JP2829510B2 - 延性及び加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
延性及び加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法Info
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- JP2829510B2 JP2829510B2 JP11734796A JP11734796A JP2829510B2 JP 2829510 B2 JP2829510 B2 JP 2829510B2 JP 11734796 A JP11734796 A JP 11734796A JP 11734796 A JP11734796 A JP 11734796A JP 2829510 B2 JP2829510 B2 JP 2829510B2
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車、産業機械等
に使用する高延性を有する高強度鋼板の製造に係り、特
に引張強度65kgf/mm2 以上の高強度を有すると共に、
延性及び加工性に優れた熱延鋼板の製造方法に関する。
に使用する高延性を有する高強度鋼板の製造に係り、特
に引張強度65kgf/mm2 以上の高強度を有すると共に、
延性及び加工性に優れた熱延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、高強度鋼板は、自動車、産業
機械等に広く用いられており、特に、自動車用鋼板は、
自動車の軽量化や、衝突時の安全性の確保等から、鋼板
の高強度化の要請が強い。しかし、単に、鋼板の高強度
化を図るだけでなく、併せて加工性、溶接性も求められ
ている。
機械等に広く用いられており、特に、自動車用鋼板は、
自動車の軽量化や、衝突時の安全性の確保等から、鋼板
の高強度化の要請が強い。しかし、単に、鋼板の高強度
化を図るだけでなく、併せて加工性、溶接性も求められ
ている。
【0003】この種の要請に応えるものとしては、従来
より、フェライトとマルテンサイトよりなる二相鋼が知
られている。しかし、この二相鋼は、固溶強化型や析出
強化型の高強度鋼板よりも優れた強度−延性バランス
(TS×El)を有するが、しかし、TS×Elは、精
々2000程度であり、より厳しい加工性の要求には耐
えられないのが現状である。
より、フェライトとマルテンサイトよりなる二相鋼が知
られている。しかし、この二相鋼は、固溶強化型や析出
強化型の高強度鋼板よりも優れた強度−延性バランス
(TS×El)を有するが、しかし、TS×Elは、精
々2000程度であり、より厳しい加工性の要求には耐
えられないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この欠点を解
消するものとして、TS×El>2000を得るため
に、残留オーステナイトを含む組織とする熱延鋼板が開
発された。その例としては、一つに、C:0.15〜0.8
0%、Si:1.0〜3.0%及びMn+Cr:0.5〜3.0
%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成
の鋼をAr3点以上の仕上圧延終了温度で熱間圧延を行な
い、続いて、330〜430℃までを冷却速度20℃/
秒以上で冷却して巻取り、巻取り後、鋼板を5分以上、
この温度域に滞留させるよう徐冷若しくは保熱を行なっ
て、残留オーステナイトを体積分率で5%以上含む鋼板
を製造する方法(特開昭60−184634号公報)が
知られている。
消するものとして、TS×El>2000を得るため
に、残留オーステナイトを含む組織とする熱延鋼板が開
発された。その例としては、一つに、C:0.15〜0.8
0%、Si:1.0〜3.0%及びMn+Cr:0.5〜3.0
%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成
の鋼をAr3点以上の仕上圧延終了温度で熱間圧延を行な
い、続いて、330〜430℃までを冷却速度20℃/
秒以上で冷却して巻取り、巻取り後、鋼板を5分以上、
この温度域に滞留させるよう徐冷若しくは保熱を行なっ
て、残留オーステナイトを体積分率で5%以上含む鋼板
を製造する方法(特開昭60−184634号公報)が
知られている。
【0005】更に、他の例として、C:0.15〜0.4
