JP2875555B2 - 電解コンデンサ用電解液 - Google Patents

電解コンデンサ用電解液

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、電解コンデンサ用電解液の改良に関し、更
に詳しくは、特定の添加物を添加することにより耐電圧
性の向上した電解コンデンサを提供し得る電解コンデン
サ用電解液の改良に関する。
[従来の技術] 電解コンデンサは、小形、大容量、安価で整流出力の
平滑化等に優れた特性を示し、各種電気・電子機器の重
要な構成要素の1つであり、一般に、表面を電解酸化に
よって酸化皮膜に変えたアルミニウムフィルムを陽極と
し、この酸化皮膜を誘電体として集電陰極との間に電解
液を介在させて作製される。使用中は常に酸化皮膜を再
生しているため安定であるが、例えば長期間使用しない
と再生が不十分となり劣化する。
電解コンデンサは化学反応を行わせながら使用するた
め、その特性は電解液の性質に大きく依存する。表面を
酸化皮膜としたアルミニウム電極と電解液との間で起る
化学反応の定常状態を維持し、誘電体とするアルミニウ
ム酸化皮膜を良好に保持することが性能の安定化に重要
であり、使用法を誤って例えば過剰の高電圧負荷等によ
り化学的定常状態が乱れると、アルミニウム酸化皮膜が
破壊されやがては絶縁が破れるに至る。
電解コンデンサの使用中に進行する化学反応におい
て、電解液はイオン移動の媒体たるイオン伝導体を形成
する。電解液と電極との界面では電極反応の進行によっ
て電荷が移動し、陽極面では酸化反応が、陰極面では還
元反応が進行し、それと共にイオン伝導体たる電解液の
中をイオンが移動して電流が流れる。したがって、電解
液の電気電導度は、電解コンデンサの使用中に進行する
化学反応におけるイオン伝導体たる電解液の特性を反映
し、コンデンサの総合性能を評価する重要な指標の1つ
である。
コンデンサの負荷電圧が上昇し高電圧負荷による誘電
体の物性変化が進行し時間的な誘電率の変化が生じる結
果電気化学的状態が動揺する現象をシンチレーションと
いうが、このような現象が認められる電圧をシンチレー
ション電圧(耐電圧)としてコンデンサの耐電圧性の尺
度とすることができ、シンチレーション電圧(耐電圧)
が高い程コンデンサの耐電圧性が大きいことを示す。耐
電圧は、簡便には、適当な大きさの未化成アルミニウム
箔を測定しようとする電解液に浸した状態で、最終コン
デンサ製品まで組み上げることなく測定することができ
る。
コンデンサの静電容量は、誘電体の誘電率に比例する
ため高い誘電率の誘電体を用い、使用中は誘電体の物理
化学的変化を避け誘電率を高く維持すべきである。充電
電流の位相と外部電界の位相との位相との差である損失
角の正接すなわち誘電正接はコンデンサの消費電力の目
安として用いられ、その値が小さければ消費電力が少い
ことを示す。充電開始後一定値に達した時に流れる電流
である漏れ電流は誘電体の荷電担体の定常的な移動によ
るもので、誘電体中の不純物の解離等によって生じたイ
オンが荷電担体の主体をなすと考えられており、漏れ電
流の変化の大小は誘電体の電気化学的状態の安定性を反
映する。
従来の一般的な電解コンデンサ用電解液においては、
高耐電圧性を得るために電解液にホウ酸等の酸またはこ
れらの塩が主溶質として添加された。また、これら以外
にも種々の添加物を添加することにより電解コンデンサ
用電解液を改良して高耐電圧性を得る試みがなされてい
る。
高耐電圧性を得るための添加剤としては、例えば、ス
ルファミン酸の添加(特開昭49−82963号)、スベリン
酸の添加(特開昭49−133860号)、リン酸ドデシルの添
加(特開昭49−73659号)、アルキルリン酸の添加(特
開昭52−153154号)、ジアリン酸の添加(特開昭57−14
1913号)、ホウ酸−マンニット−ポリビニルアルコール
系の使用(特開昭59−177915号)等が提案されている
が、高電導度を維持した耐電圧の向上は必ずしも十分に
は望めなかった。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、電解コンデンサ用電解液の特性を良好に保
持しつつ耐電圧性が向上し高温で長期間使用しても安定
した特性を与える電解コンデンサ用電解液を提供するこ
とを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明によれば、アルミニウム電解コンデンサ駆動用
の電解液において、有機極性溶媒を主溶媒とし、有機酸
もしくは無機酸またはその塩を溶質とする電解液に、次
の一般式: (式中、nは1以上の整数であり、Rは脂肪酸残基を表
す)を有するポリオキシエチレン脂肪酸エステルを添加
することを特徴とする電解コンデンサ用電解液が提供さ
れる。式中、nは1〜100程度が好適である。
本発明のポリオキシエチレン脂肪酸エステルの脂肪酸
成分の具体例として次のような脂肪酸を例示することが
できる: 飽和脂肪酸 一般式CH3(CH2nCOOH(nは9以上の整数)を有す
るものとして、ウンデシル酸(n=9)、ラウリン酸
(n=10)、トリデシル酸(n=11)、ミリスチン酸
(n=12)、ペンタデシル酸(n=13)、パルミチン酸
(n=14)、ヘプタデシル酸(n=15)、ステアリン酸
