JP2856251B2 - 低熱膨張係数を有する高強度耐摩耗性Al−Si系合金鍛造部材およびその製造法 - Google Patents

低熱膨張係数を有する高強度耐摩耗性Al−Si系合金鍛造部材およびその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、鉄の熱膨脹係数(12×10-6/deg)と同等
の低い熱膨脹係数(13〜12×10-6/deg)並びに高強度を
有し、かつ耐摩耗性にもすぐれ、特にこれらの特性が要
求される各種のエンジン部品やコンプレッサ部品などと
して適用されるAl−Si系合金鍛造部材およびその製造法
に関するものである。 〔従来の技術〕 従来、上記の各種部品の製造には、低熱膨脹係数およ
び耐摩耗性が要求されることから、これらの特性を具え
た、Si:31〜50重量%(以下、%は重量%を示す)を含
有し、さらに所要の合金成分を含有したAl−Si系合金が
用いられている。 これらの従来Al−Si系合金部材は、通常、原料粉末と
して、Si粉末と、所定の組成を有するAl合金粉末を用
い、これらを所定の割合に配合し、混合し、圧粉体に成
形した後、約300〜500℃の温度で熱間押出し加工し、押
出し加工後、直ちに急冷の溶体化処理を施すことによっ
て製造されている。 〔発明が解決しようとする問題点〕 近年、機関の高性能化および軽量化に対する要求が強
まりつつあり、これに伴ってこれらの構造部材に対する
高強度化が強く望まれている。 しかし、従来のAl−Si系合金押出部材は耐摩耗性が十
分でなく、さらにこれらAl−Si系合金押出部材はFe系合
金部材と組合せて使用されるため、鉄の熱膨脹係数に近
いことが必要であるにもかかわらず、従来のAl−Si系合
金押出部材は鉄の熱膨脹係数に十分に近いものとはなっ
ていないのが現状であった。 〔問題点を解決するための手段〕 そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記
の熱膨脹係数が低く、かつすぐれた耐摩耗性を有するS
i:40〜50%含有のAl−Si系合金に着目し、これのもつす
ぐれた特性を損なうことなく、高強度化をはかるべく研
究を行なった結果、原料粉末として、 Si:40〜50%、Cu:1〜5%、 Mg:0.5〜5%、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組成を有す
る急冷凝固Al−Si系合金粉末を用い、これより圧粉体を
成形し、この圧粉体を、前記Al−Si系合金粉末の融点直
下、望ましくは450〜520℃の範囲内の温度で一次及び二
次の熱間鍛造を施し、二次の熱間鍛造後急冷して、高密
度化と初晶Siの微細化、並びに形状付与を行ない、引続
いて析出強化熱処理を施すことによって製造されたAl−
Si系合金鍛造部材は、素地中に、平均粒径:2〜4.9μm
の初晶Siと、同0.1μm以下の析出金属間化合物が均一
に分散した組織をもつようになり、この一次および二次
の熱間鍛造により微細化した初晶Siと、析出強化熱処理
により析出した一段と微細な金属間化合物によって、低
熱膨脹係数およびすぐれた耐摩耗性を具備した状態で、
高強度を有するようになるという知見を得たのである。 この発明は、上記知見にもとづいてなされたものであ
って、 Si:40〜50%、Cu:1〜5%、 Mg:0.5〜5%、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組成、並び
に素地中に、平均粒径:2〜4.9μmの初晶Siと、同0.1μ
m以下の析出金属間化合物が均一に分散した組織を有す
る低熱膨脹係数を有する高強度耐摩耗性Al−Si系合金鍛
造部材、および、 Si:40〜50%、Cu:1〜5%、 Mg:0.5〜5%、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組成を有す
る急冷凝固Al−Si系合金粉末より成形した圧粉体に、こ
のAl−Si系合金粉末の融点直下、望ましくは450〜520℃
の範囲内の温度で一次および二次の熱間鍛造を施し、急
冷して高密度化と初晶Siの微細化、並びに形状付与を行
ない、引続いて析出強化熱処理を施すことによって、低
熱膨脹係数を有する高強度耐摩耗性Al−Si系合金鍛造部
材を製造する方法、 に特徴を有するものである。 つぎに、この発明の鍛造部材および原料粉末の組成を
上記の通りに限定した理由を説明する。 (a) Si Si成分には、熱膨脹係数を低め、かつ耐摩耗性を向上
させる作用があるが、その含有量が40%未満では前記作
用に所望の効果が得られず、一方その含有量が50%を越
えると熱間鍛造が困難となることから、その含有量を40
〜50%と定めた。 (b) CuおよびMg これらの成分には、いずれも熱処理時に素地中に微細
なMg2SiやCu2Alなどの金属間化合物として析出し、熱間
鍛造により初晶Siが微細化されることと合まって、強度
を著しく向上させる作用があるが、その含有量がCu:1%
未満およびMg:0.5%未満では前記作用に所望の効果が得
られず、一方Cu:5%およびMg:5%を越えて含有させても
より一層の向上効果は現われず、経済性を考慮して、そ
