JP2779171B2 - ビブリオリシン結合方法 - Google Patents

ビブリオリシン結合方法

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JP2779171B2 JP63194708A JP19470888A JP2779171B2 JP 2779171 B2 JP2779171 B2 JP 2779171B2 JP 63194708 A JP63194708 A JP 63194708A JP 19470888 A JP19470888 A JP 19470888A JP 2779171 B2 JP2779171 B2 JP 2779171B2
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、1986年12月22日にアキヴァ・T・グロス
(Akiva T.Gross)により出願された「酵素介在結合反
応」という標題で現在出願中の米国特許出願番号944,02
7の一部継続出願である。
ジペプチド類の酵素介在合成法はよく知られている。
すなわち米国特許4,165,311、4,436,925および4,256,83
6は、不溶性付加化合物類、例えば1モルのフェニルア
ラニンメチルエステルと1モルのN−保護されたアスパ
ルチル−フェニルアラニンメチルエステルとの付加化合
物、を製造するための水性媒体中での合成法を記してい
る。米国特許4,284,721は、N−保護されたアスパラギ
ン酸とフェニルアラニン低級アルキルエステル類とが、
水−混和性共溶媒を含有していてもよい水−非混和性溶
媒の存在下で、酵素により結合できるということを教示
しているが、その際に水−混和性溶媒の量は酵素の不活
性化または抑制を防ぐため制限されなければならない。
米国特許4,116,768および4,119,493は、水性媒体中での
共溶媒としての水−混和性溶媒の使用に関する同様な教
示を含んでいる。同様に、アンゲヴァンドテ・ヘミイ・
インターナショナル・エディッション・イン・イングリ
ッシュ(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.)、24(1985)、2
号、87頁には、水−混和性溶媒を共溶媒として水と混合
して使用できるがプロテアーゼ酵素の触媒活性は共溶媒
の濃度が増加するにつれて減少することおよびキモトリ
プシンを酵素として使用する場合には50%以上では合成
が生じないことが示されている。考えられる例外とし
て、ポリオール(例えば1,4−ブタンジオール)を使用
すると、ある場合には酵素を安定化させるかもしれな
い。N−ホルミルジペプチド類(例えばN−ホルミルア
スパルチーム)およびポリペプチド類を製造するための
酵素結合のために水性または水性−有機媒体を使用する
ことも、WO8604924およびヨーロッパ特許公報0149594中
に記されている。
種々の科学雑誌に掲載されている多数の文献にも、水
および水−混和性有機溶媒と組み合わせた酵素の使用が
論じられており、そして溶媒、水の量、酵素および基質
の選択により変動すると思われる収率が得られている。
また、酵素が固定されているかどうかも一つの要素でも
あるようだ。50/50のアセトニトリル/水溶媒系の使用
は、ニルソン(Nilsson)およびモスバッハ(Mosbach)
によりバイオテクノロジイ・アンド・バイオエンジニア
リング(Biotech Bioeng.)、26、1146(1984)中に記
されている。この文献には、ブタンジオール・水(90/1
0)の使用も記されている。溶媒としてのアセトニトリ
ルの使用はJ.B.ジョーンズ(Jones)およびJ.F.ベック
(Beck)の「有機化学における生化学系の適用(Applic
ations of Biochemical Systems in Organic Chemistr
y)、1部、(J.B.ジョーンズ、C.J.シー(Sih.)およ
びD.ペールマン(Perlman)編集)、107頁ff.ニューヨ
ーク、J.ウィリー、1976;並びにJ.B.ジョーンズおよび
M.M.メヘス(Mehes)、カナディアン・ジャーナル・オ
ブ・ケミストリイ(Can.J.Chem.)、57、2245(1979)
中で論じられている。水−非混和性/水混和性溶媒類の
混合物中でのL−フェニルアラニンメチルエステル(す
なわちL−pheOMe)およびN−保護されたN−カルボベ
ンジルオキシ−アスパラギン酸(すなわちZ−asp)と
の結合はバイオテクノロジイ・レタース(Biotech.Let
t.)、7、789(1985)中に記されている。コネッケ(Ko
nnecke)他はモンテシュリフツ・フュル・ヘミイ(Mona
tshrifts fur Chemie)、112、469−481(1981)、475
