JP2792838B2 - ディジタル化音声周波数信号の再生方法 - Google Patents

ディジタル化音声周波数信号の再生方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、CDやDATな
どディジタル信号として記録された音声周波数信号(以
下、音楽やその他の音響的信号を含む)の再生方法にお
いて、従来の再生方法ではカットされていた標本化周波
数(SF)の1/2から標本化周波数(SF)までの成
分を、通常の再生信号と合わせて再生することにより、
周波数帯域を制限しない本来の音楽と同様の、より豊か
な・潤いのある音楽となるような聴覚的な効果を聴く人
に提供する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】古くエヂソンが蝋管式の蓄音機を発明し
てから、音声、音楽などの音響信号を記録再生すること
が可能になった。記録の媒体は円盤のSPレコード、ド
ーナツ盤、LPレコードから、磁気テープと変遷を遂げ
たが、これらは波形信号をアナログの状態で記録再生す
る方式である。
【0003】しかし、最近ではディジタル記録再生方式
のCDが普及し、実質的にLPレコードの生産は行われ
ないまでになった。ディジタル記録再生方式は、CDだ
けでなくMDやCD- ROM、DATなどで広く一般に
使われるようになった。
【0004】また、衛星放送やその他の伝送方式でもデ
ィジタル信号による伝送が多くなりつつある。CDでの
再生音は通常のLPの再生音に比し、雑音が少なく、レ
コードプレーヤーの回転に起因するワウもない。比較的
に廉価なCDプレーヤーによっても、広い周波数特性と
クリヤーな音質が得られる。CDの取り扱いと音質の良
さがこの普及の一因とも言える。
【0005】ところで、CDによる音楽については、L
Pとの比較で最近論争が起きている。それはCDによる
再生音はLPの再生音より、豊かさやうるおいに欠け、
音楽性において劣るのではないかと言うものである。C
Dでは、20kHzまでの周波数特性が保証され、16
ビットの量子化レベルにより90dB以上のダイナミッ
クレンジが再現されている。この20kHzという周波
数は、人間の可聴周波数の上限である。
【0006】一方、LPレコードの製作は歴史が長く、
広い周波数特性とSN比の確保には大きな努力が払われ
てきた。マスターテープの録音もアナログからディジタ
ル方式になったが、50kHz以上の周波数の信号が録
音され、注意深く作成されたLPレコードでは、100
kHz程度までの信号が記録されている。再生系でも、
高級なレコードプレーヤーとカートリッジによれば、録
音された信号をひずみなく取り出すことができるし、ス
ピーカーシステムの周波数特性もこれをカバーするもの
がある。
【0007】一方、CDでは標本化周波数が44.1k
Hzであることから、標本化定理によりその半分の周波
数成分までしかひずみなく記録再生できない。A/D変
換に際しては、標本化による折り返しひずみが生じない
ように、あらかじめ20kHzに帯域制限してから、デ
ィジタル信号に変換している。D/A変換後は同じ目的
で、20kHzの低域フィルター(LPF)で高い周波
数成分をカットし、平滑してアナログ波形信号を得てい
る。ただ、人の可聴周波数の上限が20kHzであるこ
とを考慮すると、CDの周波数特性は十分な筈である。
【0008】上記LPとCDの再生音の差については、
大橋明、仁科エミ、不破本義孝の論文「LPとCDの音
質の違いについて- 生理学的・感性学的検討,」電子情
報通信学会技術報告HC94-18 (1994年6月)などで報
告されている。この論文によると、広帯域のLPの音
も、22kHzに帯域制限すると、CDと同様の傾向で
聴取される。一方、LPに豊富に含まれる可聴周波数帯
域を越える高周波成分が、脳波のα波を増加させ、人間
の感性的・生理的反応を強くしていると結論づけてい
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前述の如く、CDによ
る再生音はLPの再生音より、豊かさや潤いに欠け、音
楽性において劣るのではないかと言われており、このL
PとCDの再生音の差については、LPに豊富に含まれ
る可聴周波数帯域を越える高周波成分が、人間の感性的
・生理的反応を促進し、音楽に豊かさや潤いを与えてい
ると言われている。
【0010】この発明は上記のような問題点を解決する
ためになされたもので、例えば、CDの20kHz以下
