JP2810321B2 - ロータリートランス及び磁気記録再生装置 - Google Patents

ロータリートランス及び磁気記録再生装置

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JP2810321B2 JP6108603A JP10860394A JP2810321B2 JP 2810321 B2 JP2810321 B2 JP 2810321B2 JP 6108603 A JP6108603 A JP 6108603A JP 10860394 A JP10860394 A JP 10860394A JP 2810321 B2 JP2810321 B2 JP 2810321B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ロータリートランス及
びロータリートランス内蔵した回転磁気ヘッド装置を備
える磁気記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】回転磁気ヘッドを備えた磁気記録再生装
置の一例として家庭用ビデオテープレコーダー(以下V
TRと称する。)がある。VTRにおいては、回転磁気
ヘッドとVTR本体に固定された回路との間の信号伝送
に、非接触で信号伝送可能なロータリートランスが使用
されている。
【0003】家庭用VTRとして、VHSシステムや8
ミリシステムが代表的なシステムである。それぞれのシ
ステムにおいて、磁気ヘッド、磁気テープの高性能化の
対応により、信号周波数を高くし帯域幅を広くすること
により高画質化されたS−VHS方式、Hi8方式のV
TRが普及し始めている。これらの高画質対応の方式
は、従来方式に対し上位互換が可能となっている。すな
わち、従来のVHS(8ミリ)方式のみのVTRは、S
−VHS(Hi8)方式の記録再生が出来ないが、S−
VHS(Hi8)方式のVTRは従来のVHS(8ミ
リ)方式の記録再生も切り換え可能なように対応されて
いる。
【0004】次に各方式の信号帯域幅について、表1を
用いて説明する。
【表1】 表1に示すように、同一システムにおける2種類の方式
において、信号帯域幅が異なる。それぞれの方式におい
て最適の伝送効率を得るには、磁気ヘッドからロータリ
ートランスを介しヘッドアンプに至るまでの電磁変換系
のインピーダンスの設定値は大きく異なる。
【0005】図6(a)に示すように、ヘッドアンプ側
から見た磁気ヘッドとロータリートランスを組み合わせ
た場合のインダクタンス(以下電磁変換系インダクタン
スと称する。)をLSH,ヘッドアンプの入力容量と磁気
ヘッドからヘッドアンプまでの浮遊容量の和をCとする
と、電磁変換系の共振周波数f0は式(1)で表され
る。
【数1】 f0=1/(2π√(LSHC)) …(1) いま、Cはシステムによりほぼ一定であり、f0はホワ
イトピーク周波数以上に設定する必要がある。従って、
式(1)より各方式のLSHが決定される。
【0006】次に、図6(b)に示す様に磁気ヘッドの
インダクタンスをLH,図6(c)に示すようにロータ
リートランスの結合係数をk,ステップアップ比をa,
ローター側から見たインダクタンスをLRとすると、式
(2)の関係が成り立つ。
【数2】 LSH=a2R(1−k2R/(LH+LR)) …(2)
【0007】なお式(2)は、ロータリートランスの周
波数と伝送特性の関係において、周波数に依存せず伝送
特性が一定となる領域のインダクタンスを示す。この領
域ではインピーダンスは、インダクタンス成分のみが伝
送特性に影響を与える。以下の説明において、VHS及
び8ミリシステム共に、この平坦な領域の代表的な周波
数は、特に指定のない限り1MHzとする。この領域と
さらに共振点までの周波数帯域が、VTRの帯域として
使用される。
【0008】一方、電磁変換系の伝送特性Ei/E0は、
図6(d)に示すように、磁気ヘッドの出力電圧を
0,ヘッドアンプの入力電圧をEiとすると、式(3)
で与えられる。
【数3】 Ei/E0=akLR/(LH+LR) …(3) 式(2)、式(3)よりLSHが一定の場合、Ei/E0
最大にするa,LH,LRの組み合わせが存在する。
【0009】各方式について具体的に従来例を説明す
る。共振周波数は一般的に、ホワイトピークからホワイ
トクリップ周波数までの間に設定されている。表1よ
り、ホワイトピーク周波数は、VHS方式の場合f0
