JP2785914B2 - 遺伝子導人による再分化個体の早期検出法 - Google Patents

遺伝子導人による再分化個体の早期検出法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、再分化能を有するカルスまたはカルスより
再分化を開始した植物個体を早期に検出して選抜する方
法に関する。
[従来の技術] 植物の品種改良、大量繁殖、有用代謝物質の生産など
を目的として、植物から各種の器官、組織および細胞な
どを取り出し、それらを無菌的に増殖・育成する培養技
術が、いわゆる植物組織培養として近年広く試みられて
いる。
そして、かかる植物組織培養は、通常、植物から特定
の器官、組織、細胞などを外植片として取り出し、それ
を細胞分裂を促す植物ホルモンなどを含む培地で細胞分
裂・増殖させて特定の形態をもたない細胞塊、すなわち
脱分化したカルスを形成させ、このカルスをさらに増殖
させた後、適当な条件下で(例えばホルモンを含まない
培地で)培養することにより不定胚、不定葉、不定根等
の何らかの形態を有する組織、器官への再分化を行わ
せ、次いで完全な植物体に再生することにより行われて
いる。
その場合に、同じ条件下で培養を行っても総てのカル
スが再分化して植物体を再生するわけではなく再分化し
ないものも多い。そのため再分化するものと再分化しな
いものを選別する必要があり、従来は再分化し得るカル
スまたはカルスから既に再分化した個体を選抜する方法
として、 (1) 多数のカルスをそのまま培養し肉眼や顕微鏡等
で観察して不定胚、不定葉、不定根等の再分化形態を有
することが明らかな個体を選抜する方法、 (2) 再分化能のあるカルスまたは既に再分化した個
体の細胞内に選択的に高濃度で取り込まれることが知ら
れている成分の濃度を測定して再分化能の有無を調べ選
抜する方法(例えばニンジンの懸濁培養では不定胚形成
能のある個体の細胞内にグルコースが選択的に高濃度で
取り込まれることが知られており、かかる選択特性が選
抜に利用されている)、および (3) 再分化能のあるカルスまたは既に再分化した個
体の細胞内で選択的に高濃度で生産されることが知られ
ている物質の量を測定して再分化能の有無を調べ選抜す
る方法(例えばニンジンの懸濁培養では不定胚形成能の
ある個体の細胞内に殿粉が選択的に高濃度で蓄積される
ことが知られておりかかる特性が選抜に利用されてい
る) などが知られている。
しかしながら、上記(1)の方法は、分化能の有無に
拘らず多数のカルスをそのまま培養しなければならず、
手間や日数、多数の培養器や設備等を要し効率のよい方
法ではなかった。また、上記(2)および(3)の方法
は再分化能の有無の目安となる特定物質の検出や測定に
NMR等の高精度分析機器や設備が必要であり、しかも測
定に手間がかかり、場合によってはかかる測定によって
カルスが損傷されることも多く望ましい方法ではなかっ
た。
[発明の内容] 本発明者等は、再分化能を有するカルスまたはカルス
からの再分化を開始した植物個体を早期にかつ簡単に検
出し選別し得る方法を求めて研究を続けてきた。その結
果、再分化しない個体では発現せず再分化能を有するカ
ルスやカルスからの再分化を開始した個体においてのみ
発現する遺伝子が存在すること、そしてかかる特性を有
する遺伝子をマーカー遺伝子として使用すると再分化能
を有するカルスやカルスからの再分化を開始した個体を
極めて簡単に効率よく検出し選別することができるとい
うことを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、再分化能を有するカルスまたは
カルスからの再分化を開始した個体において発現するマ
ーカー遺伝子を植物個体の組織に導入してカルスを形成
させ、形成されたカルスにおける該マーカー遺伝子の発
現を検出することによって再分化能を有するカルスまた
はカルスより再分化を開始した植物個体を早期に選抜す
る方法であって、前記マーカー遺伝子が土壌細菌アグロ
バクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogene
s)がもつRi−プラスミドのOpen Reading Frame 12(OR
F12)遺伝子のプロモータ領域をプロモータとしてもつ
マーカー遺伝子であることを特徴とする上記方法であ
る。
本発明におけるマーカー遺伝子を導入する植物組織と
