JP2770585B2 - エレクトロクロミック素子 - Google Patents

エレクトロクロミック素子

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JP2770585B2 JP3069403A JP6940391A JP2770585B2 JP 2770585 B2 JP2770585 B2 JP 2770585B2 JP 3069403 A JP3069403 A JP 3069403A JP 6940391 A JP6940391 A JP 6940391A JP 2770585 B2 JP2770585 B2 JP 2770585B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば酸化タングステ
ン膜のようなエレクトロクロミック薄膜層の最外膜のク
ラック発生を防止する構造を付与したエレクトロクロミ
ック素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電圧を印加すると可逆的に電解酸化又は
還元反応が起こり、可逆的に着色する現象をエレクトロ
クロミズムという。このような現象を示すエレクトロク
ロミック(以下、ECと記す)物質の電気化学的酸化還
元反応に伴う物質の色調変化を利用したエレクトロクロ
ミック素子(以下、ECDと記す)は、外部電圧による
光学濃度の制御が可能であることから光変調素子として
も用いられる。例えば、ガラス基板上に透明電極膜、E
C物質からなるEC薄膜層、電極膜を順次積層してなる
ECDが一般的である。
【0003】尚、本明細書中でエレクトロクミック薄膜
層又はEC薄膜層と記すものは、EC物質の単層、EC
物質の単層とイオン導電層との2層、還元発色性EC物
質の単層と電解酸化性薄膜(場合により、酸化発色性E
C物質の単層である)との2層、還元発色性EC物質の
単層とイオン導電層と電解酸化(発色)性薄膜との3層
のいずれかを指す。
【0004】透明電極膜としては、例えば、SnO2,In2O
3 ,ITO(SnO2とIn2O3 との混合物)などが使用される。
不透明な電極膜は、反射層と兼用してもよく、例えば、
金、銀、アルミニウム、クロム、スズ、亜鉛、ニッケ
ル、ルテニウム、ロジウム、ステンレス等の金属が使用
される。
【0005】イオン導電層としては、例えば、酸化ケイ
素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸
化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ラ
ンタン、フッ化マグネシウムなどが使用される。還元発
色性EC物質としては、一般にWO3 ,MoO3などが使用さ
れる。
【0006】電酸化(発色)性薄膜としては、例え
ば、酸化ないし水酸化イリジウム、同じくニッケル、同
じくクロム、同じくバナジウム、同じくルテニウム、同
じくロジウムなどが使用される。また、この中に、導電
性物質、例えば、SnOとInなどが混ざって
いてもよい。
【0007】図2は従来の全固体薄膜型ECDの構成を
示す模式断面図である。図に示す通り、基板1上に下部
電極膜2及び下部電極膜2に隔てて上部電極接点3が蒸
着されている。下部電極膜2の上部には、エレクトロク
ロミック薄膜層(以下、EC薄膜層と記す)として、酸
化発色層である酸化イリジウム膜4と、プロトン伝導性
の電解質として作用するイオン導電層である酸化タンタ
ル膜5と、還元発色層である酸化タングステン膜6との
3層が順に蒸着されている。EC薄膜層の上部には、上
部電極接点3と導通するように上部電極膜7が蒸着され
ている。
【0008】このような全固体薄膜型ECDは電極膜、
及びEC薄膜層の全てを真空蒸着・イオンプレーティン
グ・スパッタリングなどの真空薄膜形成技術により連続
して成膜・積層できるという特徴をもつが、同一の蒸着
マスクを用いて積層するとマスクエッジにおいて上下の
電極が接触してしまい、素子が短絡状態となって動作し
なくなるという問題が生じる。
【0009】従って、ECDの成膜工程では、両極が短
絡しないような形状に下部電極膜、EC薄膜層、上部電
極膜のそれぞれを設計することが必要となり、実際には
各層成膜終了後に真空槽を大気開放して基板を取出し、
次の層に適合した蒸着マスクに交換して再排気・成膜を
行なうことになる。
【0010】成膜工程の一例を次に示す。先ず、ガラス
基板を用意し、常法により洗浄後、下部電極膜の形状に
加工された蒸着マスクに密着させ真空蒸着装置の真空槽
