JP2782885B2 - 繊維強化無機系材料の製造方法 - Google Patents

繊維強化無機系材料の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、繊維強化無機系材料の製造方法に係り、特
に、任意の形状を有しかつ緻密な組織の繊維強化無機系
材料を得る方法に関するものである。
「従来の技術」 高温、高強度、高靭性、耐環境安定性が特に必要とさ
れる技術分野である航空機、ロケット、宇宙、核融合、
エネルギ関連技術分野では、ロケット・ジェット・ラム
ジェットエンジン、超高温耐熱壁用の材料として、超耐
熱材料である繊維強化無機系材料が求められている。
かかる用途を完全に満たす材料を提供することは困難
であるが、一部を満足させる材料として、炭素系繊維の
表面に、耐熱性、耐酸化性母材組織層を付着させた耐熱
性複合材料等が検討されている。
従来、かかる耐熱性複合材料を製造する場合には、複
数の単繊維を集合させて、フィラメントワインディング
(繊維を芯金に巻き付ける方法)、シート積層、多次元
織り等の成形方法により目的とする形状の繊維成形体を
形成しておき、該繊維成形体にCVI法(Chemical Vapor
Infiltration)を用いて気体原料を含浸させつつ熱化学
反応を生じさせることにより、繊維成形体に耐熱性を有
する母材組織層を必要な厚さに形成する方法、あるい
は、繊維成形体に予め母材の液体前駆体(熱分解あるい
は熱化学反応を生じさせることにより母材の固体となり
うるもの)を含浸させておき、これを結合剤として型を
用いて圧縮成形等により成形し、しかる後に加熱して液
体前駆体を母材に転化させる方法等が採用されている。
「発明が解決しようとする課題」 しかしながら、前者の方法であると、フィラメントワ
インディング、シート積層、多次元織り等の成形方法で
は、繊維成形体の形状が限定され、単純な形状のものし
か成形できない。また、多次元織りの成形方法では極め
て工数がかかる。なお、母材組織層を形成した後の複合
材料を機械加工等によって成形するとしても、緻密な母
材組織層により高硬度、高剛性を有するため、実質的に
加工不可能である。
一方、後者の方法では、液体前駆体を転化させてもい
かなる状態で母材質が形成されるか不明で、母材組織の
制御が難しく、特性の優れた複合材料を得ることは困難
である。
本発明は上記事情に鑑みて提案されたもので、緻密な
母材組織層を有し、かつ任意形状の成形を可能にするこ
とを目的とするものである。
「課題を解決するための手段」 上記目的を達成するため、本発明では、複数の単繊維
を集合させた状態の繊維成形体に液体前駆体を含浸させ
て予備成形体を形成する工程と、該予備成形体を型によ
り成形する工程と、成形後の予備成形体を型から外して
加熱することにより液体前駆体を母材質に転化させて、
予備成形体の空隙の一部を残して前記単繊維の表面に第
1の母材組織層を付着した多孔質の中間成形体を形成す
る工程と、該中間成形体の第1の母材組織層の空隙内に
気体原料を含浸させつつ熱化学反応を生じさせて第2の
母材組織層を形成する工程とを有する繊維強化無機系材
料の製造方法としている。
「作用」 本発明の製造方法では、繊維成形体に含浸させた液体
前駆体を結合剤として型により希望する形状に成形し、
その予備成形体を加熱して液体前駆体を母材質に転化さ
せる。このようにして得られた中間成形体は、単繊維の
表面に母材質が部分的にあるいは薄く付着形成され、大
部分に空隙が残った状態ではあるが、その第1の母材組
織層により型崩れしない程度の単繊維が結合される。し
たがって、この状態で取り扱ってもその形状が元に戻る
ことはなく、型による成形時の形状が保持される。そし
て、その中間成形体の全面から気体原料を含浸させて熱
化学反応を生じさせることにより、前記空隙を埋めて緻
密な母材組織層を形成するものである。
「実施例」 本発明に係る繊維強化無機系材料の製造方法の実施工
程例について、第1図ないし第4図に基づいて説明す
る。
[繊維成形体の形成工程] 適用される繊維は、無機系母材を強化するために好適
な高温強度を有する繊維であることが必要であり、例え
ば、炭素、炭化硅素、窒化硅素、アルミナ、ジルコニ
ア、ムライトその他の無機系耐熱材料を主成分とする繊
維である。
このような繊維により例えばガスタービン燃焼器部品
を製作すべく、該繊維をシート積層、多次元織り等の成
形方法により例えば平板状に成形する。この成形によっ
て得られる繊維成形体1は、複数の単繊維1aを集合させ
たものであるため、第1図(B)に示すように各単繊維
1aの間等に多くの空隙1bを有するものとなっている。
[予備成形体の形成工程] 繊維成形体1を第1図(A)に示すように複数積層し
て、熱分解により母材に転化する液体前駆体(例えば炭
化硅素であるとポリシラスチレン)を例えば繊維に対し
て20%含浸させた予備成形体(プリプレグ)2を製作す
る。
[型押し工程] 炭素材料により希望する形状のキャビティ3を有する
型4を製作し、その上型4Aと下型4Bとの間に前記予備成
形体2を配置して第2図に示すように型閉めし、例えば
100℃、100kgf/cm2の条件でキャビティ3内に圧縮成形
する。このとき、液体前駆体は結合剤としての機能を発
揮し、予備成形体2の形状を保持する。
[第1の母材組織層形成工程] 型4から取り出した予備成形体2を例えばアルゴン雰
囲気中で1300℃まで加熱することにより、液体前駆体を
熱分解させて炭化硅素の母材質に転化させ、第1の母材
