JP2774810B2 - 陶磁器用素地組成物およびそれを用いて陶磁器生素地成型体を製造する方法 - Google Patents

陶磁器用素地組成物およびそれを用いて陶磁器生素地成型体を製造する方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、陶板、屋根瓦、外装化粧建材、灰皿等の薄
肉の製品を製造するに用いる陶磁器用素地組成物および
それをホツトプレス等で成型して陶磁器生素地成型体を
製造する方法に関する。
〔従来の技術〕
屋根瓦、額絵、陶板、灰皿等多量に生産される土器、
陶磁器は、陶磁器用素地粉末に水、および/または樹脂
水性エマルジヨンを加え、これを常温でプレス成形、注
型成形、押出成形して所望の形状にされ、ついで乾燥さ
せたのち、800〜1300℃の高温に焼成され、そのまま製
品(瓦、土器等)とされるか、更にこの上に施釉し、二
次焼成して製品(陶磁器)とされる。必要によりこれら
は絵付されることもある。
陶磁器用の素地原料の陶土は、長石、カオリン、粘
土、雲母、珪石等の粉末に、秤量された水を加え、これ
を粉砕機で細かく砕いた泥しようをフイルタープレス等
で濾過して調製されたもので、これは一般に水を20〜30
重量%含有する。
この陶土は水と練られ、脱泡されたのち、成形され、
乾燥して陶磁器生素地とされるのであるが、この乾燥工
程に数日要し、作業が効率的でない。
乾燥工程を短時間に行うために、陶磁器用素地粉末
(陶土)を100〜180℃でホツトプレス成型することも試
みられているが、得られる陶磁器生素地の強度が弱く、
欠けたり、ひびわれたりする。また、作業性も悪く収縮
も大きく、これを焼成して得られる製品は実用性に乏し
い。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は樹脂エマルジヨンを用いることにより生素地
からの成型乾燥後の素地強度付与やホツトプレス成型に
より十分強度のある陶磁器生素地が得られる陶磁器用素
地組成物を提供することを目的とする。
〔課題を解決する具体的手段〕
本発明においては、陶土として陶磁器用素地粉末の表
面にエマルジヨンの樹脂が付着した陶磁器用素地組成物
(泥しよう)を用いることにより i).これをエマルジヨンの造膜温度よりも低い温度で
乾燥させた陶土粉末は、乾燥状態で市場に流すことがで
き、一般陶工所は勿論のこと陶芸教室や学校の工作材料
として利用できる。
ii).上記乾燥させた陶土粉末をそのままホツトプレス
成形すれば簡単に強度のある陶磁器生素地成型体を得る
ことができる。
等の利点を有する。
即ち、本発明の第1は、 (A)陶磁器用素地粉末 100重量部 (B)多価金属イオンによりキレート化合物を作るアニ
オン性界面活性剤を用いて、ビニル単量体混合物を乳化
重合して得られる共重合体水性エマルジヨンであつて、
該共重合体中のカルボキシル基濃度が0〜0.3重量%で
あるアニオン性共重合体水性エマルジヨン 共重合体の固型分量で3〜50重量部 (C)水中で多価金属イオンを発生する無機化合物 10〜100重量部 上記(A)、(B)および(C)成分を含有し、
(C)成分または(A)成分と(C)成分から水中で発
生した多価金属イオンにより(B)成分のエマルジヨン
を破壊してエマルジヨンの共重合体粒子を(A)成分の
粉末の表面または(A)成分と(C)成分の粒子の表面
に凝集・付着させて得た陶磁器用素地組成物(泥しよ
う)を提供するものである。
本発明の第2は、上記泥しよう(陶磁器用素地組成
物)を、前記(B)成分のエマルジヨンの造膜温度より
も低い温度で過して陶磁器用素地粉末組成物を調製
し、この陶磁器用素地粉末組成物を(B)成分のエマル
