JP2796835B2 - ヒトカルパスタチン様ポリペプチド - Google Patents

ヒトカルパスタチン様ポリペプチド

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、生体内で種々の生理活性を有するヒトカル
パインの活性を阻害する新規なポリペプチドに関する。
〔従来の技術〕
カルパスタチンは、カルシウム依存性のシステインプ
ロテァーゼとして知られているカルパインを特異的に阻
害する細胞内蛋白質である。カルパスタチンは高等動物
の各種の組織に広く分布し、細胞が刺激を受けることに
よって動員され、活性化されたカルパインの作用を調節
していると考えられている。カルパインの生体における
役割としては、プロテインキナーゼC、ホスホリラーゼ
キナーゼBなどのキナーゼ系統酵素の限定分解による活
性化、細胞骨格蛋白質の分解、増殖因子やホルモンのレ
セプターの分解などが知られている。
カルパスタチンは、これらのカルパインの作用を特異
的に阻害することにより、カルパインの過剰反応を調節
している。したがってカルパイン−カルパスタチン系の
バランスの維持は、病態と密接に関連している。
例えば、筋ジストロフィー疾患においては、カルパイ
ンのレベルが高まっており、筋原繊維やニューロフィラ
メントの分解がカルパインによって促進されることが、
発症と密接に関わっていると推定されている。また、成
人型白血病ウイルスに感染した細胞では、カルパイン活
性及びインターロイキン2のレセプター活性が異常に高
まっていることが知られている。これは、カルパインが
細胞骨格蛋白質に作用してレセプター活性を変化させ、
その結果、増殖因子などに対する細胞の異常な反応を生
み出し、病因となることを推定させる〔生化学、第57
巻、第1202頁(1985)〕。更にカルパインは眼水晶体蛋
白質を切断することが知られており、その過剰反応が白
内障に関係していることが示唆される。一方、情報伝達
に必要なステロイド−レセプター複合体の安定化物質
が、カルパスタチンであるという報告〔ジャーナル オ
ブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biolo
gical Chemistry)、第260巻、第2601頁(1985)〕や、
高血圧ラットにおけるカルパスタチンレベルの異常な減
少も報告されている〔バイオケミカル アンド バイオ
フィジカル リサーチ コミュニケーションズ(Bioche
mical and Biopysical Research Communications)、第
145巻、第1287頁(1987)〕。
このようにカルパスタチンは、カルパインの作用を調
節する内在性の蛋白質インヒビターとして、カルパイン
の過剰作用が原因と考えられる種々の疾患に対して有効
な治療剤となることが期待される。
〔発明が解決しようとする課題〕
カルパスタチンは高等動物の各種組織に広く分布し、
ブタ赤血球や心筋、ウサギ骨格筋及びヒト赤血球などか
らの精製が報告されている〔ザ バイオケミカル ジャ
ーナル(The Biochemical Journal)、第235巻、第97頁
(1986)、ジャーナル オブ バイオケミストリー(Jo
urnal of Biochemistry)、第95巻、第1661頁(198
4)、ジャーナル オブ バイオケミストリー、第92
巻、第2021頁(1982)〕。更に、ブタ及びウサギのカル
パスタチンのcDNAクローニングにより、アミノ酸の一次
構造が解明された〔バイオケミストリー(Biochemistr
y)、第27巻、第964頁(1988)、プロシーディングズ
オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシ
ーズ オブ ザ USA(Proceedings of the National A
cademy of sciences,USA)、第84巻、第3590頁(198
7)〕。その結果、カルパスタチンの基本構造は共通で
あり、約140アミノ酸残基からなる4つの繰り返し機能
単位(ドメイン1−4)とN末側の非相同性の配列(ド