4.4MHz、S−VHS方式の場合f0=7MHz で
ある。これより、C=50pFとすると、ホワイトピー
ク以下の周波数で共振しないためのLSHの上限は、式
(1)よりVHS方式の場合26.2μH、S−VHS
方式の場合10.3μHとなる。
【0010】実際には、回路の設計余裕、周波数特性、
S/N等が考慮され、実用的なLSHは、VHS方式の場
合9〜15μH、S−VHS方式の場合、7〜8.5μ
Hの値がとられている。またS−VHS方式のVTRに
おいて、VHS方式で記録再生する場合もLSHはS−V
HS方式の7〜8.5μHの値となる。これは、磁気ヘ
ッドとロータリートランスは同一のものを使用し、信号
処理のみ変えているからである。Hi8VTRの場合も
同様に、8ミリ方式で使用する場合、LSHは同様の理由
でHi8方式と同じ値となっている。
【0011】次に、LH とLR の関係について説明す
る。伝送帯域が高い場合、f0は高いので式(1)によ
りLSHを小さくする必要がある。そこで式(2)により
H、LRのどちらかまたは両方を必然的に小さくしなけ
ればならない。部品の共通化によるコストの観点より、
ヘッドのインダクタンスとロータリートランスのインダ
クタンスの両方を小さくするよりもどちから一方を小さ
くすることにより同一のLSHで式(3)の伝送量を最大
にする数値に設定されている。表2は、各方式における
代表的なLH,LR,LSH,f0,Ei/E0をまとめたも
のを示す。なお、表2において、共振周波数f0は、C
=60pFとして計算されている。
【表2】
【0012】次に、VHS VTRにおける代表的な磁
気ヘッドとロータリートランスの組み合わせの従来例と
して、図7の構成によるHiFi音声対応のダブルアジ
マス4ヘッドVTRについて説明する。まず、ヘッド及
びロータリートランスを含めた電磁変換系のチャンネル
番号をCH1,CH2,…,CHi,…,CH6とし、
CHi(それぞれi=1,2,…,6、以下同様)に対
応する磁気ヘッドをHi、CHiに対応するロータリー
トランスのローター巻線をRi、CHiに対応するロー
タリートランスのステーター巻線をSiとする。
【0013】H1ないしH4,はそれぞれ映像用磁気ヘ
ッドであり、H1はEP(長時間)モード用Lアジマス
ヘッド、H2はSP(標準)モード用Lアジマスヘッ
ド、H3はSPモード用Rアジマスヘッド、H4はEP
モード用Rアジマスヘッドである。H1とH3のヘッド
チップは、同一ベース上に搭載されているダブルアジマ
スヘッドであり、H2とH4のヘッドチップも同様に、
同一ベース上に搭載されているダブルアジマスヘッドで
ある。H5,H6はそれぞれHiFi音声ヘッドであ
る。
【0014】Riは、ロータリートランスのローターR
の内側から順に配列された各ローター巻線であり、それ
ぞれ対応する磁気ヘッドHiと接続される。各ローター
巻線Riに対向して、一定のギャップを設けてロータリ
ートランスのステーターSの各ステーター巻線Siが配
置される。
【0015】特にダブルアジマス型の磁気ヘッドとロー
タリートランスの組み合わせにおいて重要なことは、同
一ベース上の磁気ヘッドはロータリートランスとの接続
においてロータリートランスの隣合うチャンネルに配置
しないことである。図7のロータリートランスには、R
2とR3、S2とS3、R4とR5、S4とS5、R5
とR6、S5とS6の間に、それぞれショートリングが
設けられている。従来のVHS用及びS−VHS用ロー
タリートランスの仕様例を表3に示す。
【表3】 表3において、CH5,CH6のHiFi音声チャンネ
ルのLSH,f0,伝送特性は、LH,Cが映像チャンネル
と異なり、本発明と直接関係がないためその数値を省略
している。
【0016】従来のVHS用ロータリートランスのコア
形状を図8に、従来のS−VHS用ロータリートランス
のコア形状を図9に示す。コア7にチャンネルナンバー
に対応する溝1ないし6及びショートリングが設けられ
る溝8ないし9が形成されている。従来のロータリート
ランスは、このようにVHS方式とS−VHS方式では
周波数帯域が異なるためコア形状、巻線仕様を変えた別
々のロータリートランスで対応していた。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来の
技術ではVHS方式とS−VHS方式では別々のロータ
リートランスを使っていた。その理由は、S−VHS方