の含有量をCu:1〜5%、Mg:0.5〜5%と定めた。 なお、上記のように、この発明の鍛造部材において
は、初晶Siの平均粒径を2〜4.9μm、金属間化合物を
0.1μm以下とする必要があるのであって、この範囲を
外れると所望の低熱膨脹係数および耐摩耗性を確保する
ことができなくなる。上記初晶Siの平均粒径は一次およ
び二次の熱間鍛造によって調整することができ、また、
平均粒径:0.1μm以下の金属間化合物は、二次の熱間鍛
造後急冷の溶体化処理に続く析出強化熱処理によって調
整される。 さらに、この発明の鍛造部材は、溶解時のるつぼなど
からの混入により、不可避不純物としてFeやNiなどの成
分を含有する場合があるが、その含有量が全体で2%以
下であれば、何ら影響を及ぼすものではないので、その
含有が許容される。 〔実施例〕 つぎに、この発明の鍛造部材およびその製造法を実施
例により具体的に説明する。 通常のるつぼ炉を用い、各種のAl合金溶湯を調製し、
これを空気アトマイズ法により102〜104℃/secの冷却温
度で急冷凝固して、それぞれ第1表に示される成分組
成、並びに−100〜+350meshの粒度をもったAl−Si系合
金粉末を成形し、この急冷凝固Al−Si系合金粉末より5t
on/cm2の圧力で10mm×23mm×55mmの寸法をもった圧粉体
を成形し、ついでこれらの圧粉体に対して、大気中、前
記Al−Si系合金粉末の融点直下の温度である500℃に60
分間加熱保持した後、8ton/cm2の荷重で一次熱間鍛造を
施して、高密度化と初晶Siの微細化をはかると共に、そ
の寸法を11mm×16mm×57mmとし、引続いて再び大気中、
温度:500℃に15分間保持後、同じく8ton/cm2の荷重にて
2次熱間鍛造を行なっ て、14mm×12mm×60mmの寸法に形状付与した後、直ちに
水冷の溶体化処理を施し、最終的に温度:170℃に6時間
保持の析出強化熱処理を行なうことによって本発明法1
〜6を実施し、実質的に上記の急冷凝固Al−Si系合金粉
末と同一の成分組成をもった本発明鍛造部材をそれぞれ
製造した。 ついで、この本発明鍛造部材について、金属顕微鏡に
より初晶Siおよび金属間化合物の平均粒径を測定すると
共に、熱膨張係数を測定し、さらに引張試験および摩耗
試験を行なった。 なお、熱膨張係数は、直径:5mm×長さ:15mmの試片を
用い、20〜150℃間の値を測定し、また引張試験には、
平行部における寸法が、直径:5mm×長さ:20mmの試片を
用い、さらに摩耗試験は、大越式試験機を用い、相手
材:FC25、最終荷重:2kg、摺動速度:3.8m/sec、摩耗距
離:100mの条件で乾式で行ない、比摩耗量を測定した。
これらの測定結果を第1表に示した。 また、第1表には、比較の目的で、従来法によって製
造されたSi:30.3%含有のAl−Si系合金押出部材の同一
条件での測定結果を示した。 〔発明の効果〕 第1表に示される結果から、本発明法1〜6によって
製造された本発明鍛造部材は、いずれも従来法によって
製造されたAl−Si系合金押出部材に比して、初晶Siの平
均粒径が細かく、したがって一段と高い強度を有し、か
つ前記従来法によって製造されたAl−Si系合金押出部材
よりも低い熱膨脹係数およびすぐれた耐摩耗性を有する
ことが明らかである。 上述のように、この発明の方法によれば、従来Al−Si
系合金押出部材よりも低い低熱膨脹係数およびすぐれた
耐摩耗性を有し、これより一段とすぐれた強度を有し、
さらに熱による寸法変化の少ないAl−Si系合金鍛造部材
を製造することができ、したがってこのAl−Si系合金鍛
造部材によれば、各種機関の高性能化および軽量化に大
いに寄与するなど工業上有用な効果がもたらされるので
ある。

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.Si:40〜50%、Cu:1〜5%、 Mg:0.5〜5%、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に、平均粒径:2〜4.9μmの初
    晶Siと、同0.1μm以下の析出金属間化合物が均一に分
    散した組織を有することを特徴とする低熱膨脹係数を有
    する高強度耐摩耗性Al−Si系合金鍛造部材。 2.Si:40〜50%、Cu:1〜5%、 Mg:0.5〜5%、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有する急冷凝固Al−Si系合金粉末より成形し
    た圧粉体を、このAl−Si系合金粉末の融点直下の温度に
    加熱保持したのち一次熱間鍛造して一次熱間鍛造体を作
    製し、この一次熱間鍛造体を再びAl−Si系合金粉末の融
    点直下の温度に加熱保持したのち二次熱間鍛造を施し、
    直ちに急冷して溶体化処理し、引き続いて析出強化熱処
    理を施すことにより素地中に平均粒径:2〜4.9μmの初
    晶Siと、同0.1μm以下の析出金属間化合物を均一に分
    散させることを特徴とする低熱膨脹係数を有する高強度
    耐摩耗性Al−Si系合金鍛造部材の製造方法。
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