JP2779899B2 - スライバーの連続マーセル加工方法及び加工装置 - Google Patents

スライバーの連続マーセル加工方法及び加工装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スライバーの連続マー
セル加工方法及び連続マーセル加工装置に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】スライバのシルケット加工方法又はマー
セル加工方法が知られている。例えば、特公昭62─2
7188号公報に開示されたシルケット加工方法(マー
セライジング法)によれば、下位走行ベルト及び上位押
えベルトの間に挟持された繊維素糸系繊維含有スライバ
ーは、搬送ベルト及び押えベルトによって移送され、溶
液供給口の下方域を通過する。溶液供給口は、苛性ソー
ダ溶液を流下し、高濃度の苛性ソーダ溶液が、スライバ
ーに含浸する。次いで、スライバーは、タイミング用ネ
ットコンベアに移載され、多段式コンベアによって移送
され、移送中に反応を完結する。スライバーの移送中
に、苛性ソーダ溶液の一部はネットコンベアの編目を通
って滴下する。しかる後、スライバーは水中に導入さ
れ、水洗用ネットコンベア及び押えローラの間に挟持さ
れ、水洗される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな加工方法においては、以下の如き問題が生じた。即
ち、苛性ソーダ溶液の滴下を1ケ所のみにて行う上記加
工方法では、反応斑を防止すべく多量の反応液をスライ
バーに注液すると、反応液の粘度又は粘性による表面張
力作用と相まって、ネットコンベアの孔に目詰まり等が
生じ易い。このような目詰まりにより、コンベアシート
の通水性が損なわれ、この結果、反応液がコンベアシー
ト上に滞留してしまう。また、膨潤したスライバーは、
反応液の含浸により重量が増大しており、しかも、膨潤
に伴うスライバーの収縮現象により、移送方向と逆方向
に作用する過大な内部応力がスライバーに作用する。こ
のため、膨潤工程にてスライバー切れが多発し易く、し
かも、反応斑が発生し易く、実作業上、多くの問題が生
じる。加えて、膨潤反応に伴うスライバーの収縮に起因
したスライバー切れが生じ易いことから、洗浄・中和工
程にてロールの下部にネットコンベアを配設せざるを得
ず、この結果、スライバーが粘性吸着したアルカリ液の
洗浄及び/又は中和処理工程は、実際上、極めて煩雑化
してしまう。
【0004】更に、上記加工方法によれば、供給スライ
バーの厚み斑の制御機構及び苛性ソーダ濃度の補正装置
が、比較的複数化し、設備の設置費用及び維持・管理費
用が高額化してしまう。本発明はかかる点に鑑みてなさ
れたものであり、その目的とするところは、コンベアシ
ート上の反応液の滞留、スライバー切れ及び反応斑の発
生を防止し、しかも、洗浄及び/又は中和処理工程を簡
素化することができる連続マーセル加工方法及び加工装
置を提供することにある。本発明は更に、糸伸度・染色
性・嵩高性等の特性に優れ、製織性・製編性が著しく向
上したスライバー加工品を製造可能なマーセル加工方法
及び加工装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決する手段】本発明は、上記目的を達成する
ために、天然セルロース繊維のスライバーを連続的にマ
ーセル加工するスライバーの連続マーセル加工方法にお