式にVHS用ロータリートランスを用いると、表2より
共振周波数f0が6.5MHzとなり、表1に記載した
S−VHS方式のFM搬送周波数帯域内となり、記録再
生が出来なくなる。さらにS−VHS方式のロータリー
トランスをVHS方式のみのVTRに用いると、ロータ
リートランスのインダクタンスLRが小さいので電磁変
換系インダクタンスLSHが小さくなる。この場合、式
(3)よりLRが小さくなると伝送効率Ei/E0が小さ
くなり特性が劣化する。
【0018】従って、VHS方式のロータリートランス
とS−VHS方式のロータリートランスは別々の巻線仕
様、別々のコア形状となり共通化が出来ず、それぞれの
ロータリートランスのコストが高くなるという問題点が
あった。さらにS−VHS方式のVTRではVHS方式
の記録再生が可能な方式(上位互換)になっているの
で、S−VHS VTRではVHS方式の記録再生を行
う場合、上記説明と同様な理由でEi/E0が小さくなり
特性が劣化するという問題点があった。以下この問題点
の内容につき従来例の具体的な数値に基づいて説明す
る。
【0019】前記表2に示したように、VHS方式のみ
のVTRの電磁変換系伝送特性は、4.5dBである
が、S−VHS VTRでVHSの記録再生を行う場合
2.9dBとなり、1.6dBも低下する。なお、S−
VHS VTRでVHS方式の記録再生を行う場合、磁
気ヘッドのギャップ長も小さくなり、記録時はさらに不
利な条件となる。再生時はギャップ損失の影響はギャッ
プ長が小さい方が影響は少ない。
【0020】一方、8ミリ方式においては表2に示した
ように、ロータリートランスは一定で磁気ヘッドの巻数
を変更することにより対応していた。この場合、ロータ
リートランスの共通化は達成されているが、Hi8ヘッ
ドの巻数が小さくなり、磁気ヘッドの出力が小さくなり
(表2よりヘッド再生出力は8ミリ方式のみのVTRよ
りも1.5dB低下する)、ロータリートランスに入る
までにノイズの影響を受けやすくなると言う問題があっ
た。またVHS方式と同様Hi8 VTRで8ミリ方式
の記録再生を行う場合、表2より電磁変換系伝送特性は
1.9dBとなり、8ミリ方式のみのVTRは3.2d
Bであるので1.3dBも低下するという問題点があっ
た。
【0021】以上の様に、共振周波数と電磁変換系伝送
特性はトレードオフの関係にあり、伝送帯域の異なる方
式をもつVTRにおいて、同一ロータリートランスの共
通化は従来の技術では対応出来ず、また上位互換の機能
を持つVTRにおいては伝送帯域の低い方式の伝送特性
は低い特性の状態で使用せざるを得ないという問題点が
あった。
【0022】上記の問題点に鑑み、本発明の第1の課題
は、伝送帯域の異なる2つの方式のFM変調映像信号を
伝送可能なロータリートランスを提供することである。
また、本発明の別の課題は、伝送帯域の異なる2つの方
式のFM変調映像信号を伝送可能な上記ロータリートラ
ンスを、各VTRシステムの基本方式及び広帯域方式に
適用して、ロータリートランスの品種を共通化し、1品
種当たりのロータリートランスの生産量を増大してロー
タリートランスの製造価格を引き下げることである。さ
らに、本発明の別の課題は、上位互換性を有する広帯域
方式VTRにおいて、帯域幅の狭い基本方式の記録再生
時にもロータリートランスの伝送効率の低下が少なく、
映像品質の劣化がないVTRを提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は次の構成を有する。すなわち本第1発明
は、複数のチャンネルを有し第1の伝送帯域の信号と該
第1の伝送帯域より低い第2の伝送帯域の信号とを伝送
可能なロータリートランスにおいて、隣接チャンネルの
少なくとも一方の巻線が短絡されたチャンネルの共振周
波数が前記第1の伝送帯域の帯域外となり、隣接チャン
ネルの巻線が短絡されないチャンネルの共振周波数が前
記第2の伝送帯域の帯域外となることを特徴とするロー
タリートランスである。
【0024】また本第2発明は、複数のチャンネルを有
し第1の伝送帯域の信号と該第1の伝送帯域より低い第
2の伝送帯域の信号とを伝送可能なロータリートランス
において、各チャンネルのステーター巻線がそれぞれ第
1、第2のステーター巻線からなり、第1または第2の
ステーター巻線の一方の共振周波数が前記第1の伝送帯
域の帯域外となり、第1及び第2のステーター巻線を直
列接続した共振周波数が前記第1の伝送帯域の帯域内と