は、植物体自身、植物体を構成する各種器官、それらの
一部および遊離の植物細胞を包含し、カルスを形成し得
るものをいう。本発明で使用できる植物組織としては、
例えば茎頂(植物の芽の先端の生長点)、花粉の入った
葯、花粉、根、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、遊離し
た細胞(特に細胞の周囲を覆う細胞壁を取り除いた裸の
細胞であるプロトプラスト)等を挙げることができ、よ
り具体的には人参の茎やそのプロトプラスト;タバコの
葉の切片やそのプロトプラスト;イネ、コムギ、トウモ
ロコシ、オオムギ等の穀類の種子やそのプロトプラス
ト;果樹(ナシ、リンゴ、カンキツ類、ブドウ、ブルー
ベリー等多数)、花卉(カーネーション、クレマチス、
バラ、ゼラニウム、ポインセチア、ベゴニヤ等極めて多
数)、観葉植物(ベンジャミーナ、ゴムノキ等多数)、
野菜(イチゴ、トマト、ワサビ、ナガイモ、オニユリ、
ニンニク、サトイモ、フキ、サツマイモ、ジャガイモ等
多数)、樹木(ユーカリ、ポプラ、スギ、シラカバ
等)、薬用植物(センキュウ、カラスビシャク、アカヤ
ジオウ、オケラ、ダイオウ、センブリ等多数)、プラン
テーション作物(バナナ、パイナップル、アサ、サトウ
キビ、綿花等)等の茎頂やそのプロトプラスト等を挙げ
ることができ、かかる植物組織の入手および調製は、植
物組織培養で採用されている通常の方法によって行えば
よい。
そして、本発明では植物組織中へのマーカー遺伝子の
導入をカルス形成前に行うが、マーカー遺伝子の導入
は、通常、植物から取り出された植物組織片またはそこ
から分離したプロトプラストに対して行われ、導入され
たマーカー遺伝子は植物組織の細胞中、特にその染色体
に取り込まれる。
マーカー遺伝子の発現は、マーカー遺伝子の上流側に
存在するプロモータ領域等により司られているが、再分
化能を有するカルスまたはカルスからの再分化を開始し
た個体でのマーカー遺伝子のかかる選択的な発現は、こ
のプロモータ領域に起因する場合(すなわちプロモータ
領域が再分化能を有する個体または既に再分化した個体
においてのみ特異的にそのプロモート作用を示す場合)
とマーカー遺伝子自身による場合(すなわちプロモータ
領域は再分化の有無に拘らずそのプロモート作用を有し
マーカー遺伝子が再分化能のあるカルスまたはカルスか
らの再分化を開始した個体でのみ発現する場合)とがあ
る。
マーカー遺伝子としては、その発現が、例えば蛍光の
発生、特定の色素の形成、特定の細菌に対する抗菌性、
特定の薬剤に対する薬剤耐性、特定の植物ホルモンに対
する特異な感受性、本来の植物が有しない形態的特性等
として顕れるものが採用でき、特にその発現が簡単に検
出できかつ再分化個体を阻害しないものであるのが好ま
しい。
プロモータ領域を結合したマーカー遺伝子の例として
は、土壌細菌アグロバクテリウム−リゾゲネス(Agroba
cterium rhizogenes)のRi−プラスミドのOpen Reading
Frame 12(ORF12)遺伝子のプロモータ領域を大腸菌の
持つβ−グルクロニダーゼ(β−glucronidase;以下「G
US」という)遺伝子に結合したキメラ遺伝子と、ノパリ
ン合成酵素のプロモータ領域にNPT II(カナマイシン耐
性遺伝子)を結合したキメラ遺伝子を直結したもの等を
挙げることができ、前記アグロバクテリウム−リゾゲネ
スのRi−プラスミドのORF12遺伝子のプロモータ領域は
再分化能を有するカルスまたはカルスからの再分化を開
始した個体においてのみ特異的にそのプロモート作用を
示すことが実験的に確認されている。そして、マーカー
遺伝子を組み込んだキメラ遺伝子の作成はキメラ遺伝子
を植物組織の細胞およびプロトプラストに導入する既知
の方法のいずれもが採用できる。例えば、キメラ遺伝子
の細胞内への導入は、キメラ遺伝子自体を植物細胞内に
直接導入する方法、自己複製能力のあるプラスミドやフ
ァージDNAを改良して得られるベクターにキメラ遺伝子
を挿入し、該ベクターを植物組織の細胞またはプロトプ
ラスト内に直接導入する方法、該ベクターを植物に対す
る感染能力の高い細菌に導入し植物個体をその細菌に感
染させる方法等により行うことができる。
キメラ遺伝子自体またはキメラ遺伝子を挿入したベク
ターを植物細胞内に導入する方法には、電気刺激により
導入する方法(エレクトロポレーション法)、マイクロ
インジェクション法、ポリエチレングリコール法、直接