いて、スライバーをクリンプ加工し、クリンプ加工した
スライバーを傾斜した固定式棒材列上に給送し、該棒材
列上でスライバーを移送するとともに、苛性ソーダ溶液
により棒材列上のスライバーを予備湿潤反応させて、予
備収縮させ、スライバーをコンベアーシートで挟持し、
該スライバーを苛性ソーダ溶液の浴に浸漬して、反応を
完結させ、しかる後、スライバーをコンベアシートから
引出し、絞りロールを使用してスライバーを絞り、次い
で、スライバーをフリュートロールで把持して揉みなが
ら、該スライバーを洗浄・中和処理することを特徴とす
るマーセル加工方法を提供する。好ましくは、上記反応
による反応液の濃度変化(濃度低下)を補正すべく、比
較的高濃度の苛性ソーダ溶液が前記棒材列上のスライバ
ーに更に注液される。更に好ましくは、苛性ソーダ溶液
の浴に浸漬したスライバーは、フリュートロールによっ
てコンベアシートから引出される。
【0006】本発明の或る好適な実施態様によれば、ス
ライバーは、長さが少なくとも20%以上短縮したクリ
ンプ形状に加工された後、苛性ソーダ溶液により予備湿
潤反応せしめられ、上記高濃度の苛性ソーダ溶液は、予
備湿潤反応工程の直後にスライバーの上方域からスライ
バーに流下する。高濃度苛性ソーダ溶液の流下位置から
苛性ソーダ溶液浴までの距離は、スライバーの所定供給
速度に対して20秒以上の反応収縮時間を確保するよう
に設定される。本発明の更に好適な実施態様によれば、
上記マーセル加工方法は、浸漬工程を経たスライバーを
絞りロールによって絞った後、スライバーを複数対のフ
リュートロールに通し、各フリュートロール対の間の領
域に配置された噴射ノズルから洗浄水又は中和液をスラ
イバーに噴射し、スライバーを連続的に洗浄・中和処理
する工程を含む。本発明は更に、天然セルロース繊維の
スライバーを連続的にマーセル加工するスライバーの連
続マーセル加工装置において、スライバーをクリンプ加
工するクリンプ装置と、クリンプ加工されたスライバー
を移送するように傾斜した固定式棒材列と、該棒材列上
のスライバーに苛性ソーダ溶液を注液する予備反応液槽
と、棒材列の給送方向前方に配置された浸漬用反応槽
と、該浸漬用反応槽の給送方向前方に配置された絞り装
置及び洗浄・中和装置とを有し、前記棒材列は、スライ
バーの給送方向に実質的に直交する方向に配向された複
数の棒状材料を備え、各棒状材料は、互いに所定の間隔
を隔てて配置され、前記浸漬用反応槽は、苛性ソーダ溶
液の浴を収容し、該浸漬用反応槽内には、ドラムと、該
ドラムの外周部分を周回するコンベアシートとを備える
ことを特徴とするマーセル加工装置を提供する。
【0007】好ましくは、前記クリンプ装置は、少なく
とも一対のフリュートロールを備える。変形例として、
前記クリンプ装置は、クリンパーボックスからなる。ス
ライバーは、フリュートロール又はクリンパーボックス
を通過する際、オーバーフィード給送により、長さが2
0%以上短縮したクリンプ形状に変形する。更に好まし
くは、前記絞り装置は、スライバーを絞る絞りロール
と、前記コンベアシートと前記絞りロールとの間の領域
に配置された上下1対のスライバー引出し用フリュート
ロールとを備え、前記洗浄・中和装置は、複数対のフリ
ュートロールと、洗浄水又は中和液を噴射する複数の噴
射ノズルとを備え、該噴射ノズルは、フリュートロール
対の間の領域に夫々配置される。本発明の好適な実施態
様においては、滴下する苛性ソーダ溶液を受ける受板が
