JP2809868B2 - 電磁シールド用筐体の共振防止材 - Google Patents

電磁シールド用筐体の共振防止材

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、電磁シールド用筐体の共振を防止しシール
ド効果を向上する共振防止材に関する。
[従来の技術] 電磁シールド用のシールド室,箱体,キャビネット等
の筐体は、その構造の幾何学要素によって決定する固有
周波数もをち、例えば第2図に示す(b)のように、共
振(図に示す上方向のピーク)と反共振(図に示す下方
向のピーク)とを発生する。
この場合、共振はシールド効果を高める作用をする
が、反共振はシールド効果を減退させるように働く。
従って、シールド効果の減退をなくすためには、何等
かの方法で反共振現象をなくす必要がある。
[発明が解決しようとする課題] ところが従来では、筐体内に金属箔等で間仕切りを入
れて、共振及び反共振(以下、慣例に従って共振と反共
振とを合わせて共振という)の発生周波数(共振周波
数)をシフトさせることにより、シールド効果の減退を
防止していたため、特定周波数でのシール効果は改善で
きるものの、電磁シールド用筐体のシールド効果の減退
を本質的に解決することはできなかった。
そこで本発明は、電磁シールド用筐体の共振のQを低
下させることにより、電磁シールド用筐体の共振を防止
し、共振によるシールド効果の減退を本質的に解決する
ことを目的としてなされた。
[課題を解決するための手段] 即ちこの目的を達するためになされた本発明は、電磁
シールド用の筐体内に設けられ、該筐体の共振を防止す
る共振防止材であって、 高分子化合物にカーボン粉末とフェライト粉末とを含
浸させたことを特徴とする電磁シールド用筐体の共振防
止材を要旨としている。
[作用及び発明の効果] このように構成された本発明の共振防止材によれば、
電磁シールド用筐体の共振のQを下げることができ、こ
の結果、共振によるシールド効果の減退の影響を実害の
ない程度まで下げることができる。以下この理由につい
て説明する。
まず共振のQは、シェルクノフにより変位電流密度と
導電電流密度の比とによって定義されている。
Q=K/ωε …(1) ここにεは媒質の誘電率、Kは導電率であるから当然
電気双極子源を仮定しており、これはCR並列回路での Q=1/ωCR …(2) に対応している。
これに倣って、LR直列回路での Q=ωL/R …(3) に対応して磁気双極子源では、 Q=ωμK …(4) となる。(但し、μは透磁率) このため、電磁シールド用筐体の内部空間に並列的に
高εの材料が、あるいは直列的に高μの材料が存在すれ
ば、空間のQは低下し、共振現象は著しく緩和されるこ
とになり、これによって共振に原因するシールド効果の
減退を抑止することが可能となる。
そこで本発明では、共振防止材を構成する高分子化合
物に、誘電率εを高めることのできるカーボン粉末と、
透磁率μを高めることのできるフェライト粉末とを夫々
含浸させている。
つまり、高分子化合物にカーボン粉末とフェライト粉
末とを含浸させ、これら各粉末の高分子化合物への含浸
量を調整すれば、共振防止材の誘電率ε及び透磁率μを
各々調整できることから、本発明では、共振防止材を構
成する高分子化合物にカーボン粉末とフェライト粉末と
を含浸させることにより、共振防止材の特性を、共振防
止材に設ける電磁シールド用筐体の共振特性に容易に対
応させることができるようにしている。
このため、本発明によれば、電磁シールド用筐体の共
振のQを低下させて、シールド効果の減衰を抑制させる
ことのできる共振防止材を、簡単に製造できることにな
る。
尚、高分子化合物としては、ポリウレタン,ポリエチ
レン等のプラスチックスや合成ゴム等のエラストマを使
用することができる。
またカーボン粉末の高分子化合物に対する含浸量とし
ては、20〜60Vol%(体積%)が好ましく、高分子化合
物に対するフェライト粉末の含浸量としては、20Vol%
以下にすればよい。
また共振防止材の形状としては、筐体の共振特性に応
じて決定すればよいが、共振が比較的低周波であればブ
ロック(固体)状に形成することが望ましく、共振が高
周波数であればシート状に形成することが望ましい。
[実施例] 以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
本実施例の共振防止材1は、カーボン粉末及びフェラ
イト粉末を含浸させた発砲ポリウレタン製のもので、第