0%、Si:0.5〜2.0%及びMn:0.5〜2.0%を含
有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成の鋼を
仕上圧延終了温度(Ar3−50℃)〜(Ar3+50
℃)、全圧下率80%以上で熱間圧延を行ない、続い
て、300〜500℃までを冷却速度40℃/秒以上で
冷却し、巻取る方法や、更に、延性を高めるために、
巻取り後、鋼板を30℃/時以上の冷却速度で200℃
以下まで冷却して、残留オーステナイトを含有する鋼板
を製造する方法(特開昭63−4017号公報)等が提
案されている。
0%、Si:0.5〜2.0%及びMn:0.5〜2.0%を含
有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成の鋼を
仕上圧延終了温度(Ar3−50℃)〜(Ar3+50
℃)、全圧下率80%以上で熱間圧延を行ない、続い
て、300〜500℃までを冷却速度40℃/秒以上で
冷却し、巻取る方法や、更に、延性を高めるために、
巻取り後、鋼板を30℃/時以上の冷却速度で200℃
以下まで冷却して、残留オーステナイトを含有する鋼板
を製造する方法(特開昭63−4017号公報)等が提
案されている。
【0006】しかしながら、省エネルギー化、生産性向
上という観点からすると、巻取り後、ホットコイル全体
を保熱するという前記従来法は好ましくなく、また、前
記やの方法では、加工性に難点がある。更に、の
方法では、巻取り後の冷却の方法として、コイル横方向
からのミスト冷却や、コイル全体を水等に浸漬する冷却
が行なわれるため、鋼板の板幅方向の材質を著しく不均
一にする等、種々の問題かあった。
上という観点からすると、巻取り後、ホットコイル全体
を保熱するという前記従来法は好ましくなく、また、前
記やの方法では、加工性に難点がある。更に、の
方法では、巻取り後の冷却の方法として、コイル横方向
からのミスト冷却や、コイル全体を水等に浸漬する冷却
が行なわれるため、鋼板の板幅方向の材質を著しく不均
一にする等、種々の問題かあった。
【0007】本発明は、上述した従来の技術における問
題を解決するためになされたものであって、引張強度6
0kgf/mm2 以上を有すると共に、TS×El>2000
以上の高強度−延性バランスを有し、延性及び加工性に
優れた熱延鋼板を得るために鋭意研究した結果、所定の
化学成分を有せしめた鋼の熱間圧延において、所定の圧
下率の下に所定の温度で仕上圧延を終了した後、所定の
巻取温度まで、パーライト変態を阻止し得る冷却速度で
冷却し、巻取ることによって、上記目的とする熱延鋼板
を得ることができることを見出して、本発明に至ったも
のである。
題を解決するためになされたものであって、引張強度6
0kgf/mm2 以上を有すると共に、TS×El>2000
以上の高強度−延性バランスを有し、延性及び加工性に
優れた熱延鋼板を得るために鋭意研究した結果、所定の
化学成分を有せしめた鋼の熱間圧延において、所定の圧
下率の下に所定の温度で仕上圧延を終了した後、所定の
巻取温度まで、パーライト変態を阻止し得る冷却速度で
冷却し、巻取ることによって、上記目的とする熱延鋼板
を得ることができることを見出して、本発明に至ったも
のである。
【0008】本発明による延性及び加工性に優れた高強
度熱延鋼板の製造方法は、重量%でC 0.14〜0.3
5%、Si 1.0〜3.0%、Mn 0.5〜2.5%、及び
Al 0.1〜1.0%を含有し、残部が鉄及び不可避的不
純物からなる組成の鋼を仕上圧延終了温度(Ar3−50
℃)〜850℃、且つ、圧下率80%以上で熱間圧延を
行い、その後、巻取温度300〜500℃までをパーラ
イト変態を阻止し得る冷却速度で冷却し、巻取ることを
特徴とする。以下、この方法を第1の方法ということが
ある。
度熱延鋼板の製造方法は、重量%でC 0.14〜0.3
5%、Si 1.0〜3.0%、Mn 0.5〜2.5%、及び
Al 0.1〜1.0%を含有し、残部が鉄及び不可避的不
純物からなる組成の鋼を仕上圧延終了温度(Ar3−50
℃)〜850℃、且つ、圧下率80%以上で熱間圧延を
行い、その後、巻取温度300〜500℃までをパーラ
イト変態を阻止し得る冷却速度で冷却し、巻取ることを
特徴とする。以下、この方法を第1の方法ということが
ある。
【0009】また、本発明によれば、上記第1の方法に
おいて、(a) C 0.14〜0.35%、Si 1.0〜3.