前記棒材列の下方及び前記絞り装置の下方に夫々配置さ
れ、該受板は、前記浸漬用反応槽の壁体と一体的に連接
し、前記予備反応液槽は、越流式の液槽からなり、該液
槽には、圧送装置によって前記浸漬用反応槽の苛性ソー
ダ溶液が給送され、前記クリンプ装置は、オーバーフィ
ード用フリュートロールを備え、該フリュートロール
は、クリンプ時のスライバー濡れを防止すべく、前記予
備反応槽の給送方向後方に位置する。また、前記コンベ
アシートは、メッシュコンベアベルトからなり、前記絞
り装置は、フリュートロールと絞りロールとを備える。
【0008】本発明の更に好適な実施態様においては、
前記浸漬用反応槽内の苛性ソーダ溶液を循環する循環装
置が更に設けられ、該循環装置は、前記反応槽内の苛性
ソーダ溶液を前記予備反応液槽に補給するとともに、前
記ドラム内の領域に配置されたノズルを介して、前記反
応槽内の苛性ソーダ溶液、好ましくは、反応槽の底部領
域の苛性ソーダ溶液を前記ドラム内領域に吐出する。更
に好ましくは、ドラムは、周壁に孔又は開口を有する有
孔ドラムである。
【0009】
【作用】本発明の上記加工方法によれば、スライバー
は、固定式棒材列上で予備湿潤反応し、予備収縮するの
で、スライバーは、拘束を受けずに収縮できる。このた
め、スライバーは均一に予備収縮することができ、スラ
イバー切れは発生し難く、この結果、後続の反応工程を
経たスライバーの整条度は安定する。また、予備反応工
程を設けたことにより、スライバーは、浸漬用反応槽に
導入される時点で、既に或る程度、収縮している。この
ため、スライバーがコンベアシートに挟持されるとき、
スライバーの残留クリンプが、収縮作用を或る程度補償
し、内部応力によるスライバー切れを防止する。しか
も、スライバーをコンベアシートに挟持する際に、十分
且つ均一なスライバーの反応時間を確保できるので、後
続するスライバーの浸漬工程において、均一なマーセラ
イジングを実施できる。更に、スライバーは棒材列上で
予備湿潤反応するので、予備反応液を多量に使用するこ
とができ、スライバーに湿潤斑が発生するのを防止でき
る。棒材列から滴下する反応液は、棒材列の下方に受板
又は受槽を配置することにより、苛性ソーダ溶液浴に流
入又は還流できる。また、予備湿潤工程及び浸漬工程の
2つの工程により、マーセル反応が完結するので、均一
なマーセル加工を実施することができ、これにより、ス
ライバー加工糸の糸品質及び製織性を可成り向上させる
ことができる。
【0010】しかも、上記加工方法によれば、マーセル
反応後のスライバーの性状が安定するので、噴射用ノズ
ルを用いた強力な洗浄・中和処理を実行することが可能
となり、洗浄・中和工程に使用する装置又は機器の構造
を簡素化することができる。
【0011】
【実施例】以下、添付図面を参照して、本発明の好まし
い実施例を説明する。図1は、本発明の実施例に係るマ
ーセル加工装置の側面図であり、図2は、図1に示すク
リンプ装置の拡大縦断面図である。また、図3及び図4
は、図1に示すドラムの斜視図及び横断面図である。コ
ーマあがりの麻繊維スライバーSが、図1に示すマーセ
ル加工装置Mに通され、マーセル加工装置Mによってス
ラックマーセル加工される。マーセル加工装置Mは、ス
ライバーSをクリンプ形状に加工するクリンプ装置1
0、苛性ソーダ溶液をスライバーSに注液する予備反応
装置20、スライバーSを苛性ソーダ溶液の浴Bに含浸
させる浸漬用反応槽30、スライバーSを絞る絞り装置