組織層(母材質)5aを単繊維1aの表面に部分的にあるい
は薄く付着した多孔質の中間成形体5を作製する。この
状態では、第3図に示すように、例えば予備成形体2の
空隙1bの体積のほぼ4%を占める部分に第1の母材組織
層5aが形成され、中間成形体5の大部分に空隙5bが残っ
た状態であるが、その母材質5aによって単繊維1aが結合
され、中間成形体5は前記型4のキャビティ3の形状に
保持されて、型崩れが防止された状態となる。
なお、この中間成形体5における第1の母材組織層5a
の付着率は、その後の取り扱い条件により異なるが、空
隙1bに対して2〜15体積%の範囲が好ましい。
[第2の母材組織層形成工程] 次いで、前記中間成形体5を第4図(A)に示すよう
にCVI装置の反応炉6内に設置し、反応炉6の気体充填
口6aから気体原料を送り込んで、前述したCVI法を施
し、中間成形体5の全面から気体原料を含浸させながら
高温下で熱化学反応を生じさせて、第4図(B)に示す
ように中間成形体5の第1の母材組織層5aの表面全体を
覆うように第2の母材組織層(母材質)7aを形成する。
この場合、気体原料としては、炭化水素ガスと硅素含有
ガスとの混合ガス(例えば水素−メタン−四塩化硅素の
組成の混合ガス)を用い、中間成形体5の空隙5bに炭化
硅素を母材として形成させる。
この処理はCVI法によって母材質7aの付着組織を正確
に制御し得ることにより、単繊維1aの表面に同心円状の
年輪のように母材質7aが付着成長して、空隙5bを徐々に
埋めていくものとなる。そして、その空隙5bが消滅し開
気孔率が0%となるまでこの工程を継続する。
このようにして製作した繊維強化材料7は、炭化硅素
等の繊維で強化され、該炭化繊維等の繊維とその単繊維
1a間の空隙1bを埋める炭化硅素等の母材組織層5a・7aと
からなる複合材料により、高い強度を発揮することがで
きる。また、液体前駆体を結合剤として利用することに
より予備成形体2の型4による成形時の形状を保持しつ
つ、該液体前駆体を熱分解させることにより単繊維1aを
部分的に結合してしまうから、型4のキャビティ3に応
じた任意の形状を得ることができ、しかも、最終的な第
2の母材組織層7aの形成工程においては、中間成形体5
の全面から気体原料を含浸させるようにしており、内部
の繊維1aまで母材質7aにより確実に包囲して緻密な組織
を得ることがでる。
「発明の効果」 以上の説明で明らかなように、本発明に係る繊維強化
無機系材料の製造方法によれば、次のような効果を奏す
ることができる。
(i)液体前駆体によって繊維成形体の型による成形時
の形状を保持しつつ、該液体前駆体を転化させて形成し
た第1の母材組織層によって型崩れしない程度に単繊維
を結合させてしまうので、中間成形体が復元してしまう
ことを防止でき、したがって、複雑形状等の任意の形状
に形成することができる。
(ii)空隙を残した状態で形成した第1の母材組織層に
対して、中間成形体の全面から気体原料を含浸させつつ
第2の母材組織層を形成するので、単繊維を確実に包囲
した状態で空隙を埋め、緻密組織のものを得ることがで
き、複合材料としての強度、品質を向上させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第4図は本発明に係る繊維強化無機系材料
の製造方法の実施工程例を示すもので、第1図(A)は
繊維成形体に液体前駆体を含浸させた予備成形体の正面
図、第1図(B)はその状態の予備成形体の横断面図、
第2図は型により成形している状態を示す正断面図、第
3図は部分的に第1の母材組織層を形成した状態の中間
成形体の横断面図、第4図(A)は中間成形体に第2の
母材組織層を形成している状態を示す正断面図、第4図
(B)は第2の母材組織層を形成した後の繊維強化無機
系材料の横断面図である。 1……繊維成形体、1a……単繊維、1b……空隙、2……
予備成形体、3……キャビティ、4……型、5a……第1
の母材組織層(母材質)、5b……空隙、5……中間成形
体、6……反応炉、7a……第2の母材組織層(母材
質)、7……繊維強化無機系材料。
フロントページの続き (72)発明者 古賀 新 東京都江東区豊洲3丁目1番15号 石川 島播磨重工業株式会社技術研究所内 (56)参考文献 特開 平2−164781(JP,A) 特開 昭64−87581(JP,A) 特開 平3−28177(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C04B 35/71 - 35/84 C04B 38/00 - 38/10 C04B 41/80 - 41/91

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の単繊維を集合させた状態の繊維成形
    体に液体前駆体を含浸させて予備成形体を形成する工程
    と、該予備成形体を型により成形する工程と、成形後の
    予備成形体を型から外して加熱することにより液体前駆
    体を母材質に転化させて、予備成形体の空隙の一部を残
    して前記単繊維の表面に第1の母材組織層を付着した多
    孔質の中間成形体を形成する工程と、該中間成形体の第
    1の母材組織層の空隙内に気体原料を含浸させつつ熱化
    学反応を生じさせて第2の母材組織層を形成する工程と
    を有することを特徴とする組織強化無機系材料の製造方
    法。
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