JP2876836B2 - 空気質制御システム - Google Patents

空気質制御システム

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、空気質を検知し、検知
信号に基づいて空調装置、換気装置、空気清浄装置もし
くはそれらの複合化された装置を制御する空気質制御シ
ステムに関する。
【0002】
【従来の技術】昨今、オフィスビルを始め一般住宅にお
いても建物の密閉度が向上し、冷暖房の高効率化、省エ
ネルギー化が図られるようになってきた。しかしその反
面、人間の諸活動によって室内の空気質が低下して不快
感が増大したり健康を害するという問題が顕在化してき
た。このような状態に対処するために、制御対象や制御
スペースに応じて各種の個別あるいは複合機能を有する
空調装置や換気装置もしくは空気清浄装置が導入されて
きた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし従来のほとんど
の空調装置や換気装置もしくは空気清浄装置は専ら初期
的に設定された条件に応じた運転制御を行なうのみで、
実際の空気質の変化に対応した制御を行なうことはほと
んど不可能であった。本発明はこの課題を解決するた
め、空気質の変化の原因および空気質のレベルをリアル
タイムで判定することにより、実際の空気質の変化に対
応した的確できめ細かな空気質制御を行なうことを目的
とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するために、空気質を検知する空気質検知手段、空気質
の原因を判定する信号処理手段、前記信号処理手段から
の出力と空気質の感覚情報に基づいてファジイ推論を実
行するファジイ推論手段、前記ファジイ推論手段の推論
結果に基づいて空気質環境を変化させるための空調装
置、換気装置、空気清浄装置もしくはそれらの複合化さ
れた装置を制御する制御手段からなり、空気質検知手段
からの出力に基づいてきめ細かな空気質の制御を行なう
空気質制御システムを提供しようとするものである。
【0005】
【作用】空気質検知手段からの出力と空気質の感覚情報
に基づいてファジイ推論を実行することにより、空気質
の状態を人間の嗅覚による判断に近いレベルでリアルタ
イムで判定することができ、これによってきめ細かな空
気質の制御を的確に行なうことが可能となるものであ
る。
【0006】
【実施例】以下本発明の実施例について説明する。 (実施例1)図1は本発明の一実施例を示す空気質制御
システムのブロック図である。図1において、1は空気
質を検知する空気質検知手段、2は空気質に対して人間
が感じる不快感を基準とする感覚情報、3は空気質検知
手段1の出力に基づいて空気質の変化の原因を判定しか
つ出力の規格化を行なう信号処理手段、4は信号処理手
段3の出力と感覚情報2に基づいて空気質のレベルを判
定するファジイ推論手段、5は推論結果に基づいて空調
装置、換気装置、空気清浄装置もしくはそれらの複合化
された装置を制御する制御手段である。6は空調装置で
あり、空調装置、換気装置、空気清浄装置もしくはそれ
らの複合化された装置であってよい。なお、本実施例で
は空気質検知手段の出力の規格化を行なった場合につい
て説明するが、規格化を行なうことなく空気質検知手段
からの出力をそのままファジイ推論手段に入力すること
も可能である。
【0007】空気質を支配する要素は多岐にわたってい
るが、本実施例では図1の1(空気質検知手段)に検知
対象名で示すように、空気質の構成要素として、体臭
(1a)、およびバックグランド臭気の(1b)の主た
る二つの要素に、補正要素としての環境の温度(1c)
と湿度(1d)を加えた計四つの要素を対象とした。な
お、バックグランド臭気とは建材、家具等の固有の臭
気、およびそれらに吸着した体臭、タバコ臭その他の残
留臭気を総合した臭気を意味するものである。
【0008】空気質検知手段としては、体臭検知のため
にNASICON系固体電解質二酸化炭素センサ(以
後、単に二酸化炭素センサという)、バッククランド臭
検知のために有機溶剤類を検知するSnO2系酸化物半
導体アルコールセンサ(以後、単にアルコールセンサと
いう)を用いた。なお、体臭検知手段として二酸化炭素
センサを用いた理由は、二酸化炭素濃度と体臭起源の不
快感とが相関を持つという実験事実に基づくものであ
る。二酸化炭素センサを使用せずに、体臭構成成分を直
接識別検知するガスセンサを用いることももちろん可能
である。一方、温度、湿度検知手段としてはそれぞれセ
ラミックサーミスタとセラミック湿度センサを用いた。
【0009】信号処理手段は、前記空気質検知手段から
の出力信号に基づいて空気質の変化の原因を判定し、か