50およびスライバーSの洗浄・中和処理を行う洗浄・
中和装置60から略構成される。クリンプ装置10は、
駆動装置(図示せず)に連結された下位フリュートロー
ル11及び上位フリュートロール12を有する。図2に
示す如く、フリュートロール対11、12の外周部分
は、所定の角度間隔を隔てた多数の半径方向突出部14
と、各突出部14の間に形成された溝13とを有する。
各フリュートロール11、12は、駆動装置によって矢
印で示す方向に夫々回転され、スライバーSを紡出す
る。本例では、各フリュートロール11、12の外径
は、例えば、15cm程度に設定され、フリュートロール
対11、12の紡出速度Vsは、例えば、4.29m/mi
n に設定される。なお、この種のフリュートロールは、
フリューテッドロールとも呼ばれている。
【0012】予備反応装置20は、越流式の予備反応液
槽21と、予備反応槽21の下方域に配置された固定式
のパイプ列22と、予備反応液槽21に苛性ソーダ溶液
を補給する管路23とを備える。予備反応液槽21は、
中央の整流仕切板21aを備えており、予備反応液槽2
1の槽内領域は、整流仕切板21aによって、苛性ソー
ダ溶液が補給される補給領域と、流下板24を備えたオ
ーバーフロー領域とに画成される。パイプ列22は、移
送方向斜め前方に傾斜した複数の横架パイプからなり、
各パイプは、移送方向に直交するように互いに平行に配
向される。各パイプは、例えば、外径20mm程度の中実
又は中空部材からなり、パイプの軸心間隔は、例えば、
25mm程度に設定される。パイプ列22の下方には、パ
イプ列22から滴下した液を受ける受板又は受槽25が
配置される。予備反応液槽21の移送方向前方には、比
較的高濃度の反応液源(図示せず)に連結された濃度補
充用噴射ノズル26が配置され、噴射ノズル26は、パ
イプ列22上のスライバーSに向かって高濃度の反応液
を噴射する。また、管路23は、ポンプPの吐出口に連
結され、他方、ポンプPの吸引口は、吸引管路27を介
して、浸漬用反応槽30に連結される。吸引管路27
は、浸漬用反応槽30の底壁に開口し、ポンプPは、反
応槽30内の反応液(苛性ソーダ溶液)を毎分50リッ
トル/min の圧送速度で予備反応液槽21の補給領域に
給送する。補給領域の反応液は、整流仕切板21aによ
って整流化された後、オーバーフロー領域の上縁を越流
し、流下板24からパイプ列22上のスライバーSに滴
下する。
【0013】浸漬用反応槽30は、苛性ソーダ溶液の浴
Bを収容する容器31と、容器31の中心部に配置され
たドラム40と、反応液浴Bの上方に配置された駆動ロ
ーラ32及び遊動ローラ(アイドル・ローラ)33、3
5と、所定の間隔を隔てて反応液浴B内に配置された複
数の案内ローラ34とを備える。コンベアシート36が
ドラム40及び駆動ローラ34に巻装され、コンベアシ
ート36と対をなすコンベアシート37が、遊動ローラ
33、35及び案内ローラ34に巻装される。コンベア
シート36、37は夫々、メッシュコンベアベルトから
なる。駆動ローラ32は、ドラム40の直上に配置さ
れ、回転駆動装置(図示せず)に連結される。回転駆動
装置は、駆動ローラ32を、図2において反時計廻り方
向に回転させ、駆動ローラ32は、図1に矢印で示す方
向にコンベアシート36を走行させる。コンベアシート
36の走行速度は、フリュートロール対11、12の紡
出速度Vs(4.29m/min )よりも低速(例えば、3.
