JP2841739B2 - 電磁波吸収特性評価装置 - Google Patents

電磁波吸収特性評価装置

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は電波吸収体の吸収特性を測定する評価装置に
関する。
〔従来の技術〕
従来、バイスタティック形の電波吸収特性の評価装置
は第5図に示すように、送信アンテナ10,受信アンテナ1
2の主ビームが試料11の方向に向けて配置され、送信ア
ンテナ10からの電波を試料11に向けて放射し、試料11で
反射される電波の電力を測定するものであった。
〔発明が解決しようとする課題〕
上述した従来の評価装置を用い、空間定在波法によっ
て吸収量を測定する方法では、一般に吸収量が大きくな
るほど、誤差が大きくなり、20dBの吸収量の測定では±
1dB,30dBの吸収量の測定では±5dB程度の誤差が生じ
る。誤差が生じる主な原因は、吸収量が大きくなって反
射波が小さくなると、定在波の振幅が小さくなり、受信
機のノイズ,受信機の指示誤差,読み取り誤差が大きく
なることにある。
一方、電波吸収体の中でも、ピラミッド形吸収体は周
波数の増加とともに吸収量が増加し、ピラミッド高が波
長よりも十分大きい周波数帯では50dB程度の吸収量を有
すると言われている。ピラミッド形吸収体は、このよう
に良好な吸収特性を有するため、電波暗室内壁に多く用
いられている。電波暗室を使用する観点からは、暗室内
の散乱波強度として、40dB〜60dB程度の値が要求される
ことが多い。この要求を満たすように電波暗室の設計を
行うには、電波吸収体の特性を40〜60dB程度まで評価す
ることがまず必要であるが、従来の測定法では誤差が大
きく、吸収体の十分な評価ができなかった。
本発明の目的は、定在波の振幅を調整することができ
るようにすることにより、従来の問題点を解決した電磁
波吸収特性評価装置を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
前記目的を達成するため、本発明に係る電磁波吸収特
性評価装置においては、送信アンテナ機構と、受信アン
テナ機構とを有する電磁波吸収特性評価装置であって、 送信アンテナ機構は、評価対象の電波吸収体に斜め方
向から電波を放射する位置に設けられたものであり、 受信アンテナ機構は、電波吸収体での反射電波を受信
するもので、該電波吸収体に対し垂直方向に移動可能に
設置されたものであり、 前記送信アンテナ機構及び受信アンテナ機構のうち少
なくとも一方のアンテナ機構は、利得の異なるアンテナ
の対と、2個の減衰器とを有しており、 利得の大きいアンテナは、電波吸収体に向けて配置さ
せるものであり、利得の小さいアンテナは、相手方のア
ンテナ機構のアンテナに向けて配置させるものであり、 2個の減衰器は、前記対をなすアンテナが受信又は送
信する電波の減衰量を調整するものである。
〔原理・作用〕
第1図,第2図において、送信アンテナ機構1の送信
アンテナ1aは、評価対象の電波吸収体3に対し斜め上方
位置に設置してあり、受信アンテナ機構2は、送信アン
テナ機構1と対称な位置にX軸に沿って上下動可能に設
置してある。
受信アンテナ機構2は、利得の異なるアンテナ2a,2b
の対と、2個の減衰器4a,4bと、Y結合器5とを有す
る。利得の大きいアンテナ2aは、電波吸収体3からの散
乱波(ES)を受信するものであり、また利得の小さいア
ンテナ2bは、送信アンテナ1aから発射される直接波
(Ed)を受信するものである。また、2個の減衰器4a,4
bは、アンテナ2a,2bで受信した散乱波、直接波の減衰量
を調整するものであり、Y結合器5は、減衰器4a,4bに
通して散乱波と直接波とを合成して受信機6に出力する
ものである。
本発明においては、散乱波の測定に、受信アンテナを
移動させたときの定在波の振幅から散乱波を導出する空
間定在波法を用いる。送信アンテナ機構1の送信アンテ
ナ1aから、受信アンテナ機構2の利得の小さい受信アン
テナ2bに直接入射する成分を直接波Edとする。また送信
アンテナ機構1の送信アンテナ1aから放射され評価対象
の電波吸収体3で反射し、利得の大きい受信アンテナ2a