0%、Mn 0.5〜2.5%、及びAl 0.1〜1.0%を
含有し、更に、(b) Cr 0.1〜0.5%、P 0.05
〜0.2%、及びNi 0.2〜2.0%から選ばれる少なく
とも1種を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からな
る組成の鋼を用いることができる。以下、この方法を第
2の方法ということがある。
おいて、(a) C 0.14〜0.35%、Si 1.0〜3.
0%、Mn 0.5〜2.5%、及びAl 0.1〜1.0%を
含有し、更に、(b) Cr 0.1〜0.5%、P 0.05
〜0.2%、及びNi 0.2〜2.0%から選ばれる少なく
とも1種を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からな
る組成の鋼を用いることができる。以下、この方法を第
2の方法ということがある。
【0010】
【発明の実施の形態】先ず、本発明の第1の方法におい
て用いる鋼の化学成分の限定理由を説明する。Cは、鋼
の強化に不可欠な元素であり、延性を向上させる残留オ
ーステナイトを十分に得るには、少なくとも0.14%の
添加が必要である。Cの増加は、第二相ベイナイト又は
残留オーステナイトが加工誘起変態したマルテンサイト
相とフェライト相との硬度差を増大させる。マトリック
スと第二相との硬度差が大きい場合は、マトリックスと
第二相との界面で変形が伝達しにくいため、この界面が
クラックの起点となり、加工中に割れが入ることにな
る。この作用は、C量が0.35%を超えるときに生成す
る第二相で顕著となる。また、0.35%を超えるとき
は、溶接性を著しく劣化させるので好ましくない。従っ
て、C量は0.14〜0.35%の範囲とする。
て用いる鋼の化学成分の限定理由を説明する。Cは、鋼
の強化に不可欠な元素であり、延性を向上させる残留オ
ーステナイトを十分に得るには、少なくとも0.14%の
添加が必要である。Cの増加は、第二相ベイナイト又は
残留オーステナイトが加工誘起変態したマルテンサイト
相とフェライト相との硬度差を増大させる。マトリック
スと第二相との硬度差が大きい場合は、マトリックスと
第二相との界面で変形が伝達しにくいため、この界面が
クラックの起点となり、加工中に割れが入ることにな
る。この作用は、C量が0.35%を超えるときに生成す
る第二相で顕著となる。また、0.35%を超えるとき
は、溶接性を著しく劣化させるので好ましくない。従っ
て、C量は0.14〜0.35%の範囲とする。
【0011】Siは、その含有量を増すときは、延性の
向上に寄与しているフェライトの生成、純化に有利であ
り、また、Cを未変態オーステナイト中へ濃化させて、
残留オーステナイトを得るのに有利となる。更に、Si
は、巻取り後のベイナイト変態の際、炭化物の形成を抑
制し、Cをより未変態オーステナイト中へ濃化させ、残
留オーステナイトを得るのに、より有利になる。更にま
た、Si量を増加させるときは、フェライト相を固溶硬
化させるため、フェライトと第二相の硬度差が減少し
て、クラックの発生が高加工後まで抑制され、その結果
として、加工性が向上する。
向上に寄与しているフェライトの生成、純化に有利であ
り、また、Cを未変態オーステナイト中へ濃化させて、
残留オーステナイトを得るのに有利となる。更に、Si
は、巻取り後のベイナイト変態の際、炭化物の形成を抑
制し、Cをより未変態オーステナイト中へ濃化させ、残
留オーステナイトを得るのに、より有利になる。更にま
た、Si量を増加させるときは、フェライト相を固溶硬
化させるため、フェライトと第二相の硬度差が減少し
て、クラックの発生が高加工後まで抑制され、その結果
として、加工性が向上する。
【0012】即ち、Siは、強度の増加の割に、延性及
び加工性の劣化を少なくすることができる元素である。
このような効果は、含有量が1.0%未満では十分に発揮
されない。しかし、3.0%を超えるときは、フェライト
の生成、純化及び残留オーステナイトの確保の効果が飽
和し、却って、スケール性状や溶接性を悪化させ、ま
た、規則相(B2)が形成されるので、好ましくない。
従って、Si量は、1.0〜3.0%の範囲とする。
び加工性の劣化を少なくすることができる元素である。
このような効果は、含有量が1.0%未満では十分に発揮