3m/min )に設定される。なお、予備反応装置20の
受槽25は、容器31と一体的に連接し且つ容器31に
向かって斜め下方に傾斜している。従って、パイプ列2
2の間隙を通して受槽25に滴下した苛性ソーダ溶液
は、受槽25を介して容器31内に流入する。
【0014】図3及び図4に示す如く、ドラム40は、
円筒状の外周壁41と、ドラム40の中心軸線上に配置
された支軸42と、支軸42に固定された基部44から
半径方向外方に延びる円板形の端板43とを備える。支
軸42は、容器31の壁体に配設されたメタルシール部
49を貫通し、容器31の外側に配置された軸受46に
支承される。端板43は、外周壁41を基部44及び支
軸42に一体的に連結する。外周壁41は、千鳥に配列
された多数の開口又は孔45を有し、開口45を介して
ドラム40の内部領域及び外部領域が相互連通する。ド
ラム43の直径は、例えば、50cmに設定される。ま
た、開口45の直径は、例えば、12mm程度に設定され
るが、図3及び図4においては、若干拡大した状態で示
されている。多数のノズル47を備えた反応液給送管4
8がドラム40内に延入し、給送管48は、支軸42と
平行に配管される。給送管48は、容器31の壁体に配
設されたメタルシール部48aを貫通する。ノズル47
は、図1に示す如く、水平且つ後方に向かって配向され
る。給送管48は、ポンプPの吐出側管路23に連結さ
れ、ポンプPは、反応液浴Bの苛性ソーダ溶液を給送管
48に給送し、給送管48は、該苛性ソーダ溶液をノズ
ル47からドラム40内に吐出する。
【0015】反応液浴Bの後方に配置された絞り装置5
0は、上下一対の仮絞り用フリュートロール51、51
と、上下一対の絞りロール53、53とを備える。苛性
ソーダ浴に浸漬されたスライバーSは膨潤しており、従
って、単一工程による絞り作業を実行し難く、このた
め、フリュートロール51は、絞りロール53がスライ
バーSを絞る前に、浸漬用反応槽30から送出されたス
ライバーSを予備的に絞る。絞り装置50は更に、フリ
ュートロール51及び絞りロール53の下方に配置され
た受板又は受槽55を備え、受槽55は、容器31と一
体的に連接し且つ容器31に向かって斜め下方に傾斜し
ている。絞り工程で生じた余剰の苛性ソーダ溶液は、受
槽25上に滴下し、受槽55を介して容器31内に還流
する。絞り装置50の後方に配置された中和・洗浄装置
60は、多数のフリュートロール対61と、各フリュー
トロール対61の間に配置された洗浄用噴射ノズル63
及び中和用噴射ノズル65とを備える。噴射ノズル6
3、65の下方には、洗浄水又は中和液を受ける受板又
は受槽67が配置され、受槽67には、外部排水管68
が連結される。次に、上記マーセル加工装置Mの作動に
ついて説明する。
【0016】直線状のスライバーSが、クリンプ装置1
0に供給される。矢印方向に回転する下位及び上位フリ
ュートロール11、12は、図2に示す如く、スライバ
ーSをクリンプし、クリンプ状態のスライバーSは、進
行方向斜め下方に傾斜したパイプ列22上に紡出され
る。紡出したスライバーSは、最初の口出し時に、クリ
ンプ状態を維持した状態で、手指にてコンベアシート3
7上に初期的に位置決めされる。しかしながら、後続す
るスライバーSは、コンベアシート37、38の間に自
動的に引き込まれ、給送ラインに沿って連続的に給送さ
れ、マーセル加工装置Mは、連続運転される。予備反応
液槽21の補給領域には、ポンプPによって毎分50リ
ットル/minの流量の反応液が供給され、該反応液は、
仕切板21aにて整流され、オーバーフロー領域から越
流し、パイプ列22上のスライバーSに滴下する。連続
反応処理運転における反応液の苛性ソーダ濃度は、例え
ば、約200g/リットルに設定される。このような連
続処理運転の下では、スライバーSに対する苛性ソーダ
溶液の含浸により反応液の減少及び反応液の濃度低下が
生じ得るので、好ましくは、噴射ノズル26によって高
濃度の苛性ソーダ溶液をスライバーSに噴射し、濃度補
充を行う。これにより、浸漬用反応槽30の苛性ソーダ
濃度は、実質的に常に一定の上記設定濃度(200g/
リットル)に維持される。なお、噴射ノズル26から噴
