JP2844122B2 - 高分子示温材料 - Google Patents

高分子示温材料

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Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、アルキル基の異なる2種類以上のポリ(3
−アルキルチオフェン)から構成される高分子示温材料
に関する。
〈従来の技術〉 従来の示温材料は金属錯塩結晶、液晶、あるいは電子
供与性呈色性有機化合物とフェノール性水酸基との呈色
反応などある温度のみで色変化を起こすため、連続的な
温度変化を観測するためには変色温度の異なる複数の材
料を使用しなければならなかった。
また、変色温度を自由に選ぶことは困難で、その物質
自体の性質に異存していた。即ち、必要とする変色温度
を持った物質を求める場合、これまでに合成された物質
より選択するか、あるいは、これから合成されるのを使
用する以外に方法が無いのが実状であった。
更に、これら材料は示温材料として使用するのに当た
って、何らかの支持体に担持させたり、ガラス管等に封
入する必要がある等の問題点を有している。
上記の問題点は、これらの材料を示温材料として利用
する上で大きな制約となっており、用途開発の大きな障
害となっていた。
〈発明が解決しようとする課題〉 本発明は、上述したような問題点を解消するためにな
されたもので、全く新しいタイプの示温材料を提供しよ
うとするものである。即ち、本発明の目的は、複数の異
種の材料を選択使用することなく単一の材料で変色温度
が室温付近から高温度域までの実用上必要な広域温度範
囲の示温が可能で、かつ連続的な温度変化を観測できる
示温材料を提供することにある。又本発明の他の目的
は、それ自体でフィルム化等の加工が容易にできる高分
子示温材料を提供することにある。
〈課題を解決するための手段〉 本発明者は、炭素数4以上のアルキル基を有するポリ
(3−アルキルチオフェン)についてサーモクロミズム
への用途展開を検討した結果、アルキル基の異なる2種
類以上のポリマー同士をブレンドすることで、ある特定
の温度範囲で徐々に変色していく新たな高分子示温材料
が得られることを見いだし本発明を完成した。
即ち、本発明は下記一般式(I) (式中、Rは炭素数4以上のアルキル基、n=5〜400
を示す)で表わされ、かつ、該アルキル基が異なる少く
とも2種類のポリ(3−アルキルチオフェン)から構成
されることを特徴とする。
本発明で使用する上記一般式(I)のポリ(3−アル
キルチオフェン)は、3−アルキルチオフェンの化学的
酸化重合、或いは電気化学的酸化重合、または2,5−ジ
ハロゲン化−3−アルキルチオフェンの金属または有機
金属錯体による脱ハロゲン化等の方法によって得ること
ができる。
本発明でいう3−アルキルチオフェンの炭素数4以上
のアルキル基としては、例えばn−ブチル、n−ペンチ
ル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−ノニル、n−デ
シル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−ヘキサデシ
ル、n−エイコシル、n−ドコシル等が挙げられ、必要
とする変色開始温度、終了温度および変色温度範囲によ
って適宜これらのアルキル基を選択すればよい。また、
脱ハロゲン化のためのハロゲンとしては、塩素、臭素、
ヨウ素が挙げられる。
本発明でいう3−アルキルチオフェンの化学的酸化重
合は、重合触媒として例えば塩化アルミニウム、酸化第
二鉄、塩化モリブデン、塩化タングステン、塩化スズ、
塩化アンチモン、五フッ化ヒ素等のルイス酸として知ら
れている化合物を用いて行うことができる。
これらの重合触媒を、前記3−アルキルチオフェンに
添加することにより室温で容易にポリ(3−アルキルチ
オフェン)を合成することができる。
