JP2807272B2 - 光による診断装置 - Google Patents

光による診断装置

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【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】
この発明は、人間あるいは動物の脳組織等の生体の酸
素量を測定する光による診断装置に係り、特に、血液中
のヘモグロビンの酸素量、細胞内のチトクロムの酸素量
を近赤外光によつて検出することにより、生体内の酸素
量を測定する診断装置に関する。
【従来の技術】
一般的に、脳組織等の体内器官内の酸素量が充分なも
のか、適切に利用されているか否かは、該体内器官の機
能を診断するための基本的はパラメータとなる。 例えば、胎児、新生児の生育力の判断は、体内器官へ
の充分な酸素の供給がなされているか否かによつて判断
される。酸素の供給が充分でない場合は、胎児、新生児
の死亡率が高く、又生存し得たとしても体内器官に後遺
症が残る恐れがある。 酸素の欠乏は、特に脳組織の損傷をもたらす。 このような体内器官の酸素量を早期に且つ容易に診断
するための診断装置としては、例えば米国特許第4、28
1、645号が提案されている。 この診断装置は、血液中の酸素運搬媒体であるヘモグ
ロビンと、酸化還元反応を行う細胞中のチトクロムa、
a3とによる近赤外光の吸収スペクトルに基づいて、体内
器官、特に脳の酸素量の変化を測定するものである。 即ち、波長範囲が700〜1300nmの近赤外光は、酸素と
結合したヘモグロビン(HbO2)と酸素の取除かれたヘモ
グロビンHbとで異なる吸収スペクトルを示し、又同様に
酸化チトクロムa、a3(CyO2)と還元チトクロムa、a3
(Cy)とで異なる吸収スペクトルを呈することを利用す
るものである。 具体的には、患者の頭部の一方の側から4種類の異な
る波長の近赤外光を時分割で入射させ、頭部を透過した
光量を頭部の他方の側で順次検出し、これら4種類の検
出結果に所定の演算処理を施すことで、酸化ヘモグロビ
ン、還元ヘモグロビン、酸化チトクロム、及び、還元チ
トクロムのそれぞれの濃度変化量を算出し、これに基づ
いて、例えば脳の酸素量の変化を測定するものである。 前記近赤外光は、レーザダイオードから光フアイバー
を介して患者の頭部に入射させ、頭部の他方の側に配置
された光フアイバーによつて頭部を透過した光を検出す
るようにされている。
【発明が解決しようとする課題】
ここで、前記入射側光フアイバー及び受光側光フアイ
バーは共に照射側取付具と検出側取付具によつて患者の
頭部に取付けられるものであるが、上記のような光によ
る診断装置は、その多くは、未熟児の診断に用いられる
ものであり、患者である未熟児が泣いたりすると、取付
け位置が簡単に動いたり、グラスフアイバーの光軸の、
測定部位に対する取付け角度が大きく変つててしまい、
実際の臨床の場では大きな問題点となつている。 即ち、上記光による診断装置の測定値である酸化型及
び還元型のヘモグロビン、あるいは酸化型及び還元型チ
トクロムa、a3の変化量は、光の照射位置から検出位置
に至る光路長が変ると、そのみかけの測定値が変つてし
まう。 通常、生体内の酸素変化によるヘモグロビンやチトク
ロムa、a3の光吸収スペクトルの変化量は、0.10D程度
の場合が多く、これに対して、照射側又は受光側のわず
かな動きによる光吸収スペクトルの変化量は、上記0.10
D程度は簡単に越えてしまう。 従つて、測定中は照射部と検出部が動かないように、
生体にしつかりと固定する必要があるが、実際には生体
に苦痛を与えずこれを実現するのはかなり困難であり、
特に患者が未熟児であるような場合はなおさらである。 これに対して、例えば特開昭63−275323号公報等に開
示されるように、照射側取付具の位置変動を検出するよ
うにしたものがあるが、受光側(検出側)の位置あるい
は角度の変化を検出できるものでなく不充分であるとい
う問題点がある。 この発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたもので
あつて、照射部及び検出部の取付け位置及び角度の動き
による変化を検出して、正しい測定を行うことができる
ようにした光による診断装置提供することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
この発明は、複数の波長の近赤外光を生体に照射する
光照射手段と、その光照射手段から照射され、生体によ
り散乱された複数の波長の透過光を検出する光検出手段
と、を有してなり、前記光検出器による検出値に基づ
き、生体内の所定の物質の量を測定するようにした光に
よる診断装置において、前記複数の波長の検出光量の変
化量に基づく所定の演算により、前記光照射手段又は光
検出手段の動きを検出する動き検出手段と、前記動き検
出手段の検出値に基づき、測定値に動きによる変化分の
補正をする補正手段とを設けることにより上記目的を達
成するものである。 又、前記補正手段を、前記基準量変化より、動きによ
り生じた検出光量変化分を計算し、測定データを補正す
るようにして上記目的を達成するものである。 更に、前記基準量を、酸化型チトクロムa、a3と還元