塗布法が含まれる。また、キメラ遺伝子を挿入したベク
ターを植物に対する感染能力の高い細胞に導入し植物個
体をその細菌に感染させる際の細菌としては、グラム陰
性土壌細菌の一種であるアグロバクテリウム・チュメフ
ァシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アグロバ
クテリウム・ライゾジェネス(Agrobacterium rhizogen
es)、各種ウイルス等が挙げられる。特にアグロバクテ
リウム・チュメファシエンスは上記のマーカー遺伝子を
植物細胞内に導入するのに適した細菌であり、これはア
グロバクテリウム・チュメファシエンスが極めて有効な
ベクターとしてのTi−プラスミドを有し、このプラスミ
ドの一部のT−DNA領域を植物細胞の染色体DNAに導入し
て形質転換細胞とすることができることによる。
この際に、分化能のあることまたは分化したことを示
す上記マーカー遺伝子とともに他の特性(例えば特定の
細菌に対する抗菌性、特定の有効成分を形成し得る特
性、特定の薬剤に対する耐性、特定の植物ホルモンに対
する感受性、本来の植物と異なる形態的特性等)を発現
する遺伝子を同時にキメラ遺伝子またはベクターに組み
込んでおくと、それらの特性を共に発現した分化個体を
得ることができる。
本発明では、上記のようにしてマーカー遺伝子を導入
した植物組織からカルスを形成させ、形成したカルスを
更に増殖培養させる。カルスの形成およびその増殖は、
通常知られているいずれの方法によっても行うことがで
き、例えば無機要素、ビタミン、炭素源、エネルギー源
としての糖類、植物生長調節物質(オーキシン、サイト
カイニン等の植物ホルモン)等を加えて滅菌した培地で
無菌的に採取した植物組織またはプロトプラストを培養
して無定形に増殖する脱分化したカルスを形成させ(以
下「カルス誘導」という)、該形成されたカルスをオー
キシン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しか
えて更に増殖(継代培養)させる。この場合にカルス誘
導および継代培養にはオーキシンやサイトカイニン等の
植物生長調節物質が不可欠である。また、カルス誘導を
寒天等からなる固体培地で行い継代培養を液体培養で行
うとその各々が良好に行われる。
次に、上記の継代培養により増殖したカルスを適当な
条件下で培養することにより器官の再分化を誘導し(以
下「形態形成」という)、最終的には完全な植物体を再
生する。かかる形態形成は培地におけるオーキシンやサ
イトカイニン等の植物生長調節物質、炭素源等の各種成
分の種類や量、光、温度等を適切に設定することにより
行うことができ、かかる再分化により通常、不定胚、不
定根、不定芽、不定茎葉等が形成され、更に完全な植物
体へと生長する。本発明では形態形成培養を既知のいず
れの方法によっても行うことができる。
本発明において、再分化能のあるカルスまたはカルス
からの再分化を開始した植物個体の検出および選抜は、
上記の継代培養したカルスにおけるマーカー遺伝子の発
現状態を調べることにより、および/またはカルスから
の再分化開始初期の植物個体におけるマーカー遺伝子の
発現を調べることにより行う。マーカー遺伝子の発現の
検出および選抜は植物細胞内に導入したマーカー遺伝子
の発現内容に応じて行えばよく、例えばマーカー遺伝子
が特定の色素または蛍光を生じさせるものである場合に
はその色素または蛍光の有無や強弱を検査して選抜する
ことにより、またマーカー遺伝子が特定の細菌に対する
抗菌性や特定の薬剤に対する耐性を付与するものである
場合には継代培養した植物個体または形態形成初期の植
物個体を該細菌または薬剤にさらして細菌または薬剤に
侵されずに生存しているものを集めることにより行う。
そして、本発明によって選抜された再分化能を有する
カルスおよびカルスからの再分化を開始した植物個体
は、植物組織培養において通常採用されている方法によ
り完全な植物体に育成でき、または完全な植物体になる
前の状態(例えばカプセル化された人工種子、乾燥胚、
凍結乾燥細胞および組織等)で貯蔵、販売等を行うこと
ができる。
[発明の効果] 本発明では再分化能を有するカルスまたはカルスから
の再分化を開始した植物個体において発現するマーカー
遺伝子を植物組織に導入して植物の組織培養を行うこと
によって、培養の初期の段階(すなわち、カルスの段階