の再生信号とともに、この信号と関係の深い20kHz
以上の信号を同時に提示することにより、広帯域のLP
の再生音と同様の豊かな・潤いのある音として聴くこと
ができるディジタル音声周波数信号の再生方法を提供す
ることを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明に係わるディジ
タル化音声周波数信号の再生方法は、CD、DATなど
の標本化してディジタル信号として記録された音声周波
数信号、あるいはディジタル化して伝送された音声周波
数信号の再生方法において、標本化された前記信号をD
/A変換した後に標本化周波数(SF)の1/2以下の
遮断周波数の低域濾波器(LPF)により平滑したアナ
ログ波形信号(A)と、標本化された前記信号を標本化
周波数(SF)の1/2から標本化周波数(SF)まで
の通過帯域をもつ帯域濾波器(BPF)を通じて得たア
ナログ波形信号(B)を合わせて再生することにより、
より豊かさや潤いのある音声周波数信号を再生するディ
ジタル化音声周波数信号の再生方法である。
【0012】CD、DATなどの標本化してディジタル
信号として記録された音声周波数信号、あるいはディジ
タル化して伝送された音声周波数信号の再生方法は、通
常原音をディジタル化する場合、先ず、原音を遮断周波
数が標本化周波数の1/2以下の低域濾波器(LPF)
を通して後、標本化信号(SF)で標本化する。例え
ば、音楽CDの場合、標本化周波数は44.1kHzで
あって、上記LPFの遮断周波数は20kHzである。
【0013】従って、原音をA/D変換したディジタル
信号には、原音の20kHz以上の成分は含まれていな
い。しかし、上記A/D変換したディジタル信号には図
1(c)に示されるように、標本化の時に原音の0〜2
0kHzのスペクトラムを折り返したようなスペクトラ
ムが標本化周波数毎に無限に生じる。通常のCD再生は
上記標本化された信号をD/A変換後、遮断周波数が標
本化周波数の1/2以下の低域濾波器(LPF)により
に平滑したアナログ信号のみを再生音として用いてい
る。従って、最終的には信号は原音の0〜20kHzの
みを再生したものとなる。
【0014】この発明はこの通常再生される0〜20k
Hzの信号に、新たに上記標本化の時生じる原音の0〜
20kHzのスペクトラムを折り返したようなスペクト
ラムの内、標本化周波数(SF)の1/2から標本化周
波数(SF)までの通過帯域に生じるスペクトラムをD
/A変換したものを付加して擬似的に原音スペクトラム
に近いものを出力したものである。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の原理と方法を図を用いて
説明する。図1,図2は、本発明のディジタル化音声周
波数信号の再生方法に関する処理過程の周波数スペクト
ルである。図3は本発明のディジタル化音声周波数信号
の再生方法の第1の実施例である。
【0016】図1(a)の1はオーケストラなどの音楽
の楽音の周波数スペクトルの概形を示す。可聴周波数帯
域である20Hzから20kHzを越えて、高い周波数
帯域まで信号が存在することが知られている。通常の音
声は60Hzから10kHz程度の周波数帯域を占める
が、ここでは、楽音、騒音、機械音などすべてを総称し
て音声周波数信号と呼ぶこととする。図1(b)の2は
上記1の音声周波数信号の周波数帯域を、最高周波数2
0kHzに低域フィルタ(LPF)で制限したときの周
波数スペクトルである。この最高周波数(20kHz)
は人間の可聴周波数の上限に対応する。したがって、C
Dや衛星放送など、音声周波数信号をディジタル化して
記録、あるいは伝送するシステムでは最高可聴周波数ま
でを再生できるように、周波数帯域をこのように制限し
ている。
【0017】図1(c)は上記2の周波数スペクトルを
持つ音声周波数信号を、標本化周波数SFで標本化した
ときのディジタル信号の周波数スペクトルである。ここ
では、標本化周波数はCDで使用される44.1kHz
として図示している。標本化された信号の周波数スペク
トルは、SF/2で対称に折り返し(同図3,4)、S
Fに関しても対称となって、SF間隔で理論上は無限大
までスペクトラムは存在する。
【0018】標本化された信号は、図3に示すようにD
/A変換器でD/A変換するが、その出力のアナログ波
形信号の周波数スペクトルも図1(c)とほぼ同じにな
る。通常はこの信号に対して、SF/2の周波数以下の
信号を取り出せばよい。そのためには図1(d)の5の