頁中で、溶媒としてのアセトニトリルの使用に言及して
いる。他の興味ある文献は、ザ・ジャーナル・オブ・バ
イオケミストリイ(J.Biochem.)、89、385(1981);
ザ・ジャーナル・オブ・ザ・オーガニック・ケミストリ
イ(J.Org.Chem.)、51、2728(1986);コレクション
・オブ・チェコスロヴァク・ケミカル・コミュニケーシ
ョン(CollCzechos.Chem.Comm.)、49、231(1984);
およびプロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・ア
カデミイ・オブ・サイエンセス(Proc.Natl.Acad.Sc
i.)、80、3241(1983)である。
文献では、一般的には酵素、そして特にプロテアー
ゼ、が水−混和性および水−非混和性有機溶媒類の両者
中で使用されると示されているが、水−混和性溶媒の方
が幾分劣っているような一般的な概念があるようだ。す
なわち、「ほとんどの酵素類は親水性の水−混和性有機
溶媒中では不活性であり、このことは酵素からそれらの
溶媒中への必要水の分配により容易に理解される」と述
べられている(A.M.クリバノフ(Klibanov)、ケムテッ
ク(Chemtech)、354頁、1986年6月)。
本発明は、水−混和性有機溶媒中でのプロテアーゼの
使用に基づいている。
本発明は、N−置換されたアスパラギン酸およびフェ
ニルアラニン低級アルキルエステルからなる群から選択
された2種の基質の間のペプチド結合生成に対して触媒
作用を与えるためメタロエンドプロテアーゼ酵素を使用
する方法である。該エステルのベンジル系炭素原子は、
1個以上の水素と容易に置換可能な不安定な基で、置換
されていてもよい。高いpH水準における酵素の製造は、
プロテアーゼの活性を改良し、そして競合するエステラ
ーゼ活性を相当減退させる。本発明の方法には、上記の
方法を水−混和性有機溶媒の存在下で実施するやり方も
包括される。
水−混和性溶媒の使用は多くの利点を与える。予期に
反して、酵素に必要な水を枯渇させることなくこれらの
溶媒類を使用することができる。例えば連続的方法を実
施する場合には、酵素活性用に必要な水の量は溶媒系の
2−10重量%にあたる水を保持することにより供給で
き、残りは水−混和性溶媒またはそれと他の溶媒との混
合物である。閉鎖系(例えば連続的反応とは対照的な本
質的にはバッチ反応)では、酵素およびそれの基質が上
記の2−10重量%を供給するのに充分な水を放出するで
あろう。しかしながら、酵素を充分大量の本質的には無
水の水−混和性溶媒と接触させる場合には、溶媒中の水
の量を約2%以下に下げそして酵素を変性させるのに充
分な水が抽出されることを理解すべきである。10%以上
の、例えば50%程度の、水の量も使用できるが、そうす
ると水−混和性溶媒を使用する際の利点が減じられるか
もしれない。
多くの反応では、水−混和性溶媒を単独溶媒としてま
たは共溶媒として使用すると一相の液体相を与えること
ができ、それにより溶媒が水と非混和性である場合に生
じる相移動に関する制限が避けられる。例えば、水−混
和性溶媒を使用すると、しばしば反応速度が速まる。ま
た、多くの有用な水−混和性有機溶媒の比誘電率は5〜
60(好適には30〜60)であり、そのことは1相の液相生
成に寄与しており、なぜならばほとんどのアミノ酸誘導
体が比較的有極性でありしかも該溶媒中に可能性である
からである。例えば、フェニルアラニンのメチルエステ
ルはヘキサンまたは酢酸エチル中よりアセトニトリル中
の方にはるかに可溶性である。
水−混和性溶媒の使用は、反応平衡を移行させ得る。
例えば、酢酸エチル中ではN−ホルミルアスパラギン酸
とフェニルアラニンメチルエステルとの反応は約10%の
収率を与えるが、アセトニリトル中では約80%の収率を
与える。
固定されていてもまたは「遊離」形であっても、酵素
は水−非混和性溶媒とはちがい水−混和性溶媒中ではは
るかに安定である。「安定性」とは、酵素が水の抽出ま
たは他の手段により変性に対して抵抗性であることを意
味する。「溶媒系」という語は液体相の溶媒部分を示す
ために使用され、そして水−混和性溶媒およびそれと共
に使用される共溶媒、例えば水もしくは水−混和性溶
媒、を包含している。
「水−混和性有機溶媒」という語は、水といずれの割
合でも混和可能であり一相系を形成できる有機液体を意
味する。適当な有機溶媒の例には、アルコール類(例え
ばエタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノー
ル);ポリオール類(例えば1,4−ブタンジオールおよ
びジエチレングリコール);ニトリル類(例えばアセト
ニトリル);およびエーテル類(例えばジオキサンおよ