(n=16)、ノナデカン酸(n=17)、アラキン酸(n
=18)、ベヘン酸(n=20)、リグノセリン酸(n=2
2)、セロチン酸(n=24)、ヘプタコサン酸(n=2
5)、モンタン酸(n=27)、メリシン酸(n=28)、
並びにラクセル酸(n=30)等の飽和脂肪酸、 不飽和脂肪酸 ウンデシレン酸 CH2=CH(CH28COOH オレイン酸 C17H33COOH(cis)〈9〉 エライジン酸 C17H33COOH(trans)〈9〉 セトレイン酸 C21H41COOH〈11〉 エルカ酸 C21H41COOH(cis)〈13〉 ブラシジン酸 C21H41COOH(trans)〈13〉 リノール酸 C17H31COOH〈9,12〉 リノレン酸 C17H29COOH〈9,12,15〉 アラキドン酸 C19H31COOH〈5,8,11,14〉 ステアロール酸 C17H31COOH〈3重結合,9〉 (ただし、〈 〉内は不飽和結合の位置を示す)等の不
飽和脂肪酸。
電解液の有機極性溶媒に単独または組合せて使用し得
る溶媒の具体例として次のような溶媒を例示することが
できる: プロトン性極性溶媒 エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノー
ル、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノ
ール、シクロヘキサノール、並びにベンジルアルコール
等の1価アルコール類、 エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセ
リン、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メト
キシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール、
メチルセルソルブ、並びにエチルセルソルブ等の多価ア
ルコールおよびアルコールエーテル類、 非プロトン性極性溶媒 N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムア
ミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセト
アミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセ
トアミド、並びにヘキサメチルホスホリックアミド等の
アミド系溶媒、 γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、イソ
ブチレンカーボネート等のラクトン、環状アミド系溶
媒、 アセトニトリル等のニトリル系溶媒、 ジメチルスルホキシド等のオキシド系溶媒。
有機酸または無機酸のアンモニウム塩たる電解液の電
解質に単独または組合せて使用し得る電解質の具体例と
して次のような電解質を例示することができる: 有機酸 ギ酸、酢酸、プロピオン酸、エナント酸等の脂肪族モ
ノカルボン酸、 マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、メチ
ルマロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、
セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、シトラ
コン酸、並びにイタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸、 安息香酸、フタル酸、サリチル酸、トルイル酸、並び
にピロメリト酸等の芳香族カルボン酸、 無機酸 ホウ酸、リン酸、ケイ酸、HBF4、HPF6等の無機酸、 アンモニウム アンモニウム(NH4 +)、 メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、並びにプ
ロピルアンモニウム等のモノアルキルアンモニウム、 ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、エチ
ルメチルアンモニウム、並びにジブチルアンモニウム等
のジアルキルアンモニウム、 トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、
並びにトリブチルアンモニウム等のトリアルキルアンモ
ニウム、 テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモ
ニウム、トリブチルアンモニウム、テトラエチルアンモ
ニウム、並びにN,N−ジメチルピロリジニウム等の第四
級アンモニウム、 その他 ホスホニウムおよびアルソニウムも使用することがで
きる。
本発明による電解コンデンサ用電解液の有機極性溶媒
は、前記したプロトン性極性溶媒単独とすることもでき
るが、好ましくはプロトン性極性溶媒0〜50重量部と非
プロトン性極性溶媒100〜50重量部とを混合して調製す
る。必要に応じて0〜30重量部程度の水を混合すること
もできる。このような溶媒系に対し、溶質とする有機酸
または無機酸のアンモニウム塩を1〜30重量部溶解すれ
ば好適である。
このような溶質−溶媒系からなる電解液に対し、好ま
しくは前記したポリオキシエチレン脂肪酸エステルを0.