されない。しかし、3.0%を超えるときは、フェライト
の生成、純化及び残留オーステナイトの確保の効果が飽
和し、却って、スケール性状や溶接性を悪化させ、ま
た、規則相(B2)が形成されるので、好ましくない。
従って、Si量は、1.0〜3.0%の範囲とする。
【0013】Mnは、オーステナイトの安定化元素とし
て、オーステナイトの残留に寄与し、また、この残留オ
ーステナイトが加工誘起変態した後のマルテンサイト相
の強度を上昇させる効果がある。この効果は、Mn量が
0.5%未満では十分に得られず、他方、2.5%を超える
ときは、上記効果が飽和し、却って、溶接性を悪化させ
る。従って、Mn量は、0.5〜2.5%の範囲とする。
て、オーステナイトの残留に寄与し、また、この残留オ
ーステナイトが加工誘起変態した後のマルテンサイト相
の強度を上昇させる効果がある。この効果は、Mn量が
0.5%未満では十分に得られず、他方、2.5%を超える
ときは、上記効果が飽和し、却って、溶接性を悪化させ
る。従って、Mn量は、0.5〜2.5%の範囲とする。
【0014】Alは、Siと同様の効果をもたらし、フ
ェライトの生成及び純化に、また、残留オーステナイト
の形成に有利であり、また、強度の増加の割に、延性及
び加工性の劣化が少ない。上記効果を十分に発揮させる
には、少なくとも0.1%の添加が必要である。しかし、
添加量が1.0%を超えるときは、スケール性状や溶接性
を著しく劣化させるので好ましくない。従って、Al量
は、0.1〜1.0%の範囲とする。
ェライトの生成及び純化に、また、残留オーステナイト
の形成に有利であり、また、強度の増加の割に、延性及
び加工性の劣化が少ない。上記効果を十分に発揮させる
には、少なくとも0.1%の添加が必要である。しかし、
添加量が1.0%を超えるときは、スケール性状や溶接性
を著しく劣化させるので好ましくない。従って、Al量
は、0.1〜1.0%の範囲とする。
【0015】本発明の第2の方法によれば、用いる鋼に
は、前述したC、Mn、Si及びAlの化学成分に加え
て、Cr、P及びNiから選ばれる少なくとも1種を添
加することができる。Crは、熱延鋼板が冷却され、ベ
イナイト変態温度域にあるとき、ベイナイト変態の進行
を遅らせ、残留オーステナイトを増加させるのに効果が
ある。この効果は、Crの添加量が0.1%未満では十分
に発揮されず、他方、0.5%を超えるときは、ベイナイ
ト変態の進行が過度に抑制され、冷却中に形成される硬
質のマルテンサイト量が増えるために、穴拡げ性を劣化
させる。従って、Cr量は、0.1〜0.5%の範囲とす
る。
は、前述したC、Mn、Si及びAlの化学成分に加え
て、Cr、P及びNiから選ばれる少なくとも1種を添
加することができる。Crは、熱延鋼板が冷却され、ベ
イナイト変態温度域にあるとき、ベイナイト変態の進行
を遅らせ、残留オーステナイトを増加させるのに効果が
ある。この効果は、Crの添加量が0.1%未満では十分
に発揮されず、他方、0.5%を超えるときは、ベイナイ
ト変態の進行が過度に抑制され、冷却中に形成される硬
質のマルテンサイト量が増えるために、穴拡げ性を劣化
させる。従って、Cr量は、0.1〜0.5%の範囲とす
る。
【0016】Pも、SiやAlと同様の効果をもたら
し、フェライトの生成及び純化に、また、残留オーステ
ナイトの形成に有利であり、強度の増加の割に、延性及
び加工性の劣化が少ない。このような効果は、添加量が
0.05%未満では十分に得ることができない。しかし、
Pは、粒界脆化元素であるので、0.2%を超えるとき
は、粒界が著しく脆化され、延性及び加工性を著しく劣
化させる。そこで、本発明によれば、フェライトの生
成、純化及び残留オーステナイトの形成の効果のみを有
利に利用するために、P量は、0.05〜0.2%の範囲と
する。
し、フェライトの生成及び純化に、また、残留オーステ
ナイトの形成に有利であり、強度の増加の割に、延性及
び加工性の劣化が少ない。このような効果は、添加量が
0.05%未満では十分に得ることができない。しかし、
Pは、粒界脆化元素であるので、0.2%を超えるとき
は、粒界が著しく脆化され、延性及び加工性を著しく劣
化させる。そこで、本発明によれば、フェライトの生
成、純化及び残留オーステナイトの形成の効果のみを有
