JP2839649B2 - ばね特性および耐疲労特性に優れた銅−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワッシャー材 - Google Patents
ばね特性および耐疲労特性に優れた銅−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワッシャー材Info
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Description
ンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワッシャー
材に係り、例えばVTR回転ヘッド等に用いられるワッシ
ャー材に関する。
再生するVTR(Video Tape Recorder)が業務用および家
庭用に広く普及している。映像信号の周波数帯域は一般
に0〜4.5メガHzと音声信号に比較して250〜300倍広く
なっており、磁気テープに記録された信号を高速度で読
みとるためにビデオヘッドを回転させる方式が採用され
ている。
断面図であり、回転ヘッドドラム1は、回転軸2に回転
自在に装着されたヘッドディスク3と、ヘッドディスク
3に対向するように装着された下部固定シリンダ4と、
上記ヘッドディスク3と下部固定シリンダ4との間に介
装されたワッシャー5と、ヘッドディスク3の下面に装
着されたビデオヘッド6とを備える。ワッシャー5はヘ
ッドディスク3の回転時においてもヘッドディスク3と
下部固定シリンダ4とが直接接触することを防止し、ま
た両者が必要以上に近接してビデオヘッド6を損傷しな
いように一定の微小間隙lを保持するために設けられ
る。
ム銅(Be−Cu合金)等を原材料として圧延後、金型プレ
ス機で中空円板状に打ち抜き、さらに第2図に示すよう
に周方向に波打つようなウェーブ状に塑性変形させて製
造されている。
く、VTRの回転ヘッドドラムに装着するとへたりを生じ
ヘッドディスクとワッシャーとの摩擦が大きくなり、ヘ
ッドディスクの円滑な回転が得られなくなる欠点があ
る。
点がある。特に圧延材をプレス機にて円環状に打ち抜く
場合に金型が損傷し易い。そのため高頻度で金型を再研
磨したり交換する必要があり、ワッシャーの製造コスト
が増大し、また製造効率が低下する問題点がある。
の硬度が低いために加工性は良好であるが、ベリリウム
は希少で高価である上に、製造工程において人体に有毒
なベリリウム酸化物等を発生するため、防毒設備を含め
たベリリウム銅合金の製造設備が複雑化し、工程管理が
複雑となる上に、製造原価が高騰する欠点を有する。
であり、Beを含有せずに安価で従来の合金材料およびそ
れを用いたワッシャー材と同等以上のばね性を有し、容
易に製造することが可能であり、ばね特性および耐疲労
特性に優れた銅−マンガン−ニッケル系合金およびこれ
を用いたワッシャー材を提供することを目的とする。
の組成の合金材料を調製し、加工処理方法を種々試行し
得られたワッシャー材の特性値を計測したところ、重量
パーセントでマンガン10〜35%、ニッケル10〜35%を含
有し、残部を銅で構成したときに、従来のSUS材製また
はベリリウム銅製と比較して、ばね限界値(Kb)および
ヤング率(E)等の強度特性値が優れ、また加工性が優
れており、ばね特性および耐疲労特性に優れた銅−マン
ガン−ニッケル系合金が得られた。特に上記組成範囲の
マンガンおよびニッケルに加えて、クロムを0.01〜8
%、ジルコニウムを0.01〜5%添加して形成した銅−マ
ンガン−ニッケル系合金はより優れた強度特性を有し、
特にVTR回転ヘッド用ワッシャー材として使用した場合
に優れた耐久性を発揮した。
る。
た銅−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワ
ッシャー材の組成の限定理由について述べる。
するために必要な元素であり、その含有量が10%未満で
あると、従来のベリリウム銅と同等のばね強さが得られ
ず、また35%を超えると伸びの弾性が低下し、ばね限界
値を超えた変位を銅−マンガン−ニッケル系合金に付加
した場合折れ易くなり、かつ永久歪みが増大するため、
Mnの含有量は10〜35%の範囲に設定される。なお望まし
くは12〜20%が良い。
素地中に析出し、靭性を増し、縦弾性係数(E)を増大
させてばね強さを向上させるために必要な元素であり、
その含有量が10%未満であると充分なばね強さが得られ
ず、また35%を超えると伸び率が低下し、ばね限界値を
超えた変位を銅−マンガン−ニッケル系合金に生起させ
た場合に折損し易く、また永久歪も増大するため、Niの
含有量は10〜35%の範囲で調整される。なお望ましくは
12〜20%が良い。
以上の変位に対する永久歪は減少し、ベリリウム銅と同
等以上のばね材料を得ることができる。
クロム(Cr)およびジルコニウム(Zr)を添加すること
により、さらに好ましい合金となる。これらの元素は銅
合金素地中に析出し、析出硬化による部材強度を向上さ
せるとともに耐食性を増大させる。ここでクロムはジル
コニウムと複合添加することにより金属間化合物を形成