つ出力の規格化を行なう機能を備えている。
【0010】ファジイ推論手段は、前記信号処理手段か
らの規格化された出力信号と空気質の感覚情報を取入
れ、その推論結果に基づいて空気質のレベルを判定し、
制御手段へ出力する機能を備えている。
【0011】空気質を変化させる原因の判定は、空気質
を変化させる原因となる特定のガス成分を選択的に検知
するガスセンサを用いることで容易に行なうことができ
る。一方、空気質のレベルの判定は、ガスセンサの出力
とあらかじめ入力してある空気質の感覚情報とを比較す
ることによって行なうことができる。空気質の不快感と
ガスセンサ出力の対応関係は申告試験等の方法を採り入
れることによりあらかじめ得られるため、感覚情報は比
較的容易に求めることが可能である。
【0012】次に、実施例のシステムの動作をファジイ
推論手段の具体例に基づいて説明する。図2はファジイ
推論を簡単に説明するためのブロック図である。図にお
けるファジイ推論手段はファジイ推論を実行するように
プログラムされたマイクロプロセッサ、制御ルールメモ
リ、空気質感覚情報メモリ等から構成される回路装置か
らなっている。
【0013】二酸化炭素センサで検知された体臭情報
は、信号処理手段により温度、湿度補正処理を行ない、
非在室時の二酸化炭素濃度に相当するセンサ出力を基準
とする出力比として規格化された出力としてファジイ推
論手段に入力される。また、アルコールセンサで検知さ
れたバックグランド臭気情報は、同様に信号処理手段に
より温度、湿度補正処理を行ない、清浄レベルのセンサ
出力を基準とする出力比として規格化された出力として
ファジイ推論手段に入力される。ファジイ推論手段は、
入力された体臭情報、バックグランド臭気情報、および
感覚情報を基に、あらかじめ設定されている制御ルール
にしたがってファジイ推論を実行し、空調装置等を制御
するための情報である空気質のレベルを出力する。制御
ルールの設定においては、体臭とバックグランド臭気レ
ベルは比例関係にあり、在室者数、在室時間あるいは在
室者の活動レベルが増すほど体臭発生量も増してバック
グランド臭気レベルが増すとした。
【0014】ファジイ推論手段に入力される規格化され
た二酸化炭素センサの出力XC、規格化されたアルコー
ルセンサの出力XA、および出力される空気質レベルY
それぞれのメンバーシップ関数の例を図3(a)、
(b)、(c)に示した。二酸化炭素センサ出力XC
は、基準レベルをCBとし、以下CL、CM、CHと順次出
力レベルが大きくなることを表わしている。またアルコ
ールセンサ出力XAでは、基準レベルをABとし、以下A
L、AM、AHと順次出力レベルが大きくなることを表わ
している。
【0015】出力される空気質レベルYでは、人間の感
覚情報として「明らかに受け入れられる」をG1、「ど
ちらかといえば受け入れられる」をG2、「どちらかと
いえば受け入れられない」をG3、「明らかに受け入れ
られない」をG4を用意した。
【0016】制御ルールはそれぞれ以下のように設定
し、メモリされている。 Rule1:IF XC is CB and XA is AB
THEN Y is G1 Rule2:IF XC is CL and XA is AL
THEN Y is G2 Rule3:IF XC is CM and XA is AM
THEN Y is G3 Rule4:IF XC is CH and XA is AH
THEN Y is G4 このルールを(表1)に示した。前述したように、本実
施例では、在室者数、在室時間あるいは在室者の活動レ
ベルが増すほど体臭発生量も増してバックグランド臭気
レベルが高くなるとして、(表1)に示すように各セン
サ出力Xと空気質レベルYをわりつけた。
【0017】
【表1】
【0018】図4に推論のフローチャートを示した。ま
ずステップ1で体臭、バツクグランド臭気、温度、湿度
をそれぞれのセンサで検知し、検知信号は信号処理手段
へ送られる。
【0019】ステップ2で、体臭およびバックグランド
臭気検知センサ出力に温度、湿度補正処理を行ない、さ
らに体臭およびバックグランド臭気それぞれの基準レベ
ルに対する規格化処理を行ない、ファジイ推論手段へ出
力する。
【0020】ステップ3で、前記ファジイ推論プロセッ
サによって、体臭およびバックグランド臭気に対するフ
ァジイ変数のメンバーシップ関数を用いて、体臭および
バックグランド臭気各センサ出力におけるメンバーシッ
プ値を求める。
【0021】ステップ4で、前記各センサ出力のメンバ
ーシップ値が前記各制御ルールの前件部(IF・・・)
を満たしている度合を求め、制御ルールを決定する。
【0022】ステップ5で、成立した制御ルールの実行