メインL)よりなることがわかった〔フエブス レター
ズ(FEBS Letters)、第223巻、第174頁(1987)〕。
ヒトカルパスタチンの一次構造に関しては、まず本発
明者らがドメイン1−4の配列を明らかにし〔特願昭63
−109111号〕、次いで全配列を解明した〔特願昭63−20
7283号〕。本発明の目的は、ヒトカルパスタチンの活性
を有し、種々の応用に至便な鎖長の短いポリペプチドを
提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、下記式
Iで表されるポリペプチドを有効成分として使用するこ
とを特徴とするカルパイン阻害方法に関する。
〔式中Xは下記式: で表される配列又はそのN末端からアミノ酸若しくはペ
プチドが欠失した配列を示し、Yは下記式: で表される配列又はそのC末端からアミノ酸若しくはペ
プチドが欠失した配列を示す〕 また、本発明の第2の発明は、上記第1の発明におけ
る式Iで表されるポリペプチドを有効成分として含有す
ることを特徴とするカルパイン阻害用試薬に関する。
本発明者らはペプチド合成法によりヒトカルパスタチ
ンドメイン内の18アミノ酸よりなるポリペプチド〔前記
式Iに示されるX及びYが欠失した18アミノ酸ポリペプ
チド:以下18アミノ酸ポリペプチドと略す〕、21アミノ
酸よりなるポリペプチド〔前記式Iで表されるポリペプ
チドで、式中、Xが欠失し、Y=Glu−Leu−Leuである
ようなポリペプチド:以下21アミノ酸ポリペプチドと略
す〕及び26アミノ酸よりなるポリペプチド〔前記式Iで
表されるポリペプチドで、式中、X=Asp−Pro−Met−S
er−SerかつY=Glu−Leu−Leuであるようなポリペプチ
ド:以下26アミノ酸ポリペプチドと略す〕を合成しカル
パイン阻害活性を有することを見出し、この知見に基づ
いて本発明を完成させた。以下本発明を具体的に説明す
る。
ヒトカルパスタチンはそのcDNAクローニングによりア
ミノ酸の一次構造が明らかにされ、約140アミノ酸残基
によりなる4つの繰り返し機能単位(ドメイン1−4)
とN末側に非相同性の配列(ドメインL)を有すること
が見出されている〔特願昭63−207283号〕。ドメイン1
−4は各ドメイン単独でカルパスタチンの活性を有して
いるが、このうちドメイン1が最も強い活性を有してい
るので、このドメインについて更に詳細な解析を行っ
た。その結果、ドメイン1は前記18アミノ酸ポリペプチ
ドまで短縮しても活性を示すことを見出した。
そこでこの18アミノ酸ポリペプチド、21アミノ酸ポリ
ペプチド、及び26アミノ酸ポリペプチドを実際に化学合
成し、そのカルパイン阻害活性を調べた。ポリペプチド
の化学合成はFmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニ
ルポリアミド)合成法に従って行った〔ザ ジャーナル
オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of
Organic Chemistry)、第37巻、第3404頁(1972)、ジ
ャーナル オブ ザ ケミカル ソサエティー、ケミカ
ル コミュニケーションズ(Journal of the Chemical
Society、Chemical Communications)、第13巻、第537
頁(1978)、インターナショナル ジャーナル オブ
ペプチド アンド プロティン リサーチ(Internatio
nal Journal of Peptide and Protein Research)、第1
3巻、第35頁(1979)〕。合成されたポリペプチドは確
かにカルパインの阻害活性を有しており、18アミノ酸ポ
リペプチドだけでカルパスタチン様活性を示すことが明
らかになった。また、21アミノ酸ポリペプチド及び26ア
ミノ酸ポリペプチドでもカルパスタチン様活性を示すこ
とが明らかになった。以上述べてきたごとく、本発明に
より、ヒトカルパスタチン様活性を示す新規な18アミノ
酸ポリペプチド、21アミノ酸ポリペプチド及び26アミノ
酸ポリペプチドを提供することが可能となった。
〔実施例〕