し、ばね特性を飛躍的に向上させる作用を有する。クロ
ムの含有量が0.01%未満の過少量では析出硬化によるば
ね強さを確保することが困難であり、一方8%を超える
と、伸びの減少によって銅−マンガン−ニッケル系合金
が折損し易くなる。したがってクロムの含有量は0.01〜
8%の範囲に設定される。なお含有量が高いと製造工程
において析出量が増大する現象が発生し易いため、望ま
しくは0.1〜5%が良い。
材を硬化させるとともに、クロムと金属間化合物を形成
しばね特性を向上させる。Zrの含有量が0.01%未満の過
少量であると、ばね強さを確保できるだけの析出物が形
成されず、伸びは大きいもののばね限界値が低く、ばね
の機能を充分に発揮し得ない。一方ジルコニウム(Zr)
の含有量が5%を超える場合は、所望のばね強さは充分
確保されるものの、熱間における加工が困難となる。し
たがってZrの含有量は0.01〜5%の範囲に設定される。
なお最適な析出量を得るために望ましくは0.1〜2%の
調整するとよい。
素地中に析出し、析出硬化によるばね強さ、疲労強度を
向上させる元素である。これらの両元素を適量ずつ組み
合せて使用する場合に、ばね限界値の向上が顕著にな
る。なお、Ni,Mn,Crの含有量を低減し、Zrの添加量を相
対的に増量することによって靭性が増し、より疲労強度
が優れ、ばね特性および耐疲労特性に優れた銅−マンガ
ン−ニッケル系合金およびこれを用いたワッシャー材を
得ることができる。
−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワッシ
ャー材は、上記組成から成る銅基合金を、温度700〜100
0℃で溶体化処理後、冷間加工を実施して所定形状に塑
性変形せしめ、しかる後に温度350〜550℃で時効硬化処
理を施して製造される。
良し、またその後の時効硬化処理で均質なばね強さを付
与するための処理であり、少なくとも700℃以上の処理
温度が必要で、望ましくは800℃以上が良い。
まり、却って結晶粒の粗大化を招き易いことから一般に
1000℃以下の温度に設定されるが、望ましくは850〜950
℃が良い。
る、ばね特性および耐疲労特性に優れた銅−マンガン−
ニッケル系合金およびこれを用いたワッシャー材を製造
する際の成形加工性に大きな影響を及ぼす。
望ましくは10%以上が良いが、過度の冷間加工は、銅−
マンガン−ニッケル系合金およびワッシャー材の硬度の
上昇を招き、成形時にプレス用金型を損傷したり、曲げ
加工部分に割れが発生し易くなることから実用上80%以
下に設定され、望ましくは70%以下が良い。
飽和固溶体を加熱し、クロムとジルコニウムとの金属間
化合物などを析出せしめることにより硬化させ、銅−マ
ンガン、ニッケル系合金およびワッシャー材のばね強さ
を付与するための熱処理であり、350℃以上の温度で処
理することが必要である。しかし、550℃を超えた温度
では、硬度の低下が見られることから、処理温度は350
℃〜550℃の範囲に設定されるが、望ましくは380℃〜50
0℃が良く、さらに望ましくは430℃〜480℃が適温であ
る。
−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワッシ
ャー材によれば、高価で毒性を有するベリリウムを使用
せずに、ベリリウム銅合金およびSUS合金と同等以上の
強度特性を有するばね材料を安価に提供することができ
る。
ッシャー材を構成する銅基合金は時効硬化性を示す合金
であり、熱処理前の加工成形段階においては硬度が低
い。そのため冷間加工および所定形状に塑性加工する操
作が極めて容易であり、特に金型成形を行う際の金型の
損傷が大幅に減少する。
が400〜450程度と、従来材と同等の硬度が得られ、ばね
限界値が高くなるため、へたりも小さく、例えばVTR回
転ヘッドドラムに装着した場合には、長期間に亘ってヘ
ッドドラムの円滑な回転を保証することができる。
−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワッシ
ャー材はVTR回転ヘッドドラム用に限定されるものでは
なく、他の各種用途においても適用可能であり、優れた
効果を有している。
た銅−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワ
ッシャー材の特性について以下の実施例を参照して説明
する。
を有する銅基合金についてそれぞれ第1表中欄に示す製
造方法に従って加工処理を行って、厚さ0.25mm、幅10m
m、長さ100mmの試験片を調製し、そのばね限界値(K
b)、ヤング率(E)および硬度(Hv)等の機械的特性
を測定した。硬度(Hv)は試験片に500gの荷重を作用さ
せた場合におけるビッカース硬度として求めた。
Be−Cu合金および組成範囲を外れた合金の特性値も併せ
て測定し、第1表下欄に示すように、本発明に係る、ば
ね特性および耐疲労特性に優れた銅−マンガン−ニッケ
ル系合金で形成したワッシャー材の特性値と比較した。
ばね特性および耐疲労特性に優れた銅−マンガン−ニッ
ケル系合金およびこれを用いたワッシャー材によれば、