やカルスからの再分化の開始初期の段階)で再分化能を
有するカルスおよびカルスからの再分化を開始した植物
個体を検出して選抜でき、そのため多数の培養設備やス
ペースを要することなく植物の組織培養を行うことがで
きる。
また、本発明でマーカー遺伝子として検出の容易なも
のを選択すると、高価な分析機器や装置、手間等を要す
ることなく極めて簡単にかつ効率よく再分化能を有する
カルスまたはカルスからの再分化を開始した個体を早期
に検出して選抜することができる。
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は
それらに限定されない。
実施例 1 土壌細菌アグロバクテリウム−ライゾジェネス(Agro
bacterium rhizogenes)のRi−プラスミドのORF12遺伝
子のプロモータ領域に大腸菌の持つマーカー遺伝子であ
るGUS遺伝子を結合して結合体1を形成した。またカリ
フラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター遺伝子に
大腸菌の持つカナマイシン耐性遺伝子NPT II(ネオマイ
シン・フォスフォ・トランスフェラーゼ)を結合して結
合体2を形成した。上記結合体1の下流に結合体2を結
合してキメラ遺伝子を作成した。このキメラ遺伝子を大
腸菌プラスミドに戻し、トリペアレンタルメイティング
法(Triparental mating method)によりグラム陰性土
壌細菌の一種であるアグロバクテリウム・チュメファシ
エンス(Agrobacterium tumefaciens)に挿入した。
無菌的に栽培した藩種7日目の人参の茎を約1cmに切
断し、これを抗生物質カナマイシンを25μg/mlおよびリ
ファンピシン100μg/mlを含むL−brothで上記アグロバ
クテリウムを培養した液に2分間浸漬させることにより
上記のキメラ遺伝子を挿入したアグロバクテリウム・チ
ュメファシエンスに感染させた。次いで合成オーキシン
である2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(以下「2,4−D」
という)を1mg/mlの割合で含有するMurashige−Skoog培
地(以下「MS培地」という)上で25℃で2日間培養し
た。
これを抗生物質クラフォランを500μg/mlの割合で含
有するMS培地に移し25℃で約1週間培養してアグロバク
テリウム・チュメファシエンスを殺した。更にカナマイ
シンを100μg/mlの割合で含むMS培地で3カ月培養して
上記キメラ遺伝子の導入されたカナマイシン耐性の形質
転換細胞から構成されるカルスを形成した。
このカルスのGUS活性を、下記の方法により測定し
た。
[GUS活性の測定法] リン酸ナトリウムを基にしたLysis bufferに基質meth
yl umbelliferyl glucronide(以下「MUG」という)を
加えたものを準備する。エッペンドルフチューブ内のカ
ルスにLysis bufferを加え、ガラス棒でホモゲナイズす
る。これを遠心した後、上清に、新たにLysis bufferを
加える。さらに上記で作成したMUG入りのLysis buffer
を加え、37℃インキュベーター内に入れた時間を0分と
し、30分後0.2M炭酸ナトリウムを加えることにより反応
をストップさせる。これを蛍光分光光度計にかけて、波
長455nmの吸光度を測定し、あらかじめ作成した検量線
によりGUS活性を測定した。
その結果、上記カルスにおいてはGUS遺伝子に基づく
特性の発現は検出されなかった。
このカルスを平均100μm程度の大きさに分割して植
物ホルモンを含まない液体のMS培地に移し、250℃で3
日間培養したところ3日目に肉眼でやっと観察できる初
期の不定胚が初めて形成され順次かかる不定胚の数が増
加した。その間に形成された初期の不定胚の数を経時的
に数えるとともに上記した方法によりGUS活性を調べた
ところ図のIで示した結果を得た。
また、上記3日間に亘る培養を行った時点で形成され
たGUS活性を示す初期の不定胚をGUS活性を示さない未分
化個体から分離選抜し、これを更にホルモンの入ってい
ないMS培地で25℃で3日間培養して肉眼で容易に観察で
きる不定胚にし、この不定胚をアルギン酸ナトリウムで
被覆して塩化カルシウム水溶液中に1個ごと滴下させた
ところ、低温、無菌状態で保存可能な人参のカプセル化
