱とpH7.5,37℃,5日間保温によってトリプ
シンによる蛋白の分解を行い、不溶物の除去によってビ
ィスキングチューブによる透析を行った後に減圧濃縮を
実施する。また、酸に対する不溶成分として残るコンキ
オリンを遠心分離によって収集し、洗浄後コロイドミル
により微粉砕してから強過酸化水素水により漂白処理す
ればコンキオリンパウダーが得られる。
【0005】一方、従来から一般の皮膚病の治療薬とし
て効果的に使用されているステロイド剤は、アトピー性
皮膚炎に対しては副作用や病状の再発があり、このステ
ロイド剤によってアトピー性皮膚炎を完治することは困
難であって、場合によっては病状が悪化する傾向があ
り、ステロイド剤に代わる有効な薬剤の開発が要求され
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記したようにアトピ
ー性皮膚炎などの皮膚病に有効な薬剤が求められている
現状にあって、貝殻から抽出した有機成分が皮膚病の治
療薬として有効であり、かつ、美顔用にも利用できると
いう知見を得た。しかしながら貝殻に含まれる有機成分
の抽出法は確立されていないため、これら有機成分を皮
膚病の治療薬として有効利用することが出来ないのが現
状である。
【0007】前記コンキオリンズ(蛋白質)の製造工程
は、酸によって貝殻に含まれる炭酸カルシウムを溶解し
てコンキオリンズを取り出す方法であるが、この方法で
は貝殻に含まれるグリコサミノグリカンが破壊されてし
まうため、抽出することができない。しかも上記製造工
程は煩瑣であるために実用向きとは言えず、コスト的に
も不利であって大量生産することはできないという問題
がある。
【0008】そこで本発明は、貝殻に含まれる有機成分
であるグリコサミノグリカンを簡単な工程で効率的に抽
出してアトピー性皮膚炎等の皮膚病に有効な塗布剤とか
軟膏を製造することにより、貝殻という産業廃棄物の有
効利用をはかることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために、貝殻を殺菌,乾燥後に粉末状原材料とし、
溶媒として加熱した水,アルコール類,グリセリンの何
れかを用いて上記粉末状原材料から有機成分を溶出して
グリコサミノグリカンを抽出する方法を基本とし、具体
的には体積比で粉末状原材料1に溶媒1〜2の割合で混
合し、40℃〜120℃に加熱して有機成分を除々に溶
出し、室温で放置する工程を複数回繰り返し、得られた
上澄液を濾過してグリコサミノグリカンの抽出原液とす
る。また、前記原液を真空凍結乾燥法,温風乾燥法,高
速液体クロマティー法の各種濃縮法を用いて濃縮原液と
する。
【0010】更に請求項4により、貝殻の粉末状原材料
を溶媒を用いて有機成分を溶出して原液とする一方、海
洋深層水とエチルアルコールの混合物を蒸留して変法エ
チルアルコールを得て、前記原液と変法エチルアルコー
ルを混合して塗布剤としての皮膚の角質層の改善剤と
し、請求項5により、貝殻の粉末状原材料を溶媒を用い
て有機成分を溶出し、得られた原液を各種濃縮法を用い
て濃縮原液として、この濃縮原液と白色ワセリンを混合
して塗布剤としての軟膏とした皮膚の角質層の改善剤と
する。
【0011】かかるグリコサミノグリカンの抽出方法と
それによる皮膚の角質層の改善剤によれば、貝殻を粉末
にすることにより有効成分の抽出効率が高くなり、得ら
れたグリコサミノグリカンは保水力が強く、上皮細胞と
か角質層の再生を促進する作用がある。特にグリコサミ
ノグリカンは水溶性であって溶媒として水を使用した場
合には加熱と濾過以外の操作は不要となる。また、前記
原液と海洋深層水から得られた変法エチルアルコールを
混合して得た水溶液、及び前記濃縮原液と白色ワセリン
を適当に混合して軟膏を作ることにより、皮膚の角質層
