JP2857099B2 - 動物用忌避剤 - Google Patents

動物用忌避剤

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は含硫テルペンまたは
SおよびOを環員とする6〜8員ヘテロ環化合物を有効
成分として含む動物用忌避剤に関する。より詳細には、
有効成分が含硫テルペン化合物が、チオゲラニオール、
8−メルカプトメントン、リモネンチオールまたはミン
トスルフィドであり、SおよびOを環員とする6〜8員
ヘテロ環化合物が2−メチル−4−プロピル−1,3−
オキサチアンである動物用忌避剤に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従来
からの農業に害をもたらすねずみ、もぐらなどの哺乳動
物、あり、あぶら虫などの害虫、さらに野生動物の生息
地にまで宅地が拡大し、餌の減少が動物を人間の日常生
活に近付けたために、いのしし、たぬき、さる、しかな
ども人間に害をもたらす動物になってきている。さらに
人間の無責任な飼育がペットを野生化させ繁殖させたり
と、人間から見れば害をもたらす動物が増加している。
近年飼いバトの野生化に伴う糞害も神社仏閣、公共施設
あるいは住居用マンション等で頻繁に発生し、重大な公
害問題の一つになっている。従来より害鳥の忌避の方法
としては、反射光や爆発音のように視覚および聴覚に訴
えるものが多い。また、最も有効と考えられる薬殺も動
物愛護の観点から困難で、避妊剤使用による個体数の調
節が行われているが、避妊剤の場合、その化学的諸特性
からその効果は極めて短期間なもので、長期間に渡る効
果は期待出来ない。
【0003】忌避剤使用による個体の分散などの手段も
用いられているが、現在までのところ忌避物質として
は、スペアミント油、ボルニルアセテート、カンファ
ー、テトラヒドロチオフェンなどの精油やテルペンの他
に、農薬殺菌剤であるチウラム等含硫黄系化合物に優れ
た有効のあることが知られている。しかし、忌避剤は積
極的な手段とはいえず、抜本的方法でないためか、系統
的な研究はなされていない。より持続効果の優れた忌避
剤の開発は、人畜及びその周辺環境を考慮した最も重要
なスポット的防除の一つとして活用されることが期待さ
れる。このような観点から忌避物質を鋭意検索した結
果、含硫黄テルペン化合物およびSおよびOを環員とす
る6〜8員ヘテロ環化合物が忌避活性を示すとの結果を
得た。
【0004】
【課題を解決するための手段】本願発明の忌避物質は含
硫テルペン化合物またはSおよびOを環員とする6〜8
員ヘテロ環化合物を有効成分として含み、好ましくは含
硫黄テルペン化合物が、チオゲラニオール、8−メルカ
プトメントン、リモネンチオールまたはミントスルフィ
ドであり、含硫黄ヘテロ環化合物が2−メチル−4−プ
ロピル−1,3−オキサチアンである。本発明で用いら
れる化合物は公知の化合物であり、これらの化合物は市
販品として得られる。
【0005】
【発明の実施の形態】忌避剤とは、害をもたらす動物を
接近させないために用いる物質である。含硫テルペンと
は、S(硫黄原子)を含むテルペンであり、テルペンと
は、植物精油の主成分をなす芳香ある化合物の総称であ
り、一般に5n個の炭素原子からなる骨格をもち、n=
2、3、4、6のものを、モノテルペン、セスキテルペ
ン、ジテルペンおよびトリテルペンという。鎖式構造の
ものと、環式構造のものがある。また炭化水素のほか
に、OH、CO、COOH、−O−などの官能基をも
つ。
【0006】本発明の含硫テルペンのSは、テルペンの
もつ官能基に含まれ、好ましくはSH基として、または
環の構成原子として存在している。より好ましくは、モ
ノテルペンチオール化合物である。本発明に使用し得る
含硫テルペン化合物として、具体的には、チオゲラニオ