に入射する成分を散乱波ESとする。さらに対をなすアン
テナ2a,2bとの利得の差をa(dB)、減衰器4a,4bの減衰
量をDA,DBとする。
直接波(Ed−a−DB(dB))は、受信アンテナ2bで受
信した信号を減衰器4bに通過させることにより得られ、
散乱波(ES−DA(dB))は受信アンテナ2aで受信した信
号を減衰器4aに通過させることにより得られ、これら直
接波と散乱波とは、Y結合器5で合成された受信機6に
入力する。受信機6で観測される定在波は、Ed−a−DB
(dB)の振幅を有する直接波と、ES−DA(dB)の振幅の
散乱波との干渉で生じる。ここで、a,DA,DBを、Ed−a
−DB>ES−DAが成立するように設定すると、定在波の振
幅がES−DA,定在波の中心値がEd−a−DBとなる。従っ
て、受信アンテナ2a,2bを一体として第2図に示すX軸
方向に沿って上下移動させたときにアンテナ出力電圧が
第3図に示す定在波波形を示したとするならば、散乱波
と直接波の振幅の比|ES/Ed|は次式で与えられる。
ΔLは定在波の振幅である。
第2図における評価対象の電波吸収体3の吸収特性
は、電波吸収体3を置いたときの散乱波の振幅と、電波
吸収体3に代えて金属板を置いたときの散乱波の振幅と
の比で与えられる。従来の方法では送受信アンテナ機構
は単体のアンテナを用いているので、(1)式のa,DA,D
Bはある値に固定されている。表1にa−DA+DB=0の
ときのΔLと|ES/Ed|との関係を(1)式を用いて計算
した結果を示す。
従来の方法によれば、例えば電波吸収体に代えて金属
板を置いたときのΔLが10dBとすれば、30dBの吸収量を
有する電波吸収体の測定では、表1よりΔLは約0.3dB
となり、また、40dBの吸収量を有する電波吸収体では、
ΔLは0.1dB以下となる。このように定在波の振幅が小
さくなると、受信機の読み取り精度のために誤差が大き
くなる。これに対して、本発明によれば、DA,DBは減衰
器4a,4bで調整できるので、金属板の測定、吸収量の大
きい電波吸収体の両者で読取が容易な定在波の振幅を得
ることができる。一般に、読み取りが容易な定在波の振
幅は1dB〜5dBである。上述の数値を用いて減衰器4a,4b
を調整する効果を以下に示す。金属板の測定では、a−
DA+DB=−10dBとすれば、ΔLは約3dBであり、30dBの
吸収量を有する試料(電波吸収体)では、a−DA+DB
20dBに設定すれば、ΔLは約3dB,40dBの吸収量を有する
試料では、a−DA+DB=30dBとすれば、ΔLは約3dBと
なり、いずれの測定においても、同程度の定在波振幅が
得られ、精度のよい測定を可能とする。
電波吸収体で生じる散乱波は、金属板からの散乱波に
比べて通常は相当小さい。従って、第2図において直接
波を受信するため、アンテナ2bの利得は、散乱波を受信
するアンテナ2aの利得よりも小さくするのが好ましい。
アンテナ2bに利得の小さいアンテナを使用するほどビー
ム幅が広いので、アンテナを移動させて定在波を測定す
る際に定在波の中心値の変化を小さく抑えることがで
き、定在波の振幅の読み取りが容易になるという効果が
あり、これを考慮するとアンテナ2bの利得は10dB以下で
あることが望ましい。また、アンテナ2a,2bの主ビーム
の交差する角度θは斜入射特性の測定も行えるよう
に、10゜から85゜の範囲で設定する。
ここに示した例では受信アンテナ機構にのみ2つのア
ンテナを組合せて使用する例を示したが、送信アンテナ
機構1に使用することができる。この場合、利得の大き
いアンテナ2aは電波吸収体3に向けて配置し、利得の小
さいアンテナ2bは受信アンテナ機構のアンテナに向けて
配置し、Y結合器5にて送信電波を2系統に分配し、各
系統の電波の減衰量を各減衰器4a,4bで調整し、それら
の電波を各アンテナ2a,2bから発射する。受信アンテナ
機構2のアンテナは、電波吸収体3からの散乱波と、ア
ンテナ2bからの直接波とを同時に受信する。受信アンテ
ナ機構2は受信した散乱波と直接波とから定在波を測定
し、吸収量を算出するが、その散乱波と直接波との比は
送信アンテナ機構1側で減衰器4a,4bで調整されてお