びテトラヒドロフラン);並びに他の溶媒、例えばジメ
チルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびアセト
ン、が包含される。
アセトニトリルが好適な水−混和性溶媒である。本発
明の別の態様は、アセトニトリルを種々のアミノ酸類お
よび酵素類と共に使用して酵素介在結合反応によりジペ
プチド類およびポリペプチド類を製造できる方法であ
る。この反応で使用するのに適しているアミノ酸類の例
には下記のものが包含される:脂肪族アミノ酸類、例え
ばモノアミノモノカルボン酸類、例えばグリシン(Gl
y)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ノルバリン(n
or−Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(iso−Le
u)、ノルロイシン(nor−Leu);オキシアミノ酸類、
例えばセリン(Ser)、スレオニン(Thr)、ホモーセリ
ン(homo−Ser);硫黄−含有アミノ酸類、例えばメチ
オニン(Met)またはシスチン(CysS)およびシステイ
ン(CysH);モノアミノジカルボン酸類、例えばアスパ
ラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu);ジアミノ
モノカルボン酸類、例えばオルニチン(Orn)、リシン
(Lys)、アルギニン(Arg);芳香族アミノ酸類、例え
ばフェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、並びに
複素環式アミノ酸類、例えばヒスチジン(His)、トリ
プトファン(Trp)。(アミノ酸は当分野で普通に使用
されている記号により示される。) 溶媒の選択においては注意を払わなければならない。
例えば、酵素が金属を含有している場合には、溶媒は金
属と錯体形成するものであってはならない。DMFおよびD
MSOはメタロプロテイナーゼ中の金属成分と錯体形成す
るようであり、従ってそれらは好ましくは溶媒系の50%
(モル基準で)以下に制限すべきであり、残りは水また
は他の溶媒であることができる。溶媒は、それが酵素ま
たは基質と化学的に反応しないという意味で、不活性で
なければならない。例えば、アセトンが溶媒である場合
には、基質または酵素のアミン基との反応を最少にする
ような条件下でそれを使用すべきである。
アシル供与体として作用するアミノ酸類は一般的にN
位置に保護基を有している。適当なN−保護基の例は、
ペプチド合成で通常使用されているもの、例えばターシ
ャリー−アルコキシカルボニル基、例えばt−ブチルオ
キシカルボニル(BOC−)、t−アミルオキシカルボニ
ル(t−Aoc);不活性置換基で置換されていてもよい
ベンジルオキシカルボニル基、例えばベンジルオキシカ
ルボニル(Z−)、p−メトキシベンジルオキシカルボ
ニル(PMZ−)、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボ
ニル(Z(OMe)2−)、2,4,6−トリメチルベンジルオキ
シカルボニル(TMZ−)、p−フェニルアゾベンジルオ
キシカルボニル(PZ−)、p−トルエンスルホニル(to
syl−);o−ニトロフェニルスルフェニル(Nps−)な
ど、である。ホルミルも使用できる。
ジペプチドまたはポリペプチドの生成においてアミノ
部分を供与するのに適しているアミノ酸類の例には、上
記のものは全て包含される。フェニルアラニンが好適で
あり、そして特にベンジル系炭素のところで置換された
誘導体類、例えばベンジル系炭素が例えば接触加水素分
解または電気化学的還元分解の如き方法により少なくと
も1個の容易に置換可能な基で置換されている誘導体
類、を使用できる。適当に置換されたフェニルアラニン
誘導体類の例には、式 [式中、 Phはフェニル(置換されているかまたは未置換)であ
り、 Xは−OH、−SH、−Cl、−Br、−I、−OCOCH3、−OCOO
CH3、−NH2または−SCH3であり、そして Rは炭素数が1〜4の低級アルキル基である]に相当す
るものが含まれる。
アミノを供与するアミノ酸は適当なC−末端保護基に
より保護されている。アミン成分のカルボキシル基用の
保護基(C−末端保護基)には、アルコキシ基、例えば
メトキシ(−OMe)、エトキシ(−OEt);ターシャリー
−アルコキシ基、例えばt−ブトキシ(−O−t−B
u);並びに置換されていてもよいベンジルオキシ基、
例えばベンジルオキシ(−OBzl)、p−ニトロベンジル
オキシ(−OBzl(p−NO2))、ベンズヒドリルオキシ
(−OBzh)、ベンジルアミノ(−NHBzl)、2,4−ジメト