ール(I)(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−
1−チオール)、8−メルカプトメントン(II)(2−
(1−メルカプト−1−メチル)−エチル−5−メチル
−シクロヘキサノン)、リモネンチオール(III)(α,
α,4−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−メタン
チオール)およびミントスルフィド(IV)((1R)−
シス−2,6−エピチオ−シス−8−イソプロピル−1
−メチル−5−メチレン−シス−ビシクロ[5,3,0]
デカン)、またはこれらの混合物を挙げることができ
る。好ましくは、チオゲラニオール、8−メルカプトメ
ントンまたはリモネンチオールであり、より好ましくは
チオゲラニオールである。
【0007】本発明のSおよびOを環員とする6〜8員
ヘテロ環化合物とは、炭素数6〜12個を有し、少なく
とも1個のSおよびO(酸素原子)を環の構成原子とす
る6〜8員環化合物であり、置換基を有していてもよ
い。好ましくは、炭素数6〜12個を有するSおよびO
を含む6員環化合物である。具体的には2−メチル−4
−プロピル−1,3−オキサチアン(V)(シス型およ
びトランス型)を挙げることができる。
【0008】
【化1】
【化2】
【0009】これらの含硫テルペンまたはSおよびOを
環員とする6〜8員ヘテロ環化合物は天然香料中に微量
ながら含まれており、毒性がないかあっても非常に低い
ため忌避剤中に所望の量を含有させることができる。
【0010】本発明の忌避剤は、液剤、粉剤、懸濁剤、
噴霧剤、顆粒剤、錠剤などの形態に製剤化することがで
き、これらは本発明の含硫化合物と製剤化に通常用いら
れる添加剤を用いて、通常の方法で調製すればよい。
【0011】さらに含硫化合物を天然または合成高分子
物質とともにゲル化させるかまたは紫外線硬化樹脂に混
入させて固形剤とすることもできる。活性炭に吸着させ
て粉剤として処方することもできる。
【0012】液剤は、合成樹脂または無機多孔性物質に
含浸させ、これを顆粒剤等と同様に処理して製品化する
ことができる。これらの無機多孔性物質としては、ケイ
酸カルシウム、シリカゲル、アタパルジャイト(商品
名、家庭化学工業株式会社製)を挙げることができる。
これを、例えば、不織布のごとき通気性のある材質の袋
に充填させる。また、液剤を香料透過性のあるポリマー
を内面に使用した袋に液状のまま充填するか、またはセ
ルロースに含浸させて製剤化することもできる。
【0013】特に、含硫化合物の揮発性が高い場合は、
含硫化合物の揮発性を抑制し、長時間忌避効果を持続さ
せるために、保留効果を有する保留剤を加えて調製す
る。これらの保留剤としては、安息香酸ベンジル、フタ
ル酸ジエチル、リモネン二量体水和物、ミリスチン酸イ
ソプロピル、ジプロピレングリコールおよびヘキシレン
グリコール等を挙げることができる。通常これらの保留
剤は含硫化合物1重量部に対して0.2〜6重量部、好
ましくは0.5〜3重量部、より好ましくは1〜2重量
部添加する。
【0014】製剤化された忌避剤は使用対象動物、使用
時期、使用場所、その場の温度、風量などを考慮して適
宜使用量を決定し設置する。
【0015】含硫黄テルペンの猫に対する忌避活性 方法 1辺5mの実験用囲いを設定し、その中に0.5〜1.0
才程度の猫の雌、雄それぞれ二頭を放った。一方、囲い
の中央に各テスト試料の10000ppmエタノール溶液
の5mlを含浸させた活性炭含有マット(1辺3cmの正方
形、厚さ0.5cm)を置床し、その周辺に餌を置いた。対
象としてはエタノールのみを含浸させたマットを置床し
た場合の餌の摂取状態を基準として評価した。なお、比
較として商品名by by cat原液を使用した。
【0016】結果
【表1】