なるとともに前記第2の伝送帯域の帯域外となることを
特徴とするロータリートランスである。
【0025】また本第3発明は、前記第1発明のロータ
リートランスと、該ロータリートランスの使用されない
チャンネルの巻線を短絡する短絡手段と、伝送される信
号の帯域に応じて前記短絡手段の状態を短絡または非短
絡に切り換える制御手段と、を備えることを特徴とする
磁気記録再生装置である。
【0026】また本第4発明は、前記第2発明のロータ
リートランスと、該ロータリートランスの前記第1また
は第2ステーター巻線の一方のみ磁気記録再生回路に接
続するか、第1及び第2ステーター巻線を直列接続して
磁気記録再生回路に接続するかを切り換える切換手段
と、伝送される信号の帯域に応じて前記切換手段を切り
換えせしめる制御手段と、を備えることを特徴とする磁
気記録再生装置である。
【0027】
【作用】上記構成の第1発明のロータリートランスにお
いて、隣接チャンネルの巻線を短絡すると、主チャンネ
ルから隣接チャンネルへ漏洩磁束が減少する。これは短
絡された隣接チャンネルの巻線がショートリングと同様
の効果となり、逆起電圧が発生してこの漏洩磁束を打ち
消す逆方向の磁束が生じるため、漏洩磁束が減少する。
したがって、主チャンネルのトータルの磁束が小さくな
るため、主チャンネルのインダクタンスが低下する。こ
のように隣接チャンネルの少なくとも一方を短絡するこ
とにより、同一ロータリートランスにおいて、インダク
タンスLRを変えることが可能となる。
【0028】伝送帯域が高い方式の場合、隣接チャンネ
ルの少なくとも一方を短絡するとLRが小さくなり式
(2)より電磁変換インダクタンスLSHが小さくなり、
式(1)より共振周波数f0が大きくなる。結果的に最
高使用周波数が高くなり伝送帯域を広くすることが可能
となる。逆に伝送帯域が低い方式の場合、隣接チャンネ
ルをオープンすることによりLRが大きくなりf0が小さ
くなる。ここで伝送効率Ei/E0は、式(3)を変形し
て式(4)となる。
【数4】 Ei/E0=ak/(1+(LH/LR)) …(4)
【0029】式(4)より、LRが大きくなると、Ei/
0は大きくなることが分かる。したがって、共振周波
数を低くできる伝送帯域の低い方式の場合、同一ロータ
リートランスで伝送帯域の高い方式で使用する場合よ
り、伝送効率を高くすることが可能となる。
【0030】また、上記構成の第2発明のロータリート
ランスにおいて、ロータリートランスのステータ側の巻
線は一つのチャンネルに相当する磁気コアの一つの溝の
中に2個配置される構成となっている。伝送帯域の高い
方式で用いる場合、各チャンネルの任意の1個のステー
ター巻線が後段の回路と接続される。伝送帯域の低い方
式で用いる場合、各チャンネルの2つのステーター巻線
を直列に接続して後段の回路と接続する。伝送帯域の高
い前者の場合、伝送帯域の低い後者と比較して巻数比a
が小さく、式(2)よりLSHが小さくなり、式(1)よ
りf0が大きくなる。結果的に最高使用周波数が高くな
り伝送帯域を高くすることが可能となる。
【0031】逆に伝送帯域が低い方式の場合、各チャン
ネルの2個のステーター巻線を直列に接続するため、巻
線比aは大きくなり、式(4)よりEi/E0は大きくな
る。aが大きくなると式(2)よりLSHが大きくなり、
0が小さくなる。したがって共振周波数を低くできる
伝送帯域の低い方式の場合、同一ロータリートランスで
伝送帯域の高い方式で使用する場合より、伝送効率を高
くすることが可能となる。
【0032】
【実施例】次に、図面を参照して本発明の実施例を詳細
に説明する。 〔実施例1〕図1は、本発明に係るロータリートランス
を使用した磁気記録再生装置の第1の実施例について、
その要部構成を示す回路図である。本実施例は、VHS
方式を例にして説明を行う。
【0033】まず、ヘッド及びロータリートランスを含
めた電磁変換系のチャンネル番号をCH1,CH2,
…,CHi,…,CH6とし、CHi(それぞれi=
1,2,…,6、以下同様)に対応する磁気ヘッドをH
i、CHiに対応するロータリートランスのローター巻
線をRi、CHiに対応するロータリートランスのステ
ーター巻線をSiとする。
【0034】本実施例において、適用されるロータリト
ランスの型式は問わないが、各チャンネルの配列順序が
特に意味を持つので、平板タイプの横対向型ロータリー
トランスとしたとき、その最内側のチャンネルをCH1