ジヨンの造膜温度以上の温度下で圧縮成形して陶磁器生
素地成型体を製造する方法を提供するものである。
本発明の第3は、前記泥しよう(陶磁器用素地組成
物)を、前記(B)成分のエマルジヨンの造膜温度より
も低い温度で成型した後、ついでこの成型物を(B)成
分のエマルジヨンの造膜以上の温度で乾燥させて陶磁器
生素地成型体を製造する方法を提供するものである。
(陶磁器用素地組成物) (A)成分の陶磁器用粉末は、SiO2・Al2O3が主成分
の粉末で、カオリン、粘土、長石、雲母、ベントナイ
ト、珪石、滑石等が利用される。更に、焼成された陶磁
器の粉砕品も再利用することができる。
本発明においては、特殊のエマルジヨンを用いること
により陶磁器用素地と水との泥しようをフイルタープレ
スして陶土とする、このフイルタープレス前の階段でエ
マルジヨンを添加することができる。
従来の泥しようをフイルタープレスされた陶土は水を
多量(20〜30重量%)に含有するものであるから粘土状
の粘弾性を有するもので、この陶土に樹脂エマルジヨン
を均一に混合することが難しい。例え、無理やりに陶土
と樹脂エマルジヨンを混入しても泡の混入が生じたり、
粘性が低下し、ろくろ作業や注型作業が困難である。
本発明者はフイルタープレス前の泥しように陶土が有
するCa++、Mg++、Fe++、Al+++に安定なカチオン系樹脂
水性エマルジヨンを添加することを試みたところ、この
エマルジヨンを含有した泥しようはフイルタープレス時
に布がエマルジヨン樹脂粒子(粒径0.05〜3ミクロ
ン)により目詰りを生じ、過を十分に行うことができ
ないことが判明した。かかる目詰りゆえに従来提案され
ている方法では陶土にエマルジヨンを配合せざるを得
ず、泥しよう後のフイルタープレス時の過乾燥と、得
られた陶磁器用素地粉末とエマルジヨンを混合乾燥、と
二度の乾燥を経なくてはならない。
これに対し、本発明においては、粉砕工程で(A)成
分の陶磁器用素地粉末と、(B)成分のアニオン性樹脂
エマルジヨンとの混合スラリーに(C)成分のエマルジ
ヨン凝集剤を加えることにより、この(C)成分より発
生する多価金属イオンが水中で(B)成分のエマルジヨ
ン中のアニオン性界面活性剤とキレートを形成し、エマ
ルジヨンを破壊してエマルジヨンの共重合体粒子が陶磁
器用素地粉末に付着する。この共重合体粒子が付着した
陶磁器用素地粒子は粒径が大きいのでフイルターに目詰
りを生じさせない。もちろん、(A)成分を含む水スラ
リーをボールミル等での粉砕後に(B)及び(C)成分
を(B)成分の造膜温度(M.F.T)より低い温度で加え
てもかまわない。
従つて、フイルタープレスにより過、乾燥された、
樹脂粒子が凝集付着した陶磁器用素地粉末組成物を直に
ホツトプレス成形に供することができる。勿論、このも
のはホツトプレス成形でなくても、ろくろや押出成形、
注型成形、常温でのプレス成形により陶磁器用生素地を
与える。
又、樹脂水性エマルジヨンには、乳化剤を含まれるが
本発明では、過工程を経ることにより、水相中の乳化
剤は液中に除去されてしまうので乳化剤による泡の影
響を組成物は受けない。
(B)成分のアニオン性共重合体再生エマルジヨンは
多価金属イオンによりキレート化合物を作るアニオン性
界面活性剤を用いて、ビニル単量体を乳化重合して得ら
れる共重合体水性エマルジヨンであつて、該共重合体中
のカルボキシル基濃度が0〜0.3重量%であるアニオン
性共重合体水性エマルジヨンである。
ここで共重合体中のカルボキシル基濃度は共重合体を
形成したビニルモノマーの総重量に対し、その共重合体
に占めるα,β−不飽和酸に基づく構成ユニツトの重量
%をもつて示す。
α,β−不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル
酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン
酸等が使用される。
(C)成分の破壊剤より発生したCa++、Mg++、Fe++
Al+++、Sr++等の多価金属イオンは、エマルジヨン中の
アニオン性界面活性剤と反応してキレート化合物を生成
し、エマルジヨンの安定性を損いエマルジヨンの樹脂粒
子が陶磁器用素地粉末粉子や破壊剤粒子の表面に凝集・
付着させる効果があるが、一方、カルボキシル基を有す
るエマルジヨンの共重合体粒子も、これらイオンを捕捉
してキレートを形成する。従つて、前記アニオン性界面
活性剤とのキレート反応を遅らす原因となるので、
(B)成分のアニオン性共重合体の水性エマルジヨンの
樹脂は、カルボキシル基が粒子表面に出来るかぎり存在
しないか、酸基を有していないものであることが好まし
い。
ビニル単量体としてアクリル酸、メタクリル酸、イタ
コン酸、フマル酸、無水マレイン酸、クロトン酸等の
α,β−不飽和カルボン酸を用いるときは、共重合体中
のカルボキシル基濃度が前述の濃度以下となるように用
いる。この濃度を越えるとCa++やMg++等の多価金属イオ
ンが水性エマルジヨンの樹脂に食われる量が多く、エマ
ルジヨン樹脂粒子の凝集・凝固に要する時間が長くな
る。
(C)成分より発生するCa++やMg++等の多価金属イオ
ン、または(A)成分中のCa++やMg++は、乳化剤のアン
モニアイオンやK+、Na+、Li+等の金属イオンとイオン交
換しキレート化により、例えば乳化剤は親水性の低下し
た有機スルホン酸カルシウム塩又は有機カルボン酸カル
シウム塩等となり、その界面活性能力を下げエマルジヨ
ンが破壊され、共重合体粒子は凝集、凝固し、(A)成
分の陶磁器用素地粉末等の固体粉末に付着し、含水陶磁
器用素地組成物を形成する。
かかるアニオン性の乳化剤としては、ラウリン酸スル
ホン酸ソーダー、ステアリン酸ソーダー、ポリオキシエ
チレンアルキルエーテル硫酸エステルソーダー、ポリオ
キシエチレンアルキルフエニルエーテルスルホン酸ソー
ダー、アルカンスルホン酸ソーダー、アルキルベンゼン
スルホン酸ソーダー、アルキルジフエニルエーテルジス
ルホン酸ナトリウム等の有機スルホン酸ソーダー塩;脂
肪族石鹸、脂肪酸サルコシド、ロジン酸石鹸等の脂肪酸
金属塩;これらのNa+の代りに、K+、NH4 +、アルカノー
ルアミンイオンを有する硫酸エステル型アニオン性界面
活性剤もしくは脂肪酸誘導体が利用できる。
これらアニオン性乳化剤は、得られる水性エマルジヨ
ンの共重合体100重量部に対し、固型分量で0.6〜2.5重
量部の割合で用いる。これより多い場合、乳化剤の破壊
作用が小さく期待される共重合体粒子の凝集が部分的又
は全く生じなくなる。又、少ない場合水性共重合体エマ
ルジヨンの重合安定性、貯蔵安定性が低く、かつ共重合
体粒子の凝集が速く陶磁器用素地粉末との混和安定性に
問題がある。
即ち、0.6重量部未満では、共重合体粒子の凝集物の
発生や、凝集の速度がはやく、(A)成分の陶磁器用素
地粉末と(B)成分の共重合体水性エマルジヨンと水の
均一混合した含水陶磁器用素地組成物を得ることができ
ない。又、エマルジヨンの乳化重合も安定して行うこと
ができない。
2.5重量部を越えるとエマルジヨンの共重合体粒子の
凝集、凝固に時間を要するとともに、エマルジヨンの共
重合体の構成成分によつては、混合スラリーを静置する
と共重合体エマルジヨンの一部が含水陶磁器用素地組成
物(下層1)と分離したエマルジヨン上層2を形成(第
1図参照)し、混合スラリーをフイルタープレスや減圧
過する際、この上層を形成していたエマルジヨンの粒