キシベンジルアミノ(−NHDMB)、ベンズヒドリルアミ
ノ(−NHBzh)または置換されていないアミノ(−NH2
などが包含される。また、アミドおよびヒドラジド基を
C−末端保護基として使用することもできる。
水−混和性有機溶媒類は本質的に無水の「生の」状態
で使用することもまたは水および/または他の有機溶媒
類(水−非混和性および水−混和性溶媒類の両者)と組
み合わせて使用することもできる点を理解すべきであ
る。水を使用する場合、その量は一般的に全溶媒系(水
および水−混和性溶媒)を基にして50%以下にすべきで
ある。しかしながら、ある種の溶媒は金属イオンと錯体
形成しそしてそれにより種々のメタロプロテイナーゼ酵
素を不活性化させるようであり、従ってそのような溶媒
類と共に使用される水の量は一般的に溶媒系の50重量%
以上でなければならない。錯体形成する溶媒の例には、
DMFおよびDMSOが含まれる。溶媒が乾燥状態すなわち生
の状態である場合、それは酵素を固定するために使用さ
れる基質により吸収されている幾分かの水(例えば溶媒
の約10重量%まで)を含有しているであろう。好適なア
セトニトリル溶媒に関して言えば一般的に水の量は最少
値に保たれており、そして「生の」アセトニトリルが良
好な溶媒であることが見いだされており、その場合、供
給される水は基質から生じるものだけである。しかしな
がら、連続的に実施する時には、アセトニトリル溶媒中
の水の量は少なくとも10重量%の水準に保たれなければ
ならず、そして一般的には5〜50重量%の範囲内となる
であろう。酵素の変性を避けるにはこの水量が推奨さ
れ、そして基質の溶解も助けるであろう。該方法を連続
的に実施する場合には、希望により、水を基質流を介し
て加えることもできる。特にN−保護されたアスパラギ
ン酸とフェニルアラニン低級アルキルエステル類および
それらのベンジル置換された誘導体類との結合(バッチ
式または連続的方法)においては、アセトニトリルを種
々の量の水と共に加えることができるが、水の量が50重
量%以下であることが好ましく、すなわちCH3CN/H2O比
は1以上、好適には約2.5以上、でなければならない。
当技術の専門家に公知の方法を使用して、多数の要
素、例えば基質およびジペプチドまたはポリペプチド生
成物の溶媒中での溶解性、水または他の共溶媒の存在
量、共溶媒の酵素に対する影響および他の要素、を考慮
にいれると、それぞれの結合反応用の有機溶媒を最適に
選択することができる。
メタロプロテアーゼ類がペプチド結合生成に関与する
ことは知られている。本発明では、ビブリオ・プロテオ
リチクス(Vibrio proteolyticus)ATCC 53559株に由来
するメタロプロテアーゼ活性含有物質を上記の水−混和
性有機溶媒系と共に使用する。このプロテアーゼは「ビ
ブリオリシン」と称されてきており、そしてここでもそ
の名前で呼ぶことにする。V.プロテオリチクスの他の菌
株もATCCまたは個人的な生産源から入手できるが、希望
する酵素を製造しないかもしれない。V.プロテオリチク
ス ATCC 53559菌株は、メリーランド州20852、ロック
ヴィル、パークローン・ドライブ、12301のアメリカン
・タイプ・カルチャー・コレクションに保管されてい
る。培養物は利用に関しては何の制限なしに保管されて
おり、そして本件の譲受人であるW.R.グレース・アンド
・カンパニイはこの培養物をATCCを通じて現在出願して
いる特許の認可の下で公的に永久に利用できることを保
証している。酵素は精製された形で用いる必要はなく、
ビブリオリシ酵素を含有しておりそして1種以上の他の
酵素も含んでいるかもしれない多少粗製状態の調合物
(例えば濃縮され部分的に精製された発酵肉汁)であっ
てもよい。
公知の如く、多くのプロテアーゼ酵素はエステラーゼ
活性も示す。この活性は場合によっては水ー混和製有機
溶媒の適当な選択により減少させることができる。例え
ば、アセトニトリルはエステラーゼ活性を減少させる際
にある程度の効果を示す。また、エステラーゼ活性が別
の蛋白質により起因するような場合、または両者の位置
が同じ分子上にあると仮定してエステラーゼ活性の位置
がプロテアーゼ位置とは異なっている場合、さらにエス
テラーゼ活性を減少させるために抑制剤を使用すること
もできる。適当な抑制剤はカラスムギ、ファバ、インゲ
ンマメおよびトマトから抽出できる。抽出方法は、日本
農芸化学会誌、31、38頁(1957)中に開示されている。
抑制剤は純粋物質である必要はなく、粗製抽出物であっ
てもよい。
また、ビブリオリシン調合物中に存在しているエステ
ラーゼ活性を、pHを高めた条件下で酵素を製造すること
により減少させることもできる。ビブリオ・プロテオリ
チクス ATCC 53559を、約8.0〜約8.6の、好適には約8.