とし、順次外側へ向かってCH2,CH3とチャンネル
番号が昇順に配列されている。また、同軸タイプの縦対
向型ロータリートランスにおいては、最上側より同様に
CH1,CH2,…と配列されているものとする。
【0035】磁気ヘッドH1ないしH4,はそれぞれ映
像用磁気ヘッドであり、H1はEP(長時間)モード用
Lアジマスヘッド、H2はSP(標準)モード用Lアジ
マスヘッド、H3はSPモード用Rアジマスヘッド、H
4はEPモード用Rアジマスヘッドである。H1とH3
のヘッドチップは、同一ベース上に搭載されているダブ
ルアジマスヘッドであり、H2とH4のヘッドチップも
同様に、同一ベース上に搭載されているダブルアジマス
ヘッドである。H5,H6はそれぞれHiFi音声ヘッ
ドである。なお8ミリシステムにおいても、標準モード
と長時間モードのダブルアジマスヘッドを有する構成の
場合、全く同様である(8ミリシステムの場合、HiF
i音声ヘッドは不要)。
【0036】Riは、ロータリートランスのローターR
に配列された各ローター巻線であり、それぞれ対応する
磁気ヘッドHiと接続される。各ローター巻線Riに対
向して、一定のギャップを設けてロータリートランスの
ステーターSの各ステーター巻線Siが配置される。R
4とR5及びS4とS5の間にはショートリングSRが
配置されている。各チャンネルのステーター巻線Siの
一方の端子は、アンプAiに接続されており、他方の端
子は接地されている。図1では構成の概略を示すため、
アンプを1種類としているが、実際には、記録時Siは
記録アンプの出力に、再生時Siは再生アンプの入力に
それぞれ接続される。
【0037】また、ステーターSの各チャンネルS1な
いしS4とアンプA1ないしA4との間にスイッチSW
1ないしSW4が設けられている。この各スイッチSW
1ないしSW4は、各ステーター巻線S1ないしS4と
アンプA1ないしA4とをつなぐか接地するかの切り換
えを行うものであり、巻線を短絡する短絡手段に相当す
る。通常トランジスタがスイッチとして用いられる。S
Wi(i=1,2,3,4 以下同様)がオンになった
場合、対応するステーター巻線Siの両端子が接地する
ことになる。このため、ステーター巻線Siは短絡され
た状態となり、ステーター巻線が短絡されたチャンネル
は、ロータリートランスのショートリングと同様な効果
となる。
【0038】SW5は、伝送帯域に応じて短絡手段であ
るSWiの状態を短絡(オン)または非短絡(オフ)に
切り換える制御手段である。伝送帯域が高い方式(VH
Sシステムの場合、S−VHS方式)と伝送帯域が低い
方式(VHSシステムの場合、VHS方式)との判別信
号である“S−VHS信号”の“真”、“偽”に基づい
て、SW5は、SWiを構成する各トランジスタのベー
スバイアス電流供給をオン、オフする。SW6は、EP
モードとSPモードとの切換スイッチであって、SW5
からベースバイアス電流が供給されるSWiは、EPモ
ードのときSW1とSW4であり、SPモードのときS
W2とSW3である。
【0039】いまS−VHS方式の場合、S−VHS信
号が“真”となり、SW5からベースバイアス電流が供
給される。たとえばSPモードの記録再生時、SW1,
SW4がオンとなりステーター巻線S1,S4が短絡さ
れる。SW2,SW3はオフとなりCH2とCH3とを
使用して記録再生が実行される。この場合CH2とCH
3は、CH1とCH4が短絡されているため、CH1と
CH4がオープンの状態よりもLSHが低下する。
【0040】VHS方式の場合、S−VHS信号が
“偽”となり、SW5はオフとなりSW1ないしSW4
はすべてオフとなる。この場合LSHは大きくなる。
【0041】このスイッチング方式そのものは、使用チ
ャンネルの間に未使用チャンネルを配置し、未使用チャ
ンネルをショートリングとして使用する場合の一般的な
手段としてよく用いられる。この場合の目的は主として
チャンネル間クロストークの低減を改善することにあ
る。本発明がこれらと大きく異なる点はクロストークの
低減ではなく、伝送帯域の異なる方式をもつVTRシス
テムにおいて一つのロータリートランスでそれぞれの方
式の最適の伝送効率を実現することにあり、その手段と
して単に使用しないチャンネルを短絡するだけでなく、
隣接チャンネルの少なくとも一方の巻線を短絡した場
合、伝送帯域が高い方式の帯域に対し共振周波数が帯域