【0017】含硫黄テルペンの鳥類に対する忌避活性 方法 9cmのシャーレに1辺3cmの正方形マット(活性炭含有)
を置床し、そのマットに被検物質0.1または1.0w/w
%を含むアセトン溶液の5mlを注加し、10分間放置後
任意に設定したテストエリア(1辺50cmの正方形)内の
中央に上記シャーレを置き、その周辺のエリア内に飼料
用小麦10g及び大豆10gを均一に敷き、24、48、
及び72時間後の飼料の残存状態から忌避効果を評価し
た。なお野バトを対象としたテストエリアは神社境内
に、農業対象害鳥の場合は休耕畑内にそれぞれ設定し
た。
【0018】結果
【表2】 含硫黄テルペンのスズメ及びムクドリに対する忌避活性試験 被検化合物 使用量 忌避活性 24 48 72(時間) チオゲラニオール 0.1 + − − 1.0 ++ + + 8−メルカプトメントン 0.1 + − − 1.0 ++ + − 評価基準: −;飼料残存量20%以下 +;飼料残存量21〜50% ++;飼料残存量51〜80%
【0019】
【表3】 含硫黄テルペンの野バトに対する忌避活性試験 被検化合物 使用量 忌避活性 24 48 72(時間) チオゲラニオール 0.1 + − − 1.0 ++ ++ ++ 8−メルカプトメントン 0.1 + + − 1.0 +++ ++ + 評価基準: −;飼料残存量20%以下 +;飼料残存量21〜50% ++;飼料残存量51〜80% +++;飼料残存量80%以上
【0020】
【実施例】下記の実施例により本発明をより具体的に説
明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでは
ない。実施例中、チオゲラニオールとある記載は本発明
の含硫テルペン化合物またはSおよびOを環員とする6
〜8員ヘテロ環化合物を代表するものである。 実施例1 チオゲラニオール0.5gに保留剤1.5gを混合し、これ
をアタパルジャイト8gに添加し、結果としてチオゲラ
ニオール5%含浸させ、これを不織布(3.5cm×11c
m 筒状)製の袋に充填する。
【0021】実施例2 カラギーナン(天然高分子物質)2gを60℃にて水に
溶解させ、40℃以下に下がったら、これにチオゲラニ
オール2gとポリオキシエチレンノニルフェニルエーテ
ル(エチレンオキサイド付加モル数10〜20(非イオ
ン界面活性剤))5g(チオゲラニオールに対して2〜3
倍量)とを混合したものを成型用型粋に注入して冷却、
成型して、約100gのゲル化忌避剤を製造する。
【0022】実施例3 チオゲラニオール5g及びジプロピレングリコール95g
を混和し、香料透過性のあるポリマーを内面にコーティ
ングした袋(3cm×3cm)8個に、液状のまま充填す
る。
【0023】実施例4 チオゲラニオール5gを紫外線硬化樹脂W−3(商品名、
三菱化学製)95gと混合し、成型用型粋に注入した後、
紫外線照射して樹脂を硬化させ成型し、製剤化し、10
0gの製品とする。
【0024】
【発明の効果】本願発明の含硫テルペンおよびSおよび
Oを環員とする6〜8員ヘテロ環化合物は農業用害鳥及
び野犬、野猫などに強い忌避活性を示し、かつ安全性の
高い忌避物質である。農産物収穫期における害鳥の忌避
や最近問題となっている野犬、野猫の糞由来の寄生虫感
染等の問題も解決できる。化粧品等に使用されている香
料を用いることにより人畜に対しての安全性が高く、農
作物に対しての薬害等の可能性も低く、又現在使用され
ている忌避剤に比べ、香りの点でも不快臭がない点で優
れた忌避剤である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チオゲラニオールまたは8−メルカプト
    メントンを有効成分として含む動物用忌避剤。
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