ように、所要とする周波数帯域の振幅特性が平坦なLP
Fで、処理(平滑)する。処理後の周波数スペクトルは
図1(e)の6になるが、これはディジタル化する前の
音声周波数信号2と同じである。これを再生信号Aとす
る。ここまでの処理は、通常の標本化された信号をアナ
ログ波形信号に変換する手法と同じである。
【0019】一方、標本化周波数(SF)とその半分の
SF/2の間の周波数帯域を通過帯域とする、帯域フィ
ルタ(BPF)を設け、その特性の例を図2(a)の
「BPF1」(同図の7)とする。前記図1(c)の信
号を該BPF1で処理したとき、その出力の周波数スペ
クトルは図2(b)の9になる。これは図1(b)の2
の音声周波数信号と対称的な周波数スペクトルを持つア
ナログ波形信号である。
【0020】この信号は上記2の音声周波数信号と完全
な相関があり、強度もスペクトルの広がりも上記2の音
声周波数信号に依存するものである。この信号が再生信
号Bである。再生信号Bを専用の増幅器、ツィーターを
使って再生し、前記再生信号Aと合わせると図2(d)
のような音響出力(音場)が得られる。
【0021】通常、ツィーターの20kHzを越える周
波数特性はそれほど良くないことと、このような周波数
領域は人間の可聴領域をはるかに越えているので、図2
(d)の音声周波数信号を再生系に入力してもよいが、
次のように原音のスペクトラムに近付けた方がより好ま
しい。
【0022】すなわち、上記図2(d)の音響出力(音
場)は前記1の周波数スペクトル(原音)と、高い周波
数帯でやや強度が異なる。通常、楽音、音声、自然音な
どは周波数fに反比例して減衰する、いわゆる(1/f)
特性を持つといわれるので、これらを考慮するとBPF
の特性は(1/f2 )特性か、高い周波数で減衰する特性
の方が望ましい。そのために用いられるBPFの例が図
2(a)の「BPF2」(同図の8)である。図1
(c)の信号をBPF2で処理したとき、再生信号Bの
周波数スペクトルは図2(c)の10のようになり、再
生信号Aと合わせた音響出力(音場)は図2(e)のよ
うになる。この周波数スペクトルは前記1の音声信号
(原音)の周波数スペクトルと近似している。周波数帯
域を制限し、ディジタル化した後の図1(e)の周波数
スペクトルの信号に比し、はるかに原音1に近く、音の
豊かさ、臨場感等もより周波数帯域の広い音声と同様に
聴くことができる。
【0023】なお、単独に20kHz以上の信号を提示
しても、人間はこれを知覚することはできない。この聴
覚の性質と上記のような研究結果で明らかなように、C
Dの20kHz以下の再生信号とともに、この信号と関
係の深い20kHz以上の信号を同時に提示すると、広
帯域のLPの再生音と同様の豊かな音として聴くことが
できる。
【0024】また、ツィーターの特性は指向性もあり、
高い周波数では平坦ではない。そして、再生信号Bが可
聴周波数帯でないことから、厳密に原音と近い周波数特
性の再現は必ずしも必要ではない。したがって、BPF
の周波数範囲はSF/2からSFまでとしたが、上限の
周波数はSFより高い任意の周波数まででも差し支えな
い。また、この発明で再生された信号出力は厳密に言う
と、SF/2〜SFまでのBPFの周波数範囲におい
て、原音のスペクトラムとは必ずしも一致しないが、も
ともとこの周波数領域は人間の耳に聞こえない領域であ
り、音の豊かさや潤いは可聴領域と相関のある振幅変動
で十分生じるものと考えられるので、その効果に格別差
異がない。
【0025】この発明の第2の実施例を図4に示すが、
この第2の実施例の方法でも再生信号A、再生信号Bを
得るまでは第1の実施例の方法と同じである。図3の構
成では、音響出力をAとBで別々としたが、ここでは再
生信号Aと再生信号Bを和回路14で加え合わせてから
増幅し、広帯域のスピーカーシステムで再生している。
【0026】この発明は最も多く使用される標本化周波
数が44.1kHzの場合を例にとって説明したが、2
0kHz以上の高い周波数領域を再生するためには、例
えば標本化周波数を100kHz程度に設定し、50k
Hzまでを通常の方式で再生することも可能である。し
かし、標本化周波数を変更することは新たなシステムを
構築することになるので、開発のためのエネルギーを必
要とし、コスト的に高くなってしまう。この発明は既に
確立されているディジタル再生技術を利用し、簡便に豊
かで潤いのある音楽を再生できるものである。
【0027】なお、本発明は、CDの再生を例にして説