中にセットする。減圧排気を開始し、所定の真空度に達
したところで下部電極膜の蒸着を行なう。
【0011】下部電極膜蒸着終了後、真空槽を大気圧に
し、基板を取出してEC薄膜層の形状に加工された蒸着
マスクに交換して、再度減圧排気する。所定の真空度に
到達後、上述の酸化イリジウム、酸化タンタル、酸化タ
ングステンの3層を同一マスクで連続して蒸着する。
【0012】EC薄膜層を蒸着した後、再び大気圧にし
て取り出して、上部電極膜用蒸着マスクに交換、上部電
極膜を蒸着する。一般には耐久性向上のため膜面の封止
が行われECDが完成する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】以上に述べたように、
ECDの製造においてはEC薄膜層成膜終了後に蒸着マ
スク交換を行う必要があるが、交換作業中または上部電
極蒸着のための再排気の際に、酸化タングステン膜にク
ラックが生じやすいという問題点があり、マスク交換時
の大気中放置時間が長くなるにつれてクラック発生率が
高くなるため、クラックを避けるために生産量を抑えざ
るを得ないという問題があった。
【0014】クラックの発生及び発生率は酸化タングス
テン薄膜の成膜条件や膜厚によっても異なるが、通常、
ECDに実用的な着色濃度を持たせるために必要な成膜
条件・膜厚ではクラックが発生しやすい。
【0015】本発明は、交換作業中または上部電極蒸着
のための再排気の際に、EC薄膜層の最外膜にクラック
が生じることがないエレクトロクロミック素子を得るこ
とを目的とする。
【0016】本発明にかかるエレクトロクロミック素子
では、基板表面上に第1の電極膜とエレクトロクロミッ
ク薄膜層と第2の電極膜とを順に備えたエレクトロミッ
ク素子において、前記エレクトロクロミック薄膜層と第
2の電極膜の間に、エレクトロクロミック薄膜層を成膜
した後連続して成膜されてなるエレクトロクロミック薄
膜層と同一パターンの電極薄膜層を備えたものである。
【0017】また、好ましい電極薄膜層の厚さが200
〜1000Åであるものを開示するものである。
【0018】
【作用】EC薄膜においては、成膜直後から常に膜自身
が膨脹又は収縮しようとする方向に内部応力が働いてい
る。そのため積層の最外表面がEC薄膜とした状態で放
置すると、EC薄膜の膨脹又は収縮によってクラックが
生じると考えられている。また、成膜後長時間大気中に
放置した後で真空に再度減圧排気した場合には、膜中に
吸着した水分の脱着が起こることにより更に大きな応力
が働き、クラックが発生しやすくなる。
【0019】そこで、本発明では、EC薄膜層と第2の
電極膜の間に前記EC薄膜層と同一パターンで成膜され
た電極薄膜層を備えたものであるため、EC薄膜層のう
ち最外のEC薄膜の膨脹又は収縮による応力が抑えら
れ、クラックの発生を防止する。
【0020】即ち、EC薄膜層が酸化イリジウム、酸化
タンタル、酸化タングステンの3層の場合には、酸化タ
ングステン膜上に電極薄膜層としてITO膜を連続して
蒸着した後で、大気中に開放しても、酸化タングステン
膜の両面が酸化タンタル膜とITO膜で狭まれた構造と
なっているため、放置あるいは再排気時の酸化タングス
テン膜の膨脹又は収縮が抑えられ、酸化タングステン膜
のクラックの発生を防ぐことができる。
【0021】また、電極薄膜層としては、EC薄膜に電
流を供給することのできる導電性のある膜で、ECDに
使用可能なもので、EC薄膜層及び上部電極膜と親和性
のあるものであればよく、ITO,SnO2 ,In2
3 ,ZnO,極薄の金等のように、上部電極膜に使用で
きるものや上部電極膜と同じ物質を使用することがで
き、EC薄膜層最外膜の膨脹又は収縮による内部応力に
耐えられる膜であればよい。
【0022】尚、電極薄膜層の強度が、EC薄膜層最外
膜の膨脹又は収縮による内部応力に耐えられる範囲であ
ればクラックの発生を防ぐことができる。具体的に、E
C薄膜層最外膜が酸化タングステン膜であり、電極薄膜
層がITO膜の場合には、クラック防止効果のある透明
電極の強度を得るには、最低限200Åの膜厚が好まし
かった。また、他のSnO,In,ZnO等の
電極薄膜も、ITO膜と同等の強度を有しているので、
同様に最低限200Åの膜厚が好ましいと思われる。
【0023】また、電極薄膜層は、EC薄膜層の真空度
を変更せずに連続して積層しなければならないことか
ら、必然的にEC薄膜層と同じ蒸着用マスクを使用する
ことになる。
【0024】一方、酸化タングステン膜上に連続して積
層する電極薄膜層を必要以上に厚くすると次のような問