外となるインダクタンスとなり、両方の隣接チャンネル
の巻線を短絡しない場合は伝送帯域の低い方式の帯域に
対し共振周波数が帯域外となり、この場合のインダクタ
ンスが上記短絡した場合のインダクタンスより大きくな
るように設定することにより達成されるものである。な
おここで言う帯域はアナログ記録の場合搬送波周波数の
最高周波数(ホワイトピーク周波数)であり、デジタル
記録の場合ナイキスト周波数を最高周波数と見なすもの
とする。
【0042】次に本発明の第1の実施例であるヘッドお
よびロータリートランスの具体例について説明を行う。
ヘッドのインダクタンスを従来どおりLH=2.0μH
とした場合の本発明の実施例について表4に示す。ロー
タリートランスの巻数比は従来どおりa=2となる。
【表4】
【0043】図2は、実施例1のロータリートランスの
コア形状を示す平面図と断面図である。コア7にチャン
ネルナンバーに対応する溝1ないし6及びショートリン
グが設けられる溝8が形成されている。従来のロータリ
ートランスと比較して隣接チャンネルの短絡効果を高め
るため、ショートリングを少なくしているので、小型化
できるという2次的なメリットもある。またこの実施例
の場合、隣接しているCH2とCH3の間にはショート
リングを設けてないが、ヘッド構成は180°対向のた
め隣接クロストークは、テープの180°にたいしてわ
ずかに巻き付いているいわゆるオーバーラップ部分のみ
の問題であり、ローターとステーター間のギャップを3
8μmに設定しているため問題とならない。
【0044】表4より、本発明のロータリトランスをV
HS方式で用いる場合、S−VHS方式よりも約1dB
伝送特性が改善される。この場合VHS方式の帯域の最
高周波数であるFM搬送波周波数のホワイトピークであ
る4.4MHzより高く、S−VHS方式のホワイトピ
ークである7MHzより低く設定されているチャンネル
が多い。さらにロータリートランスのインダクタンスL
Rは、隣接チャンネルを短絡しない場合より大きくなっ
ている。また隣接チャンネルを短絡することにより、f
0がS−VHS方式のホワイトピーク以上になり、S−
VHS方式の記録再生が可能となる。
【0045】本発明のロータリートランスをVHS方式
のみのVTRに搭載する場合は、隣接チャンネルを短絡
しない単純な図3の構成にすればよく、S−VHS方式
のVTRに搭載する場合は図1の構成にすることによ
り、VHS方式、S−VHS方式それぞれの最適の伝送
効率を一つのロータリートランスで達成することができ
る。
【0046】〔実施例2〕次に、本発明の第2の実施例
について説明を行う。本第2実施例は、磁気ヘッド及び
ロータリートランスの巻線配置については、第1実施例
と同じ(図1)であるが、第1実施例(表4)とは、L
HとLRの組み合わせが異なる。
【0047】本実施例では、磁気ヘッドのインダクタン
スをLH=1.15μHとしており、その他のパラメー
タの詳細を表5に示す。ここでヘッドのインダクタンス
を従来よりも小さくする理由としては、巻数を下げるこ
とになり、コウトダウンにつながる。さらにLSHがほぼ
同一のときLHが小さくなると、巻数比を大きくする必
要があり、ロータリートランスのローターの巻数も下が
るため、ロータリートランスのコストダウンにもつなが
る。ただしあまり磁気ヘッドのインダクタンスを下げる
と、磁気ヘッドおよびロータリートランスのローター側
に外来ノイズが飛び込んだ時に磁気ヘッドの再生出力が
小さいためノイズの影響を受けやすいという問題があり
注意を要する。
【表5】
【0048】ヘッド出力E0は、従来ヘッドに比べてイ
ンダクタンスLHが2.0μHから1.15μHとなる
ので、ヘッド出力はインダクタンスの平方根に比例する
ため2.4dB低下する。また、共振周波数は従来どお
り容量C=60pFとしたとき、S−VHS方式のホワ
イトピーク以下の周波数になっている。これは表4のL
SHより表5のLSHが大きいことによるものである。した
がって本実施例2の場合は、C=50pFとしてS−V
HS方式のホワイトピーク周波数以上に共振周波数をも
ってこなければならない。またはC=60pFで共振周
波数がホワイトピーク内に入っても、特開平1−118
203号公報のように、カスコード接続型の初段増幅器
のあとに帰還回路を具備した負帰還増幅器により、ヘッ
ド系のピーキング特性を維持し周波数特性を平坦化する
ことにより見かけ上共振周波数を大きくするという方法