型チトクロムa、a3の変化量の和又は酸化型チオグロビ
ンと還元型ミオグロビンの変化量の和の少なくとも一方
とすることにより上記目的を達成するものである。
【作用】
この発明においては、光照射手段又は光検出手段の動
きを検出し、且つ、この検出値に基づき、測定値に動き
による変化分の補正をするようにしているので、生体の
動き等による、光照射手段及び光検出手段の位置の変
化、角度の変化によるみかけの測定値変化を検出して、
正しい測定をすることができる。
【実施例】
以下本発明の実施例を図面を参照して説明する。 この実施例にかかる光による診断装置10は、4種類の
異なる波長λ、λ、λ、λの近赤外光をそれぞ
れ出力するレーザダイオード等の光源LD1〜LD4と、光源
LD1〜LD4の出力タイミングを制御する光源制御装置11
と、光源LD1〜LD4から出力される近赤外光を体内器官、
例えば人間の頭部12にそれぞれ照射させるための光フア
イバー14A〜14Dと、該光フアイバー14A〜14Dの端部を互
いに束にして保持する照射側取付具16と、この照射側取
付具備16と反対側の頭部12に取付けられる検出側取付具
18と、該検出側取付具18に保持され、頭部12を透過した
近赤外光を受光する光フアイバー20と、この光フアイバ
ー20によつて案内された近赤外光の光子数を計数し、近
赤外光の透過量を測定する透過光検出装置22と、診断装
置10全体を制御し、更に近赤外光の透過量に基づき脳組
織の酸素の変化量を算出し、又後述の動き検出手段24及
び補正手段26とを含むコンピユータシステム28と、から
構成されている。 前記コンピユータシステム28は、前記動き検出手段24
及び補正手段26を含むプロセツサ30と、メモリ32と、デ
イスプレイ、プリンタ等の出力装置34と、キーボード等
の入力装置36と、を備えていて、システムバス38によつ
て互いに接続されている。 又前記システムバス38には、外部I/Oとして、前記光
源制御装置11と透過光検出装置22とが接続されている。 前記透過光検出装置22は、光電子像倍管22A、マルチ
チヤンネルフオトカウンタ22B、フイルター22C、レンズ
22D、22E、増幅器22F、波高弁別器22G、温度コントロー
ラ22Iを備えたものであつて、その詳細は、前記特開昭6
3−275323号において公知であるので説明を省略する。 又、光源制御装置11の作用及び前記透過光検出装置2
2、更には頭部12を透過した4種類の近赤外光の検出値
に基づいて酸化あるいは還元ヘモグロビン、酸化あるい
は還元チトクロムを検出する過程については、同様に特
開昭63−275323号等において公知であるので詳細な説明
は省略する。 生体中のチトクロムa、a3やミオグロビンあるいはヘ
モグロビンは、酸素の多少により吸収スペクトルが変
り、従つて、頭部12を透過した近赤外光の量の酸素量に
応じて変化するので透過光量から酸素量を測定すること
ができる。 人間の頭部では、ミオグロビンがほとんど存在しない
ために、この実施例における測定対象はヘモグロビンと
チトクロムa、a3となる。 これを波長λ〜λの4種類の近赤外光に基づいて
求めると次式のようになる。 ここで、ΔTλ〜ΔTλは、λ〜λの光の吸
収量変化(測定値)、α、xは物質Oの波長xでの吸
収係数(既知量)、lは光路長、ΔHbO2は酸化ヘモグロ
ビンの濃度変化、ΔHbは還元ヘモグロビンの濃度変化、
ΔCyO2は酸化チトクロムの濃度変化、ΔCyは還元チトク
ロムの濃度変化をそれぞれ示す。 測定値ΔT1λ〜ΔTλに基づき、上記(1)式か
ら、最終的に酸化あるいは還元ヘモグロビン及び酸化あ
るいは還元チトクロムの濃度変化を求めることができ
る。 上記(1)式からわかるように、前記照射側取付具16
又は検出側取付具18が動いたり傾いたりすると、当然光
路長lが変化し、ΔHb・・・ΔCyO2が間違つた値として
計算されてしまう。 しかし、この濃度変化が、照射側取付具16、又は検出
側取付具18の動きによるものか、生体中の酸素変化によ
るものかは不明である。 前記動き検出手段24は、チトクロムa、a3の総量変化
(ΔCyO2+ΔCy)及びミオグロビンの総量変化(ΔMyO2
+ΔMy)が、短時間にある一定値以上となつた場合に、
取付具16、18に対する頭部12が相対移動したことを検出
するようにされている。 ここで、前記動き検出手段24はチトクロムa、a3の総
量変化とミオグロビンの総量変化の両方を検出するよう
にされているが、頭部12ではミオグロビンがほとんど存
在しないため、この場合は、チトクロムa、a3の総量変
化のみを検出することになる。 チトクロムの総量及びミオグロビンの総量は、生体組
織の成長に伴つて増加するものであり、わずか数時間以
内の測定時間中ではほとんど一定であり、ヘモグロビン
のように短時間で急激に変るものではない。 従つて、上記のように、チトクロムa、a3の総量変化
(ΔCyO2+ΔCy)が一定値以上となつたとき、これは、
生体組織中の酸素量の変化によるものではなく、頭部12
の動きによるアーチフアクトと判断して、動き検出手段
がこれを検出するようにすればよい。 前記補正手段26は、前記動き検出手段24によつて検出
されたチトクロムa、a3の総量変化(ΔCyO2+ΔCy)に
