JP2890063B2

JP2890063B2 - 手術用縫合糸の製造法

Info

Publication number: JP2890063B2
Application number: JP21270090A
Authority: JP
Inventors: 光司西谷; 巧清齋藤
Original assignee: Gunze Ltd
Current assignee: Gunze Ltd
Priority date: 1990-08-09
Filing date: 1990-08-09
Publication date: 1999-05-10
Anticipated expiration: 2014-05-10
Also published as: JPH0496758A

Description

【発明の詳細な説明】（産業上の利用分野）本発明は、楕円断面を有する新規な手術用モノフィラ
メント縫合糸の製造法に関する。

（従来技術）従来、モノフィラメント糸を素材とする手術用縫合糸
としては、例えば特公昭53-14649号、特公昭61-30585号
公報に開示されるポリプロピレン縫合糸が例示できる。

これらの縫合糸は、組織通過性に優れ、炎症を生じ難
いことより主として血管縫合用として用いられている。

（発明が解決しようとする問題点）しかしながら、かかるモノフィラメント縫合糸の欠点
として、結び目の安定性、即ち、結節安定性に劣るとい
う問題があり、その改善が特に求められるところであ
る。

即ち、組織通過性が良いということは、反面、結び目
の安定性に欠けるという欠点に繋り、かかる点を解消し
た新規な縫合糸の出現が望まれるところである。

（問題点を解決するための手段）本発明は、かかる点、種々の実験の結果より、縫合糸
の断面を楕円、即ち、その楕円率を５〜20％，より好ま
しくは10〜15％の特定の範囲にすれば組織通過性を低下
させることなく、結び目の安定性も向上させることがで
きるとの知見を得てその製造法を発明したものである。

即ち、本発明者らの知見によると、楕円率５〜20％の
範囲にある縫合糸は、結び目を形成した際、従来の真円
もしくはそれに近いものに比べて結び目相互の接触面積
が大きくなり、その結果、接触面の摩擦抵抗が増大して
解け難くなる特徴を有すること、これが５％未満のもの
は結節安定性に乏しく、また、20％を越えるものは組織
通過時組織を傷めやすく、針付けも困難なこと等より、
かかる範囲、より好ましくは10〜15％の特定の範囲にあ
る縫合糸について、その製造法を発明したものである。

即ち、本発明は、モノフィラメント糸の溶融紡糸に際
し、吐出速度2.5〜6.0m/分，引取速度12.0〜25.0m/分の
条件下において、紡糸吐出口から５〜30mmの空冷域と、
水温45〜55℃の水冷域を連続して設け、かかる条件下に
おいて紡糸することによって楕円率５〜20％の範囲にあ
る楕円断面を有するモノフィラメント縫合糸を得ること
に特徴を有するものである。

但し、楕円率は以下の計算式による。

（作用）本発明を実施するに際しては、例えば、前記した特公
昭53-14649号公報第1a図に示される水冷式の紡糸装置の
使用が例示できる。

かかる装置は、溶融した樹脂の吐出口から空冷域，こ
れに続く水冷域、その後における延伸域を設けたもの
で、本発明においては、これによるモノフィラメント糸
の紡糸において、吐出速度を2.5〜6.0m/分，引取速度を
12.0〜25.0m/分、かかる条件下における紡糸吐出口から
水冷槽水面までの距離を５〜30mm、水冷槽の水温を45〜
55℃に特定したものである。

本発明における吐出速度2.5〜6.0m/分，引取速度12.0
〜25.0m/分の条件はモノフィラメント糸を溶融紡糸する
際の吐出と引取りの関係速度であり、所望の比率を設定
して必要な繊度の糸を得るものである。

本発明はかかる条件下において、第１に、紡糸吐出口
から５〜30mmの空冷域を構成したことに特徴を有する。
かかる空冷域は吐出された糸を大気によって徐冷するた
めに設けられたゾーンであり、その範囲が５〜30mm必要
なことは第１図に示す結果に基づく。