径が0.03〜3ミクロンの樹脂粒子がフイルターに目詰り
を生じさせたり、布表面での乾燥により皮膜成形を起
す。
エマルジヨンの乳化重合時、アニオン性乳化剤と一諸
にポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエ
チレンアルキルフエニルエーテル、ポリオキシエチレン
化ヒマシ油等のノニオン性界面活性剤を併用しても良
い。このノニオン乳化剤は、Ca++、Mg++等による凝集作
用を受けず、共重合樹脂粒子をCa++、Mg++より守り安定
化させる力を有する。又、樹脂エマルジヨンの重合時に
安定で効果的で、かつ、陶磁器用素地粉末および(C)
成分の無機化合物の分散剤として有効である。しかしな
がら、2%を超えて用いた場合、樹脂エマルジヨンの一
部を凝集しえなくなる為、出来るかぎり少ないほうが良
い。この為(B)成分の共重合体粒子に対して0〜2%
の範囲で重合時又は、重合後にノニオン乳化剤を配合す
るのが好ましい。
アニオン性共重合体を与えるビニル単量体としては、
アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエ
ステル(これらアルキル基の炭素数は1〜8);2−ヒド
ロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルア
クリレートおよびこれらのメタクリレート相当物;アク
リルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルア
ミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、アクリ
ロニトリル、メタクリル酸メチル等のエステル類、酢酸
ビニル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、イタコ
ン酸、フマル酸、クロトン酸、無水マレイン酸等が利用
でき、これらビニル単量体の2種以上を選択し、得られ
る水性エマルジヨンの共重合体粒子の造膜温度が、好ま
しくは30〜80℃となるようにするとともに、共重合体中
のカルボキシル基の量が前記した量の範囲となるように
ビニル単量体を選択する。なお、ビニルスルホン酸ナト
リウム等のごとく反応性乳化剤と呼ばれるものは、アニ
オンであればアニオン性乳化剤として取扱う。
水性エマルジヨンの造膜温度は、一般にM.F.T.測定装
置が使用される。その詳細は日本エマルジヨン工業会19
88年制定の合成樹脂エマルジヨン試験法JEI101−1988に
従う。なお、エマルジヨン状態で無いものはこの方法で
は測定出来ない為、簡易的に示差熱分析法による樹脂の
ガラス転移温度(Tg)を代用して示す。
乳化重合は通常の方法で行われ、得られる共重合体水
性エマルジヨン中の樹脂固型分濃度は20〜65重量%、共
重合体粒子の粒径は0.03〜3ミクロンが一般である。
このアニオン性共重合体水性エマルジヨンの使用量
は、共重合体を構成するビニル単量体の種類により大き
く作用されるが、一般に(A)成分の陶磁器用素地粉末
100重量部に対し、共重合体の固型分量で3〜50重量部
である。3重量部未満では、得られる陶磁器生素地成形
体の強度が弱く、欠けたり、ひびわれたりする。50重量
部を越えると陶磁器の焼成工程における燃焼分が多く、
及び、凝集のための(C)成分のエマルジヨン凝集剤の
添加量が多くなり、得られる陶磁器の強度が低下する。
(B)成分のアニオン性共重合体水性エマルジヨン中
のアニオン性界面活性剤のNa+、K+、アンモニウムイオ
ン等と置換反応してエマルジヨンの分散安定性を破壊
し、エマルジヨンの共重合体粒子を陶磁器用素地粉末に