もある。
【0049】したがって本発明においては、隣接チャン
ネルを短絡することにより伝送方式の高い方式の共振周
波数を帯域(ホワイトピーク)外としているが、実際は
このような負帰還増幅回路により見かけ上帯域を上げる
ことができるので、表5のように10%程度は帯域内に
共振周波数が入っていても問題は無い。表4と表5を比
較すると、伝送特性は0.5dBほど表5の方が改善さ
れている。
【0050】〔実施例3〕次に、本発明の第3の実施例
について、その構成を図4に示す。前記実施例1のダブ
ルアジマス4ヘッドにおいて、S−VHS方式で記録再
生を行う場合、SPモード使用時はEPモード巻線を短
絡、EPモード使用時はSPモード巻線を短絡してお
り、同一モードのRアジマスヘッドとLアジマスヘッド
は特別な処理を施していない。ところが本実施例3にお
いては、磁気ヘッドは単純な2ヘッドタイプのため、S
−VHS方式と識別したとき、Rアジマスヘッド使用時
はLアジマスヘッドを短絡、Lアジマスヘッド使用時は
Rアジマスヘッドを短絡する様にし、インダクタンスを
小さくし、S−VHS帯域での記録再生を可能にするこ
とができる。
【0051】すなわち、記録再生される映像のフィール
ド毎に、磁気ヘッドのスイッチングパルスに同期させて
SW1,SW2を交互に短絡させれば良い。VHS方式
と判別したときは何も処理をせずオープン状態としイン
ダクタンスを大きくする。磁気ヘッド及びロータリート
ランスの仕様例は、実施例1(表4)、実施例2(表
5)と同じであるが、チャンネル数が2チャンネルとな
った点だけ異なっている。
【0052】〔実施例4〕次に、本発明の第4実施例に
ついて、その構成を図5に示す。H1ないしH4はそれ
ぞれ映像用磁気ヘッドである。その配置は実施例1と同
じであり、CH1にH1(EPモード用Lアジマスヘッ
ド)、CH2にH2(SPモード用Lアジマスヘッ
ド)、CH3にH3(SPモード用Rアジマスヘッ
ド)、CH4にH4(EPモード用Rアジマスヘッド)
が配置される。各磁気ヘッドH1ないしH4に対応して
ロータリートランスのローター巻線R1ないしR4が接
続される。
【0053】本実施例のロータリートランスでは、ロー
ター巻線R1に対向してステーター巻線S1a及びS1
bの2個のコイルが一定のギャップを設けて配置されて
いる。すなわち、S1a及びS1bは、ステーターコア
の同一の溝の中に配置された第1チャンネルの第1及び
第2ステーター巻線に相当する。同様にR2に対向して
S2a及びS2bが、R3に対向してS3a及びS3b
が、R4に対向してS4a及びS4bがそれぞれロータ
ーに対向するステーターの溝の中に配置されている。
【0054】SW1ないしSW4は、各チャンネルの第
1及び第2のステーター巻線の接続を切り換えるもので
あり、第1ステーター巻線だけを接続する場合と、第1
及び第2のステーター巻線を直列に接続する場合とを切
り換える。すなわち、S1aとS1bは、SW1により
S1aだけがステーター側の巻き線として作用する場合
と、S1aとS1bがシリーズに接続された状態でステ
ーター側の巻き線として作用する場合に切り換えられ
る。S2aS2bはSW2により、S3aとS3bはS
W3により、S4aとS4bはSW4により、それぞれ
同様に切り換えられる。
【0055】S−VHS信号は、第1の伝送帯域である
S−VHSと第2の伝送帯域であるVHSとを判別する
信号であり、この信号の“真/偽”により、スイッチS
W1ないしSW4の状態がが切り換えられる。なお、ス
イッチSW6は、SPモードとEPモードとを切り換え
るスイッチであり、SP/EP判別信号に従って、S−
VHS信号をSW1及びSW4(SPモード)、または
SW2及SW3(EPモード)に分配する。
【0056】S−VHS方式の場合、各チャンネルの第
1ステーター巻線S1a,S2a,S3a,S4aが、
それぞれアンプA1ないしA4に接続される。VHS方
式の場合、各チャンネルの第1及び第2ステーター巻線
が、S1a+S1b,S2a+S2b,S3a+S3
b,S4a+S4bとシリーズに接続されて各アンプA
1ないしA4に入力される。これにより、ステップアッ
プ比が大きくなりLSHが大きくなる。またSPモード動
作時SP,EP判別信号によりSW2とSW3が同時に
作動しEPモード動作時SP,EP判別信号によりSW
1とSW4が同時に作動する。
【0057】磁気ヘッドのインダクタンスをLH=1.