また、3−アルキルチオフェンの電気化学的酸化重合
は、アセトニトリル、ベンゾニトリル、炭素プロピレン
等の溶媒中で、支持塩として例えばテトラ−n−ブチル
アンモニウムテトラフルオロボレイト、テトラエチルア
ンモニウムテトラフルオロボレイト、過塩素酸テトラ−
n−ブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモ
ニウム、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テ
トラエチルアンモニウム等を用いて、定電圧、定電位、
或いは定電流電解重合で行われる。この時用いられる電
極は導体であれば特に制限はなく、白金板やニッケル板
等の金属、炭素電極、ネサガラスやITOガラス等のガラ
ス電極などが使用される。
一方、本発明でいう脱ハロゲン化の方法のうち、2,5
−ジハロゲン化−3−アルキルチオフェンを直接重合す
る方法の場合に用いられる重合触媒としては、臭化ビス
(2,2′−ビピリジン)ニッケル、塩化ビス(2,2′−ビ
ピリジン)ニッケル、ビス(1,5−シクロオクタジエ
ン)ニッケル等のニッケルの0価或いは2価の錯体があ
げられる。
また、2,5−ジハロゲン化−3−アルキルチオフェン
をジグリニヤール化し重合する方法の場合に用いられる
触媒としては、臭化ビス(2,2′−ビピリジン)ニッケ
ル、塩化ビス(2,2′−ビピリジン)ニッケル、ビス
(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、塩化ニッケ
ル、塩化コバルト、塩化第二鉄、塩化ビス(2,2′−ビ
ピリジン)パラジウム、臭化ビス(トリフェニルホスフ
ィン)ニッケル等遷移金属の塩や有機錯体があげられ
る。また、上記遷移金属塩や有機錯体の存在下で、アセ
トニトリル、ベンゾニトリル、炭酸プロピレン等の溶媒
中で、前記白金板等の電極を用いて2,5−ジハロゲン化
−3−アルキルチオフェンを電解重合することもでき
る。
得られた本発明のポリ(3−アルキルチオフェン)
は、示温材料として用いる限りにおいて、前記いずれの
合成方法をとっても何ら問題ないが、量産性や経済性、
取扱い性などから考えれば、化学的酸化重合法が最も好
ましい。
こうして得られた本発明のポリ(3−アルキルチオフ
ェン)を使って、本発明のアルキル基の異なる少なくと
も2種類のポリ(3−アルキルチオフェン)を構成する
方法としては、溶液状態で混合する方法、固体粉末を溶
融混練する方法、又はそれぞれのポリ(3−アルキルチ
オフェン)単体フィルムを層状に積層する方法などがあ
る。本発明の高分子示温材料は変色開始温度より低温側
では赤色を呈しており、変色領域で橙色、変色終了温度
以上で黄色を呈する。これにより、連続的に温度変化を
観測することができる。
また、本発明のポリ(3−アルキルチオフェン)の混
合ポリマー自体は溶媒に可溶でキャスト膜を形成するこ
とが可能であり、あるいは熱可塑性であるため溶融後成
形することもできる。更に、これらのキャスト成形した
膜は光の透過性もあり、ディスプレイへの応用も可能で
ある。また、該混合ポリマーの溶液自体も温度変化によ
って同様の変色を示すため、溶液状態で使用することも
できる。
これらの特徴を合せ考えると、本発明の高分子示温材
料は工業材料その他の用途に応用する上で、きわめて優
れた示温材料といえる。
〈実施例〉 以下に実施例によって本発明を詳細に示す。
〔ポリ(3−アルキルチオフェン)の合成〕 下記に示す5種類の3−アルキルチオフェン4.7gのそ
れぞれに対して、クロロホルム300ml中に無水塩化第二
鉄24gを溶解した溶液を加えて室温で10時間撹拌した。
3−n−ブチルチオフェン 3−n−ペンチルチオフェン 3−n−オクチルチオフェン 3−n−ドテシルチオフェン 3−n−ドコシルチオフェン 上記反応生成物のそれぞれをメタノール1中に加え