次に本発明の実施例を示すが、これは本発明を限定す
るものではない。
なおButはt−ブチルを、PFPはペンタフルオロフエニ
ルを、DHBTは1−オキソ−2−ヒドロキシジヒドロベン
ゾトリアジンを、Mtrは4−メトキシ−2,3,6−トリメチ
ルフエニルスルホニルを、Bocはt−ブチルオキシカル
ボニルを示す。
(樹脂) ペプシンKA〔ミリゲン(MilliGen)社製〕 1. 18アミノ酸ポリペプチドのC末端のアミノ酸である
Fmoc−Leu−OHの樹脂及び21アミノ酸ポリペプチドと26
アミノ酸ポリペプチドのC末端のアミノ酸であるFmoc−
Leu−OHの樹脂への結合及びペプチド鎖の延長 (1) 〔Fmoc−Arg(Mtr)〕2O無水物及び(Fmoc−Le
u)2O無水物の合成 730mgのFmoc−Arg(Mtr)−OHを塩化メチレン5mlに溶
解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド110mgを添加
し、氷浴中40分間かくはん後、ジシクロヘキシル尿素を
ろ過により除いてろ液を減圧下で、蒸発乾固した。420m
gのFmoc−Leu−OHについても同様に処理した。
(2) 〔Fmoc−Arg(Mtr)〕2O及び(Fmoc−Leu)2O
と樹脂(ペプシンKA)の結合 〔Fmoc−Arg(Mtr)〕2O無水物720mgを樹脂が湿る程
度のジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、4−ジメ
チルアミノピリジン11mgの存在下、樹脂1gと約2時間反
応させた。反応終了後DMF 10ml、次いで塩化メチレン10
mlで洗浄し乾燥させて、アミノ酸分析にて導入率を確認
した。
(Fmoc−Leu)2O無水物410mgについても同様に処理し
た。
(3) ペプチド鎖の延長 次に生成したFmoc−Arg(Mtr)−ペプシンKA樹脂をペ
プチドシンセサイザー用カラム(ミリゲン社製)に充て
んし、ペプチドシンセサイザー(ミリゲン社製)を用い
て18アミノ酸ポリペプチドのC末端側から順番にFmoc−
Tyr(But)−PEP、Fmoc−Lys(Boc)−PFP、以下18番目
のFmoc−Thr(But)−DHBTまでを加えて結合させ、18ア
ミノ酸ポリペプチドを合成した。また、Fmoc−Leu−ペ
プシンKA樹脂については、21アミノ酸ポリペプチド及び
26アミノ酸ポリペプチドのC末端側から順番にFmoc−Le
u−PFP、Fmoc−Glu(But)−PFP、以下21番目のFmoc−T
hr(But)−DHBTまでを加えて結合させ、21アミノ酸ポ
リペプチドを、26番目のFmoc−Asp(OBut)−PFPまでを
加えて結合させ、26アミノ酸ポリペプチドを合成した。
合成終了後、ペプチドの結合した樹脂を塩化メチレン10
ml(4回)、t−アミルアルコール10ml(2回)、酢酸
10ml(2回)、ジエチルエーテル10ml(4回)で洗浄し
た。
2. 樹脂並びに保護基の除去 合成完了済みの樹脂に20%ピペリジンDMFを加え1時
間放置後、DMF10ml、次いで塩化メチレン10mlで洗浄し
乾燥した。それにトリフルオロ酢酸(TFA):エタンジ
チオール:チオアニソール=90:5:5の混合液10mlを加
え、3時間放置した。次にTFA濃度が5%になるように
水を加えてから、ヘキサン10ml、次いでエーテル10mlで
洗浄した。洗浄後、水をエバポレーターで除去し1N酢酸
1mlに溶かし、一部を高速液体クロマトグラフィー(カ
ラム:YMC−ODS5C18、移動相:0.05%TFA/H2O−0.05%TFA
/アセトニトリル)を行い、溶出された各ピークフラク
ションすべてについてアミノ酸分析で調べた。アミノ酸
組成が合うフラクションを分取し、保護基の遊離の確認
のため高速原子衝撃マススペクトルで分子量を調べた。
その結果、18アミノ酸ポリペプチドが32mg、21アミノ酸
ポリペプチドが40mg、26アミノ酸ポリペプチドが50mg得
られた。
実施例1 合成したポリペプチドのカルパイン阻害活性
の検出 カルパインの阻害活性は、以下の方法に従って行った
〔ジャーナル オブ バイオケミストリー、第95巻、第