凝集・付着させる凝集剤(破壊剤)として作用する
(C)成分の無機化合物としては、カルシウム、マグネ
シウム、鉄、アルミニウム、ストロンチウム等の多価金
属の酸化物、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物等が使用され
る。具体的には水中でイオンを発生させる必要があり、
少しづつ溶け、ゆつくりと作用するのがよく石膏、生石
灰、酸化マグネシウム、明ばん、炭酸マグネシウム炭酸
ストロンチウム等が利用できる。これらの中でも溶解度
や反応速度が適用であるカルシウム化合物、マグネシウ
ム化合物が好ましい。
これら(C)成分の無機化合物は、エマルジヨンを凝
集破壊するのに十分な量用いられる。(A)成分の陶磁
器用素地粉末にも種類によつてはエマルジヨンを凝集破
壊する多価金属イオンを水中で発する不純物を含むもの
もあるが、そのイオン量は少ない。
水は、混合スラリーの撹拌や、粉砕機よりフイルター
プレスに混合スラリーを移す作業を容易とするため、混
合スラリーを希釈する目的で加えることができ、その量
は、混合スラリー中の50〜90%とまで加えることができ
る。他に、着色剤、減水剤、等も添加できる。
(樹脂付着陶磁器用素地粉末) 表面に樹脂粒子が付着した陶磁器用素地粉末を得るに
は、(A)成分の陶磁器用素地粉末に(B)成分の樹脂
エマルジヨンを該エマルジヨンの造膜温度より低い温度
下で加え、混合し、必要により水で希釈し(又は、陶磁
器用素地粉末にまえもつて水を加えてもよい)、つい
で、撹拌下に(C)成分のエマルジヨン凝集剤を加え、
エマルジヨンの破壊を行つてエマルジヨンの樹脂粒子を
(A)成分の粉末、あるいは(A)成分と(C)成分の
粉末表面に凝集付着させた混合スラリー(泥しよう)を
得、必要によりこの混合スラリーを水で希釈した後、
(B)成分のエマルジヨンの造膜温度より低い温度で
過(フイルタープレス)を実施し、水含量が20〜30重量
%の樹脂付着陶磁器用素地とする。
フイルタープレスをエマルジヨンの造膜温度よりも低
い温度、好ましくは造膜温度よりも5℃以上低い温度で
行なうので、脱水され、樹脂粒子が凝集付着した陶磁器
用素地組成物は、常温で手で容易に変形できる可塑性の
塊であり、乾燥により粉末状となる。又、そのまま成型
し、(B)成分の造膜温度より高い温度で乾燥させても
使用する。
(陶磁器生素地成型体) 陶磁器用素地組成物は粉末のままホツトプレス成型し
て、または水を加えてどう状とし、ろくろや押出成形、
鋳込成形し、陶磁器生素地成型体とする。常温での圧縮
成形やろくろ成形して得た成型体に対し、エマルジヨン
を構成していた共重合体粒子の造膜温度又はガラス転移
点(Tg)以上の温度でホツトプレスや、押出成形、鋳込
成形して造膜温度以上の温度で乾燥して得た成型体は、
樹脂が結合剤の役目をなしているので強度が高く、収縮
も小さく、ひび割れや欠けがない。瓦、陶板等の生素地
成型体をホツトプレスする時の温度は、(B)成分の共
重合体粒子の造膜温度又はガラス転移点以上の温度であ
つて、通常80〜200℃、好ましくは100〜140℃で行うの
が融着の面で効果的である。
(陶磁器) 陶磁器生素地成型体は、その素地に合つた温度で焼成
され、瓦、陶板、タイルとなる。また、焼成した後、釉
薬を施こし、再び焼成し、釉のついた陶磁器、タイル、
瓦等とされる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。な
お、例中の部および%は、特に例記しない限りは重量基
準である。
水性樹脂エマルジヨンの製造例 例1 温度調節器、いかり形撹拌器、還流冷却器、供給容