1〜20重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部添加するこ
とにより、良好なコンデンサ特性を保持しつつ高い耐電
圧性を実現し得る電解コンデンサ用電解液を提供するこ
とができる。
[作用] 本発明が開示した電解コンデンサ用電解液に添加する
独特の構造を有するポリオキシエチレン脂肪酸エステル
が、プロトン性極性溶媒を含む有機極性溶媒を主溶媒と
し、有機酸または無機酸のアンモニウム塩を溶質とする
電解液中でどのような作用をするのか、その作用機構自
体は明らかではない。しかしながら、本発明による電解
コンデンサ用電解液は、電解コンデンサの陽極、陰極、
アルミニウム酸化皮膜誘電体並びに電解液から構成され
る電気化学的反応系の化学的定常状態の安定化に何らか
の寄与をしているものと推定される。
前記したように、電解コンデンサは化学反応を行わせ
ながら使用するため、その特性は電解液の性質に大きく
依存する。表面を酸化皮膜としたアルミニウム電極と電
解液との間で起る化学反応の定常状態を維持し、誘電体
とするアルミニウム酸化皮膜を良好に保持することが性
能の安定化に重要である。
本発明は、独特の構造を有するポリオキシエチレン脂
肪酸エステルを添加することにより、当該添加剤の界面
活性作用によって酸化皮膜が水和劣化から保護され、良
好なコンデンサ特性を与えるものである。
[発明の効果] 本発明によれば、電解コンデンサ用電解液の特性を良
好に保持しつつ耐電圧性が向上し高温で長期間使用して
も安定した特性を与える電解コンデンサ用電解液が提供
される。
[実施例] 以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、
本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
電解液の組成 次に示すように、プロトン性極性溶媒を含む有機極性
溶媒を主溶媒として用い、必要に応じて水を添加し、溶
質およびポリオキシエチレン脂肪酸エステルを添加して
本発明による電解コンデンサ用電解液(実施例1〜8)
を調製した。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルを添加
しない以外は各々の組成が同一である対照(比較例1〜
8)も併せて調製した。それぞれの組成は括弧内に重量
部で示す。
なお、使用したポリオキシエチレン脂肪酸エステル
は、前記した一般式中、ポリオキシエチレンオレエート
(n=60)であるものをAで示し、ポリオキシエチレン
ステアレート(n=50)であるものをBで示し、ポリオ
キシエチレンパルチミテート(n=20)であるものをC
で示し、ポリオキシエチレンラウレート(n=15)であ
るものをDで示す。
実施例1および比較例1 溶媒: エチレングリコール(80) 水(7) メチルセルソルブ(20) 溶質: アジピン酸ジアンモニウム(20) アジピン酸(3) ポリオキシエチレン脂肪酸エステル: A(3)(実施例1のみ)。
実施例2および比較例2 溶媒: エチレングリコール(100) 水(5) 溶質: 安息香酸アンモニウム(15) ポリオキシエチレン脂肪酸エステル: A(2)(実施例2のみ)。
実施例3および比較例3 溶媒: エチレングリコール(100) 水(7) 溶質: セバシン酸アンモニウム(17) ポリオキシエチレン脂肪酸エステル: B(3)(実施例3のみ)。
実施例4および比較例4 溶媒: γ−ブチロラクトン(60) メチルセルソルブ(15) エチレングリコール(10) 溶質: フタル酸モノテトラメチルアンモニウム(15) ホウ酸(2) マンニット(2) ポリオキシエチレン脂肪酸エステル: C(3)(実施例4のみ)。
実施例5および比較例5 溶媒: γ−ブチロラクトン(60) メチルセルソルブ(15) エチレングリコール(10) 溶質: 安息香酸テトラエチルアンモニウム(15) ホウ酸(2) マンニット(2) ポリオキシエチレン脂肪酸エステル: C(3)(実施例5のみ)。
実施例6および比較例6 溶媒: γ−ブチロラクトン(60) エチレングリコール(20) 溶質: マレイン酸モノトリエチルアンモニウム(20) ホウ酸(2) マンニット(2) ポリオキシエチレン脂肪酸エステル: D(2)(実施例6のみ)。
実施例7および比較例7 溶媒: N,N−ジメチルホルムアミド(60) エチレングリコール(20) 溶質: マレイン酸モノトリエチルアンモニウム(20) ポリオキシエチレン脂肪酸エステル: D(3)(実施例7のみ)。
実施例8および比較例8 溶媒: N,N−ジメチルホルムアミド(65) エチレングリコール(20) 溶質: 安息香酸テトラメチルアンモニウム(15) ポリオキシエチレン脂肪酸エステル: B(3)(実施例8のみ)。
電解液の電導度および耐電圧 実施例1〜8および比較例1〜8の電解液の30℃にお
ける電導度および耐電圧を第1表に示す。ポリオキシエ
チレン脂肪酸エステルの添加により若干電導度が低下す
る傾向が認められたものの、耐電圧は大幅に向上した。 第1表 電導度(ms/cm) 耐電圧(V) 実施例1 4.15 215 比較例1 4.95 150 実施例2 4.10 340 比較例2 4.44 250 実施例3 4.00 420 比較例3 4.59 350 実施例4 7.69 95 比較例4 8.62 85 実施例5 5.81 120 比較例5 6.45 90 実施例6 7.61 125 比較例6 7.81 100 実施例7 11.0 115 比較例7 13.3 75 実施例8 8.20 110 比較例8 8.93 75

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウム電解コンデンサ駆動用の電解
    液において、有機極性溶媒を主溶媒とし、有機酸もしく
    は無機酸またはその塩を溶質とする電解液に、次の一般
    式: (式中、nは1以上の整数であり、Rは脂肪酸残基を表
    す)を有するポリオキシエチレン脂肪酸エステルを添加
    することを特徴とする電解コンデンサ用電解液。
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