JP2805809B2 - 整流素子 - Google Patents

整流素子

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は,集積回路分野における整流素子に関する
もので,酸化還元物質を該素子の構成材料として用いる
ことにより,そのサイズを分子レベルの超微細な大きさ
(数十〜数百Å)に近づけることができ,高密度化を図
ることができるようにしたものである。
〔従来の技術〕
従来,集積回路に用いられている整流素子としては,
例えば柳井久義,永田穣共著の集積回路工学(1)に記
載されているような第6図に示すMOS構造のものがあっ
た。図において,(11)はp形シリコン基板,(12)は
n形領域,(13)はp形領域,(14)はn形領域,(1
5)はSiO2膜,(16),(17)は電極であり,これら2
つの電極(16),(17)間でp−n接合(p形領域(1
3)−n形領域(14)接合)が形成され,これにより整
流特性が実現されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
従来のMOS構造の整流素子は以上のように構成されて
いるため,微細加工が可能であり,現在では上記構造の
整流素子あるいはこれと類似の構造のトランジスタ素子
を用いたLSIとして1MビットLSIが実用化されている。
ところで,集積回路のメモリ容量と演算速度を上昇さ
せるには,素子そのものの微細化が不可欠であるが,Si
を用いる素子では0.2μm程度の超微細パターンで電子
の平均自由行程と素子サイズとがほぼ等しくなり,素子
の独立性が保たれなくなるという限界を抱えている。こ
のように,日々発展を続けているシリコンテクノロジー
も,微細化の点ではいずれは壁に突きあたることが予想
され,新しい原理に基づく電気回路素子であって0.2μ
mの壁を破ることのできるものが求められている。
この発明は,かかる状況に鑑みてなされたもので,酸
化還元物質を電気回路素子の構成材料として用いること
により,そのサイズを分子レベルの超微細の大きさまで
近づけることのできる電気回路素子を,特にそのうちの
優れた整流特性の整流素子を得ることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
ところで,生体内には,電子を定められた方向へ運ぶ
電子伝達能を有する蛋白質(以下,電子伝達蛋白質と記
す)が複数種類存在しており,該電子伝達蛋白質は,例
えな生体膜中に一定の配向性をもって埋め込まれ,分子
間で電子伝達が起こるように特異的な分子間配置をとっ
ている。
この電子伝達蛋白質は,電子伝達時に酸化還元(レド
ックス)反応を伴い,各電子伝達蛋白質のレドックス電
位の負の準位から正の準位へと電子を流すことができる
ものであり,これを利用すれば電子の動きを分子レベル
で制御することができると考えられる。
また,最近の知見によれば,生体内に存在している電
子伝達蛋白質以外の電子伝達物質の組み合わせで電子伝
達が可能な電子伝達複合体を形成することが可能である
ことが示されている。
従って,適当なレドックス電位を持つ電子伝達物質を
2種類(A及びB)用い,A−Bと2層接着接合すれば,
それらのレドックス電位の差異を利用して整流特性を生
ずる接合を形成できると考えられる。本件発明者はこの
ことに着目してこの発明を創作したものである。
そこで本発明の整流素子は第1の酸化還元物質で作成
された第1酸化還元物質膜と,上記第1酸化還元物質の
レドックス電位と異なるレドックス電位を有する第2の
酸化還元物質で作成され,上記第1酸化還元物質膜上に
累積して接着接合された第2酸化還元物質膜と,上記第
1,第2酸化還元物質膜にそれぞれ電気的に接続された第
1,第2の電極とを備え,上記第1,第2酸化還元物質膜の
一方が電子を一定方向に伝達可能なレドックス蛋白質で
あるチトクロームCまたはポルフィリン環を有する分子
により構成された単分子膜もしくは単分子累積膜であ
り,他方が3,10−ジノニル,7,8−ジメチルイソアロキサ
ジン,(7,8−ジノニル,3,10−ジノニルイソアロキサジ
ン−8α−イル)チオコハク酸または(7,8−ジノニル,
3,10−ジノニルイソアロキサジン−8α−イル)チオ酢
酸等イソアロキサジン環を有する分子により構成された
単分子膜もしくは単分子累積膜であり,上記酸化還元物
質のレドックス電位の差異を利用して整流特性を発生さ
せるようにしたものである。
〔作用〕
この発明においては,レドックス電位の異なる少なく
とも2種類の酸化還元物質により整流特性を発生させ
る。即ち,第4図(a),(b)のA−B型酸化還元物
質複合体の模式図とそのレドックス電位の関係を用いて
説明すると,異なるレドックス電位を有する2つの酸化
還元物質A,Bを接合してなる複合体は,電子は,図中実
線矢印で示すようにレドックス電位の負の準位から正の
準位へは容易に流れるが,逆方向(図中破線矢印方向)
へは流れにくく整流特性を呈し,この複合体を用いるこ
とによりn型半導体とp型半導体とを接合してなるp−
n接合と類似の性質を示す整流素子を得ることができ
る。
〔実施例〕
以下,この発明の一実施例を図をもとに説明する。第
1図はこの発明の一実施例による整流素子を模式的に示
す断面構成図であり,図において,(1)は絶縁特性を
持つ基板,(2a),(2b)はそれぞれ第1,第2電極,
(3),(4)はそれぞれ第1,第2酸化還元物質膜であ
る。この例では,第1酸化還元物質膜(3)はラングミ
ューア・ブロジエツト法で作成された3,10−ジノニル−
7,8−ジメチルイソアロキサジン(以下DNIと略す)の単
分子膜(以下LB膜と略す)であり,(5)はイソアロキ
サジン環,(6)は疎水性のノニル基である。また第2
酸化還元物質膜(4)はチトクロームCである。この場
合,第1酸化還元物質のレドックス電位が電2酸化還元