として用いて効果のある改善剤が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下本発明にかかるグリコサミノ
グリカンの抽出法とそれによる皮膚の角質層の改善剤の
具体的な実施例を説明する。本実施例では前処理として
貝殻を洗浄後、粉末にしたことにより、有効成分を露出
して利用効率を上げることが特徴となっている。
【0013】即ち、貝殻を粉末にすることにより有効成
分の抽出効率が高くなり、しかも抽出後の炭酸カルシウ
ムを主体とした残査物は、乾燥後に再度粉末化すること
によってカルシウムを含む粉体として広範囲に利用する
ことが出来る。
【0014】以下に具体的な抽出法を説明する。先ず原
材料としての貝殻を水洗又は煮沸による殺菌を行い、貝
殻表面の付着物とか肉片等を除去して清浄化する。この
ように処理した貝殻は乾燥機内に入れて充分に乾燥して
からクラッシャに入れて長さが1〜5mmの細片にする。
更にこれらの細片を水冷式トップグラインダを用いて摩
細して径長が1〜250μmの粉末状原材料とする。摩
細時に熱が発生するため、水冷式トップグラインダを用
いる必要がある。
【0015】次に抽出工程として、粉末状原材料を親水
基(−OH基)を持っている溶媒、例えば水,アルコー
ル類,グリセリン等に入れて有効成分を溶出させる。効
率的に行うには、体積比で粉末状原材料1に溶媒1〜2
の割合で混合し、オートクレーブ内で40℃〜120℃
に加熱して有機成分を除々に溶出し、室温で約30分間
放置して冷却する。この加熱と冷却操作を2回繰り返し
たところ、黄色の上澄液が抽出されるので、この上澄液
を瀘紙を用いて濾過して原液とする。この原液は冷蔵庫
に保管する。
【0016】特にグリコサミノグリカンは水溶性である
ため、溶媒として水を使用することが出来る。この場合
には加熱と濾過以外の操作は一切不要となる。
【0017】前記原液は後述する皮膚病用の軟膏を製造
するために各種濃縮法、例えば真空凍結乾燥法,温風乾
燥法,高速液体クロマティー法等によって5〜10%に
濃縮する。このように濃縮した液を濃縮原液とする。特
に真空凍結乾燥法を用いれば有効物質の変質をきたす惧
れはない。
【0018】一方、海洋深層水はアトピー性皮膚炎のか
ゆみ抑制に対する有効成分が含まれており、この有効成
分をアルコールとともに抽出する。実施に際して図3に
示す容器1内に海洋深層水2に対してエチルアルコール
1を混合し、加熱源2の稼働により上記混合液を蒸発さ
せて冷却タワー3内に導き、該冷却タワー3に設けた注
入口4から注入した冷却水を排水口5から排出すること
により蒸発ガスを冷却して管路6に海水アルコールを製
造する。そして得られた海水アルコールと沸石を蒸留ビ
ンに入れ、ヒータを用いて加熱するとアルコールが先に
蒸発するため、当初の混合アルコール量に達した時点で
蒸留を終了して変法エチルアルコールを製造する。
【0019】次に前記原液と変法エチルアルコールを
1:1で混合して得た水溶液をピンクタシン1とし、濃
縮原液と白色ワセリンを適当に混合して皮膚の塗布剤と
しての軟膏を作り、ピンクタシン2とする。
【0020】一方、前記濃縮原液をトリプシン等で蛋白
質を消化させ、更に加熱してトリプシンを失活させてか
ら濾過して有機成分であるグリコサミノグリカン(GA
Gs)を得た。
【0021】このようにして得られたグリコサミノグリ
カンは保水力が強く、またイオン濃度環境の維持にかか
わり、上皮細胞、特に角質層の再生を促進する作用があ
る。このグリコサミノグリカンはポリ蛋白質に結合して
いるために溶出成分は糖蛋白質である。この糖蛋白質の
ままでもアトピー性皮膚炎に対して効果があるため、糖
と蛋白質を分離する必要はない。
【0022】前記の抽出成分がグリコサミノグリカンで
あることをアルデヒドフクシン染色法で確認した。即
ち、グリコサミノグリカンは硫酸粘液多糖類(ムコ多糖