り、上述した原理に基づいて精度よく測定できるもので
ある。
また、送信アンテナ機構1及び受信アンテナ機構2の
双方に2つのアンテナの組合せを用いることができる。
この場合、各アンテナ機構1,2の利得の大きいアンテナ2
aは電波吸収体3に向けてそれぞれ配置し、利得の小さ
いアンテナ2b同士を向き合せに配置する。このものにお
いては、送信アンテナ機構1側で送信電波の減衰量を減
衰器4a,4bで調整し、かつ受信アンテナ機構2側での散
乱波及び直接波の減衰量を減衰器4a,4bで調整する。す
なわち2段階に亘って減衰量を調整させることが可能と
なり、より精度の高い測定を行うことが可能となる。
〔実施例〕
第2図の回路を用いて定在波を測定し、吸収量を算出
した例を以下に示す。アンテナ2a,2bの開口面のサイズ
は各々220×170mm,及び22.9×10mmであり、送信アンテ
ナ機構1の送信アンテナ1aと電波吸収体3との距離、及
び受信アンテナ機構2(x軸の中央部)と電波吸収体3
との距離はいずれも3.5m,θrは45゜,電波吸収体
3は高さ45cm,ピラミッド形吸収体,周波数は10GHzで行
った。DAは0dB,DBは10dBとなるように減衰器4a,4bを調
整した。(1)式のa−DA+DBの測定値は40.5dBであ
る。受信アンテナ機構2はx方向に2m移動させた。定在
波の測定結果を第4図に示す。定在波の振幅はx軸方向
に一様ではないが、比較的大きい定在波が観測されたI,
II,IIIの領域について(1)式で散乱波の大きさを算出
すると、第4図に示すように各々52〜58dB,56〜58dB,及
び54〜58dBである。従って、この電波吸収体3は52〜58
dBの吸収量を有すると判定できる。第4図に示した定在
波の振幅は数dBであり、読み取り誤差等が影響すること
はなく、50dB以上の吸収量を精度よく測定することが可
能である。
〔発明の効果〕
以上説明したように本発明は、2つのアンテナを組み
合せ、各々の出力信号を合成する際に、アンテナ出力端
に接続された減衰器により定在波の振幅を調整でき、金
属板からの散乱波,吸収体からの散乱波の両者で読み取
りが容易な振幅の定在波を発生させることができる。従
って、吸収量の大きい試料でも受信機の指示精度のため
に誤差が大きくなることはなく、精度のよい散乱波の測
定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のアンテナの構成を示す図、第2図は本
発明のアンテナを用いて空間定在波法で吸収量を測定す
る装置を示す構成図、第3図は定在波波形を示す図、第
4図は第2図に示した装置で定在波を測定した例を示す
図、第5図は従来用いられている吸収特性評価装置を示
す図である。 1……送信アンテナ機構、1a……送信アンテナ 2……受信アンテナ機構、2a,2b……受信アンテナ 3……電波吸収体、4a,4b……減衰器 5……Y結合器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H05K 9/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】送信アンテナ機構と、受信アンテナ機構と
    を有する電磁波吸収特性評価装置であって、 送信アンテナ機構は、評価対象の電波吸収体に斜め方向
    から電波を放射する位置に設けられたものであり、 受信アンテナ機構は、電波吸収体での反射電波を受信す
    るもので、該電波吸収体に対し垂直方向に移動可能に設
    置されたものであり、 前記送信アンテナ機構及び受信アンテナ機構のうち少な
    くとも一方のアンテナ機構は、利得の異なるアンテナの
    対と、2個の減衰器とを有しており、 利得の大きいアンテナは、電波吸収体に向けて配置させ
    るものであり、利得の小さいアンテナは、相手方のアン
    テナ機構のアンテナに向けて配置させるものであり、 2個の減衰器は、前記対をなすアンテナが受信または送
    信する電波の減衰量を調整するものであることを特徴と
    する電磁波吸収特性評価装置。
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