基づいて、動きによるアーチフアクトをキヤンセルし、
実際の測定値となるように補正するものである。 即ち、チトクロムa、a3の総量変化(ΔCyO2+ΔCy)
は、次の(2)式で表わすことができる。 ΔCyO2+ΔCy) =(A1・ΔTλ+・・・ +A4・ΔTλ)/l ……(2) ここでA1〜A4はλ〜λに対応した定数である。 前述のように、通常の測定時間内では、チトクロム
a、a3の総量変化は零であるから、 A1・ΔTλ+・・・+A4・ΔTλ=0……(3) となる。 ここで、頭部12の動きにより光路が変化し、吸収量Δ
Tλ〜ΔTλが、ΔTλ→ΔTλ′+Xλ
・・・、ΔTλ→ΔTλ′+Xλのようにみかけ
上変化し、この結果、本来零であるべきΔCyO2+ΔCYが
Yだけみかけ上変化する(ΔTλ′〜ΔTλ′は動
きがなかつた場合の本来の信号、Xλ〜Xλは動き
による信号)。 ここで Y={A1・(ΔTλ′+Xλ・・・ +A4・(ΔTλ′+Xλ)}/l ……(4) であり、ΔTλ′〜ΔTλ′も、ΔTλ〜ΔTλ
同様に(3)式を充足するから、これを代入して Y=(A1・Xλ+・・・+A4・Xλ)/l ……(5) となる。 ここで Xλ1:Xλ2:Xλ3:Xλ =aλ1:aλ2:aλ3:aλ ……(6) aλ〜aλはλ〜λでの頭部12全体の吸収量
の比であり、一般的には既知量である。xは未知定数で
ある。 必要とあらば、故意に照射側取付具16又は検出用取付
具18を動かして光路を変化させ、そのときの吸収量の変
化の比、即ちaλ〜aλを事前に測定していくこと
は容易である。 前記(5)式は、 Y=(A1・aλ+・・・+A4・aλ)x/l ……(7) となり、 x=Yl/(A1・aλ+ ・・・+A4・aλ) ……(8) となり、未知定数xが求まる。 これによりXλ・・・Xλが求まり、これを実際
に透過光検出装置22により測定された吸収量変化から差
し引けば、本来の信号であるΔTλ′〜ΔTλ′が
求まる。以上のようにして、補正手段26により、データ
のアーチフアクトを補正することができる。 なお上記実施例は頭部12を診断したものであるので、
チトクロムa、a3の総量変化のみを検出したが、他の部
位あるいは生体組織の場合は、ミオグロビン又はミオグ
ロビンとチトクロムa、a3の一方又は両方の総量変化を
測定するようにする。 又、上記実施例において、動き検出手段24は、チトク
ロムa、a3の総量変化(ΔCyO2+ΔCy)及びミオグロビ
ンの総量変化(ΔMyO2+ΔMy)を測定しているが、これ
は、単位時間当りの変化量を求めているものである。 即ち、前の測定値と現在の測定値の比あるいは差から
動きにより光路の変化があつたことを求めている。
【発明の効果】
本発明は上記のように構成したので、被測定個所にお
ける取付具あるいは生体の動きによるみかけの変化を除
いて、正確な酸素量を測定することができるという優れ
た効果を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る光による診断装置の実施例を示す
ブロツク図である。 10……診断装置、 LD1〜LD4……光源、 11……光源制御装置、 12……頭部、 14A〜14D……光フアイバー、 16……照射側取付具、 18……検出側取付具、 20……光フアイバー、 22……透過光検出装置、 24……動き検出手段、 26……補正手段、 28……コンピユータシステム。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の波長の近赤外光を生体に照射する光
    照射手段と、この光照射手段から照射され、生体により
    散乱された複数の波長の透過光を検出する光検出手段
    と、を有してなり、前記光検出器による検出値に基づ
    き、生体内の所定の物質の量を測定するようにした光に
    よる診断装置において、前記複数の波長の検出光量の変
    化量に基づく所定の演算により、前記光照射手段又は光
    検出手段の動きを検出する動き検出手段と、前記動き検
    出手段の検出値に基づき、測定値に動きによる変化分の
    補正をする補正手段とを設けたことを特徴とする光によ
    る診断装置。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記動き検出手段は、
    測定時間内で、量が略不変である基準量の変化により、
    動きを検出することを特徴とする光による診断装置。
  3. 【請求項3】請求項2において、前記補正手段は、前記
    基準量変化より、動きにより生じた検出光量変化分を計
    算し、測定データを補正するようにされたことを特徴と
    する光による診断装置。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3のうちのいずれかにおい
    て、前記基準量は、酸化型チトクロムa、a3と還元型チ
    トクロムa、a3の変化量の和又は酸化型ミオグロビンと
    還元型ミオグロビンの変化量の和の少なくとも一方であ
    ることを特徴とする光による診断装置。
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