明したが、CDと同様に標本化した音声周波数信号の再
生方式として共通である。SF/2が可聴周波数帯より
高い場合は、本発明の方式が適用可能である。MD、D
AT、衛星放送、また将来のディジタル放送などの再生
方式として幅広く応用することかできる。
【0028】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば可聴
周波数帯に制限された標本化音声周波数信号が、可聴周
波数を越えるはるかに高い周波数成分を含む信号として
再生されるため、豊かで臨場感のある音声として聴くこ
とができる。
【0029】この発明は既に確立されているディジタル
再生技術を利用し、簡便に豊かで潤いのある音楽を再生
できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のディジタル化音声周波数信号の再生方
法に関する処理過程の周波数スペクトルを示す図であ
る。
【図2】本発明のディジタル化音声周波数信号の再生方
法に関する処理過程の周波数スペクトルを示す図であ
る。
【図3】本発明のディジタル音声周波数信号の再生方法
のブロック図である。
【図4】本発明のディジタル音声周波数信号の再生方法
のブロック図である。
【符号の説明】
1 音声周波数信号(原音)の周波数スペクト
ル 2 帯域制限された音声周波数信号の周波数ス
ペクトル 3,4 上記2を標本化したときの周波数スペクト
ル 5 低域フィルタの周波数特性 6 上記3,4の信号を上記5のLPFで処理
したときの周波数スペクトル 7,8 帯域フィルタの周波数特性 9 上記3,4の信号を上記7のBPF1で処
理したときの周波数スペクトル 10 3,4の信号を上記8のBPF2で処理し
たときの周波数スペクトル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H03M 1/08 H03M 1/08 B H04R 3/04 H04R 3/04 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H03H 17/02 641 H03H 17/02 601 H03H 17/02 613 G11B 20/10 321 H03H 17/00 613 H03M 1/08 H04R 3/04

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 CD、DATなどの標本化してディジタ
    ル信号として記録された音声周波数信号、あるいはディ
    ジタル化して伝送された音声周波数信号の再生方法にお
    いて、 標本化された前記信号をD/A変換した後に標本化周波
    数(SF)の1/2以下の遮断周波数の低域濾波器(L
    PF)により平滑したアナログ波形信号(A)と、 標本化された前記信号を標本化周波数(SF)の1/2
    から標本化周波数(SF)までの通過帯域をもつ帯域濾
    波器(BPF)を通じて得たアナログ波形信号(B)を
    合わせて再生することにより、より豊かさや潤いのある
    音声周波数信号を再生することを特徴とするディジタル
    化音声周波数信号の再生方法。
  2. 【請求項2】 前記請求項1記載のディジタル化音声周
    波数信号の再生方法において、 前記標本化周波数(SF)の1/2以下の遮断周波数の
    低域濾波器(LPF)により平滑したアナログ波形信号
    (A)を通常の音響再生装置により再生し、 前記標本化周波数(SF)の1/2から標本化周波数
    (SF)までの通過帯域をもつ帯域濾波器(BPF)を
    通じて得たアナログ波形信号(B)を専用のツィーター
    により再生することを特徴とするディジタル化音声周波
    数信号の再生方法。
  3. 【請求項3】 前記請求項1、または2記載のディジタ
    ル化音声周波数信号の再生方法において、 前記標本化周波数(SF)の1/2から標本化周波数
    (SF)までの通過帯域をもつ帯域濾波器(BPF)の
    周波数特性を、該BPFの下限の周波数での出力レベル
    を最大とし、上限の周波数に向かって出力レベルを周波
    数の自乗に反比例して減衰させることによって、原音の
    該周波数帯のスペクトラムに近似させたことを特徴とす
    るディジタル化音声周波数信号の再生方法。
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