題が生じる。即ち、一般に使用される蒸着用マスクは燐
青銅やステンレス薄板等で構成されているが、このよう
な蒸着用マスクではマスクエッジ部での基板との密着が
完全でなく、ある程度マスク外側へ蒸着物質の回り込み
を生じることが避けられず、その回り込みの度合いは膜
厚が厚くなるに従って大きくなる。
【0025】従って、酸化タングステン膜上に同一蒸着
マスクを使用して電極薄膜層を蒸着する場合、膜厚を厚
くし過ぎると回り込のために下部電極膜と接触し、素子
が短絡してメモリー性が著しく低下するという問題を生
じる。このため、電極薄膜層の膜厚は1000Å以下で
あるのが好ましい。
【0026】
【実施例】図1は本発明の一実施例のECDの構成を示
す模式断面図である。図に示す通り、基板11上に下部
電極膜12及び下部電極膜12に隔てて上部電極接点1
3が蒸着されている。下部電極膜12の上部には、EC
薄膜層として、酸化発色層である酸化イリジウム膜14
と、イオン導電層である酸化タンタル膜15と、還元発
色層である酸化タングステン膜16との3層が順に蒸着
されている。EC薄膜層の上部には、EC薄膜層と同一
パターンでITO膜の電極薄膜層17が形成されてい
る。更に、電極薄膜層17の上部には上部電極接点13
と導通するように上部電極膜18が蒸着されている。あ
るいは、上部電極接点13と上部電極膜18を分割せず
に、電極薄膜層17形成後に、同時に蒸着してもよい。
【0027】ガラス基板11を洗浄し、下部電極用蒸着
マスクにセットして基板温度300℃に加熱しRFイオ
ンプレーティングによりITO膜を2000Å蒸着し
て、下部電極膜12及び上部電極接点13を形成した。
尚、この時の下部電極膜の面抵抗は10Ω/□、可視光
透過率は80%であった。
【0028】冷却後、蒸着した基板11を大気中に取り
出し、EC薄膜用蒸着マスクに交換して再び蒸着装置に
セットし、RFイオンプレーティングにより酸化イリジ
ウム層14を1500Å、酸化タンタル層15を500
0Å、真空蒸着により酸化タングステン層16を600
0Å蒸着してEC薄膜層を形成し、更に運続して再びR
FイオンプレーティングによりITO膜を200Å蒸着
して、電極薄膜層17を形成した。
【0029】ここで蒸着された基板11を取出して上部
電極用蒸着マスクに交換した後、基板温度200℃でI
TO膜を2000Å蒸着し、上部電極膜18を上部電極
接点13と導通して形成した。これを冷却後、蒸着装置
から取り出し、エポキシ樹脂により膜面を封止してEC
Dとした。完成したECDには酸化タングステン膜のク
ラックは認められず、ま上下電極間のリーク電流は1
00μA以下で実用上充分なメモリー性が得られた。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、EC薄膜層と第2
の電極膜の間に前記EC薄膜層と同一パターンで成膜さ
れた電極薄膜層を備えたものであるため、EC薄膜層最
外の薄膜の膨脹又は収縮による応力が抑えられ、クラッ
クの発生を防止することができ、着色濃度の高いECD
を安定して作製できる。またクラック防止効果により蒸
着マスク交換時間の制限がなくなり、ECDの大量生産
に対応できる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のECDの構成を示す模式断
面図である。
【図2】従来の全固体薄膜型ECDの構成を示す模式断
面図である。
【符号の説明】
11 基板 12 下部電極膜 13 上部電極接点 14 酸化イリジウム膜 15 酸化タンタル膜 16 酸化タングステン膜 17 電極薄膜層 18 上部電極膜

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板表面上に第1の電極膜とエレクトロク
    ロミック薄膜層と第2の電極膜とを順に備えたエレクト
    ロミック素子において、 前記エレクトロクロミック薄膜層と第2の電極膜の間
    に、エレクトロクロミック薄膜層を成膜した後連続して
    成膜されてなるエレクトロクロミック薄膜層と同一パタ
    ーンの電極薄膜層を備えたことを特徴とするエレクトロ
    クロミック素子。
  2. 【請求項2】前記請求項1に記載のエレクトロクトミッ
    ク素子において、前記電極薄膜層の厚さが200〜10
    00Åであることを特徴とするエレクトロクロミック素
    子。
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