4〜約8.6の、pHにおいて培養することにより、エステラ
ーゼ不純物をほとんどまたは全く含有していないビブリ
オリシン酵素を入手できる。高められたpHにおける製造
は、ここでは望ましくないエステラーゼ活性の製造減少
および望ましいプロテアーゼ(ビブリオリシン)活性の
製造増加の両方をもたらすことを示している。エステラ
ーゼ活性が減少するにつれて、ビブリオリシンは上記の
如く粗製形でまたは精製形で利用できる。
プロテアーゼ酵素は本発明では結合された形または遊
離形で使用できる。「結合された」という語は、酵素が
適当な不溶性担体上に固定されて回収および再使用可能
な錯体を形成することを意味する。適当な固定方法に
は、物理的吸着、イオン結合、共有結合、架橋結合およ
びその後の吸着、または本質的に反応媒体中に不溶性で
ある担持物質中でのもしくは該物質上での酵素の別の包
囲方法などが包含される。適当な基質には、ケイ素系物
質(例えば多孔性シリカ)、非−ケイ素系セラミックス
(例えばアルミナ)、または天然もしくは合成有機重合
体物質(例えばアンベルライトXAD−7、ポリアクリル
アミド共重合体、アガロース、およびアルギネート)が
包含される。
それとは対照的に、「遊離」酵素は結合されておら
ず、そしてそれは溶媒系中に溶解または懸濁させること
ができる。アセトニトリル中では、酵素を最初に結合さ
せたり上記の如く基質上に固定させたりせずに、懸濁し
た固体沈澱状態で使用できる。固体酵素は、アセトニト
リルの存在下で実施例IIIに記されているようにして沈
澱させることにより、製造される。
高濃度の基質アミノ酸類を準備して反応を納得のいく
反応速度で実施することが好ましい。結合反応用には、
各基質は水中でのそれの溶解度内の濃度で使用される。
しかしながら、反応が進行するにつれて原料が消費され
るため、懸濁状態の基質部分を有することもできる。溶
液中では基質原料はそれぞれ約0.001M〜約2Mの範囲内
の、好適には約0.1M〜約1Mの間の、濃度において存在す
べきである。
N−置換されたアスパラギン酸/フェニルアラニン低
級アルキルエステル結合反応に関しては、両方の基質が
L配置である時には酸/エステルモル比は1:1のモル比
であり得る。実際には、それらは10:1〜1:10の間の、好
適には3:1〜1:5の間の、範囲にわたる比で使用できる。
原料がDL配置である場合には、それらは上記の如きL−
異性体類の比を生じるような量で使用できる。
本発明は例えば、水を含有している固定された酵素を
両出発原料も含んでいる水と混和性である有機溶媒中に
懸濁させ、そして次に撹拌しながら反応を進行させるこ
とにより、実施できる。反応の完了時に、生成物を含有
している媒体を濾過または他の分離方法にかけることに
より、固定された酵素および反応生成物を含有している
懸濁液または溶液を分離できる。
本発明はまた、水を含有している固定された酵素を充
填してあるカラム中に2種の出発原料を含有している水
−混和性有機溶媒を流すことによっても、実施できる。
この方法では反応を連続的に実施でき、そしてこれは本
発明の工業的用途には有利である。
反応温度は普通約10〜約35℃の間の、好適には約20〜
約20℃の間の、範囲である。
反応時間は、2種の基質の濃度、固定された酵素の
量、予め決められた転化速度などに依存している。しか
しながら、普通は約0.5〜約200時間の、好適には約2〜
約24時間の、反応時間で充分である。
希望する生成物がアスパルチームとして知られている
ジペプチドである場合には、反応生成物すなわちN−置
換されたアスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエ
ステルを例えば反応混合物の濃縮およびその後の結晶
化、抽出などの如き一般的な手段により単離できる。反
応混合物は固定された酵素から、当技術での公知の適当
な方法により分離できる。分離後に、固定された酵素を
再使用できる。
本発明を実施する際には、アミノ酸基質はDL配置また
はL配置であってよい。酵素がL異性体に固有でありし
かもDL異性体を使用する場合には、L異性体だけが反応
中に沈澱し、一方D異性体は未反応のまま反応媒体中に