1図に示すように、略角錐状に形成されている。尚図に
おいて、高さL1:600mm,底辺L2:620mm、底部厚みL3:50mm
である。
次に、本実施例の共振防止材1による共振防止効果を
確認するため、発砲ポリウレタンにカーボン粉末を含浸
させた、本実施例の共振防止材1と同形状の測定用共振
防止材を作製し、これを、縦5.5m,横4.5mm,高さ5.0mmの
箱状のシールド室の内壁に1個ずつ,合計6個設け、シ
ールド効果Sを測定(MIL−STD−285による、水平偏
波)した。この測定結果(a)を、測定用共振防止材を
設けないシールド室のシールド効果Sの測定結果(b)
と共に第2図に示す(但し第2図は近接界に入る部分の
みを示す。)尚シールド室を形成するシールドバリアー
は、厚さ2.3mm両面銅メッキ鋼板で、固定継目は全面イ
ナートガス溶接である。
第2図から明らかなように、測定用共振防止材を設け
ないシールド室においては、従来技術の項で説明した通
り、共振によりシールド効果Sが減退しているが、測定
用共振防止材を設けたシールド室においては、共振が鈍
化し、シールド効果Sの減退が抑止されている。
これは測定用共振防止材がカーボン粉末を含有するこ
とにより高い誘電率εを有し、この誘電率εによって共
振のQを低下できたためであると考えられる。
そこで次に第2図に示した測定用共振防止材を設けな
いシールド室のシールド効果の測定結果(b)から、シ
ールド効果50dBを割り込むような有害な共振周波数fo
(図に示すA〜L点)を求め、各共振周波数fo毎に、測
定用共振防止材を設けることにより低下したQの量(低
下量)ΔQと、シールド効果Sの改善量ΔSと、を夫々
求めた。
この結果、即ち共振周波数に対するQの低下量ΔQ及
びシールド効果Sの改善量ΔSを線図で表すと、夫々、
第3図及び第4図に示す如くなり、これをまとめると次
表に示す如くなる。
尚Qの低下量ΔQの算出に当たっては、各共振周波数
foにおいて2×半値幅=Δfoとおくと、 Q=fo/Δfo …(5) によりQを求めることができるので、まず上記各測定結
果(a)(b)における各共振周波数foでのQを求め、
各共振周波数fo毎にQの差ΔQを求める、といった手順
で行った。
上記演算の結果、第3図から明かなように、測定用共
振防止材によれば、共振周波数foが低い程、Qの低下量
ΔQが小さく、Q低下に対する効果が小さくなる傾向が
あるのに対し、シールド効果Sの改善量ΔSと共振周波
数との直接の関連性は薄いことがわかった。即ち、シー
ルド効果SはQ以外の要因もあるので、共振防止材1に
よるQの低下量ΔQとシールド効果Sの改善量ΔSとは
1対1に対応しないが、Qの低下に伴いシード効果Sを
改善できることが確認できた。
そして、シールド室の内部空間のQを低下させるに
は、前述したように、その空間に並列的に高εの材料を
設けるか、直列的に高μの材料を設ければよいことか
ら、本実施例の共振防止材1(つまり、カーボン粉末と
フェライト粉末とを含浸させた発砲ポリウレタン製の共
振防止材)によれば、その製造時に高分子化合物である
発砲ウレタンへのカーボン粉末及びフェライト粉末の含
浸量を適宜調整することにより、シールド室等の筐体の
共振特性に対応して、その共振を最も良好に低減し得
る、最適な共振防止材1を実現できることになる。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例の共振防止材の形状を表す斜視図、第2
図は実施例の共振防止材を設けたシールド室のシールド
効果(a)及び共振防止材を設けていないシールド室の
シールド効果(b)の測定結果を表す線図、第3図は実
施例の共振防止材を設けたシールド室の共振周波数に対
するQの低下量ΔQを表す線図、第4図は実施例の共振
防止材を設けたシールド室の共振周波数に対するシール
ド効果Sの改善量ΔSを表す線図、である。 1……共振防止材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H05K 9/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電磁シールド用の筐体内に設けられ、該筐
    体の共振を防止する共振防止材であって、 高分子化合物にカーボン粉末とフェライト粉末とを含浸
    させたことを特徴とする電磁シールド用筐体の共振防止
    材。
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