即ち、これが30mmを越えると、楕円率が５％未満とな
り、5mm未満であると、逆に楕円率が20％を越えるため
好ましくない。

より好ましい楕円率10〜15％の範囲とする条件として
は、およそ15〜20mmの範囲にあるのが望ましい。

また、本発明の第２の特徴は、水冷槽の水温を45〜55
℃としたことにある。

即ち、これは、第２図の水温と楕円率の関係に基づく
もので、その水温が45℃未満であると、楕円率が５％未
満となり、55℃を越えると、逆に楕円率が20％を越える
ことがその根拠となっている。

より好ましい楕円率10〜15％の範囲とする条件として
は、およそ45〜50℃の範囲にあるのが望ましい。

尚、かかる空冷域の長さと楕円率の関係、及び、水温
と楕円率の関係の実験については以下に説明する実施例
の方法に準じて行なった。

以下、かかる点について具体的に例を挙げて説明す
る。

（実施例）前記した特公昭53-14649号公報第1a図に示される機構
と同じ水冷式紡糸装置を用い、円形吐出口の紡糸ノズル
を用いて、第１表に示すような条件によりモノフィラメ
ント糸を製造した。その結果、各々同表に示すような楕
円率を有した。

尚、かかる実施例における紡糸原料としては、何れも
分子量（MFI 3.7（at230℃×10分））のアイソタクチッ
クポリプロピレン樹脂を用い、糸の滑り特性を向上さ
せ、結び下ろし性を向上させる目的において各試験区に
滑剤としてステアリン酸カルシウム0.2重量％を樹脂に
加えて紡糸した。

上記の結果より、楕円率は空冷域の長さ、水冷域の温
度によって異なることが明確となり、前記した本発明条
件の範囲にある条件設定が必要なことが確認された。

尚、かかる楕円率は、延伸により殆ど変化しないもの
であり、延伸前に形成されたものがそのまま楕円率とな
ってあらわれる。

このようにして得たモノフィラメント糸は、サイズ、
用途別に適宜の寸法にカットされ、針付け、滅菌等して
手術に供される。

一方、楕円率の違いとその評価について、本発明で得
た楕円率15％，サイズ５−０の縫合糸と既存のＮ社製の
縫合糸とを比較して以下の第２表に示した。

以上の結果より、物性的にも優れた評価を得ると共
に、これを結び目の安定性という観点より実際に現場の
医師に供し、その評価を求めたところ結び易く、形成さ
れた結び目が解けにくいとの優れた評価を得た。

尚、破断強度、伸度の測定はJIS法に準じ、また、結
節強度、伸度は，プラスチック製縫合糸基準の外科結び
による測定法によった。

（発明の効果）本発明によって得た縫合糸は前記のように優れたもの
であった。

尚、かかる方法はポリプロピレンに限らず紡糸によっ
て製造されるナイロン、ポリエチレン、ポリグリコール
酸、ポリグリコール酸／ポリラクチド共重合体等への適
用も可能である。

また、紡糸時に滑剤を混ぜることは、均一な機能の付
与、効果の耐久性向上、工程の合理化において好適な方
法であり、安全性に優れるステアリン酸カルシウムのほ
か、ステアリン酸アミド、オルガノポリシロキサン、ポ
リエチレン等も用いることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、空冷域の長さと楕円率の関係図。第２図は、
水温と楕円率の関係図を示す。

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】吐出速度2.5〜6.0m/分，引取速度12.0〜2
5.0m/分にてモノフィラメント糸を溶融紡糸するに際
し、紡糸吐出口から５〜30mmの空冷域と、水温45〜55℃
の水冷域を連続して設け、かかる条件下において紡糸す
ることによって、楕円率５〜20％の範囲にある楕円断面
を有するモノフィラメント縫合糸を得ることを特徴とす
る手術用縫合糸の製造法。但し、楕円率は以下の計算式による。
【請求項２】モノフィラメント糸がポリプロピレンであ
ることを特徴とする請求項１記載の手術用縫合糸の製造
法。