射される反応液の苛性ソーダ濃度は、例えば、220g
/リットルに設定される。スライバーSに含浸しない反
応液は、パイプ列22のパイプ間隙から受槽22に滴下
し、受槽22から浸漬用反応槽30内に流入する。
【0017】かくして予備反応したスライバーSは、所
定速度、例えば、走行速度3.3m/min に設定されたコ
ンベアシート37、38に挟持され、浸漬用反応槽30
の反応液浴Bに浸漬され、ドラム40の外周領域を移動
し、斑なく苛性ソーダ溶液と反応する。スライバーSに
反応斑が発生しないように、ドラム40のノズル47
は、反応液を300リットル/min の流量でドラム40
内に吐出し、ドラム40内に吐出した反応液は、開口4
5を介して反応液浴Bの外周領域に流出する。浸漬用反
応槽30に浸漬したスライバーSは、遊動ローラ35の
外周部に沿って転向され、絞り装置50の仮絞り用フリ
ュートロール51によって予備的に仮絞りされ、しかる
後、絞りロール53によって絞られる。スライバーSは
更に、中和・洗浄装置60に移送され、フリュートロー
ル対61に把持され、揉まれながら、洗浄用噴射ノズル
63及び中和用噴射ノズル65による洗浄・中和処理を
受ける。絞りロール53を通過したスライバーSは、ス
ライバー1kg当り0.5〜0.6kgの苛性ソーダを含有して
おり、引き続く洗浄・中和工程において、洗浄用噴射ノ
ズル63によって洗浄され、中和用噴射ノズル65によ
って中和処理される。洗浄水及び中和液は、受槽67及
び外部排水管68を介して機外に排水される。
【0018】本実施例では、洗浄・中和処理に使用され
るフリュートロール対61は、例えば、32箇所に配置
される。また、中和前の洗浄水として、60℃の温水が
使用され、中和処理には、流量36cc/min の酢酸水溶
液が使用される。好ましくは、中和処理後に、再度フリ
ュートロール対及び洗浄用噴射ノズル(図示せず)を使
用してスライバーSを再洗浄し、絞りロール(図示せ
ず)によってスライバーSを絞り、一連のスラックマー
セル加工が終了する。本発明者は、上記マーセル加工装
置Mを用いてマーセルライズしたスライバーSを乾燥し
た後、60番糸(麻番手)を紡出し、かくして製造され
た本発明の加工品(60番紡績糸:実施例)と、従来の
マーセル加工装置によって製造された同等の加工品(6
0番紡績糸:比較例)との特性を比較すべく、比較試験
を実施した。また、本発明に係る上記紡績糸及び上記従
来糸を夫々平織し、各仕上布の特性比較試験を実施し
た。図5は、これらの比較試験の試験結果を示す図表で
ある。図5に示す如く、本実施例に係るスライバーのス
ラックマーセル加工品では、強力、伸度及びU値(太さ
変動率)が比較例に比べ大幅に向上し、従来品に観られ
ない新規な素材性能又は素材機能を奏した。これは、本
発明のマーセル加工方法が、従来のマーセル加工方法に
比べ、安定した高機能且つ高効率のマーセライジングを
達成する加工方法であることを実証している。更に、各
仕上布の試験結果から明らかなとおり、本実施例のマー
セル加工品を用いた仕上布は、従来のマーセル加工品を
使用した仕上布に比べ、各種性能、殊に、防しわ度、伸
度及びW&W性(Wash and Ware 性、耐洗濯性)におい
て顕著に優れていると判明した。
【0019】このように、本実施例のマーセル加工方法
により製造されたマーセライズド糸、或いは、上記マー
セル加工装置Mを用いて製造されたマーセライズド糸
は、従来の技術で加工された紡績糸に比べて、化学的特
性、物性又は品質特性が著しく向上しており、新規な分
野への紡績糸の適応可能性を高めるばかりでなく、スラ
イバーの新規用途の可能性又は応用性を提供し、その実
用的効果は、極めて大きい。
【0020】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の上記構成
によれば、コンベアシート上の反応液の滞留、スライバ
ー切れ及び反応斑の発生を防止し、しかも、洗浄及び/
又は中和処理工程を簡素化することができる連続マーセ
ル加工方法及びマーセル加工装置を提供することができ
る。しかも、本発明のマーセル加工方法又はマーセル加
工装置によれば、糸伸度・染色性・嵩高性等の特性に優