利に利用するために、P量は、0.05〜0.2%の範囲と
する。
【0017】Niは、オーステナイトの安定化元素とし
て、オーステナイトの残留に寄与し、残留オーステナイ
ト増大の効果がある。この効果は、Mnのそれよりも非
常に大きいが、添加量が0.2%未満では十分に得ること
ができない。しかし、Niは、高価な元素であり、2.0
%を超える添加は、鋼板の製造コストを著しく増大させ
るので、実用的ではない。従って、Niの添加量は、0.
2〜2.0%の範囲とする。
て、オーステナイトの残留に寄与し、残留オーステナイ
ト増大の効果がある。この効果は、Mnのそれよりも非
常に大きいが、添加量が0.2%未満では十分に得ること
ができない。しかし、Niは、高価な元素であり、2.0
%を超える添加は、鋼板の製造コストを著しく増大させ
るので、実用的ではない。従って、Niの添加量は、0.
2〜2.0%の範囲とする。
【0018】上述したような成分組成を有する鋼の熱延
鋼板の延性を向上させるためには、フェライト及びベイ
ナイトの二相マトリックス中に残留オーステナイトを体
積率で好ましくは5%以上生ぜしめることが必要であ
り、そのためには、オーステナイトをC等の元素の濃化
により安定化させることが必要である。
鋼板の延性を向上させるためには、フェライト及びベイ
ナイトの二相マトリックス中に残留オーステナイトを体
積率で好ましくは5%以上生ぜしめることが必要であ
り、そのためには、オーステナイトをC等の元素の濃化
により安定化させることが必要である。
【0019】そこで、本発明によれば、上述したような
化学成分を有する鋼を仕上圧延終了温度(Ar3−50
℃)〜850℃、且つ、圧下率80%以上で熱間圧延を
行なって、加工誘起フェライトを生ぜしめるのである。
仕上圧延終了温度が(Ar3−50℃)を下回るときは、
延性を損なう加工フェライト組織が形成される。このよ
うに、本発明に従って、加工誘起フェライト変態を利用
する場合には、熱間圧延中に十分な量のフェライトを得
なければならない。しかし、仕上圧延終了温度が高すぎ
るときは、フェライト変態を十分に進行させるために
は、非常に大きい圧下率を要し、かくして、熱延中に実
施可能な範囲でフェライト変態を十分に進行させるため
には、仕上圧延終了温度の上限を850℃にする必要が
ある。また、延性を害する加工フェライト組織が形成さ
れない(Ar3−50℃)以上の温度で十分にフェライト
変態を進行させるためには、本発明に従って、仕上圧延
の圧下率を80%以上とする必要がある。
化学成分を有する鋼を仕上圧延終了温度(Ar3−50
℃)〜850℃、且つ、圧下率80%以上で熱間圧延を
行なって、加工誘起フェライトを生ぜしめるのである。
仕上圧延終了温度が(Ar3−50℃)を下回るときは、
延性を損なう加工フェライト組織が形成される。このよ
うに、本発明に従って、加工誘起フェライト変態を利用
する場合には、熱間圧延中に十分な量のフェライトを得
なければならない。しかし、仕上圧延終了温度が高すぎ
るときは、フェライト変態を十分に進行させるために
は、非常に大きい圧下率を要し、かくして、熱延中に実
施可能な範囲でフェライト変態を十分に進行させるため
には、仕上圧延終了温度の上限を850℃にする必要が
ある。また、延性を害する加工フェライト組織が形成さ
れない(Ar3−50℃)以上の温度で十分にフェライト
変態を進行させるためには、本発明に従って、仕上圧延
の圧下率を80%以上とする必要がある。
【0020】フェライト変態が終了した後、パーライト
変態が開始すると、オーステナイトの残留に有効なCが
消費され、残留オーステナイトが減少する。また、パー
ライトが形成されると、パーライト中のセメンタイトと
フェライトの界面や層状のセメンタイトから加工中にク
ラックが発生しやすくなり、加工性を阻害する。従っ
て、本発明によれば、仕上圧延終了後は、パーライト変
態を阻止し得る冷却速度、好ましくは、30℃/秒以上
で巻取温度まで冷却することが必要である。
変態が開始すると、オーステナイトの残留に有効なCが
消費され、残留オーステナイトが減少する。また、パー
ライトが形成されると、パーライト中のセメンタイトと
フェライトの界面や層状のセメンタイトから加工中にク
ラックが発生しやすくなり、加工性を阻害する。従っ
て、本発明によれば、仕上圧延終了後は、パーライト変