部(THEN・・・)のメンバーシップ関数により空気
質レベルが判定され、その信号が制御手段に出力され
る。
【0023】(実施例2)空気質の構成要素として、体
臭とバックグランド臭気にタバコ臭を加えた主たる三つ
の要素に、補正要素としての環境の温度と湿度を加えた
計五つの要素を対象とした場合について、実施例1と同
様のシステムを構築し、動作を確認した。タバコ臭検知
のためには水素を指標とし、SnO2系酸化物半導体水
素センサを用いた。その他のセンサは実施例1と同じも
のを用いた。そして、規格化された二酸化炭素センサ、
アルコールセンサおよび水素センサの各出力および出力
される空気質レベルのそれぞれに対するメンバーシップ
関数を設定し、制御ルールを設定した上でファジイ推論
を試みた。感覚情報としても、喫煙に対する不快感の情
報をあわせて取り込んだ。この結果、在室者が喫煙を行
なった場合の空気質の微妙な変化も確実にとらえること
が可能であることが明らかになった。
【0024】以上説明したように、ファジイ推論を用い
ることにより、従来の個別制御や初期条件設定による制
御では不可能であった、より人間の感覚に近い空気質の
判定とそれに基づく空気質環境のきめ細かな制御が可能
となるものである。
【0025】なお、本発明は上記実施例に限定されるも
のではない。実施例では空気質検知手段としてNASI
CON系固体電解質二酸化炭素センサ、SnO2系酸化
物半導体アルコールセンサ、およびSnO2系酸化物半
導体水素センサを用いた場合を説明したが、これに限定
するものではなく、材料や原理の異なる各種のガスセン
サを用いることができる。また、空気質の変化の原因が
同じでも、指標となるガス種を変えてそれを選択検知す
るセンサを用いることも可能である。またガスセンサに
限らず、光学的ガス検知手段、化学的ガス検知手段など
目的や規模に応じた検知手段を用いることも可能であ
る。温度、湿度検知手段も実施例に限定するものではな
い。
【0026】また対象とする空気質の構成要素の種類を
さらに多く設定し、それぞれに対応したガスセンサ等を
用いることにより、さらにきめ細かな空気質制御を行な
うことも可能である。
【0027】一方、ファジイ推論形式としては直接法あ
るいは間接法など公知の形式を用いることが可能であ
る。実施例では簡単な制御ルールを用いてファジイ推論
を実施した場合を説明したが、例えば実施例1における
(表1)のあいている升目に空気質レベルをわりつけて
制御ルールを追加設定することにより、さらにきめ細か
な空気質環境の制御が可能となる。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明になる空気
質制御システムを用いることにより、空気質の構成要素
を的確に検知し、かつ検知した空気質情報と感覚情報を
用いて、あらかじめ設定した制御ルールに基づいてファ
ジイ推論を実行することにより、空気質の状態を人間の
感覚に近いレベルで判定でき、きめ細かな空気質環境の
リアルタイム制御が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の空気質制御システムのブロ
ック図
【図2】同システムにおけるファジイ推論を説明するブ
ロック図
【図3】(a)は規格化された二酸化炭素センサ出力の
メンバーシップ関数を示す図 (b)は規格化されたアルコールセンサ出力のメンバー
シップ関数を示す図 (c)は規格化された空気質レベルのメンバーシップ関
数を示す図
【図4】同システムにおける推論フローチャート
【符号の説明】
1 空気質検知手段 2 感覚情報 3 信号処理手段 4 ファジイ推論手段 5 制御手段 6 空調装置等

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】空気質を構成する複数の要素を検知する空
    気質検知手段と、前記空気質検知手段からの出力に基づ
    いて主として空気質の変化の原因の判定を行なう信号処
    理手段と、前記信号処理手段からの出力と空気質の快、
    不快状態に対する人間の感覚情報とに基づいてファジイ
    推論を実行し、空気質のレベルを判定するファジイ推論
    手段と、前記ファジイ推論手段の推論結果に基づいて空
    気質環境を変化させるための空調装置を制御する制御手
    段を具備することを特徴とする空気質制御システム。
  2. 【請求項2】検知および制御対象の主たる空気質構成要
    素が体臭、タバコ臭、バックグランド臭気、温度、湿度
    であることを特徴とする請求項1記載の空気質制御シス
    テム。
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