類)に属し、硫酸基(SH基)を持っている。この類は
アルデヒドフクシン染色法で陽性反応を示す。そこで当
抽出物を染色したところ陽性であった。このことから、
抽出物質からムコ多糖類、即ちグリコサミノグリカンで
あることが判明した。なお、今回行った具体的な染色は
次記の通りである。グリコサミノグリカンは濃縮原液中
に微小油滴として浮遊している。したがって、組織のア
ルデヒドフクシン染色法による前後処理は不要である。
即ち、アルデヒドフクシン染色法で直接染色すればよ
い。具体的には、スライドグラス上に濃縮原液を一滴落
し、それにカバーグラスをかける。これにより微細な油
滴状のグリコサミノグリカンはカバーグラスの縁辺部に
集合して行って集合体を作る。次にアルデヒドフクシン
染色液をカバーグラスの片側の縁辺部に一滴、滴下し
て、染色液をカバーグラス内に徐々に拡散させて行く。
その結果、染色液の適性な濃度のところでグリコサミノ
グリカンは染色される。そこで、この染色状態を顕微鏡
で確認した。
【0023】このグリコサミノグリカンは酵母菌の一種
であるでん風菌等のカビに対しても殺菌作用がある。ま
た、3ヵ月間に渡って人間の皮膚に連続して塗布しても
副作用は生じない。これらの性質からアトピー性皮膚炎
に対して有効と考えられたので、3ヵ月間に渡ってアト
ピー性皮膚炎に対して臨床試験を行った結果、3ヵ月後
には完治した結果が得られ、極めて有効であることが確
認された。また、でん風に対しても1ヵ月半の臨床実験
により完治したことが確認された。
【0024】以下に本実施例によって得られたグリコサ
ミノグリカンと既知のグリコサミノグリカン(GAG
s)の性質を比較して説明する。即ち、通常のグリコサ
ミノグリカンは蛋白質と結合した糖タンパク質(PG)
として生物生理活性を示す。しかし既知のGAGsはそ
の種類によって蛋白質のアミノ酸との結合様式が異なっ
ており、コンドロイチン硫酸(CS)、ヘパラン硫酸
(HS)、デルマタン硫酸(DS)はセリン(SER)
とO−結合をしている。しかし、ケラタン硫酸(KS)
は軟骨ではセリン(SER)とO−結合しているが、角
膜においてはアスパラギン酸とN−結合をしており、他
のグリコサミノグリカンとは結合様式において明らかに
異なる。
【0025】図1は貝殻の断面を示す概略図であり、炭
酸カルシウム7を主体として繊維状蛋白質シート8(コ
ンキオリンズ)と顆粒状蛋白質9(アスパラギン酸−ケ
ラタン硫酸)から構成されている。本実施例に基づいて
貝殻から分離したグリコサミノグリカンは、図2に示し
たようアスパラギン酸とN−結合しており、ケラタン硫
酸以外のグリコサミノグリカンとは結合様式において明
らかに異なるが、ケラタン硫酸とは同じである。従って
抽出による有効成分はケラタン硫酸である。
【0026】ケラタン硫酸は等モルのN−アセチルグル
コサミン6−硫酸とガラクトースから成る多糖であり、
ウロン酸を含まない点で他のグリコサミノグリカンとは
異なっている。
【0027】次に角膜のコラーゲンを被覆しているケラ
タン硫酸が多く含まれる眼の角膜に貝殻から分離したグ
リコサミノグリカンを滴下して、角膜のコラーゲン繊維
とそれらを装飾するプロテオグリカン(PG)との高度
に秩序立った空間配置の乱れを観察した結果、角膜の透
明度が失われ、角膜のケラタン硫酸とは明らかに相違し
ていることが判明した。
【0028】以上の結果から、貝殻分離物質はケラタン
硫酸とは類似しているが、性質が異なっており、従来に
ない新物質であることが判明した。本実施例では当分離
物質をKS−sと呼称し、アトピー性皮膚炎等の皮膚病
の治療薬の添加剤とする。
【0029】前記濃縮原液はグリコサミノグリカンや珪
素および微量金属を含有しているため、皮膚に塗布する
ことによって皮膚の角質層の改善効果があり、アトピー
性皮膚炎の治療剤や美顔剤等に用いて有効である。