残存している。酵素が立体固有性を有していない場合に
は、D異性体も使用でき、例えばD,L固有性を有してい
ないセリンの如き酵素を用いるならアミノ供与体(例え
ばアラニンまたはフェニルアラニン)はDであってもよ
い。
実施例I.ビブリオ・プロテオリチクス ATCC 53559の発
酵によるビブリオリシンの製造 1.種培養物の製造 A.製造 100mlの種培養用の培地を500mlの目盛り付きエ
ルレンマイヤー・フラスコ中に加え、そして121℃のオ
ートクレーブ中に20分間入れた。
B.接種 −70℃の1個の微生物のアンプルを水道水の下
で解凍し、次に種フラスコに無菌的に移した。
C.培養 接種フラスコを258rpm/27℃において18時間培
養した。
D.640nm.において測定された成長度は4.0〜6.0の間の光
学濃度であり、肉汁のpHは約8.0であった。
2.大規模発酵 1.5リットルの発酵器中で、1.0リットル
容量 A.製造 全ての培地成分(ポリペプトン−40g、海塩−2
0g、MgSO4・7H2O−0.4g、P−2000−0.2ml)を容器に加
え、そして殺菌するまではpHは調節しなかった。それは
pH7.0近くであるはずである。オートクレーブ中で殺菌
する場合には、1.0リットル容器を121℃の温度において
45分間殺菌すべきである。
B.接種 (1)第一セットおよび二重検査操作条件: a.6N NaOHを用いてpHを8.6にする。
b.温度=27℃。
c.RPM=1000。
d.溶解された酸素は1.0−LPM空気において100%と読
む。
(2)10mlの種培養物(または種ブロス)を用いて接
種。
C.操作 (1)上記の条件を保つ。
(2)溶解された酸素はピーク需要量で約75−80%に低
下するであろう。
(3)下記の事項を監視する: a.光学的密度−640nm吸収値で読みとる。約12−14時間
で約10−12 O.D.におけるピーク。
b.メタロエンドペプチダーゼの製造−約0.1単位/秒。
3.ビブリオリシンの収穫および濃度 約10−14時間の発酵時に、生成物酵素はFAGLA試験に
より測定された約0.10〜0.20g/リットルの滴定値に達し
た。細胞が発展段階(約10−25%)となるまで溶解する
前に発酵ブロス汁を収穫した。
最初に、発酵ブロス全体を遠心して細胞部分を分離し
た。次に上澄み液を、アミコンSIOYIOまたはSIYIO限外
濾過カートリッジを使用して、70−100倍に濃縮した。
ビブリオリシン酵素はしばしば1種以上のアミノペプ
チダーゼを不純物として含んでいる。アミノペプチダー
ゼ活性(下記で定義されている)が約0.7単位/秒以下
に低下するまでビブリオリシン濃縮物を周囲温度(例え
ば25℃)で約11.5のpHにおいて約6時間保つことによ
り、これらの酵素の望ましくないエステラーゼ活性を減
じることができた。最後に、処理されたエステラーゼを
含んでいないビブリオリシン濃縮物をそれの伝導性の読
みが1.0mS以下になるまで脱イオン水で洗浄した。アミ
ノペプチダーゼ活性は下記の工程により試験できた: アミノペプチダーゼ アミノペプチダーゼ(エステラーゼ)活性は、L−ロ
イシン−p−ニトロアニリド(ミズーリ州、セントルイ
スのシグマ・ケミカル・カンパニイ)からのP−ニトロ
アニリンの放出による05nmにおける吸収率の増加を監視
することにより、測定できた[プレスコット(Prescot
t),J.M.他、バイオケミストリイ(Biochemistry)、2
4:5350−5356(1985)]。該試験は、0.7mlの0.001Mロ
イシンp−ニトロアニリド、50mMトリス−HCl(pH7.0
4)および適当量の酵素を使用して、実施された。活性
単位は下記の如く定義されている: ここで容量はマイクロリットルで測定され、そして9.66
はL−ロイシン−p−ニトロアニリドに関するマイクロ
モル吸光係数である。
ビブリオリシン活性 ビブリオリシン活性の測定用に、アゾカゼイン(ミズ
ーリ州、セントルイスのシグマ・ケミカル・カンパニ
イ)を基質として使用できた。ビブリオリシンを、1.0m
g/mlのアゾカゼインを含有している50mMトリス−HCl緩