人工種子を得た。
また、比較のため、上記と同様にして人参の茎から形
成されたGUS遺伝子が導入された形質転換カルスを、上
記と同様に平均約100μmに分割した後、2,4−Dを1mg/
mlの割合で含む液体のMS培地で上記と同様に25℃で培養
したが、12日後でも不定胚の形成がなく、このもののGU
S活性を上記と同様にして経時的に測定したところ図のI
Iで示した結果を得た。
図において縦軸(GUS活性)の1ユニットとは、蛋白1
mg当り1分間で1ピュモルの4−MUを生成する量をい
う。
上記の結果および図に示した結果から、GUS活性は不
定胚形成(再分化)に伴って発現し且つ不定胚形成が進
むにつれて増加すること、したがってマーカー遺伝子GU
Sによって発現されたGUS活性を調べることにより、植物
個体の再分化能の有無または再分化の進行状態を培養の
初期の段階で検出できることがわかる。
実施例 2 無菌的に栽培したタバコの葉から0.5cm四方の切片を
切り出した。
このタバコ葉切片を抗生物質カナマイシン25μg/mlお
よびリファンピシン100μg/mlを含むL−培地でアグロ
バクテリウムを培養した液に2分間浸漬させることによ
り上記実施例1で作成したのと同じキメラ遺伝子を挿入
したアグロバクテリウム・チュメファシエンスを感染さ
せた。
これを2,4−Dを1mg/mlの割合で含有するMS培地上で2
5℃で2日間培養した。
これを抗生物質クラフォランが500μg/mlの割合で含
有されたMS培地に移し25℃で約1週間培養してアグロバ
クテリウム・チュメファシエンスを殺した。更にカナマ
イシンを100mg/mlの割合で含むMS培地で約1カ月培養し
て上記キメラ遺伝子の導入されたカナマイシン耐性の形
質転換細胞から構成されるカルスを形成した。
このカルスを平均100μm程度に分割してサイトカイ
ニンBA(ベンジルアデニン)1ppmを含むMS培地に移し、
25℃で培養したところ第14日目に肉眼でやっと観察でき
る初期の不定芽が初めて形成され順次かかる不定芽の数
が増加した。顕微鏡観察の結果、その間に形成された初
期の不定芽独自の組織のみに青色の染色が認められ、こ
れによりGUSの発現が認められた。
この様に植物に再分化する不定芽の組織でGUS活性が
増加することから、簡便な顕微鏡判定により分化の有無
を検査し選別できることがわかる。
実施例 3 上記実施例1で作成したのと同じキメラ遺伝子を有す
るプラスミドと抗生物質ハイグロマイシン耐性を有する
遺伝子をもつプラスミド(pCH)の両方をエレクトロポ
ーレーション法によりイネのプロトプラストに導入し
た。
これを2,4−Dを1mg/の割合で含有するMS培地上で2
5℃培養した。更にハイグロマイシンを30μg/mlの割合
で含むMS培地で1ヶ月培養して上記キメラ遺伝子の導入
されたハイグロマイシン耐性の形質転換細胞から構成さ
れるカルスを形成した。
このカルスをカナマイシン100μg/mlを含むMS培地に
移し、25℃で培養したところ35日目に肉眼でやっと観察
できる初期の不定芽が初めて形成され順次かかる不定芽
の数が増加した。その間に形成された初期の不定芽の数
を経時的に数えるとともに実施例2の方法によりGUS活
性を調べたところ同じ結果を得た。
【図面の簡単な説明】
図は人参の茎の組織培養における植物個体の分化とマー
カー遺伝子GUSの活性との関係を示す図である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】再分化能を有するカルスまたはカルスから
    の再分化を開始した個体において発現するマーカー遺伝
    子を植物個体の組織に導入してカルスを形成させ、形成
    されたカルスにおける該マーカー遺伝子の発現を検出す
    ることによって再分化能を有するカルスまたはカルスよ
    り再分化を開始した植物個体を早期に選抜する方法であ
    って、前記マーカー遺伝子が土壌細菌アグロバクテリウ
    ム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)がもつRi
    −プラスミドのOpen Reading Frame 12(ORF12)遺伝子
    のプロモータ領域をプロモータとしてもつマーカー遺伝
    子であることを特徴とする上記方法。
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