器、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器内に、下記
の原料を装入した。
水 200部 エチレンオキシド20モルと反応させたp−ノニルフエ
ノールの硫酸半エステルのナトリウム塩(アニオン性乳
化剤A)の35%水溶液 3.9部 次いで、反応容器内を窒素ガスで置換したのち、次に
示す供給物Iの10%を加え、混合物を90℃に加熱した。
供給物I 水 200部 前記アニオン性乳化剤の35%水溶液 19部 スチレン 266部 アクリル酸n−ブチル 120部 アクリルアミド 14部。
更に、85部の水に2.5部の過硫酸カリウムを溶解した
もの(供給物II)の10%を容器内に装入後、残りの供給
物I全ておよび供給物IIの90%を3.5時間かけて容器内
に供給し、供給終了後、2時間、同温度に保つて供給物
Iを重合させて−COOH含量が0重量%、固型分量50重量
%のアニオン性樹脂水性エマルジヨン(最低造膜温度43
℃、Tg約35℃)を得た。
例2〜12 ビニル単量体の種類、乳化剤の種類、量を表1のよう
に変化させて、同表に示す物性の共重合体粒子の水性エ
マルジヨンを得た。
なお、ノニオン性乳化剤は、反応容器内に最初に投入
した。
実施例1 長石60部、陶石470部、珪石100部、蛙目粘土200部お
よび木節粘土170部よりなる陶土1000部に水を500部加え
た後、これをボールミルで20℃の温度下で20時間粉砕し
て混合スラリーとし、更に、製造例1で得たアニオン性
共重合体エマルジヨン(Tg35℃)250部、α−石膏を250
重量部加え、更にボールミルで粉砕を1時間続け、共重
合体粒子が付着した無機粒子の泥しようを得た。
この泥しようを、25℃で500mm Hgの減圧下に減圧過
して水分含量が25重量%以下の陶磁器用素地粉末組成物
の粒状物を得た。布の目詰りはなかつた。さらに30℃
以下にて乾燥させたこの粒状物を、プレス金型に入れ、
100℃、圧力20kg/cm2でホツトプレス成形し、厚さ5mm、
150mm×150mmの板状生素地成型体を得た。
このものは、ひび割れも欠けもなく、収縮もほとんど
なかつた。
応用例 市販の白釉100重量部に水100重量部を加え、ボールミ
ルで粉砕混合した(固型分約58%、pH9.3)。この分散
釉薬液100重量部に、アクロナールYJ2870D(三菱油化バ
ーデイツシエ(株)アクリル系アニオン性樹脂水性エマ
ルジヨン、固型分50重量%、pH6.0)を10重量部配合
し、生釉とした。
この生釉を実施例1で得た陶板用生素地成型体の表面
に吹き付け塗装し、150℃で予備乾燥した後、この生釉
層の表面に転写紙上に印刷した絵柄層を水スライド法に
より転写し、この絵付した成型体を1,250℃で焼成(釉
焼)して絵付し、絵柄の明瞭な陶板を得た。
このものは、欠けもひび割れもなく、強度の高い陶板
であつた。
比較例1 実施例1において、過時の液の温度をエマルジヨ
ンの造膜温度より高い温度の60℃で行つたところ、陶磁
器用素地粉末同志が融着し、塊となつた。又、泥しよう
を加熱し、60℃へ上げて行つたところおよそ45℃ぐらい
から増粘が認められた。
実施例2 実施例1において、破壊剤としてα−石膏の代りに表
2に示すものを用いる他は同様にひび割れや欠けがな
く、強度の良好な陶板用生素地成型体を得た。
実施例3〜5、比較例2〜7 実施例1において、陶磁器用素地粉末1000重量部に対
するエマルジヨン、α−石膏の配合量を表3のように変
更する他は同様にして陶板用生素地成型体を得た。
実施例6〜10、比較例8〜13 実施例1において、エマルジヨンとして製造例1のも
のの代わりに製造例2〜12のものを用い、かつ、ホツト
プレス温度を表4に示す温度で行う他は同様にして陶磁