てよく撹拌した後、生成物を別し、メタノール、希塩
酸、水、アンモニア水を含むメタノール、蒸留水の順に
充分洗浄し、減圧下80℃で12時間乾燥し、上記モノマー
に対応した5種類のポリ(3−アルキルチオフェン)を
合成した。得られたポリ(3−アルキルチオフェン)を
使用して下記の実施例1〜9に示す本発明の高分子示温
材料を作成した。
実施例1 ポリ(3−n−ペンチルチオフェン)1gとポリ(3−
n−ドテシルチオフェン)1gをクロロホルム20mlに溶解
混合し、ガラス基板上にキャストしフィルムを得た。
実施例2 ポリ(3−n−ペンチルチオフェン)1gとポリ(3−
n−ドテシルチオフェン)0.5gをクロロホルム20mlに溶
解混合し、ガラス基板上にキャストしフィルムを得た。
実施例3 ポリ(3−n−ペンチルチオフェン)0.5gとポリ(3
−n−ドテシルチオフェン)1gをクロロホルム20mlに溶
解混合し、ガラス基板上にキャストしフィルムを得た。
実施例4 ポリ(3−n−ペンチルチオフェン)1gとポリ(3−
n−オクチルチオフェン)1gをクロロホルム20mlに溶解
混合し、ガラス基板上にキャストしフィルムを得た。
実施例5 ポリ(3−n−ペンチルチオフェン)1gとポリ(3−
n−ドコシルチオフェン)1gをクロロホルム20mlに溶解
混合し、ガラス基板上にキャストしフィルムを得た。
実施例6 ポリ(3−n−ヘキシルチオフェン)1gとポリ(3−
n−ドデシルチオフェン)1gをクロロホルム20mlに溶解
混合し、ガラス基板上にキャストしフィルムを得た。
実施例7 ポリ(3−n−オクチルチオフェン)1gとポリ(3−
n−ドデシルチオフェン)1gをクロロホルム20mlに溶解
混合し、ガラス基板上にキャストしフィルムを得た。
実施例8 ポリ(3−n−ブチルチオフェン)1gとポリ(3−n
−ドデシルチオフェン)1gをクロロホルム20mlに溶解混
合し、ガラス基板上にキャストしフィルムを得た。
実施例9 ポリ(3−n−ブチルチオフェン)1gとポリ(3−n
−ドデシルチオフェン)1gとポリ(3−n−ドコシルチ
オフェン)1gをクロロホルム20mlに溶解混合し、ガラス
基板上にキャストしフィルムを得た。
上記により得られたそれぞれのフィルムについて、該
フィルムをヒータープレート上で10℃/分の速度で昇温
および/又は降温して、該フィルムの変色温度を観察
し、本発明の高分子示温材料としての示温特性を評価
し、表−1の結果を得た。なお、表−1には、変色状態
が左から右へ移行する昇温の場合について示したもの
で、降温の場合は右から左へ移行する。
表−1の結果から、明らかなとおり、本発明の示温材
料は、変色温度領域が広く、かつ、置換アルキル基を適
宜選択することによって変色温度領域をコントロールで
きる点で優れた効果が得られることを確認した。
〈発明の効果〉 本発明の高分子示温材料は、変色温度範囲を自由に制
御でき、かつ連続的に変色温度が観測でき、またフィル
ム成形など加工性に優れているため各種工業における温
度検知、化学反応等における温度上昇下降の監視、危険
物容器または貯蔵所における温度指示による災害防止、
電気回路及び電気機器の過負荷による発熱の早期発見用
温度標識、風呂の温度標識、表示装置、広告紙、教材、
玩具等が考えられ非常に有用である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01K 11/16 G01K 11/16

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式(I) (式中、Rは炭素数4以上のアルキル基、n=5〜400
    を示す)で表わされ、かつ該アルキル基が異なる少くと
    も2種類のポリ(3−アルキルチオフェン)から構成さ
    れることを特徴とする高分子示温材料。
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