れ、製織性・製編性が著しく向上したスライバー加工品
を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るマーセル加工装置の側面
図である。
【図2】図1に示すフリュートロールの拡大縦断面図で
ある。
【図3】図1に示すドラムの斜視図である。
【図4】図1に示すドラムの横断面図である。
【図5】本発明のマーセル加工方法により製造されたマ
ーセライズド糸と、従来のマーセル加工方法によって製
造されたマーセライズド糸との特性比較試験の試験結果
を示す図である。
【符号の説明】
M マーセル加工装置 S スライバー P ポンプ B 反応液浴 10 クリンプ装置 11 下位フリュートロール 12 上位フリュートロール 13 溝 14 半径方向突出部 20 予備反応装置 21 予備反応液槽 22 固定式パイプ列 23 管路 25 受槽 26 濃度補充用噴射ノズル 30 浸漬用反応槽 31 容器 36、37 コンベアシート 40 ドラム 50 絞り装置 51 仮絞り用フリュートロール 53 絞りロール 60 洗浄・中和装置 61 フリュートロール対 63 洗浄用噴射ノズル 65 中和用噴射ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D06M 101:06 (72)発明者 縞谷 和則 広島県豊田郡本郷町3500−17 (72)発明者 盛本 誠一 広島県竹原市忠海町4575−1 (56)参考文献 特開 昭62−28469(JP,A) 特開 昭49−20497(JP,A) 特開 昭49−125698(JP,A) 特開 昭49−31997(JP,A) 実開 昭58−72193(JP,U) 特公 昭44−3264(JP,B1) 特公 昭36−14338(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D06B 7/02 D06B 15/02 D06M 11/40 D06B 3/18 D06B 5/04 D06M 101:06

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 天然セルロース繊維のスライバーを連続
    的にマーセル加工するスライバーの連続マーセル加工方
    法において、 スライバーをクリンプ加工し、クリンプ加工したスライ
    バーを傾斜した固定式棒材列上に給送し、該棒材列上で
    スライバーを移送するとともに、苛性ソーダ溶液により
    棒材列上のスライバーを予備湿潤反応させて、予備収縮
    させ、 スライバーをコンベアーシートで挟持し、該スライバー
    を苛性ソーダ溶液の浴に浸漬して、反応を完結させ、 しかる後、スライバーをコンベアシートから引出し、絞
    りロールを使用してスライバーを絞り、次いで、スライ
    バーをフリュートロールで把持して揉みながら、該スラ
    イバーを洗浄・中和処理することを特徴とするマーセル
    加工方法。
  2. 【請求項2】 比較的高濃度の苛性ソーダ溶液を前記棒
    材列上のスライバーに更に注液し、該スライバーを予備
    収縮させるとともに、前記苛性ソーダ溶液浴の濃度を補
    正することを特徴とする請求項1に記載のマーセル加工
    方法。
  3. 【請求項3】 苛性ソーダ溶液の浴に浸漬した前記スラ
    イバーをフリュートロールによって前記コンベアシート
    から引出すことを特徴とする請求項1又は2に記載のマ
    ーセル加工方法。
  4. 【請求項4】 長さが少なくとも20%以上短縮したク
    リンプ形状に加工したスライバーを前記苛性ソーダ溶液
    で予備湿潤反応させることを特徴とする請求項1乃至3
    のいずれか1項に記載のマーセル加工方法。
  5. 【請求項5】 前記高濃度の苛性ソーダ溶液は、予備湿
    潤反応工程の直後にスライバーの上方域からスライバー
    に流下し、該高濃度苛性ソーダ溶液の流下位置から前記
    苛性ソーダ溶液浴までの距離は、スライバーの所定供給
    速度に対して20秒以上の反応収縮時間を確保するよう
    に設定されることを特徴とする請求項2に記載のマーセ