従来のSUS304,市販のBe−Cu合金と比較してほぼ同等の
ビッカース硬さが得られるとともに、ばね限界値(Kb)
およびヤング率(E)等の強度特性において同等以上の
優れたばね性を発揮することが確認される。
た銅−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワ
ッシャー材の時効硬化処理前におけるビッカース硬さは
従来材と比較して小さいため、所定形状に塑性加工する
操作が極めて容易であり、特に金型成形を行う際の金型
の損傷が少なく、金型の寿命を大幅に延伸させることが
可能となった。
示すワッシャを調製し、VTR回転ヘッドドラムに実装し
たところ、長期間に亘りへたりを生じることがなく、下
部固定シリンダとヘッドディスクとの間隙が一定に保持
され、ヘッドディスクの円滑な回転が見られた。
ベリリウムを使用せずにベリリウム銅合金やSUS材と同
等以上の強度特性を有し、ばね特性および耐疲労特性に
優れた銅−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用い
たワッシャー材を安価で容易に製造することができる。
特に時効硬化前における硬度が小さいため所定形状に塑
性加工することが容易であり、成形用金型の寿命を従来
より大幅に延伸することができるなど製造工程において
も大きな効果を発揮する。
2図はワッシャーの形状を示す斜視図である。 1……回転ヘッドドラム、2……回転軸、3……ヘッド
ディスク、4……下部固定シリンダ、5……ワッシャ
ー、6……ビデオヘッド。
Claims (3)
- 【請求項1】重量パーセントでマンガン10〜35%、ニッ
ケル10〜35%、クロム0.01〜8%、ジルコニウム0.01〜
5%を含有し、残部が実質的に銅で構成されたことを特
徴とするばね特性および耐疲労特性に優れた銅−マンガ
ン−ニッケル系合金。 - 【請求項2】重量パーセントでマンガン10〜35%、ニッ
ケル10〜35%、クロム0.01〜8%、ジルコニウム0.01〜
5%を含有し、残部が実質的に銅で構成されたことを特
徴とするワッシャー材。 - 【請求項3】VTR回転ヘッドに用いられる請求項2に記
載のワッシャー材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14635690A JP2839649B2 (ja) | 1990-06-06 | 1990-06-06 | ばね特性および耐疲労特性に優れた銅−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワッシャー材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14635690A JP2839649B2 (ja) | 1990-06-06 | 1990-06-06 | ばね特性および耐疲労特性に優れた銅−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワッシャー材 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0441633A JPH0441633A (ja) | 1992-02-12 |
JP2839649B2 true JP2839649B2 (ja) | 1998-12-16 |
Family
ID=15405864
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14635690A Expired - Lifetime JP2839649B2 (ja) | 1990-06-06 | 1990-06-06 | ばね特性および耐疲労特性に優れた銅−マンガン−ニッケル系合金およびこれを用いたワッシャー材 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2839649B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
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CN109338202A (zh) * | 2018-11-23 | 2019-02-15 | 中国科学院兰州化学物理研究所 | 一种高强韧耐磨高熵铜合金 |
CN109943750B (zh) * | 2019-03-25 | 2020-09-08 | 中南大学 | 一种超高强高弹铜镍锰合金及其制备方法 |
CN109763008B (zh) * | 2019-03-25 | 2020-06-30 | 中南大学 | 一种高强高弹含铌铜合金及其制备方法 |
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-
1990
- 1990-06-06 JP JP14635690A patent/JP2839649B2/ja not_active Expired - Lifetime
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