態を阻止し得る冷却速度、好ましくは、30℃/秒以上
で巻取温度まで冷却することが必要である。
【0021】本発明において、巻取温度は、300〜5
00℃の範囲の温度である。巻取温度が500℃を超え
るときは、巻取り後、パーライトが生成するか、又はベ
イナイト変態が過度に進行し、十分な量の残留オーステ
ナイトを得ることができない。パーライトが生成する
と、前述したように、加工性が劣化する。また、300
℃未満の巻取温度では、形成されるベイナイトの硬度が
高くなり、また、一部に硬質のマルテンサイトが生成さ
れ、フェライトとの硬度差が大きくなって、加工中にこ
れら界面でクラックが発生しやすくなるため、加工性
(特に、穴拡げ性)が劣化する。従って、巻取温度は、
300〜500℃の範囲とする。
00℃の範囲の温度である。巻取温度が500℃を超え
るときは、巻取り後、パーライトが生成するか、又はベ
イナイト変態が過度に進行し、十分な量の残留オーステ
ナイトを得ることができない。パーライトが生成する
と、前述したように、加工性が劣化する。また、300
℃未満の巻取温度では、形成されるベイナイトの硬度が
高くなり、また、一部に硬質のマルテンサイトが生成さ
れ、フェライトとの硬度差が大きくなって、加工中にこ
れら界面でクラックが発生しやすくなるため、加工性
(特に、穴拡げ性)が劣化する。従って、巻取温度は、
300〜500℃の範囲とする。
【0022】このようにして、本発明に従って得られる
熱延鋼板は、フェライトとベイナイトの二相マトリック
ス中に5%以上の残留オーステナイトが均一に分散した
組織を有する。
熱延鋼板は、フェライトとベイナイトの二相マトリック
ス中に5%以上の残留オーステナイトが均一に分散した
組織を有する。
【0023】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。表1に示す化学成分の供試鋼を表2に示す条件で熱
間圧延を行なって、巻取り、空冷した。尚、熱間圧延
は、30mm→13mm→6mm→3mm(但し、一部
は、13mm→6mm→3mm)のパススケジュールで
行なった。
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。表1に示す化学成分の供試鋼を表2に示す条件で熱
間圧延を行なって、巻取り、空冷した。尚、熱間圧延
は、30mm→13mm→6mm→3mm(但し、一部
は、13mm→6mm→3mm)のパススケジュールで
行なった。
【0024】得られた熱延鋼板について、機械的性質及
び組織を調べると共に、加工性(穴拡げ性)を調べた。
その結果を表2に示す。
び組織を調べると共に、加工性(穴拡げ性)を調べた。
その結果を表2に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】表2に示すように、本発明例1、2、4〜
6は、いずれも、TS×El>2600という非常に高
い強度−延性バランスを示し、更には、降伏強さが低
く、加工性が優れている。一方、比較例3は、仕上圧延
率が低いのに、熱延後、直ちに巻取温度まで高い冷却速
度(50℃/秒)で冷却したので、フェライト量が不足
し、その結果、延性に劣っている。
6は、いずれも、TS×El>2600という非常に高
い強度−延性バランスを示し、更には、降伏強さが低
く、加工性が優れている。一方、比較例3は、仕上圧延
率が低いのに、熱延後、直ちに巻取温度まで高い冷却速
度(50℃/秒)で冷却したので、フェライト量が不足
し、その結果、延性に劣っている。
【0028】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、引張強
度65kgf/mm2 以上を有すると共に、強度−延性バラン
スと加工性とに優れた高強度熱延鋼板を安定して製造す
ることができる。
度65kgf/mm2 以上を有すると共に、強度−延性バラン
スと加工性とに優れた高強度熱延鋼板を安定して製造す
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22C 38/58 C22C 38/58 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 9/46 C21D 8/02
Claims (2)