15μHとした場合の本第4実施例のパラメータを表6
に示す。各チャンネルの第1ステーター巻線S1aない
しS4aはそれぞれ6ターンとし、各チャンネルの第2
ステーター巻線S1bないしS4bはそれぞれ2ターン
としている。なおコアの形状は実施例1、実施例2と同
様に図2のCH1ないしCH4の寸法とした。
【表6】
【0058】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、つ
ぎのような効果がある。請求項1及び請求項2記載の本
発明に係るロータリートランスを使用することにより、
従来の技術では共用の出来なかった伝送帯域の異なる方
式(たとえばS−VHSとVHS)でも1種のロータリ
ートランスで共用することが出来る。これにより従来は
ロータリートランスの伝送帯域毎にそれぞれ最適のイン
ダクタンスとするため、コア形状、巻線仕様を変えてい
たのが1種類のロータリートランスで間に合うようにな
り、ロータリートランスの製造工程が簡略化され、製造
費や在庫量を大幅に圧縮することができるという効果が
ある。
【0059】また、請求項3記載及び請求項4の本発明
に係るの磁気記録再生装置は、従来伝送帯域の広い方式
の共振周波数を優先するため、伝送効率が犠牲となって
いた伝送帯域の狭い方式の記録再生においても、優れた
伝送特性が得られ、記録再生される映像の品質向上が達
成出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るロータリトランス及び該ロータリ
トランスを用いた磁気記録装置の第1及び第2の実施例
の要部構成を示す回路図。
【図2】本発明に係るロータリトランスのコア形状を示
す平面図及び断面図。
【図3】本発明に係るロータリートランスをVHS方式
のみに用いる場合の構成を示す回路図。
【図4】本発明に係るロータリトランス及び該ロータリ
トランスを用いた磁気記録装置の第3実施例の要部構成
を示す回路図。
【図5】本発明に係るロータリトランス及び該ロータリ
トランスを用いた磁気記録装置の第4実施例の要部構成
を示す回路図。
【図6】ロータリートランスの電磁変換系に関する計算
式の記号の説明図。
【図7】従来例のロータリートランスの電磁変換系の構
成を示す図。
【図8】VHS方式における従来のロータリートランス
のコア形状例を示す平面図及び断面図。
【図9】S−VHS方式における従来のロータリートラ
ンスのコア形状例を示す平面図及び断面図。
【符号の説明】
H1〜H6 磁気ヘッド R1〜R6 ローター巻線 S1〜S6 ステーター巻線 S1a〜S4a 第1ステーター巻線 S1b〜S4b 第2ステーター巻線 A1〜A4 アンプ SW1〜SW6 スイッチ 1〜6 巻線用溝 7 ロータリートランスコア 8〜10 ショートリング用溝 SR ショートリング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 5/02 H01F 21/12 H01F 38/14

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数のチャンネルを有し、第1の伝送帯
    域の信号と該第1の伝送帯域より低い第2の伝送帯域の
    信号とを伝送可能なロータリートランスにおいて、 隣接チャンネルの少なくとも一方の巻線が短絡されたチ
    ャンネルの共振周波数が前記第1の伝送帯域の帯域外と
    なり、 隣接チャンネルの巻線が短絡されないチャンネルの共振
    周波数が前記第2の伝送帯域の帯域外となることを特徴
    とするロータリートランス。
  2. 【請求項2】 複数のチャンネルを有し、第1の伝送帯
    域の信号と該第1の伝送帯域より低い第2の伝送帯域の
    信号とを伝送可能なロータリートランスにおいて、 各チャンネルのステーター巻線がそれぞれ第1、第2の
    ステーター巻線からなり、第1または第2のステーター
    巻線の一方の共振周波数が前記第1の伝送帯域の帯域外
    となり、 第1及び第2のステーター巻線を直列接続した共振周波
    数が前記第1の伝送帯域の帯域内となるとともに前記第
    2の伝送帯域の帯域外となることを特徴とするロータリ
    ートランス。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のロータリートランスと、 該ロータリートランスの使用されないチャンネルの巻線
    を短絡する短絡手段と、 伝送される信号の帯域に応じ
    て前記短絡手段の状態を短絡または非短絡に切り換える
    制御手段と、 を備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
  4. 【請求項4】 請求項2記載のロータリートランスと、 該ロータリートランスの前記第1または第2ステーター
    巻線の一方のみ磁気記録再生回路に接続するか、第1及
    び第2ステーター巻線を直列接続して磁気記録再生回路
    に接続するかを切り換える切換手段と、 伝送される信号の帯域に応じて前記切換手段を切り換え
    せしめる制御手段と、 を備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
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