物質のそれに比べて約400mV卑であり,両者のレドック
ス電位差に基づいて第3図に示されるような整流特性を
呈する。
第2図はこの発明の他の実施例による整流素子を模式
的に示す構成図である。この例では,第2酸化還元物質
膜(4)を構成するポルフィリン環を有する分子とし
て,ヘマトポルフィリンビス(トリデカノイルエーテ
ル)Ru(II)ピリジン錯体(以下RuHPと略す)を用いた
例である。(7)はポルフィリン環である。この場合
も,第1酸化還元物質のレドックス電位が第2酸化還元
物質のそれに比べて約600mV程卑であり,両者のレドッ
クス電位差に基づいて,第3図に示すような整流特性が
得られる。この整流特性は原理的に第5図により立証さ
れる。これは,金属極上にRuHPとDNIを累積した電極の
サイクリックボルタモグラムの第1,2周期を示したもの
である。第1周期ではRuHPの酸化ピークが見かけ上大き
くなり,DNIの酸化還元位置にはピークは観察されず,ま
た第2周期ではRuHPのみの修飾電極と同じ挙動を示し
た。この結果は,DNI→RuHP→金の電子移動が一方向に制
御できること(整流特性)を原理的に示すものである。
従って,上記構成により分子レベルの超微細な大きさ
の整流素子を実現でき,該素子を用いて高密度化が可能
な集積回路を得ることができる。
なお,上記実施例ではチトクロームCまたはRuHPのLB
膜,単分子膜およびDNIのLB膜の単分子膜を用いた場合
について説明したが,これらのLB膜が単分子膜累積膜で
あってもよく,またポルフィリン環を有する分子として
鉄原子を含む分子でもよい。
〔発明の効果〕
以上のように,この発明によれば,第1の酸化還元物
質で作成された第1酸化還元物質膜と, 上記第1酸化還元物質のレドックス電位と異なるレド
ックス電位を有する第2の酸化還元物質で作成され,上
記第1酸化還元物質膜上に累積して接着接合された第2
酸化還元物質膜と, 上記第1,第2酸化還元物質膜にそれぞれ電気的に接続
された第1,第2の電極とを備え,上記第1,第2酸化還元
物質膜の一方が電子を一定方向に伝達可能なレドックス
蛋白質であるチトクロームCまたはポルフィリン環を有
する分子で構成された単分子膜もしくは単分子累積膜で
あり,他方が3,10−ジノニル,7,8−ジメチルイソアロキ
サジン,(7,8−ジノニル,3,10−ジノニルイソアロキサ
ジン−8α−イル)チオコハク酸または(7,8−ジノニ
ル,3,10−ジノニルイソアロキサジン−8α−イル)チ
オ酢酸等イソアロキサジン環を有する分子で構成された
単分子膜もしくは単分子累積膜であり,上記酸化還元物
質のレドックス電位の差異を利用して整流特性を発生さ
せるようにしたので,整流素子サイズを分子レベルの超
微細な大きさに近づけることができ,この素子を用いて
集積回路の高密度化が可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例による整流素子を模式的に
示す断面構成図,第2図はこの発明の他の実施例による
整流素子を模式的に示す断面構成図,第3図は上記整流
素子の電圧−電流特性を示す図,第4図は(a)はA−
B型酸化還元物質複合体を示す模式図,第4図(b)は
そのレドックス電位状態を示す説明図,第5図は金電極
上にRuHPとDNIを累積した電極のサイクリックボルタモ
グラムの第1,第2サイクルを示す説明図,第6図は従来
のMOS構成の整流素子の一例を示す断面構成図である。 図において,(1)は基板,(2a),(2b)は電極,
(3)は第1酸化還元物質膜,(4)は第2酸化還元物
質膜,(5)はイソアロキサジン環,(6)は疎水性の
メチレン鎖,(7)はポルフィリン環である。 なお,各図中同一符号は同一または相当部分を示すもの
とする。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前田 満雄 兵庫県尼崎市塚口本町8丁目1番1号 三菱電機株式会社中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−237563(JP,A) 特開 昭63−19866(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01L 29/861 H01L 51/30 CA(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第1の酸化還元物質で作成された第1酸化
    還元物質膜と、上記第1酸化還元物質のレドックス電位
    と異なるレドックス電位を有する第2の酸化還元物質で
    作成され、上記第1酸化還元物質膜上に累積して接着接
    合された第2の酸化還元物質膜と、上記第1、第2酸化
    還元物質膜にそれぞれ電気的に接続された第1、第2の
    電極とを備え、上記第1、第2酸化還元物質の一方が電
    子を一定方向に伝達可能なレドックス蛋白質であるチト
    クロームCまたはポルフィリン環を有する分子により構
    成された単分子膜もしくは単分子累積膜であり、他方が
    イソアロキサジン環を有する分子により構成された単分
    子膜もしくは単分子累積膜であり、上記酸化還元物質の
    レドックス電位の差異を利用して整流作用を発生させる
    ようにした整流素子において、上記イソアロキサジン環
    を有する分子が、3,10−ジノニル,7,8−ジメチルイソア
    ロキサジン、(7,8−ジノニル,3,10−ジノニルイソアロ
    キサジン−8α−イル)チオコハク酸または(7,8−ジ
    ノニル,3,10−ジノニルイソアロキサジン−8α−イ
    ル)チオ酢酸であることを特徴とする整流素子。
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