- 【請求項1】重量%で C 0.14〜0.35%、 Si 1.0〜3.0%、 Mn 0.5〜2.5%、及びAl 0.1〜1.0%を含有
し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成の鋼を仕
上圧延終了温度(Ar3−50℃)〜850℃、且つ、圧
下率80%以上で熱間圧延を行い、その後、巻取温度3
00〜500℃までをパーライト変態を阻止し得る冷却
速度で冷却し、巻取ることを特徴とする延性及び加工性
に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。 - 【請求項2】重量%で (a) C 0.14〜0.35%、 Si 1.0〜3.0%、 Mn 0.5〜2.5%、及びAl 0.1〜1.0%を含有
し、更に、 (b) Cr 0.1〜0.5%、 P 0.05〜0.2%、及びNi 0.2〜2.0%から選
ばれる少なくとも1種を含有し、残部が鉄及び不可避的
不純物からなる組成の鋼を仕上圧延終了温度(Ar3−5
0℃)〜850℃、且つ、圧下率80%以上で熱間圧延
を行い、その後、巻取温度300〜500℃までをパー
ライト変態を阻止し得る冷却速度で冷却し、巻取ること
を特徴とする延性及び加工性に優れた高強度熱延鋼板の
製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11734796A JP2829510B2 (ja) | 1996-05-13 | 1996-05-13 | 延性及び加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP11734796A JP2829510B2 (ja) | 1996-05-13 | 1996-05-13 | 延性及び加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3142466A Division JP2805112B2 (ja) | 1991-05-17 | 1991-05-17 | 延性、加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08295944A JPH08295944A (ja) | 1996-11-12 |
JP2829510B2 true JP2829510B2 (ja) | 1998-11-25 |
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ID=14709454
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP11734796A Expired - Fee Related JP2829510B2 (ja) | 1996-05-13 | 1996-05-13 | 延性及び加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2829510B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103031419A (zh) * | 2012-12-24 | 2013-04-10 | 首钢总公司 | 提高Ti微合金化高强机械用钢通卷性能均匀性的方法 |
CN106521335A (zh) * | 2016-10-28 | 2017-03-22 | 东北大学 | 一种高强塑积trip钢棒材及等通道转角挤压制备方法 |
-
1996
- 1996-05-13 JP JP11734796A patent/JP2829510B2/ja not_active Expired - Fee Related
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CN106521335A (zh) * | 2016-10-28 | 2017-03-22 | 东北大学 | 一种高强塑积trip钢棒材及等通道转角挤压制备方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08295944A (ja) | 1996-11-12 |
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