    ル加工方法。
  6. 【請求項6】 絞りロールによってスライバーを絞った
    後、スライバーを複数対のフリュートロールに通し、各
    フリュートロール対の間の領域に配置された噴射ノズル
    から洗浄水又は中和液をスライバーに噴射し、スライバ
    ーを連続的に洗浄・中和処理することを特徴とする請求
    項1乃至5のいずれか1項に記載のマーセル加工方法。
  7. 【請求項7】 天然セルロース繊維のスライバーを連続
    的にマーセル加工するスライバーの連続マーセル加工装
    置において、 スライバーをクリンプ加工するクリンプ装置と、 クリンプ加工されたスライバーを移送するように傾斜し
    た固定式棒材列と、 該棒材列上のスライバーに苛性ソーダ溶液を注液する予
    備反応液槽と、 棒材列の給送方向前方に配置された浸漬用反応槽と、 該浸漬用反応槽の給送方向前方に配置された絞り装置及
    び洗浄・中和装置とを有し、 前記棒材列は、スライバーの給送方向に実質的に直交す
    る方向に配向された複数の棒状材料を備え、各棒状材料
    は、互いに所定の間隔を隔てて配置され、 前記浸漬用反応槽は、苛性ソーダ溶液の浴を収容し、該
    浸漬用反応槽内には、ドラムと、該ドラムの外周部分を
    周回するコンベアシートとを備えることを特徴とするマ
    ーセル加工装置。
  8. 【請求項8】 前記クリンプ装置は、少なくとも一対の
    フリュートロールを備えることを特徴とする請求項7に
    記載のマーセル加工装置。
  9. 【請求項9】 前記クリンプ装置は、クリンパーボック
    スからなり、該クリンパーボックスは、スライバーのオ
    ーバーフィード給送により、長さが20%以上短縮した
    クリンプ形状にスライバーを変形させることを特徴とす
    る請求項7に記載のマーセル加工装置。
  10. 【請求項10】 前記絞り装置は、スライバーを絞る絞
    りロールと、前記記コンベアシートと前記絞りロールと
    の間の領域に配置された上下1対のスライバー引出し用
    フリュートロールとを備えることを特徴とする請求項7
    乃至9のいずれか1項に記載のマーセル加工装置。
  11. 【請求項11】 前記洗浄・中和装置は、複数対のフリ
    ュートロールと、洗浄水又は中和液を噴射する複数の噴
    射ノズルとを備え、該噴射ノズルは、フリュートロール
    対の間の領域に夫々配置されることを特徴とする請求項
    7乃至10のいずれか1項にマーセル加工装置。
  12. 【請求項12】 滴下する苛性ソーダ溶液を受ける受板
    が前記棒材列の下方及び前記絞り装置の下方に夫々配置
    され、該受板は、前記浸漬用反応槽の壁体と一体的に連
    接し、前記予備反応液槽は、越流式の液槽からなり、該
    液槽には、圧送装置によって前記浸漬用反応槽の苛性ソ
    ーダ溶液が給送され、前記クリンプ装置は、オーバーフ
    ィード用フリュートロールを備え、該フリュートロール
    は、スライバーの濡れを防止すべく、前記予備反応槽の
    給送方向後方に位置することを特徴とする請求項7に記
    載のマーセル加工装置。
  13. 【請求項13】 前記コンベアシートは、メッシュコン
    ベアベルトからなり、前記絞り装置は、フリュートロー
    ルと絞りロールとを備えることを特徴とする請求項7乃
    至12のいずれか1項に記載のマーセル加工装置。
  14. 【請求項14】 前記浸漬用反応槽内の苛性ソーダ溶液
    を循環する循環装置を更に有し、該循環装置は、前記反
    応槽内の苛性ソーダ溶液を前記予備反応液槽に補給する
    とともに、前記ドラム内の領域に配置されたノズルを介
    して、前記反応槽の底部領域の苛性ソーダ溶液を前記ド
    ラム内領域に吐出し、前記ドラムは、周壁に孔又は開口
    を有する有孔ドラムであることを特徴とする請求項7乃
    至13のいずれか1項に記載のマーセル加工装置。
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