1759頁(1984)〕。
サンプル10μ、1mg/mlカルパイン溶液2.5μ、2
%カゼイン/イミダゾール溶液40μ、6mg/mlシスティ
ン溶液20μと水とを混合し、全量で180μとした。
次に30℃で5分間予熱した後、50mM塩化カルシウム溶液
を20μ加えて、30℃で15分間インキュベートした。そ
の後5%トリクロロ酢酸を200μ加えて反応を停止
し、12000rpmで10分間遠心し、上清を回収した。その上
清の280nmの吸光度を測定して、これよりカルパイン阻
害活性を算出した。
その結果、表1に示したように実施例1で合成したポ
リペプチドは確かに、カルパインの阻害活性を有してお
り、18アミノ酸ポリペプチド、21アミノ酸ポリペプチド
及び26アミノ酸ポリペプチドはカルパスタチン様活性を
示すことが明らかになった。
参考例1 18アミノ酸ポリペプチドのN末端よりアミノ
酸若しくはペプチドが欠失したポリペプチドのカルパイ
ン阻害活性の検出 (1) N末端欠失ポリペプチドの合成 前記実施例1に示す手段でFmoc−Arg(Mtr)−ペプシ
ンKA樹脂に、18アミノ酸ポリペプチドのC末端側から順
番にFmoc−Try(But)−PFP、Fmoc−Lys(Boc)−PFP以
下、11番目のFmoc−Lys(Boc)−PFPまでを結合させ、
合成したポリペプチド、12番目のFmoc−Gly−PFPまでを
結合させ、合成したポリペプチド、13番目のFmoc−Leu
−PFPまでを結合させ、合成したポリペプチド、14番目
のFmoc−Glu(But)−PFPまでを結合させ、合成したポ
リペプチド、15番目のFmoc−Glu(But)−PFPまでを結
合させ、合成したポリペプチド、16番目のFmoc−Ile−P
FPまでを結合させ、合成したポリペプチド、及び17番目
のFmoc−Tyr(But)−PFPまでを結合させ、合成したポ
リペプチドを得た。
(2) カルパイン阻害活性の検出 これらの合成ポリペプチドを用いて、前記実施例2に
示す手段でカルパイン阻害活性を検出した。その結果、
これらN末端欠失ポリペプチドのカルパイン阻害活性は
皆無若しくは極めて微弱でその活性の強さが測定できな
い程であることが明らかになった。
〔発明の効果〕
以上の結果から、本発明により新規なヒトカルパスタ
チン様活性を示す18アミノ酸ポリペプチド及びそのN末
端、C末端を延長したポリペプチドが提供された。この
新規18アミノ酸ポリペプチド及びそのN末端、C末端を
延長したポリペプチドは、カルパインの過剰作用が原因
と考えられる種々の疾患に対しての効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒 造株式会社中央研究所内 (56)参考文献 Proc.Natl.Acad.Sc i.USA,(1987),Vol.84, P.3590−3594 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07K 14/47 C07K 14/81 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式Iで表されるポリペプチドを有効成
    分として使用することを特徴とするカルパイン阻害方
    法。 〔式中Xは下記式: で表される配列又はそのN末端からアミノ酸若しくはペ
    プチドが欠失した配列を示し、Yは下記式: で表される配列又はそのC末端からアミノ酸若しくはペ
    プチドが欠失した配列を示す〕
  2. 【請求項2】請求項1に記載の式Iで表されるポリペプ
    チドを有効成分として含有することを特徴とするカルパ
    イン阻害用試薬。
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DE1990624400 DE69024400T2 (de) 1989-04-28 1990-04-20 Dem menschlichen Calpastatin ähnliches Polypeptid
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