【0030】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明にか
かるグリコサミノグリカンの抽出方法とそれによる皮膚
の角質層の改善剤によれば、貝殻を粉末にすることによ
り有効成分の抽出効率が高くなり、従来から単に廃棄処
理されてきた貝殻の有効利用をはかることが出来る。上
記製造工程は比較的簡易であるために実用向きであり、
コスト面からも有利であって大量生産することが可能と
なる。
【0031】得られたグリコサミノグリカンは保水力が
強く、上皮細胞とか角質層の再生を促進する効果があ
る。従って抽出された原液と海洋深層水から得られた変
法エチルアルコールを混合して得た水溶液、及び前記濃
縮原液と白色ワセリンを適当に混合して軟膏を作ること
により、従来から皮膚病の治療薬として使用されている
ステロイド剤に代えて皮膚の角質層として用いて効果の
ある改善剤が得られる。特にアトピー性皮膚炎に対して
も副作用や病状の再発がなく、アトピー性皮膚炎に対し
て有効な薬剤を提供することが出来る。
【0032】従って本発明によれば、貝殻に含まれる有
機成分であるグリコサミノグリカンを効率的に抽出して
皮膚病に有効な塗布剤とか軟膏を製造することにより、
貝殻という産業廃棄物の有効利用をはかることが出来
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】貝殻の断面を示す概略図。
【図2】本実施例に基づいて貝殻から分離したグリコサ
ミノグリカンの化学的構造図。
【図3】海洋深層水から変法エチルアルコールを製造す
るための装置の概要図。
【符号の説明】
1…容器 2…加熱源 3…冷却タワー 4…(冷却水の)注入口 5…(冷却水の)排水口 6…管路 7…炭酸カルシウム 8…繊維状蛋白質シート 9…顆粒状蛋白質
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 9/06 A61K 9/06 G 31/73 ADA 31/73 ADA C07B 63/00 C07B 63/00 D

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 貝殻を殺菌,乾燥後に粉末状原材料と
    し、溶媒として加熱した水,アルコール類,グリセリン
    の何れかを用いて上記粉末状原材料から有機成分を溶出
    することを特徴とするグリコサミノグリカンの抽出方
    法。
  2. 【請求項2】 体積比で粉末状原材料1に溶媒1〜2の
    割合で混合し、40℃〜120℃に加熱して有機成分を
    除々に溶出し、室温で放置する工程を複数回繰り返し、
    得られた上澄液を濾過して原液とした請求項1記載のグ
    リコサミノグリカンの抽出方法。
  3. 【請求項3】 前記原液を真空凍結乾燥法,温風乾燥
    法,高速液体クロマティー法の各種濃縮法を用いて濃縮
    原液とした請求項1又は2記載のグリコサミノグリカン
    の抽出方法。
  4. 【請求項4】 貝殻の粉末状原材料を溶媒を用いて有機
    成分を溶出して原液とする一方、海洋深層水とエチルア
    ルコールの混合物を蒸留して変法エチルアルコールを得
    て、前記原液と変法エチルアルコールを混合して塗布剤
    としての水溶液としたことを特徴とするグリコサミノグ
    リカンによる皮膚の角質層の改善剤。
  5. 【請求項5】 貝殻の粉末状原材料を溶媒を用いて有機
    成分を溶出し、得られた原液を各種濃縮法を用いて濃縮
    原液として、この濃縮原液と白色ワセリンを混合して塗
    布剤としての軟膏としたことを特徴とするグリコサミノ
    グリカンによる皮膚の角質層の改善剤。
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