衝液(pH7.4)と共に培養した。37℃における10分間の
培養後に、0.5ミリリットルの10重量/容量%のトリク
ロロ酢酸を加え、直後に混合し、そして混合物を氷の上
で10分間保った。混合物を次に遠心し、そして生成した
上澄み液の光学濃度を420nmにおいて、緩衝されたアゾ
カゼイン溶液中に酵素または不活性化された酵素を含有
していない対照用と対比して測定した。
実施例II.′N−ホルミル−アスパラギン酸の結合 実施例Iに記されている如くして製造されたビブリオ
・プロテオリチクスからの発酵ブロスを濃縮し、そして
洗浄した。発酵ブロス中の中性プロテアーゼをアンベル
ライトXAD−7上で下記の工程により固定した:アンベ
ルライトXAD−7樹脂ビーズをエタノールおよび次に水
で洗浄して、微細物を除去した。洗浄されたビーズを0.
05MMES−O.02M CaCl2溶液(MESは2[N−モルホリノ]
エタンスルホン酸)中に再懸濁させた。アンベルライト
XAD−7を真空濾過することにより過剰の水を除去した
後に、ビーズ(100g)を9.0gのビブリオリシンを含有し
ている4℃の100mlの0.05M MES−O.02M CaCl2緩衝液中
に懸濁させた。一夜振盪した後に、固定されたビブリオ
リシンをMES−CaCl2緩衝液で充分洗浄し、そして次に真
空濾過した。
N−ホルミル−アスパラギン酸(1.93g)およびL−
フェニルアラニンメチルエステル(6.2g)をアセトニト
リル中に溶解させて、150mlの最終的な量とした。14.5g
の湿っている固定された中性プロテアーゼを添加した後
に、室温で24時間反応させた。最終生成物濃度(N−ホ
ルミル−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエ
ステル)をHPLCにより測定すると、11.7g/lであった。
溶媒を真空中で蒸発させ、残渣を酢酸エチル中に溶解さ
せ、そして1NHClで2回洗浄した。水相を該酢酸塩で処
理した。一緒にした有機相を食塩水で洗浄し、そして無
水MgSO4上で乾燥した。溶媒を蒸発させると無色の固体
が得られ、それをジクロロエタンから結晶化させた。そ
れはN−ホルミル−アスパルチームであると同定され
た。
実施例III−懸濁させた固体酵素 実施例Iで製造されたビブリオリシンの静かに撹拌さ
れている溶液(5.0ml、10−11mgの蛋白質/ml)に、アセ
トニトリル(45ml)を0℃において滴々添加した。生成
した沈澱を遠心により集めた。この粗製酵素調合物を80
mMのホルミルアスパラギン酸および240mMのL−フェニ
ルアラニンメチルエステルの95%アセトニトリル溶液に
加えた。反応混合物を5時間撹拌した。HPLC分析結果
は、混合物が65mMのホルミルアスパルチームを含有して
いることを示した。
本発明の主なる特徴および態様は以下のとおりであ
る。
1.アミノ酸もしくはN−末端保護基を有するペプチドま
たはそれらの塩の酸成分を、ペプチド結合の生成に介在
するビブリオリシンの存在下で、アミノ酸もしくはC−
末端保護基を有するペプチドまたはそれらの塩のアミン
成分と反応させることによる、ジペプチドまたはポリペ
プチドの製造方法。
2.反応を水−混和製溶媒の存在下で実施する、上記1に
記載の方法。
3.溶媒がアセトニトリルである、上記1に記載の方法。
4.溶媒の少なくとも50重量%がアセトニトリルでありそ
して残りが水である、上記2に記載の方法。
5.溶媒の少なくとも50重量%がアセトニトリルでありそ
して残りが水、1種以上の水−混和性有機溶媒またはそ
れらの混合物である、上記2に記載の方法。
6.水−混和性溶媒が1価または多価アルコール、ニトリ
ル、エーテルまたはそれらの混合物である、上記2に記
載の方法。
7.アミノ酸成分がN−置換されたアスパラギン酸または
それの塩およびベンジル炭素原子が水素または1種以上
の水素で容易に置換可能な不安定な基で置換されている
フェニルアラニン低級エステルである、上記1に記載の
方法。
8.N−保護基がアルミルまたはベンジルオキシカルボニ
ルである、上記7に記載の方法。
9.フェニルアラニンベンジル炭素がヒドロキシルで置換
されてる、上記7に記載の方法。