器生素地成型体を製造した。
実施例11 瓦用素地粉末1000部に製造例4で得たエマルジヨンを
350部を加て、さらに水を加え、混合スラリーとボール
ミルで20時間粉砕した。
これにMgO300部を加え、さらにボールミルで30℃で混
合粉砕した後、30℃でフイルタープレスして水含量が約
22%の粘土状物を得た。これを、50℃の気流下で乾燥
し、粒状乾燥体を得た。
この粒状物を120℃で、圧力20kg/cm2の条件下でホツ
トプレスし、瓦生素地を得た。これを900℃で焼成し、
瓦を得た。
実施例12 実施例12でMgO300部の代りにMgO100部とβ−石膏200
部の混合物を用いる他は、同様にして問題なく成型体を
得た。
実施例13 アルミナ粉末1000部、製造例4のエマルジヨン50部、
MgO100部、適当量の水を20℃にて混合し、樹脂粒子をア
ルミナに付着させたのち、減圧脱水過を行つた。これ
を150℃にて乾燥することで厚さ2mm、大きさ300mm×300
mmの板状体を得た。又、過後40℃気流下で乾燥させ、
軽く砕くことで樹脂付着陶土粉末を得た。これを、180
℃、20kg/cm2でホツトプレスして強度の高いアルミナ成
型板を得た。
(効果) 本発明は、陶磁器用素地粉末と水との混合スラリーを
ボールミルで砕き、泥しようを形成させる際に、特殊の
樹脂水性エマルジヨンを添加、必要によりエマルジヨン
凝集剤をも添加させることにより布に目詰りを生じさ
せることなく樹脂が陶土表面に付着した陶磁器用素地組
成物を調製することができる。
これより得られる陶磁器生素地成型体は強度が高く、
欠けを生じない。
【図面の簡単な説明】
第1図は陶土とエマルジヨンの混合スラリーを静置した
ときの混合スラリーの悪い分散状態を示す断面図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C04B 33/13 B28B 3/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)陶磁器用素地粉末 100重量部 (B)多価金属イオンによりキレート化合物を作るアニ
    オン性界面活性剤を用いて、ビニル単量体混合物を乳化
    重合して得られる共重合体水性エマルジヨンであつて、
    該共重合体中のカルボキシル基濃度が0〜0.3重量%で
    あるアニオン性共重合体水性エマルジヨン 共重合体の固型分量で3〜50重量部 (C)水中で多価金属イオンを発生する無機化合物10〜
    100重量部 上記(A)、(B)および(C)成分を含有し、(C)
    成分または(A)成分と(C)成分から水中で発生した
    多価金属イオンにより(B)成分のエマルジヨンを破壊
    してエマルジヨンの共重合体粒子を(A)成分の粉末の
    表面または(A)成分と(C)成分の粒子の表面に凝集
    ・付着させて得た陶磁器用素地組成物。
  2. 【請求項2】請求項第1項記載の陶磁器用素地組成物
    を、前記(B)成分のエマルジヨンの造膜温度よりも低
    い温度で過して陶磁器用素地粉末組成物を調製し、こ
    の陶磁器用素地粉末組成物を(B)成分のエマルジヨン
    の造膜温度以上の温度下で圧縮成形して陶磁器生素地成
    型体を製造する方法。
  3. 【請求項3】請求項第1項記載の陶磁器用素地組成物
    を、前記(B)成分のエマルジヨンの造膜温度よりも低
    い温度で成型した後、ついでこの成型物を(B)成分の
    エマルジヨンの造膜以上の温度で乾燥させて陶磁器生素
    地成型体を製造する方法。
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