10.エステルの低級アルキル置換基がメチルである、上
記7に記載の方法。
11.方法をエステラーゼ抑制剤の存在下で実施する、上
記1に記載の方法。
12.N−保護基がターシャリー−アルコキシカルボニル、
ベンジルオキシカルボニル、p−トルエンスルホニル、
o−ニトロフェニルスルホニルまたはホルミルである、
上記7に記載の方法。
13.フェニルアラニン低級アルキルエステルが式 [式中、 Phはフェニルであり、 Xは−OH、−SH、−Cl、−Br、−I、−PCOCH3、−OCOO
CH3、−NH2またはSCH3であり、そして Rは炭素数が1〜4のアルキル基である] に相当する、上記1に記載の方法。
14.Xが−OHであり、そしてRがメチルである、上記13に
記載の方法。
15.ビブリオリシンをビブリオ・プロテオリチクス ATC
C 53559の培養物から製造する、上記1に記載の方法。
16.pHが約8.0〜約8.6の間である条件下でビブリオリシ
ンを製造する、上記15に記載の方法。
17.該pHが約8.4〜約8.6の間である、上記16に記載の方
法。
18.反応温度が約10〜約35℃の間である、上記1に記載
の方法。
19.ビブリオリシンを懸濁された固体沈澱状で使用す
る、上記3に記載の方法。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ドナルド・ゼイン・フオートネイ アメリカ合衆国メリーランド州21207ボ ルチモア・クレイリツジロード 1555 (56)参考文献 国際公開85/4924(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12P 21/00 - 21/06 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アミノ酸もしくはN−末端保護基を有する
    ペプチドまたはそれらの塩の酸成分を、ビブリオ・プロ
    テオリチクス(Vibrio proteolyticus)の培養物に由来
    するプロテアーゼ活性含有物の存在下で、アミノ酸もし
    くはC−末端保護基を有するペプチドまたはそれらの塩
    のアミン成分と反応させることを特徴とするジペプチド
    またはポリペプチドの製造方法。
  2. 【請求項2】ビブリオ・プロテオリチクスがアメリカン
    ・タイプ・カルチヤー・コレクシヨンにATCC 53559とし
    て寄託されている菌株である請求項1記載の製造方法。
JP63194708A 1987-08-07 1988-08-05 ビブリオリシン結合方法 Expired - Lifetime JP2779171B2 (ja)

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WO2004022733A1 (ja) * 2002-07-26 2004-03-18 Ajinomoto Co., Inc. ペプチドを生成する新規酵素およびこれを生産する微生物およびこれらを用いるジペプチドの製造方法
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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NZ220958A (en) * 1986-12-22 1989-08-29 Grace W R & Co Enzymatic production of peptides in water-miscible organic solvents

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JPH01104192A (ja) 1989-04-21
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NZ225687A (en) 1990-10-26
EP0302442A2 (en) 1989-02-08
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